(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】乗客コンベアの投影システム
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20220704BHJP
B66B 23/12 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B66B31/00 A
B66B23/12 Z
B66B31/00 C
(21)【出願番号】P 2021072148
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸男
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080127(JP,A)
【文献】特開2019-214445(JP,A)
【文献】特開2015-008421(JP,A)
【文献】特開2007-062892(JP,A)
【文献】特開2011-105423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
B66B 3/00- 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段が走行するエスカレータの投影システムにおいて、
下階側の前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記エスカレータと連動し、複数の前記踏段に跨る表示となるコンテンツを出力する投影装置と、
前記踏段における利用者の有無を判定し、前記踏段の空きを判定する利用者有無判定手段と、
前記利用者有無判定手段の判定結果に基づき、出力する前記コンテンツを選定するコンテンツ選出手段と、
決定した前記コンテンツの投影指示を前記投影装置に出力し、前記コンテンツを処理する処理手段と、
を具備するエスカレータの投影システム。
【請求項2】
前記踏段の移動速度や運行方向等の運行状況を判定する運行状況判定手段を備え、
前記運行状況判定手段が前記運行状況について通常運転とは異なると判定した場合、前記利用者有無判定手段は利用者無しと判定して、前記踏段の広範囲が空きであると判定し、
前記コンテンツ選出手段は、前記踏段の広範囲に表示可能なコンテンツを選定し、
前記投影装置は、定位置に前記コンテンツを投影し続けることを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項3】
前記投影装置から出力された前記コンテンツは、前記踏段が走行する傾斜部に出現する踏面及び蹴上部に表示されるものであって、
前記踏段の形状及び前記投影装置から前記踏段の投影位置までの距離に基づき、前記コンテンツ選出手段で選定された前記コンテンツを、前記運行状況に合わせたコマ毎に画像を変換する射影変換手段をさらに備え、
前記処理手段における前記処理は、前記射影変換手段を介して前記コンテンツを補正することを特徴とする請求項2に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項4】
前記運行状況が低速待機運転の場合、前記射影変換手段は、前記移動速度に合わせてコマ毎に画像を変換し、
変換された前記コンテンツは、前記低速待機運転が終了するまで定位置に出現し続けることを特徴とする請求項3に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項5】
前記運行状況が停止待機の場合、前記射影変換手段は、投影開始する際に画像を変換し、
変換された前記コンテンツは、前記停止待機が終了するまで定位置に出現し続けることを特徴とする請求項3に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項6】
前記エスカレータの乗降口の近傍に設けられ人が接近したことを検出する人感センサ又は前記エスカレータの下階側より上方に設けられ前記踏段の情報を撮影し取得する撮像装置の少なくとも一方を備え、
前記利用者有無判定手段は、前記人感センサ又は前記撮像装置を介して得た情報をもとに利用者の有無を判定し、それに基づいて前記踏段の空きを判定することを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項7】
前記利用者有無判定手段は、前記人感センサと前記撮像装置のいずれかに基づき利用者無しと判定したときは前記踏段の広範囲が空きであると判定し、
前記コンテンツ選出手段は、前記踏段の広範囲に表示可能なコンテンツを選定し、
前記投影装置は、定位置に前記コンテンツを投影し続けることを特徴とする請求項6記載のエスカレータの投影システム。
【請求項8】
前記踏段の移動速度や運行方向等の運行状況を判定する運行状況判定手段を備え、
前記利用者有無判定手段が前記人感センサ又は前記撮像装置のいずれかに基づいて利用者有りと判定し、前記運行状況判定手段が前記エスカレータの運行方向が下降運転と判定した場合は、
前記コンテンツ選出手段は、前記踏段の所定の段数に表示可能な大きさの前記コンテンツを選定し、
前記投影装置は、前記エスカレータの運行に伴って近づいてきた前記利用者が投影位置に重なる前まで定位置に前記コンテンツを投影することを特徴とする請求項6記載のエスカレータの投影システム。
【請求項9】
前記エスカレータの下階側乗降口よりも上方に撮像装置が設けられ、
前記踏段に乗り込んだ前記利用者の位置を推定する位置判定手段をさらに有し、
前記利用者有無判定手段は、前記撮像装置に基づき利用者有りと判定した場合は、前記位置判定手段から得た前記利用者の前方の他の利用者の有無を判定し、
前記コンテンツ選出手段は、前記エスカレータ上に複数の利用者がいる場合に、前方と後方の利用者間に表示可能な大きさの前記コンテンツを選定し、
前記投影装置は、前方の利用者の後方であって対象の利用者の前方に、対象の利用者との間隔を保持し続けて、前記コンテンツを投影することを特徴とする請求項6に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項10】
乗車中の利用者の混雑度を判定する混雑度判定手段をさらに有し、
前記混雑度が閾値以下であり、利用者同士の間隔が一定以上ある場合に、
前記コンテンツ選出手段は、二段以上の前記踏段に表示可能な大きさの前記コンテンツを選定することを特徴とする請求項9に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項11】
前記エスカレータの下階側乗降口よりも上方に撮像装置が設けられ、
前記踏段に乗り込んだ前記利用者の位置を推定する位置判定手段と、
乗車中の利用者の混雑度を判定する混雑度判定手段と、をさらに有し、
前記混雑度判定手段により得られた前記混雑度が閾値以下であり、前記位置判定手段により得られた前記利用者の位置より、前記踏段の移動方向に対していずれか片側に広範囲にわたって空きスペースを判定した場合、
前記コンテンツ選出手段は、前記踏段の空きスペースを考慮した大きさの前記コンテンツを選定することを特徴とする請求項6に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項12】
前記投影装置から出力された前記コンテンツは、前記踏段が走行する傾斜部に出現する踏面及び蹴上部に表示されるものであって、前記撮像装置を備えている場合、
前記踏段の移動速度や運行方向等の運行状況を判定する運行状況判定手段と、
前記踏段の形状及び前記投影装置から前記踏段の投影位置までの距離に基づき、前記コンテンツ選出手段で選定された前記コンテンツを、前記運行状況に合わせたコマ毎に画像を変換する射影変換手段と、
をさらに備え、
前記処理手段における前記処理は、前記射影変換手段を介して前記コンテンツを補正することを特徴とする請求項6乃至請求項11のいずれか一項に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項13】
前記運行状況に加え、前記撮像装置で取得した画像のうち前記踏段の色のコントラストを抽出することで前記踏段の動きを検出することを特徴とする請求項12に記載のエスカレータの投影システム。
【請求項14】
無端状に連結された複数の踏段が走行する乗客コンベアの投影システムにおいて、
前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記踏段の情報を撮影し取得する撮像装置と、
前記撮像装置を介して得た情報をもとに、前記踏段における利用者の有無を判定し、前記踏段の空きを判定する利用者有無判定手段と、
前記利用者有無判定手段により利用者有りと判定された場合に前記利用者の位置を判定する位置判定手段と、
前記利用者有無判定手段と前記位置判定手段のいずれか一方もしくは双方の判定結果に基づき、出力するコンテンツを選定するコンテンツ選出手段と、
前記コンテンツの出力位置から前記コンテンツの表示位置、もしくは前記利用者から前記コンテンツの表示位置までの距離に基づき、前記コンテンツを変換する射影変換手段と、
前記利用者の有無及び前記利用者の位置の判定結果に基づき決定した前記コンテンツについて前記射影変換手段を介して処理をし、投影指示を出力する処理手段と、
前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記処理手段から出力された前記投影指示を受け、前記コンテンツを出力する投影装置と、
を具備し、
前記コンテンツは、複数の前記踏段に跨る表示であることを特徴とする乗客コンベアの投影システム。
【請求項15】
無端状に連結された複数の踏段が走行する水平型乗客コンベアの投影システムにおいて、
前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記踏段の情報を撮影し取得する撮像装置と、
前記撮像装置を介して得た情報をもとに、前記踏段における利用者の有無を判定し、前記踏段の空きを判定する利用者有無判定手段と、
前記利用者有無判定手段により利用者有りと判定された場合に前記利用者の位置からおよそ視点を推定する位置判定手段と、
前記位置判定手段の結果に基づき、表示されたときに前記利用者が動かずに視認可能な大きさのコンテンツを選定するコンテンツ選出手段と、
前記視点から前記コンテンツの表示位置までの距離に基づき、前記コンテンツを変換する射影変換手段と、
決定した前記コンテンツについて前記射影変換手段を介して処理をし、投影指示を出力する処理手段と、
前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記処理手段から出力された前記投影指示を受け、前記利用者の前方に前記コンテンツを出力する投影装置と、
を具備する水平型乗客コンベアの投影システム。
【請求項16】
無端状に連結された複数の踏段が走行し、前記踏段の踏面が一定の角度で連続して走行する傾斜型乗客コンベアの投影システムにおいて、
前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記踏段の情報を撮影し取得する撮像装置と、
前記撮像装置を介して得た情報をもとに、前記踏段における利用者の有無を判定し、前記踏段の空きを判定する利用者有無判定手段と、
前記利用者有無判定手段により利用者有りと判定された場合に前記利用者の位置からおよそ視点を推定する位置判定手段と、
前記位置判定手段の結果に基づき、表示されたときに前記利用者が動かずに視認可能な大きさのコンテンツを選定するコンテンツ選出手段と、
前記視点から前記コンテンツの表示位置までの距離に基づき、前記コンテンツを変換する射影変換手段と、
決定した前記コンテンツについて前記射影変換手段を介して処理をし、投影指示を出力する処理手段と、
前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記処理手段から出力された前記投影指示を受け、前記利用者の前方に前記コンテンツを出力する投影装置と、
を具備する傾斜型乗客コンベアの投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は乗客コンベア、特にエスカレータの投影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは従来、利用者や荷物の連続的な運搬を目的としている。特に商業施設に設けられるエスカレータにおいては、利用者への情報提供の場として有効活用するため、画像や映像を用いた様々な工夫がなされている。
【0003】
視覚的な情報を表示する仕組みとしては、例えば、手摺やサイドパネル、踏段等にラッピング等で広告を描いたものがあるが、広告内容を即時に変更することは難しい。
【0004】
投影等により、即時性のある画像を乗車中の利用者つまり乗客の視界に情報を届けるシステムとしては、直上から光を投射し、手摺に光の広告としてプロジェクションマッピングを投影するシステムや、乗客の動きに合わせて画像等の投影位置を追随させる天井への投影システム、前の乗客の背中に映し出すもの等が存在する。
【0005】
他にも、踏段の踏面上やライザに広告を表示するものとして、例えば、トラス内から踏段側に向けて画像等を映し出すものや踏段に設けた発光素子を介して電力表示するもの、ライザをスクリーンとして画像等を表示するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-082400号公報
【文献】特開2007-062892号公報
【文献】特開2015-008421号公報
【文献】特開2008-007275号公報
【文献】特開2012-166865号公報
【文献】特開平04-358691号公報
【文献】WO2019/155623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、利用者の有無やエスカレータの利用状況によっては、手摺や踏面上に画像等を映し出したとしてもアピール性が弱く、視覚的なインパクトに欠けるという難点がある。
【0008】
また、踏段に画像等を表示する場合には、エスカレータを利用している乗客にとって効果があるものの、遠方にいる通行人等に対するアピール性は芳しくない。例えば乗客がいる場合といない場合とで見せる対象とその位置に合わせた投影を行う等は記載されていない。移動の快適性を保持しつつデッドスペースを有効に活用するためには、投影と利用者の一部とが重ならないように配慮することが望ましい。
【0009】
以上のことから、エスカレータの利用状況を把握し、利用者の有無等の情報に基づいて範囲や画像を選定し、広範囲に表示することができれば空間の有効的な活用が可能となる。そこで、本実施形態では、エスカレータに乗り込んでいる利用者の有無を判定し、適した画像を踏段に投影するシステムを提供する。
【0010】
これにより、空きスペースを判定し、利用状況に合わせて即時性のあるコンテンツをエスカレータの広範囲に映し出すことを可能とする。例えば、通常よりも走行距離のあるエスカレータや時間帯により混雑度に波があるエスカレータ、利用頻度の比較的高くないエスカレータであっても、広範囲に跨る踏段の空きスペースを有効に活用し、注意喚起や広告表示等利用者に視覚的に訴えかけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態のエスカレータの投影システムは、無端状に連結された複数の踏段が走行するエスカレータの投影システムであって、下階側の前記踏段の出現位置よりも上方に位置し、前記エスカレータと連動し、複数の前記踏段に跨る表示となるコンテンツを出力する投影装置と、前記踏段における利用者の有無を判定し、前記踏段の空きを判定する利用者有無判定手段と、前記利用者有無判定手段の判定結果に基づき、出力する前記コンテンツを選定するコンテンツ選出手段と、決定した前記コンテンツの投影指示を前記投影装置に出力し、前記コンテンツを処理する処理手段と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態に係るエスカレータの概略図である。
【
図3】踏段に乗り込む利用者がいない場合の、コンテンツ投影位置を示す斜視図である。
【
図4】踏段に乗り込む利用者がいない場合の、コンテンツ投影位置を示す正面図である。
【
図5】踏段へ投影する際、射影変換に用いる距離を示す図である。
【
図7】踏段への投影位置を推定する際の三次元認識に係る図である。
【
図8】実施形態に係る投影に必要な構成を示すブロック図である。
【
図9】実施形態に係るフローチャート(1)である。
【
図10】踏段に乗り込む利用者がいる場合の、コンテンツ投影位置を示す斜視図である。
【
図13】実施形態に係る投影に必要な構成を示すブロック図である。
【
図14】実施形態に係るフローチャート(2)である。
【
図15】踏段に乗り込んだ利用者の動きが有る場合の、コンテンツ投影位置を示す斜視図である。
【
図16】下降運転の場合の、コンテンツ投影位置を示す正面図である。
【
図17】利用者の立ち位置がどちらか片方寄りである場合の、コンテンツ投影位置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
以下、図面を参照して実施形態を説明する。以下の実施形態の説明では、乗客コンベアとして、エスカレータを例に説明する。なお、以下の説明において、略または実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0014】
エスカレータ10の構造について、
図1を参照して説明する。
図1は一般的なエスカレータ10の側面図であり、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0015】
図1に示すように、トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット(駆動輪)24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御装置50が設けられている。
【0016】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット(従動輪)26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、
図1に示すように、複数の踏段30の前輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の前輪301は、トラス12に固定された不図示の前案内レールに沿って走行すると共に、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して上下に反転する。後輪302は、
図1に示すようにトラス12に固定された後案内レール25を走行する。
【0017】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0018】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転するベルトスプロケット27に走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68が設けられている。
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出または侵入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0019】
踏段30は、乗客を搬送するための本体部として、平坦状に形成される踏面(踏板)303と湾曲状に形成されるライザ(蹴上部)304とを有している。上昇運転の場合、利用者は下階側の乗降板34から踏段30の踏面303に乗車する。踏段30が上階の乗降口に達すると、乗車中の利用者すなわち乗客は踏段30の踏面303から上階側の乗降板32へ降車する。下降運転の場合、利用者は上階側の乗降板32から踏段30の踏面303に乗車する。踏段30が下階の乗降口に達すると、その乗客は踏段30の踏面303から下階側の乗降板34へ降車する。
【0020】
図2は、実施形態に係るエスカレータの概略図である。架け渡された踏段30の一部は周辺にいる利用者に視認可能となっており、スカートガード44、欄干36、手摺りレール39がトラス12に立設され、長手方向に延びている。天井近傍には、撮像装置(カメラ)70と投影装置(プロジェクター)72が設けられている。投影装置72は、例えば、エスカレータ10の下階側の乗降口、踏段出現位置の上方に設けられている。
【0021】
ただし下階側の乗降板34よりも上方であれば取付位置は限定しない。なお、投影装置72は異なる位置に複数個設けてもよい。撮像装置70はエスカレータ10の運転を監視し、踏段周辺の映像を取得する役割を有し、取得した映像は機械室14内の制御装置50に送られる。投影装置72は状況に合わせた画像もしくは映像を投影する役割を有し、制御装置50から送られた指示に基づき、複数の踏段30に跨って投影する。なお、投影するとしている画像、映像、プロジェクションマッピング等の光の出力を含めて、以下、コンテンツと表記する。
【0022】
図3は、踏段に乗り込む利用者がいない場合のコンテンツ投影位置を示す斜視図であり、
図4は正面図である。コンテンツ74が投影され、複数の踏段30に跨って表示される様子を示す。踏段に乗り込む利用者、すなわち乗客がいないことを判定するためには、運行状況及び撮像装置により取得した映像等を用いる。乗客がいない場合とは、低速待機運転や停止待機等の通常運転と異なる状況に加えて、通常運転であっても踏段30へ乗り込む利用者がいない状況のいずれの場合でも構わない。例えば、周辺における人の往来はあるものの踏段30へは乗り込まない時間帯がある商業施設や空港等のエスカレータを想定する。他にも、複数号機のエスカレータが立設されており、特定の号機の使用頻度が低い施設等でも構わない。このとき、コンテンツ74は、踏段30の大部分に複数段に跨って広範囲に投影され、一連で意味を成し、識別力を生じる表示であるとする。コンテンツ74の内容としては、エスカレータ10乗車にあたっての注意喚起や運行方向の表示、施設の案内表示、他階層の混雑度等の情報、その他宣伝のための広告表示等を含める。ピクトグラム等のマークをはじめ、イラストや言葉等を表示することで、遠方の通行人にも視認可能とする。コンテンツ74の表示は、画像や映像の投影のみならず陰影や光を用いたプロジェクションマッピング等の仕組みであっても構わない。エスカレータ10の踏段30が動いている場合であっても、投影している間のコンテンツ74の表示位置は変わらず、例えば
図4のように、下階の乗降口近傍からエスカレータの中間位置までの複数の踏段30に跨った定位置にコンテンツが出現し、遠方の通行人を含めた周辺の利用者に視認可能となる。ただし、定位置とは
図4に示す位置に限定されず、下階乗降口から上階乗降口までの間に存在する複数の踏段30に跨った所定の領域でもよい。
【0023】
次に、コンテンツ74の表示に関して、画像の変換方法を説明する。
【0024】
図5は、投影装置72からコンテンツ投影位置までの距離を示す図であり、
図6は、射影変換のイメージを示す図である。エスカレータ10本体を正面から見た場合、
図5に示すように、投影装置72から投影面までの距離が踏段30の部分によって異なるため、投影するコンテンツ74の歪みを解消するために、奥行や凹凸等の形状に合わせて画像を変換する必要がある。そこで、
図6に示すように、一般的に投影画像を四角形のメッシュで分割し、(a)から(b)のように長方形を台形へ変形させる射影変換(ホモグラフィ変換)を用いることで画像を補正する。投影位置の四角形を台形の組み合わせとしてみなし、分割した複数のコマとして変換する。
【0025】
変換は一般的な技術を用いることとするが、例えば次の式(1)によって表せる。
【0026】
【0027】
i及びjは2次元画像の画素位置であり、Hi,jは変換行列の配列である。エスカレータ10の踏段30は決まった方向へ移動しており、変換行列は時間により変化することとなる。複数ある踏段30の形状はいずれも同一であり、かつ、移動速度が基本的には一定であるため、一定の周期で同じ変換行列が使用可能である。このため、繰り返し射影変換を行うことで、歪み補正を行ったコンテンツ74を連続的に投影可能となる。
【0028】
次の式(2)は、変換行列の繰り返し周期である。
【0029】
【0030】
vはエスカレータの運行速度[m/s]、lは踏段の走行距離[m]である。変換行列のパターン数は、一秒あたりのフレーム数毎に画像変換して算出する。
【0031】
踏段30の位置や運行速度については、エスカレータ10本体の制御装置50と連動し同期することで、コンテンツ74の補正を円滑に行うことが可能となる。
【0032】
なお、制御装置50と連動させずに、撮像装置70で取得した画像から踏段30の位置及び運行速度を算出して、コンテンツ74の補正に適用するとしても構わない。この場合は、デマケーションライン305と踏面303との色のコントラストを用いて画像の経時変化を見ることで、速度等を推定する。
図7は、踏段30において、コンテンツ74の投影位置を推定するために踏面303とライザ304の位置を判定する三次元認識に係る図であり、上述したように、色のコントラストから踏面303とライザ304のそれぞれの幾何学的位置を推定する。仮にエスカレータ10に利用者が乗り込み、踏段30に留まった場合には、頭や足の位置で人と判定するのに加え、デマケーションライン305が一部見えなくなり通常の画像との差分が生じることにより位置を認識できる。また人だけでなく、キャリーバッグ等の手荷物の有無を判定することも可能となる。
【0033】
このようにして、画像の射影変換を行うことで、複数の踏段30を跨いで一つのコンテンツ74を投影する場合であっても、表示された画像が歪んだり曲がったりして映ることを防ぎつつ、コンテンツ74に識別力を生じさせて人の目に視認可能としている。
【0034】
図8は、制御部500のはたらき及び動作内容を示す。制御部500は、運行状況判定手段501と、人物判定手段(利用者有無判定手段)502と、コンテンツ選出手段503と、射影変換手段504と、処理手段505とを有する。上述の各手段を有する制御部500のはたらきを、機械室14内の制御装置50に兼ね備えることとしてもよい。
【0035】
運行状況判定手段501は、エスカレータ10の速度や向き等の運行状況を判定する制御装置50の機能の一部である。
【0036】
人物判定手段502は、運行状況判定手段501及び撮像装置70から踏段に乗車中の利用者の有無を判定する。ここでは乗客の有無を判定することを示し、撮像装置70の他にも、乗り口付近に赤外線センサなどの人感センサ等を用いて利用者のエスカレータ10への乗り込みを検知することで乗客の有無を判定しても良い。
【0037】
コンテンツ選出手段503は、乗客の有無の判定結果に基づき、踏段30に表示するコンテンツ74を選定する。乗客がいない場合は、広範囲、例えばエスカレータ10の踏段30の大部分に投影可能であるため、適したコンテンツを選定する。
【0038】
射影変換手段504は、選出されたコンテンツを記憶部510から抽出し、踏段30の形状及び投影装置72から踏段30までの距離に基づき、コンテンツ74の画像等を射影変換する。記憶部510は、機械室14内に備えることとする。
【0039】
処理手段505は、投影装置72に対して、選出され射影変換されたコンテンツ74を踏段30に投影する指示を出し、処理をする。
【0040】
図9は、本実施形態のエスカレータ10に係る動作を示すフローチャートであり、踏段30へのコンテンツ投影の流れを示している。
図9は、乗客がいない場合であって、エスカレータ10の略全面または広範囲の踏段30に跨るように投影する動作の流れである。
【0041】
図9に示すように、エスカレータ10における制御部500の運行状況判定手段501により、通常運転を行っているか否か判定する(ステップS101)。通常のエスカレータ10は、利用者のいない時間帯には、低速待機運転や停止待機等による省エネ運転を行うことが多い。省エネ運転とは例えば、利用者がいない場合に速度を落として低速待機運転を行い、一定時間経過後に停止して停止待機に切り替わる等、閑散時にエスカレータ10の運行速度をコントロールすることで消費電力量を削減する仕組みのことである。そのため、通常運転を行っていない場合には乗客がいないと判断しても構わず撮像装置70等から乗客の有無を判定するステップを省略できる。通常運転を行っている場合(ステップS101:Yes)、人物判定手段502により、撮像装置70もしくはセンサから得られた情報をもとに、乗客の有無を判定する。乗客がいない場合(ステップS102:No)、複数の踏段30に跨って広範囲にコンテンツ74を表示することが可能であるため、コンテンツ選出手段503は、適した大きさ及び内容のコンテンツを選定する(ステップS103)。射影変換手段504は、ステップS103の結果選出されたコンテンツを記憶部510から抽出し、踏段30の形状及び投影装置72から踏段30の投影位置である踏面303・ライザ304との距離に基づき、コンテンツ74の画像等を射影変換する(ステップS104)。低速待機運転もしくは通常運転等踏段が一定速度で動作継続している場合は、運行状況が変わるまで移動速度に合わせてコマ毎に画像を変換する。その後、処理手段505が投影装置72に対してコンテンツ74の投影指示を出力し、指示が出された投影装置72が、踏段30に対して光の画像等を投影する(ステップS105)。
【0042】
低速待機運転もしくは停止待機等、通常運転でない場合(ステップS101:No)、撮像装置70等で判定せずとも乗客がいないとみなされるため、乗客の有無を判定するステップ(ステップS102)を飛ばし、適したコンテンツ74を決定するステップ(ステップS103)に入り、それ以降は上述の通りである。
【0043】
なお、コンテンツ74を広範囲に表示することが目的であるため、射影変換手段504による投影画像の射影変換を行わずに、複数の踏段30にコンテンツ74を投影することも成し得る。この場合、コンテンツ選出手段503により投影するコンテンツが選出されたステップS103の後、ステップS104を省略して投影装置72に対してそのコンテンツを投影する指示を出し、投影処理が行われるステップS105に進むこととする。これによれば、一段階分ステップを削減することができ、コンテンツ投影までの処理速度を向上させることができる。
【0044】
また、射影変換を行う場合のうち低速待機運転時などの特定の条件下を前提とする場合は、特定の条件下で予め射影変換を行ったコンテンツ74を記憶部510に保存し、投影するコンテンツ74が選出されたステップS103の後、射影変換のステップS104を省略して、投影処理のステップS105に進むことも可能である。低速待機運転時については運転速度が分かっているため、踏段位置と同期して変換済みコンテンツを投影することで都度行っていた射影変換の必要がなくなり、コンテンツ投影までの処理速度を向上させることができる。
【0045】
以上に述べたように、本発明の実施形態によれば、運行状況及び取得した画像から乗車中の利用者の有無、すなわち乗客の有無を判定し、乗客がいないと判定された場合には、その状況に合わせたコンテンツ74をエスカレータ10の複数の踏段30に跨って広範囲に表示することで、踏段の空きスペースの一部を有効活用することが可能となる。これにより、例えば商業施設や空港等において、乗客のいない時間帯には、下階側を通過する人物に対して、エスカレータ10の踏段30に広告や宣伝のための映像、注意喚起の画像等を大きく表示でき、視認可能にアピールすることが可能となる。
【0046】
また、複数の踏段30の投影位置の違いによる影響を排除し、適切に画像変換したコンテンツ74を表示することで歪みを減らしてエスカレータ10周辺の通行人等に対してもコンテンツ74を見せることが可能となる。
【0047】
<第二実施形態>
次に、
図10から
図14を用いて第二実施形態を説明する。以降の実施例では、同一構成要素は同一符号を付し、重複する説明を省略する。前述した第一実施形態では、利用者が踏段に乗り込んでいない場合の仕組みであったのに対し、第二実施形態は、利用者が踏段に乗り込み、乗客がいる場合の投影システムに関するものである。
【0048】
図10は、乗客がいる場合の投影位置を示す斜視図である。例えば、利用者である乗客Aは、下階側の乗降板34から上昇運転しているエスカレータ10の踏段30に乗り込む。乗客Aが足を置いている踏段30よりも数段前の踏段30にコンテンツ74を投影する様子を示している。複数の踏段30に投影する場合は、乗客Aの立ち位置を含めある程度の間隔が必要となるため、乗車率が50%以下である場合が望ましい。なお、乗車率のみで判断されるのではなく、局所的な混雑を避けて投影することを可能とする。全体として混雑度が高く、前の乗客との距離が近い場合は、複数の踏段30への投影は行わない。適用するエスカレータ10については、通常の公共施設での施設に加え、走行距離の比較的長いエスカレータであれば、前方に立つ乗客との間を空けて乗り込むことがあり、さらに乗車時間が長いため、コンテンツ表示機能は有効的である。
【0049】
図11は、動作を示す正面図である。
図10に示したように踏段30に乗り込んだ乗客Aの目線の先にコンテンツ74が表示されるが、エスカレータの運行速度に合わせて、(a)から(b)のように、コンテンツ74の投影位置を移動していくこととする。これにより、常に乗客Aの目線の先にコンテンツ74が映し出され、アピール性を保持して乗客を運搬することができる。コンテンツ74の投影に関しては、上述の仕組みを用い、台形補正等の射影変換によって所定コマ毎に画像を変換して投影し続ける。なお、複数の利用者が乗り込み乗客が複数人いる場合であって、乗客間で空きスペースがある場合には、
図12のように、それぞれの乗客に対してコンテンツを表示するとしても構わない。
【0050】
投影するコンテンツ74としては、「手摺におつかまりください」「乗車中は歩かないでください」等のエスカレータ10乗車にあたっての注意喚起に関する文字の表示や地図や目的の場所の施設の案内表示、他階層の混雑度等乗客に有益な情報関連、広告等管理者や施設に有効な情報を想定する。
【0051】
図13は、本実施形態における制御部500のはたらき及び動作内容を示す。前述した
図8の構成に加えて、位置判定手段506及び混雑度判定手段507を有する。
【0052】
人物判定手段502により乗客がいると判定された場合は、乗客Aの位置を判定する位置判定手段506と、乗車率から混雑度を推定する混雑度判定手段507とを用いて、エスカレータ10内における利用者の位置及び混雑度を判定する。
【0053】
コンテンツ選出手段503は、乗客がいない場合は、広範囲、例えばエスカレータ10の踏段30の大部分に投影可能であるため、適したコンテンツを選定するのに対し、乗客がいる場合は、投影範囲が制限されるためそれぞれに合わせたコンテンツを表示映像として決定する。コンテンツの大きさに加えて、乗車中の乗客へのアピール性が増すため、より適した内容であるとなお良い。
【0054】
図14は、本実施形態のエスカレータ10に係る動作を示すフローチャートであり、踏段30へのコンテンツ投影の流れを示している。
図14は、乗客がいない場合の流れを示した
図9に続いて、乗客がいると判断され、混雑していない場合のコンテンツ投影動作の流れである。
図9において乗客がいると判定された場合(ステップS102:Yes)は、
図14のフローチャート(B)へと続く。
【0055】
図14に示すように、乗客がいると判定された場合は、位置判定手段506により利用者の位置を判定し(ステップS201)、混雑度判定手段507によりエスカレータ10の乗車率から混雑度を推定する(ステップS202)。そして撮像装置70もしくはセンサで乗客間のおおよその間隔を推定する(ステップS203)。撮像装置70の場合は、画像による、例えば頭や肩等の人物認識から、センサの場合は、乗車の際に反応した時間差から、それぞれ間隔を推定する。ステップS202の混雑度が閾値以下であり(ステップS204:Yes)、乗客間の間隔が空いている場合、乗客がエスカレータ10内で進行方向へ歩く等、動きの有無を判定する。乗り込んだ初期の踏段30位置から動きが無い場合(ステップS206:No)、乗客のいる踏段30を除くエスカレータの一部にコンテンツを表示することになるため、適した大きさ及び内容のコンテンツ74を選定する(ステップS207)。ステップS207の結果選出されたコンテンツ74を記憶部510から抽出し、踏段30の形状及び投影装置72から踏段30の投影位置である踏面303・ライザ304の距離に基づき、投影位置に合わせてコンテンツ74の画像等を射影変換する(ステップS208)。射影変換後のコンテンツを投影する指示を投影装置72に対して出力し、指示を出された投影装置72が、推定された乗客の間隔があるとき、その対象の利用者の立ち位置よりも数段前の踏段30に対して光の画像等を投影する(ステップS209)。そして、運行状況に合わせ、その動きとともに画像を投影する。
【0056】
ステップS202の混雑度が閾値よりも大きい場合(ステップS204:No)、ステップS203の乗客間の間隔が無い場合(ステップS205:No)、もしくは、乗り込んだ踏段30から乗客に動きがある場合(ステップS206:Yes)には、画像投影はせずに流れは終了する。
【0057】
ただし、ステップS206において乗客に動きがある場合には、
図15に示すように、通常よりも前方に投影することとしても構わない。このときのコンテンツ74の内容は、例えば、「足元にご注意ください」等の文字やそれをほのめかすマーク等、注意喚起であることが望ましい。
【0058】
なお、第一実施形態で述べたように、射影変換手段504による投影画像の射影変換を行わずに、複数の踏段30にコンテンツ74を投影することも成し得る。この場合、コンテンツ選出手段503により投影するコンテンツ74を選出したステップS207の後、投影装置72に対してそのコンテンツを投影する指示を出し、投影処理が行われるステップS105に進むこととする。これによれば、一段階分ステップを削減することができ、コンテンツ投影までの処理速度を向上させることができる。
【0059】
ここまで上昇運転の場合を想定して説明したが、コンテンツ74の投影については運転方向を限定しない。エスカレータ10の運行状況、特に運行速度に合わせて動きに追随するようにコンテンツ74を表示する上昇運転に対して、下降運転の場合は、下階層側の通行人を対象として、
図16に示すように、下階層寄りの複数の踏段30に跨った定位置に投影し続けるとしても構わない。ただし、定位置に投影する場合は、投影したコンテンツ74が乗客に重なる前に投影を終了することとする。
【0060】
他にも、
図17に示すように、利用者の位置及び混雑度を判定した上で、複数の踏段30に跨るようにしつついずれか片側に広範囲にわたってコンテンツ74を表示してもよい。また、撮像装置70で取得した画像から、利用者の身長や目線の位置を検出し、それに適した位置に表示されるようにコンテンツ74を変換した上で投影しても構わない。この場合、あらかじめ利用者の頭の形状をパターン認識しておくことで位置を検出する。視点の位置を配慮して投影することで、コンテンツはより分かり易く視認可能となる。
【0061】
以上に述べたように、第二実施形態によれば、エスカレータの乗客がいる場合、もしくは踏段への乗り込みを検知した場合に、利用者の位置や混雑度等の状況に合わせて表示するコンテンツ画像や表示範囲を選定し、エスカレータ10に投影することで、乗車中の利用者つまり乗客に対して、有効性のある表示を視認可能とすることができる。これにより、踏段の空きスペースの一部を有効活用することが可能となる。例えば商業施設や空港等において、乗客のいる時間帯には、乗客に対して、エスカレータ10の踏段30に広告や宣伝のための映像、注意喚起の画像等を大きく表示でき、視認可能にアピールすることが可能となる。また、乗客がいる場合であって、特に上昇運転の場合は、踏段に乗車している乗客に対して視認可能に照らすことができ、下降運転の場合は、踏段に乗り込む前の下階側の人物に対してアピールすることができる。
【0062】
また、本発明を適用した乗客コンベアとして、上下階にわたって搬送するエスカレータの踏段に投影するシステムを例に説明してきたが、一定速度で移動することで人物を搬送する装置であれば水平型のエスカレータや傾斜型のエスカレータ、いわゆる動く歩道(オートロード)等の他の乗客コンベアに適用しても構わない。動く歩道に適用の場合には、踏面の上方から複数の踏段に対して適したコンテンツを投影する。さらに、目線は投影位置よりも上方となり、角度が付くことによる見えづらさを解消するために、台形補正の射影変換など目線に合わせたコンテンツの画像変換を行い、角度を調整するとしても構わない。
【0063】
このように、動く歩道において、乗車中の利用者つまり乗客に広告等の何らかの表示を視認可能とすることで、移動中のアピール性や快適性を向上させることができる。
【0064】
本発明の実施形態及びいくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…建屋、2…支持アングル、3…支持アングル、10…エスカレータ、12…トラス、14…上階側の機械室、16…下階側の機械室、18…駆動装置、20…モータ、22…駆動チェーン、24…駆動スプロケット(駆動輪)、25…案内レール、26…従動スプロケット(従動輪)、27…ベルトスプロケット、28…踏段チェーン、30…踏段、301…前輪、302…後輪、303…踏面、304…ライザ(蹴上部)、305…デマケーションライン、32…乗降板、34…乗降板、36…欄干、38…手摺ベルト、39…手摺レール、40…正面スカートガード、42…正面スカートガード、44…スカートガード、46…インレット部、48…インレット部、50…制御装置、500…制御部、501…運行状況判定手段(運行状況判定部)、502…人物判定手段,人物判定部(利用者有無判定手段,利用者有無判定部)、503…コンテンツ選出手段(コンテンツ選出部)、504…射影変換手段(射影変換部)、505…処理手段(処理部)、506…位置判定手段(位置判定部)、507…混雑度判定手段(混雑度判定部)、510…記憶部、60…コム、62…コム、64…案内ローラ群、66…案内ローラ群、68…押圧部材、70…撮像装置(カメラ)、72…投影装置(プロジェクター)、74…コンテンツ
【要約】
【課題】
運搬を目的とするエスカレータについては、利用者への情報提供の場として画像を踏段に投影することがあるが、利用状況に基づいてデッドスペースを判定することが難しい。この難点を解消するため、エスカレータの利用者の有無から空きスペースを判定し、利用状況に合わせて適切なコンテンツを利用者の一部と重ならないように広範囲に映し出す投影システムを提供する。
【解決手段】
無端状に連結された複数の踏段が走行するエスカレータにおける投影システムは、下階側の踏段の出現位置よりも上方に位置し、複数の踏段に跨る表示となる画像や映像等のコンテンツを出力する投影装置と、踏段における利用者の有無を判定し、踏段の空きを判定する利用者有無判定手段と、その判定結果に基づき、出力するコンテンツを選定するコンテンツ選出手段と、決定したコンテンツの投影指示を投影装置に出力し、処理する処理手段と、を具備する。
【選択図】
図3