(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ピリミジニル-ヘテロアリールオキシ-ナフチル化合物および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20220704BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20220704BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220704BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220704BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20220704BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220704BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220704BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220704BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220704BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/351
A61K31/506
A61K31/573
A61K31/69
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021513790
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 US2019050698
(87)【国際公開番号】W WO2020056061
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/105184
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】マリー-ガブリエル・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ギボンズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンディ・リー
(72)【発明者】
【氏名】クオン・キュー・リィ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ・ブラッドリー・シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】アビ・アシュケナージ
(72)【発明者】
【氏名】ラムジー・ビバリッジ
(72)【発明者】
【氏名】リアン・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ルミール
(72)【発明者】
【氏名】フー・レオ
(72)【発明者】
【氏名】ライ・クウォン・ワー
(72)【発明者】
【氏名】ワン・フェイ
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-536280(JP,A)
【文献】国際公開第2007/100646(WO,A1)
【文献】特表2010-514689(JP,A)
【文献】特表2021-536496(JP,A)
【文献】特許第6925435(JP,B2)
【文献】Alan C. Cheng, et al.,J. Med. Chem.,2010年,Vol.53, No.11,p.4502-4510
【文献】Paul E. Harrington, et al.,ACS Med. Chem. Lett.,2014年,Vol.6, No.1,p.68-72
【文献】Victor J. Cee, et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2009年,Vol.19, No.2,p.424-427
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/14
A61K 31/506
A61K 45/00
A61K 31/573
A61K 31/69
A61K 31/351
A61K 39/395
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または式(II):
または
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩:
(式中、
R
1は水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、
-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、
-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~C
7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロシクロアルキルであり;
R
2は水素、ハロゲン、-CN、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキルであり;
R
3は-L
1-R
1、水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
R
4は
-L
2
-R
9
、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
R
5は水素、ハロゲン、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
各R
6は独立に、水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
a、-NR
aR
b、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-SR
a、-S(O)
2R
a、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~6シクロアルキル、-SO
2(C
1~6アルキル)、または-SO
2(C
1~6ハロアルキル)であり;
R
7は水素、ハロゲン、-CN、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、またはR
10-置換もしくは非置換C
3~6シクロアルキルであり;
各R
8は独立に、水素、ハロゲン、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
R
9は水素、ハロゲン、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~C
7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロシクロアルキルであり;
各R
10は独立に、ハロゲン、-N
3、-CF
3、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
11-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
11-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
11-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、 R
11-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
11-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
11-置換もしくは非置換5~6員ヘテロアリールであり;
各R
11は独立に、ハロゲン、-N
3、-CF
3、-CCl
3、-CBr
3、-CI
3、-CN、-CHO、-OH、-NH
2、-COOH、-CONH
2、-NO
2、-SH、-SO
2Cl、-SO
3H、-SO
4H、-SO
2NH
2、非置換C
1~6アルキル、非置換2~6員ヘテロアルキル、非置換C
3~7シクロアルキル、非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、非置換C
5~6アリール、または非置換5~6員ヘテロアリールであり;
各R
12は独立に、水素、ハロゲン、NPG、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
L
1は-NHSO
2-、-NHC(O)-、
NHC(O)O-、-NHC(O)NH-、-NH-、-O-、-S-、または-SO
2-であり;
L
2は-NHSO
2-、-NHC(O)-、
NHC(O)O-、-NHC(O)NH-、-NH-、-O-、-S-、または-SO
2-であり;
各R
aおよびR
bは独立に、水素、非置換C
1~6アルキル、非置換C
1~6ハロアルキル、非置換C
1~6アルコキシ、非置換C
2~6アルケニル、非置換C
2~6アルキニル、非置換C
3~7シクロアルキル、非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、非置換C
5~6アリール、または非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
mは1または2であり;
nは1または2であり;
pは1、2、3、4、5または6であり;および
環AはC
3~6シクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、C
5~6アリール、または5員もしくは6員ヘテロアリールである)。
【請求項2】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が式(I)を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が式(II)を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
環Aが6員ヘテロシクロアルキルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
12がハロゲンまたはC
1~3アルキルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
12が-Fである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
pが2であり、R
12が-Fおよびメチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
環Aが以下:
の構造を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R
6および
8が水素である、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R
2が非置換C
1~3アルキルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R
4が
-L
2
-R
9
であり、L
2が-NHSO
2-または
-NHC(O)-である、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
9がR
10-置換フェニルであり、R
10がハロゲンである、またはR
9がR
10-置換もしくは非置換C
3~6シクロアルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R
9が2~6員非置換ハロアルキル、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
R
5がハロゲンまたは水素である、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
R
5が非置換
1~3アルキルである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
以下の式:
または
を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
化合物が、
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項19】
がんを有する患者のがんを処置するための医薬組成物であって、有効量の請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記がんが多発性骨髄腫である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記がんが乳がんである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
1つ以上の追加の抗がん治療と組み合わせて使用するための、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
がんを処置するための医薬の製造における請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項24】
前記がんが多発性骨髄腫である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記がんが乳がんである、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年9月12日に出願された、中国国際出願シリアル番号PCT/CN2018/105184の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
小胞体ストレス応答(UPR)を誘因する小胞体の折りたたみ異常タンパク質蓄積の重要なセンサーの1つである、キナーゼ/エンドリボヌクレアーゼイノシトール要求性酵素1(IRE1α)は、IRE1αのキナーゼ部分のATP結合部位に結合し、そのエンドリボヌクレアーゼ活性を遮断する阻害剤について、がんを含む多様な疾患の潜在的な治療標的である。IRE1αは、折りたたみ異常タンパク質に結合する小胞体内腔ドメイン、膜貫通セグメント、およびキナーゼ部分とタンデムエンドリボヌクレアーゼドメインとからなる細胞質部分を有する膜貫通型二機能性タンパク質である。構造活性相関(SAR)研究により、組換えIRE1αキナーゼスクリーニングで選択的であり、組換えIRE1αおよび細胞IRE1αのエンドリボヌクレアーゼ活性に対して強力な化合物が得られた。IRE1α活性は、UPRのある特定の細胞保護機能および生存促進機能を媒介し、ある特定の腫瘍細胞株の生存能および成長を増加させ、以前の報告とは逆に、悪性腫瘍成長を遮断する特定の小分子阻害剤の有効な治療標的となり得る(Harrington,P.E.et al(2015)ACS Med.Chem.Lett.6:68-72)。さらに、IRE1αの阻害剤は、ある特定の自己免疫障害、神経変性障害、線維性障害および代謝障害を含む、がん以外の他のタイプの疾患に対して治療上有用となり得る(Wang M.and Kaufman,R.J.(2016)Nature 529:326-335)。
【0003】
小胞体(ER)におけるタンパク質折りたたみの恒常性調節は、3つの重要な細胞内シグナル伝達経路の制御下にある:小胞体ストレス応答(UPR)を一緒に調整するIRE1α、PERKおよびATF6(Schroder,et al(2005)Mutat Res-Fund Mol Mech Metagenesis 569:29-63)。ERまたはある特定の種類の細胞傷害もしくはストレスにおけるタンパク質折りたたみに対する需要の増加は、ERストレスと呼ばれる状態であるERでの折りたたみ不全タンパク質の蓄積につながる。細胞は、UPRを活性化して、高忠実度のタンパク質合成能力を調整または維持することによって、ERストレスに応答する(Walter,P.and Ron,D.(2011)Science,334:1081-1086)。IRE1αは、UPRの3つのブランチの中で最も進化的に保存されている。重要なことに、UPRはERストレスの重症度および持続時間に応じて細胞の生/死を決定し、最終的な結果は細胞の生存および回復またはプログラム細胞死(アポトーシス)のいずれかとなる(Sovolyova et al,(2014)Biol Chem 395:1-13)。UPRの3つの経路全てが、折りたたみ不全タンパク質の蓄積に対して協調的な反応を形成し;いくつかの研究は、異なる経路間にクロストークがあることを実証している(Yamamoto et al,J.Biochem.(2004)136:343-350;Arai et al,FEBS Letts.(2006)580:184-190;Adachi et al,Cell Struct.Func.(2008)33:75-89)。ERストレスおよびUPRの活性化は、機械的損傷、炎症、遺伝子変異、感染症、酸化ストレス、代謝ストレス、および悪性腫瘍に関連する他のタイプの細胞ストレスによって引き起こされ得る。ERストレスは、慢性肝疾患(Galligan et al,J.Toxicol.(2012)Vol.2012,Article ID 207594,12 pgs.;Shin et al,Cell Reports(2013)5:654-665;Ji,Int.J.Hepatol.(2014)Vol.2014,Article ID 513787,11 pages)、肺線維症(Baek et al,Am.J.Resp.Cell Mol.Bio.(2012)46:731-739;Tanjore et al,Biochim Biophys Acta(2012, online),(2013)1832:940-947)、腎線維症(Chiang et al,Mol.Med.(2011)17:1295-1305)、心血管疾患(Spitler & Webb,Hypertension(2014)63:e40-e45)および炎症性腸疾患(Bogaert et al,PLoS One(2011)6(10)e25589;Cao et al,Gastroent(2013)144:989-1000)などの内臓の線維性リモデリングをもたらす疾患にも関係している。
【0004】
IRE1αは、細胞質キナーゼおよびエンドリボヌクレアーゼ活性を有する膜貫通型二機能性タンパク質である。IRE1αのN末端ドメインは、ER内腔の折りたたみ不全タンパク質の存在を感知し、細胞質キナーゼドメインの活性化を誘因し、今度はこれがC末端エンドリボヌクレアーゼを活性化することが提案されている。IRE1αはER脂質二重層を介して情報を伝達する(Tirasophon et al,Genes & Develop.(2000)14:2725-2736)。ERタンパク質負荷の増加および折りたたみ不全タンパク質の存在により、IRE1α分子からERシャペロンGRP78/BiPが解離し、これが折りたたみ異常タンパク質に結合し、次いで、細胞質キナーゼドメインで二量体化およびトランス自己リン酸化を起こす。これにより、サイトゾルのIRE1αエンドリボヌクレアーゼ部分が活性化される。IRE1αエンドリボヌクレアーゼは、スプライシングされていないXボックスタンパク質1(XBP1u)をコードするmRNAを切断する能力を有し;これにより、26-ヌクレオチドイントロンが切除され、強力な転写因子をコードするスプライシングされたXBP1(XBP1s)mRNAが形成される。核への輸送後、XBP1sタンパク質はUPRプロモーターエレメントに結合して、例えば、折りたたみ異常タンパク質のER関連分解の強化を通して、ならびにERのタンパク質折りたたみを支持するシャペロンおよびジスルフィドイソメラーゼのレベルの上昇を通して、ERが折りたたみ不全タンパク質に対処する能力を強化する遺伝子の転写を開始する。IRE1α活性化は、ER体積の拡大にも関連しており、これはタンパク質折りたたみ能力を高めるための適応機構として解釈されている(Sriburi et al,J.Cell.Bio.(2004)167:35-41);(Chen,Y.(2013)Trends Cell Biol.,23,547-555)。さらに、IRE1αエンドリボヌクレアーゼは、調節されたIRE1α依存性mRNA崩壊(RIDD)と呼ばれるプロセスでさまざまなmRNAを切断し、これにより、タンパク質の翻訳とERへのタンパク質の移入の両方が減少し、恒常性の再確立に役立つ(Hollien & Weissman,Science(2006)313:104-107)。がん細胞では、IRE1αがRIDDを通してデスレセプター5(DR5)のmRNAレベルを低下させることによって、ERストレス誘発性アポトーシスを抑制する(Lu et al.,Science(2014)345:98-101)。
【0005】
mRNAの分解に加えて(Binet et al,Cell Metabol.(2013)17:353-371)、近年、IRE1αがマイクロRNA(miR)を分解する能力も有することが示された(Upton et al,Science(2012)338:818-822)。miRは、一般に、標的mRNAの30の非翻訳領域の相補配列に結合して、mRNAの翻訳を抑制する、またはmRNAの切断を誘導することによって、遺伝子発現を阻害するように作用する、17~25ヌクレオチドからなる短い非コードRNAオリゴヌクレオチドである。増殖、分化およびアポトーシスなどのいくつかの細胞機能はmiRによって調節され、線維症を含むさまざまなヒト疾患で異常なmiR発現が観察される(Bowen et al,J.Pathol(2013)229:274-285)。近年、UPRの個々の成分を特異的に標的化する阻害剤が記載されている。IRE1aエンドリボヌクレアーゼドメインのリジン907に安定的に結合する阻害剤4μ8Cは、RIDD活性とXBP-1スプライシングの両方を阻害することが示されている(Cross et al,Proc Natl.Acad.Sci.(2012)109:E869-E878)。高レベルの4μ8Cは細胞で測定可能な毒性を引き起こさず、80~128 lMの範囲の濃度の4μ8CはIRE1α(アルファ)キナーゼ活性に影響を及ぼすことなくXBP1スプライシングを完全に遮断する(Cross et al,2012)。IRE1αノックアウトマウスは胚発生中に死亡するため、阻害剤4μ8CはインビボでIRE1αの機能を描写するための重要なツールとなる。IRE1αの阻害は、筋線維芽細胞の活性化を防ぎ、肝臓および皮膚の線維症の動物モデルにおける線維症を軽減する。IRE1αの薬理学的阻害は、強皮症の患者から分離された活性化筋線維芽細胞の線維化促進表現型を元に戻すことができ、線維性疾患の処置のための新たな戦略を開発する際にERストレス阻害剤を考慮に入れるべきであることを示している(Heindryckx,F.et al(2016)EMBO Molecular Medicine Vol 8(7):729-744)。
【0006】
UPRの活性化は、極めて高いタンパク質合成負荷を有する多発性骨髄腫などの分泌細胞由来の腫瘍の重要な生存経路であることが示されている。したがって、IRE1αエンドリボヌクレアーゼ切断およびXBP1の活性化を遮断することによってUPRを破壊する取り組みが、がん研究の活発な分野となっている。具体的なIRE1αRNase産物として、XBP1sは機能的IRE1阻害の直接的な指標となる。強力で選択的なIRE1α阻害剤は、完全なUPR活性化がなければ、腫瘍細胞がアポトーシスに追いやられるという仮説を試験するための重要なツールとして役立つだろう。IRE1α阻害剤および活性化化合物が報告されている(Harrington,P.E.et al(2015)ACS Med.Chem.Lett.6:68-72;Volkmann,K.,et al(2011)J.Biol.Chem.,286:12743-12755;Cross,B.C.S.,et al(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,109:E869-E878;Wang,L.,et al(2012)Nat.Chem.Biol.,8:982-989;Ghosh,R.,et al(2014)Cell,158:534-548;Ranatunga,S.,et al(2014)J.Med.Chem.,57,4289-4301;米国特許第9382230号明細書;米国特許第8815885号明細書)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者の本明細書で提供されるがんを処置するための適切な薬理学的特性を有する強力かつ選択的な阻害剤の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
IRE1αを標的化するピリミジニル-ヘテロアリールオキシ-ナフチル化合物、これらの化合物を含む組成物、および本明細書で提供されるがんを処置する方法が開示される。
【0009】
一態様では、本明細書に記載される、式(I)または式(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0010】
別の態様では、本明細書の表1に示される化合物が本明細書で提供される。
【0011】
別の態様では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0012】
さらに別の態様では、がんを処置する方法であって、有効量の本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を、がんを有する患者に投与するステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0013】
さらに別の態様では、Ire1を発現するがん細胞を阻害または殺傷する方法であって、Ire1を発現するがん細胞を、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩と接触させるステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0014】
さらに別の態様では、Ire1活性を調節する方法であって、Ire1を、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩と接触させるステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0015】
がんを処置するための医薬の製造における本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の使用が本明細書でさらに提供される。
【0016】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩は、本明細書で提供されるがんを処置する方法に有用である。
【0017】
がんを処置するためのキットであって、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物と;使用説明書とを含むキットも提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
IRE1αの阻害剤または調節剤である式(I)および式(II)のピリミジニル-ヘテロアリールオキシ-ナフチル化合物、ならびにその医薬組成物が本明細書で開示される。よって、化合物および組成物は、IRE1αによって媒介される疾患および障害を処置するのに有用である。
【0019】
本明細書の開示は列挙される実施形態を提供するが、これらは、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。反対に、本開示は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る、全ての代替例、修正、および同等物を網羅することを意図するものである。当業者であれば、本明細書に記載されるものと類似または同等の多くの方法および材料を認識するだろう。本発明は、決して記載される方法および材料に限定されるものではない。組み込まれる文献、特許、および同様の資料のうちの1つ以上が、本出願(それだけに限らないが、定義される用語、用語の用法、記載される技術などを含む)と異なる、または矛盾する場合、本出願が優先する。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、以下に記載の方法および材料の実施または試験に使用することができるが。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、全体が参照により組み込まれる。本出願で使用される命名法は、特に指示しない限り、IUPAC系統的命名法に基づく。
定義
【0020】
本明細書で使用される「アルキル」は、指定された炭素原子数(すなわち、C1~10は1~10個の炭素原子を意味する)を有する飽和直鎖(すなわち、非分岐)もしくは分岐一価炭化水素鎖またはこれらの組み合わせを指す。特定のアルキル基は、1~20個の炭素原子(「C1~20アルキル」)、1~8個の炭素原子(「C1~8アルキル」)、および1~6個の炭素原子(「C1~6アルキル」)、2~6個の炭素原子(「C2~6アルキル」)または1~4個の炭素原子(「C1~4アルキル」)を有するものである。アルキル基の例としては、それだけに限らないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体および異性体などの基が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される「アルケニル」は、少なくとも1つのオレフィン性不飽和部位を有し(すなわち、少なくとも1つの式C=Cの部分を有し)、指定された炭素原子数(すなわち、C2~10は2~10個の炭素原子を意味する)を有する、不飽和直鎖(すなわち、非分岐)もしくは分岐一価炭化水素鎖またはこれらの組み合わせを指す。アルケニル基は「シス」または「トランス」配置であり得る、あるいは「E」または「Z」配置であり得る。特定のアルケニル基は、2~20個の炭素原子を有する(「C2~20アルケニル」)、2~8個の炭素原子を有する(「C2~8アルケニル」)、2~6個の炭素原子を有する(「C2~6アルケニル」)または2~4個の炭素原子を有する(「C2~4アルケニル」)ものである。アルケニル基の例としては、それだけに限らないが、エテニル(またはビニル)、プロパ-1-エニル、プロパ-2-エニル(またはアリル)、2-メチルプロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ブタ-2-エニル、ブタ-3-エニル、ブタ-1,3-ジエニル、2-メチルブタ-1,3-ジエニル、ならびにこれらの同族体および異性体などの基が挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される「アルキニル」は、少なくとも1つのアセチレン性不飽和部位を有し(すなわち、少なくとも1つの式C≡Cの部分を有し)、指定された炭素原子数(すなわち、C2~10は2~10個の炭素原子を意味する)を有する、不飽和直鎖(すなわち、非分岐)もしくは分岐一価炭化水素鎖またはこれらの組み合わせを指す。特定のアルキニル基は、2~20個の炭素原子を有する(「C2~20アルキニル」)、2~8個の炭素原子を有する(「C2~8アルキニル」)、2~6個の炭素原子を有する(「C2~6アルキニル」)、2~4個の炭素原子を有する(「C2~4アルキニル」)ものである。アルキニル基の例としては、それだけに限らないが、エチニル(またはアセチレニル)、プロパ-1-イニル、プロパ-2-イニル(またはプロパルギル)、ブタ-1-イニル、ブタ-2-イニル、ブタ-3-イニル、これらの同族体および異性体などの基が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される「アルキレン」は、アルキルと同じ残基を指すが、二価性を有する。特定のアルキレン基は、1~6個の炭素原子(「C1~6アルキレン」)、1~5個の炭素原子(「C1~5アルキレン」)を有する、1~4個の炭素原子(「C1~4アルキレン」)または1~3個の炭素原子(「C1~3アルキレン」)を有するものである。アルキレンの例としては、それだけに限らないが、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2-CH2-)、プロピレン(-CH2-CH2-CH2-)、ブチレン(-CH2-CH2-CH2-CH2-)などの基が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される「シクロアルキル」は、指定された炭素原子数(すなわち、(C3~10は3~10個の炭素原子を意味する)を有する、非芳香族の、飽和または不飽和環状一価炭化水素構造を指す。シクロアルキルは、シクロヘキシルなどの一環、またはアダマンチルなどの複数環からなり得るが、アリール基は除外する。2つ以上の環を含むシクロアルキルは、縮合、スピロもしくは架橋、またはこれらの組み合わせであり得る。特定のシクロアルキル基は、3~12個の環構成炭素原子を有するものである。好ましいシクロアルキルは、3~7個の環構成炭素原子を有する(「C3~8シクロアルキル」)、または3~6個の炭素原子を有する(「C3~6シクロアルキル」)環状炭化水素である。シクロアルキルの例としては、それだけに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル、ノルボルニルなどが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」は、環炭素原子の1つ以上が、例えば、窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子によって置き換えられている、本明細書で定義されるシクロアルキルを指す。ヘテロシクロアルキル基の代表的な例としては、それだけに限らないが、アジリジニル、アゼチジニル、アゼパニル、オキセタニル、ピロリジル、イミダゾリジニル(例えば、イミダゾリジン-4-オニルまたはイミダゾリジン-2,4-ジオニル)、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソリル、ピロリニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル、チアゾリニル、ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピペラジン-2-オニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル(例えば、テトラヒドロ-2H-ピラニル)、テトラヒドロチオピラニル、オキサチアニル、ジオキシル、ジチアニル、ピラニル、ジヒドロジチイニル、1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカニル、ホモピペラジニル、キヌクリジルおよびテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン基が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される「アリール」は、単一環(例えば、フェニル)または複数縮合環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する不飽和芳香族炭素環式基を指し、縮合環は芳香族であることができるまたはできない。特定のアリール基は、6~14個の環構成(すなわち、環)炭素原子を有するもの(「C6~14アリール」)である。好ましいアリール基には、5~6個の環炭素を有するものが含まれる。少なくとも1つの環が非芳香族である2つ以上の環を有するアリール基は、芳香環位置または非芳香環位置のいずれかで親構造に接続され得る。一変形例では、少なくとも1つの環が非芳香族である2つ以上の環を有するアリール基が、芳香環位置で親構造に接続されている。
【0027】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」は、1~14個の環構成(すなわち、環)炭素原子と、それだけに限らないが、窒素、リン、酸素および硫黄などのヘテロ原子を含む少なくとも1つの環構成ヘテロ原子とを有する不飽和芳香族環式基を指す。ヘテロアリール基は、単一環(例えば、ピリジル、フリル)または複数縮合環(例えば、インドリジニル、ベンゾチエニル)を有することができ、縮合環は、芳香族であることができるまたはできない。特定のヘテロアリール基は、1~12個の環構成(すなわち、環)炭素原子と、窒素、リン、酸素および硫黄から独立に選択される1~6個の環構成(すなわち、環)ヘテロ原子とを有する5~14員環;1~8個の環構成炭素原子と、窒素、リン、酸素および硫黄から独立に選択される1~4個の環構成ヘテロ原子とを有する5~10員環;および1~5個の環構成炭素原子と、窒素、酸素および硫黄から独立に選択される1~4個の環構成ヘテロ原子とを有する5員、6員または7員環である。一変形例では、ヘテロアリールが、1~6個の環構成炭素原子と、窒素、酸素および硫黄から独立に選択される1~4個の環構成ヘテロ原子とを有する単環式芳香族5員、6員または7員環を含む。別の変形例では、ヘテロアリールが、1~12個の環構成炭素原子と、窒素、リン、酸素および硫黄から独立に選択される1~6個の環構成ヘテロ原子とを有する多環式芳香環を含む。なおさらに、本明細書に記載されるヘテロアリールは、5員または6員を有する環を含むことができる。少なくとも1つの環が非芳香族である2つ以上の環を有するヘテロアリール基は、芳香環位置または非芳香環位置のいずれかで親構造に接続され得る。一変形例では、少なくとも1つの環が非芳香族である2つ以上の環を有するヘテロアリール基が、芳香環位置で親構造に接続されている。
【0028】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよび/またはヨードを指す。残基が2つ以上のハロゲンで置換されている場合、結合しているハロゲン部分の数に対応する接頭辞を使用して呼ぶことができる。例えば、ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリール等は、同じであることができるが必ずしも同じである必要はない2つ(「ジ」)または3つ(「トリ」)のハロ基で置換されたアリールおよびアルキルを指す;よって、4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範囲内にある。1つ以上の水素がハロ基で置き換えられているアルキル基は、「ハロアルキル」、例えば、「C1~6ハロアルキル」と呼ばれる。各水素がハロー基で置き換えられているアルキル基は、「ペルハロアルキル」と呼ばれる。好ましいペルハロアルキル基はトリフルオロアルキル(-CF3)である。同様に、「ペルハロアルコキシ」は、アルコキシ基のアルキル部分を構成する炭化水素中の各Hの代わりにハロゲンが存在するアルコキシ基を指す。ペルハロアルコキシ基の例は、トリフルオロメトキシ(-OCF3)である。
【0029】
「処置する」および「処置」という用語は、治療的処置を指し、その目的は、所望されない生理学的変化または障害、例えばがんの発症または伝播を予防または減速(軽減)することである。有益または所望の臨床結果としては、それだけに限らないが、検出可能であるか検出不能であるかに関わらず、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の病態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延または減速、疾患病態の寛解または緩和、および(部分的か完全かに関わらず)緩解が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けていなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味し得る。処置が必要な人には、状態または障害のある人が含まれる。
【0030】
「有効量」という句は、(i)特定の疾患、状態もしくは障害を処置する、(ii)特定の疾患、状態もしくは障害の1つ以上の症状を軽減、改善もしくは排除する、(iii)本明細書に記載される特定のがんの1つ以上の症状の発症を予防するもしくは遅延させる、または(iv)処置に対する患者の臨床反応を好ましく変化させる(阻害および好ましさは対照(例えば、非処置もしくは本明細書に記載されているような抗がん剤による処置の前)に対するものである)本明細書に記載される化合物の量を意味する。治療上有効量の薬物は、がん細胞の数を低下;腫瘍サイズを低下;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速および好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速および好ましくは停止)、腫瘍成長をある程度阻害、および/またはがんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。薬物が既存のがん細胞の成長を抑制するおよび/またはこれらを殺傷することができる限り、この薬物は細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。がん治療に関しては、有効性は、例えば、無増悪期間(TTP)の評価および/または奏効率(RR)の判定によって測定され得る。
【0031】
「臨床反応」という用語は、とりわけ、疾患進行の阻害、腫瘍成長の阻害、原発腫瘍の減少、腫瘍関連症状の軽減、腫瘍分泌因子(カルチノイド症候群に寄与するものなどの腫瘍分泌ホルモンを含む)の阻害、原発性または続発性腫瘍の出現の遅延、原発性または続発性腫瘍の発達の遅延、原発性または続発性腫瘍の発生の減少、疾患の二次的影響の重症度の遅延または減少、腫瘍成長の停止および腫瘍の退縮、無増悪期間(TTP)の増加、無増悪生存期間(PFS)の増加、全生存期間(OS)の増加を指す。本明細書で使用されるOSは、処置開始から何らかの原因による死亡までの時間を意味する。一般に、臨床反応は、当技術分野で知られており、理解されている有効性の一次または二次尺度を指す。本明細書に記載される処置および臨床反応は、所与の状態に対する国際基準を使用して評価することができる。
【0032】
本明細書で使用される「無増悪期間」または「TTP」という用語は、処置開始から腫瘍進行までの時間を指す。
【0033】
「無増悪生存期間」または「PFS」という用語は、処置開始から腫瘍進行または死亡までの時間を指す。一実施形態では、PFS率を、カプランマイヤー推定法を使用して計算することができる。
【0034】
本明細書に記載される患者の臨床反応は、完全または部分的な反応として特徴付けることができる。「完全奏効」(CR)は、以前の異常なX線検査、骨髄液および脳脊髄液(CSF)、または異常なモノクローナルタンパク質測定値が正常化した、臨床的に検出可能ながんがないことを指す。「部分奏効」(PR)は、全ての測定可能ながん負荷(すなわち、対象に存在する悪性細胞の数、または腫瘍塊の測定された塊または異常なモノクローナルタンパク質の量)の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%の減少を指す。「処置」という用語は、完全な反応と部分的な反応の両方を含む。
【0035】
「患者」および「対象」という用語は、本明細書で互換的に使用され、それだけに限らないが、ウシ、サル、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット、一実施形態では哺乳動物、別の実施形態ではヒトなどの動物を含む動物を指す。一実施形態では、対象が、がん、特に本明細書に記載されるがんを有するまたは有するリスクがあるヒトである。一実施形態では、患者が、標準的な抗がん治療を進めた(もしくはこれに耐えることができなかった)対象、または標準的な抗がん治療が存在しない対象を含む、組織学的または細胞学的に確認されたがんを有するヒトである。
【0036】
「がん」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指す、または説明する。「腫瘍」は、1つ以上のがん性細胞を含む。がんの例としては、それだけに限らないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病、またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられる。このようながんのより具体的な例としては、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平上皮がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、消化器がん、食道がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌(HCC)、肛門癌、陰茎癌、または頭頸部がんが挙げられる。
【0037】
「血液悪性腫瘍(Hematological malignancies)」(英国式のつづりでは「血液(Haematological)」悪性腫瘍)は、血液、骨髄およびリンパ節に発症するがんのタイプである。これら3つは免疫系を介して密接に関連しているため、3つのうちの1つに発症する疾患は、通常他にも発症する;リンパ腫はリンパ節の疾患であるが、骨髄に広がり、血液に発症する。血液悪性腫瘍は悪性新生物(すなわち、がん)であり、これらは一般に血液学および/または腫瘍学の専門家によって処置される。血液悪性腫瘍は、骨髄細胞株とリンパ系細胞株の2つの主要な血球系統のいずれかに由来し得る。リンパ腫、リンパ性白血病および骨髄腫はリンパ系に由来するが、急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群ならびに骨髄増殖性疾患は骨髄由来である。例示的な白血病には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性単球性白血病(AMOL)、および小リンパ球性リンパ腫(SLL)が含まれる。例示的なリンパ腫には、ホジキンリンパ腫(4つのサブタイプ全て)および非ホジキンリンパ腫(NHL、全てのサブタイプ)が含まれる。
【0038】
「抗がん剤」は、作用機序に関わらず、がんの処置に有用な化合物である。抗がん剤のクラスには、それだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗ホルモン療法、内分泌療法、免疫調節剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、およびキナーゼ阻害剤が含まれる。抗がん剤は、標的療法および従来の化学療法に使用される化合物を含む。
【0039】
代表的な抗がん剤には、ボルテゾミブ(VELCADE)、カルフィルゾミブ(KYPROLIS)およびイキサゾミブ(NINLARO)などのプロテアソーム阻害剤が含まれる。他の例としては、レナリドマイド(REVLIMID)およびポマリドマイド(POMALYST)などの免疫調節剤が挙げられる。
【0040】
他の例示的な抗がん剤には、BTK、Bcl-2およびJAK阻害剤などのB細胞受容体標的の阻害剤が含まれ、例えば、ベネトクラクス(VENCLEXTA)およびイブルチニブ(IMBRUVICA)が含まれる。
【0041】
追加の抗がん剤には、例えば、アベマシクリブ(VERZENIO);アビラテロン(ZYTIGA、YONSA);アクラルビシン;アシビシン;アコダゾール;アクロニン;アクチノマイシン;アシルフルベン;アデシペノール(adecypenol);アドゼレシン;アドリアマイシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンバムスチン(ambamustine);アンボマイシン;アメタントロン;アミドックス(amidox);アミフォスチン;アミノグルテチミド;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;アンタレリクス(antarelix);アントラマイシン;アフィジコリングリシナート;アプリン酸;ARRY-300;アラビノシド;アスペルリン;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン;アトリムスチン;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;アザシチジン;AZD6244;AZD8330;アゼテパ;アゾトマイシン;バラノール;バチマスタット;ベンダムスチン;ベンゾクロリン(benzochlorin);ベンゾドーパ(benzodopa);ベンゾイルスタウロスポリン;ベータアレチン(beta-alethine);ベータクラマイシン(betaclamycin)B;ベツリン酸;ビカルタミド;ビニメチニブ;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテン(bistratene);ブレオマイシン;ブスルファン;ビゼレシン;ブレフレート(breflate);ボルテゾミブ;ブレキナル;ブロピリミン;ブドチタン(budotitane);ブチオニン;ブリオスタチン;カクチノマイシン(cactinomycin);カルステロン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン;カペシタビン(XELODA);カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルボコン;カルムスチン;カルビシン;カルゼレシン;カスタノスペルミン;セレコキシブ;セトロレリクス;セツキシマブ(ERBITUX);クロロキノキサリン;シカプロスト;クロラムブシル;クロロフシン;シスプラチン;クロドリビン;クロミフェン;クロトリマゾール;クリスナトール;シペマイシン(cypemycin);シクロホスファミド;シタラビン;サイトスタチン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダラツムマブ;ダウノルビシン;デカルバジン;ダクリキシマブ;ダサチニブ;デシタビン;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン;デクスベラパミル;デキソルマプラチン;デザグアニン;ジアジコン;ジヒドロタキソール;ドコサノール;ドラセトロン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロモスタノロン;ドロナビノール;デュアゾマイシン;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エダトレキサート;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン;エプリステリド;エルブロゾール;エルロチニブ(TARCEVA);エソルビシン;エストラムスチン;エタニダゾール;エトポシド;エトプリン;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フロクスウリジン;フルダラビン;フルダラビン;フルオロダウノルビシン;ホルフェニメクス;ホルメスタン;フルオロウラシル;フロクスウリジン;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシン;ホテムスチン;フルベストラント(FASLODEX);ガドリニウム;ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゲムシタビン;ゲルダナマイシン;ゲフィチニブ;ゴシポール;ヒドロキシウレア;ヘプスルファム(hepsulfam);ヘレグリン;イバンドロネート;イブルチニブ;イダルビシン;イデラリシブ(ZYDELIG)、イホスファミド;カンホスファミド;イルモホシン;イプロプラチン;イドキシフェン;イドラマントン(idramantone);イルモホシン;イロマスタット;イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC);イミキモド;ヨーベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール;イリノテカン;イタセトロン;イイモホシン(iimofosine);ランレオチド;ラパチニブ(TYKERB);レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン;レプトルスタチン(leptolstatin);レトロゾール;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;ロバプラチン;ロムブリシン(lombricine);ロメトレキソール;ロニダミン;ロナファルニブ(SARASAR);ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ラルトテカン;ラパチニブ;ロイコボリン;ロメトレキソール;ロムスチン;メイタンシン;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;メノガリル;メルバロン;メテレリン(meterelin);メチオニナーゼ;メトクロプラミド;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミトグアゾン;ミトラクトール;ミトナフィド;ミトナフィド;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モピダモール;メイタンシン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲステロール;メルファラン;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンミトマイシン(mitinmitomycin);ミトスペル(mitosper);ミトスタン;ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ナファレリン;ナグレスチップ(nagrestip);ナパビン(napavin);ネダプラチン;ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸;ニルタミド;ニサマイシン;オブリメルセン(GENASENSE);オクトレオチド;オキセノン(okicenone);オナプリストン;オンダンセトロン;オルマプラチン;オキシスラン;オキサロプラチン(oxaloplatin);オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パラウアミン;パルボシクリブ(IBRANCE);パニツムマブ(VECTIBIX);パノミフェン;ペグアスパラガーゼ;ピシバニール;ピラルビシン;ピリトレキシム;プレドニゾン;プレドニゾロン、パクリタキセル;nab-パクリタキセル(ABRAXANE);プレドニムスチン;プロカルバジン;ピューロマイシン;ラルチトレキセド;ラモセトロン;ラパマイシン(RAPAMUNE);リゾキシン;リボシクリブ(KISQALI)、リツキシマブ;ログレチミド;ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド;ロキニメクス;ロミデプシン;サフィンゴール;サイントピン(saintopin);サルグラモスチム;セムスチン;シゾフィラン;ソブゾキサン;ソラフェニブ(NEXAVAR);スニチニブ;スピロムスチン;スクアラミン;スラジスタ(suradista);スラミン;スワインソニン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリムスチン;タモキシフェン;タウロムスチン;タザロテン;テルラピリリウム(tellurapyrylium);テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;トロンボポエチン;サイマルファシン;チモトリナン(thymotrinan);チラパザミン;トレミフェン;トレチノイン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;タリソマイシン;タキソテール;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオテパ;チラパザミン;トレミフェン;トラスツズマブ;トラスツズマブエムタンシン;トレストロンアセタート;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;ウラシルマスタード;バンデタニブ(CAPRELSA);バリオリン(variolin)B;ベラレソール(velaresol);ベラミン;ベルテポルフィン;ベムラフェニブ;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビンデシン;ビネピジン;ビングリシナート;ビンロイロシン;ビノレルビン;ビンロシジン;ビンゾリジン;ボロゾール;ウォルトマンニン;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ(zilascorb);ジノスタチンスチマラマー;ジノスタチン;およびゾルビシンが含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、抗がん剤が、例えば、イデラリシブ(ZYDELIG)、ドセタキセル、フルオロウラシル、ゲムシタビン(GEMZAR)、シスプラチン、シスジアミン、カルボプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、テモゾロミド、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェンおよびドキソルビシンを含む。
【0043】
抗がん剤の定義には以下も含まれる:(i)例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケトキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびトレミフェンクエン酸塩を含む抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);(ii)ブリラネストラント、GDC-0927、GDC-9545、AZ9496、AZ9833、GNE-274およびフルベストラント(FASLODEX)などの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERD);(iii)例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、ホルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾールおよびアナストロゾールなどのアロマターゼ阻害剤;(iv)アパルタミド、アビラテロン、エンザルタミド、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲン薬。
【0044】
抗がん剤の定義には以下がさらに含まれる:(iv)コビメチニブなどのMEK阻害剤;(v)タセリシブなどの脂質キナーゼ阻害剤;(vi)オブリメルセンなどのアンチセンスオリゴヌクレオチド;(vii)アンギオザイムなどのVEGF発現阻害剤などのリボザイム;(viii)遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN、LEUVECTINおよびVAXIDなどのワクチン;(ix)LURTOTECAN;ABARELIX rmRHなどのトポイソメラーゼ1阻害剤;および(x)ベバシズマブなどの抗血管新生剤。
【0045】
本明細書のいくつかの実施形態では、抗がん剤が、アテゾリズマブ、ニボルマブ、ダラツムマブ、ペンブロリズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ;セツキシマブ;パニツムマブ、リツキシマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシンまたはトシツモマブなどの治療用抗体である。
【0046】
「代謝産物」は、特定の化合物またはその塩の体内での代謝により生成される生成物である。化合物の代謝産物は、日常的な技術を用いて同定することができ、それらの活性は、本明細書に記載されるものなどの試験を用いて決定することができる。このような産物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断などから生じ得る。したがって、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を、その代謝産物を得るのに十分な期間、哺乳動物と接触させることを含むプロセスによって生成される化合物を含む、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の代謝産物が本明細書でさらに提供される。
【0047】
「添付文書」という用語は、このような治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、および/またはその使用に関する警告を含む、治療薬の商用のパッケージに通例含まれる説明書を指すために使用される。
【0048】
「キラル」という用語は、鏡像パートナーの重ね合わせることができない特性を有する分子を指し、一方で「アキラル」という用語は、それらの鏡像パートナーと重ね合わせることができる分子を指す。
【0049】
「立体異性体」という用語は、同一の化学構成を有するが、空間内の原子または基の配置に関して異なる、化合物を指す。
【0050】
「ジアステレオマー」は、2つ以上のキラル性の中心を有し、それらの分子が互いの鏡像でない、立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理特性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性および反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動法およびクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順の下で分離され得る。
【0051】
「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像体である、ある化合物の2つの立体異性体を示す。
【0052】
本明細書で使用される立体化学的定義および慣例は一般に、S.P.Parker,Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw-Hill Book Company,New York;およびEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds,”John Wiley & Sons,Inc.,New York,1994に従う。本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩は、不斉またはキラル中心を含有し、したがって、異なる立体異性体形態で存在することができる。それだけに限らないが、ジアステレオマー、エナンチオマーおよびアトロプ異性体、ならびにラセミ混合物などのこれらの混合物を含む、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の全ての立体異性体形態が本明細書に含まれることが意図される。多くの有機化合物は、光学的に活性な形態で存在する、すなわち、これらは、平面偏光の面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を説明する際、接頭辞DおよびL、またはRおよびSは、そのキラル中心(複数可)を中心とした分子の絶対配置を表すために使用される。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)は、化合物による平面偏光の回転の表示を指定するために使用され、(-)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。接頭辞が(+)またはdの化合物は、右旋性である。所与の化学構造について、これらの立体異性体は、互いに鏡像であることを除き、同一である。特定の立体異性体はまた、エナンチオマーとも呼ばれ、このような異性体の混合物は、エナンチオマー混合物と呼ばれることがある。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と呼ばれ、これらは、化学反応またはプロセスにおいて立体選択も立体特異性も存在していない場合に生じ得る。「ラセミ混合物」および「ラセミ体」という用語は、光学活性がない2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。エナンチオマーは、超臨界液体クロマトグラフィー(SFC)などのキラル分離法によってラセミ混合物から分離することができる。X線結晶学データなどから立体化学が明確に確立される前は、分離された立体異性体におけるキラル中心での配置の割り当ては仮であり得、説明目的のために表1の構造で示され得る。
【0053】
「互変異性体」または「互変異性形態」という用語は、低エネルギー障壁により相互転換可能な、異なるエネルギーを持つ構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)は、ケト-エノールおよびイミン-エナミン異性化など、プロトンの転位を介した相互転換を含む。原子価互変異性体は、結合電子のいくつかの再編成による相互転換を含む。
【0054】
「薬学的に許容される塩」という用語は、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない塩を意味する。薬学的に許容される塩は、酸性付加塩と塩基性付加塩の両方を含む。「薬学的に許容される」という句は、物質または組成物が、製剤を構成する他の成分および/またはそれを用いて処置される哺乳動物と、化学的および/または毒物学的に適合しなければならないことを示す。
【0055】
「薬学的に許容される酸性付加塩」という用語は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸と、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸「メシル酸塩」、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびサリチル酸等の有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、複素環式、カルボン酸、およびスルホン酸類から選択される有機酸とで形成されるような薬学的に許容される塩を意味する。
【0056】
「薬学的に許容される塩基性付加塩」という用語は、有機塩基または無機塩基で形成される薬学的に許容される塩を意味する。許容される無機塩基の例として、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩およびアルミニウム塩が挙げられる。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩は、天然の置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、およびポリアミン樹脂を含む、第一級、第二級、および第三級アミン、置換アミンの塩を含む。
【0057】
「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒分子と本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の会合物または複合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の例としては、それだけに限らないが、水(すなわち、「水和物」)、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル(EtOAc)、酢酸(AcOH)、およびエタノールアミンが挙げられる。
【0058】
「EC50」という用語は、半数効果濃度であり、インビボで特定の効果の最大値の50%を得るのに必要な特定の化合物の血漿濃度を意味する。
【0059】
「Ki」という用語は、阻害定数であり、受容体に対する特定の阻害剤の絶対結合親和性を意味する。これは、競合結合アッセイを使用して測定され、競合するリガンド(例えば、放射性リガンド)が存在しない場合に特定の阻害剤が受容体の50%を占める濃度に等しい。Ki値は対数的にpKi値に変換でき(-log Ki)、値が大きいほど効力が指数関数的に大きいことを示す。
【0060】
「IC50」という用語は、半数阻害濃度であり、インビトロで生物学的プロセスの50%阻害を得るのに必要な特定の化合物の濃度を意味する。IC50値は対数的にpIC50値に変換でき(-log IC50)、値が大きいほど効力が指数関数的に大きいことを示す。IC50値は絶対値ではなく、実験条件、例えば使用される濃度に依存し、チェン-プルソフ(Cheng-Prusoff)の式を使用して絶対阻害定数(Ki)に変換することができる(Biochem.Pharmacol.(1973)22:3099)。IC70、IC90等などの他のパーセント阻害パラメータを計算することができる。
【0061】
式Iの化合物を含む、本明細書で与えられる任意の式または構造は、化合物の非標識形態ならびに同位体標識形態を表すことを意図している。同位体標識化合物は、1つ以上の原子が選択された原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられていることを除いて、本明細書で与えられる式によって示される構造を有する。本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩に組み込むことができる同位体の例としては、それだけに限らないが、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が挙げられる。本明細書に記載されるさまざまな同位体標識化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、3Hおよび14Cなどの放射性同位体が組み込まれているもの。このような同位体標識化合物は、代謝試験、反応速度論試験、薬物もしくは基質組織分布アッセイを含むポジトロン断層法(PET)もしくは単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)などの検出もしくは画像化技術、または患者の放射性処置に有用となり得る。本明細書に記載される重水素標識もしくは置換治療用化合物またはその薬学的に許容される塩は、分布、代謝、および排泄(ADME)に関して、改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態)特性を有することができる。重水素などのより重い同位体による置換によって、代謝安定性がより高くなり、結果としてある特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増加または投与量必要条件の低減を生じることができる。18F標識化合物は、PETまたはSPECT試験に有用となり得る。本明細書に記載される同位体標識化合物またはその薬学的に許容される塩は、一般に、以下に記載されるスキームまたは実施例および調製に開示される手順を実行することにより、容易に入手可能な同位体標識試薬を非同位体標識試薬に置換することによって調製することができる。さらに、より重い同位体、特に重水素(すなわち、2HまたはD)などによる置換によって、代謝安定性がより高くなり、結果としてある特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の増加または投与量必要条件の低減または治療指数の改善を生じることができる。本文脈における重水素は、式(I)の化合物で置換基とみなされることが理解される。このようなより重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義することができる。本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩では、特定の同位体として具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定同位体を表すことを意味する。特に明記しない限り、位置が特に「H」または「水素」として指定される場合、その位置は、その天然存在比の同位体組成で水素を有すると理解される。したがって、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩では、重水素(D)として具体的に指定される任意の原子は、重水素を表すことを意味する。
ピリミジニル-ヘテロアリールオキシ-ナフチル
【0062】
式(I)または式(II):
または
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩:
(式中、
R
1は水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~C
7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロシクロアルキルであり;
R
2は水素、ハロゲン、-CN、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキルであり;
R
3は-L
1-R
1、水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
R
4は-L
2-R
9-、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
R
5は水素、ハロゲン、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
各R
6は独立に、水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
a、-NR
aR
b、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-SR
a、-S(O)
2R
a、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~6シクロアルキル、-SO
2(C
1~6アルキル)、または-SO
2(C
1~6ハロアルキル)であり;
R
7は水素、ハロゲン、-CN、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、またはR
10-置換もしくは非置換C
3~6シクロアルキルであり;
各R
8は独立に、水素、ハロゲン、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
R
9は水素、ハロゲン、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~C
7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロシクロアルキルであり;
各R
10は独立に、ハロゲン、-N
3、-CF
3、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
11-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
11-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
11-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
11-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
11-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
11-置換もしくは非置換5~6員ヘテロアリールであり;
各R
11は独立に、ハロゲン、-N
3、-CF
3、-CCl
3、-CBr
3、-CI
3、-CN、-CHO、-OH、-NH
2、-COOH、-CONH
2、-NO
2、-SH、-SO
2Cl、-SO
3H、-SO
4H、-SO
2NH
2、非置換C
1~6アルキル、非置換2~6員ヘテロアルキル、非置換C
3~7シクロアルキル、非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、非置換C
5~6アリール、または非置換5~6員ヘテロアリールであり;
各R
12は独立に、水素、ハロゲン、NPG、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
L
1は-NHSO
2-、-NHC(O)-、NHCO(O)-、-NHC(O)NH-、-NH-、-O-、-S-、または-SO
2-であり;
L
2は-NHSO
2-、-NHC(O)-、NHCO(O)-、-NHC(O)NH-、-NH-、-O-、-S-、または-SO
2-であり;
各R
aおよびR
bは独立に、水素、非置換C
1~6アルキル、非置換C
1~6ハロアルキル、非置換C
1~6アルコキシ、非置換C
2~6アルケニル、非置換C
2~6アルキニル、非置換C
3~7シクロアルキル、非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、非置換C
5~6アリール、または非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
mは1または2であり;
nは1または2であり;
pは1、2、3、4、5または6であり;
環AはC
3~6シクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、C
5~6アリール、または5員もしくは6員ヘテロアリールである)
が本明細書で提供される。
【0063】
本明細書で提供される別の態様では、化合物が式(I)を含む化合物である。本明細書で提供される別の態様では、化合物が式(II)を含む化合物である。
【0064】
一実施形態では、環Aが3~6員ヘテロシクロアルキルを含む。ある特定の実施形態では、環Aが3~6員ヘテロシクロアルキルを含む。別の実施形態では、環Aが6員ヘテロシクロアルキルである。さらに別の実施形態では、環Aが1つ以上の窒素原子を含む6員ヘテロシクロアルキルである。さらに別の実施形態では、環Aがアゼチジニル(azetindyl)、オキセタニル、ピロリル、フラニル、ピリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル(pyradizinyl)、テトラヒドロピラニル、またはピラニルである。一実施形態では、環aがピペリジニルである。
【0065】
ある特定の実施形態では、各R12が独立に、ハロゲンまたはC1~3アルキルである。一実施形態では、各R12が独立に、ハロゲン(例えば、FまたはCl)である。別の実施形態では、各12が独立に、Fであり、nが1または2である。別の実施形態では、各R12が独立に、メチルであり、nが1または2である。さらに別の実施形態では、nが2であり、各R12が独立に、Fおよびメチルである。このような実施形態では、2つのR12部分が環A上でジェミナルであり得る。別の実施形態では、環Aが3位で置換されたピペリジニルである。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
R2は水素、ハロゲン、または-CNであり得る。別の実施形態では、R2がR10-置換もしくは非置換C1~6アルコキシ、またはR10-置換もしくは非置換C1~6アルキルである。一実施形態では、R2が水素または非置換C1~3-アルキルである。一実施形態では、R2が水素である。一実施形態では、R2がメチルである。
【0070】
R3は水素、ハロゲン、-CN、-NO2、-NRaRb、-NRaC(O)Rb、-NRaC(O)Rb、-NRaC(O)ORb、-NRaC(O)NRb、-S(O)2NRa、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRaRb、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)NRaRb、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-S(O)3Ra、-S(O)(=NH)Ra、-S(O)2NRaRb、-P(O)RaRbであり得、RaおよびRbは本明細書で定義される通りである。一実施形態では、RaおよびRbが独立に、水素またはメチルである。一実施形態では、R3がR10-置換もしくは非置換C1~6アルコキシ、R10置換もしくは非置換C1~6ハロアルキル、またはR10-置換もしくは非置換C1~6アルキルである。別の実施形態では、R3がR10-置換もしくは非置換C3~7シクロアルキル、R10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R10-置換もしくは非置換C5~6アリール、またはR10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールである。一実施形態では、R3が水素である。別の実施形態では、R3がメチルである。
【0071】
別の実施形態では、R3が-L1-R1である。このような実施形態では、L1が-NHS(O)2-または-NHC(O)-である。R1は水素、ハロゲン、R10-置換もしくは非置換C1~6アルキル、R10-置換もしくは非置換C1~6ハロアルキル、R10-置換もしくは非置換C3~C7シクロアルキル、R10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R10-置換もしくは非置換C5~6アリール、またはR10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロシクロアルキルであり得る。一実施形態では、R3が-L1-R1である場合、L1が-NHS(O)2-または-NHC(O)-であり、R1がR10-置換もしくは非置換C1~6アルキル、R10-置換もしくは非置換C3~C7シクロアルキル、またはR10-置換もしくは非置換C5~6アリールである。
【0072】
R4はハロゲン、-CN、-NO2、-NRaRb、-NRaC(O)Rb、-NRaC(O)Rb、-NRaC(O)ORb、-NRaC(O)NRb、-S(O)2NRa、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRaRb、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)NRaRb、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-S(O)3Ra、-S(O)(=NH)Ra、-S(O)2NRaRb、-P(O)RaRbであり得、RaおよびRbは本明細書で定義される通りである。一実施形態では、RaおよびRbが独立に、水素またはメチルである。別の実施形態では、R4がR10-置換もしくは非置換C1~6アルコキシ、R10-置換もしくは非置換C1~6ハロアルキル、またはR10-置換もしくは非置換C1~6アルキルである。さらに別の実施形態では、R4がR10-置換もしくは非置換C3~7シクロアルキル、R10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R10-置換もしくは非置換C5~6アリール、またはR10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールである。
【0073】
本明細書で提供される一態様では、R4が-L2-R9-である。一実施形態では、L2が-NHSO2-、-NHC(O)-である。別の実施形態では、L2が-NH-、-O-、-S-または-SO2-である。一実施形態では、L2が-NHSO2-である。別の実施形態では、L2が-NHC(O)-である。R4が-L2-R9-である場合、R9がR10-置換フェニルであり得、R10がハロゲンである。一実施形態では、R9が1つのClまたはFで置換されたフェニルである。別の実施形態では、R9が2つのハロゲン(例えば、ClまたはF)で二置換されたフェニルである。
【0074】
別の実施形態では、R4が-L2-R9-である場合、R9がR10-置換または非置換C3~6シクロアルキルである。一実施形態では、R9が非置換3~6シクロアルキルである。別の実施形態では、R9が非置換シクロプロパニルである。
【0075】
別の実施形態では、R4が-L2-R9-である場合、R9が2~6員非置換ハロアルキルである。一実施形態では、R9が4員非置換ハロアルキルであり、ハロゲン原子がClまたはFである。別の実施形態では、R9が3,3ジフルオロブチルである。
【0076】
別の実施形態では、R4が-L2-R9-である場合、R9がR10-置換または非置換C1~3アルキルである。一実施形態では、別の実施形態では、R9が非置換C1~3アルキルである。さらに別の実施形態では、R9がメチルまたはプロピルである。
【0077】
一実施形態では、各R10が独立に、ハロゲン、-N3、-CF3、-CN、-NO2、-NRaRb、-NRaC(O)Rb、-NRaC(O)Rb、-NRaC(O)ORb、-NRaC(O)NRb、-S(O)2NRa、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRaRb、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)NRaRb、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-S(O)3Ra、-S(O)(=NH)Ra、-S(O)2NRaRb、または-P(O)RaRbであり、RaおよびRbが本明細書で定義される通りである。一実施形態では、RaおよびRbが独立に、水素またはメチルである。別の実施形態では、R10がR11-置換または非置換C1~6アルキル、R11-置換または非置換2~6員ヘテロアルキルである。さらに別の実施形態では、R10がR11-置換もしくは非置換C3~7シクロアルキル、R11-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R11-置換もしくは非置換C5~6アリール、またはR11-置換もしくは非置換5~6員ヘテロアリールである。
【0078】
一実施形態では、各R11が独立に、ハロゲン、-N3、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CI3、-CN、-CHO、-OH、-NH2、-COOH、-CONH2、-NO2、-SH、-SO2Cl、-SO3H、-SO4H、または-SO2NH2である。別の実施形態では、各R11が独立に、非置換C1~6アルキル、非置換2~6員ヘテロアルキル、非置換C3~7シクロアルキル、非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、非置換C5~6アリール、または非置換5~6員ヘテロアリールである。一実施形態では、各R11が独立に、ハロゲンである。別の実施形態では、各R11が独立に、-OH、-NH2、-COOH、-CONH2、または-SHである。別の実施形態では、各R11が独立に、非置換C1~6アルキル(例えば、メチル、エチル、またはプロピル)である。さらに別の実施形態では、各R11が独立に、非置換C3~7シクロアルキルまたは非置換C5~6アリールである。例えば、各R11が独立に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはフェニルであり得る。
【0079】
一実施形態では、R5が水素またはハロゲンである。別の実施形態では、R5がR10-置換または非置換C1~3アルキルである。別の実施形態では、R5が水素である。さらに別の実施形態では、R5が非置換C1~3アルキルである。さらに別の実施形態では、R5がメチルである。さらに別の実施形態では、R5がハロゲン(例えば、ClまたはF)である。
【0080】
一実施形態では、各R6が独立に、水素、ハロゲン、-CN、-NO2、-ORa、-NRaRb、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-SRa、-S(O)2Ra、または-P(O)RaRbである。別の実施形態では、各R6が独立に、R10-置換もしくは非置換C1~6アルコキシ、R10-置換もしくは非置換C1~6ハロアルキル、またはR10-置換もしくは非置換C1~6アルキルである。別の実施形態では、各R6が独立に、R10-置換もしくは非置換C3~6シクロアルキル、-SO2(C1~6アルキル)、または-SO2(C1~6ハロアルキル)である。一実施形態では、各R6が独立に、水素である。別の実施形態では、各R6が独立に、ハロゲン(例えば、ClまたはF)である。別の実施形態では、各R6が独立に、-CNである。さらに別の実施形態では、各R6が独立に、R10-置換または非置換C1~6アルキルである。一実施形態では、各R6が独立に、メチルである。実施形態では、mが1である。
【0081】
一実施形態では、R7が水素、ハロゲン、-CN、またはR10-置換もしくは非置換C1~6アルキルである。別の実施形態では、R7がR10-置換もしくは非置換C1~6アルコキシまたはR10-置換もしくは非置換C1~6ハロアルキルである。さらに別の実施形態では、R7がR10-置換または非置換C3~6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R7が水素である。一実施形態では、R7がハロゲン(例えば、FまたはCl)である。一実施形態では、R7がメチルである。別の実施形態では、R7が非置換シクロプロピルである。
【0082】
一実施形態では、各R8が独立に、水素またはハロゲンである。別の実施形態では、各R8が独立に、R10-置換または非置換C1~3アルキルである。ある特定の実施形態では、各R8が独立に、水素である。一実施形態では、各R8が独立に、Fである。別の実施形態では、各R8が独立に、メチルである。一実施形態では、nが1である。
【0083】
一実施形態では、各R12が独立に、水素、ハロゲン、または窒素保護基(NPG)である。別の実施形態では、各R12が独立に、R10-置換または非置換C1~3アルキルである。一実施形態では、NPGが、例えば、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、トリチル(Trt)、またはアリルオキシカルボニル(allylozycarbonyl)(Alloc)、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル(Ddz)、2-(4-ビフェニル)イソプロポキシカルボニル(Bpoc)、2-ニトロフェニルスルフェニル(Nps)、2-(4-ニトロフェニルスルホニル)エトキシカルボニル(Nsc)、1,1-ジオキソベンゾ[b]チオフェン-2-イルメチルオキシカルボニル(Bsmoc)、-(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-エチル)(Dde)、テトラクロロフタロイル(TCP)、2-[フェニル(メチル)スルホニオ]エチルオキシカルボニルテトラフルオロボレート(Pms)、エタンスルホニルエトキシカルボニル(Esc)、2-(4-スルホフェニルスルホニル)エトキシカルボニル(Sps)、2,4-ジニトロベンゼンスルホニル(dNBS)、ベンゾチアゾール-2-スルホニル(Bts)、-2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル(Troc)、またはp-ニトロベンジルオキシカルボニル(pNZ)を含む。一実施形態では、NPGがBocである。別の実施形態では、NPGがイル(yl)(Trt)、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル(Ddz)、2-(4-ビフェニル)イソプロポキシカルボニル(Bpoc)、または2-ニトロフェニルスルフェニル(Nps)である。
【0084】
別の態様では、以下の式:
または
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
12、m、n、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)
を有する化合物が本明細書で提供される。
【0085】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
4、R
5、R
12、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)。
【0086】
別の実施形態では、式(I)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
4、R
5、R
12、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)。
【0087】
別の実施形態では、式(I)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
12、m、n、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)。
【0088】
別の実施形態では、式(I)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
12、m、n、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)。
【0089】
別の実施形態では、式(I)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
9、R
12およびpは本明細書で定義される通りである)。
【0090】
別の実施形態では、式(I)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
9、R
12およびpは本明細書で定義される通りである)。
【0091】
以下の式を有する式(II)の化合物:
またはその薬学的に許容される塩(式中、R
2、R
4、R
5、R
12、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)も本明細書で提供される。
【0092】
別の実施形態では、式(II)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
4、R
5、R
12およびpは本明細書で定義される通りである)。
【0093】
別の実施形態では、式(II)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
12、m、n、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)。
【0094】
別の実施形態では、式(II)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
12、m、n、pおよび環Aは本明細書で定義される通りである)。
【0095】
別の実施形態では、式(II)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
9、R
12およびpは本明細書で定義される通りである)。
【0096】
別の実施形態では、式(II)の化合物が以下の式を有する:
またはその薬学的に許容される塩である(式中、R
2、R
3、R
5、R
9、R
12およびpは本明細書で定義される通りである)。
【0097】
一実施形態では、式(I)または式(II)の化合物が表1に示される化合物である。個々のエナチオマーおよびジアステレオマーは、化合物番号および化合物名によって下の表に含まれており、それらの対応する構造は、それらから容易に決定することができることが理解される。場合によっては、エナンチオマーまたはジアステレオマーは、それぞれの特性、例えば、キラルHPLCでの保持時間またはその生物活性によって識別される。
【表1】
【0098】
したがって、別の態様では、表1から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩が本明細書で提供される。
【0099】
一実施形態では、式(I)または式(II)の化合物が表2に示される化合物である。個々のエナチオマーおよびジアステレオマーは、化合物番号および化合物名によって下の表に含まれており、それらの対応する構造は、それらから容易に決定することができることが理解される。場合によっては、エナンチオマーまたはジアステレオマーは、それぞれの特性、例えば、キラルHPLCでの保持時間またはその生物活性によって識別され、キラル中心の絶対立体配置は任意に割り当てられる。
【0100】
【0101】
したがって、別の態様では、表2から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩が本明細書で提供される。
化合物の調製
【0102】
本明細書に記載される化合物は、特に本明細書に含まれる説明に照らして、化学分野で周知のプロセスに類似するプロセス、および以下に記載される他の複素環のプロセスを含む合成経路によって合成することができる:各々が参照により明示的に組み込まれる、Comprehensive Heterocyclic Chemistry II,Editors Katritzky and Rees,Elsevier,1997,e.g.Volume 3;Liebigs Annalen der Chemie,(9):1910-16,(1985);Helvetica Chimica Acta,41:1052-60,(1958);Arzneimittel-Forschung,40(12):1328-31,(1990)。出発物質は、一般に、Aldrich Chemicals(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などの商業的供給源から入手可能である、または方法を使用して容易に調製される(例えば、Louis F.Fieser and Mary Fieser,Reagents for Organic Synthesis,v.1-23,Wiley,N.Y.(1967-2006 ed.)またはBeilsteins Handbuch der organischen Chemie,4,Aufl.ed.Springer-Verlag,Berlin,including supplements(Beilsteinオンラインデータベースを介しても入手可能))。式Iの化合物はまた、米国特許第8476434号明細書、米国特許第7880000号明細書、国際公開第2005/113494号パンフレット、米国特許第7868177号明細書および国際公開第2007/100646号パンフレットに見られる手順に従って調製することができる。
【0103】
本明細書に記載される化合物および必要な試薬および中間体を合成するのに有用な合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)には、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999);およびL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)およびその後の版が含まれる。
【0104】
本明細書に記載される化合物は、単独で、または少なくとも2つ、例えば5~1000の化合物、もしくは10~100の化合物を含む化合物ライブラリーとして調製することができる。本明細書に記載される化合物を含むライブラリーは、コンビナトリアル「スプリットアンドミックス」アプローチによって、または、例えば、液相もしくは固相化学のいずれかを使用する複数の並行合成によって調製することができる。よって、さらなる態様によると、少なくとも2つの本明細書に記載される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む化合物ライブラリーが本明細書で提供される。
【0105】
実施例は、本明細書に記載される化合物を調製するための例示的な方法を提供する。当業者であれば、他の合成経路を使用して、本明細書に記載される化合物を合成できることを理解するだろう。具体的な出発物質および試薬を実施例に示し、論じるが、他の出発物質および試薬を容易に置き換えて、さまざまな誘導体および/または反応条件を提供することができる。さらに、記載される方法によって調製された例示的な化合物の多くを、従来の化学を使用して、本開示に照らしてさらに修飾することができる。
【0106】
本明細書に記載される化合物を調製する際に、中間体の遠隔官能基(例えば、第一級または第二級アミン)の保護が必要となる場合がある。このような保護の必要性は、遠隔官能基の性質および調製方法の条件によって異なる。適切なアミノ保護基には、アセチル、トリフルオロアセチル、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)および9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が含まれる。このような保護の必要性は容易に判断できる。保護基およびその使用の一般的な説明については、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,New York,1991を参照されたい。
【0107】
本明細書に記載される化合物を調製する方法では、反応生成物を互いにおよび/または出発物質から分離することが有利となり得る。各ステップまたは一連のステップの所望の生成物は、当技術分野で一般的な技術によって、所望の程度の均質性まで分離および/または精製される。典型的には、このような分離には、多相抽出、溶媒もしくは溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華、またはクロマトグラフィーが含まれる。クロマトグラフィーは、例えば、逆相および順相;サイズ排除;イオン交換;高、中および低圧液体クロマトグラフィー方法および装置;小規模分析;擬似移動床(SMB)および分取薄層または厚層クロマトグラフィー、ならびに小規模薄層およびフラッシュクロマトグラフィーの技術を含む、任意の数の方法を伴い得る。
【0108】
別のクラスの分離方法は、所望の生成物、未反応の出発物質、反応副産物などに結合する、またはこれを分離可能にするように選択された試薬で混合物を処理することを含む。このような試薬には、活性炭、モレキュラーシーブ、イオン交換媒体などの吸着剤または吸収剤が含まれる。あるいは、試薬は、塩基性材料の場合は酸、酸性材料の場合は塩基、抗体などの結合試薬、結合タンパク質、クラウンエーテルなどの選択的キレート剤、液体/液体イオン抽出試薬(LIX)などであり得る。適切な分離方法の選択は、蒸留および昇華における沸点および分子量、クロマトグラフィーにおける極性官能基の有無、多相抽出における酸性媒体および塩基性媒体における材料の安定性などの、関与する材料の性質に依存する。
【0109】
ジアステレオマー混合物は、例えばクロマトグラフィーおよび/または分画結晶などの方法によって、それらの物理的化学的差異に基づいて、それらの個々のジアステレオマーに分離することができる。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールまたはモッシャー酸塩化物などのキラル補助剤)との反応によりエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオ異性体を対応する純粋なエナンチオマーに変換(例えば加水分解)することによって分離できる。また、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であり得、本明細書に含まれる。エナンチオマーはまた、キラルHPLCカラムを使用して分離することもできる。
【0110】
単一立体異性体、例えば、その立体異性体を実質的に含まないエナンチオマーは、光学活性分割剤を使用したジアステレオマーの形成などの方法を使用してラセミ混合物を分割することによって得ることができる(Eliel,E.and Wilen,S.“Stereochemistry of Organic Compounds,”John Wiley & Sons,Inc.,New York,1994;Lochmuller,C.H.,(1975)J.Chromatogr.,113(3):283-302)。本明細書に記載されるキラル化合物またはその薬学的に許容される塩のラセミ混合物は、以下を含む任意の適切な方法によって分離および単離することができる:(1)キラル化合物によるイオン性ジアステレオマー塩の形成および分別結晶または他の方法による分離、(2)キラル誘導体化剤によるジアステレオマー化合物の形成、ジアステレオマーの分離、および純粋な立体異性体への変換、ならびに(3)直接キラル条件下での、実質的に純粋なまたは濃縮された立体異性体の分離。“Drug Stereochemistry, Analytical Methods and Pharmacology,” Irving W.Wainer,Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York(1993)を参照されたい。
【0111】
方法(1)では、ジアステレオマー塩を、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ、α-メチル-β-フェニルエチルアミン(アンフェタミン)などのエナンチオマー的に純粋なキラル塩基と、カルボン酸およびスルホン酸などの酸性官能基を有する不斉化合物との反応によって形成することができる。ジアステレオマー塩は、分別結晶またはイオンクロマトグラフィーによって分離するように誘導することができる。アミノ化合物の光学異性体を分離するために、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸または乳酸などのキラルカルボン酸またはスルホン酸を添加することによって、ジアステレオマー塩を形成することができる。
【0112】
あるいは、方法(2)により、分割する基質を、キラル化合物の1つのエナンチオマーと反応させて、ジアステレオマー対を形成する(E.and Wilen,S.“Stereochemistry of Organic Compounds”,John Wiley & Sons,Inc.,1994,p.322)。ジアステレオマー化合物を、不斉化合物をメンチル誘導体などのエナンチオマー的に純粋なキラル誘導体化試薬と反応させ、引き続いてジアステレオマーを分離し、加水分解して、純粋なまたは濃縮されたエナンチオマーを得ることによって形成することができる。光学純度を決定する方法は、塩基の存在下のメンチルエステル、例えば(-)クロロギ酸メンチルなどのキラルエステル、またはラセミ混合物のモッシャーエステル、α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニルアセテート(Jacob III.J.Org. Chem.(1982)47:4165)を調製し、2つのアトロプ異性体エナンチオマーまたはジアステレオマーの存在について1H NMRスペクトルを分析することを含む。アトロプ異性化合物の安定なジアステレオマーは、アトロプ異性ナフチル-イソキノリンの分離方法(国際公開第96/15111号パンフレット)に従って、順相および逆相クロマトグラフィーによって分離および単離することができる。方法(3)により、2つのエナンチオマーのラセミ混合物を、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーによって分離することができる(“Chiral Liquid Chromatography”(1989)W.J.Lough,Ed.,Chapman and Hall,New York;Okamoto,J.Chromatogr.,(1990)513:375-378)。濃縮または精製されたエナンチオマーは、旋光度および円二色性などの、不斉炭素原子を有する他のキラル分子を区別するために使用される方法によって区別することができる。
生物学的評価
【0113】
酵素活性(または他の生物学的活性)の阻害剤としての式(I)または式(II)の化合物の相対的有効性は、各化合物が所定の程度まで活性を阻害する濃度を決定し、次いで、結果を比較することによって確立することができる。典型的には、好ましい決定は、生化学的アッセイにおいて活性の50%を阻害する濃度、すなわち、50%阻害濃度または「IC50」である。IC50値の決定は、従来技術を使用して達成することができる。一般に、IC50は、試験中のある濃度範囲の阻害剤の存在下で所与の酵素の活性を測定することによって決定することができる。次いで、実験的に得られた酵素活性の値を、使用した阻害剤濃度に対してプロットする。(阻害剤の非存在下での活性と比較して)50%の酵素活性を示す阻害剤の濃度をIC50値とみなす。同様に、他の阻害濃度も、活性を適切に決定することによって定義することができる。例えば、いくつかの設定では、90%阻害濃度、すなわちIC90等を確立することが望ましい場合がある。
【0114】
IRE1α RNase活性の阻害は、自己リン酸化IRE1αによるXBP1ステムループの切断を測定する酵素アッセイで決定した。このアッセイ形式は、IRE1αキナーゼまたはRNaseドメインのいずれかの阻害剤が確実に識別されるように選択した。ATPポケットへの結合とIRE1αキナーゼ活性の阻害は、RNase活性を阻害するために必ずしも必要ではない。化合物を、XBP1sの直接測定(B-DNAアッセイ)による、またはインフレームのみの、スプライシングされたXBP1転写産物から発現されるルシフェラーゼ融合を有するHT1080 XBP1-Lucのルシフェラーゼシグナルの定量化による細胞アッセイでも特性を明らかにした。IRE1α酵素およびXPB1-Lucアッセイでは、本明細書に記載される化合物(例えば、表1の化合物)が活性を示した。
【0115】
式(I)または式(II)の化合物の細胞増殖、細胞傷害性、および細胞生存率は、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega Corp.)によって測定することができる。CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標である、存在するATPの定量化に基づいて、培養物中の生細胞数を決定する均一法である。CellTiter-Glo(登録商標)アッセイは、マルチウェル形式で使用するように設計されているため、自動化されたハイスループットスクリーニング(HTS)、細胞増殖および細胞傷害性アッセイにとって理想的となる。均一アッセイ手順は、単一の試薬(CellTiter-Glo(登録商標)試薬)を、血清補充培地で培養した細胞に直接添加することを伴う。細胞の洗浄、培地の除去、および複数回のピペッティングステップは必要ない。このシステムは、384ウェル形式で、試薬の添加および混合の後、10分間で15個の細胞/ウェルほどの少量の細胞を検出する。
【0116】
式(I)または式(II)の化合物の生物学的活性を、IRE1生化学的結合アッセイ(実施例7)、生化学的RNaseアッセイ(実施例8)、細胞PDアッセイ、XBP1s-LUCレポーター(実施例9)、および多発性骨髄腫(MM)細胞増殖アッセイのIRE1αベースの阻害によって測定した。
化合物の投与
【0117】
本明細書に記載される化合物は、処置すべき状態に適した任意の経路によって投与することができる。適切な経路としては、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、髄腔内、および硬膜外を含む)、経皮、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内、および鼻腔内が挙げられる。局所免疫抑制処置の場合、化合物は、移植前に移植片を阻害剤と灌流または接触させることを含む、病巣内投与によって投与することができる。好ましい経路は、例えば、レシピエントの状態と共に変動し得ることが理解されるだろう。化合物が経口投与される場合、これは、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に丸剤、カプセル、錠剤等として製剤化され得る。化合物が非経口投与される場合、これは、下記に詳述される通り、薬学的に許容される非経口ビヒクルと共に注射用単位剤形で製剤化され得る。
【0118】
よって、一態様では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書で提供される。一実施形態では、本明細書に記載される化合物が、対象に経口的または非経口的に投与することができる医薬組成物として投与される。本明細書に記載される化合物は、化合物が注射、懸濁液、シロップ、クリーム、軟膏、ゲル、スプレー、溶液および乳濁液に溶解または懸濁される局所または非経口使用のために製剤化され得る。
【0119】
経口投与は、化合物(例えば、医薬組成物として製剤化される)を服用する際の患者のコンプライアンスを促進し、それによって、コンプライアンスおよび有効性を高めることができる。本明細書に記載される化合物を含む経口医薬組成物には、それだけに限らないが、錠剤(例えば、コーティング、非コーティング、およびチュアブル)およびカプセル剤(例えば、ハードゼラチンカプセル、ソフトゼラチンカプセル、腸溶性コーティングカプセル、および徐放性カプセル)が含まれる。錠剤は、直接圧縮、湿式造粒、または乾式造粒によって調製することができる。本明細書に記載される化合物を含む経口医薬組成物は、遅延放出または延長放出のために製剤化され得る。
【0120】
ヒト患者を処置するための用量は、約10mg~約1000mgの式(I)または式(II)の化合物の範囲であり得る。典型的な用量は、約100mg~約300mgの化合物であり得る。用量は、特定の化合物の吸収、分布、代謝、および排泄を含む、薬物動態学および薬力学的性質に応じて1日1回(QID)、1日2回(BID)、またはより頻繁に投与することができる。加えて、毒性因子が、投与量および投与レジメンに影響を及ぼし得る。経口投与される場合、丸剤、カプセル剤または錠剤は、指定された期間、毎日、またはそれより間隔を開けて経口摂取され得る。このレジメンを、所定回数の治療サイクルの間繰り返すことができる。
処置方法
【0121】
本明細書で提供される一態様では、本明細書で提供される化合物が、がんを処置するのに有用である。がんは、小胞体ストレス応答(UPR)経路に関連している可能性がある。したがって、有効量の本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を、がんを有する患者に投与することによって、がんを処置する方法が本明細書で提供される。本明細書で提供される方法は、本明細書に示される医薬組成物として製剤化された化合物またはその薬学的に許容される塩の投与を含むことが理解されるべきである。
【0122】
本明細書で提供される方法は、固形腫瘍/がんの処置を含む。例えば、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の投与は、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿生殖器がん、食道がん、喉頭がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、胃がん、皮膚がん、角化棘細胞腫、肺がん、類表皮癌、大細胞がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨がん、結腸がん、腺腫、膵臓がん、腺癌、甲状腺がん、濾胞状癌、未分化癌、乳頭癌、セミノーマ、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝癌および胆道、腎臓癌、頬側口腔がん、鼻咽頭がん、咽頭がん、口唇がん、舌がん、口腔がん、小腸がん、結腸直腸がん、大腸がん、直腸がん、気管支がん、肝細胞がん、胃がん、子宮内膜がん、黒色腫、腎がん、膀胱がん、子宮体がん、および子宮頸がんを有する患者に実施することができる。
【0123】
別の実施形態では、本明細書で提供される方法が、有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を、がんを有する患者に投与することによるがんの処置を含み、がんが扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、消化器がん、食道がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌(HCC)、肛門癌、陰茎癌、または頭頸部がんを含む。
【0124】
ある特定の実施形態では、がんが乳がんである。乳がんは、当技術分野で理解されるステージI、II、III、またはIVであり得る。一実施形態では、乳がんがトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。別の実施形態では、乳がんがHer2陰性乳がんである。
【0125】
別の態様では、例えば、リンパ腫、リンパ性白血病(急性(ALL)および慢性(CLL))、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、または非ホジキンリンパ腫などの血液がんを処置する方法が本明細書で提供される。一実施形態では、本明細書の方法が、有効量の本明細書に記載される化合物を投与することによる、リンパ腫、リンパ性白血病、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、または骨髄増殖性疾患(MPD)の処置を含む。
【0126】
一実施形態では、有効量の本明細書に記載される化合物を、MMを有する患者に投与することによって、MMを処置する方法である。
【0127】
一実施形態では、がんが、Ire1媒介がん(すなわち、対照と比較して異常なIre1の発現または活性を有するがん)である。一実施形態では、Ire1媒介がんが増加したIre1の発現を有する。別の実施形態では、Ire1媒介がんが増加したIre1の活性を有する。このような増加は、対照に対して(例えば、所定のIre1機能、発現、活性を有する患者;または、例えば、本明細書に記載される化合物もしくはその薬学的に許容される塩による処置前、処置中もしくは処置後の単一の患者における尺度に対して)測定することができる。
【0128】
したがって、一態様では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することによって、異常なレベルのIre1活性を有するヒトまたは動物患者のこのような異常なレベルのIre1活性によって引き起こされる疾患を処置する方法が本明細書で提供される。疾患は、低すぎるまたは高すぎる量のIre1活性によって引き起こされ得る。例えば、疾患は、Ire1活性の欠損または異常に高いIre1活性(例えば、Ire1の活動亢進)によって引き起こされ得る。方法は、治療上有効量のIre1モジュレーターである式(I)または式(II)の化合物を患者に投与することを含む。
【0129】
Ire1欠損は、特定の対象または健康な対象の集団におけるIre1活性の正常レベルと比較して減少した量のIre1活性である。減少した量のIre1活性は、過剰量の折りたたみ異常タンパク質蓄積をもたらし、それによって疾患病態を引き起こす。
【0130】
Ire1活動亢進は、特定の対象または健康な対象の集団におけるIre1活性の正常レベルと比較して増加した量のIre1活性である。増加した量のIre1活性は、例えば、過剰量の細胞増殖をもたらし、それによって疾患病態を引き起こし得る。
【0131】
一実施形態では、疾患がIre1欠損に関連している。このような疾患には、それだけに限らないが、嚢胞性線維症、網膜色素変性症、糖尿病、または神経変性疾患が含まれる。神経変性疾患には、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調、バッテン病(スピルマイヤー-フォークト-シェーグレン-バッテン病としても知られている)、ウシ海綿状脳症(BSF)、カナバン病、コケイン症候群、皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、HIV関連痴呆、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体病、マシャド・ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血続発性亜急性連合性脊髄変性症、統合失調症、脊髄小脳失調症(さまざまな特徴を有する複数の型)、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、または脊髄癆が含まれ得る。
【0132】
他の実施形態では、疾患が異常に高いIre1に関連している。このような疾患には、それだけに限らないが、がん、炎症性疾患、および自己免疫疾患が含まれる。例示的ながんには、それだけに限らないが、乳がんおよび多発性骨髄腫が含まれる。一実施形態では、疾患が多発性骨髄腫である。一実施形態では、疾患がトリプルネガティブ乳がんである。例示的な炎症性疾患には、それだけに限らないが、喘息、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患;再潅流傷害、関節リウマチ、移植拒絶反応、および血管炎が含まれる。例示的な自己免疫疾患には、それだけに限らないが、XBP1関連クローン病、セリアック病、1型糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、チャーグ・ストラウス症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、および関節リウマチが含まれる。一実施形態では、疾患がXBP1関連クローン病である。
【0133】
一態様では、有効量の本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することによって、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症の進行を処置する方法が本明細書で提供される。一実施形態では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の投与が、アテローム性動脈硬化症病変のマクロファージの数を減少させる。このような減少は、いくつかの実施形態では、アポトーシス状態を変えることなく与えることができる。別の実施形態では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の投与が、IL-1β、CCL2、およびケモカイン受容体2の産生を阻害または低減する。
医薬製剤
【0134】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物として標準的な製薬慣行に従って製剤化することができる。したがって、化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書でさらに提供される。
【0135】
典型的な製剤は、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩と賦形剤を混合することによって調製される。適切な担体、希釈剤および賦形剤には、それだけに限らないが、炭水化物、ワックス、水溶性および/または水膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などの材料が含まれる。使用される特定の賦形剤は、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩が施用されている手段および目的に依存するだろう。溶媒は、一般的に哺乳動物に投与するために、安全と認められている(GRAS)溶媒に基づいて選択される。一般に、安全な溶媒は、水および水に可溶性または混和性である他の非毒性溶媒などの非毒性水性溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)等、およびこれらの混合物が含まれる。製剤はまた、薬物(すなわち、本明細書に記載される化合物またはその医薬組成物)の的確な提示を提供する、または医薬品(すなわち、医薬)の製造を補助するために、1つ以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、オペーク剤(opaquing agent)、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味剤および他の既知の添加剤も含み得る。
【0136】
製剤は、従来の溶解および混合手順を使用して調製され得る。例えば、原薬(bulk drug substance)(すなわち、本明細書に記載される化合物もしくはその薬学的に許容される塩、またはその安定化形態(例えば、シクロデキストリン誘導体との複合体または他の既知の複合体形成剤)が、上述の賦形剤のうちの1つ以上の存在下で、適切な溶媒に溶解される。本発明に記載される化合物またはその薬学的に許容されるは、典型的には、容易に制御可能な薬物投与量を提供し、所定のレジメンで患者コンプライアンスを可能にするように医薬剤形に製剤化される。
【0137】
施用のための医薬組成物(または製剤)は、薬物を投与するために使用される方法に応じて多様な方法で包装され得る。一般的に、分配用物品は、医薬製剤をその中に適した形態で配置した容器を含む。適切な容器には、ボトル(プラスチックおよびガラス)、サシェ、アンプル、プラスチック袋、金属シリンダーなどの材料が含まれる。容器はまた、パッケージの内容物への不用意なアクセスを防止するための不正開封防止アセンブリを含むこともできる。それに加えて、容器は、容器の内容物を説明するラベルをその上に配置している。ラベルはまた、適切な警告を含むこともできる。
【0138】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の医薬製剤は、さまざまな経路および投与型のために調製することができる。例えば、所望の純度を有する、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を、場合により、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)16th edition,Osol,A.Ed.)と、凍結乾燥製剤、粉砕粉末または水溶液の形態で混合することができる。製剤化は、周囲温度で、適切なpHで、および所望の程度の純度で、生理学的に許容される担体、すなわち、使用される投与量および濃度においてレシピエントに対して非毒性である担体と混合することによって行うことができる。製剤のpHは、具体的な用途および化合物の濃度に主に依存するが、約3~約8の範囲であることができる。例えば、pH5の酢酸緩衝液中の製剤が適切な実施形態であり得る。
【0139】
医薬組成物は、通常、固体組成物、凍結乾燥製剤として、または水溶液として保管することができる。
【0140】
本明細書に記載される医薬組成物は、十分な医学的実用性に合わせた様式で、すなわち、量、濃度、スケジュール、コース、ビヒクルおよび投与経路で製剤化され、処方され、投与され得る。本文脈で考慮すべき因子としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者に既知である他の因子が挙げられる。投与される化合物の有効量は、このような考慮によって管理され、過剰増殖性障害を改善または処置するために必要な最小の量である。
【0141】
一般的な提案として、1回の投与当たり非経口投与される阻害剤の初期薬学的有効量は、1日当たり患者の体重の約0.01~100mg/kg、すなわち約0.1~20mg/kgの範囲であることになり、使用される化合物の典型的な初期範囲は、0.3~15mg/kg/日であることになる。
【0142】
許容される薬学的に許容される賦形剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、緩衝液(リン酸、クエン酸および他の有機酸など);アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン(メチルもしくはプロピルパラベンなど);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなど);単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む);キレート剤(EDTAなど);糖類(スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤(TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)など)を含む。医薬品有効成分を、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されるマイクロカプセル中に、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子およびナノカプセル)中またはマクロ乳濁液中に取り込むこともできる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されている。
【0143】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例としては、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号明細書)、L-グルタミン酸とγ-L-グルタミン酸エチルとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0144】
製剤は、本明細書に詳述される投与経路に適したものを含む。製剤は、都合良く、単位剤形で提示されてもよく、任意の方法によって調製され得る。技術および製剤は、一般的にRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA)に見られる。このような方法は、有効成分を、1つ以上の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、有効成分を液体担体、または微粉化固体担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0145】
経口投与に適した本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の製剤は、各々が所定の量のこのような化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する丸剤、カプセル剤、カシェ剤または錠剤などの個別単位として調製することができる。圧縮された錠剤は、適切な機械内で、場合により、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、表面活性剤または分散剤と混合された、粉末または顆粒などの自由流動形態の有効成分を圧縮することよって調製することができる。成形された錠剤は、適切な機械内で湿らせた粉末化活性成分と不活性液体希釈剤との混合物を成形することによって作製することができる。錠剤は、場合により、コーティングする、または溝を入れることができ、場合により、これらからの有効成分の緩徐化された、または制御された放出を提供するように製剤化される。錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳濁剤、硬もしくは軟カプセル、例えば、ゼラチンカプセル、シロップ、またはエリキシル剤を経口使用のために調製することができる。経口使用を意図した本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の製剤は、医薬組成物を製造するための任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は、口当たりの良い調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤および防腐剤を含む1つ以上の薬剤を含有することができる。錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混和物中に有効成分を含有する錠剤が許容される。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;コーンスターチまたはアルギン酸などの顆粒化剤および崩壊剤;デンプン、ゼラチンまたはアカシアなどの結合剤;およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの潤滑剤であり得る。錠剤はコーティングされていなくても、または胃腸管での崩壊および吸収を遅延させ、それによって、長期間にわたって持続作用を提供するためのマイクロカプセル化を含む既知の技術によってコーティングされてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を、単独で、またはワックスと共に使用することができる。
【0146】
眼または他の外部組織、例えば、口および皮膚の処置のために、製剤は、好ましくは、例えば0.075~20%w/wの量の有効成分を含有する局所軟膏またはクリームとして施用される。軟膏に製剤化される場合、有効成分は、パラフィン系または水混和性軟膏基剤のいずれかと共に使用することができる。あるいは、有効成分を、水中油型クリーム基剤と共にクリームに製剤化することができる。所望する場合、クリーム基剤の水相は、多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG 400を含む)およびこれらの混合物などの、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含むことができる。局所製剤は、所望により、皮膚または他の患部を通した有効成分の吸収または浸透を増強する化合物を含むことができる。このような皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連類似体が挙げられる。本明細書で提供される組成物の乳濁剤の油性相は、既知の様式で、既知の成分から構成され得る。相は単に乳化剤を含み得るが、望ましくは、少なくとも1つの乳化剤と脂肪もしくは油との、または脂肪と油の両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。油と脂肪の両方を含むことも好ましい。まとめると、安定化剤(複数可)を含む、または含まない乳化剤(複数可)が、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスが油および脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を構成する。本明細書に記載される製剤に使用するのに適した乳化剤および乳化安定化剤としては、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0147】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混和した活性材料を含有することができる。このような賦形剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムなどの懸濁化剤、ならびに自然発生ホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)との縮合生成物、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコール(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)との縮合生成物、エチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトール由来の部分エステル(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)との縮合生成物などの分散剤または湿潤剤が挙げられる。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤、例えば、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、およびスクロースまたはサッカリンなどの1つ以上の甘味剤も含有することができる。
【0148】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の医薬組成物は、水性または油性の減菌注射用懸濁液などの減菌注射用調製物の形態であることができる。この懸濁液は、上述されている適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して製剤化することができる。減菌注射用調製物はまた、1,3-ブタンジオール中溶液などの非毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の減菌注射可能な溶液もしくは懸濁液であることができる、または凍結乾燥粉末として調製することができる。使用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、減菌の不揮発性油を溶媒または懸濁媒として慣用的に使用することができる。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む、任意の無刺激不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製に同様に使用することができる。
【0149】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に依存して変化する。例えば、ヒトへの経口投与を意図した時間放出製剤は、総組成物の約5~約95%(重量:重量)まで変化し得る、適切かつ都合の良い量の担体材料と配合される、およそ1~1000mgの活性材料を含有することができる。医薬組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するように調製することができる。例えば、静脈内注入を意図した水溶液は、約30mL/時間の速度で適切な体積の注入が生じるために、1ミリリットルの溶液当たり約3~500μgの有効成分を含有することができる。
【0150】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性の滅菌注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。
【0151】
眼への局所投与に適した製剤には、有効成分が適切な担体、特に有効成分のための水性溶媒に溶解または懸濁されている点眼液も含まれる。有効成分は、好ましくは、約0.5~20%w/w、例えば、約0.5~10%w/w、例えば約1.5%w/wの濃度でこのような製剤中に存在する。
【0152】
口の局所投与に適した製剤には、風味付けされた基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に有効成分を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に有効成分を含む香錠;ならびに適切な液体担体中に有効成分を含む洗口剤が含まれる。
【0153】
直腸投与のための製剤は、例えば、カカオ脂またはサリチレートを含む適切な基剤と共に坐剤として提示され得る。
【0154】
肺内または鼻腔投与に適した製剤は、例えば、0.1~500ミクロンの範囲の粒径(0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等のミクロンの単位で、0.1~500ミクロンの範囲の粒径を含む)を有し、これは、肺胞嚢に達するように、鼻孔からの迅速な吸入により、または口からの吸入により投与される。適切な製剤は、有効成分の水性または油性溶液を含む。エアロゾルまたは乾燥粉末投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製することができ、以下に記載される障害の処置または予防に今まで使用された化合物などの他の治療薬と共に送達することができる。
【0155】
膣内投与に適した製剤は、有効成分に加えて適切であると考えられるこのような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提示することができる。
【0156】
製剤は、単位用量または多用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルに包装することができ、使用直前に、注射するために、滅菌液体担体、例えば、水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。即時注射溶液および懸濁液は、前記の種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製される。好ましい単位投与量製剤は、有効成分の本明細書に上記した一日用量もしくは一日単位副用量、またはその適切な画分を含有するものである。
【0157】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩は、獣医用担体と一緒に、上に定義される少なくとも1つの有効成分を含む獣医用組成物に使用することができる。獣医用担体は、本組成物の投与の目的に有用な材料であり、不活性である、または獣医学の技術分野において許容され、有効成分と適合性の固体、液体または気体材料であることができる。これらの獣医用組成物は、非経口で、経口で、または任意の他の所望の経路によって投与することができる。
併用療法
【0158】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩は、単独で、または炎症もしくは過剰増殖性障害(例えば、がん)などの本明細書に記載される疾患もしくは障害を処置するための追加の治療薬と組み合わせて使用することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩が、抗炎症もしくは抗過剰増殖特性を有する、または炎症、免疫応答障害もしくは過剰増殖性障害(例えば、がん)を処置するのに有用である追加の第2の治療用化合物との、医薬組み合わせ製剤で、または併用療法としての投与レジメンで組み合わせられる。追加の治療薬は、Bcl-2阻害剤、JAK阻害剤、PI3K阻害剤、mTOR阻害剤、抗炎症剤、免疫調節剤、本明細書に記載される抗がん剤、アポトーシス促進剤、神経栄養因子、心血管疾患の治療薬、肝疾患の治療薬、抗ウイルス剤、血液疾患の治療薬、糖尿病の治療薬、および免疫不全障害の治療薬であり得る。第2の治療薬はNSAID抗炎症薬であり得る。第2の治療薬は本明細書に記載される抗がん剤であり得る。医薬組み合わせ製剤または投与レジメンの第2の化合物は、好ましくは、互いに悪影響を与えないように、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩に対して相補的な活性を有する。このような化合物またはその薬学的に許容される塩は、適切には、意図した目的にとって有効な量で組み合わせ中に存在する。一実施形態では、組成物が、NSAIDなどの治療薬と組み合わせて、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0159】
併用療法は同時レジメンまたは逐次レジメンとして投与することができる。逐次的に投与される場合、組み合わせは、2つ以上の投与で投与することができる。併用投与としては、別個の製剤または単一の医薬製剤を使用する共投与、およびいずれかの順序での連続投与が挙げられ、好ましくは、両方の(または全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を発揮する時間がある。
【0160】
上記の共投与される薬剤のうちのいずれにも適切な投与量は、現在使用されているものであり、新たに特定された薬剤および他の化学療法剤または処置の複合作用(相乗作用)によって低下し得る。
【0161】
併用療法は「相乗作用」を提供することができ、「相乗的」、すなわち、有効成分を一緒に使用した場合に達成される効果が、化合物を別個に使用することからもたらされる効果の合計より大きいと証明され得る。相乗効果は、有効成分が(1)複合単位投与製剤中で共製剤化され、同時に投与もしくは送達される;(2)別個の製剤として交互にもしくは並行して送達される場合に;または(3)何らかの他のレジメンによって、達成され得る。交互療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が例えば別個のシリンジの異なる注射、別個の丸剤もしくはカプセル剤、または別個の注入によって逐次的に投与または送達される場合に達成され得る。概して、交互療法の間、有効投与量の各有効成分が、逐次的に、すなわち、連続的に投与される一方、併用療法では、有効投与量の2つ以上の有効成分が一緒に投与される。
【0162】
治療の特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を、本明細書に記載されるものなどの他の治療薬、ホルモン剤または抗体剤と組み合わせることができ、ならびに外科療法および放射線療法と組み合わせることができる。本明細書に記載される併用療法は、少なくとも1つの本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の投与、および少なくとも1つの他のがん処置法の使用を含むことができる。本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩、および他の薬学的活性治療薬の量、ならびに相対的な投与のタイミングは、所望の組み合わせ治療効果を達成するために選択される。
【0163】
一実施形態では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩が、アロマターゼ阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/mTOR経路阻害剤、CDK4/6阻害剤、HER-2阻害剤、SERM、SERD、EGFR阻害剤、PD-1阻害剤、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、HSP90阻害剤、VEGFR阻害剤、AKT阻害剤、化学療法、またはこれらの任意の組み合わせと組み合わせて使用される。
【0164】
一実施形態では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が、パクリタキセル、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、フルベストラント、レトロゾール、パルボシクリブ、ゲムシタビン、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペグフィルグラスチム、フィルグラスチム、タモキシフェン、ドセタキセル、トレミフェン、ビノレルビン、カペシタビンおよびイキサベピロンから選択される治療薬と組み合わせて投与される。
【0165】
一実施形態では、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩が、ホルモン遮断療法、化学療法、放射線療法、モノクローナル抗体、またはこれらの組み合わせと組み合わせて使用される。
式Iまたは式IIの化合物の代謝産物
【0166】
本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩のインビボ代謝産物も本明細書で提供される。このような産物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断などから生じ得る。したがって、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を、その代謝産物を得るのに十分な期間、哺乳動物と接触させることを含むプロセスによって生成される化合物が本明細書で提供される。
【0167】
代謝産物は、典型的には、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の放射標識(例えば、14Cまたは3H)同位体を調製し、これを検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kg超)で、ラット、マウス、モルモット、サルまたはヒトなどの動物に非経口投与し、代謝が生じるのに十分な時間(典型的には約30秒~30時間)をおき、その変換産物を尿、血液または他の生物学的試料から単離することによって特定される。これらの産物は、標識されているため、容易に単離される(他は、代謝産物中で生存するエピトープを結合することが可能な抗体の使用によって単離される)。代謝産物の構造は、従来の様式、例えば、MS、LC/MSまたはNMR分析によって決定される。一般に、代謝産物の分析は、従来の薬物代謝研究と同じ方法で行われる。代謝産物は、それがインビボで見られない限り、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の治療投与のための診断アッセイに有用である。
製造品
【0168】
別の態様では、上記の疾患および障害の処置に有用な物質を含有する製造品またはキットが本明細書で提供される。一実施形態では、キットが、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む容器を含む。キットは、容器上の、または容器に結合したラベルまたは添付文書をさらに含むことができる。適切な容器としては例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどのさまざまな材料から形成することができる。容器は、状態を処置するのに有効な本明細書に記載される化合物もしくはその薬学的に許容される塩、またはその製剤を保持することができ、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は静注液バッグまたは皮下注射針で貫通可能なストッパを有するバイアルであることができる)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤が、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、がんなどの選択された状態を処置するために使用されることを示す。さらに、ラベルまたは添付文書は、処置される患者が、アテローム性動脈硬化症、過剰増殖性障害、神経変性、心肥大、疼痛、片頭痛、または神経外傷性疾患もしくは事象などの障害を有する患者であることを示すことができる。一実施形態では、ラベルまたは添付文書が、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を使用して、異常な細胞成長に起因する障害を処置することができることを示す。ラベルまたは添付文書はまた、組成物を使用して他の障害を処置することができることも示す。これに代えて、またはこれに加えて、製造品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含むことができる。製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0169】
キットは、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩、および存在する場合は第2の医薬製剤の投与のための指示書をさらに含むことができる。例えば、キットが、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む第1の組成物および第2の医薬製剤を含む場合、キットは、第1および第2の医薬組成物を、それを必要とする患者に同時に、順次に、または別個に投与するための指示書をさらに含むことができる。
【0170】
別の実施形態では、キットが、錠剤またはカプセル剤などの、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の固体経口形態の送達に適している。このようなキットは、好ましくは、いくつかの単位投与量を含む。このようなキットは、それらの意図した使用の順序で配向された投与量を有するカードを含むことができる。このようなキットの例はブリスターパックである。ブリスターパックは包装業界で周知であり、医薬単位剤形の包装に幅広く使用されている。所望であれば、処置スケジュール中の投与量が投与され得る日を指定する、例えば数字、文字、もしくは他の印の形態での、またはカレンダーインサートを用いた記憶補助機構が提供され得る。
【0171】
一実施形態によると、キットが、(a)本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む第1の容器と;場合により(b)第2の医薬製剤を含む第2の容器であって、第2の医薬製剤が抗過剰増殖活性を有する第2の化合物を含む第2の容器とを含むことができる。これに代えて、またはこれに加えて、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第3の容器をさらに含むことができる。製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0172】
キットが本発明に記載される化合物またはその薬学的に許容される塩の組成物と第2の治療薬とを含むある特定の他の実施形態では、キットが、分割されたボトルまたは分割されたホイルパケットなどの、別個の組成物を含有するための容器を含むことができるが、別個の組成物が、単一の分割されていない容器に含有されてもよい。典型的には、キットが、別個の成分の投与のための指示書を含む。キット形態は、別個の構成要素が好ましくは異なる剤形(例えば、経口および非経口)で投与される場合、異なる投与間隔で投与される場合、または組み合わせの個々の構成成分の滴定が処方医師によって望まれる場合に、特に有利である。
実施形態
【0173】
実施形態1:式(I)または式(II):
または
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩:
(式中、
R
1は水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~C
7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロシクロアルキルであり;
R
2は水素、ハロゲン、-CN、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキルであり;
R
3は-L
1-R
1、水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
R
4は-L
2-R
9-、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
R
5は水素、ハロゲン、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
各R
6は独立に、水素、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
a、-NR
aR
b、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-SR
a、-S(O)
2R
a、-P(O)R
aR
b、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~6シクロアルキル、-SO
2(C
1~6アルキル)、または-SO
2(C
1~6ハロアルキル)であり;
R
7は水素、ハロゲン、-CN、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルコキシ、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、またはR
10-置換もしくは非置換C
3~6シクロアルキルであり;
各R
8は独立に、水素、ハロゲン、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
R
9は水素、ハロゲン、R
10-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
10-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
1~6ハロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
3~C
7シクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
10-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
10-置換もしくは非置換5員もしくは6員ヘテロシクロアルキルであり;
各R
10は独立に、ハロゲン、-N
3、-CF
3、-CN、-NO
2、-NR
aR
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)R
b、-NR
aC(O)OR
b、-NR
aC(O)NR
b、-S(O)
2NR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-OR
a、-OC(O)R
a、-OC(O)NR
aR
b、-SR
a、-S(O)R
a、-S(O)
2R
a、-S(O)
3R
a、-S(O)(=NH)R
a、-S(O)
2NR
aR
b、-P(O)R
aR
b、R
11-置換もしくは非置換C
1~6アルキル、R
11-置換もしくは非置換2~6員ヘテロアルキル、R
11-置換もしくは非置換C
3~7シクロアルキル、R
11-置換もしくは非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、R
11-置換もしくは非置換C
5~6アリール、またはR
11-置換もしくは非置換5~6員ヘテロアリールであり;
各R
11は独立に、ハロゲン、-N
3、-CF
3、-CCl
3、-CBr
3、-CI
3、-CN、-CHO、-OH、-NH
2、-COOH、-CONH
2、-NO
2、-SH、-SO
2Cl、-SO
3H、-SO
4H、-SO
2NH
2、非置換C
1~6アルキル、非置換2~6員ヘテロアルキル、非置換C
3~7シクロアルキル、非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、非置換C
5~6アリール、または非置換5~6員ヘテロアリールであり;
各R
12は独立に、水素、ハロゲン、NPG、またはR
10-置換もしくは非置換C
1~3アルキルであり;
L
1は-NHSO
2-、-NHC(O)-、NHCO(O)-、-NHC(O)NH-、-NH-、-O-、-S-、または-SO
2-であり;
L
2は-NHSO
2-、-NHC(O)-、NHCO(O)-、-NHC(O)NH-、-NH-、-O-、-S-、または-SO
2-であり;
各R
aおよびR
bは独立に、水素、非置換C
1~6アルキル、非置換C
1~6ハロアルキル、非置換C
1~6アルコキシ、非置換C
2~6アルケニル、非置換C
2~6アルキニル、非置換C
3~7シクロアルキル、非置換3~7員ヘテロシクロアルキル、非置換C
5~6アリール、または非置換5員もしくは6員ヘテロアリールであり;
mは1または2であり;
nは1または2であり;
pは1、2、3、4、5または6であり;
環AはC
3~6シクロアルキル、3~6員ヘテロシクロアルキル、C
5~6アリール、または5員もしくは6員ヘテロアリールである)。
【0174】
実施形態2:化合物またはその薬学的に許容される塩が式(I)を含む、実施形態1に記載の化合物。
【0175】
実施形態3:化合物またはその薬学的に許容される塩が式(II)を含む、実施形態1に記載の化合物。
【0176】
実施形態4:環Aが6員ヘテロシクロアルキルである、実施形態1から3のいずれか1つに記載の化合物。
【0177】
実施形態5:環Aがピペリジニルである、実施形態1から4のいずれか1つに記載の化合物。
【0178】
実施形態6:R12がハロゲンまたはC1~3アルキルである、実施形態4または実施形態5に記載の化合物。
【0179】
実施形態7:nがpが1または2である、実施形態6に記載の化合物。
【0180】
実施形態8:R12が-Fである、実施形態6または実施形態7に記載の化合物。
【0181】
実施形態9:pが2であり、R12が-Fおよびメチルである、実施形態6または実施形態7に記載の化合物。
【0182】
実施形態10:環Aが以下:
の構造を有する、実施形態1から9のいずれか1つに記載の化合物。
【0183】
実施形態11:R6が水素である、実施形態1から10のいずれか1つに記載の化合物。
【0184】
実施形態12:R8が水素である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の化合物。
【0185】
実施形態13:R2が非置換C1~3アルキルである、実施形態1から12のいずれか1つに記載の化合物。
【0186】
実施形態14:R2がメチルである、実施形態1から13のいずれか1つに記載の化合物。
【0187】
実施形態15:R3が水素である、実施形態1から14のいずれか1つに記載の化合物。
【0188】
実施形態16:R4が-L2-R9-である、実施形態1から15のいずれか1つに記載の化合物。
【0189】
実施形態17:L2が-NHSO2-である、実施形態16に記載の化合物。
【0190】
実施形態18:L2が-NHC(O)-である、実施形態16に記載の化合物。
【0191】
実施形態19:R9がR10-置換または非置換フェニルである、実施形態16から18のいずれか1つに記載の化合物。
【0192】
実施形態20:R9がR10-置換フェニルであり、R10がハロゲンである、実施形態19に記載の化合物。
【0193】
実施形態21:R9がR10-置換または非置換C3~6シクロアルキルである、実施形態16から18のいずれか1つに記載の化合物。
【0194】
実施形態22:R9が非置換シクロプロパニルである、実施形態21に記載の化合物。
【0195】
実施形態23:R9が2~6員非置換ハロアルキルである、実施形態16から18のいずれか1つに記載の化合物。
【0196】
実施形態24:ハロアルキルが3,3ジフルオロブチルである、実施形態23に記載の化合物。
【0197】
実施形態25:R9がR10-置換または非置換C1~3アルキルである、実施形態16から18のいずれか1つに記載の化合物。
【0198】
実施形態26:R9が非置換C1~3アルキルである、実施形態25に記載の化合物。
【0199】
実施形態27:R5がハロゲンである、実施形態1から27のいずれか1つに記載の化合物。
【0200】
実施形態28:R5が水素である、実施形態1から27のいずれか1つに記載の化合物。
【0201】
実施形態29:R5が非置換C1~3アルキルである、実施形態1から27のいずれか1つに記載の化合物。
【0202】
実施形態30:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0203】
実施形態31:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0204】
実施形態32:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0205】
実施形態33:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0206】
実施形態34:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0207】
実施形態35:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0208】
実施形態36:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0209】
実施形態37:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0210】
実施形態38:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0211】
実施形態39:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0212】
実施形態40:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0213】
実施形態41:以下の式:
を有する、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0214】
実施形態42:表1の化合物を含む、実施形態1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0215】
実施形態43:実施形態1から42のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【0216】
実施形態44:がんを処置する方法であって、有効量の実施形態1から42のいずれか1つに記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または実施形態43に記載の医薬組成物を、がんを有する患者に投与するステップを含む方法。
【0217】
実施形態45:がんが扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、消化器がん、食道がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌(HCC)、肛門癌、陰茎癌、または頭頸部がんである、実施形態44に記載の方法。
【0218】
実施形態46:がんがリンパ腫、リンパ性白血病、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、または骨髄増殖性疾患(MPD)である、実施形態44に記載の方法。
【0219】
実施形態47:がんが多発性骨髄腫である、実施形態44に記載の方法。
【0220】
実施形態48がんが乳がんである、実施形態44に記載の方法。
【0221】
実施形態49:乳がんがトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、実施形態48に記載の方法。
【0222】
実施形態50:がんがIre1媒介がんである、実施形態44から49のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
実施形態51:がんが増加したIre1の発現を特徴とする、実施形態50に記載の方法。
【0224】
実施形態52:化合物もしくはその薬学的に許容される塩または医薬組成物と組み合わせて1つ以上の追加の抗がん治療を投与することをさらに含む、実施形態44から51のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
実施形態53:抗がん治療が前記化合物または医薬組成物の前に投与される、実施形態52に記載の方法。
【0226】
実施形態54:抗がん治療が前記化合物または医薬組成物の後に投与される、実施形態52に記載の方法。
【0227】
実施形態55:抗がん治療が前記化合物または医薬組成物と同時に投与される、実施形態52に記載の方法。
【0228】
実施形態56:抗がん治療が、コルチコステロイド、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤、抗CD38抗体、抗VEGF-A抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、もしくは抗インターロイキン-6抗体、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態52から55のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
実施形態57:コルチコステロイドがデキサメタゾンを含む、実施形態56に記載の方法。
【0230】
実施形態58:プロテアソーム阻害剤がカルフィルゾミブ、イキサゾミブまたはボルテゾミブを含む、実施形態56に記載の方法。
【0231】
実施形態59:免疫調節剤がレナリドマイドまたはポマリドマイドを含む、実施形態56に記載の方法。
【0232】
実施形態60:抗PD-L1抗体がアベルマブ、デュルバルマブまたはアテゾリズマブを含む、実施形態56に記載の方法。
【0233】
実施形態61:抗PD-1抗体がペンブロリズマブまたはニボルマブを含む、実施形態56に記載の方法。
【0234】
実施形態62:処置が放射線療法を投与することをさらに含む、実施形態44から62のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
実施形態63:Ire1を発現するがん細胞を阻害または殺傷する方法であって、Ire1を発現するがん細胞を、実施形態1から42のいずれか1つに記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または実施形態43に記載の医薬組成物と接触させるステップを含む方法。
【0236】
実施形態64:阻害または殺傷がインビボで実施される、実施形態63に記載の方法。
【0237】
実施形態65:Ire1を発現するがん細胞がヒトにある、実施形態63または実施形態64に記載の方法。
【0238】
実施形態66:Ire1活性を調節する方法であって、Ire1を、実施形態1から42のいずれか1つに記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または実施形態43に記載の医薬組成物と接触させるステップを含む方法。
【0239】
実施形態67:Ire1が、がん細胞にある、実施形態66に記載の方法。
【0240】
実施形態68:がん細胞がヒトにある、実施形態67に記載の方法。
【0241】
実施形態69:がんを処置するための医薬の製造における実施形態1から42のいずれか1つに記載の化合物または実施形態43に記載の医薬組成物の使用。
【0242】
実施形態70:がんが扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、消化器がん、食道がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌(HCC)、肛門癌、陰茎癌、または頭頸部がんである、実施形態69に記載の使用。
【0243】
実施形態71:がんがリンパ腫、リンパ性白血病、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、または骨髄増殖性疾患(MPD)である、実施形態69に記載の使用。
【0244】
実施形態72:がんが多発骨髄腫である、実施形態69に記載の使用。
【0245】
実施形態73:がんが乳がんである、実施形態69に記載の使用。
【0246】
実施形態74:乳がんがトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、実施形態73に記載の使用。
【0247】
実施形態75:がんを処置する方法に使用するための、実施形態1から42のいずれか1つに記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または実施形態43に記載の医薬組成物。
【0248】
実施形態76:がんが扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、消化器がん、食道がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、唾液腺癌、腎臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌(HCC)、肛門癌、陰茎癌、または頭頸部がんである、実施形態75に記載の化合物。
【0249】
実施形態77:がんがリンパ腫、リンパ性白血病、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、または骨髄増殖性疾患(MPD)である、実施形態75に記載の化合物。
【0250】
実施形態78:がんが多発性骨髄腫である、実施形態75に記載の化合物。
【0251】
実施形態79:がんが乳がんである、実施形態75に記載の化合物。
【0252】
実施形態80:乳がんがトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、実施形態79に記載の化合物。
【0253】
実施形態81:がんを処置するためのキットであって、
a)請求項43に記載の医薬組成物と;
b)使用説明書と
を含むキット。
【0254】
以下の実施例は、限定するものではなく、例証として提供されている。
実施例
合成実施例
【0255】
表1の例示的な式(I)または式(II)の化合物を調製し、特徴付け、IRE1α(アルファ)への結合について試験した。2つ以上の名称が式(I)もしくは式(II)の化合物または中間体に関連付けられている場合、化学構造が化合物を定義するものとする。
【0256】
略語:
ACN:アセトニトリル
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
h:時間
HCl:塩酸
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IPA:イソプロピルアルコール
LCMS:液体クロマトグラフィー-質量分析
MeCN:アセトニトリル
THF:テトラヒドロフラン
実施例1
(S)-2-クロロ-N-(6-メチル-5-((4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド塩酸塩
ステップ1:3-メトキシ-4-(トリブチルスタンニル)ピリダジン
【0257】
窒素下の乾燥フラスコにジイソプロピルアミン(3.83mL、27.2mmol)および無水THF(120mL)を装入し、混合物を-78℃に冷却した。ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、10.9mL、27.2mmol)を添加し、混合物を0℃に加温し、0.5時間撹拌したままにした。次いで、この混合物を-78℃に冷却し、3-メトキシピリダジン(2.0g、18.2mmol)の無水THF(36mL)中溶液を10分間にわたってゆっくり添加した。反応物をさらに0.5時間撹拌した。次いで、トリブチルスズクロリド(7.88mL、9.46g、29.1mmol)を-78℃で添加し、混合物を冷却浴中で1.5時間撹拌した。次いで、飽和塩化アンモニウム水溶液を添加し、混合物を室温に加温した。相を分離し、有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液およびブラインで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、フィルタにかけ、真空中で濃縮した。粗生成物を(0~25%EtOAc/ヘキサン)を通してシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物3.07g(収率42%)を無色油として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+= 401.1;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.74 - 8.66 (m, 1H), 7.51 - 7.36 (m, 1H), 4.10 (s, 3H), 1.59 - 1.43 (m, 6H), 1.37 - 1.28 (m, 6H), 1.20 - 1.05 (m, 6H), 0.89 (t, J = 7.3 Hz, 9H).
ステップ2:4-(2-クロロピリミジン-4-イル)-3-メトキシピリダジン
【0258】
3-メトキシ-4-(トリブチルスタンニル)ピリダジン(2.34g、5.87mmol)を含むフラスコに、2,4-ジクロロピリミジン(875mg、5.87mmol)、ヨウ化銅(I)(112mg、0.59mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(689mg、0.59mmol)およびDMF(24mL)をこの順で添加した。溶液をN
2で15分間スパージングし、次いで、100℃湯浴に入れた。16時間後、混合物を室温に冷却し、C18逆相フラッシュクロマトグラフィー(0~50%MeCN/10mMギ酸アンモニウム水溶液、pH=3.8)によって直接精製して、標記化合物850mg(収率65%)を赤色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+= 222.9;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 9.12 (s, 1H), 8.77 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.35 (s, 1H), 8.18 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 4.33 (s, 3H).
ステップ3:(S)-tert-ブチル3-((4-(3-メトキシピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0259】
4-(2-クロロピリミジン-4-イル)-3-メトキシピリダジン(500mg、2.25mmol)を含むフラスコに、(S)-tert-ブチル3-アミノピペリジン-1-カルボキシレート(900mg、4.49mmol)、トリエチルアミン(1.24mL、8.98mmol)およびDMSO(4.5mL)をこの順で添加した。窒素を溶液に15分間バブリングし、次いで、混合物を100℃湯浴に入れた。4時間後、混合物を室温に冷却し、ギ酸(0.7ml)を添加し、混合物をC18逆相クロマトグラフィー(10~50%MeCN/10mMギ酸アンモニウム水溶液、pH=3.8)によって直接精製して、標記化合物766mg(収率88%)を黄色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+= 387.2;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 9.02 (d, J = 4.7 Hz, 1H), 8.40 (d, J = 4.7 Hz, 1H), 8.14 (br s, 1H), 7.42 (s, 1H), 5.38 (s, 1H), 4.28 (s, 3H), 4.06 - 3.96 (m, 1H), 3.89 - 2.97 (m, 4H), 2.05 - 1.96 (m, 1H), 1.82 - 1.73 (m, 1H), 1.68 - 1.57 (m, 2H), 1.50 - 1.34 (m, 9H).
ステップ4:(S)-4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-オール臭化水素酸塩
【0260】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-メトキシピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(950mg、2.46mmol)を含むフラスコに、酢酸(10ml)中33%HBr溶液を添加し、混合物を100℃に加熱した。30分後、反応混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮した。1,4-ジオキサンを添加し、混合物を真空中で濃縮し(2回繰り返す)、引き続いてメタノールを添加し、減圧下で濃縮して(2回繰り返す)、標記化合物868mg(粗収率100%)を淡黄色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+= 273.0;
1H NMR (500 MHz, CD
3OH) δ 8.64 (s, 1H), 8.56 (d, J = 4.7 Hz, 1H), 8.32 - 8.20 (br s, 1H), 8.21 (d, J = 4.3 Hz, 1H), 4.63 (s, 1H), 3.67 (dd, J = 11.9, 3.1 Hz, 1H), 3.42 (d, J = 12.6 Hz, 1H), 3.12 - 3.03 (m, 2H), 2.28 - 2.19 (m, 1H), 2.17 - 2.09 (m, 1H), 2.09 - 1.96 (m, 1H), 1.92 - 1.83 (m, 1H).
ステップ5:(S)-tert-ブチル3-((4-(3-クロロピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0261】
粗(S)-4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-オール臭化水素酸塩(868mg、2.46mmol)を含むフラスコに、酸化塩化リン(11.5mL、0.12mol)を添加し、混合物を真空中で濃縮した。さらなる酸化塩化リン(11.5mL、0.12mmol)を添加し、反応物を80℃に加熱した。24時間後、酸化塩化リンを減圧下で濃縮することによって除去し、次いで、1,4-ジオキサンを添加し、混合物を再び真空中で濃縮した。このようにして得られた粗物質に、THF(2.5mL)、飽和炭酸ナトリウム水溶液(5mL)を添加し、引き続いて、ジ-tert-ブチルジカルボネート(1.07g、4.92mmol)のTHF(2.5mL)中溶液を添加し、混合物をrtで撹拌した。1時間後、混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、相を分離した。有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、フィルタにかけ、減圧下で濃縮した。粗物質をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(0~100%アセトン/CH
2Cl
2)によって精製して、標記化合物744mg(収率77%)を淡桃色固体として得た。LCMS (ESI) [M-tBu+H]
+ = 335.0, [M-Boc+H]
+ = 291.0;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 9.28 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.47 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.81 (br s, 1H), 7.11 (s, 1H), 5.47 (s, 1H), 4.03 (s, 1H), 3.93 - 2.94 (br m, 4H), 2.05 - 1.94 (m, 1H), 1.84 - 1.73 (m, 1H), 1.73-1.66 (m, 1H), 1.66 - 1.57 (m, 1H), 1.42 (s, 9H).
ステップ6:(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-アミノ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0262】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-クロロピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(200mg、0.510mmol)、5-アミノ-2-メチルナフタレン-1-オール塩酸塩(129mg、0.610mmol)および炭酸セシウム(503mg、1.54mmol)およびN-メチルピロリドン(1.5mL)をフラスコで合わせ、混合物に窒素を10分間流した。次いで、反応混合物を120℃に加熱した。1.5時間後、さらなる5-アミノ-2-メチルナフタレン-1-オール塩酸塩(128mg、0.61mmol)、N-メチル-ピロリドン(1.5mL)および炭酸セシウム(503mg、1.54mmol)を添加した。120℃で2時間後、反応混合物を室温に冷却し、C18逆相クロマトグラフィー(10~70%MeCN/10mMギ酸アンモニウム水溶液、pH=3.8)によって直接精製して、標記化合物149mg(収率55%)を淡褐色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+ = 528.2;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 9.07 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.82-8.25 (br s, 1H), 8.44 (s, 1H), 7.81 (s, 1H), 7.70 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.23 - 7.10 (m, 2H), 6.72 (dd, J = 7.0, 1.0 Hz, 1H), 5.59 (br s, 1H), 4.52-3.97 (m, 1H), 4.09 (s, 1H), 3.96 - 2.88 (m, 5H), 2.31 (s, 3H), 2.08 - 2.04 (m, 1H), 1.85 - 1.78 (m, 1H), 1.72 (dd, J = 18.5, 9.5 Hz, 1H), 1.68 - 1.61 (m, 1H), 1.44 (s, 9H).
ステップ7:(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-(2-クロロフェニルスルホンアミド)-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0263】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-アミノ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(50mg、0.090mmol)のピリジン(0.50mL)中溶液に、2-クロロベンゼンスルホニルクロリド(24mg、0.11mmol)のピリジン(0.50mL)中溶液を添加した。反応混合物をrtで撹拌した。2時間後、混合物をC18逆相クロマトグラフィー(30~80%アセトニトリル/10mMギ酸アンモニウム水溶液、pH=3.8)によって直接精製して、標記化合物53mg(収率80%)を黄褐色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]+ = 702.1;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 9.07 (s, 1H), 8.81-8.16 (m, 2H), 8.04 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.94 (dd, J = 7.9, 1.6 Hz, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.60 - 7.51 (m, 3H), 7.51 - 7.43 (m, 2H), 7.30 (td, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 6.08 - 5.21 (m, 1H), 4.07 (s, 1H), 3.94 - 2.83 (m, 4H), 2.28 (s, 3H), 2.06 (s, 1H), 1.88 - 1.77 (m, 1H), 1.77 - 1.59 (m, 2H), 1.44 (s, 9H).
ステップ8:(S)-2-クロロ-N-(6-メチル-5-((4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド塩酸塩
【0264】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-(2-クロロフェニルスルホンアミド)-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(53mg、0.080mmol)の1,4-ジオキサン(1mL)中溶液に、1,4-ジオキサン中4M HCl(0.5mL、2mmol)を添加し、混合物をrtで撹拌した。1時間後、得られた固体をフィルタにかけ、1,4-ジオキサン、次いで、ヘプタン、次いで、再び1,4-ジオキサンで洗浄した。固体を水に溶解し、凍結乾燥して、標記化合物36mg(収率75%)を黄色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]+ = 602.1;
1H NMR (500 MHz, d
6-DMSO) δ 10.68 (s, 1H), 9.38 (br s, 1H), 9.15 (d, J = 4.7 Hz, 2H), 8.62 (br s, 1H), 8.55 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.86 (dd, J = 7.9, 1.2 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 7.65 - 7.54 (m, 3H), 7.51 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.43 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.33 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 4.35 (s, 1H), 3.42 (s, 1H), 3.20 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 2.92 - 2.74 (m, 2H), 2.20 (s, 3H), 2.00 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 1.90 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 1.77 (q, J = 9.4 Hz, 1H), 1.63 (dd, J = 19.4, 9.3 Hz, 1H).
実施例2
(S)-N-(6-メチル-5-((4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-イル)シクロプロパンカルボキサミド塩酸塩
ステップ1:(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-(シクロプロパンカルボキサミド)-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0265】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-アミノ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(30mg、0.06mmol)のピリジン(0.50mL)中溶液に、シクロプロパンカルボニルクロリド(7.1mg、0.07mmol)のピリジン(0.50mL)中溶液を添加し、反応混合物をrtで撹拌した。2時間後、混合物を真空中で濃縮してピリジンを除去し、粗物質をEtOAc(40mL)と飽和NaCl水溶液(10mL)に分配した。相を分離し、有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、フィルタにかけ、真空中で濃縮した。得られた粗物質をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(0~100%EtOAc/CH
2Cl
2)によって精製して、標記化合物18mg(収率53%)を灰白色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]+ = 596.3;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 9.05 (s, 1H), 8.96 - 8.20 (m, 2H), 8.04 (s, 1H), 7.93 - 7.62 (m, 3H), 7.50 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 6.02 (br s, 1H), 4.06 (s, 1H), 3.93 - 2.84 (m, 4H), 2.29 (s, 3H), 2.06 (s, 1H), 1.80 (s, 1H), 1.75 - 1.59 (m, 3H), 1.54 (br s, 9H), 1.18 - 1.09 (m, 2H), 1.09 - 0.99 (m, 1H), 0.93 - 0.87 (m, 1H).
ステップ2:(S)-N-(6-メチル-5-((4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-イル)シクロプロパンカルボキサミド塩酸塩
【0266】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-(シクロプロパンカルボキサミド)-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(18mg、0.03mmol)の1,4-ジオキサン(1mL)中溶液に、1,4-ジオキサン中4M HCl(0.2mL、0.8mmol)を添加し、混合物をrtで撹拌した。1時間後、得られた固体をフィルタにかけ、1,4-ジオキサン、次いで、ヘプタン、次いで、再び1,4-ジオキサンで洗浄した。固体を水に溶解し、凍結乾燥して、標記化合物11mg(収率68%)を灰白色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]+ = 496.2;
1H NMR (500 MHz, d
6-DMSO) δ 10.26 (s, 1H), 9.32-9.01 (m, 1H), 9.17 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 9.00-8.77 (m, 1H), 8.63-8.14 (m, 1H), 8.58 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.72 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.62 (s, 1H), 7.57 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.45 - 7.38 (m, 1H), 4.30 (s, 1H), 3.43 (m, 1H), 3.21 (d, J = 12.1 Hz, 1H), 2.92 - 2.75 (m, 2H), 2.24 (s, 3H), 2.11 (s, 1H), 2.01 (dd, J = 8.6, 4.0 Hz, 1H), 1.91 (dd, J = 10.3, 4.2 Hz, 1H), 1.76 (dd, J = 21.4, 10.4 Hz, 1H), 1.63 (dd, J = 21.9, 11.5 Hz, 1H), 0.86 (d, J = 4.8 Hz, 4H).
実施例3
(S)-N-(6-メチル-5-((4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-イル)プロパン-1-スルホンアミド塩酸塩
ステップ1:(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((2-メチル-5-(プロピルスルホンアミド)ナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0267】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((5-アミノ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(40mg、0.076mmol)のピリジン(0.50mL)中溶液に、1-プロパンスルホニルクロリド(13mg、0.091mmol)のピリジン(0.50mL)中溶液を添加し、混合物をrtで撹拌した。24時間後、さらなるピリジン(0.20mL)中1-プロパンスルホニルクロリド(13mg、0.091mmol)を添加し、rtでさらに24時間後、混合物を真空中で濃縮して、ピリジンを除去した。粗物質を酢酸エチル(40mL)と飽和NaCl水溶液(10mL)に分配した。相を分離し、有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、フィルタにかけ、真空中で濃縮した。得られた粗物質をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(0~100%酢酸エチル/ジクロロメタン)によって精製して、標記化合物23mg(収率48%)を淡黄色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+ = 634.3;
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 9.09 (s, 1H), 8.91 - 8.05 (m, 2H), 7.89 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.61 (s, 1H), 7.57 - 7.48 (m, J = 7.4 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.30 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.18 - 5.42 (m, 1H), 4.08 (s, 1H), 3.86 - 2.89 (m, 4H), 3.09 (m, 2H), 2.32 (s, 3H), 2.07 (s, 1H), 1.90 - 1.80 (m, 3H), 1.72 (m, J = 8.6 Hz, 1H), 1.67 - 1.60 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 0.98 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
ステップ2:(S)-N-(6-メチル-5-((4-(2-(ピペリジン-3-イルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-イル)プロパン-1-スルホンアミド塩酸塩
【0268】
(S)-tert-ブチル3-((4-(3-((2-メチル-5-(プロピルスルホンアミド)ナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(23mg、0.04mmol)の1,4-ジオキサン(1mL)中溶液に、1,4-ジオキサン中4M HCl(0.24mL、0.96mmol)を添加し、混合物をrtで撹拌した。1時間後、得られた固体をフィルタにかけ、1,4-ジオキサン、次いで、ヘプタン、次いで、再び1,4-ジオキサンで洗浄した。固体を水に溶解し、凍結乾燥して、標記化合物19mg(収率92%)を灰白色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+ = 534.2;
1H NMR (500 MHz, d
6-DMSO) δ 9.87 (s, 1H), 9.27 - 8.82 (m, 2H), 9.17 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 8.72-8.20 (m, 1H), 8.57 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.19 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.59 (dd, J = 8.5, 5.4 Hz, 3H), 7.49 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.48 - 7.41 (m, 1H), 4.32 (s, 1H), 3.41 - 3.36 (m, 1H), 3.21 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 3.16 - 3.08 (m, 2H), 2.93 - 2.72 (m, 2H), 2.24 (s, 3H), 2.08 - 1.97 (m, 1H), 1.91 (dd, J = 10.3, 4.1 Hz, 1H), 1.76 (dq, J = 15.0, 7.5 Hz, 3H), 1.63 (dd, J = 20.8, 10.1 Hz, 1H), 0.96 (t, J = 7.4 Hz, 3H).
実施例4
N-(2-フルオロ-5-((2-(((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)アミノ)-[4,5’-ビピリミジン]-4’-イル)オキシ)-6-メチルナフタレン-1-イル)プロパン-1-スルホンアミド
ステップ1:4-クロロ-5-(2-メチルスルファニルピリミジン-4-イル)ピリミジン
【0269】
窒素下で、トルエン(70mL)中の4-クロロ-5-ヨードピリミジン(2.0g、8.32mmol)、2-(メチルチオ)-4-(トリブチルスタンニル)ピリミジン(3.8g、9.15mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(1.12g、1.60mmol)の混合物を95℃で16時間撹拌した。フッ化カリウムの飽和溶液で反応物をクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル20:80)によって精製して、標記化合物(534mg、収率26.9%)を黄色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 239.1
ステップ2:2-フルオロ-6-メチル-5-(5-(2-メチルスルファニルピリミジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)オキシ-ナフタレン-1-アミン
【0270】
窒素下で、ジメチルスルホキシド(8mL)中の4-クロロ-5-(2-メチルスルファニルピリミジン-4-イル)ピリミジン(0.30g、1.26mmol)、5-アミノ-6-フルオロ-2-メチル-ナフタレン-1-オール塩酸塩(0.26g、1.13mmol)および炭酸セシウム(0.82g、2.51mmol)の混合物を100℃で1時間撹拌した。反応混合物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせた。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空下で濃縮した。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:1)によって精製して、標記化合物(350mg、収率70.8%)を褐色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 394.1
ステップ3:2-フルオロ-6-メチル-5-[5-(2-メチルスルフィニルピリミジン-4-イル)ピリミジン-4-イル]オキシ-ナフタレン-1-アミン
【0271】
2-フルオロ-6-メチル-5-(5-(2-メチルスルファニルピリミジン-4-イル)ピリミジン-4-イル]オキシ-ナフタレン-1-アミン(0.32g、0.8100mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)および水(2mL)中溶液に、ペルオキシ一硫酸カリウム(1.0g、1.63mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応物を重亜硫酸ナトリウムの飽和溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を重炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄し、減圧下で濃縮した。標記化合物を次のステップに直接使用した。LCMS (ESI) [M+H]
+ = 410.1
ステップ4:ベンジル(3S,5S)-3-((4’-((5-アミノ-6-フルオロ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)-[4,5’-ビピリミジン]-2-イル)アミノ)-5-フルオロピペリジン-1-カルボキシレート
【0272】
窒素下で、ベンジル(3S,5S)-3-アミノ-5-フルオロ-ピペリジン-1-カルボキシレート塩酸塩(0.22g、0.75mmol)および2-フルオロ-6-メチル-5-(5-(2-メチルスルフィニルピリミジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)オキシ-ナフタレン-1-アミン(0.3g、0.7300mmol)の1,4-ジオキサン(5mL)中溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.38mL、2.32mmol)を添加し、110℃で36時間撹拌した。溶媒を真空下で除去した。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:1)によって精製して、標記化合物(179mg、収率40.9%)を褐色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 598.3
ステップ5:ベンジル(3S,5S)-3-フルオロ-5-((4’-((6-フルオロ-2-メチル-5-(プロピルスルホンアミド)ナフタレン-1-イル)オキシ)-[4,5’-ビピリミジン]-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0273】
ベンジル(3S,5S)-3-((4’-((5-アミノ-6-フルオロ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)-[4,5’-ビピリミジン]-2-イル)アミノ)-5-フルオロピペリジン-1-カルボキシレート(60mg、0.10mmol)のピリジン(1mL)中溶液に、1-プロパンスルホニルクロリド(57mg、0.40mmol)を添加し、反応混合物を室温で36時間撹拌した。反応物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を減圧下で濃縮した。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィーゲル(酢酸エチル/石油エーテル、3:1)によって精製して、標記化合物(62mg、収率87.7%)を黒色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 704.2
ステップ6:N-(2-フルオロ-5-((2-(((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)アミノ)-[4,5’-ビピリミジン]-4’-イル)オキシ)-6-メチルナフタレン-1-イル)プロパン-1-スルホンアミド
【0274】
ベンジル(3S,5S)-3-フルオロ-5-((4’-((6-フルオロ-2-メチル-5-(プロピルスルホンアミド)ナフタレン-1-イル)オキシ)-[4,5’-ビピリミジン]-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(60mg、0.0900mmol)のジクロロメタン(3mL)中溶液に、酢酸中33%HBr溶液(1mL)を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣をジクロロメタンに溶解し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄した。溶媒を真空下で除去し、粗生成物を分取HPLCによって精製して、標記化合物(2.8mg、収率5.8%)を白色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 570.2;
1H NMR (300 MHz, CD
3OD) δ 9.46 (s, 1H), 8.60 (s, 1H), 8.46 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.26 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.80 - 7.69 (m, 1H), 7.59 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 7.37 (t, J = 9.7 Hz, 1H), 4.88 (d, J = 47.4 Hz, 1H), 4.42 (s, 1H), 3.31 - 3.13 (m, 4H), 2.90 - 2.70 (m, 1H), 2.61 - 2.37 (m, 2H), 2.30 (s, 3H), 2.10 - 1.65 (m, 3H), 1.11 (t, J = 7.4 Hz, 3H).
実施例5
3,3-ジフルオロ-N-(2-フルオロ-5-((4-(2-(((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)-6-メチルナフタレン-1-イル)ブタン-1-スルホンアミド
ステップ1:4-クロロ-2-(4-メトキシベンジル)ピリダジン-3(2H)-オン
【0275】
5-クロロ-1H-ピリダジン-6-オン(1.0g、7.66mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)中溶液に、水素化ナトリウム(0.50g、12.5mmol)を0℃で添加し、反応混合物を0℃で0.5時間撹拌した。次いで、4-メトキシベンジルクロリド(1.5g、9.58mmol)を添加し、25℃で16時間撹拌した。反応混合物をブラインでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄した。溶媒を除去した。残渣を、酢酸エチル/石油エーテル(1/10)で溶出するシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(860mg、収率44.8%)を黄色油として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 251.2
ステップ2:2-(4-メトキシベンジル)-4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3(2H)-オン
【0276】
窒素下で、4-クロロ-2-(4-メトキシベンジル)ピリダジン-3(2H)-オン(0.86g、3.43mmol)、2-(メチルチオ)-4-(トリブチルスタンニル)ピリミジン(1.4g、3.37mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.35g、0.30mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(15mL)中溶液を100℃で18時間撹拌した。反応物をフッ化カリウムの飽和溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、溶媒を真空下で除去した。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、1:5)によって精製して、標記化合物(700mg、収率59.9%)を白色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 341.2
ステップ3:4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3(2H)-オン
【0277】
2-(4-メトキシベンジル)-4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3(2H)-オン(0.7g、2.06mmol)のトリフルオロ酢酸(10mL)およびトリフルオロメタンスルホン酸(1mL)中溶液を室温で2時間撹拌した。反応物を氷/水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄した。溶媒を真空下で除去して、標記化合物(380mg、収率83.9%)を橙色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 221.2.
ステップ4:3-クロロ-4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン
【0278】
4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3(2H)-オン(380mg、1.73mmol)のオキシ塩化リン(10mL)中溶液を105℃で4時間撹拌した。溶媒を真空下で除去した。反応物を氷/水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。溶媒を真空下で除去した。残渣をシリカフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル1:1)によって精製して、標記化合物(340mg、収率82.6%)を黄色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 239.1.
ステップ5:2-フルオロ-6-メチル-5-((4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-アミン
【0279】
窒素下で、1-メチル-2-ピロリジノン(7mL)中の5-アミノ-6-フルオロ-2-メチル-ナフタレン-1-オール(315mg、1.65mmol)、3-クロロ-4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン(350mg、1.47mmol)、炭酸セシウム(875mg、2.68mmol)の混合物を80℃で2時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせた。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空下で除去した。残渣を、酢酸エチル/石油エーテル(1/1)で溶出するシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(350mg、収率57.6%)を褐色固体として得た。LCMS (ESI) [M+H]
+ = 394.1.
ステップ6:2-フルオロ-6-メチル-5-((4-(2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-アミン
【0280】
2-フルオロ-6-メチル-5-((4-(2-(メチルチオ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-アミン(350mg、0.89mmol)のテトラヒドロフラン(7mL)および水(3mL)中溶液に、ペルオキシ一硫酸カリウム(531mg、3.14mmol)を添加し、25℃で1時間撹拌した。反応物を重亜硫酸ナトリウムの飽和溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を重炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄した。溶媒を真空下で除去して、標記化合物(200mg、収率52.2%)を灰白色固体として得た。粗生成物を精製することなく次のステップに直接使用した。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 410.1
ステップ7:ベンジル(3S,5S)-3-((4-(3-((5-アミノ-6-フルオロ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピペリジン-1-カルボキシレート
【0281】
窒素下で、1,4-ジオキサン(4mL)中のベンジル(3S,5S)-3-アミノ-5-フルオロ-ピペリジン-1-カルボキシレート塩酸塩(170mg、0.67mmol)、2-フルオロ-6-メチル-5-((4-(2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)ナフタレン-1-アミン(200mg、0.49mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.45mL、2.71mmol)の混合物を115℃で2時間撹拌した。溶媒を真空下で除去した。残渣を、メタノール/ジクロロメタン(6%)で溶出するシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(160mg、収率52.1%)を褐色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 598.2
ステップ8:ベンジル(3S,5S)-3-((4-(3-((5-((3,3-ジフルオロブチル)スルホンアミド)-6-フルオロ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピペリジン-1-カルボキシレート
【0282】
窒素下で、ベンジル(3S,5S)-3-((4-(3-((5-アミノ-6-フルオロ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピペリジン-1-カルボキシレート(50mg、0.08mmol)およびN-メチルモルホリン(50mg、0.49mmol)のジクロロメタン(1mL)中溶液に、3,3-ジフルオロブタン-1-スルホニルクロリド(40mg、0.21mmol)を添加し、25℃で1時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせた。有機層をブラインで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。
【0283】
残渣のジクロロメタン(1mL)中溶液に、水酸化リチウムの飽和溶液(2mL)を添加した。得られた溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、メタノール/ジクロロメタン(6%)で溶出するシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(45mg、収率67.8%)を褐色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]+ = 754.2.
ステップ9:3,3-ジフルオロ-N-(2-フルオロ-5-((4-(2-(((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)-6-メチルナフタレン-1-イル)ブタン-1-スルホンアミド
【0284】
ベンジル(3S,5S)-3-((4-(3-((5-((3,3-ジフルオロブチル)スルホンアミド)-6-フルオロ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピペリジン-1-カルボキシレート(45mg、0.06mmol)のジクロロメタン(0.50mL)中溶液に、酢酸中33%HBr(0.1mL)を添加し、室温で1時間攪拌した。溶媒を真空下で除去した。粗生成物を分取HPLCによって精製して、標記化合物(10mg、収率24.3%)を白色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 620.2;
1H NMR (300 MHz, CD
3OD) δ 9.09 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 8.51 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 8.22 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.85 (dd, J = 9.3, 5.1 Hz, 1H), 7.70 - 7.59 (m, 2H), 7.39 (t, J = 9.5 Hz, 1H), 4.89 (d, J = 47.2 Hz, 1H), 4.43 (s, 1H), 3.49 - 3.38 (m, 3H), 3.14 (t, J = 12.8 Hz, 1H), 2.90 - 2.68 (m, 1H), 2.65 - 2.36 (m, 4H), 2.31 (s, 3H), 1.92 (s, 1H), 1.71 (t, J = 18.5 Hz, 3H).
実施例6
N-(2-フルオロ-5-((4-(2-(((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)-6-メチルナフタレン-1-イル)プロパン-1-スルホンアミド
ステップ1:ベンジル(3S,5S)-3-フルオロ-5-((4-(3-((6-フルオロ-2-メチル-5-(プロピルスルホンアミド)ナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート
【0285】
窒素下で、ベンジル(3S,5S)-3-((4-(3-((5-アミノ-6-フルオロ-2-メチルナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピペリジン-1-カルボキシレート(45.0mg、0.08mmol)のピリジン(0.25mL)中溶液に、1-プロパンスルホニルクロリド(26mg、0.18mmol)を添加し、反応混合物を25℃で2時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を、メタノール/ジクロロメタン(5:95)で溶出するシリカフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(45mg、収率80.7%)を褐色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]
+ = 704.2.
ステップ2:N-(2-フルオロ-5-((4-(2-(((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)ピリダジン-3-イル)オキシ)-6-メチルナフタレン-1-イル)プロパン-1-スルホンアミド
【0286】
ベンジル(3S,5S)-3-フルオロ-5-((4-(3-((6-フルオロ-2-メチル-5-(プロピルスルホンアミド)ナフタレン-1-イル)オキシ)ピリダジン-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(45mg、0.06mmol)のジクロロメタン(0.50mL)中溶液に、酢酸中33%HBr(1mL)を添加した。次いで、反応混合物を25℃で1時間撹拌し、有機層を真空下で濃縮した。粗生成物を分取HPLCによって精製して、標記化合物(12.3mg、収率32.9%)を灰白色固体として得た。LCMS(ESI): [M+H]+ = 570.2; 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 9.09 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 8.52 (d, J = 5.1 Hz, 2H), 8.23 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.84 (dd, J = 9.4, 5.2 Hz, 1H), 7.64 (dd, J = 16.9, 7.0 Hz, 2H), 7.38 (t, J = 9.5 Hz, 1H), 4.92 (d, J = 47.7 Hz, 1H), 4.45 (s, 1H), 3.37 (s, 1H), 3.27 - 3.13 (m, 3H), 2.83 (dd, J = 37.1, 14.2 Hz, 1H), 2.62 - 2.38 (m, 2H), 2.31 (s, 3H), 2.05 - 1.93 (m, 2H), 1.93 - 1.75 (m, 1H) 1.12 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
生物学的実施例
【0287】
式(I)または式(II)の例示的な化合物を試験して、IRE1の化合物阻害を評価した。各例示的な化合物のKiを決定した。
実施例7:IRE1α TR-FRET競合結合アッセイ
【0288】
IRE1アルファのキナーゼドメインに結合する化合物の親和性を決定するために、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)競合アッセイを使用した。キナーゼおよびRNaseドメイン(KR、AA G547-L977、D688N)を含むHisタグ付きIRE1アルファキナーゼデッド構築物をSf9昆虫細胞で発現させた。精製したタンパク質(最終濃度0.006μMマイクロモル)を抗Hisユーロピウム標識抗体(Life Technologies PV5596、最終濃度0.002μMマイクロモル)と1X TR-FRETアッセイ緩衝液(50mM HEPES、pH7.5、10mMMgCl
2、0.083mM Brij 35、1mM DTT、および0.1%ウシガンマグロブリン)中、4
oCで1時間プレインキュベートした後、試験化合物に添加した。ATP競合阻害剤(Kinase Tracer 236、Life Technologies PV5592)に基づく蛍光標識プローブを最終濃度0.1μM(マイクロモル)まで添加する。反応を、384ウェル白色ProxiPlates(Perkin Elmer 6008289)で、最終体積20μL(マイクロリットル)で室温で1時間行った。トレーサーのIRE1タンパク質アルファへの結合を、TRFレーザーオプションおよびLANCE/Delfia Dual/Bias D400/D630ミラー(Ex 347 nm、一次Em 665nm、二次Em 615nm)を備えたEnvision機器(PerkinElmer)で検出した。
表1に示される例示的な化合物を、IRE1α結合アッセイで試験した。決定した例示的なIC
50値を表3に列挙する。
【表3】
実施例8:IRE1アルファRNase活性アッセイ
【0289】
IRE1αのRNase活性の阻害剤を、IRE1α RNase活性の基質としてミニXBP-1ステムループRNAを使用して蛍光(Forster)共鳴エネルギー移動(FRET)によって評価した。5’-カルボキシフルオレセイン(FAM)および3’-ブラックホールクエンチャー(BHQ)で標識されたXBP1シングルステムループミニ基質オリゴヌクレオチド、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems)プローブ(Kutyavin et al(2000)Nucleic Acids Research,.28(2):655-661)をIRE1αによって切断する。オリゴヌクレオチドが無傷の場合、蛍光シグナルはBHQによって消光される。切断すると、蛍光はもはや消光されなくなり、定量化することができる。
【0290】
リンカー、キナーゼおよびRNaseドメイン(LKR、AA Q470-L977)に対応するIRE1アルファ構築物をSf9昆虫細胞で発現させた。全ての試薬の調製および手順は、RNaseフリーの条件下で行う。試験化合物および精製酵素を、384ウェル白色ProxiPlate(Perkin Elmer 6008289)で、RNaseアッセイ緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、50mM KAc、1mM MgAc、1mM DTT、および0.05%Triton X-100)中で混合した。RNA基質(最終アッセイ体積20μL、マイクロリットル)を添加したら、プレートを2分間隔で動的蛍光(Ex 485、Em 535)を読み取るためにFlexstation 3機器(Molecular Devices)に入れた。最初の50分間を使用した反応速度を使用して、RNase活性および試験化合物の阻害を計算した。
【0291】
表1の例示的な化合物は、IRE1α RNase活性において活性を有していた。
実施例9:IRE1アルファリボヌクレアーゼルシフェラーゼレポーターアッセイ
【0292】
pBABE.puro HA-2xXBP1デルタDBDホタルルシフェラーゼレポーターを発現するHEK293細胞(Mendez etal.,(2015)“Endoplasmic reticulum stress-independent activation of unfolded protein response kinases by a small molecule ATP-mimic”,eLife;4:e05434)を、L-グルタミン、10%ウシ胎児血清、100ユニット/mLのペニシリンおよび100μg/mL(ミリリットル当たりマイクログラム)のストレプトマイシン+2μg/mlのピューロマイシンを含むDMEM高グルコース培地中で培養して、選択圧を維持した。IRE1が刺激され、内因性RNase活性が活性化されると、XBP1から26ntのイントロンが除去され、フレームシフトが起こり、ルシフェラーゼの転写が可能になる。
【0293】
細胞を、ピューロマイシンなしで、384ウェルの透明底白色組織培養プレート(Corning 3707)、25μL容量に10,000/ウェルで播種した。翌朝、試験化合物を添加し、37oCで1時間インキュベートした後、50μM(マイクロモル)の最終濃度のタプシガルジンでさらに5時間細胞を刺激した。室温に平衡化した後、25μL(マイクロリットル)のOne-Glo(登録商標)ルシフェラーゼ検出試薬(Promegaカタログ番号E6120)を添加し、プレートを密封して5分間振盪して細胞を溶解し、次いで、Envision機器(PerkinElmer)を使用した発光検出によってルシフェラーゼを定量化した。
【0294】
表1の例示的な化合物は、本明細書に記載されるXBP1s-LUCレポーターアッセイにおいて活性を有していた。
【0295】
「a」または「an」実体という用語は、1つ以上のその実体を指すことに留意されたい;例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」は、1つ以上のポリペプチドを表すと理解される。よって、「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で互換的に使用することができる。
【0296】
本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は同じ意味を有する。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差を考慮すべきである。
【0297】
本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という単語は、文脈上別段の必要がある場合を除き、非排他的な意味で使用される。本明細書に記載される実施形態は、実施形態「からなる」および/または「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0298】
本明細書で使用される場合、値を指す場合の「約(about)」という用語は、特定の量からの、いくつかの実施形態では±50%、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、いくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味しており、このような変動は、開示される方法を実施する、または開示される組成物を使用するのに適切である。
【0299】
値の範囲が提供される場合、下限の単位の10分の1までの各介在値、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、その範囲の上限と下限との間、およびその記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在値は、本発明に包含されることが理解される。独立により小さい範囲に含まれることができるこれらの小さい範囲の上限および下限もまた、記載された範囲内のいずれかの具体的に除外された制限に従うことを条件として、本発明内に包含される。記載された範囲が制限の一方または両方を含む場合は、包含された制限の一方または両方を除いた範囲もまた、本明細書に含まれる。
【0300】
前記の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する本明細書に示される発明の多くの修正および他の実施形態が、これらの発明が属する当業者に思い浮かぶだろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、修正および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、これらは、一般的で説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。