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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20220704BHJP
【FI】
F24F11/41 120
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020557836
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046651
(87)【国際公開番号】W WO2020111200
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018223498
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上重 淳
(72)【発明者】
【氏名】菊池 泰久
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 智子
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-121798(JP,A)
【文献】特開2013-108732(JP,A)
【文献】特開平01-107056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/41
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器からなるヒートポンプ式冷凍サイクルを備え、前記室外熱交換器の除霜開始条件が成立した場合にその室外熱交換器に対する除霜運転を実行する複数の空気調和機と、
前記各空気調和機のいずれかの空気調和機の除霜開始条件が成立した際に、その除霜開始条件が成立した空気調和機を除く残りの空気調和機の除霜開始条件を通常より成立が遅れる方向に変更し、この変更後、前記除霜開始条件が成立した空気調和機が除霜運転に入ってその除霜運転が終了した際に、前記遅れ方向の変更がなされた空気調和機の除霜開始条件を通常より成立が早まる方向に変更するコントローラと、
を備えることを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記遅れ方向の変更がなされた空気調和機の除霜開始条件が成立して同空気調和機が除霜運転に入った場合、その除霜運転が終了した後の同空気調和機の暖房再開の立ち上り能力を低減する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空気調和機を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器を順に配管接続して冷媒を循環させるヒートポンプ式冷凍サイクルを備え、外気から熱を汲み上げて室内空気を暖房する空気調和機では、暖房の進行に伴い、蒸発器として機能する室外熱交換器の表面に徐々に霜が付着し、その着霜量が多くなると外気からの汲み上げ熱量が減少して暖房能力が減少する。
【0003】
対策として、室外熱交換器の温度などから室外熱交換器の着霜状態を監視し、着霜が増えた場合に圧縮機の吐出冷媒(高温冷媒)を室外熱交換器に直接的に供給し、その高温冷媒の熱で室外熱交換器の霜を解かす除霜運転が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-121798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の空気調和機で同一の空調エリアを空調する空気調和装置の場合、複数の空気調和機が同時に除霜運転に入ると、暖房能力が不足気味となって空調エリアの室内温度が低下し、居住者に不快感を与えることがある。
【0006】
本実施形態の目的は、除霜による室内温度の低下をできるだけ抑えることができる空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の空気調和装置は、圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器からなるヒートポンプ式冷凍サイクルを備え、前記室外熱交換器の除霜開始条件が成立した場合にその室外熱交換器に対する除霜運転を実行する複数の空気調和機と;これら空気調和機のいずれかの空気調和機の除霜開始条件が成立した際に、その除霜開始条件が成立した空気調和機を除く残りの空気調和機の除霜開始条件を通常より成立が遅れる方向に変更し、この変更後、前記除霜開始条件が成立した空気調和機が除霜運転に入ってその除霜運転が終了した際に、前記遅れ方向の変更がなされた空気調和機の除霜開始条件を通常より成立が早まる方向に変更するコントローラと;を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の構成を示す図。
図2】一実施形態における親機が子機との通信に関して実行する制御を示すフローチャート。
図3】一実施形態における親機および子機がそれぞれ実行する制御を示すフローチャート。
図4】一実施形態における各空気調和機の除霜運転の実行およびその実行に伴う除霜開始条件の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、空気調和装置を構成する複数の空気調和機1a,1b,…1nの室内ユニット20が同一の空調エリアRに配置されている。
【0011】
親機である空気調和機1aは、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、減圧器たとえば電動膨張弁14、室内熱交換器21を順次に配管接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを備える。
【0012】
冷房運転時は、圧縮機11から吐出される冷媒が四方弁12を通って室外熱交換器(凝縮器)13に流入し、その室外熱交換器13から流出する冷媒が電動膨張弁14を通って室内熱交換器(蒸発器)21に流入し、その室内熱交換器21から流出する冷媒が四方弁12を通って圧縮機11に吸込まれる。
【0013】
暖房運転時は、四方弁12の流路の切換えにより、矢印で示すように、圧縮機11から吐出される冷媒が四方弁12を通って室内熱交換器(凝縮器)21に流入し、その室内熱交換器21から流出する冷媒が電動膨張弁14を通って室外熱交換器(蒸発器)13に流入し、その室外熱交換器13から流出する冷媒が四方弁12を通って圧縮機11に吸込まれる。暖房運転中の室外熱交換器13に対する除霜運転に際しては、四方弁12の流路の復帰により、冷房運転時と同じ冷媒の流れが形成される。
【0014】
外気を吸込んで室外熱交換器13に通す室外ファン15が室外熱交換器13の近傍に配置され、外気温度Toを検知する外気温度センサ16が室外ファン15の吸込み風路に配置されている。空調エリアの室内空気を吸込んで室内熱交換器21に通す室内ファン22が室内熱交換器21の近傍に配置され、室内空気の温度(室内温度という)Taを検知する室内温度センサ23が室内ファン22の吸込み風路に配置されている。
【0015】
上記圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、電動膨張弁14、室外ファン15、外気温度センサ16が室外コントローラ18aと共に室外ユニット10に収容され、上記室内熱交換器21、室内ファン22、室内温度センサ23が室内コントローラ24aと共に室内ユニット20に収容されている。室外コントローラ18aと室内コントローラ24aとが電源電圧同期のシリアル信号ライン31を介して相互に接続され、室内コントローラ24aには運転操作用および運転条件設定用のリモートコントロール式の操作器(リモコンと略称する)33がケーブル32を介して接続されている。リモコン33は、空調エリアの壁面等に取付けられ、ユーザによる容易な操作が可能である。
【0016】
室外コントローラ18aは、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、室内コントローラ24aからの指示に応じて圧縮機11、四方弁12、電動膨張弁14、室外ファン15を制御するとともに、外気温度センサ16の検知温度(外気温度という)Toおよび熱交温度センサ17の検知温度(熱交換器温度という)Teなどのデータをシリアル信号ライン31により室内コントローラ24aに送る。
【0017】
室内コントローラ24aは、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、リモコン33の操作、リモコン33で設定される運転条件、室外コントローラ18aからの伝送データなどに応じて空気調和機1aの運転を制御する。また、室内コントローラ24aは、室外熱交換器13に対する除霜開始条件を予め内部メモリに記憶しており、その除霜開始条件が成立した場合に室外熱交換器13に対する除霜運転を実行する。
【0018】
除霜開始条件は、室外熱交換器13の熱交換器温度(熱交温度センサ17の検知温度)Teと暖房開始時の室外熱交換器13の熱交換器温度Teに応じて定まる基準値Teoとの差ΔTe(=Teo-Te)が閾値A以上という第1除霜開始条件、および暖房開始から一定時間後t2後の室外熱交換器13の熱交換器温度Teが予め定められている制限値Tex未満という第2除霜開始条件を含む。閾値Aは、外気温度Toに応じて選定される値であり、To≧0℃の場合に例えば6℃が選定され、0℃>To≧-10℃の場合に例えば4℃が選定され、To<-10℃の場合に例えば2℃が選定される。
【0019】
この室内コントローラ24aと室内コントローラ24b~24nの相互間に、制御用およびデータ伝送用のバスライン40が接続されている。
【0020】
空気調和機1b~1nは、室外コントローラ18b~24nと室内コントローラ24b~24nを有する点が空気調和機1aと異なるだけで、基本的な構成は空気調和機1aと同じである。
【0021】
室内コントローラ24b~24nは、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、それぞれ室外コントローラ18b~18nからの伝送データおよび室内コントローラ24aからの指示に応じてそれぞれの空気調和機の運転を総合的に制御する。
【0022】
また、室内コントローラ24b~24nは、それぞれの室外熱交換器13に対する除霜開始条件を予め内部メモリに記憶しており、その除霜開始条件が成立した場合にそれぞれの室外熱交換器13に対する除霜運転を室外コントローラ18b~18nと共に実行する。除霜開始条件は、室内コントローラ24aの除霜開始条件(第1除霜開始条件および第2除霜開始条件)と同じである。
【0023】
空気調和機1a,1b,…1nを1つのグループとして制御するグループ制御モードがリモコン33で設定された場合に、空気調和機1aおよび室内コントローラ24aが制御の中枢となる親機として機能し、残りの空気調和機1b~1nおよび室内コントローラ24b~24nが親機の指示に従う子機として機能する。
【0024】
空気調和機1aの室内コントローラ24aは、親機と子機の連係に関わる主要な機能として第1制御部C1,第2制御部C2,第3制御部C3,第4制御部C4を備える。
【0025】
第1制御部C1は、室内コントローラ24a~24nの相互の通信をデータバスライン40を介して定期的および必要に応じて実行する。この通信により、除霜開始条件の成立の有無および運転状態等を親機および子機の相互で認識することができる。
【0026】
第2制御部C2は、空気調和機1a~1nのいずれかの空気調和機の除霜開始条件が成立して同空気調和機が除霜運転を開始する際に、その除霜開始する空気調和機(除霜開始条件が成立した空気調和機)を除く残りの空気調和機の除霜開始条件を通常より成立が遅れる方向(“遅め除霜”モード)に変更する。
【0027】
第3制御部C3は、上記第2制御部C2よる遅れ方向の変更後、上記除霜開始条件が成立した空気調和機が除霜運転に入ってその除霜運転が終了した際に、上記遅れ方向の変更がなされた空気調和機の除霜開始条件を通常より成立が早まる方向(“早め除霜”モード)に変更する。
【0028】
第4制御部C4は、上記第2制御部C2による遅れ方向の変更がなされた空気調和機の除霜開始条件が成立して同空気調和機が除霜運転に入った場合、その除霜運転が終了した後の同空気調和機の暖房再開の立ち上り能力を低減する。
【0029】
[親機の制御]
親機の室内コントローラ24aが子機との通信に関して実行する制御を図2のフローチャートを参照しながら説明する。フローチャート中のステップS1,S2…については、単にS1,S2…と略称する。
【0030】
暖房運転の開始操作がリモコン33でなされた場合(S1のYES)、室内コントローラ24aは、暖房運転の開始を室内コントローラ24b~24nに指示し(S2)、かつリモコン33で設定されている目標室内温度(設定温度ともいう)Tsを室内コントローラ24b~24nに指示する(S3)。そして、室内コントローラ24aは、暖房運転の開始後、当該室内コントローラ24aおよび室内コントローラ24b~24nの“除霜中”通知(除霜開始条件が成立した旨の通知)を監視する(S4)。“除霜中”通知がない場合(S4のNO)、室内コントローラ24aは、当該室内コントローラ24aおよび室内コントローラ24b~24nの“除霜終了”通知(除霜運転が終了した旨の通知)を監視する(S6)。“除霜終了”通知がない場合(S6のNO)、室内コントローラ24aは、リモコン33の停止操作を監視する(S8)。
【0031】
停止操作がない場合(S8のNO)、室内コントローラ24aは、上記S3に戻って上記同様の処理を繰り返す。停止操作がある場合(S8のYES)、室内コントローラ24aは、暖房運転の停止を室内コントローラ24b~24nに指示する(S9)。
【0032】
上記S4の判定において、当該室内コントローラ24aおよび室内コントローラ24b~24nのいずれかから“除霜中”通知がある場合(S4のYES)、室内コントローラ24aは、子機である全ての室内コントローラ24b~24nに対し“除霜中”を通知し(S5)、上記S8の判定に移行する。
【0033】
上記S6の判定において、当該室内コントローラ24aおよび室内コントローラ24b~24nのいずれかから“除霜終了”通知がある場合(S6のYES)、室内コントローラ24aは、子機である全ての室内コントローラ24b~24nに対し“除霜終了”を通知し(S7)、上記S8の判定に移行する。
【0034】
[親機および子機の制御]
親機および子機がそれぞれ実行する制御を図3のフローチャートを参照しながら説明する。空気調和機1a~1cにおいて実行される除霜運転の一例およびこれら空気調和機1a~1cの除霜運転の実行に伴い空気調和機1aの除霜開始条件がどのように変化するかの例を図4に示している。
【0035】
暖房運転の開始指示があった場合(S11のYES)、室内コントローラ24aおよび室内コントローラ24b~24nは、それぞれの空気調和機の暖房運転を開始し(S12)、リモコン33で設定されている目標室内温度Tsと室内温度センサ23で検知される室内温度Taとの差ΔTに応じてそれぞれの暖房能力(各圧縮機11の運転周波数F)を制御する(S13)。この暖房運転の開始から一定時間t1(例えば15分)が経過した後(S14のYES)、室内コントローラ24a~24nは、それぞれの室外熱交換器13の現時点の熱交換器温度Teから所定値たとえば2℃を減じた値をそれぞれの除霜開始条件の基準値Teo(=Te-2℃)として内部メモリに更新記憶する(S15)。そして、室内コントローラ24a~24nは、“除霜中”通知を監視する(S16)。
【0036】
例えば子機の室内コントローラ24bにおいて除霜開始条件が成立した場合、室内コントローラ24bは親機の室内コントローラ24aに対し“除霜中”を通知する。この“除霜中”通知を受けた親機の室内コントローラ24aは、子機の全ての室内コントローラ24b~24nに対し“除霜中”を通知する(S4のYES,S5)。
【0037】
以下、“除霜中”通知を受けた室内コントローラ24a~24nのうち、代表して、室内コントローラ24aが実行する制御について説明する。
【0038】
“除霜中”通知がない場合(S16のNO)、しかも除霜終了”通知がない場合(S18のNO)、室内コントローラ24aは、S17の“遅め除霜”モード設定処理およびS19の“早め除霜”モード設定処理を実行することなくバイパスしてS20の判定に移行し、上記S15で記憶した基準値Teo(=Te-2℃)と現時点の室外熱交換器13の熱交換器温度Teとの差ΔTe(=Teo-Te)が閾値A以上であるか否かを監視する(S20)。S17の“遅め除霜”モード設定処理およびS19の“早め除霜”モード設定処理が実行されないことで、“通常除霜”モードの設定が継続される。
【0039】
差ΔTeが閾値A以上でない場合(S20のNO;着霜が少ない場合)、室内コントローラ24aは、暖房運転の開始から一定時間たとえば40分後が経過しかつ現時点の室外熱交換器13の熱交換器温度Teが予め定められている制限値(例えば-20℃)Tex未満であるか否かを監視する(S21)。暖房運転の開始から一定時間の40分後が経過していない場合または現時点の室外熱交換器13の熱交換器温度Teが制限値Tex未満でない場合(S21のNO)、室内コントローラ24aは、後段のS31の停止指示の判定に移行する。
【0040】
外気温度Toが例えば-20℃ぐらいまで低下したまま暖房運転が例えば40分を超えて継続すると、除霜運転を実行しても室外熱交換器13の霜を除去しきれない可能性があるため、そのような低外気温度環境に対処するべく上記S21の判定を除霜開始条件として採用している。
【0041】
差ΔTeが閾値A以上の場合(S20のYES)、または暖房運転の開始から一定時間たとえば40分後が経過しかつ熱交換器温度Teが制限値Tex未満の場合(S21のYES)、室内コントローラ24aは、室外熱交換器13に対する除霜が必要であるとの判断の下に、空気調和機1aの除霜運転を開始し(S22)、かつ“除霜中”を子機の全ての室内コントローラ24b~24nに通知する(S23)。この除霜運転の開始により、圧縮機11から吐出される高温冷媒が四方弁12を通って室外熱交換器13に直接的に供給され、高温冷媒の熱で室外熱交換器13の表面に付着した霜が除去される。
【0042】
除霜運転の開始後、室内コントローラ24aは、例えば室外熱交換器13の熱交換器温度Teに基づいて定められた除霜終了条件の成立を待つ(S24)。
【0043】
除霜終了条件が成立した場合(S24のYES)、室内コントローラ24aは、空気調和機1aの除霜運転を終了しかつ“除霜終了”を子機の全ての室内コントローラ24b~24nに通知する(S25)。そして、室内コントローラ24aは、この時点では基準値Teoおよび制限値Texの変更がない“通常除霜”モードの設定が継続していることから(S26のYES)、次のS27のシフト解除処理を実行することなくバイパスして暖房運転を再開する(S28)。この暖房運転の再開に際し、室内コントローラ24aは、この時点では“通常除霜”モードの設定が継続していることから(S29のYES)、S30の能力低減処理を実行することなくバイパスして暖房運転の停止指示を監視する(S31)。停止指示がなければ(S31のNO)、上記S16に戻って上記同様の処理を繰り返す。
【0044】
上記S16の判定において、“除霜中”通知がある場合(S16のYES)、室内コントローラ24aは、上記S15で更新記憶した当初の基準値Teoから所定値たとえば1℃を減じた値を新たな基準値Teo(=当初Teo-1℃)として内部メモリに記憶するとともに、室外熱交換器13の熱交換器温度Teに対する制限値Texから所定値たとえば1℃を減じた値を新たな制限値Tex(=当初Tex-1℃)として内部メモリに記憶する(S17)。すなわち、除霜開始条件が通常より成立が遅れる方向に変更される。この変更により、“遅め除霜”モードが設定される。
【0045】
続いて、室内コントローラ24aは、記憶した新たな基準値Teo(=当初Teo-1℃)と現時点の室外熱交換器13の熱交換器温度Teとの差ΔTe(=新Teo-Te)が閾値A以上であるか否かを監視する(S20)。差ΔTeが閾値A以上でない場合(S20のNO)、室内コントローラ24aは、暖房運転の開始から一定時間の40分後が経過しかつ現時点の室外熱交換器13の熱交換器温度Teが上記S17で記憶した新たな制限値Tex(=当初Tex-1℃)未満であるか否かを監視する(S21)。
【0046】
差ΔTeが閾値A以上の場合(S20のYES)、または暖房運転の開始から一定時間の40分後が経過しかつ熱交換器温度Teが制限値Tex未満の場合(S21のYES)、つまり除霜開始条件が成立した場合、室内コントローラ24aは、先に除霜開始条件が成立して除霜運転に入っている空気調和機1bの除霜運転がまだ継続中であっても、それにかかわらず空気調和機1aの除霜運転を開始し(S22)、かつ“除霜中”を子機の室内コントローラ24b~24nに通知する(S23)。この除霜運転の開始後、室内コントローラ24aは、除霜終了条件の成立を待つ(S24)。
【0047】
除霜終了条件が成立した場合(S24のYES)、室内コントローラ24aは、空気調和機1aの除霜運転を終了しかつ“除霜終了”を子機の全ての室内コントローラ24b~24nに通知する(S25)。そして、室内コントローラ24aは、この時点では基準値Teoおよび制限値Texが変更されて“遅め除霜”モードが設定されていることから(S26のNO)、その基準値Teoおよび制限値Texの変更を解除して通常除霜モードに戻り(S27)、暖房運転を再開する(S28)。
【0048】
この暖房運転の再開に際し、室内コントローラ24aは、これまでの除霜運転が“遅め除霜”モードであったことから(S29のNO)、所定時間にわたり、圧縮機11の運転周波数Fを通常の80%程度に抑えて暖房再開の立ち上り能力を低減する(S30)。
【0049】
続いて、室内コントローラ24aは、暖房運転の停止指示を監視する(S31)。停止指示がない場合(S31のNO)、室内コントローラ24aは、上記S16の判定に移行する。停止指示がある場合(S31のYES)、室内コントローラ24aは、暖房運転を停止する(S32)。
【0050】
以上のように、空気調和機1bで除霜開始条件が成立して空気調和機1bが除霜運転に入った場合に、その空気調和機1bを除く残りの全ての空気調和機1a,1c~1nの除霜開始条件を通常より成立が遅れる方向に変更(-1℃)して“遅め除霜”モードを設定することにより、空気調和機1bが除霜運転を開始しても、それと同時に他の空気調和機1a,1c~1nが除霜運転を開始することはない。したがって、除霜による空調エリアの室内温度Taの低下をできるだけ抑えることができ、居住者に不快感を与えない。
【0051】
“除霜中”通知を受けた空気調和機の室内コントローラが除霜開始条件の基準値Teoおよび制限値Texをそれぞれの室内コントローラにおいて単にシフトするだけなので、室内コントローラ24a~24nの制御が複雑化することはない。
【0052】
子機の室内コントローラ24b~24nとしては、“除霜中”通知を親機の室内コントローラ24aに通知するだけでよく、自身の空気調和機がどれであるかを示すアドレス等の識別情報の通知は不要である。親機の室内コントローラ24aとしては、子機のいずれかからの“除霜中”通知を受けた際にそれを全ての子機に転送するだけであり、除霜開始条件が成立した空気調和機がどれであるかを示すアドレス等の識別情報の通知は不要である。したがって、親機と子機の通信制御も簡素化できる。
【0053】
除霜開始条件の変更によって空気調和機1a~1nの除霜開始のタイミングをずらすだけなので、いずれかの空気調和機の除霜運転を禁止してしまうことはなく、よって各空気調和機の室外熱交換器13の着霜が除去されないままいわゆる過着霜の状態となる不具合は生じない。
【0054】
一方、先に除霜開始条件が成立して除霜運転に入った空気調和機1bが除霜運転を終了して室内コントローラ24bから“除霜終了”通知が発せられた場合(S18のYES)、室内コントローラ24aは、上記S15で更新記憶した当初の基準値Teoに所定値たとえば1℃を加えた値を新たな基準値Teo(=当初Teo+1℃)として内部メモリに記憶するとともに、室外熱交換器13の熱交換器温度Teに対して予め定められている制限値Texに所定値たとえば1℃を加えた値を新たな制限値Tex(=当初Tex+1℃)として内部メモリに記憶する(S19)。すなわち、除霜開始条件が通常より成立が早まる方向に変更される。これにより、“早め除霜”モードが設定される。
【0055】
続いて、室内コントローラ24aは、記憶した新たな基準値Teoと現時点の室外熱交換器13の熱交換器温度Teとの差ΔTe(=新Teo-Te)が閾値A以上であるか否かを監視する(S20)。差ΔTeが閾値A以上でない場合(S20のNO)、室内コントローラ24aは、暖房運転の開始から一定時間の40分後が経過しかつ現時点の室外熱交換器13の熱交換器温度Teが上記S19で記憶した新たな制限値Tex(=当初Tex+1℃)未満であるか否かを監視する(S21)。
【0056】
先に除霜開始条件が成立して除霜運転に入った空気調和機1bが除霜運転を終了して暖房を再開すると、その空気調和機1bの除霜開始条件が再び成立するころに、“遅れ除霜”モードが設定されている空気調和機1a,1c~1nの除霜開始条件の成立が重なる可能性がある。
【0057】
そこで、先に除霜開始条件が成立して除霜運転に入った空気調和機1bが除霜運転を終了した際には、“遅れ除霜”モードが設定されている空気調和機1a,1c~1nの除霜開始条件を通常より成立が早まる方向に変更するようにしている。こうして、空気調和機1a,1c~1nを“遅れ除霜”モードから“早め除霜”モードに切換えることにより、暖房を再開した空気調和機1bの除霜開始条件が再び成立する早い時期に、空気調和機1a,1c~1nの除霜開始条件の成立のタイミングを移すことができる。つまり、複数の空気調和機の除霜開始が同じタイミングで巡ってくる可能性を低くすることができる。
【0058】
また、“遅め除霜”モードの空気調和機1a,1c~1nのいずれかが除霜運転を開始するタイミングでは、先に除霜開始条件が成立した空気調和機1bがまだ除霜運転を実行中である可能性があり、その場合は複数の空気調和機の除霜運転が同時に実行されることになる。このまま複数の空気調和機がそれぞれ除霜運転を終了して暖房を再開すると、それぞれの空気調和機の室外熱交換器13の着霜の進み具合が同じになり、やがて複数の空気調和機の除霜開始が再び同じタイミングで巡ってくる可能性がある。
【0059】
そこで、“遅め除霜”モードの空気調和機1a,1c~1nのいずれかが除霜運転に入ってその除霜運転が終了し暖房を再開する際には、所定時間にわたり、圧縮機11の運転周波数Fを通常の80%程度に抑えて暖房再開の立ち上り能力を低減するようにしている。これにより、たとえ複数の空気調和機が同時に除霜運転を実行することになっても、それぞれの空気調和機の室外熱交換器13の着霜の進み具合を異ならせることができる。つまり、複数の空気調和機の除霜開始が同じタイミングで巡ってくる可能性を低くすることができる。
【0060】
[変形例]
上記実施形態では、“遅め除霜”モードとして除霜開始条件の基準値Teoおよび制限値Texを-1℃シフトし、早め除霜モードとして除霜開始条件の基準値Teoおよび制限値Texを+1℃シフトしたが、シフトする値については、-1℃に限らず、室外熱交換器13の容量やヒートポンプ式冷凍サイクルの能力などに応じて適宜に選定可能である。
【0061】
上記実施形態では、熱交換器温度Teと基準値Teoとの差ΔTe(=Teo-Te)が閾値A以上という第1除霜開始条件を用いたが、外気温度センサ16が検知する外気温度Toをこの第1除霜開始条件に加味してもよい。
【0062】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1a,1b,…1n……空気調和機、10…室外ユニット、11…圧縮機、13…室外熱交換器、18a,18b,…18n……室外コントローラ、20…室内ユニット、24a,24b,…24n……室内コントローラ、33…リモコン、40…バスライン
図1
図2
図3
図4