(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20220704BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20220704BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2020530494
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2019108481
(87)【国際公開番号】W WO2020078197
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】201811197771.9
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513065550
【氏名又は名称】中国科学院理化技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王 小軍
(72)【発明者】
【氏名】宗 楠
(72)【発明者】
【氏名】彭 欽軍
(72)【発明者】
【氏名】許 祖彦
(72)【発明者】
【氏名】楊 晶
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-173194(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043229(WO,A1)
【文献】特開2005-203411(JP,A)
【文献】特開2003-124568(JP,A)
【文献】特開平11-317562(JP,A)
【文献】特表2007-508687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0018740(US,A1)
【文献】特開2014-120560(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080252(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザであって、
1つまたは複数の半導体チップ(1-1)と、レーザ光共鳴キャビティと、速相軸コリメート素子(FAC)とを備え、
各前記半導体チップ(1-1)の発光ユニット(1-11)の利得領域(1-11A)の、遅相軸方向に沿う全長は、1mm~10cmであり、
前記レーザ光共鳴キャビティは、前記発光ユニット(1-11)の利得領域(1-11A)の遅相軸方向におけるサイズが基本モードスポット半径ω
0にマッチングするように、前記発光ユニット(1-11)から発された半導体レーザ光を調整して共鳴させ、
前記速相軸コリメート素子(FAC)は、前記レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、前記発光ユニット(1-11)から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートし、前記レーザ光共鳴キャビティは、
前記レーザ光を前記半導体チップ(1-1)へ反射させるための少なくとも1つの凹面鏡
からなるキャビティ鏡を含むことを特徴とする半導体レーザ。
【請求項2】
前記発光ユニット(1-11)の利得領域(1-11A)の遅相軸方向におけるサイズが基本モードスポット半径ω
0にマッチングするとは、
単一の前記発光ユニット(1-11)から発された光の遅相軸に沿う長さと利得領域(1-11A)の遅相軸方向における基本モードスポット直径2ω
0の投影値との比が1~4であることを指すことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記速相軸コリメート素子(FAC)は、前記発光ユニット(1-11)の前端面からf
FACだけ離れた位置に設けられ、前記利得領域(1-11A)の速相軸方向に沿う焦点距離がf
FACであり、前記利得領域(1-11A)の遅相軸方向に沿う焦点距離が∞であることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記半導体チップ(1-1)の発光ユニット(1-11)のリッジストライブ幅は、1~2mmであり、前記レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記レーザ光共鳴キャビティは、第1キャビティ鏡(2)と第1出力結合鏡(3)とを備え、
前記凹面鏡からなるキャビティ鏡は、前記第1キャビティ鏡(2)を構成し、
前記第1キャビティ鏡(2)は、その表面に入射されたレーザ光を前記半導体チップ(1-1)へ反射し、前記第1出力結合鏡(3)を介して出力することを特徴とする請求項4に記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記半導体チップ(1-1)の発光ユニット(1-11)のリッジストライブ幅は、2~5mmであり、前記レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記レーザ光共鳴キャビティは、第2キャビティ鏡(5)と、第3キャビティ鏡(6)と、第2出力結合鏡(7)とを備え、
前記凹面鏡からなるキャビティ鏡は、前記第2キャビティ鏡(5)及び前記第3キャビティ鏡(6)を構成し、
前記第2キャビティ鏡(5)は、その表面に入射されたレーザ光を前記半導体チップ(1-1)へ反射し、
前記第2出力結合鏡(7)の中心には、空洞が開設され、前記第2出力結合鏡(7)は、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、
前記第3キャビティ鏡(6)は、前記空洞を通過したレーザ光を前記半導体チップ(1-1)へ反射することを特徴とする請求項6に記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記複数の半導体チップ(1-1)は、速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向に互いに平行することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の半導体レーザ。
【請求項9】
前記複数の前記半導体チップ(1-1)の発光ユニット(1-11)のリッジストライブ幅は、1~2mmであり、前記レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティであることを特徴とする請求項8に記載の半導体レーザ。
【請求項10】
前記レーザ光共鳴キャビティは、第4キャビティ鏡(8)と第3出力結合鏡(9)とを備え、
前記凹面鏡からなるキャビティ鏡は、前記第4キャビティ鏡(8)を構成し、
前記第4キャビティ鏡(8)は、その表面に入射されたレーザ光を前記半導体チップ(1-1)へ反射し、前記第3出力結合鏡(9)を介して出力することを特徴とする請求項9に記載の半導体レーザ。
【請求項11】
前記複数の半導体チップ(1-1)のうちの各半導体チップ(1-1)の発光ユニット(1-11)のリッジストライブ幅は、2~5mmであり、前記レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティであることを特徴とする請求項8に記載の半導体レーザ。
【請求項12】
前記レーザ光共鳴キャビティは、第5キャビティ鏡(10)と、第6キャビティ鏡(11)と第4出力結合鏡(12)とを備え、
前記凹面鏡からなるキャビティ鏡は、前記第5キャビティ鏡(10)及び第6キャビティ鏡(11)を構成し、
前記第5キャビティ鏡は、その表面に入射されたレーザ光を前記半導体チップ(1-1)へ反射し、
前記第4出力結合鏡(12)の中心には、空洞が開設され、前記第4出力結合鏡(12)は、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、
前記第6キャビティ鏡(11)は、前記空洞を通過したレーザ光を前記半導体チップ(1-1)へ反射することを特徴とする請求項11に記載の半導体レーザ。
【請求項13】
前記レーザ光共鳴キャビティは、更に、前記複数の半導体チップ(1-1)から発されたレーザ光を調整して速相軸方向においてスペクトル合成を行わせることを特徴とする請求項8に記載の半導体レーザ。
【請求項14】
レーザ光共鳴キャビティは、シリンドリカル変換レンズ(F)と回折光学素子(DOE)を更に備え、
前記シリンドリカル変換レンズ(F)は、速相軸方向において所定焦点距離fが設定され、遅相軸方向における焦点距離が∞であり、
前記利得領域(1-11A)と回折光学素子(DOE)は、シリンドリカル変換レンズ(F)の2つの焦点にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項13に記載の半導体レーザ。
【請求項15】
前記半導体チップ(1-1)の下に設けられて前記半導体チップ(1-1)を放熱させるためのヒートシンク(13)を更に備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の半導体レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置技術分野に関し、特に半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザは、半導体材料を利得媒体とし、電子がエネルギー準位間で遷移して発光することを利用し、直接半導体結晶の劈開面から形成された平行反射鏡で共鳴キャビティを構成し、電気注入の下で光発振フィードバックを形成し、光の放射増幅を発生し、レーザ光の出力を実現する。それは、現在変換効率が最も高く(電気から光への変換効率が70%まで達することが可能)、波長範囲が最も広く、適応性と信頼性が最も強く、量産費用が最も低いレーザである。しかし、半導体レーザの共鳴キャビティのサイズが小さく(通常は、ミリメートルオーダのキャビティ長、マイクロメートルオーダのキャビティ面)、レーザ光キャビティ内及び出光口のパワー密度が高く(MW/cm2オーダ)、利得媒体領域が極めて短い等の制限のため、単一の半導体発光ユニットの出力パワーが比較的小さく、直接百ワット以上のパワーを出力することは、非常に困難である。また、従来の半導体レーザの遅相軸方向におけるビーム品質が悪い(例えば、10Wオーダ百umのストライブ幅の半導体レーザユニットの遅相軸のビーム品質M2~10)ため、ハイパワー、高ビーム品質とハイパワー密度を有する半導体レーザ光出力を如何に取得するかは、国際レーザ光分野の重大なボトルネック的技術となっている。
【0003】
ユニット技術の点では、現在採用されているハイパワー半導体レーザデバイスは、主に出光方向がエピタキシャル層と平行するエッジエミッション構造デバイスである。1チップに集積されるユニットの数によって、レーザシングルエミッタ(発光ユニット)と、リニアアレイ(バー)とに区分可能である。レーザシングルエミッタは、単一のレーザユニットであり、数ワット~数十ワットのパワー出力を実現可能であり、そのx方向の発光領域が数十~数百μmであり、拡散角が一般的に6°~15°であり、遅相軸方向と呼称される一方、y方向の発光領域が単に1~5μmであり、拡散角が20°~55°まで高いレベルに達し、速相軸方向と呼称される。レーザ光リニアアレイは、複数のレーザユニットをx方向に集積したものであり、数百ワットのパワーを出力可能であり、一般的に10mmの幅のリニアアレイであり、CW運転のフィルファクタが一般的に20~30%であり、QCW運転のフィルファクタが一般的に50~80%である。原理上で、リニアアレイのビーム品質が改善を得られず、且つそのビーム品質がレーザシングルエミッタより劣る。
【0004】
集積技術の点では、レーザ光合波は、複数のレーザシングルエミッタを1ビームに合成し、パワーを向上させる有効な手段であり、空間合波、シーケンス合波、偏光合波、スペクトル合波等を含む。半導体アレイは、最初に採用した合波方法であり、複数の半導体リニアアレイ空間を合波して速相軸方向に重畳し、千ワット以上のパワーを得ることが可能であるが、ビーム品質の劣化が一層深刻になり、ビーム品質が単一のリニアアレイおよびレーザシングルエミッタより劣る。1999年に、マサチューセッツ工科大学Lincoln試験室のTsoYee Fanらは、格子外部キャビティの方法を用いて半導体レーザアレイに対してスペクトル合波を実行することを初めて提出した。当該方法は、非常に大きく重視し関心されている。それは、バーを遅相軸方向に合波した後のビーム品質を1つのレーザシングルエミッタのビーム品質に相当させ得る。しかし、スペクトル合波は、依然としてレーザシングルエミッタのレーザ光のビーム品質を改善することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体レーザの利得領域モジュールの利得領域の遅相軸方向の全長を1mm~10cmに設定するとともに、レーザ光共鳴キャビティを設け、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向に共鳴させ、発光ユニットの利得領域の遅相軸方向におけるサイズを基本モードスポット半径ω0にマッチングさせ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上させつつ、ビーム品質を高める、半導体レーザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の実施例は、1つまたは複数の半導体チップと、レーザ光共鳴キャビティと、速相軸コリメート素子とを備え、各半導体チップの発光ユニットの利得領域の、遅相軸方向に沿う全長は、1mm~10cmであり、レーザ光共鳴キャビティは、発光ユニットの利得領域の遅相軸方向におけるサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整して共鳴させ、速相軸コリメート素子は、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、発光ユニットから発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする半導体レーザを提供する。
【0007】
更に、発光ユニットの利得領域の遅相軸方向におけるサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニットから発された光の遅相軸に沿う長さと利得領域の遅相軸方向における基本モードスポット直径2ω0の投影値との比が1~4であることを指す。
【0008】
更に、速相軸コリメート素子は、発光ユニットの前端面からfFACだけ離れた前方の位置に設けられ、前記発光ユニットから発されたレーザ光は、利得領域の速相軸方向に沿う焦点距離がfFACであり、利得領域の遅相軸方向に沿う焦点距離が∞である。
【0009】
更に、速相軸コリメート素子は、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、速相軸方向に沿う焦点距離が0.3~1.5mmである。
【0010】
更に、半導体チップの発光ユニットのリッジストライブ幅は、1~2mmであり、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティである。
【0011】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、第1キャビティ鏡と第1出力結合鏡とを備え、第1キャビティ鏡は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップへ反射し、第1出力結合鏡を介して出力する。
【0012】
更に、第1キャビティ鏡は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニットへ向けられる。
【0013】
更に、半導体チップは、M個の発光ユニットを備え、M≧2であり、M個の発光ユニットは、遅相軸方向に沿って直列に接続されている。更に、M個の発光ユニット同士は、等距離で間隔を空けて配列する。
【0014】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、ダハプリズムを更に備え、ダハプリズムは、速相軸コリメート素子の前に設けられ、前記レーザ光共鳴キャビティ内のレーザ光を、利得領域へ反射し、第1出力結合鏡を介して出力する。
【0015】
更に、ダハプリズムは、M-1個ある。
【0016】
更に、第1キャビティ鏡の凹面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、第1出力結合鏡には、出力レーザ光波長に対する部分透過膜がメッキされ、その透過率が40%より高く、半導体チップの前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、半導体チップの後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子の光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0017】
更に、半導体チップの発光ユニットのリッジストライブ幅は、2~5mmであり、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティである。
【0018】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、第2キャビティ鏡、第3キャビティ鏡と第2出力結合鏡を備え、第2キャビティ鏡は、その表面に入射されたレーザ光を前記半導体チップへ反射し、第2出力結合鏡の中心には、空洞が開設され、第2出力結合鏡は、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、且つ発光ユニットから発されたレーザ光は、第2出力結合鏡の中心の空洞を通過して第3キャビティ鏡によって反射された後で第2出力結合鏡の中心空洞の付近に集束して焦点を形成し、第3キャビティ鏡は、空洞を通過したレーザ光を半導体チップへ反射する。
【0019】
更に、第2キャビティ鏡は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニットへ向けられ、速相軸コリメート素子(FAC)の前に設けられ、第3キャビティ鏡は、速相軸コリメート素子の前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内の光路とは所定角度αをなし、第3キャビティ鏡は、凹面鏡であり、第2出力結合鏡の前に設けられている。
【0020】
更に、発光ユニットは、M個あり、M≧2であり、M個の発光ユニットは、遅相軸方向に沿って直列に接続されている。
【0021】
更に、M個の発光ユニット同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0022】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、ダハプリズムを更に備え、前記速相軸コリメート素子の前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内のレーザ光を利得領域へ反射し、第2出力結合鏡を介して出力する。
【0023】
更に、ダハプリズムは、M-1個ある。
【0024】
更に、第2キャビティ鏡と第3キャビティ鏡の凹面には、高反射率膜がメッキされ、第2出力結合鏡には、レーザ光(90-α)角度に対する高反射膜がメッキされ、半導体チップの前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子の光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0025】
更に、複数の半導体チップは、速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向に互いに平行する。更に、複数の半導体チップ同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0026】
更に、複数の半導体チップの発光ユニットのリッジストライブ幅は、1~2mmであり、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティである。
【0027】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、第4キャビティ鏡と第3出力結合鏡を備え、第4キャビティ鏡は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップの後端面へ反射し、第3出力結合鏡を介して出力する。
【0028】
更に、第4キャビティ鏡は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニットへ向けられる。
【0029】
更に、半導体チップは、M個の発光ユニットを備え、M≧2であり、M個の発光ユニットは、遅相軸方向に沿って直列に接続されている。更に、M個の発光ユニット同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0030】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、ダハプリズムを更に備え、速相軸コリメート素子の前に設けられ、M個の発光ユニットから発されたレーザ光を前記利得領域へ反射し、第3出力結合鏡を介して出力する。
【0031】
更に、ダハプリズムは、M-1個ある。
【0032】
更に、第4キャビティ鏡の凹面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、第3出力結合鏡には、出力レーザ光波長に対する部分透過膜がメッキされ、その透過率が40%より高く、半導体チップの前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、半導体チップの後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子の光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0033】
更に、複数の半導体チップのうちの半導体チップの発光ユニットのリッジストライブ幅は、2~5mmであり、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティである。
【0034】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、第5キャビティ鏡、第6キャビティ鏡と第4出力結合鏡を備え、第5キャビティ鏡は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップへ反射し、第4出力結合鏡を介して出力し、第4出力結合鏡の中心には、空洞が開設され、第4出力結合鏡は、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、且つ、発光ユニットから発されたレーザ光は、第4出力結合鏡の中心の空洞を通過して第6キャビティ鏡によって反射された後で第4出力結合鏡の中心空洞の付近に集束して焦点を形成し、第6キャビティ鏡は、空洞を通過したレーザ光を半導体チップへ反射する。
【0035】
更に、第5キャビティ鏡は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニットへ向けられ、速相軸コリメート素子の前に設けられ、第4出力結合鏡は、速相軸コリメート素子の前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内の光路とは所定角度αをなし、第6キャビティ鏡は、凹面鏡であり、第2出力結合鏡の前に設けられている。
【0036】
更に、発光ユニットは、M個あり、M≧2であり、M個の発光ユニットは、遅相軸方向に沿って直列に接続されている。
【0037】
更に、M個の発光ユニット同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0038】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、ダハプリズムを更に備え、速相軸コリメート素子の前に設けられ、M個の発光ユニットから発されたレーザ光を利得領域へ反射し、第4出力結合鏡を介して出力する。
【0039】
更に、ダハプリズムは、M-1個ある。更に、M-1個のダハプリズムは、速相軸コリメート素子の後に設けられている。
【0040】
更に、第5キャビティ鏡と第6キャビティ鏡の凹面には、高反射率膜がメッキされ、第4出力結合鏡には、レーザ光(90-α)角度に対する高反射膜がメッキされ、半導体チップの前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子の光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0041】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、更に、複数の半導体チップから発されたレーザ光を調整して速相軸方向においてスペクトル合成を行わせる。
【0042】
更に、レーザ光共鳴キャビティは、シリンドリカル変換レンズと回折光学素子を更に備え、シリンドリカル変換レンズは、速相軸方向において所定焦点距離fが設定され、遅相軸方向における焦点距離が∞であり、利得領域と回折光学素子は、シリンドリカル変換レンズの2つの焦点にそれぞれ設けられている。
【0043】
更に、半導体チップの下に設けられて半導体チップを放熱させるためのヒートシンクを更に備える。
【発明の効果】
【0044】
本発明の上記解決手段は、以下の有利な作用効果を有する。
【0045】
(1)本発明の実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域モジュールの利得領域の、遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向における発光ユニットの利得領域のサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力が実現される。
【0046】
(2)本発明の実施形態に係る半導体レーザでは、速相軸方向に沿ってN個のチップを設け、レーザ光共鳴キャビティによって、N個のチップから発されたレーザ光について速相軸方向においてスペクトル合波を行い、半導体レーザの出力パワーを向上可能であり、1つのチップの半導体レーザに比較すると、N個のチップを有する半導体レーザの出力パワーは、N倍向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体レーザの基本モード模式半径ω
0がレーザ光共鳴キャビティ長Lcavとともに変化する変化曲線である。
【
図2a】本発明の第1実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図2b】本発明の第1実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【
図2c】本発明の第1実施形態に係る半導体レーザの前面図である。
【
図3a】本発明の第2実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図3b】本発明の第2実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【
図3c】本発明の第2実施形態に係る半導体レーザの前面図である。
【
図4a】本発明の第3実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図4b】本発明の第3実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【
図4c】本発明の第3実施形態に係る半導体レーザの前面図である。
【
図4d】本発明の第3実施形態に係る半導体レーザ内のレーザ光の発振経路の模式図である。
【
図4e】本発明の第3実施形態に係る半導体レーザから出力されたレーザ光形状模式図である。
【
図5a】本発明の第4実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図5b】本発明の第4実施形態に係る半導体レーザ内のレーザ光の発振経路の模式図である。
【
図6a】本発明の第5実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図6b】本発明の第5実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【
図7a】本発明の第6実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図7b】本発明の第6実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【
図8a】本発明の第7実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図8b】本発明の第7実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【
図9a】本発明の第8実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【
図9b】本発明の第8実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の目的、技術手段とメリットがより明瞭になるように、以下では、具体的な実施形態を組み合わせて図面を参照し、本発明を更に詳細に説明する。理解すべきことは、これらの記述が単に例示であり、本発明の範囲を制限するためのものではない。また、以下の説明では、本発明の概念が不必要に混同されないように、公知構造と技術に対する技術が省略されている。
【0049】
半導体レーザ分野において、技術者は、一般的に以下の観点を持つ。
【0050】
半導体レーザの遅相軸方向のビーム品質が非常に悪く、M2が約数十であり、当該ビーム品質に対応する利得領域の遅相軸の長さが百umからmmオードである。利得領域の遅相軸方向の長さを増やすと、ビームの品質が非常に悪くなり、発生されたレーザ光が応用できなくなる。したがって、半導体レーザ分野では、ビーム品質の使用可能な範囲内に、遅相軸方向に沿う利得領域の長さは、最長で約0.5mmである。エッジエミッション半導体の原理から言うと、一般的に、発光ユニットのリッジストライブが広いほど、その遅相軸方向のビーム品質は悪くなる。明らかに、従来技術では、利得領域の遅相軸の長さが増えると同時に、M2<2の高ビーム品質の出力が実現不可能である。
【0051】
上記原因により、利得領域の遅相軸方向のサイズを増やしてみる人は、まだいない。上記技術的偏見があるこそ、従来技術における半導体レーザが構造上で突破できず、ビーム品質を更に向上させることができない。
【0052】
出願人は、研究中で以下のことを発見した。全固体レーザ分野では、ポンプスポットの大きさが共鳴キャビティの基本モードでの大きさにマッチングすると、回折極限に近い高ビーム品質レーザ光を取得できる。したがって、本出願は、固体レーザのこの特徴を半導体レーザに利用することで、半導体レーザから出力されたレーザ光の品質を顕著に改善することができる。
【0053】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体レーザの基本モード模式半径ω
0がレーザ光共鳴キャビティ長Lcavとともに変化する変化曲線である。
【0054】
本出願は、W.ケックナーで書かれ、孫文らで翻訳された『固体レーザ光プロジェクト』の本に紹介された基本モード模式半径を如何に算出するかについて参照した。ABCD行列方法を用いて共鳴キャビティ、安定キャビティの基本モード模式を算出し、出力レーザ光の波長808nmを例とすると、基本モード模式半径ω
0が共鳴キャビティ長Lcavとともに変化する変化曲線を取得する(
図1を参照)。レーザ光共鳴キャビティ長Lcavのキャビティ長が長いほど基本モード半径ω
0が大きくなり、そのビーム品質が良くなることは、結論をつけることができる。
【0055】
これにより、研究の過程において、出願人は、エッジエミッション半導体レーザの遅相軸ビームの品質が悪いことに対する根本的な原因が下記のようにあることを発見した。レーザ光共鳴キャビティ長(Lcav)が短いことに起因して、基本モード模式(半径ω0)が小さく、発光ユニットから発された光のサイズ(Lactiv)が基本モード模式よりも遥かい大きくなるため、ビーム品質が悪くなる(M2~(Lactiv/2ω0)1/2)。一般的に、よく見られるLD(Laser Diode)チップである半導体レーザ光チップにとって、レーザ光共鳴キャビティ長は、利得領域のz方向における長さに一致する。
【0056】
したがって、出願人は、研究分析に基づいて以下の結論をつけることができる。各半導体チップの発光ユニットの利得領域の、遅相軸方向に沿う全長が1mm~10cmであり、且つ遅相軸方向における発光ユニットの利得領域のサイズを基本モードスポット半径ω0にマッチングさせるように調整するときに、半導体レーザの出力レーザ光の品質は、非常に良くなる。具体的に、遅相軸方向における発光ユニットの利得領域のサイズが基本モードスポットω0にマッチングするとは、遅相軸方向における利得領域のサイズと基本モードスポットω0のサイズとが近接することを指す。
【0057】
各半導体チップの発光ユニットの利得領域の、遅相軸方向に沿う全長が1mm~10cmであるときに、単一の発光ユニットから発されたレーザ光の遅相軸方向に沿う長さと、利得領域の端面の基本モード直径(基本モード直径の利得領域遅相軸方向における投影値)との比が1であれば、そのビーム品質M2は、約1となる。単一の発光ユニットから発されたレーザ光の遅相軸方向に沿う長さと利得領域の端面の基本モード直径(基本モード直径の利得領域遅相軸方向における投影値)との比が4であれば、そのビーム品質M2は、約2となる。したがって、単一の発光ユニットから発された光の遅相軸に沿う長さと基本モードスポット直径2ω0の利得領域の遅相軸方向における投影値との比が1~4であるときに、半導体レーザのビーム品質は、M2<2を満たす。
【0058】
以上の発見に基づくと、本出願は、固体レーザ光設計思想を用いて半導体レーザを設計することにより、ハイパワー、高ビーム品質を有する半導体レーザ光を取得可能であり、速相軸と遅相軸との2つの方向のビーム品質を何れもM2<2まで抑圧する。以下では、複数の実施形態の形式で本発明に係る半導体レーザを詳細に説明する。
【0059】
本発明に係る複数の実施形態における半導体レーザの構造がより明瞭になるように、下の表1では、本発明の各実施例におけるキーとなる技術要素のカバー状況が与えられている。
【0060】
【0061】
図2aは、本発明の第1実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図2bは、本発明の第1実施形態に係る半導体レーザの側面図であり、
図2cは、本発明の第1実施形態に係る半導体レーザの前面図である。
【0062】
図2a、
図2bと
図2cに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示す。本発明の半導体チップがLDチップであることを例として説明する。
【0063】
当該半導体レーザは、半導体利得モジュール1を備え、当該半導体利得モジュール1は、半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、発光ユニット1-11、前端面と後端面を有し、本実施形態において、z軸に沿う正方向を前とし、z軸の逆方向を後とする。
図2aでは、前端面は、速相軸コリメート素子FACに近接する側であり、後端面は、速相軸コリメート素子FACから少し遠く離れた別の側である。
【0064】
発光ユニットは、上から下へ、電極1-11B、光導波路領域1-11C、及び利得領域1-11Aを備える。ただし、利得領域の遅相軸方向に沿う長さは、1mm~10cmである。ただし、利得領域1-11Aの中線は、レーザビーム断面1-11Aaである。
【0065】
説明すべきことは、1つの発光ユニットに対する利得領域の長さは、1mm~10cmであり、M個の発光ユニットに対し、M個の利得領域は、光路で直列に接続され、各発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さは、1mm~10cmである。
【0066】
半導体レーザは、レーザ光共鳴キャビティを更に備え、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングし、更に利得領域にマッチングする大モードエリア分布が半導体チップ1-1に形成されるように、発光ユニット1-11から発された半導体レーザ光を調整して遅相軸方向において共鳴させる。
【0067】
1つの好適な実施形態では、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニット1-11のから発された光の遅相軸に沿う長さと基本モードスポット直径2ω0の利得領域1-11Aの遅相軸方向における投影値との比が1~4であることを指す。
【0068】
半導体レーザは、速相軸コリメート素子FACを更に備え、発光ユニット1-11の前端面から所定距離fFACだけ離れた前方の位置に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする。
【0069】
更に、速相軸コリメート素子FACは、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、利得領域1-11Aの前端に、利得領域1-11Aの速相軸方向に集束し、焦点距離fFACが0.3~1.5mmであり、利得領域1-11Aの遅相軸方向に沿う焦点距離が∞である。つまり、速相軸方向において、発光ユニット1-11は、速相軸コリメート素子の焦点に設けられ、発光ユニット1-11から発された光を便利にコリメートする。
【0070】
具体的に、上記半導体利得モジュール1は、1つの半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、1つの発光ユニット1-11を備え、そのリッジストライブ幅が1~2mmである。レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティである。
【0071】
より具体的に、レーザ光共鳴キャビティは、第1キャビティ鏡2、及び第1出力結合鏡3を備える。
【0072】
第1キャビティ鏡2は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられ、その曲率半径がRである。第1キャビティ鏡2は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップの発光ユニットへ反射し、第1出力結合鏡3を介して出力する。ただし、その表面に入射されたレーザ光は、発光ユニットから発されたレーザ光、または、第1キャビティ鏡の表面に反射されたレーザ光を含む。
【0073】
好ましくは、半導体チップ1-1の前端面には、高透過率の膜がメッキされ、その後端面には、高反射率の膜がメッキされている。第1キャビティ鏡2の凹面には、高反射率膜がメッキされ、第1出力結合鏡3には、透過率が40%より高い部分透過膜がメッキされ、速相軸コリメート素子FACの光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0074】
より具体的に、上記半導体レーザは、ヒートシンク13を更に備え、ヒートシンク13は、半導体チップ1-1の下に設けられて半導体チップ1-1を放熱させる。
【0075】
説明すべきことは、通常の場合に、本発明の上記実施形態に係る安定キャビティ半導体レーザに、発光ユニットのリッジストライブ幅1mmの出力パワーは、リッジストライブ幅0.5mmの半導体レーザよりも、2倍まで向上可能である。発光ユニットのリッジストライブ幅2mmの出力パワーは、リッジストライブ幅0.5mmよりも4倍まで向上可能である。
【0076】
更に説明すべきことは、発光ユニットから発された光の遅相軸方向における長さとリッジストライブ幅との比は、xである(xが電流、チップ自身等の要素に関係することを考慮し、xが一般的に約1.2-1.8であるが、本発明では1.4として推定する)。
【0077】
また、キャビティ内の光発振を示す側面図が余計にならないように、往復過程において、毎回のFAC鏡が完全に加入しておらず、単なる模式図である。
【0078】
図1から分かるように、外部キャビティ長が500mmであるときに、スポット半径ω
0が0.36mmであり、基本モードスポット直径2ω
0は、0.72mmとなる。単一の発光ユニットから発された光の遅相軸方向における長さと基本モードスポット直径2ω
0のチップにおける投影値との比が1~4である場合に、経験から言うと、単一の発光ユニットが遅相軸方向に発した光の長さが0.72x2≒2.8であれば、ビーム品質M
2は、約2となり、対応するリッジストライブ幅は、2.8/x=2.8/1.4=2mmを満たす。
【0079】
本発明の第1実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポット半径ω0が発光ユニットの利得領域の遅相軸方向における長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整して遅相軸方向に共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質も改善し、M2<2の高ビーム品質の出力が実現できる。
実施例二
【0080】
図3aは、本発明の第2実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図3bは、本発明の第2実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
図3cは、本発明の第2実施形態に係る半導体レーザの前面図である。
【0081】
図3a、
図3b、及び
図3cに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示し、本実施形態においてz軸に沿う正方向を前とし、z軸の逆方向を後とする。
図2aでは、前端面は、速相軸コリメート素子FACに近接する側であり、後端面は、速相軸コリメート素子FACから少し遠く離れた別の側である。
【0082】
当該半導体レーザは、半導体利得モジュール1を備え、当該半導体利得モジュール1は、1つの半導体チップ1-1を備える。半導体チップ1-1は、M個の発光ユニット1-11、前端面、及び後端面を備える。ただし、前端面から後端面までの距離は、2~4mmである。各発光ユニット1-11は、上から下へ、電極1-11B、光導波路領域1-11C、及び利得領域1-11Aを備える。ただし、M個の発光ユニット1-11の利得領域の、遅相軸方向に沿う全長は、1mm~10cmである。
【0083】
半導体レーザは、レーザ光共鳴キャビティを更に備える。レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングし、更に利得領域にマッチングする大モードエリア分布が半導体チップ1-1に形成されるように、発光ユニット1-11から発された半導体レーザ光を調整して遅相軸方向において共鳴させる。
【0084】
1つの好適な実施形態では、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニット1-11から発された光の遅相軸に沿う長さと基本モードスポット直径2ω0の利得領域1-11Aの遅相軸方向における投影値との比が1~4であることを指す。
【0085】
半導体レーザは、速相軸コリメート素子FACを更に備え、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする。
【0086】
更に、速相軸コリメート素子FACは、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、発光ユニット1-11の前端面からfFACだけ離れた位置に設けられ、利得領域1-11Aの前端に、利得領域1-11Aの速相軸方向に沿う焦点距離fFACは、0.3~1.5mmであり、利得領域1-11Aの遅相軸方向に沿う焦点距離は、∞である。
【0087】
具体的に、上記半導体利得モジュール1は、1つの半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、M個の発光ユニット1-11を備え、そのリッジストライブ幅が1~2mmである。ただし、M≧2であり、M個の発光ユニット1-11は、遅相軸方向に沿って直列に接続され、好ましくは、M個の発光ユニット同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0088】
より具体的に、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティであり、レーザ光共鳴キャビティは、第1キャビティ鏡2、第1出力結合鏡3、及びダハプリズム4を備える。
【0089】
第1キャビティ鏡2は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられ、その曲率半径がRである。
【0090】
発光ユニット1-11から発されたレーザ光は、当該第1キャビティ鏡2に入射され、第1キャビティ鏡2を介して半導体チップ1-1の後端面へ反射し、第1出力結合鏡3を介して出力される。
【0091】
ダハプリズム4は、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、M個の発光ユニット1-11から発されたレーザ光を、第1出力結合鏡3を介して出力するまで利得領域1-11Aへ反射する。
【0092】
好ましくは、ダハプリズムは、M-1個ある。ダハプリズム4の役割は、レーザ光をチップへ折り返すことである。他の類似する機能を有する光学素子を用いて同じ機能を実現できれば、ダハプリズムを置換してもよい。
【0093】
より具体的に、上記半導体レーザは、ヒートシンク13を更に備え、ヒートシンク13は、半導体チップ1-1の下に設けられて当該半導体チップ1-1を放熱させる。
【0094】
1つの例では、第1キャビティ鏡2の速相軸コリメート素子FACに近接する側には、高反射率膜がメッキされ、第1出力結合鏡3には、透過率が40%より高い部分透過膜がメッキされ、半導体チップ1-1の前端面には、高透過率の膜がメッキされ、半導体チップ1-1の後端面には、高反射率の膜がメッキされ、速相軸コリメート素子(FAC)の光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0095】
本発明の第2実施形態に係る半導体レーザは、以下のメリットを有する。
【0096】
(1)本発明の第2実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の、遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポットのサイズが発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力が実現される。
【0097】
(2)上記実施形態に係る半導体レーザでは、1つの半導体チップにM個の発光ユニットを設けており、1つの半導体チップに1つの発光ユニットを設ける半導体レーザよりも、原則的に、その出力パワーがM倍向上できる。
実施例三
【0098】
図4aは、本発明の第3実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図4bは、本発明の第3実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
図4cは、本発明の第3実施形態に係る半導体レーザの前面図である。
【0099】
図4aと
図4bに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示す。
【0100】
当該半導体レーザは、半導体利得モジュール1を備え、当該半導体利得モジュール1は、1つの半導体チップ1-1を備える。半導体チップ1-1は、1つの発光ユニット1-11、前端面、及び後端面を備える。発光ユニット1-11は、上から下へ電極1-11B、光導波路領域1-11C、及び利得領域1-11Aを備える。ただし、利得領域の遅相軸方向に沿う長さは、1mm~10cmである。ただし、利得領域1-11Aの中線は、レーザビーム断面1-11Aaである。
【0101】
半導体レーザは、レーザ光共鳴キャビティを更に備え、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングし、更に利得領域にマッチングする大モードエリア分布が半導体チップ1-1に形成されるように、発光ユニット1-11から発された半導体レーザ光を調整して遅相軸方向において共鳴させる。
【0102】
1つの好適な実施形態では、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニット1-11から発された光の遅相軸に沿う長さが基本モードスポット直径2ω0の利得領域1-11Aの遅相軸方向における投影値との比が1~4であることを指す。
【0103】
半導体レーザは、速相軸コリメート素子FACを更に備え、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする。
【0104】
更に、速相軸コリメート素子FACは、発光ユニット1-11の前端面からfFacだけ離れた前方の位置に設けられ、速相軸コリメート素子FACから発されたレーザ光は、利得領域1-11Aの速相軸方向に沿って集束し、利得領域1-11Aの速相軸方向に沿う焦点距離は、fFacであり、利得領域1-11Aの遅相軸方向に沿う焦点距離は、∞である。
【0105】
更に、速相軸コリメート素子FACは、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、速相軸方向に沿う焦点距離が0.3~1.5mmであり。
【0106】
具体的に、上記半導体利得モジュール1は、1つの半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、1つの発光ユニット1-11を備え、そのリッジストライブ幅が2~5mmである。
【0107】
より具体的に、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティであり、レーザ光共鳴キャビティは、第2キャビティ鏡5、第3キャビティ鏡6、及び第2出力結合鏡7を備える。
【0108】
具体的に、第2キャビティ鏡5は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップ1-1へ反射し、第2出力結合鏡7の中心には、空洞が開設され、第2出力結合鏡7は、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、第3キャビティ鏡6は、空洞を通過したレーザ光を半導体チップ1-1へ反射する。
【0109】
より具体的に、第2キャビティ鏡5は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられ、速相軸コリメート素子(FAC)の前に設けられている。第2出力結合鏡7は、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内の光路とは所定角度αをなし、且つ発光ユニット1-11から発されたレーザ光は、第2出力結合鏡5の中心空洞を通過して第3キャビティ鏡6によって反射された後で第2出力結合鏡7の中心空洞付近に集束して焦点を形成する。これにより、中心空洞を通過したときのスポットは、小さくなる。第3キャビティ鏡6は、凹面鏡であり、第2出力結合鏡7の前に設けられている。
【0110】
好ましくは、第2出力結合鏡は、円環状をなしてもよく、銅銭状に類似する形状等をなしてもよい。つまり、第2出力結合鏡の外縁は、円形をなしてもよい。その中心空洞は、円形、楕円形、四角形等をなしてもよい。
【0111】
説明すべきことは、本発明の第3実施形態に係る半導体レーザ内で、光路が可逆であるため、第2キャビティ鏡5と第2出力結合鏡7との位置は、交換可能である。無論、第3キャビティ鏡6を第2キャビティ鏡7の中心空洞の光路に設ける必要がある。こうして、第2キャビティ鏡7の中心空洞を透過した光は、第3キャビティ鏡6の表面へ入射されてから、元の通路に沿って発光ユニット1-11の利得領域1-11Aへ反射される。
【0112】
1つの好適な実施形態では、第2出力結合鏡7には、レーザ光(90-α)角度に対する高反射膜がメッキされ、半導体チップ1-1の前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、半導体チップ1-1の後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子FACの光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0113】
本実施形態では、半導体レーザにおけるレーザ光が2回発振することを例として、半導体レーザ内のレーザ光の発振経路を詳細に説明する。
【0114】
図4dは、本発明の第3実施形態に係る半導体レーザ内のレーザ光の発振経路の模式図(遅相軸方向)である。
【0115】
図4dに示すように、当該半導体レーザにおける半導体チップの発光ユニット1-11は、レーザ光を発する。遅相軸方向において、一部のレーザ光が第2結合出力鏡7によって反射されて空心のレーザ光が出力され、別の一部のレーザ光が第2結合出力鏡7の中心空洞を通過して第3キャビティ鏡6まで到達し、第3キャビティ鏡によって反射されて第2結合出力鏡7の中心空洞付近に集光してから発散した後、再び発光ユニット1-11の利得領域1-11Aに戻る。この部分のレーザ光は、利得領域1-11Aの利得増幅を経た後、第2キャビティ鏡5の表面上に反射され、第2キャビティ鏡5のコリメートを経て当該発光ユニット1-11の利得領域1-11Aへ反射され、再度利得領域の利得増幅を経た後、一部のレーザ光が第2出力結合鏡7の表面で発射して中空レーザ光出力を形成し、別の部分のレーザ光が第2結合出力鏡7の中心空洞を通過して第3キャビティ鏡6に至る。レーザ光は、当該半導体レーザ内で絶たずに繰り返して発振し、中空レーザ光を出力し続ける。速相軸方向において、レーザ光がキャビティ鏡とチップの間で共鳴することは、当業者でよく知られるものであり、ここで繰り返し説明しない。
【0116】
図4eは、本発明の第3実施形態に係る半導体レーザから出力されたレーザ光形状の模式図である。
【0117】
上記非安定キャビティを通過した半導体レーザから出力されたレーザ光は、中空レーザ光である。
【0118】
本発明の第3実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の、遅相軸方向に沿う全長を1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポットのサイズが発光ユニット利得領域の遅相軸方向に沿う長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力が実現される。
実施例四
【0119】
図5aは、本発明の第4実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
【0120】
図5aに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示す。
【0121】
第4実施形態では、発光ユニット1-11から発されたレーザ光は、当該レーザ光が第2出力結合鏡7の表面から出力されるまで、第2キャビティ鏡5を介して発光ユニット1-11へ反射され、ダハプリズムを介して発光ユニットへ反射される。出力されるレーザ光は、中空レーザ光である。
【0122】
本発明の第4実施形態に係る半導体レーザと第3実施形態に係る半導体レーザとの相違点は、下記のようになる。第4実施形態において、チップにM個の発光ユニットが設けられているのに対して、第3実施形態において、チップに1つの発光ユニットが設けられている。したがって、第4実施形態に係る半導体レーザの側面図は、第3実施形態に係る半導体レーザと同じである。第3実施形態と同じ部分は、本実施形態において繰り返して説明しない。
【0123】
本発明の第4実施形態に係る半導体レーザは、1つの半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、M個の発光ユニット1-11を備え、各発光ユニットのリッジストライブ幅は、2~5mmである。
【0124】
好ましくは、M個の発光ユニット1-11は、遅相軸方向に沿って等距離で直列に配列する。
【0125】
具体的に、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティであり、レーザ光共鳴キャビティは、第2キャビティ鏡5、第3キャビティ鏡6、及び第2出力結合鏡7を備える。
【0126】
第2キャビティ鏡5は、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を半導体チップ1-1の後端面へ反射し、第2出力結合鏡7を介して出力される。第2出力結合鏡7の中心には、空洞が開設され、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、半導体レーザの出力レーザ光を取得する。第3キャビティ鏡6は、空洞を通過したレーザ光を半導体チップ1-1へ反射する。
【0127】
具体的に、第2キャビティ鏡5は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられ、速相軸コリメート素子FACの前に設けられている。
【0128】
第2出力結合鏡7は、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内の光路とは所定角度αをなし、且つ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光は、第2出力結合鏡7中心空洞を通過して第3キャビティ鏡6によって反射された後で第2出力結合鏡7の中心空洞付近に集束して焦点を形成する。これにより、中心空洞を通過するときのスポットは、小さくなる。
【0129】
第3キャビティ鏡6は、凹面鏡であり、第2出力結合鏡7の前に設けられている。
【0130】
上記レーザ光共鳴キャビティは、ダハプリズム4を更に備え、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、M個の発光ユニット1-11から発されたレーザ光を利得領域1-11Aへ反射し、第2出力結合鏡7を介して出力する。好ましくは、ダハプリズム4は、M-1個ある。
【0131】
説明すべきことは、M-1個のダハプリズムは、取り付けの便利さのために、1つのダハプリズムとして製造されてもよい。
【0132】
1つの好適な実施形態では、第2出力結合鏡7には、レーザ光(90-α)角度に対する高反射膜がメッキされている。
【0133】
第2キャビティ鏡5と第3キャビティ鏡6の凹面には、高反射率膜がメッキされ、第2出力結合鏡7には、レーザ光90-α角度に対する高反射膜がメッキされ、半導体チップ1-1の前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、半導体チップ1-1の後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子FACの光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0134】
より具体的に、上記半導体レーザは、ヒートシンク13を更に備え、ヒートシンク13は、半導体チップ1-1の下に設けられて半導体チップ1-1を放熱させる。
【0135】
図5bは、本発明の第4実施形態に係る半導体レーザ内のレーザ光の発振経路の模式図である。
【0136】
図5aと
図5bに示すように、半導体チップ1-1には、第1、第2~第M個の発光ユニットが設けられ、隣接する発光ユニット1-1の中間には、第1、第2~第M-1個のダハプリズムが設けられている。遅相軸方向において、当該半導体レーザにおける半導体チップの第M個の発光ユニットは、レーザ光を発し、一部のレーザ光は、第2結合出力鏡7によって反射されて空心のレーザ光を出力し、別の部分のレーザ光は、第2結合出力鏡7の中心空洞を通過して第3キャビティ鏡6まで到達し、第3キャビティ鏡6によって反射されて第2結合出力鏡7の中心空洞付近に集光してから発散した後、再び第2結合出力鏡7にもっとも近接する第M個の発光ユニットに戻る。この部分のレーザ光は、第M個の発光ユニットの利得増幅を経た後、第M-1個のダハプリズムに出射して第M-1個の発光ユニットへ折り返し、再度M-1個の発光ユニットの利得増幅を経た後、第M-2個のダハプリズムに出射して第M-2個の発光ユニットへ折り返す。このように複数の発光ユニットの利得増幅を経た後、第1個の発光ユニットから出射して第2キャビティ鏡5の表面まで到達し、第2キャビティ鏡5のコリメートを経て第2キャビティ鏡5にもっとも近接する第1個の発光ユニットへ反射し、再び複数の発光ユニットでの利得増幅とダハプリズムでの折り返しを経て、第M個の発光ユニットから出射し、一部のレーザ光が第2結合出力鏡7によって反射されて空心のレーザ光が出力され、別の部分のレーザ光が引き続きキャビティ内でもう1回利得増幅を経る。こうして、レーザ光発振は形成される。
【0137】
本発明の第4実施形態に係る半導体レーザは、以下のメリットを有する。
【0138】
(1)本発明の第4実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の、遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポットのサイズが発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力が実現される。
【0139】
(2)上記実施形態に係る半導体レーザでは、1つの半導体チップにM個の発光ユニットを設けており、1つの半導体チップに1つの発光ユニットを設ける半導体レーザよりも、その出力パワーがM倍向上できる。
実施例五
【0140】
図6aは、本発明の第5実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図6bは、本発明の第5実施形態に係る半導体レーザの側面図であり、
図6bは、速相軸方向における共鳴光路を更に示す。
【0141】
図6aと
図6bに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示す。
【0142】
本発明の第5実施形態に係る半導体レーザと第1実施形態との相違点は、速相軸方向にN個のチップが垂直となるように配列して外部キャビティスペクトル合波を行うことにある。単一の発光ユニットの側面図と前面図は、第1実施形態に示す側面図と前面図に一致する。同じ構造について、ここで繰り返し説明しない。
【0143】
当該半導体レーザは、複数の半導体チップ1-1を備え、各半導体チップ1-1には、1つの発光ユニットが設けられ、遅相軸方向に沿う当該発光ユニット1-11の利得領域1-11Aの長さは、1mm~10cmである。
【0144】
好ましくは、複数の半導体チップ1-1は、速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向に互いに平行するように配列し、より好ましくは、複数の半導体チップ1-1同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0145】
説明すべきことは、複数の半導体チップが速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向と互いに平行してこそ、共鳴キャビティ内の光路は、速相軸方向においてフィードバックおよび合波を初めて実現できる。遅相軸方向が平行しなければ、共鳴キャビティの設計と調節は、非常に困難となる。複数の半導体チップ1-1同士が等距離で間隔をあけて速相軸方向に配列すると、レーザ光合波の効果が比較的に良好になり、放熱が均一になり、光路が調整されやすくなる。
【0146】
上記半導体レーザは、レーザ光共鳴キャビティを更に備え、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングし、更に利得領域にマッチングする大モードエリア分布が半導体チップ1-1に形成されるように、発光ユニット1-11から発された半導体レーザ光を調整することで共鳴させる。その一方、レーザ光共鳴キャビティは、更に、複数の半導体チップ(1-1)から発されたレーザ光を調整して速相軸方向においてスペクトル合成を行わせる。
【0147】
1つの好適な実施形態では、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニット1-11から発された光の遅相軸に沿う長さと基本モードスポット直径2ω0の利得領域1-11Aの遅相軸方向における投影値との比が1~4であることを指す。
【0148】
速相軸コリメート素子FACは、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする。
【0149】
具体的に、速相軸コリメート素子FACは、発光ユニット1-11の前端面から所定距離fFACだけ離れた前方の位置に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光は、利得領域1-11Aの速相軸方向に沿って集束し、その焦点距離がfFACであり、利得領域1-11Aの遅相軸方向に沿う焦点距離が∞である。好ましくは、速相軸コリメート素子FACは、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、速相軸方向に沿う焦点距離は、0.3~1.5mmである。
【0150】
レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティであり、レーザ光共鳴キャビティは、第4キャビティ鏡8、第3出力結合鏡9、シリンドリカル変換レンズF、及び回折光学素子DOEを備える。
【0151】
ただし、第4キャビティ鏡8は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップ1-1の利得領域へ反射し、第3出力結合鏡9を介して出力する。好ましくは、第4キャビティ鏡8は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられる。
【0152】
シリンドリカル変換レンズFは、速相軸方向において所定焦点距離fが設定され、遅相軸方向における焦点距離が∞である。利得領域1-11Aと回折光学素子DOEは、シリンドリカル変換レンズFの2つの焦点にそれぞれ設けられている。本発明の第5実施形態に係る半導体レーザでは、レーザ光共鳴キャビティ内における光路の方向としては、発光ユニット1-11から発されたレーザ光が速相軸コリメート素子FACを透過して第4キャビティ鏡8の表面へ入射され、発光ユニット1-11の利得領域へ反射され、利得を経た後で速相軸コリメート素子FACを透過してそれぞれ2つの反射鏡とシリンドリカル変換レンズFを経由して回折光学素子DOEに集束し、第3出力結合鏡9表面へ反射され、第3出力結合鏡9を介して出力する。
【0153】
1つの好適な実施例では、FACとシリンドリカル変換レンズFに1つのシリンドリカル変換レンズF’を更に追加してもよく、シリンドリカル変換レンズFとF’とがシリンドリカル変換レンズ群を形成する。速相軸方向において、チップから発された光は、FACを経由した後でコリメートして出力され、シリンドリカル変換レンズF’を経由した後でシリンドリカル変換レンズFの左側焦点に集光する。レーザ光は、再びシリンドリカル変換レンズFに到達してコリメートされ、回折光学素子DOEによって合波された後、第3出力結合鏡9の表面へ反射され、第3出力結合鏡9を介して出力される。
【0154】
1つの好適な実施形態では、第4キャビティ鏡8の凹面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、第3出力結合鏡9には、出力レーザ光波長に対する部分透過膜がメッキされ、部分透過膜の透過率が40%より高く、半導体チップ1-1の前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、半導体チップ1-1の後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子FACの光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0155】
1つの好適な実施形態では、上記半導体レーザは、ヒートシンク13を更に備え、ヒートシンク13は、半導体チップ1-1の下に設けられて半導体チップ1-1を放熱させる。
【0156】
本発明の第5実施形態に係る半導体レーザは、以下のメリットを有する。
【0157】
(1)本発明の第5実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の、遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポットのサイズが発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力を実現できる。
【0158】
(2)本発明の第5実施形態に係る半導体レーザでは、速相軸方向に沿ってN個のチップを設け、レーザ光共鳴キャビティによって、N個のチップから発されたレーザ光について速相軸方向においてスペクトル合波を行うことで、半導体レーザの出力パワーを向上可能であり、1つのチップを有する半導体レーザよりも、出力パワーがN倍向上できる。
実施例六
【0159】
図7aは、本発明の第6実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図7bは、本発明の第6実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【0160】
本発明の第6実施形態に係る半導体レーザと第2実施形態との相違点は、速相軸方向にN個のチップが垂直となるように配列して外部キャビティスペクトル合波を行うことにある。同じ構造についてここで繰り返し説明しない。速相軸合波部分の構造および原理は、本発明の実施例五とも類似する。
【0161】
図7aと
図7bに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示し、本実施形態においてz軸の正方向を前とし、z軸の逆方向を後とする。
図7aに、前端面は、速相軸コリメート素子FACに近接する側であり、後端面は、速相軸コリメート素子FACから少し遠く離れた別の側である。
【0162】
当該半導体レーザは、半導体利得モジュール1を備え、当該半導体利得モジュール1は、半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、発光ユニット1-11、前端面、及び後端面を備える。
【0163】
発光ユニットは、上から下へ電極1-11B、光導波路領域1-11Cと利得領域1-11Aを備える。ただし、利得領域の遅相軸方向に沿う長さは、1mm~10cmである。ただし、利得領域1-11Aの中線は、レーザビーム断面1-11Aaである。
【0164】
説明すべきことは、1つの発光ユニットに対する利得領域の長さが1mm~10cmであり、M個の発光ユニットについて、M個の利得領域が光路において直列に接続され、各発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さが1mm~10cmである。
【0165】
半導体レーザは、レーザ光共鳴キャビティを更に備え、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングし、更に利得領域にマッチングする大モードエリア分布が半導体チップ1-1に形成されるように、発光ユニット1-11から発された半導体レーザ光を調整して遅相軸方向において共鳴させる。その一方、レーザ光共鳴キャビティは、更に、複数の半導体チップ1-1から発されたレーザ光を調整することで速相軸方向においてスペクトル合成を行う。
【0166】
1つの好適な実施形態では、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニット1-11から発された光の遅相軸に沿う長さと基本モードスポット直径2ω0の利得領域1-11Aの遅相軸方向における投影値との比が1~4であることを指す。
【0167】
半導体レーザは、速相軸コリメート素子FACを更に備え、発光ユニット1-11の前端面から所定距離fFACだけ離れた前方の位置に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする。
【0168】
更に、速相軸コリメート素子FACは、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、利得領域1-11Aの前端に、利得領域1-11Aの速相軸方向に沿って集束し、焦点距離fFACが0.3~1.5mmであり、利得領域1-11Aの遅相軸方向に沿う焦点距離が∞である。
【0169】
具体的に、半導体利得モジュール1は、N個の半導体チップ(N≧2)を備え、各半導体チップは、M個の発光ユニット1-11を備え、そのリッジストライブ幅が1~2mmである。ただし、M≧2であり、M個の発光ユニット1-11は、遅相軸方向に沿って直列に接続されている。
【0170】
好ましくは、N個の半導体チップ1-1は、速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向に互いに平行する。より好ましくは、N個の半導体チップ同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0171】
説明すべきことは、N個のチップが速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向と互いに平行してこそ、外部キャビティ光路のフィードバックの、速相軸方向におけるスペクトル合波を初めて実現できる。N個のチップが遅相軸方向に平行しなければ、外部キャビティを調整して速相軸方向においてスペクトル合波を行うことは、非常に困難である。また、N個のチップ同士が等間隔で配列し、レーザ光共鳴キャビティ内の放熱を均一にしつつ、レーザ光共鳴キャビティ内の光路が調整されやすくなる。
【0172】
好ましくは、M個の発光ユニット同士は、等距離で間隔をあけて配列する。M個の発光ユニット同士が等間隔で遅相軸方向に配列すると、レーザ光が共鳴キャビティ内で共鳴することは容易になる。
【0173】
レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において安定キャビティであり、レーザ光共鳴キャビティは、第4キャビティ鏡8、第3出力結合鏡9、ダハプリズム4、シリンドリカル変換レンズF、及び回折光学素子DOEを備える。
【0174】
第4キャビティ鏡8は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を半導体チップ1-1の後端面へ反射し、第3出力結合鏡9を介して出力する。
【0175】
ダハプリズム4は、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、M個の発光ユニット1-11から発されたレーザ光を利得領域1-11Aへ反射し、第3出力結合鏡9を介して出力する。好ましくは、ダハプリズム4は、M-1個ある。M-1個のダハプリズムは、取り付けが便利になるように、1つのダハプリズムとして製造されてもよい。
【0176】
シリンドリカル変換レンズFは、速相軸方向において所定焦点距離fが設定され、遅相軸方向の焦点距離が∞であり、利得領域1-11Aと回折光学素子DOEは、シリンドリカル変換レンズFの2つの焦点にそれぞれ設けられている。
【0177】
一例では、第4キャビティ鏡8の凹面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、第3出力結合鏡9には、出力レーザ光波長に対する部分透過膜がメッキされ、その透過率が40%より高く、半導体チップ1-1の前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、半導体チップ1-1の後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされ、速相軸コリメート素子FACの光通過面には、出力レーザ光に対する高透過率膜がメッキされている。
【0178】
本発明の第6実施形態に係る半導体レーザでは、レーザ光共鳴キャビティ内における光路の方向として、発光ユニット1-11から発されたレーザ光が速相軸コリメート素子FACを透過して第4キャビティ鏡8の表面に入射され、発光ユニット1-11の利得領域へ反射され、一部のレーザ光がダハプリズム4によって利得領域へ反射され、利得を経た後で速相軸コリメート素子FACを透過してそれぞれ2つの反射鏡とシリンドリカル変換レンズFとを経由して回折光学素子DOEに集束し、第3出力結合鏡9の表面へ反射され、第3出力結合鏡9を介して出力される。
【0179】
本発明の第6実施形態に係る半導体レーザは、以下のメリットを有する。
【0180】
(1)本発明の第6実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の、遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポットのサイズが発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力を実現できる。
【0181】
(2)本発明の第6実施形態に係る半導体レーザでは、半導体チップにM個の発光ユニットを設けており、1つの半導体チップに1つの発光ユニットを設ける半導体チップよりも、出力パワーがM倍向上できる。
【0182】
(3)本発明の第6実施形態に係る半導体レーザでは、速相軸方向に沿ってN個のチップを設け、レーザ光共鳴キャビティによって、N個のチップから発されたレーザ光について速相軸方向においてスペクトル合波を行うことで、利得モジュールの出力パワーを向上可能であり、1つのチップを有する半導体レーザよりも、利得モジュールの出力パワーがN倍向上できる。
実施例七
【0183】
図8aは、本発明の第7実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図8bは、本発明の第7実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【0184】
本発明の第7実施形態に係る半導体レーザは、第3実施形態と類似するが、相違点として、速相軸方向にN個のチップが垂直となるように配列して外部キャビティスペクトル合波を行うことにある。同じ構造について、ここで繰り返し説明しない。速相軸合波部分は、本発明の実施例五と類似する。
【0185】
図8aと
図8bに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示し、本実施形態においてz軸に沿う正方向を前とし、z軸の逆方向を後とする。
図8aに、前端面は、速相軸コリメート素子FACに近接する側であり、後端面は、速相軸コリメート素子FACから少し遠く離れた別の側である。
【0186】
当該半導体レーザは、半導体利得モジュール1を備え、当該半導体利得モジュール1は、半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、発光ユニット1-11、前端面、及び後端面を備える。
【0187】
発光ユニットは、上から下へ電極1-11B、光導波路領域1-11C、及び利得領域1-11Aを備える。ただし、利得領域の遅相軸方向に沿う長さは、1mm~10cmである。ただし、利得領域1-11Aの中線は、レーザビーム断面1-11Aaである。
【0188】
半導体レーザは、レーザ光共鳴キャビティを更に備え、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングし、更に利得領域にマッチングする大モードエリア分布が半導体チップ1-1に形成されるように、発光ユニット1-11から発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させる。その一方、レーザ光共鳴キャビティは、複数の半導体チップ1-1から発されたレーザ光を調整して速相軸方向においてスペクトル合成を行わせる。
【0189】
1つの好適な実施形態では、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニット1-11から発された光の遅相軸に沿う長さと基本モードスポット直径2ω0の利得領域1-11Aの遅相軸方向における投影値との比が1~4であることを指す。
【0190】
半導体レーザは、速相軸コリメート素子FACを更に備え、当該速相軸コリメート素子FACは、発光ユニット1-11の前端面から所定距離fFACだけ離れた前方の位置に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする。
【0191】
更に、速相軸コリメート素子FACは、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、利得領域1-11Aの前端に、利得領域1-11A速相軸方向に沿って集束し、焦点距離fFACが0.3~1.5mmであり、利得領域1-11Aの遅相軸方向に沿う焦点距離が∞である。
【0192】
具体的に、上記半導体チップには、N個の半導体チップ1-1が設けられ、N個の半導体チップ1-1は、速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向に互いに平行する。好ましくは、N個の半導体チップ同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0193】
説明すべきことは、複数の半導体チップが速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向と互いに平行してこそ、共鳴キャビティ内の光路は、速相軸方向においてフィードバックおよび合波を初めて実現できる。遅相軸方向が平行しなければ、共鳴キャビティの設計と調節は、非常に困難となる。複数の半導体チップ1-1同士が等距離で間隔をあけて速相軸方向に配列すると、速相軸方向におけるレーザ光合波の効果が比較的良好になり、放熱が均一になり、光路が調整されやすくなる。
【0194】
ただし、各半導体チップ1-1における発光ユニット1-11のリッジストライブ幅は、2~5mmであり、レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティである。
【0195】
より具体的に、レーザ光共鳴キャビティは、第5キャビティ鏡10、第6キャビティ鏡11、第4出力結合鏡12、シリンドリカル変換レンズF、及び回折光学素子DOEを備える。
【0196】
第5キャビティ鏡は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップ1-1へ反射し、第4出力結合鏡12の中心には、空洞が開設され、第4出力結合鏡12は、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、第6キャビティ鏡11は、空洞を通過したレーザ光を半導体チップ1-1へ反射する。
【0197】
更に、第5キャビティ鏡10は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられ、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、第4出力結合鏡12は、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内の光路とは所定角度αをなし、第6キャビティ鏡11は、凹面鏡であり、第4出力結合鏡12の前に設けられている。
【0198】
シリンドリカル変換レンズFは、速相軸方向に所定焦点距離fが設定され、遅相軸方向における焦点距離が∞である。
【0199】
利得領域1-11Aと回折光学素子DOEは、シリンドリカル変換レンズFの2つの焦点にそれぞれ設けられている。
【0200】
1つの好適な実施形態では、上記半導体レーザは、ヒートシンク13を更に備え、ヒートシンク13は、半導体チップ1-1の下に設けられて半導体チップ1-1を放熱させる。
【0201】
1つの好適な実施形態では、第5キャビティ鏡10と第6キャビティ鏡11との凹面には、高反射率膜がメッキされ、第4出力結合鏡12には、レーザ光(90-α)角度に対する高反射膜がメッキされ、半導体チップ1-1の前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、半導体チップ1-1の後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされている。
【0202】
本発明の第7実施形態に係る半導体レーザでは、遅相軸方向において、レーザ光が共鳴キャビティ内において発振することは、下記のようになる。発光ユニット1-11は、レーザ光を発し、一部のレーザ光が第4結合出力鏡12によって反射されて中空のレーザ光が出力され、別の一部のレーザ光が第4出力結合鏡12の中心の空洞を通過して第6キャビティ鏡11まで到達し、第6キャビティ鏡11で集光されて第4結合出力鏡12の空洞付近へ反射されて集束した後で発光ユニット1-11の利得領域1-11Aへ発散する。この部分のレーザ光は、利得領域1-11Aの利得を経た後、第5キャビティ鏡10の表面へ反射され、第5キャビティ鏡10のコリメートを経て当該発光ユニット1-11の利得領域1-11Aへ反射され、利得領域の利得を経た後、一部が第4出力結合鏡12の表面へ反射されて中空レーザ光出力を形成し、レーザ光が当該半導体レーザ内で絶えず発振し、中空レーザ光を引き続き出力する。
【0203】
本発明の第7実施形態に係る半導体レーザは、以下のメリットを有する。
【0204】
(1)本発明の第7実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の、遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポットのサイズが発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力を実現できる。
【0205】
(2)本発明の第7実施形態に係る半導体レーザでは、速相軸方向に沿ってN個のチップを設け、レーザ光共鳴キャビティによって、N個のチップから発されたレーザ光について速相軸方向においてスペクトル合波を行うことで、利得モジュールの出力パワーを向上可能であり、1つのチップを有する半導体レーザよりも、利得モジュールの出力パワーがN倍向上できる。
実施例八
【0206】
図9aは、本発明の第8実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図9bは、本発明の第8実施形態に係る半導体レーザの側面図である。
【0207】
本発明の第8実施形態に係る半導体レーザは、第4実施形態と類似するが、相違点として、速相軸方向にN個のチップが垂直となるように配列して外部キャビティスペクトル合波を行う。同じ構造について、ここで繰り返し説明しない。速相軸合波部分は、本発明の実施例五と類似する。
【0208】
図9aと
図9bに示すように、x軸は、遅相軸方向を示し、y軸は、速相軸方向を示し、z軸は、3次元空間の別の方向を示す。本実施形態において、z軸に沿う正方向を前とし、z軸の逆方向を後とする。
図9aに、前端面は、速相軸コリメート素子FACに近接する側であり、後端面は、速相軸コリメート素子FACから少し遠く離れた側である。
【0209】
当該半導体レーザは、半導体利得モジュール1を備え、当該半導体利得モジュール1は、半導体チップ1-1を備え、当該半導体チップ1-1は、発光ユニット1-11、前端面、及び後端面を備える。
【0210】
半導体レーザは、レーザ光共鳴キャビティを更に備え、当該レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングし、更に利得領域にマッチングする大モードエリア分布が半導体チップ1-1に形成されるように、発光ユニット1-11から発された半導体レーザ光を調整して遅相軸方向において共鳴させる一方、複数の半導体チップ1-1から発されたレーザ光を調整して速相軸方向においてスペクトル合成を行わせる。
【0211】
1つの好適な実施形態では、遅相軸方向における発光ユニット1-11の利得領域1-11Aのサイズが基本モードスポット半径ω0にマッチングするとは、単一の発光ユニット1-11から発された光の遅相軸に沿う長さと基本モードスポット直径2ω0の利得領域1-11Aの遅相軸方向における投影値との比が1~4であることを指す。
【0212】
半導体レーザは、速相軸コリメート素子FACを更に備え、当該速相軸コリメート素子FACは、発光ユニット1-11の前端面から所定距離fFACだけ離れた前方の位置に設けられ、発光ユニット1-11から発されたレーザ光を速相軸方向においてコリメートする。
【0213】
更に、速相軸コリメート素子FACは、短焦点距離シリンドリカル鏡であり、レーザ光共鳴キャビティ内に設けられ、利得領域1-11Aの前端に、利得領域1-11Aの速相軸方向に沿って集束し、焦点距離fFACが0.3~1.5mmであり、利得領域1-11Aの遅相軸方向に沿う焦点距離が∞である。
【0214】
具体的に、上記半導体利得モジュール1は、N個の半導体チップ1-1を備え、N個の半導体チップ1-1は、速相軸方向に垂直となるように配列し、遅相軸方向に互いに平行する。好ましくは、N個の半導体チップ1-1同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0215】
より具体的に、各半導体チップ1-1は、M個の発光ユニット1-11を備え、M≧2であり、そのリッジストライブ幅が2~5mmである。レーザ光共鳴キャビティは、遅相軸方向において非安定キャビティである。
【0216】
好ましくは、M個の発光ユニット1-11は、遅相軸方向に沿って直列に配列する。より好ましくは、M個の発光ユニット同士は、等距離で間隔をあけて配列する。
【0217】
以下では、レーザ光共鳴キャビティの構造を詳細に説明する。
【0218】
レーザ光共鳴キャビティは、第5キャビティ鏡10、第6キャビティ鏡11、第4出力結合鏡12、ダハプリズム4、シリンドリカル変換レンズF、及び回折光学素子DOEを備える。
【0219】
ただし、第5キャビティ鏡は、その表面に入射されたレーザ光を半導体チップ1-1へ反射し、第4出力結合鏡12の中心には、空洞が開設され、第4出力結合鏡12は、その表面に入射されたレーザ光を反射して出力し、第6キャビティ鏡11は、空洞を通過したレーザ光を半導体チップ1-1の利得領域へ反射する。
【0220】
具体的に、第5キャビティ鏡10は、凹面鏡であり、その凹面が発光ユニット1-11へ向けられ、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、第4出力結合鏡12は、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内の光路とは所定角度αをなし、第6キャビティ鏡11は、凹面鏡であり、第4出力結合鏡12の前に設けられている。
【0221】
ダハプリズム4は、速相軸コリメート素子FACの前に設けられ、レーザ光共鳴キャビティ内のレーザ光を利得領域1-11Aへ反射し、第4出力結合鏡12を介して出力する。
【0222】
好ましくは、ダハプリズム4は、M-1個ある。M-1個のダハプリズムは、更に、1つのダハプリズムとして製造可能である(例えば、M-1個のダハプリズムを1つのダハプリズムとして接着する)。
【0223】
シリンドリカル変換レンズFは、速相軸方向において所定焦点距離fが設定され、遅相軸方向の焦点距離が∞である。
【0224】
利得領域1-11Aと回折光学素子(DOE)は、シリンドリカル変換レンズFの2つの焦点にそれぞれ設けられている。
【0225】
1つの好適な実施形態では、第5キャビティ鏡10と第6キャビティ鏡11との凹面には、高反射率膜がメッキされ、第4出力結合鏡12には、レーザ光(90-α)角度に対する高反射膜がメッキされ、半導体チップ1-1の前端面には、出力レーザ光波長に対する高透過率膜がメッキされ、後端面には、出力レーザ光波長に対する高反射率膜がメッキされている。
【0226】
1つの好適な実施形態では、上記半導体レーザは、ヒートシンク13を更に備え、ヒートシンク13は、半導体チップ1-1の下に設けられて半導体チップ1-1を放熱させる。
【0227】
説明すべきことは、本発明の第8実施形態に係る半導体レーザは、遅相軸方向におけるレーザ光発振が実施例四と類似し、速相軸方向におけるレーザ光発振が実施例七と類似する。
【0228】
本発明の第8実施形態に係る半導体レーザは、以下のメリットを有する。
【0229】
(1)本発明の第8実施形態に係る半導体レーザでは、半導体レーザの利得領域の、遅相軸方向に沿う長さを1mm~10cmに設定すると同時に、レーザ光共鳴キャビティを設け、遅相軸方向の基本モードスポットのサイズが発光ユニットの利得領域の遅相軸方向に沿う長さにマッチングするように、発光ユニットから発された半導体レーザ光を調整することで遅相軸方向において共鳴させ、利得領域のハイパワーの出力能力を向上可能であるとともに、ビーム品質を改善し、M2<2の高ビーム品質の出力を実現できる。
【0230】
(2)本発明の第8実施形態に係る半導体レーザでは、半導体チップにM個の発光ユニットを設けており、1つの半導体チップに1つの発光ユニットを設ける半導体レーザよりも、出力パワーがM倍向上できる。
【0231】
(3)本発明の第8実施形態に係る半導体レーザでは、速相軸方向に沿ってN個のチップを設け、レーザ光共鳴キャビティによって、N個のチップから発されたレーザ光について速相軸方向においてスペクトル合波を行うことで、半導体レーザの出力パワーを向上可能であり、1つのチップを有する半導体レーザよりも、出力パワーがN倍向上できる。
【0232】
理解すべきことは、本発明の上記具体的な実施形態が単に本発明の原理を例示的に説明するか解釈するためのものであり、本発明に対する制限を構成しない。したがって、本発明の精神と範囲を逸脱しないでなされる如何なる変更、均等物による置換、改良等も、何れも本発明の保護範囲内に含まれる。また、本発明の添付する請求項は、添付する請求項の範囲とボーダー、またはこの種の範囲とボーダーの均等形式内に収まる全ての変化と変更例をカバーすることを意図する。
【符号の説明】
【0233】
1 半導体利得モジュール
1-1 半導体チップ
1-11 発光ユニット
1-11A 利得領域
1-11Aa レーザビーム断面
2 第1キャビティ鏡
3 第1出力結合鏡
4 ダハプリズム
5 第2キャビティ鏡
6 第3キャビティ鏡
7 第2出力結合鏡
8 第4キャビティ鏡
9 第3出力結合鏡
10 第5キャビティ鏡
11 第6キャビティ鏡
12 第4出力結合鏡
13 ヒートシンク
FAC 速相軸コリメート素子
F シリンドリカル変換レンズ
F’ 短焦点距離シリンドリカル変換レンズ
DOE 回折光学素子