(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】電子機器を搭載した無人飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 27/08 20060101AFI20220704BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220704BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20220704BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220704BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20220704BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220704BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
G03B15/00 U
G03B17/55
H04N5/225 430
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2021065929
(22)【出願日】2021-04-08
(62)【分割の表示】P 2020053027の分割
【原出願日】2017-07-20
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】313003417
【氏名又は名称】株式会社ザクティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真人
(72)【発明者】
【氏名】田村 博紀
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-264528(JP,A)
【文献】特開2012-51545(JP,A)
【文献】特開2016-147519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/336670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/152345(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/194069(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/1721(US,A1)
【文献】国際公開第2016/178008(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/21516(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 47/08
G03B 15/00
G03B 17/55
H04N 5/225
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空撮カメラ等の電子機器を搭載した無人飛行体であって、
前記無人飛行体の周囲に設けられ、風力により揚力や推力を発生する複数のプロペラと、
前記プロペラの位置よりも低い位置に設置され、前記電子機器の外殻を構成する樹脂製の筐体と、
前記筐体内に収容された制御回路基板と、を備え、
前記制御回路基板には、当該電子機器の作動に伴って発熱する集積回路が設けられ、
前記集積回路は、前記筐体のうち前記プロペラに近い上壁部分に伝熱部で繋がれている
ことを特徴とする電子機器を搭載した無人飛行体。
【請求項2】
前記筐体は、前記制御回路基板を収容する筐体収容部と該筐体収容部の開口を覆う蓋体とを備え、
前記筐体収容部と前記蓋体との間には、ゴム弾性を有するシール部材を設けており、
前記発熱する集積回路は、前記筐体のうち前記蓋体に対して、前記伝熱部で繋がれている
ことを特徴とする請求項1記載の電子機器を搭載した無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空撮カメラ等の電子機器を搭載した無人飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プロペラを有するロータユニットを複数備えた無人飛行体が知られている。この種の無人飛行体は、マルチコプターやドローンと呼ばれており、計測や測量、放送、監視、農業、医療、環境調査、物流といった様々な分野での利用が期待され、近年、特に開発が盛んに行われていて、販売が拡大しつつある。
【0003】
この種の無人飛行体は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の無人飛行体では、駆動制御回路やセンサを有する制御回路基板を外部に設置することで、制御回路基板の冷却性を高めつつ軽量化が図られている。また、無人飛行体には、自律飛行や用途に応じた周辺情報を得るために空撮カメラが搭載されることが多い。
【0004】
空撮カメラを搭載した無人飛行体は、主に屋外で使用されるものであり、空撮カメラの動作を制御する制御回路基板を特許文献1に開示されるように外部に露出させると、雨雪に晒されるために故障のおそれがある。そこで、制御回路基板を筐体内に収容すると共に、空撮カメラの作動に伴う制御回路基板の発熱に起因して性能低下や動作不良といった不具合が発生するのを避けるために熱対策を講じる必要がある。
【0005】
こうした制御回路基板の熱対策としては伝熱シートを用いる方法が知られている。伝熱シートによる熱対策については、当該熱対策を施した電子カメラが、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2に開示の電子カメラでは、筐体を金属部材によって構成し、伝熱シートの一端側の部分を制御回路基板の集積回路(駆動回路素子群)の上面に直接密着させ、伝熱シートの他端側の部分を筐体に密着させることで、集積回路に発生する熱を伝熱シートを介して筐体へ伝達させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-051864号公報
【文献】特開2003-143451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、無人飛行体に搭載される空撮カメラに特許文献2に開示されるような熱対策を単純に採用すると、空撮カメラの筐体を金属製にすることになるため、空撮カメラの重量が増大し、無人飛行体に求められる軽量化のニーズを阻害するという問題が生じてしまう。
また、一方、特許文献1に開示されるように、制御回路基板を単に外部に露出させてしまうと、雨雪に晒されて、故障のおそれがある。
【0008】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無人飛行体に搭載される空撮カメラなどの電子機器の軽量化を図りつつも、その電子機器が内蔵する制御回路基板に設けられた集積回路の放熱性を高めつつ、その制御回路基板が雨雪の影響を受けないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本開示の技術では、樹脂製の筐体を採用し、その筐体内に制御回路基板を収容すると共に、筐体のうちプロペラの風力により冷却される筐体上部に制御回路基板の熱を伝熱するようにした。
【0010】
具体的には、本開示の技術は、空撮カメラ等の電子機器を搭載した無人飛行体を対象とする。
【0011】
本開示の技術に係る無人飛行体は、空撮カメラ等の電子機器を搭載した無人飛行体であって、前記無人飛行体の周囲に設けられ、風力により揚力や推力を発生する複数のプロペラと、前記プロペラの位置よりも低い位置に設置され、前記電子機器の外殻を構成する樹脂製の筐体と、前記筐体内に収容された制御回路基板と、を備え、前記制御回路基板には、当該電子機器の作動に伴って発熱する集積回路が設けられ、前記集積回路は、前記筐体のうち前記プロペラに近い上壁部分に伝熱部で繋がれている。
【0012】
この構成によると、無人飛行体の周囲に設けられた複数のプロペラよりも低い位置に、電子機器の外殻を構成する樹脂製の筐体を設置して、その筐体のうちプロペラに近い上壁部分と、制御回路基板上の集積回路とを、伝熱部で繋げているため、集積回路が電子機器の作動で発熱しても、当該集積回路の熱を、筐体のプロペラに近い上壁部分に伝熱することで、筐体の上壁部分から外部へ効果的に放熱することができる。これにより、筐体を樹脂製として空撮カメラの軽量化を図りつつ、無人飛行体のプロペラを利用して、集積回路の放熱性を高めることができる。
【0013】
前記のような無人飛行体において、前記筐体は、前記制御回路基板を収容する筐体収容部と該筐体収容部の開口を覆う蓋体とを備え、前記筐体収容部と前記蓋体との間には、ゴム弾性を有するシール部材を設けており、前記発熱する集積回路は、前記筐体のうち前記蓋体に対して、前記伝熱部で繋がれていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の技術に係る無人飛行体によれば、集積回路が電子機器の作動で発熱しても、当該集積回路の熱を、筐体のプロペラに近い上壁部分に伝熱するで、筐体の上壁部分から外部へ効果的に放熱することができる。これにより、筐体を樹脂製として空撮カメラの軽量化を図りつつ、無人飛行体のプロペラを利用して、集積回路の放熱性を高めることができる。その結果、無人飛行体の飛行性能を悪化させることなく、制御回路基板の信頼性を高めて空撮カメラの性能低下や動作不良といった不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る無人飛行体を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る空撮カメラを示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る空撮カメラを示す分解斜視図である。
【
図4】
図2のIV-IV線における空撮カメラの断面図である。
【
図5】
図2のV-V線における空撮カメラの断面図である。
【
図6】実施形態に係る空撮カメラの蓋体と伝熱シートとの分解斜視図である。
【
図7】実施形態に係る空撮カメラの蓋体と伝熱シートとの組合せ斜視図である。
【
図8】実施形態に係る無人飛行体の飛行時の様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
この実施形態では、電子機器の一種である空撮カメラが搭載された無人飛行体を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に、この実施形態に係る無人飛行体1の斜視図を示す。また、
図2に、この無人飛行体1に搭載される空撮カメラ7の斜視図を示す。
【0019】
無人飛行体1は、マルチコプターやドローンと呼ばれる垂直離着陸可能な比較的小型の航空機であって、
図1に示すように、機体3と、機体3に揚力及び推力を発生させる飛行ユニット5と、機体3に着脱可能に取り付けられた空撮カメラ7とを備える。
【0020】
機体3は、図示しないが、飛行ユニット5及び空撮カメラ7の駆動を総合的に制御する駆動システムや、それら飛行ユニット5及び空撮カメラ7の電源となるバッテリなどを内蔵している。この機体3には、複数本(
図1に示す例では6本)のロータアーム9と、カメラステー11とが設けられている。
【0021】
ロータアーム9は、パイプ状に形成されており、機体3の周方向において等間隔に配置されて、機体3の外周側に向かって放射状に延びている。カメラステー11は、機体3の一側方(前方)に配置されていて、パイプ状の支持体13を複数組み合わせてなる。
【0022】
飛行ユニット5は、ロータアーム9に対応した数(
図1に示す例では6つ)のロータユニット15を備える。ロータユニット15は、個々のロータアーム9にそれぞれ取り付けられており、プロペラ17と、プロペラ17を回転させるモータ(不図示)とを備える。
【0023】
複数のロータユニット15は、モータの回転数を略同一とすることにより、機体3を上昇させる揚力を発生させ、機体3を水平姿勢に維持できるようになっている。また、複数のロータユニット15は、少なくともいずれか1つのロータユニット15の回転数を変えることにより、機体3を傾けて水平方向に移動させる推力を発生させ、機体3を進行方向に向けて前傾する傾斜姿勢とした状態で水平方向へ移動できるようになっている。
【0024】
空撮カメラ7は、
図2にも示すように、カメラ本体19と、カメラ本体19をカメラステー11に装着するためのカメラ装着ユニット21とを備える。カメラ装着ユニット21は、台座23と、台座23上でカメラ本体19を支持するマウントサポート25とを有する。台座23は、一対の板状体27の間にゴム製のダンパー29が複数(
図1に示す例では4つ)介装された構成とされており、ダンパー29の振動減衰作用を以て機体3からカメラ本体19に伝わる振動を低減するようになっている。
【0025】
カメラ本体19は、マウントサポート25に回転可能に取り付けられている。マウントサポート25には、ねじ固定式の調節部31が設けられている。調節部31は、カメラ本体19を固定するねじ33を有し、ねじ33を緩めた状態でカメラ本体19を回転させ、回転後の位置でねじ33を締めることで、カメラ本体19の角度を変えて空撮カメラ7の撮影方向を調節できるようになっている。カメラ本体19は、調節部31による角度調整によってレンズ85が略水平方向に向くか又は若干斜め下方に向く姿勢とされる。
【0026】
次に、空撮カメラ7(カメラ本体19)の構成について、
図3~
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図3は、空撮カメラ7をなすカメラ本体19の分解斜視図である。
図4は、
図2のIV-IV線における空撮カメラ7の断面図である。また、
図5は、
図2のV-V線における空撮カメラ7の断面図である。なお、以下の説明では、空撮カメラ7について、レンズ85が向く撮影方向を「前」、レンズ85が向く撮影方向とは反対方向を「後」と称し、前方に向いたときの左方向を「左」、右方向を「右」と称する。
【0028】
空撮カメラ7は、
図2~
図5に示すように、カメラ外殻を構成する筐体35と、筐体35内に収容された複数の電子部品37,39,41及び複数本の電気配線43とを備える。複数の電子部品37,39,41は、スピーカー37や撮像ユニット39、制御回路基板41などである。電気配線43は、機体3に内蔵された前記駆動システムと制御回路基板41に設けられた回路とを電気的に接続する配線である。
【0029】
筐体35は、前記電子部品37,39,41が内部に組み付けられる筐体収容部45と、筐体収容部45の上側に形成された開口47を閉塞する蓋体49とを有している。これら筐体収容部45及び蓋体49は、射出成形などによって成形される樹脂製の部品であって、例えばポリカーボネート(PC)などのエンジニアリングプラスチックからなり、複数(
図3に示す例では4つ)のねじ51によって互いに結合されて筐体35を構成する。
【0030】
この筐体35は、防塵防滴の仕様に設計されている。
【0031】
具体的には、筐体収容部45の開口47の周縁部と蓋体49の外周縁部との間に、ゴム弾性を有するシール部材53が挟み込まれており、筐体35内に水などの液体や塵埃が進入するのを防止するようになっている。また、後述する撮像ユニット39周りをレンズ孔91内でシール部材93により密閉する構成や、通音孔61を防滴シール63で塞ぐ構成、複数の電気配線43を防滴コネクタ65を用いて外部に引き出す構成も防塵防滴の仕様を実現するのに寄与している。
【0032】
筐体収容部45の底壁部分には、浅い円筒形凹状のスピーカー取付部55と、矩形状のコネクタ嵌合孔57と、小径円状の通気孔59とが形成されている。スピーカー取付部55は、筐体収容部45の底壁部分の中央寄りの箇所に位置している。スピーカー37は、このスピーカー取付部55に嵌め込まれて筐体収容部45に取り付けられる。スピーカー取付部55の底壁には、下方に貫通する通音孔61が形成されている。この通音孔61は、筐体収容部45の外部で防滴シール63によって塞がれている。
【0033】
コネクタ嵌合孔57は、スピーカー取付部55の後側に位置している。このコネクタ嵌合孔57には、複数本の電気配線43の全てを貫通させて保持する防滴コネクタ65が筐体収容部45の下方から嵌合されている。防滴コネクタ65は、外周に突出したフランジ67を有し、フランジ67を環状の両面テープ69でコネクタ嵌合孔57の周縁部分に接着することで筐体収容部45に取り付けられている。この防滴コネクタ65は、シリコン樹脂などのゴム弾性を有する材料からなり、コネクタ嵌合孔57を塞いで同孔57と電気配線43との間を密閉する。
【0034】
通気孔59は、コネクタ嵌合孔57の右側に位置している。この通気孔59は、筐体収容部45の外部で内圧調整シール71によって塞がれている。内圧調整シール71は、空気を通過させる一方、水を通過させない防水通気フィルタによって構成されており、筐体35内の気圧を調整するようになっている。
【0035】
そして、筐体収容部45の底壁部分には、前記の通音孔61、コネクタ嵌合孔57及び通気孔59を裏側で覆う底面カバー73が、防滴シール63、防滴コネクタ65及び内圧調整シール71を当該底壁部分との間に挟み込んだ状態で複数のねじ75によって取り付けられている。
【0036】
底面カバー73には、防滴シール63越しに通音孔61に対応する放音孔77や、防滴コネクタ65に保持した複数の電気配線43を引き出すための配線引出孔79、内圧調整シール71越しに通気孔59に対応する内圧調整孔81が形成されている。さらに、底面カバー73の配線引出孔79に対応する部分の裏側には、配線引出孔79を通した複数の電気配線43を後方に案内する配線ガイド部83が設けられている。
【0037】
複数の電気配線43は、電力供給用に設けられた2本の電源配線43aと、制御信号の伝送用に設けられた5本の信号配線43bとからなる。電源配線43aの一端部は、制御回路基板41の前側部分で同基板41に設けられた回路に半田付けなどによって接続されている。他方、信号配線43bの一端部は、制御回路基板41の後側部分で同基板41に設けられた回路に半田付けなどによって接続されている。
【0038】
そして、電源配線43aは、筐体収容部45の底壁部分を這わせて後方に引き回され、信号配線43bと共に防滴コネクタ65に貫通保持されている。そして、これら電源配線43a及び信号配線43bは、底面カバー73に設けられた配線ガイド部83によって後方に案内されると共に、配線ガイド部83の後端に設けられた開口から纏めて外部に引き出されている。
【0039】
撮像ユニット39は、レンズ85と、レンズ85による結像を電気信号に変換するイメージセンサからなる撮像素子87と、それらレンズ85及び撮像素子87を保持する光学要素ホルダ89とを備える。この撮像ユニット39は、筐体収容部45の前壁部分に寄せて組み付けられている。そして、レンズ85は、その前壁部分に形成されたレンズ孔91から筐体35外部に突出している。
【0040】
撮像ユニット39のうちレンズ85を保持する光学要素ホルダ89部分とレンズ孔91の内周面との間には、ゴム弾性を有するシール部材93が挟み込まれて両者の間を密閉している。撮像ユニット39の後側には、撮像ユニット39を保護するためのレンズ保護シート95が設けられている。
【0041】
撮像素子87は、レンズ85の後方に配置されており、レンズ85と併せて光学要素ホルダ89に組み付けられている。この撮像素子87は、フラットケーブル97を介して制御回路基板41に電気的に接続されている。フラットケーブル97は、撮像素子87から出力された電気信号を制御回路基板41に設けられた回路に入力するようになっている。
【0042】
制御回路基板41は、基板ホルダ99を用いて筐体収容部45内に組み付けられている。具体的には、制御回路基板41が、基板ホルダ99に複数(
図3に示す例では4つ)のねじ101によって取り付けられており、基板ホルダ99が、筐体収容部45の底壁部分でスピーカー取付部55の周りに設けられた複数のボス103(
図3では3つあるうちの2つのみ図示)にねじ105によって固定されている。
【0043】
制御回路基板41の下面には、撮影した空撮動画の記録用にSDカードなどのメモリカード106が装着されるカードソケット107(
図5参照)や、図示しないがUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した外部接続用コネクタが実装されている。筐体収容部45の右壁部分には、カードソケット107のカード挿入口及び外部接続用コネクタの接続口を外部に臨ませる開口108,109を有するサイド端子部111が設けられている。
【0044】
このサイド端子部111は、筐体35内方へ向けて窪んでおり、外部接続用コネクタを使用せず且つカードソケット107への操作を行わない場合には、端子カバー113によって覆われる。端子カバー113は、ゴム弾性を有する材料からなり、一端側をねじ115によって筐体収容部45の右壁部分に留めることで筐体35に組み付けられており、サイド端子部111を覆った状態で開口107,108を密閉する。
【0045】
また、制御回路基板41の上面には、回路を構成するメイン集積回路であるASIC(Application Specific Integration circuit)117及びその他の電子回路部品119が設けられている。ASIC117は、空撮カメラ7の動作を制御する電子回路であって、空撮カメラ7の作動に伴って発熱する性質を有する。ASIC117の発熱は空撮カメラ7の性能低下や動作不良といった不具合を引き起こすため、この実施形態では、空撮カメラ7に伝熱シート121を用いた熱対策を講じている。
【0046】
具体的には、ASIC117は、筐体35のうち飛行風に曝される外壁部分である蓋体49の裏面(内側面)に伝熱シート121で繋がれている。蓋体49は、制御回路基板41のASIC117が設けられた上面と対向していて、制御回路基板41との間に放熱空間123を形成している。伝熱シート121の一端側は、ASIC117に貼り付けられており、伝熱シート121の他端側は、ASIC117に貼り付けられた部分から放熱空間123で折り返されて、蓋体49の裏面に貼り付けられている。
【0047】
図6に、伝熱シート121と蓋体49の分解斜視図を示す。また、
図7に、伝熱シート121と蓋体49との組合せ斜視図を示す。
【0048】
伝熱シート121は、一方面が貼り付けのための粘着面とされた、導電性を有するグラファイトシートである。
図6及び
図7に示すように、この伝熱シート121において、ASIC117に貼り付けられる一端側の部分は、帯状に形成されており、蓋体49の裏面に貼り付けられる他端側の部分は、全体として(後述するスリット129を除いて見れば)相対的に幅広な矩形状に形成されていて、蓋体49の裏面に対し、上面視でのASIC117のサイズよりも広い領域に亘って貼り付けられている。
【0049】
制御回路基板41のうちASIC117の周辺部分と伝熱シート121との間には、
図5に示すように、絶縁性を有する通電保護シート125が設けられている。通電保護シート125は、ASIC117周辺にある電子回路部品119を覆っており、それら電子回路部品119への伝熱シート121を介した通電を防止する。それにより、空撮カメラ7では、伝熱シート121を設けることに起因して制御回路基板41の信頼性が損なわれないようになっている。
【0050】
この通電保護シート125には、ASIC117を露出させる伝熱用の開口127が形成されている。伝熱シート121は、通電保護シート125の上から伝熱用の開口127を介してASIC117に貼り付けられている。なお、伝熱シート121がASIC117から剥がれるおそれがある場合には、図示しないが、別の固定シートにより伝熱シート121を通電保護シート125や制御回路基板41に貼り付けて固定してもよい。
【0051】
伝熱シート121のうち蓋体49の裏面に貼り付けられる部分は、同シート121の折返し部分とは反対側に開放されたスリット129によって複数(図示する例では3つ)の貼付片131に分割されている。一方、筐体35の裏面には、前後左右に延びる複数の補強リブ133が設けられている。複数の補強リブ133は、前後方向に延びる複数の縦リブ133aと、左右方向に延びる複数の横リブ133bとによって構成されている。
【0052】
複数の縦リブ133aは、蓋体49の左右両縁側に寄せて配置されており、蓋体49裏面の中央部分に伝熱シート121が貼り付けられる貼付領域135を画定している。この貼付領域135には、伝熱シート121のスリット129と対応する数(図示する例では2つ)の横リブ133bが横切るように形成されている。これら横リブ133bは、貼付領域135を伝熱シート121の貼付片131に対応する数の分割貼付領域137に区分している。
【0053】
この貼付領域135を区分する横リブ133bは、概ねASIC117の左右両側に対応する位置に配置されており、放熱空間123を、ASIC117に対応する第1空間としての中央空間123aとASIC117の側方位置に対応する第2空間としてのサイド空間123bとに仕切っている。当該横リブ133bは放熱の遮蔽壁となるため、中央空間123aではASIC117の発した熱がこもり易く、サイド空間123bでは中央空間123aよりもASIC117の発した熱が伝わり難い。
【0054】
伝熱シート121の個々の貼付片131は、スリット129に対応する横リブ133bを通して蓋体49裏面の異なる分割貼付領域137に貼り付けられている。つまり、伝熱シート121は、蓋体49のうち中央空間123aに対応する分割貼付領域137に貼り付けられると共に、両サイド空間133bに対応する各分割貼付領域137にも貼り付けられている。
【0055】
このように、伝熱シート121は、蓋体49裏面のうち相対的に温度上昇し難いサイド空間133bに対応する分割貼付領域137をも含めた比較的広い範囲に亘って貼り付けられている。それにより、伝熱シート121は比較的広い面積において蓋体49を介して外気により冷却されるようになっていて、特に、両サイド空間133bに対応する各分割貼付領域137に貼り付けられた部分で比較的高い空冷効果を得られるようになっている。
【0056】
図8に、無人飛行体1の飛行時の様子を表した側面図を示す。なお、この
図8において、白抜き矢印は無人飛行体1の飛行方向を示し、撮像カメラ7の拡大部の線矢印は飛行風の流れを示している。
【0057】
前記構成の無人飛行体1は、飛行しているときに空撮カメラ7を作動させることにより、空撮動画を撮影することができる。空撮動画の撮影時において、無人飛行体1を旋回させたり方向転換させたりするとき以外は、
図8に示すように、無人飛行体1は主に、空撮カメラ7の撮影方向に向けて前進飛行させるように操作される或いは自律飛行制御される。
【0058】
このとき、無人飛行体1が進行方向に向けて前傾姿勢となるため、それに伴い、空撮カメラ7もレンズ85が斜め下方を向いた前傾姿勢となる。これにより、空撮動画の撮影中は、空撮カメラ7の蓋体49外面が、飛行方向の前方から来る飛行風を受ける恰好になるため、特に飛行風に多く曝されて、積極的に空冷される。そのことで、制御回路基板41上のASIC117から伝熱シート121を通じて蓋体49に伝達された熱が、飛行風により効果的に外部へ放散される。
【0059】
-実施形態の効果-
この実施形態に係る空撮カメラ7によると、樹脂製の筐体35を採用すると共に、その筐体35内に収容した制御回路基板41上のASIC117と筐体35のうち特に飛行風に多く曝される蓋体49とを伝熱シート121で繋げるようにしたから、ASIC117が空撮カメラ7の作動に伴って発熱しても、当該ASIC117の熱を蓋体49に伝熱シート121を介して伝達し、その蓋体49から外部へ効果的に放熱することができる。これにより、筐体35を樹脂製として空撮カメラ7の軽量化を図りつつ、ASIC117の放熱性を高めることができる。
【0060】
そして、この実施形態に係る無人飛行体1によると、空撮カメラ7が前述の如く軽量化を図りつつASIC117の放熱性を高めることができる、という優れた特性を有しているので、無人飛行体1の飛行性能を悪化させることなく、制御回路基板41の信頼性を高めて空撮カメラ7の性能低下や動作不良といった不具合の発生を防止することができる。
【0061】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0062】
例えば、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0063】
前記実施形態では、伝熱シート121がグラファイトシートからなるとしたが、これに限らない。グラファイトシートは伝熱シート121の一例に過ぎず、伝熱シート121は、熱伝達率が良好なものであれば、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔からなるシートであってもよく、任意の伝熱材からなるシートを採用することができる。
【0064】
前記実施形態では、蓋体49の裏面に設けられた貼付領域135が横リブ133bによって3つの分割貼付領域137に区分され、且つ伝熱シート121が分割貼付領域137に対応する3つの貼付片131を有する形態を例示したが、これに限らない。貼付領域135は、横リブ133bによって4つ以上の分割貼付領域137に区分されていてもよいし、2つ以下の分割貼付領域137に区分されていても構わない。これらの場合、伝熱シート121は、スリット129によって分割された、分割貼付領域137に対応する数の貼付片131を有していればよい。
【0065】
また、貼付領域135は、縦リブ133aによって複数の分割貼付領域137に区分されていてもよいし、縦リブ133a及び横リブ133bの両方によって複数の分割貼付領域137に区分されていても構わない。これらの場合、伝熱シート121は、貼付領域135を区分する縦リブ133aに跨がって各分割貼付領域137に貼り付けられる。
【0066】
前記実施形態では、伝熱シート121が、蓋体49の裏面のうち中央空間123a及び両サイド空間133bに対応する各分割貼付領域137に貼り付けられているとしたが、これに限らない。伝熱シート121は、蓋体49の裏面のうち中央空間123aに対応する分割貼付領域137のみに貼り付けられていてもよいし、サイド空間123bに対応する分割貼付領域137のみに貼り付けられていても構わない。
【0067】
つまり、貼付領域135が補強リブ133(縦リブ133aや横リブ133b)によって複数の分割領域に区分され、伝熱シート121がそれら複数の分割領域のうち少なくとも1つの分割領域に貼り付けられていればよい。また、貼付領域135は、複数の分割領域(分割貼付領域137)に区分されていなくてもよい。要は、伝熱シート121が、制御回路基板41上のASIC117と蓋体49の裏面とに直接貼り付けられるなどして繋げられていればよい。
【0068】
前記実施形態では、本開示の技術に係る無人飛行体1に搭載される電子機器について、
空撮カメラ7を例に挙げて説明したが、これに限らない。無人飛行体1に搭載される電子機器は、レーザースキャナなどの測量装置であってもよいし、その作動に伴って発熱する集積回路が設けられた制御回路基板を内蔵するものであれば、用途に応じたその他の電子装置であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本開示の技術は、無人飛行体に搭載される空撮カメラ及び電子機器並びにそれを備えた無人飛行体について有用である。
【符号の説明】
【0070】
1…無人飛行体、3…機体、5…飛行ユニット、7…空撮カメラ(電子機器)、
9…ロータアーム、11…カメラステー、13…支持体、15…ロータユニット、
17…プロペラ、19…カメラ本体、21…カメラ装着ユニット、
25…マウントサポート、27…板状体、29…ダンパー、31…調節部、
33…ねじ、35…筐体、37…スピーカー、39…撮像ユニット、
41…制御回路基板、43…電気配線、43a…電源配線、43b…信号配線、
45…筐体収容部、47…開口、49…蓋体、51…ねじ、53…シール部材、
55…スピーカー取付部、57…コネクタ嵌合孔、59…通気孔、61…通音孔、
63…防滴シール、65…防滴コネクタ、67…フランジ、69…両面テープ、
71…内圧調整シール、73…底面カバー、75…ねじ、77…放音孔、
79…配線引出孔、81…内圧調整孔、83…配線ガイド部、85…レンズ、
87…撮像素子、89…ホルダ、91…レンズ孔、93…シール部材、
95…レンズ保護シート、97…フラットケーブル、99…基板ホルダ、
101…ねじ、103…ボス、105…ねじ、106…メモリカード、
107…カードソケット、108,109…開口、111…サイド端子部、
113…端子カバー、115…ねじ、117…ASIC(集積回路)、
119…電子回路部品、121…伝熱シート、123…放熱空間、
123a…中央空間(第1空間)、123b…サイド空間(第2空間)、
125…通電保護シート、127…伝熱用の開口、129…スリット、
131…貼付片、133…補強リブ、133a…縦リブ、133b…横リブ、
135…貼付領域、137…分割貼付領域