(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ガス分離装置、ガス分離方法およびガス分離膜
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20220704BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20220704BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220704BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220704BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20220704BHJP
C01B 39/48 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02 500
C01B39/48
(21)【出願番号】P 2020500431
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2019004202
(87)【国際公開番号】W WO2019159782
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018024973
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲一
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-066242(JP,A)
【文献】特開2016-108418(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121889(WO,A1)
【文献】特開2017-131887(JP,A)
【文献】特開平10-114516(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157701(WO,A1)
【文献】特開2007-091507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00 - 71/82
C01B 33/20 - 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分離装置であって、
少なくともメタン、二酸化炭素および窒素を含み、水分含有量を3000ppm以下とした混合ガスを、10気圧以上かつ200気圧以下にて供給するガス供給部と、
前記混合ガス中の二酸化炭素および窒素を透過させることによりメタンから分離させる分離膜と、
を備え、
前記分離膜はゼオライトからなり、
前記ゼオライトはアルミニウムを含み、
前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合が、6.0mol%以下であり、
前記ゼオライト中において、前記アルカリ金属の物質量は、前記アルミニウムの物質量よりも少なく、
前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合が、0.2mol%以下であることを特徴とするガス分離装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のガス分離装置であって、
前記混合ガス中の二酸化炭素濃度が10%以上かつ窒素濃度が3%以上であることを特徴とするガス分離装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のガス分離装置であって、
前記混合ガスの温度は40℃以上かつ200℃以下であることを特徴とするガス分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1つに記載のガス分離装置であって、
前記混合ガスは、C2以上の炭化水素をさらに含むことを特徴とするガス分離装置。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか1つに記載のガス分離装置であって、
前記分離膜が、多孔質の支持体上に形成された前記ゼオライトの膜であることを特徴とするガス分離装置。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1つに記載のガス分離装置であって、
前記ゼオライトの最大員環数が6または8であることを特徴とするガス分離装置。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1つに記載のガス分離装置であって、
前記ゼオライトが、
アルミニウムと、
物質量が前記アルミニウムの物質量の5倍以上かつ1000倍以下であるケイ素、または、物質量が前記アルミニウムの物質量の0.7倍以上かつ1.5倍以下であるリンと、
を含むことを特徴とするガス分離装置。
【請求項8】
ガス分離方法であって、
a)少なくともメタン、二酸化炭素および窒素を含み、水分含有量を3000ppm以下とした混合ガスを、10気圧以上かつ200気圧以下にて供給する工程と、
b)前記混合ガス中の二酸化炭素および窒素を分離膜を透過させることによりメタンから分離させる工程と、
を備え、
前記分離膜がゼオライトからなり、
前記ゼオライトはアルミニウムを含み、
前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合が、6.0mol%以下であり、
前記ゼオライト中において、前記アルカリ金属の物質量は、前記アルミニウムの物質量よりも少なく、
前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合が、0.2mol%以下であることを特徴とするガス分離方法。
【請求項9】
請求項
8に記載のガス分離方法であって、
前記混合ガス中の二酸化炭素濃度が10%以上かつ窒素濃度が3%以上であることを特徴とするガス分離方法。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載のガス分離方法であって、
前記混合ガスの温度は40℃以上かつ200℃以下であることを特徴とするガス分離方法。
【請求項11】
請求項
8ないし
10のいずれか1つに記載のガス分離方法であって、
前記混合ガスは、C2以上の炭化水素をさらに含むことを特徴とするガス分離方法。
【請求項12】
請求項
8ないし
11のいずれか1つに記載のガス分離方法であって、
前記ゼオライトの最大員環数が6または8であることを特徴とするガス分離方法。
【請求項13】
請求項
8ないし
12のいずれか1つに記載のガス分離方法であって、
c)前記b)工程よりも前に、前記ゼオライトを生成する工程をさらに含み、
前記c)工程において、前記ゼオライトに有機酸を含まない40℃以上でpHが4.0以上かつ6.5以下の水を主成分とした液体を接触させることを特徴とするガス分離方法。
【請求項14】
請求項
8ないし
13のいずれか1つに記載のガス分離方法であって、
前記ゼオライトが、
アルミニウムと、
物質量が前記アルミニウムの物質量の5倍以上かつ1000倍以下であるケイ素、または、物質量が前記アルミニウムの物質量の0.7倍以上かつ1.5倍以下であるリンと、
を含むことを特徴とするガス分離方法。
【請求項15】
ガス分離膜であって、
支持体と、
前記支持体上に形成されたゼオライトからなる膜と、
を備え、
前記ゼオライトはアルミニウムを含み、
前記ゼオライト中の全T原子におけるリンの割合が、3.0mol%以下であり、
前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合が、6.0mol%以下であり、
前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合が、0.2mol%以下であり、
前記ゼオライト中において、前記アルカリ金属の物質量は、前記アルミニウムの物質量よりも少ないことを特徴とするガス分離膜。
【請求項16】
請求項
15に記載のガス分離膜であって、
前記ゼオライトの最大員環数が6または8であることを特徴とするガス分離膜。
【請求項17】
請求項
15または
16に記載のガス分離膜であって、
前記ゼオライトの細孔径が0.2nm以上かつ0.4nm未満であることを特徴とするガス分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを分離する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来、部分燃焼炉等からのガスの分離設備では、ガス中の二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、メタン(CH4)等の炭化水素を分離することが行われている。ガス分離方法の1つとして、多孔質支持体上に形成されたゼオライト膜の分子篩作用を利用した膜分離法が知られている。
【0003】
例えば、「Ting Wu、他6名、「Influence of propane on CO2/CH4 and N2/CH4 separations in CHA zeolite membranes」、Journal of Membrane Science 473 (2015)、201-209頁」(文献1)および「J. van den Bergh、他4名、「Separation and permeation characteristics of a DD3R zeolite membrane」、Journal of Membrane Science 316 (2008)、35-45頁」(文献2)では、ゼオライト膜を利用して、CH4とCO2との混合ガスからCO2を除去する方法、および、CH4とN2との混合ガスからN2を除去する方法が開示されている。
【発明の概要】
【0004】
ところで、上記文献1および文献2の方法では、CH4、CO2およびN2を含むガスからCO2およびN2を除去するためには、CO2用の分離膜、および、N2用の分離膜がそれぞれ必要となり、分離装置が大型化および複雑化する。また、ゼオライト膜を用いてCO2およびN2を同時に除去しようとすると、吸着性の強いCO2によってN2の透過が阻害され、N2を効率良く分離することが難しくなる場合がある。そこで、CH4、CO2およびN2を含むガスから、ゼオライト膜を用いてCO2およびN2を同時にかつ効率良く分離する技術が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、混合ガスからCO2およびN2を同時にかつ効率良く分離することを目的としている。
【0006】
本発明の好ましい一の形態に係るガス分離装置は、少なくともメタン、二酸化炭素および窒素を含み、水分含有量を3000ppm以下とした混合ガスを、10気圧以上かつ200気圧以下にて供給するガス供給部と、前記混合ガス中の二酸化炭素および窒素を透過させることによりメタンから分離させる分離膜とを備える。前記分離膜はゼオライトからなる。前記ゼオライトはアルミニウムを含む。前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、6.0mol%以下である。前記ゼオライト中において、前記アルカリ金属の物質量は、前記アルミニウムの物質量よりも少なく、前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合が、0.2mol%以下である。これにより、混合ガスからCO2およびN2を同時にかつ効率良く分離することができる。
【0007】
好ましくは、前記混合ガス中の二酸化炭素濃度は10%以上かつ窒素濃度は3%以上である。
【0008】
好ましくは、前記混合ガスの温度は40℃以上かつ200℃以下である。
【0009】
好ましくは、前記混合ガスは、C2以上の炭化水素をさらに含む。
【0010】
好ましくは、前記分離膜は、多孔質の支持体上に形成された前記ゼオライトの膜である。
【0011】
好ましくは、前記ゼオライトの最大員環数は6または8である。
【0012】
好ましくは、前記ゼオライトは、アルミニウムと、物質量が前記アルミニウムの物質量の5倍以上かつ1000倍以下であるケイ素、または、物質量が前記アルミニウムの物質量の0.7倍以上かつ1.5倍以下であるリンと、を含む。
【0015】
本発明は、ガス分離方法にも向けられている。本発明の好ましい一の形態に係るガス分離方法は、a)少なくともメタン、二酸化炭素および窒素を含み、水分含有量を3000ppm以下とした混合ガスを、10気圧以上かつ200気圧以下にて供給する工程と、b)前記混合ガス中の二酸化炭素および窒素を分離膜を透過させることによりメタンから分離させる工程とを備える。前記分離膜はゼオライトからなる。前記ゼオライトはアルミニウムを含む。前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、6.0mol%以下である。前記ゼオライト中において、前記アルカリ金属の物質量は、前記アルミニウムの物質量よりも少なく、前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合が、0.2mol%以下である。これにより、混合ガスからCO2およびN2を同時にかつ効率良く分離することができる。
【0016】
好ましくは、前記混合ガス中の二酸化炭素濃度は10%以上かつ窒素濃度は3%以上である。
【0017】
好ましくは、前記混合ガスの温度は40℃以上かつ200℃以下である。
【0018】
好ましくは、前記混合ガスは、C2以上の炭化水素をさらに含む。
【0019】
好ましくは、前記ゼオライトの最大員環数は6または8である。
【0021】
好ましくは、前記ガス分離方法は、c)前記b)工程よりも前に、前記ゼオライトを生成する工程をさらに含む。前記c)工程において、前記ゼオライトに有機酸を含まない40℃以上でpHが4.0以上かつ6.5以下の水を主成分とした液体を接触させる。
【0022】
好ましくは、前記ゼオライトは、アルミニウムと、物質量が前記アルミニウムの物質量の5倍以上かつ1000倍以下であるケイ素、または、物質量が前記アルミニウムの物質量の0.7倍以上かつ1.5倍以下であるリンと、を含む。
【0024】
本発明は、ガス分離膜にも向けられている。本発明の好ましい一の形態に係るガス分離膜は、支持体と、前記支持体上に形成されたゼオライトからなる膜とを備え、前記ゼオライトはアルミニウムを含み、前記ゼオライト中の全T原子におけるリンの割合が、3.0mol%以下であり、前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合が、6.0mol%以下であり、前記ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合が、0.2mol%以下であり、前記ゼオライト中において、前記アルカリ金属の物質量は、前記アルミニウムの物質量よりも少ない。
【0025】
好ましくは、前記ゼオライトの最大員環数が6または8である。
【0026】
好ましくは、前記ゼオライトの細孔径が0.2nm以上かつ0.4nm未満である。
【0027】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るガス分離装置2の概略構造を示す図である。ガス分離装置2は、メタン(CH
4)、二酸化炭素(CO
2)および窒素(N
2)を含む混合ガスから、CO
2およびN
2を分離させてCH
4を抽出する装置である。
【0030】
ガス分離装置2は、ゼオライト膜複合体1と、封止部21と、外筒22と、シール部材23と、ガス供給部26と、第1ガス回収部27と、第2ガス回収部28とを備える。ゼオライト膜複合体1、封止部21およびシール部材23は、外筒22内に収容される。ガス供給部26、第1ガス回収部27および第2ガス回収部28は、外筒22の外部に配置されて外筒22に接続される。
【0031】
図2は、ゼオライト膜複合体1の断面図である。
図3は、ゼオライト膜複合体1の一部を拡大して示す断面図である。ゼオライト膜複合体1は、多孔質の支持体11と、支持体11上に形成されたゼオライト膜12(すなわち、膜状のゼオライト)とを備える。
図2に示す例では、支持体11は、一体成形された一繋がりの柱状の本体に、長手方向(すなわち、図中の上下方向)にそれぞれ延びる複数の貫通孔111が設けられた略円柱状のモノリス型支持体である。各貫通孔111(すなわち、セル)の長手方向に垂直な断面は、例えば略円形である。
図2では、貫通孔111の径を実際よりも大きく、貫通孔111の数を実際よりも少なく描いている
。
【0032】
支持体11の長さは、例えば10cm~200cmである。支持体11の外径は、例えば0.5cm~30cmである。支持体11の形状がモノリス状である場合、隣接する貫通孔の中心軸間の距離は、例えば0.3mm~10mmである。支持体11の表面粗さ(Ra)は、例えば0.1μm~5.0μmであり、好ましくは0.2μm~2.0μmである。なお、支持体11の形状は、例えば、ハニカム状、平板状、管状、円筒状、円柱状または多角柱状等であってもよい。支持体11の形状が管状または円筒状である場合、支持体11の厚さは、例えば0.1mm~10mmである。
【0033】
支持体11の材料は、表面にゼオライト膜12を形成する工程において化学的安定性を有するのであれば、様々な物質(例えば、セラミックまたは金属)が採用可能である。本実施の形態では、支持体11はセラミック焼結体により形成される。支持体11の材料として選択されるセラミック焼結体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。本実施の形態では、支持体11は、アルミナ、シリカおよびムライトのうち、少なくとも1種類を含む。
【0034】
支持体11は、無機結合材を含んでいてもよい。無機結合材としては、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも1つを用いることができる。
【0035】
支持体11の平均細孔径は、例えば0.01μm~70μmであり、好ましくは0.05μm~25μmである。ゼオライト膜12が形成される表面近傍における支持体11の平均細孔径は0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。平均細孔径は、例えば、水銀ポロシメータ、パームポロシメータまたはナノパームポロシメータにより測定することができる。支持体11の表面および内部を含めた全体における細孔径の分布については、D5は例えば0.01μm~50μmであり、D50は例えば0.05μm~70μmであり、D95は例えば0.1μm~2000μmである。ゼオライト膜12が形成される表面近傍における支持体11の気孔率は、例えば25%~50%である。
【0036】
支持体11は、例えば、平均細孔径が異なる複数の層が厚さ方向に積層された多層構造を有する。ゼオライト膜12が形成される表面を含む表面層における平均細孔径および焼結粒径は、表面層以外の層における平均細孔径および焼結粒径よりも小さい。支持体11の表面層の平均細孔径は、例えば0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。支持体11が多層構造を有する場合、各層の材料は上記のものを用いることができる。多層構造を形成する複数の層の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
ゼオライト膜12は、貫通孔111の内側面上に形成され、貫通孔111の内側面を略全面に亘って被覆する。ゼオライト膜12とは、少なくとも、支持体11の表面にゼオライトが膜状に形成されたものであって、有機膜中にゼオライト粒子を分散させただけのものは含まない。また、ゼオライト膜12は、構造や組成が異なる2種類以上のゼオライトを含んでいてもよい。
図2では、ゼオライト膜12を太線にて描いている。ゼオライト膜12は、分子篩作用によって異なる種類の分子を分離する分子分離膜である。具体的には、ゼオライト膜12は、CO
2およびN
2に比べてCH
4を透過させない。換言すれば、ゼオライト膜12のCH
4の透過量は、CO
2の透過量およびN
2の透過量に比べて小さい。すなわち、ゼオライト膜12は、CH
4、CO
2およびN
2を含む混合ガス中のCO
2およびN
2を透過させることにより、CO
2およびN
2をCH
4から分離させる分離膜である。
【0038】
ゼオライト膜12を構成するゼオライトの最大員環数は、好ましくは、6または8である。より好ましくは、ゼオライト膜12は、8員環のゼオライトである。なお、n員環とは、細孔を形成する骨格を構成する酸素原子の数がn個であって、各酸素原子が後述のT原子と結合して環状構造をなす部分のことである。また、n員環とは、貫通孔(チャンネル)を形成しているものをいい、貫通孔を形成していないものは含まない。
【0039】
ゼオライト膜12は、例えば、DDR型のゼオライトである。換言すれば、ゼオライト膜12は、国際ゼオライト学会が定める構造コードが「DDR」であるゼオライトである。ゼオライト膜12は、例えば、AEI型、AEN型、AFN型、AFV型、AFX型、CHA型、ERI型、ETL型、GIS型、LEV型、LTA型、PAU型、RHO型、SAT型、SOD型等のゼオライトであってもよい。より好ましくは、例えば、AEI型、AFN型、AFV型、AFX型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、GIS型、LEV型、LTA型、PAU型、RHO型、SAT型等のゼオライトである。さらに好ましくは、例えば、AEI型、AFN型、AFV型、AFX型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、GIS型、LEV型、PAU型、RHO型、SAT型等のゼオライトである。
【0040】
ゼオライト膜12の厚さは、例えば0.05μm~30μmであり、好ましくは0.1μm~20μmであり、さらに好ましくは0.5μm~10μmである。ゼオライト膜12を厚くすると分離性能が向上する。ゼオライト膜12を薄くすると透過速度が増大する。ゼオライト膜12の表面粗さ(Ra)は、例えば5μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。
【0041】
ゼオライト膜12の細孔径は、例えば、0.2nm以上かつ0.4nm未満であり、好ましくは、0.3nm以上かつ0.4nm未満である。ゼオライト膜12の細孔径が0.2nm未満の場合、ゼオライト膜を透過するガスの量が少なくなる場合があり、ゼオライト膜12の細孔径が0.4nm以上の場合、ゼオライト膜の選択性が不十分となる場合がある。ゼオライト膜12の細孔径とは、ゼオライト膜12を構成するゼオライトの細孔の最大直径(すなわち、酸素原子間距離の最大値)と概垂直な方向における細孔の直径(すなわち、短径)である。ゼオライト膜12を構成するゼオライトの最大員環数がnの場合、n員環細孔の短径をゼオライト膜12の細孔径とする。また、ゼオライトがnが等しい複数種のn員環細孔を有する場合には、最も大きい短径を有するn員環細孔の短径をゼオライト膜12の細孔径とする。ゼオライト膜12の細孔径は、ゼオライト膜12が配設される支持体11の表面における平均細孔径よりも小さい。既述のように、支持体11の材料としては様々なものが採用可能である。支持体11は、例えば、アルミナ焼結体またはムライト焼結体である。
【0042】
ゼオライト膜12を構成するゼオライトは、ゼオライトを構成する酸素四面体(TO4)の中心に位置する原子(T原子)としてAlを含む。ゼオライト膜12を構成するゼオライトとしては、T原子がケイ素(Si)とアルミニウム(Al)からなるゼオライト、T原子がAlとリン(P)からなるAlPO型のゼオライト、T原子がSiとAlとPからなるSAPO型のゼオライト、T原子がマグネシウム(Mg)とSiとAlとPからなるMAPSO型のゼオライト、T原子が亜鉛(Zn)とSiとAlとPからなるZnAPSO型のゼオライト等を用いることができる。T原子の一部は、他の元素に置換されていてもよい。
【0043】
ゼオライト膜12を構成するゼオライトは、T原子として実質的にPを含まないことが好ましい。換言すれば、ゼオライトは骨格元素として、実質的にPを含まないことが好ましい。これにより、ゼオライト膜12の耐熱性を高めることができる。なお、骨格元素として実質的にPを含まないとは、全T原子におけるPの割合が3mol%以下であることをいう。
【0044】
ゼオライト膜12がAlおよびSiを含む場合、Siの物質量(mol)は、Alの物質量の5倍以上かつ1000倍以下であることが好ましい。ゼオライト膜12がAlおよびPを含む場合、Pの物質量は、Alの物質量の0.7倍以上かつ1.5倍以下であることが好ましい。
【0045】
ゼオライト膜12は、アルカリ金属を含んでいてもよい。当該アルカリ金属は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)またはセシウム(Cs)である。ゼオライト膜12中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、ゼオライト膜12のゼオライト単位質量当たりに含まれる全骨格元素(すなわち、T原子および酸素)の物質量の和とアルカリ金属の物質量とを求め、アルカリ金属の物質量を全骨格元素の物質量の和で除算することにより求められる。なお、ゼオライト単位質量当たりに含まれる酸素の物質量は、簡易的に、T原子の物質量の和の2倍として求めてもよい。ゼオライト膜12中に2種類以上のアルカリ金属が含まれる場合は、全アルカリ金属の物質量の和を、上述のアルカリ金属の物質量とする。ゼオライト膜12中の全骨格元素に対する当該アルカリ金属の割合は、6.0mol%以下であり、より好ましくは4.0mol%以下であり、さらに好ましくは3.5mol%以下であり、特に好ましくは3.0mol%以下である。当該アルカリ金属の割合を6.0mol%以下とすることにより、アルカリ金属によるCO2の過度の吸着を抑制することができる。その結果、アルカリ金属に吸着されたCO2により、N2の分離膜透過が阻害されることを抑制することができる。ゼオライト膜12中における当該アルカリ金属の物質量は、Alの物質量よりも少ない。アルカリ金属の量は、Alの90mol%以下が好ましく、80mol%以下がより好ましく、70mol%以下がさらに好ましく、60mol%以下が特に好ましい。なお、ゼオライト膜12は、アルカリ金属を含んでいなくてもよい。この場合、ゼオライト膜12中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、0mol%である。ゼオライト膜12中の全骨格元素に対する当該アルカリ金属の割合は、より好ましくは0.01mol%以上であり、さらに好ましくは0.05mol%以上である。
【0046】
ゼオライト膜12は、アルカリ土類金属を含んでいてもよい。当該アルカリ土類金属は、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)またはラジウム(Ra)である。ゼオライト膜12中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合は、ゼオライト膜12のゼオライト単位質量当たりに含まれる全骨格元素(すなわち、T原子および酸素)の物質量の和とアルカリ土類金属の物質量とを求め、アルカリ土類金属の物質量を全骨格元素の物質量の和で除算することにより求められる。ゼオライト膜12中に2種類以上のアルカリ土類金属が含まれる場合は、全アルカリ土類金属の物質量の和を、上述のアルカリ土類金属の物質量とする。ゼオライト膜12中の全骨格元素に対する当該アルカリ土類金属の割合は、0.2mol%以下が好ましく、0.1mol%以下がより好ましい。アルカリ土類金属の割合を0.2mol%以下とすることにより、アルカリ土類金属により細孔が閉塞される可能性が減少し、N2の分離膜透過が阻害されることを抑制することができる。なお、ゼオライト膜12は、アルカリ土類金属を含んでいなくてもよい。この場合、ゼオライト膜12中の全骨格元素に対するアルカリ土類金属の割合は、0mol%である。
【0047】
なお、合成条件が同じであっても、ゼオライト膜に含まれる元素の割合は、ゼオライト粉末とは異なる場合がある。そのため、実際にゼオライト膜12に含まれる元素の物質量を測定しつつ、原料溶液の組成や水熱合成条件を調整することが必要である。ゼオライト膜12中の元素の物質量は、EDS(エネルギー分散型X線分析)によって求めることができる。
【0048】
封止部21は、支持体11の長手方向両端部に取り付けられ、支持体11の長手方向両端面を被覆して封止する部材である。封止部21は、支持体11の当該両端面からのガスの流入および流出を防止する。封止部21は、例えば、ガラスまたは樹脂により形成された板状部材である。封止部21の材料および形状は、適宜変更されてよい。なお、支持体11の貫通孔111の長手方向両端は、封止部21により被覆されていない。したがって、当該両端から貫通孔111へのガスの流入および流出は可能である。
【0049】
外筒22は、略円筒状の筒状部材である。外筒22は、例えばステンレス鋼または炭素鋼により形成される。ゼオライト膜複合体1の長手方向(すなわち、図中の左右方向)は、外筒22の長手方向に略平行である。外筒22の長手方向の一方の端部(すなわち、図中の左側の端部)にはガス供給ポート221が設けられ、他方の端部には第1ガス排出ポート222が設けられる。外筒22の側面には、第2ガス排出ポート223が設けられる。ガス供給ポート221には、ガス供給部26が接続される。第1ガス排出ポート222には、第1ガス回収部27が接続される。第2ガス排出ポート223には、第2ガス回収部28が接続される。外筒22の内部空間は、外筒22の周囲の空間から隔離された密閉空間である。
【0050】
シール部材23は、ゼオライト膜複合体1の長手方向両端部近傍において、ゼオライト膜複合体1の外側面(すなわち、支持体11の外側面)と外筒22の内側面との間に、全周に亘って配置される。シール部材23は、ガスが透過不能な材料により形成された略円環状の部材である。シール部材23は、例えば、可撓性を有する樹脂により形成されたOリングである。シール部材23は、ゼオライト膜複合体1の外側面および外筒22の内側面に全周に亘って密着する。シール部材23とゼオライト膜複合体1の外側面との間、および、シール部材23と外筒22の内側面との間は、シールされており、ガスの通過はほとんど、または、全く不能である。
【0051】
ガス供給部26は、少なくともCH4、CO2およびN2を含む混合ガスを、ガス供給ポート221を介して外筒22の内部空間に供給する。ガス供給部26は、例えば、外筒22に向けて混合ガスを圧送するブロワーやポンプである。当該ブロワーやポンプは、外筒22に供給する混合ガスの圧力を調節する圧力調節部を備える。
【0052】
ガス供給部26から外筒22に供給された混合ガスは、矢印251にて示すように、ゼオライト膜複合体1の図中の左端から、支持体11の各貫通孔111内に導入される。混合ガス中のCO2およびN2は、各貫通孔111の内側面上に設けられたゼオライト膜12、および、支持体11を透過して支持体11の外側面から導出され、矢印253にて示すように、第2ガス排出ポート223を介して第2ガス回収部28により回収される。第2ガス回収部28は、例えば、外筒22から導出されたCO2およびN2等のガスを貯留する貯留容器、または、当該透過ガスを移送するブロワーもしくはポンプである。
【0053】
また、混合ガスのうち、ゼオライト膜12および支持体11を透過したCO2およびN2等のガスを除くガス(以下、「不透過ガス」と呼ぶ。)は、支持体11の各貫通孔111を図中の左側から右側へと通過し、矢印252にて示すように、第1ガス排出ポート222を介して第1ガス回収部27により回収される。第1ガス回収部27は、例えば、外筒22から導出された不透過ガスを貯留する貯留容器、または、当該ガスを移送するブロワーもしくはポンプである。
【0054】
次に、
図4を参照しつつ、ガス分離装置2による混合ガスの分離の流れについて説明する。混合ガスの分離が行われる際には、まず、支持体11上にゼオライト膜12が生成されてゼオライト膜複合体1が準備される(ステップS11)。ステップS11を具体的に説明すると、例えば、まず、水熱合成にてDDR型のゼオライトの粉末が生成され、当該ゼオライトの粉末から種結晶が取得される。当該ゼオライトの粉末はそのまま種結晶として用いられてもよく、当該粉末を粉砕等によって加工することにより種結晶が取得されてもよい。
【0055】
続いて、種結晶を分散させた溶液に多孔質の支持体11を浸漬し、種結晶を支持体11に付着させる。これにより、種結晶付着支持体が製造される。種結晶は、他の手法により支持体11に付着されてもよい。
【0056】
種結晶が付着された支持体は、原料溶液に浸漬される。原料溶液は、例えば、Si源、Al源、アルカリ金属源および構造規定剤(Structure-Directing Agent、以下「SDA」とも呼ぶ。)等を水に溶解・分散させることにより作製する。原料溶液の組成は、例えば、100SiO2:1Al2O3:2Na2O:3SDA:3000H2Oである。SDAとしては、例えば、1-アダマンタンアミンを用いることができる。そして、水熱合成により当該種結晶を核としてDDR型のゼオライトを成長させて、支持体11上にDDR型のゼオライト膜12が生成される。水熱合成時の温度は、好ましくは120~200℃であり、例えば160℃である。水熱合成時間は、好ましくは10~100時間であり、例えば30時間である。このとき、原料溶液中のSi源とAl源等との配合割合等を調整することにより、DDR型のゼオライト膜12の組成を調整することができる。
【0057】
水熱合成が終了すると、支持体11およびゼオライト膜12を純水で洗浄する。洗浄後の支持体11およびゼオライト膜12は、例えば80℃にて乾燥される。支持体11およびゼオライト膜12が乾燥すると、ゼオライト膜12を加熱処理することによってSDAを燃焼除去して、ゼオライト膜12内の微細孔を貫通させる。ゼオライト膜12の加熱温度および加熱時間は、例えば、450℃および50時間である。その後、ゼオライト膜12に水を主成分とした液体を所定時間接触させることにより、ゼオライト膜12中のアルカリ金属を減少させる。ゼオライト膜12に接触させる液体は、細孔の閉塞を抑制できることから、酢酸等のカルボン酸やフェノール類等の有機酸を含まないことが好ましい。なお、有機酸を含まないとは、液体中の有機酸の濃度が1mol%以下であることを指す。ゼオライト膜12に接触させる液体の温度は、好ましくは40℃以上である。ゼオライト膜12に接触させる液体のpHは、ゼオライト膜12中のアルカリ金属を効率よく減少させることができるため、好ましくは4.0以上かつ6.5以下である。ゼオライト膜12に液体を接触させる時間は、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上である。また、ゼオライト膜12に液体を接触させる時間は、好ましくは50時間以下であり、より好ましくは30時間以下である。そして、ゼオライト膜12を乾燥させることにより、上述のゼオライト膜複合体1が得られる。このとき、ゼオライト膜12のゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、6.0mol%以下である。また、当該ゼオライト中において、上記アルカリ金属の物質量は、Alの物質量よりも少ない。
【0058】
ステップS11が終了すると、
図1に示すガス分離装置2が組み立てられる(ステップS12)。ゼオライト膜複合体1は、外筒22内に設置される。
【0059】
続いて、ガス供給部26により、少なくともCH4、CO2およびN2を含む混合ガスが、外筒22の内部空間に供給される(ステップS13)。本実施の形態では、混合ガスの主成分は、CH4、CO2およびN2である。混合ガスには、CH4、CO2およびN2以外のガスが含まれていてもよい。ゼオライト膜複合体1へのCO2の過度な吸着を抑制できることから、混合ガスには、C2以上の炭化水素が含まれることが好ましい。また、C2以上の炭化水素が含まれることで、後述する不透過ガスの燃焼カロリーを増加する効果も期待できる。
【0060】
ガス供給部26から外筒22の内部空間に供給される混合ガスの圧力(すなわち、ガス導入圧)は、10気圧(1.013MPa)以上かつ200気圧(20.265MPa)以下である。混合ガスの温度は、好ましくは、40℃以上かつ200℃以下である。混合ガス中のCO2濃度(すなわち、CO2のmol%)は、10%以上であることが好ましい。混合ガス中のN2濃度(すなわち、N2のmol%)は、3%以上であることが好ましい。また、混合ガスの水分含有量は、3000ppm以下である。ガス中の水分含有量が3000ppmよりも大きい場合には、脱水装置等によって水分含有量を3000ppm以下とした混合ガスを使用する。
【0061】
外筒22内に供給された混合ガスは、ゼオライト膜複合体1の各貫通孔111に導入される。そして、混合ガス中のCO2およびN2が、ゼオライト膜複合体1を透過することにより(すなわち、ゼオライト膜12および支持体11を透過することにより)、混合ガス中のCH4から同時にかつ効率良く分離される(ステップS14)。ゼオライト膜複合体1を透過したCO2およびN2は、第2ガス回収部28により回収される。第2ガス回収部28における圧力は、任意に設定可能であるが、例えば約1気圧(0.101MPa)である。第2ガス回収部28により回収されるガスには、CO2およびN2以外のガスが含まれていてもよい。
【0062】
また、不透過ガス(すなわち、混合ガスのうちゼオライト膜複合体1を透過したCO2およびN2等のガスを除くガス)は、各貫通孔111を通過して第1ガス回収部27により回収される。第1ガス回収部27における圧力は、例えば、ガス供給部26と同じ圧力である。第1ガス回収部27により回収された不透過ガスには、ゼオライト膜複合体1を透過しなかったCO2およびN2が含まれていてもよい。また、不透過ガスには、CH4、CO2およびN2以外のガスが含まれていてもよい。
【0063】
次に、表1を参照しつつ、水分を除く混合ガスの組成と、CO2およびN2の除去割合との関係について説明する。表1中のケース1~5では、ガス供給部26からガス分離装置2に供給される混合ガスの組成(すなわち、ガス分離装置2によるCO2およびN2の除去前の混合ガスの組成)が異なっている。表1中の混合ガスの圧力は、ガス供給部26からガス分離装置2に供給される混合ガスの圧力である。第2ガス回収部28の圧力(すなわち、透過側圧力)は、表1には記載していないが、全ケースにおいて1気圧である。ガス供給部26からガス分離装置2に供給される混合ガスの水分含有量は、3000ppmである。
【0064】
表1中のCO2の除去割合は、ガス分離装置2に供給された混合ガス中のCO2の物質量に対する第2ガス回収部28に回収されたCO2の物質量の割合である。表1中のN2の除去割合は、ガス分離装置2に供給された混合ガス中のN2の物質量に対する第2ガス回収部28に回収されたN2の物質量の割合である。
【0065】
【0066】
表1に示すように、混合ガス中のCO2濃度は10%以上であり、かつ、N2濃度は3%以上である。CO2の除去割合は60%以上であり、N2の除去割合は30%以上であった。換言すれば、分離膜であるゼオライト膜12は、混合ガス中のCO2およびN2のうち、60%以上のCO2、および、30%以上のN2を透過させ、混合ガスから分離することができる。ケース1~5について、混合ガスの水分含有量を3000ppmよりも小さくした場合のCO2およびN2の除去割合は、表1に示す結果と同等、または、表1に示す結果よりも増大した。
【0067】
以上に説明したように、ガス分離装置2は、ガス供給部26と、分離膜(上述の例では、ゼオライト膜12)とを備える。ガス供給部26は、混合ガスを10気圧以上かつ200気圧以下にて供給する。当該混合ガスは、少なくともCH4、CO2およびN2を含む。当該混合ガスの水分含有量は3000ppm以下とされる。上記分離膜は、混合ガス中のCO2およびN2を透過させることによりCH4から分離させる。当該分離膜は、ゼオライトからなり、当該ゼオライトはAlを含む。当該ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、6.0mol%以下である。当該ゼオライト中において、上記アルカリ金属の物質量は、Alの物質量よりも少ない。
【0068】
ガス分離装置2では、上述のように、ゼオライトを含む分離膜を利用して、混合ガス中のCO2およびN2を同時にかつ効率良く分離することができる。また、アルカリ金属によるCO2の過度の吸着を抑制することができる。その結果、アルカリ金属に吸着されたCO2により、N2の分離膜透過が阻害されることを抑制することができる。したがって、CO2およびN2の双方を効率良く分離することができる。なお、当該ゼオライトにはアルカリ金属は含まれていなくてもよい。この場合であっても、上記と同様に、CO2およびN2の双方を効率良く分離することができる。
【0069】
なお、ガス供給部26から供給される上記混合ガスの圧力は、10気圧以上かつ200気圧以下である。上記混合ガスの圧力は、10気圧以上かつ150気圧以下が好ましく、10気圧以上かつ100気圧以下がより好ましい。また、当該ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、4.0mol%以下であることが好ましく3.5mol%以下であることがより好ましく、3.0mol%以下であることがさらに好ましい。
【0070】
好ましくは、混合ガス中のCO2濃度は10%以上かつN2濃度は3%以上である。この場合、混合ガス中のCO2およびN2をさらに効率良く同時に分離することができる。
【0071】
混合ガスの温度は、好ましくは、40℃以上かつ200℃以下である。これにより、混合ガス中のCO2およびN2を同時にかつさらに効率良く分離することができる。
【0072】
好ましくは、混合ガスは、C2以上の炭化水素をさらに含む。これにより、CO2の過度な吸着を抑制できるとともに、不透過ガスの燃焼カロリーを増大させることができる。
【0073】
好ましくは、当該分離膜は、混合ガス中のCO2およびN2のうち、60%以上のCO2、および、30%以上のN2を透過させる。このように、混合ガス中のCO2およびN2を効率良く分離することにより、混合ガス中のCH4の濃度を実用可能な程度まで増大させることができる。
【0074】
ガス分離装置2では、上記分離膜は、多孔質の支持体11上に形成された上記ゼオライトの膜(すなわち、ゼオライト膜12)である。これにより、ゼオライトを含む分離膜を容易に形成することができる。また、ゼオライト膜12を支持体11によって支持することにより、ゼオライト膜12の取り扱いを容易とすることができる。
【0075】
上述のように、分離膜に含まれるゼオライトの最大員環数は6または8である。これにより、分離膜における混合ガス中のCH4の透過を抑制することができる。その結果、分離膜において混合ガス中のCO2およびN2の選択的な透過を好適に実現し、CO2およびN2をさらに効率良く分離することができる。
【0076】
ガス分離装置2では、上記分離膜に含まれるゼオライトは、Alと、SiまたはPとを含むことが好ましい。この場合、Siの物質量はAlの物質量の5倍以上かつ1000倍以下、または、Pの物質量はAlの物質量の0.7倍以上かつ1.5倍以下であることが好ましい。換言すれば、上記分離膜に含まれるゼオライトは、Alと、物質量がAlの物質量の5倍以上かつ1000倍以下であるSi、または、物質量がAlの物質量の0.7倍以上かつ1.5倍以下であるPと、を含むことが好ましい。当該ゼオライトがAlおよびSiを含む場合、価数が4のSiの物質量を、価数が3のAlの物質量の5倍以上とすることにより、当該ゼオライトを電気的中性に好適に近付けることができる。このため、ゼオライトへの水分子の吸着を抑制することができる。その結果、ゼオライトに吸着した水分子により、CO2およびN2の分離膜透過が阻害されることを抑制することができる。したがって、CO2およびN2を効率良く分離することができる。
【0077】
また、当該ゼオライトがAlおよびPを含む場合、価数が5のPの物質量を、価数が3のAlの物質量の1.5倍以下とすることにより、当該ゼオライトを電気的中性に好適に近付けることができる。このため、ゼオライトへの水分子の吸着を抑制することができる。その結果、ゼオライトに吸着した水分子により、CO2およびN2の分離膜透過が阻害されることを抑制することができる。したがって、CO2およびN2を効率良く分離することができる。
【0078】
上述のガス分離方法は、少なくともCH4、CO2およびN2を含む混合ガスを10気圧以上かつ200気圧以下にて供給する工程(ステップS13)と、当該混合ガス中のCO2およびN2を分離膜を透過させることによりCH4から分離させる工程(ステップS14)とを備える。当該混合ガスの水分含有量は3000ppm以下とされる。上記分離膜は、ゼオライトからなり、当該ゼオライトはAlを含む。当該ゼオライト中の全骨格元素に対するアルカリ金属の割合は、6.0mol%以下である。当該ゼオライト中において、上記アルカリ金属の物質量は、Alの物質量よりも少ない。これにより、上述のように、ゼオライトを含む分離膜を利用して、混合ガス中のCO2およびN2を同時にかつ効率良く分離することができる。
【0079】
好ましくは、混合ガス中のCO2濃度は10%以上かつN2濃度は3%以上である。また、好ましくは、混合ガスは、C2以上の炭化水素をさらに含む。
【0080】
上述のガス分離方法は、ステップS13よりも前に、上記ゼオライトを生成する工程(ステップS11)をさらに含む。当該ガス分離方法では、ステップS11において、ゼオライトに40℃以上でpHが4.0以上かつ6.5以下の水を主成分とした液体を所定時間接触させる。これにより、ゼオライト中のアルカリ金属の物質量を減少させることができる。その結果、アルカリ金属によるCO2の過度の吸着を抑制し、アルカリ金属に吸着されたCO2により、N2の分離膜透過が阻害されることを抑制することができる。したがって、CO2およびN2の双方を効率良く分離することができる。
【0081】
上述のガス分離装置2およびガス分離方法では、様々な変更が可能である。
【0082】
例えば、ゼオライト膜12は、上述のように、DDR型以外のゼオライト膜であってもよい。実際に、特開2014-198308号公報の比較例2を参考にして支持体11上に作成したCHA型のゼオライト膜、および、国際公開第2014/157324号を参考にして支持体11上に作成したAEI型のゼオライト膜等においても、上述のDDR型のゼオライト膜12と同様に、表1に示す混合ガスからCO2およびN2の双方を同時にかつ効率良く分離することができることを確認している。
【0083】
例えば、ガス分離装置2の分離膜に含まれるゼオライトでは、アルカリ金属の物質量は、Alの物質量以上であってもよい。当該ゼオライトでは、Siの物質量は、Alの物質量の5倍未満であってもよく、1000倍よりも大きくてもよい。また、Pの物質量は、Alの物質量の0.7倍未満であってもよく、1.5倍よりも大きくてもよい。当該ゼオライトは、必ずしもAlを含む必要はなく、必ずしもSiまたはPを含む必要もない。当該ゼオライトの最大員環数は、8より大きくてもよい。
【0084】
上述の分離膜は、必ずしも多孔質の支持体11上に形成されたゼオライト膜12である必要はない。当該分離膜は、ゼオライトを含む膜状の部材であれば、その形状および構造等は様々に変更されてよい。例えば、分離膜全体がゼオライトにより形成される必要はなく、分離膜の一部がゼオライトにより形成されていてもよい。分離膜に含まれるゼオライトは、1種類のゼオライトであってもよく、構造や組成が異なる2種類以上のゼオライトを含むものであってもよい。
【0085】
ガス分離装置2は、上述のガス供給部26と分離膜とを備えているのであれば、その構造は様々に変更されてよい。
【0086】
上記ガス分離方法のステップS11では、SDAの除去後にゼオライト膜12に接触させる液体の温度は、40℃未満であってもよい。SDA除去後のゼオライト膜12に接触させる液体のpHは、4.0未満であってもよく、6.5よりも大きくてもよい。また、SDA除去後のゼオライト膜12に液体を接触させる工程は省略されてもよい。
【0087】
また、ゼオライト膜複合体1は、支持体11およびゼオライト膜12に加えて、ゼオライト膜12上に積層された機能膜や保護膜をさらに備えていてもよい。このような機能膜や保護膜は、ゼオライト膜、シリカ膜または炭素膜等の無機膜であってもよく、ポリイミド膜またはシリコーン膜等の有機膜であってもよい。また、ゼオライト膜12上に積層された機能膜や保護膜には、CO2を吸着しやすい物質が添加されていてもよい。
【0088】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0089】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のガス分離装置は、例えば、部分燃焼炉からのガス中のCO2およびN2を分離させる装置として利用可能であり、さらには、他の様々な混合ガスの分離にも利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
2 ガス分離装置
11 支持体
12 ゼオライト膜
26 ガス供給部
S11~S14 ステップ