(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】勾配型自動車用膨張水タンク
(51)【国際特許分類】
F01P 11/00 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
F01P11/00 C
(21)【出願番号】P 2020556950
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 CN2019082801
(87)【国際公開番号】W WO2019201226
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】201810354290.8
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】シァォ,クゥイヂゥー
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-264136(JP,A)
【文献】特開2000-073763(JP,A)
【文献】特開2014-043863(JP,A)
【文献】実開昭54-141603(JP,U)
【文献】実開昭61-145827(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108397275(CN,A)
【文献】中国特許第103161560(CN,B)
【文献】中国実用新案第203420776(CN,U)
【文献】中国実用新案第206054077(CN,U)
【文献】中国実用新案第206600198(CN,U)
【文献】中国実用新案第208281036(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1682832(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タンク本体(8)と水分離板(4)とを含み、水タンク本体(8)の内部が、高さの異なる2つの水分離板(4)によって、ハイチャンバー(9)、ミドルチャンバー(10)及びローチャンバー(11)に仕切られており、各チャンバーの頂部が連通しており、底部に出水口(5)がそれぞれ設けられ、前記水タンク本体(8)の頂部に注入口(1)が設けられて
おり、
前記ハイチャンバー(9)、前記ミドルチャンバー(10)及び前記ローチャンバー(11)のいずれの頂部にも、チャンバーを密閉するための水遮断板(3)が設けられており、前記水遮断板(3)には、少なくとも1つの水位バランスポート(6)が設けられている
ことを特徴とする勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項2】
前記ハイチャンバー(9)、前記ミドルチャンバー(10)及び前記ローチャンバー(11)の頂部の水遮断板(3)は、水平に設けられ、高さが順次低くなり、勾配型構造をなしている
ことを特徴とする請求項
1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項3】
2つの前記水分離板(4)の高さが、その両側に位置する前記水遮断板(3)の水平位置よりも高い
ことを特徴とする請求項
1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項4】
前記水タンク本体(8)、前記水分離板(4)及び前記水遮断板(3)には、高分子材料が用いられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項5】
前記水位バランスポート(6)が前記水遮断板(3)の
中央位置に設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項6】
前記水タンク本体(8)の上部に気体放出口(2)が設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項7】
前記水タンク本体(8)の下部には、前記ローチャンバー(11)に連通した注入量調整口(7)が設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項8】
前記注入口(1)が前記ハイチャンバー(9)に対応しており、前記注入口(1)の上方に給水カバープレートが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【請求項9】
前記ハイチャンバー(9)、前記ミドルチャンバー(10)及び前記ローチャンバー(11)のいずれの内部にも、水位センサが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の勾配型自動車用膨張水タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新エネルギー自動車のマルチ冷却システムの技術分野に関し、特に、勾配型自動車用膨張水タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー自動車は、自動車産業の新興分野である。車両の動力系には、2~3セットの相互に独立した冷却システムを装備する必要があり、いずれの冷却システムにも、膨張水タンクを装備する必要がある。新エネルギー自動車のモータ、モータコントローラの冷却水は65℃以下の入口温度が必要であり、パワーバッテリの冷却水は35℃以下の入口温度が必要である。水温の違いにより、冷却システム及び注入口の共用は非常に困難である。ハイブリッド自動車には、さらにエンジンの冷却システムが備えられており、エンジンの冷却システムの入水口の温度は約90℃である。3セットの冷却システムは、冷却水の温度差のために共用できない。その結果、車両全体の注入口が統合できず、エンジンルームのレイアウトスペースが限られており、車両全体のレイアウトが困難になり、ユーザによる使用やメンテナンスが不便であり、日常のメンテナンスに高いコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記課題について、本発明は、従来の自動車用膨張水タンクが独立に設けられており、共用できないため、車両全体の注入口を統合することができず、車両全体のレイアウトが困難になり、ユーザによる使用やメンテナンスが不便であるという問題を解決するために、勾配型自動車用膨張水タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術案が用いられている。
【0005】
勾配型自動車用膨張水タンクは、水タンク本体と水分離板とを含み、水タンク本体の内部が、高さの異なる2つの水分離板によって、ハイチャンバー、ミドルチャンバー及びローチャンバーに仕切られており、各チャンバーの頂部が連通しており、底部に出水口がそれぞれ設けられ、前記水タンク本体の頂部に注入口が設けられている。
【0006】
好ましくは、前記ハイチャンバー、前記ミドルチャンバー及び前記ローチャンバーのいずれの頂部にも、水平に設けられた水遮断板が設けられており、前記水遮断板には、少なくとも1つの水位バランスポートが設けられている。
【0007】
好ましくは、前記ハイチャンバー、前記ミドルチャンバー及び前記ローチャンバーの頂部の水遮断板は、高さが順次低くなり、勾配型構造をなしている。
【0008】
好ましくは、2つの前記水分離板の高さが、その両側に位置する前記水遮断板の水平位置よりも高い。
【0009】
好ましくは、前記水タンク本体、前記水分離板及び前記水遮断板には、高分子材料が用いられている。
【0010】
好ましくは、前記水位バランスポートが前記水遮断板の中央位置に設けられている。
【0011】
好ましくは、前記水タンク本体の上部に気体放出口が設けられている。
【0012】
好ましくは、前記水タンク本体の下部には、前記ローチャンバーに連通した注入量調整口が設けられている。
【0013】
好ましくは、前記注入口が前記ハイチャンバーに対応しており、前記注入口に給水カバープレートが設けられている。
【0014】
好ましくは、前記ハイチャンバー、前記ミドルチャンバー及び前記ローチャンバーのいずれの内部にも、水位センサが設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の利点及び有益な効果としては、本発明は、モータ、パワーバッテリ及びエンジンの冷却システムの注入装置を統合し、車両全体のレイアウトスペースを削減し、利用者による使用に便利である。
【0016】
本発明は、勾配構造を使用することにより、エンジン、モータ、パワーバッテリの冷却システムへの注入を統一させることができ、勾配構造の追加により、水に対して領域的な障壁ができて、急な坂に遭遇しても、水同士の混ざり合いを防ぐことができ、平坦な路面を走行するように回復すると、各独立システムの水が迅速に回復する。
【0017】
本発明では、チャンバーの使用は、正常に作動する際の水の温度に応じて定義でき、こうして、水温放射作用を低減することができる。チャンバーの左右の距離及び水遮断板の高さの差は、具体的な応用環境に応じて柔軟に定義できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明における水遮断板の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従来の自動車用膨張水タンクでは、エンジン、モータ、パワーバッテリの冷却システムの注入口が独立に設けられており、共用できないため、車両全体の注入口を統合することができず、車両全体のレイアウトが困難になり、ユーザによる使用やメンテナンスが不便である。
【0020】
上記課題について、本発明は、勾配構造を使用することにより、エンジン、モータ、パワーバッテリの冷却システムの注入装置を統一させ、車両全体のレイアウトスペースを削減し、利用者による使用に便利である。勾配構造の追加により、水に対して領域的な障壁ができて、急な坂に遭遇しても、水同士の混ざり合いを防ぐことができ、平坦な路面を走行するように回復すると、各独立システムの水は迅速に回復する。
【0021】
本発明の目的、技術案及び利点がさらに明確になるように、以下、図面及び具体的な実施例を参照して、本発明を詳しく説明する。
【0022】
図1に記載のように、本実施例による勾配型自動車用膨張水タンクは、水タンク本体8と水分離板4とを含み、水タンク本体8の内部は、高さの異なる2つの水分離板4によってハイチャンバー9、ミドルチャンバー10及びローチャンバー11に仕切られており、ハイチャンバー9、ミドルチャンバー10及びローチャンバー11の頂部が連通しており、底部に出水口5がそれぞれ設けられ、水タンク本体8の頂部に注入口1が設けられている。
【0023】
ハイチャンバー9、ミドルチャンバー10及びローチャンバー11のいずれの頂部にも、各チャンバーを密閉するための水遮断板3が設けられており、水遮断板3は、車両の運転中に、隣接するチャンバー内の水の混ざり合いを防止または緩和することができる。ハイチャンバー9、ミドルチャンバー10及びローチャンバー11の頂部の水遮断板3は、水平に設けられ、高さが順次低くなり、勾配型構造をなしている。
【0024】
図2に示すように、各水遮断板3に少なくとも1つの水位バランスポート6が設けられており、水位バランスポート6が水遮断板3の
中央位置に設けられている。本実施例において、チャンバーの内部及び外部の液体を平衡させるために、水遮断板3には、3つの水位バランスポート6が設けられている。
【0025】
2つの水分離板4の高さが、水タンク本体8の頂部よりも低く、その両側に位置する水遮断板3の水平位置よりも高く、即ち、ハイチャンバー9とミドルチャンバー10との間に位置する水分離板4の高さが、ハイチャンバー9及びミドルチャンバー10の頂部の水遮断板3の水平高さよりも高く、ミドルチャンバー10とローチャンバー11との間に位置する水分離板4の高さが、ミドルチャンバー10及びローチャンバー11の頂部の水遮断板3の水平高さよりも高い。
【0026】
注入口1がハイチャンバー9に対応しており、注入口1に給水カバープレートが設けられており、給水カバープレートが、水タンク本体8を密閉し、冷却液の損失を減らし、システムの作動圧力を向上させることができるとともに、カバープレートを開いて圧力を解放したり、必要な冷却液を注入したりすることができる。
【0027】
水タンク本体8の上部には、水平に設けられた気体放出口2が設けられている。本実施例において、水タンク本体8の上部には、2つの気体放出口2が対称に設けられており、2つの気体放出口2は、それぞれ、ハイチャンバー9及びローチャンバー11の上端に設けられている。
【0028】
水タンク本体8の下部には、ローチャンバー11に連通した注入量調整口7が設けられており、注入量調整口7が、ローチャンバー11内の冷却液の液面の高さを制御するために使用される。ハイチャンバー9、ミドルチャンバー10及びローチャンバー11のいずれの内部にも水位センサが設けられており、水位が低すぎるかまたは高すぎる場合に即時に警告する。
【0029】
水タンク本体8、水分離板4及び水遮断板3には、PP材等の低伝導率の耐熱性高分子材料が用いられており、断熱効果が良く、各チャンバーは、相互の間の熱伝達が発生せずに、独立して作動できる。水タンク本体8は、透明性を有し、各チャンバー内の液面の高さが見える。水タンク本体8の出水口5及び気体放出口2の数は、実際の需要に応じて増減できる。
【0030】
ローチャンバー11、ミドルチャンバー10及びハイチャンバー9の幅L1、L2、L3は、それぞれの水循環の冷却量要件に応じて調整でき、ハイチャンバー9、ミドルチャンバー10及びローチャンバー11の上部チャンバーの体積と下部の冷却液の体積の比は、高温及び低温冷却システムの冷却液の総膨張空間要件に従って決定できる。各水遮断板3と水分離板4の頂部との間の距離H1、H2、H3及び2つの水分離板4間の高さの差H4は、車両の使用環境及び水交換量の制御に従って調整できる。チャンバーの使用は、冷却液の実際の作動温度に応じて定義でき、相互の間の熱放射量を減らすことができる。
【0031】
本実施例において、ハイチャンバー9の底部の出水口5は、パワーバッテリの冷却システムに連通しており、パワーバッテリの冷却システムに冷却液を提供し、ミドルチャンバー10の底部の出水口5は、モータ、モータコントローラの冷却システムに連通しており、駆動モータの冷却システムに冷却液を提供し、ローチャンバー11は、エンジン冷却システムに連通しており、エンジンの冷却システムに冷却液を提供する。
【0032】
本実施例の動作原理は、以下の通りである。
【0033】
膨張水タンクの水タンク本体8の内部に、高さの異なる2つの水分離板4が追加されて、水タンク本体8が3つの相対的に独立したチャンバー、即ち、ローチャンバー11、ミドルチャンバー10及びハイチャンバー9に仕切られる。各チャンバーの頂部に水遮断板3が追加され、水遮断板3の中部に水位バランスポート6が開設されている。初期注入量が給水カバープレート以下であり、水遮断板3は、車両の運転中に、隣接するチャンバー間の水の混ざり合いを防止または緩和することができる。
【0034】
注入時に、まずハイチャンバー9が満たされ、冷却液が水分離板4の頂部からミドルチャンバー10に流入し、ミドルチャンバー10が満たされてから、冷却液が他の水分離板4の頂部からローチャンバー11内に流入するようになり、注入量が標準注入量よりも若干少なく、注入量調整口7を追加することにより、ローチャンバー11内の冷却液の液面の高さを制御することができる。ローチャンバー11、ミドルチャンバー10及びハイチャンバー9内の冷却液が、断熱可能な水分離板4で隔てられており、各チャンバーは、相互の間の熱伝達が発生せずに、独立して作動できる。使用中、ハイチャンバー、ミドルチャンバー及びローチャンバーの液面は、徐々に平衡になる。注入補助ツールを追加して、各チャンバーの注入を独立して制御してもよい。
【0035】
本実施例は、勾配構造を使用することにより、エンジン、モータ、パワーバッテリの冷却システムへの注入を統一させることができ、勾配構造の追加により、水に対して領域的な障壁ができて、急な坂に遭遇しても、水同士の混ざり合いを防ぐことができ、平坦な路面を走行するように回復すると、各独立システムの水は迅速に回復する。水遮断板3は、車両の運転中に、隣接するチャンバー間の水の混ざり合いを防止または緩和することができる。
【0036】
本実施例は、モータ、パワーバッテリ及びエンジンの冷却システムの注入装置を統合し、車両全体のレイアウトスペースを削減し、利用者による使用に便利である。
【0037】
以上は、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施例に基づいて他の改良又は変形を行うことができる。当業者であれば、上記具体的な記載は本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲が特許請求の範囲の保護範囲に基づくものであることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0038】
1…注入口、2…気体放出口、3…水遮断板、4…水分離板、5…出水口、6…水位バランスポート、7…注入量調整口、8…水タンク本体、9…ハイチャンバー、10…ミドルチャンバー、11…ローチャンバー