(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】マルチセル誘導無線電力伝達システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20220704BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220704BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220704BHJP
H02M 3/335 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/10
H02J7/00 301D
H02M3/335 E
(21)【出願番号】P 2020549803
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 US2019023519
(87)【国際公開番号】W WO2019183441
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-10-26
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブソン,ボリス エス.
(72)【発明者】
【氏名】マコヴィエツ,サラ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ランゲリア,マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジャニック,マイケル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ジョージ イー.
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/001557(WO,A1)
【文献】特開平03-232207(JP,A)
【文献】特開2016-001692(JP,A)
【文献】特表2015-527048(JP,A)
【文献】特開2012-175806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0250623(US,A1)
【文献】特開2016-195512(JP,A)
【文献】特開2014-090528(JP,A)
【文献】特開2015-176898(JP,A)
【文献】Wu Hongfei,Secondary-Side Phase-Shift-Controlled Dual-Transformer-Based Asymmetrical Dual-Bridge Converter With Wide Voltage Gain,IEEE TRANSACTION ON POWER ELECTRONICS,INSTITUTE OF ELECTRICAL AND ELECTRONICS ENGENEERS, USA,米国,2015年,VOL. 30, NO.10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00
H02M 3/335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器システムであって:
複数の送信素子及び複数の受信素子を含むマルチセル誘導無線電力伝達システムであり、各送信素子が少なくとも1つの送信巻線と少なくとも1つの送信磁心とを含み、各受信素子が少なくとも1つの受信巻線と少なくとも1つの受信磁心とを含む、マルチセル誘導無線電力伝達システム;
入力電力信号を送信電力信号に変換して、前記複数の送信素子を駆動するように構成された送信電力変換回路;
前記複数の受信素子において受信された伝達された電力信号を出力電力信号に変換して、電気負荷を駆動するように構成された受信電力変換回路;
及び
前記送信電力変換回路及び前記受信電力変換回路と信号を通信し、前記複数の送信素子のうち個々の送信素子の
送信位相角度及び前記複数の受信素子のうち対応する個々の受信素子の受信位相角度の一方又は両方を能動的に調整して前記送信位相角度を前記受信位相角度に一致させるように構成されたコントローラ;
を含む電力変換器システム。
【請求項2】
前記複数の送信素子は、空隙によって前記受信素子から分離される、請求項1に記載の電力変換器システム。
【請求項3】
前記送信電力変換回路は、前記入力電力信号を受信するための一次電源に接続された入力と、前記複数の送信素子に接続された出力とを有する直流-交流変換器である、請求項2に記載の電力変換器システム。
【請求項4】
前記直流-交流変換器は、ブリッジ構成で接続された第1の複数のスイッチを含み、双方向デュアルアクティブブリッジ回路を
構成する第1ブリッジを形成する、請求項3に記載の電力変換器システム。
【請求項5】
前記受信電力変換回路は、前記複数の受信素子に接続されて前記伝達された電力信号を受信するための入力と、前記出力電力信号を送達するように構成された出力とを有するAC-DC変換器である、請求項4に記載の電力変換器システム。
【請求項6】
前記AC-DC変換器は、ブリッジ構成で接続された第2の複数のスイッチを含み、前記双方向デュアルアクティブブリッジ回路の
うちの第2のブリッジを形成する、請求項5に記載の電力変換器システム。
【請求項7】
前記双方向デュアルアクティブブリッジ回路の前記第1ブリッジは、前記第1の複数のスイッチのうちの一対のスイッチと、前記複数の送信素子のうちの1つの送信素子との間に接続されたフィルタ回路を含む、請求項6に記載の電力変換器システム。
【請求項8】
前記双方向デュアルアクティブブリッジ回路の前記第2のブリッジは、前記第2の複数のスイッチのうちの一対のスイッチと、前記複数の受信素子のうちの1つの受信素子との間に接続されたキャパシタを含む、請求項7に記載の電力変換器システム。
【請求項9】
前記複数の送信素子は、互いに直列に接続され、前記複数の受信素子は、互いに並列に接続される、請求項6に記載の電力変換器システム。
【請求項10】
第1セルの第1送信巻線が第1絶縁層上に形成され、第2送信巻線が前記第1絶縁層とは異なる第2絶縁層上に形成される、請求項1に記載の電力変換器システム。
【請求項11】
前記第1送信巻線と前記第2送信巻線とが互いに離れている、請求項10に記載の電力変換器システム。
【請求項12】
前記送信電力変換回路が第1の複数のスイッチを含み、前記受信電力変換回路が第2の複数のスイッチを含み、
前記コントローラが、
前記第1の複数のスイッチの第1スイッチング周波数及び前記第2の複数のスイッチの第2スイッチング周波数の一方又は両方を能動的に制御して、前記第1スイッチング周波数を前記第2スイッチング周波数に一致させ、それにより前記送信位相角度を前記受信位相角度に一致させるように構成された、請求項1に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力伝達システムに関するものであり、特に無線電力伝達システムに関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
誘導結合された電力伝達は、軍事的及び商業的用途において受け入れられつつある。進化する海底システムは、例えば、データ通信ネットワーク、物体検知及び検出システム、並びに車両ハブシステムを含む種々の軍事的及び商業的用途に役立つ。これらの広範囲な応用を実現するために、従来の誘導結合電力伝達デバイスは、実用的なエネルギー伝達を容易にするために複雑でない粗野な電力インタフェースを採用することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0003】
非限定的な実施形態によれば、マルチセル誘導無線電力伝達システムが、複数の送信素子を含む。各送信素子が少なくとも1つの送信巻線と少なくとも1つの送信磁心とを含む。マルチセル誘導無線電力伝達システムは、さらに、複数の送信素子を含む。前記複数の送信素子は、空隙によって前記受信素子から分離される。各受信素子は少なくとも1つの受信巻線と少なくとも1つの受信磁心とを含む。
【0004】
別の非限定的な実施形態によれば、電力変換器システムが、複数の送信素子、複数の受信素子、送信電力変換回路及び受信電力変換回路を含むマルチセル誘導無線電力伝達システムを含む。各送信素子は少なくとも1つの送信巻線と少なくとも1つの送信磁心とを含む。各受信素子は少なくとも1つの受信巻線と少なくとも1つの受信磁心とを含む。送信電力変換回路は、入力電力信号を送信電力信号に変換して、前記複数の送信素子を駆動するように構成される。受信電力変換回路は、前記複数の受信素子において受信された伝達された電力信号を出力電力信号に変換して、電気負荷を駆動するように構成される。
【0005】
さらに別の非限定的な実施形態によれば、充電システムが、車両を充電可能な充電ステーションを含む。車両は、充電テーションから独立して移動する。充電テーションは、複数の送信素子を含む。各送信素子が少なくとも1つの送信巻線及び少なくとも1つの送信磁心を含む。車両は、複数の受信素子を含む。各受信素子は、少なくとも1つの受信巻線及び少なくとも1つの受信磁心を含む。
【0006】
さらに別の非限定的な実施形態によれば、電力充電システムを制御する方法が提供される。本方法は、充電ステーション内に設けられた複数の送信素子のうちの少なくとも1つの送信素子を介して磁場を生成するステップを含む。磁場は、前記少なくとも1つの送信素子に含まれる少なくとも1つの送信磁心に隣接して配置された少なくとも1つの送信巻線に通電することに応答して生成される。本方法はさらに、複数の受信素子のうちの少なくとも1つの受信素子を含む車両を、前記磁場に近接して位置決めするステップを含む。磁場が、前記少なくとも1つの受信素子に含まれる少なくとも1つの受信磁心に隣接して配置された少なくとも1つの受信巻線を付勢する。本方法はさらに、前記少なくとも1つの受信素子を不勢することに応答して出力電力信号を生成するステップ、及び前記出力電力信号に基づいて前記車両のバッテリを充電するステップを含む。
【0007】
追加の特徴及び利点が、本発明の技術によって実現される。本発明の他の実施形態及び態様は、本明細書に詳細に記載されており、請求項に係る発明の一部とみなされる。利点及び特徴を有する本発明のより良い理解については、以下の説明及び図面を参照されたい。
【0008】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面及び詳細な説明に関連して、以下の簡単な説明に言及する。ここで、同様の参照番号は同様の部材を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】単一セル単一コイルの誘導無線電力伝達システムを示す図である。
【
図1B】単一セル単一コイルの誘導無線電力伝達システムを示す図である。
【
図2】単一セル単一コイルの誘導無線電力伝達システムにおいて生じる磁気結合及び漏洩磁場を示す。
【
図3A】非限定的実施形態に従ったマルチセル単一コイルの誘導無線電力伝達システムを示す図である。
【
図3B】非限定的実施形態に従ったマルチセル単一コイルの誘導無線電力伝達システムを示す図である。
【
図4】非限定的実施形態に従った、マルチセル単一コイルの誘導無線電力伝達システムから生じる磁気結合の増加及び漏洩磁場の減少を示す図である。
【
図5A】非限定的実施形態に従ったマルチセル、デュアルコイル誘導無線電力伝達システムを示す図である。
【
図5B】非限定的実施形態に従ったマルチセル、デュアルコイル誘導無線電力伝達システムを示す図である。
【
図6】非限定的実施形態に従ったマルチセル誘導無線電力伝達システムを駆動するように構成された電力変換器を示す。
【
図7A】非限定的実施形態に従った、マルチセル、デュアルコイル誘導無線受信システムを含む自律無人車両(UV)と、マルチセル、デュアルコイル誘導無線送信システムを含むUV充電システムとを示す図である。
【
図7B】非限定的実施形態に従ったUV充電システムにドッキングされている
図7Aの自律無人車両(UV)を示す図である。
【
図8】非限定的実施形態に従った、マルチセル、トリプルコイル誘導無線受信システムを含む自律無人車両(UV)と、マルチセル、トリプルコイル誘導無線送信システムを含むUV充電システムとを示す図である。
【
図9A】UV充電システムの送信コイルに対して不整合な位相を伴う受信コイルを有するマルチセルを含む自律無人車両(UV)を示す図である。
【
図9B】UV充電システムの送信コイルに対して同期されるように能動的に再構成される位相を伴う受信コイルを有するマルチセルを含む自律無人車両(UV)を示す。
【
図10A】マルチセル誘導無線電力伝達システムに含まれる位相信号の損失に続く出力電力を示す信号図である。
【
図10B】マルチセル誘導無線電力伝達システムにおける位相信号のバランスを回復した後の出力電力を示す信号図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
単一セル電力伝達システム100(
図1A~1B参照)は、単一の送信コイルと単一の受信コイルとの間の誘導結合エネルギー伝達を容易にするように開発されてきた。これらの単一セル電力伝達システム100は、単一送信(XMT)素子102と単一受信(RCV)素子104とを含み、これらは共に単相電力信号10を出力する。送信素子102は、送信コイル106及び送信磁心(magnetic core)108を含む。受信素子104は、受信コイル110及び受信磁心112を含む。送信素子102と受信素子104は、距離dだけ互いに離間されているが、互いにエネルギーを誘導的に伝達することができる。単相信号によって駆動される単一セルの使用は、過剰な漏洩磁場116に伴い、強く変動する入出力を生成し、非効率的なエネルギー伝達に寄与してしまう(
図2参照)。
【0011】
本明細書に記載される様々な非限定的な実施形態は、漏洩磁場の量を減少させながら、送信素子と受信素子との間の電力伝達の効率を改善することが可能なマルチセル誘導無線電力伝達システムを提供する。このようにして、単一セル電力伝達システムと比較して、エネルギー伝達構成要素の体積が小さい誘導無線電力伝達システムが提供される。
【0012】
次に、
図3A及び3Bを参照すると、非限定的な実施形態に従って、マルチセル、単一コイル誘導無線電力伝達システム300が示されている。マルチセル単一コイル誘導無線電力伝達システム300は、第1送信素子302a、第2送信素子302b、第1受信素子304a及び第2受信素子304bを含む。第1送信素子及び第2送信素子302a、302bは、分離距離(d)を定める空隙(air gap)によって、第1受信素子及び第2受信素子304a、304bから分離されている。例えば、直径が約60~80mmの送信素子302a、302bと、直径が約40~60mmの受信素子304a、304bとの間の距離(d)は、例えば、約10ミリ(mm)~約20mmの範囲である。複数の送信素子302a、302b及び複数の受信素子304a、304bを提供することによって、マルチセル誘導無線電力伝達システム300は、単相出力電力信号(
図2参照)ではなく、多相(例えば、2相)の電力信号305を出力することができる。
【0013】
第1送信素子302aは、第1送信巻線306a及び第1送信磁心308aを含む。第2送信素子302bは、第2送信巻線306b及び第2送信磁心308bを含む。少なくとも一実施例では、第1送信巻線306aは、第1送信磁心308aに対して垂直に配置(例えば積層)され、第1送信巻線306aは、第1絶縁層320a上に又は接して形成される(
図3B参照)。空隙が、第1送信巻線306aを第1送信磁心308aから距離(d)だけ離すことができる。同様に、第2送信巻線306bは、第2送信磁心308bに対して垂直に配置される(例えば、積層される)。第2の送信巻線306bは、第2絶縁層320b上に又は接して形成され(
図3B参照)、空隙が、第2送信巻線306bを第2送信磁心308bから距離(d)だけ離すことができる。
【0014】
第1受信素子304aは、第1受信巻線310a及び第1受信磁心312aを含む。第2受信素子304bは、第2受信巻線310b及び第2受信磁心312bを含む。少なくとも一実施形態において、第1受信巻線310aは、第1受信磁心312aに対して垂直に配置される(例えば、積層される)。第1受信巻線310aは、絶縁層322a上に又は接して形成され(
図3B参照)、空隙が、第1受信巻線310aを第1受信磁心312aから分離することができる。同様に、第2受信巻線310bは、第2受信磁心312bに対して垂直に配置される(例えば、積層される)。第2受信巻線310bは、第2絶縁層322b上に又は接して形成され(
図3Bを参照)、空隙が第2受信巻線310bを第2受信磁心312bから分離することができる。
【0015】
送信磁心308a及び308b、ならびに受信磁心312a及び312bは、例えば、ニッケル-亜鉛フェライト材料、マンガン-亜鉛フェライト材料その他の所定の用途に適した代替材料などの種々の磁性材料から形成することができる。巻線306a、306b、310a及び310bは、それぞれ導電性材料で構成することができる。少なくとも一実施形態では、送信巻線306a、306b、及び受信巻線310a、310bは、螺旋形状を有し、それぞれの絶縁層320a、320b、322a及び322bの上の直接導電性トレースとして形成される。
【0016】
複数のセル(N)、すなわち、複数の送信素子302a、302b及び複数の受信素子304a、304bの実装により、磁場400の重複(overlapping)が可能となり、それにより送信素子302a、302bと受信素子304a、304bとの間の電力変動が低減される(
図4参照)。さらに、漏洩磁場402の量が減少し、それによりマルチセル誘導無線電力伝達システム300のエネルギー伝達効率が改善される。
【0017】
上述のマルチセル誘導無線電力伝達システム300は、各個々の素子302a、302b、304a、304bにそれぞれ単一の巻線306a、306b、3100a、3100bを有するように示されているが、本発明はこれに限定されない。
【0018】
図5A及び
図5Bを参照すると、例えば、非限定的な実施形態に従った、マルチセル、デュアルコイル誘導無線電力伝達システム500が示されている。第1送信素子302aは、複数の送信巻線306a及び307aと、1つ以上の送信磁心308aとを含む。第2送信素子302bは、複数の送信巻線306b及び307bと、1つ以上の送信磁心308bとを含む。二次素子304a及び304bは、同様の方法で構成される。例えば、第1受信素子304aは、複数の受信巻線310a及び311aと、1つ以上の受信磁心312aとを含む。第2受信素子304bは、複数の受信巻線310b及び311bと、1つ以上の受信磁心312bとを含む。送信素子302a、302b、及び受信素子304a、304bは、2つの巻線を含むように示されているが、素子302a、302b、304a及び304bは、追加の巻線(3、5、7など)を含んでもよい。送信素子302a、302b、及び受信素子304a、304bの各々は、複数の磁心308a、308b、312a、及び312bを含むこともできる。
【0019】
図示されていないが、所定の送信巻線306a~306b及び307a~307bは、個々の送信磁心に対して垂直に配置することができる。したがって、所定の送信素子302a、302bに含まれる送信磁心の数は、所定の送信素子302a、302bに含まれる送信巻線の数と一致する。同様に、所定の受信巻線310a~310b及び311a~311bを、個々の受信磁心に対して垂直に配置することができる。したがって、所定の受信素子304a及び304bに含まれる受信磁心の数は、所定の受信素子304a及び304bに含まれる受信巻線の数と一致する。
【0020】
次に、
図6を参照すると、マルチセル誘導無線電力伝達システム300で動作するように構成された電力変換システム600が、非限定的な実施形態に従って図示されている。マルチセル誘導無線電力伝達システム300は、複数の送信素子302a、302bと、複数の受信素子304a、304bとを含む。各送信素子302a、302bは、少なくとも1つの送信巻線306a、306bと、少なくとも1つの送信磁心308a、308bとを含む。同様に、各受信素子304a及び304bは、少なくとも1つの受信巻線310a及び310bと、少なくとも1つの受信磁心312a及び312bとを含む。1つ以上の実施形態において、送信素子302a及び302bは互いに直列に接続され、受信素子304a及び304bは互いに並列に接続される。しかしながら、送信素子302a、302b及び受信素子304a、304bは、本発明の範囲から逸脱することなく、他の構成で接続することができることが理解されるべきである。
【0021】
電力変換システム600は、送信電力変換回路602及び受信電力変換回路604をさらに含む。送信電力変換回路602は、入力DC電力信号(VIN)を、複数の送信素子302a、302bを駆動して磁場400を生成する送信AC電力信号に変換するように構成される。磁場400のエネルギーは、空隙を横切って受信素子304a及び304bに伝達され、そこで電力信号を生成するために利用される。
【0022】
なお、
図6を参照すると、送信電力変換回路602は、入力電力信号V
INを受信するためにDC一次電源に接続された入力と、送信素子302a及び302bに接続された出力とを有する直流/交流(DC-AC)変換器として構成される。少なくとも1つの実施例では、送信電力変換回路602は、ブリッジ構成で接続された複数のスイッチQ1、Q2、Q3及びQ4を含み、双方向デュアルアクティブブリッジ(bi-directional dual active bridge, DAB)回路の第1ブリッジ606を形成する。
図6におけるスイッチQ1乃至Q8で構成される回路を双方向デュアルアクティブブリッジと呼ぶ。スイッチQ1、Q2、Q3及びQ4は、バイポーラ・トランジスタ、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBTs)、ダイオード、リレー、及びP型又はN型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFETs)を含むが、これらに限定されない、種々のスイッチングデバイスを使用して実装することができる。1つ以上の実施形態では、双方向DAB回路606は、インダクタ(L
R)と直列に接続されたキャパシタ(C
r1)を含む共振回路608も含む。共振回路608は、複数のスイッチ(Q1~Q4)間の一対のスイッチ(例えば、Q1及びQ2)と複数の送信素子(例えば、306a及び306b)間の送信素子(例えば、306a)との間に接続することができる。
【0023】
受信電力変換回路604は、複数の受信素子304a,304bによって生成された伝達された電力信号を出力DC電力信号(VOUT)に変換して、電気負荷を駆動するように構成される。受信電力変換回路604は、受信素子304a、304bに接続され、転送された電力信号を受信する入力と、DC出力電力信号(VOUT)を負荷に送達するように構成された出力とを有するAC-DC変換器として構成される。少なくとも1つの実施形態において、受信電力変換回路604は、ブリッジ構成で接続された第2の複数のスイッチQ5、Q6、Q7及びQ8を含み、双方向DAB回路の第2のブリッジ610を形成する。第2の複数のスイッチQ5、Q6、Q7及びQ8は、バイポーラ・トランジスタ、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBTs)、ダイオード、リレー、及びP型又はN型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFETs)を含むが、これらに限定されない、種々のスイッチングデバイスを使用して実装することができる。少なくとも1つの実施形態において、第2のDAB回路610は、受信素子304a及び304bと第2の複数のスイッチ(Q5~Q8)の中の一対のスイッチ(例えばQ5とQ6)との間に接続されたキャパシタ(Cr2)を含む。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、電力変換システム600は、送信電力変換回路602及び受信電力変換回路604を制御するように構成された1つ又は複数の電子ハードウェアコントローラ612をさらに含む。少なくとも1つの実施形態において、コントローラ612は、位相シフト信号によって個々の素子302a~302b及び304a~304bを駆動することができる。信号の位相シフト角は、ψ=2πNとして定義することができ、ここで、「N」は、コントローラ612によって制御される送信素子302n及び/又は受信素子304nの数である。また、コントローラ612は、送信素子302a、302b及び/又は受信素子304a、304bの位相を能動的に調整することができ、それにより送信電力変換回路602及び受信電力変換回路604が、スイッチQ1~Q4及びQ5~Q8を駆動するために使用されるクロックスイッチング周波数に対して同じ位相で動作する。
【0025】
コントローラ612はまた、フィードバック送信データリンク614を介して、送信電力変換回路602に関するフィードバック情報を得ることができる。フィードバック情報は、スイッチQ1~Q4のスイッチング周波数、入力電力(VIN)、送信電力変換回路602によって生成された出力電流、及び送信素子302a及び302bに送達された変換電力信号を含むことができるが、これらに限定されない。フィードバックデータ614に基づいて、コントローラ612は、スイッチQ1~Q4のうちの1つ以上を駆動するための1つ以上の制御信号616を生成することができる。少なくとも1つの実施形態において、制御信号616は、スイッチQ1~Q4のスイッチング時間を能動的に調整する位相シフト変調信号であり得る。
【0026】
同様に、コントローラ612は、フィードバック受信データリンク618を介して、受信電力変換回路604に関するフィードバック情報を得ることができる。このフィードバック情報は、スイッチQ5-Q8のスイッチング周波数、出力電力(VOUT)、受信電力変換回路604によって生成された出力電流、及び受信素子304a及び304bによって生成された伝達電力信号を含むことができるが、これらに限定されない。フィードバックデータ618に基づいて、コントローラ612は、1つ以上のスイッチQ5-Q8を駆動するための1つ以上の制御信号620を生成することができる。少なくとも1つの実施形態において、制御信号620は、スイッチQ5-Q8のスイッチング時間を能動的に調整する位相シフト変調信号であり得る。
【0027】
次に、
図7A及び7Bを参照すると、マルチセル誘導無線電力伝達システムを実施する電力充電システム700が、非限定的な実施形態に従って示されている。電力充電システム700は、車両704にエネルギーを伝達するように構成された充電ステーション702を含む。このようにして、充電ステーション702から独立してかつ分離して移動する車両704は、動作電力を維持するために充電することができる。車両704は、有人車両又は無人車両(UV)を含むことができる。UVは、非限定的に、無人航空機、無人水中機(UUV)、又はその他のタイプのUV又はドローンを含むことができる。任意の構成において、車両は、電力充電システム700によって生成された出力電力を受け取ることに応答して充電される(すなわち、通電される)再充電可能バッテリ(例えば、電気負荷)を含む。
【0028】
充電ステーション702は、複数の送信素子302と、電子ハードウェア送信コントローラ706とを含む。各送信素子302は、1つ以上の送信巻線306a、306b、及び1つ以上の送信磁心308を含む。図示されていないが、充電ステーション702は、本明細書(
図6参照)に記載されているように、電力変換システム又は電力変換システムの一部、例えば送信電力変換回路を含むことができる。従って、送信コントローラ706は、充電ステーション702に設置された送信電力変換回路のスイッチQ1~Q4を駆動するために使用されるクロックスイッチング周波数の位相を設定することができる。したがって、充電ステーション702は、送信素子に含まれる(例えば、送信電力変換回路に含まれる)少なくとも1つの送信磁心に隣接して配置された1つ以上の送信巻線に通電することに応答して、磁場を生成することができる。
【0029】
充電ステーション702はさらに、車両704を受け入れるように構成されたドック(dock)708を含む。少なくとも1つの実施例では、ドック708は、車両704を受け入れる大きさのキャビティ708として構成される。このようにして、車両708はキャビティ内へと移動するように操縦され、それによって充電ステーション702(
図7B参照)にドッキングされる(例えば機械的に結合される)。ドッキングされると、車両704は、充電ステーション702から無線で伝達される受電に応答して再充電され得る。ドック708は、充電ステーション702内に形成されたキャビティとして説明されるが、本発明の範囲から逸脱することなく無線電力伝達を容易にするために、充電ステーション702に近接して車両704を機械的に結合することができる他の設計も理解されるべきである。
【0030】
車両704は、複数の受信素子304及び受信コントローラ710を含む。各受信素子304は、1つ以上の受信巻線310a,310b及び1つ以上の磁心312を含む。図示されていないが、車両704は、本明細書(
図6参照)に記載されているように、電力変換システム又はその一部、例えば、受信電力変換回路を含むことができる。受信電力変換器回路は、車両704に搭載された再充電可能バッテリに電気的に接続することができる。したがって、受信コントローラ710は、車両704に設置された受信電力変換回路のスイッチQ5~Q8を駆動するために使用されるクロックスイッチング周波数の位相を設定することができる。次いで、受信電力変換器回路によって生成された出力電力は、バッテリに送達されることにより、バッテリが再充電される。
【0031】
送信素子302及び受信素子304は、それぞれ、2つの巻線306a~306b及び310a~310bを含むように示されているが、各素子302及び304には、より多くの巻線を含めることができることが理解されるべきである。
図8を参照すると、例えば、送信素子302及び受信素子304は、それぞれ、3つの巻線306a~306c及び310a~310cを含むことができる。これらの追加の巻線は、システム700全体の冗長性を提供し、耐故障性を改善することができる。
【0032】
好ましいシナリオでは、車両704は、受信素子304が送信素子302と整列し、受信素子304(すなわち、受信コイル310)の位相が送信素子302(すなわち、送信コイル306)の位相と整合するように、充電ステーション702にドッキングする。しかしながら、機械的整列が電気信号と一致しないシナリオにおいては、所定の受信フェーズ(RCV
N)が割り当てられた1つ以上の受信素子304が、所定の送信フェーズ(XMT
N-L)が割り当てられたそれぞれの送信素子302と整合され得る。
図9Aに示されるように、第1送信素子302aは第1位相(例えば、位相1)に設定され、一方、近接する第1受信素子304aは、最初は異なる位相(例えば、位相5)に設定される。同様に、第2送信素子302bは、第2位相(例えば、位相5)に設定され、一方、近接する第2受信素子304bは、最初異なる位相(例えば、位相1)に設定される。
【0033】
図9Bを参照すると、送信コントローラ706及び受信コントローラ710は、各受信素子304の位相を決定するために互いに通信し、所与の受信素子304nの位相(RCV
N)が所与の送信素子302
nの位相(XMT
N)と整合するかどうかを決定することができる。1つ以上の受信素子(例えば、304a及び304b)の位相が、それぞれの送信素子(例えば、302a及び302b)の位相と一致しない場合、送信コントローラ706及び/又は受信コントローラ710は、セルの位相を調整することができる。このようにして、素子302及び/又は304の位相は、
図9Bに示すように、互いに位相一致(すなわち、整合位相)に達するように、能動的に調整することができる。例えば、受信素子304aは、送信素子302aの位相と一致するように、位相5から位相1に再構成することができる。同様に、受信素子304bは、送信素子302bの位相と一致するように、位相1から位相5に再構成することができる。したがって、出力電力品質及び充電効率は、送信素子及び受信素子の位相が不整合であるシステムと比較して、最適化又は改善することができる。
【0034】
送信コントローラ706及び受信コントローラ710はまた、充電システム700が位相を失うか(例えば、コイルが故障か)どうかを判定するためにも、互いに通信することができる。
図10Aは、例えば、5相システムに含まれる1つの位相の損失(例えば、故障したコイル)後の、マルチセル誘導無線電力伝達システムによって生成される出力電力を示す。位相結果の損失は、全出力電力信号の不平衡位相を生じ、これは、より低い周波数リップル(ripple)を生じ、構成要素内の応力を増加させ、電力伝達効率を低下させる。また、リップルの増加は、システムが電力品質要件及び定格を満たすことを妨げる可能性がある。
【0035】
位相が失われている(例えば、コイルが故障している)と判定された場合、送信コントローラ706及び受信コントローラ710は、失われた位相(すなわち、故障したコイル)を識別し、残りの位相を新しい同期周波数に再割り当てして、全出力電力信号の位相バランスを回復することができる。このようにして、位相バランスは、より低い位相で復元され、これは、
図10Bに示されるような従前のリップルを低減する。送信コントローラ706及び受信コントローラ710はまた、識別された故障セル又はコイルを置き換える冗長セル又はコイルを起動することができる。
【0036】
本明細書に記載されるように、種々の非限定的な実施形態は、漏洩磁場の量を減少させながら、送信素子と受信素子との間の電力変動を低減することが可能なマルチセル誘導無線電力伝達システムを提供する。マルチセル誘導無線電力伝達システムは、送受信素子を駆動するために使用されるスイッチの位相及びスイッチング周波数を能動的に調整することができる電力変換システムで実現することができる。このようにして、単一セル電力伝達システムと比較して、改善されたエネルギー伝達効率を有する誘導無線電力伝達システムが提供される。
【0037】
特許請求の範囲にある対応する構造、材料、行為及び全ての機能手段又は機能ステップは、特許請求の範囲に規定された他の構成要件と組み合わせて、任意の構造、材料又は機能達成行為を含むものである。本明細書の説明は、例示及び説明の目的で提示されてきたが、開示された形態の本発明を網羅したり又は限定することを意図したものではない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には多くの修正及び変形が明らかであろう。実施形態は、本発明の原理及び実際の用途を最もよく説明し、当業者が、意図される特定の用途に適した種々の修正を施した種々の実施形態について本発明を理解することを可能にするために選択され、説明された。
【0038】
本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、当業者は、現在及び将来とも、以下の特許請求の範囲の範囲内にある種々の改善及び強化を行うことができることが理解されるであろう。これらのクレームは、最初に記載された発明に対する適切な保護を維持すると解釈されるべきである。