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特許7098839表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションする方法と装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションする方法と装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/55 20140101AFI20220704BHJP
   G01S 7/497 20060101ALN20220704BHJP
【FI】
G01N21/55
G01S7/497
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021526791
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019081501
(87)【国際公開番号】W WO2020099643
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】18206542.5
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】カンティム,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ランファー,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルッケ,アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】ムンドゥス,マルクス
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196814(JP,A)
【文献】国際公開第2018/197398(WO,A1)
【文献】特開2010-185769(JP,A)
【文献】米国特許第06618050(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01S 7/00 - G01S 7/64
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションする方法であって、少なくとも以下のステップ:
- 前記表面に前記コーティングを塗布すること(301)と;
- 複数の照射及び/又は測定角度で、前記コーティングによって被覆された前記表面からの、前記LiDARセンサの動作波長を有する光のそれぞれの反射を測定すること(302)と;
- 前記コーティングに対する双方向反射率分布関数を、それぞれの前記照射及び/又は測定角度の関数として、それぞれの測定された前記反射に適合させること(303)と;
- 前記LiDARセンサによって放出され且つ前記コーティングによって被覆された前記表面によって反射された光の伝播を、適合された前記双方向反射率分布関数に基づいて、光線追跡アプリケーション(304)によってシミュレーションすることであって、前記LiDARセンサは点光源(101)とカメラ(102)を含むユニットとしてシミュレーションされ、前記コーティングによって被覆された前記表面は前記カメラ(102)の前に可変方向とともに可変距離で配置されるプロファイル(103,202)としてシミュレーションされることと;
- 適合された前記双方向反射率分布関数を考慮しつつ、前記LiDARセンサの方向に、前記プロファイル(103,202)によって反射された光の輝度を示す輝度画像(201)を出力すること(305)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記表面をシュミレーションした前記プロファイル(103、202)の異なる領域によってどれくらいの量の光が反射されているかが、出力された前記輝度画像(201)を用いて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
10%の拡散反射を有する基準テンプレートの反射輝度によって定義される輝度閾値が、前記輝度画像(201)に適用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面をシュミレーションした前記プロファイル(103、202)の可視領域は、現在の向き又はシミュレーションされた前記LiDARセンサに関する前記プロファイル(103、202)の設定に対する、前記表面をシュミレーションした前記プロファイル(103、202)の最大可視領域の割合として定量化される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティングに対する前記双方向反射率分布関数は、重み付け拡散ランバート項と少なくとも1つの鏡面ローブを有するクック・トーランス照射モデル項とから形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記双方向反射率分布関数のパラメータが、前記コーティングに対する前記双方向反射率分布関数の適合の間に、コスト関数に関して最適化される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コスト関数は、ペナルティ項、及び、測定されたそれぞれの前記反射と、前記双方向反射率分布関数に基づいてシミュレーションされたそれぞれの反射との間の二乗差の和に基づいて形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記双方向反射率分布関数の前記パラメータは、非線形最適化法、具体的にはネルダー・ミードダウンヒルシンプレクス法によって最適化される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記表面をシュミレーションする前記プロファイル(103、202)は、車両輪郭として選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
複数のコーティング配合について実施され、異なるコーティング配合について出力されたそれぞれの前記輝度画像(201)が互いに比較され、前記LiDARセンサにとって最も視認性が高いそのコーティング配合が、前記複数のコーティング配合から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションする装置であって、少なくとも:
- 前記表面に前記コーティングを塗布するための塗布ユニットと;
- 複数の照射及び/又は測定角度で、前記コーティングで被覆された前記表面からの前記LiDARセンサの動作波長を有する光のそれぞれの反射を測定するための測定構成と;
- 前記コーティングに対する双方向反射率分布関数を、それぞれの照射及び/又は測定角度の関数として、それぞれの測定された反射に適合させるためのコンピュータユニットと;
- 光線追跡アプリケーションを用いて、前記LiDARセンサによって放出され、前記コーティングによって被覆された前記表面によって反射された光の伝播を、適合された前記双方向反射率分布関数に基づいて、シミュレーションするためのシミュレーションユニットであって、前記LiDARセンサは点光源(101)とカメラ(102)とを含むユニットとしてシミュレーションされ、前記コーティングで被覆された前記表面は、前記カメラの前に可変方向と共に可変距離で配置されるプロファイル(103,202)としてシミュレーションされる、シミュレーションユニットと;
- 適合された前記双方向反射率分布関数を考慮しつつ、前記プロファイル(103,202)によって前記LiDARセンサの方向に反射された光の輝度を示す輝度画像(201)を出力する出力ユニットと、
を含む装置。
【請求項12】
前記測定構成は、少なくとも1つのゴニオ分光光度計を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
コンピュータプログラムを有するコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラムがコンピュータユニットで実行されるときに、少なくとも請求項1~10のいずれか1項に記載の方法のコンピュータ支援ステップを実行するように構成されたプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションする方法及び対応する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自律走行車両や最新の運転支援システムを開発するために、従来特に運転者によって手動で行っていた一定の機能を自動的に行うことができるようにするために、多数のセンサが必要となる。重要な情報、特に空間的な情報を送達するセンサの1つの種類に、この文脈におけるLiDARセンサがある。
【0003】
自律走行に関しては、LiDARは現在、重要な地位を占めている。LiDARとは「Light Detection and Ranging」の略であり、物体を検出するための光学計測システムのことである。この場合、LiDARセンサは、赤外領域の指向性レーザパルスを放出する。そのようなレーザパルスが物体に当たると、反射され、その反射した光、又は反射したレーザパルスが次にLiDARセンサに受信される。レーザパルスが放出されてからLiDARセンサで受信されるまでの飛行時間から、LiDARセンサからレーザパルスに衝突される物体までの距離を計算することができる。
【0004】
つまり、放射光又はレーザパルスの物体における反射から受信器すなわちLiDARセンサ自体における光又はレーザパルスの入射までによって、物体の位置が光又はレーザパルスの飛行時間によって決定されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、LiDARセンサは、十分な量の光が物体からLiDARセンサの方向に反射して戻った場合に限り、物体までの距離を測定することができる。つまり、所与の距離にある物体に対して、LiDARセンサの動作波長での物体の反射、又は反射光量が十分に大きい場合にのみ、物体を検出できることを意味する。
【0006】
車両の反射特性は、車両又は車体が覆われているコーティングによって支配される。
【0007】
車両が、特に自律走行車両での交通において、LiDARセンサにより車両を確実かつ広範囲で検出できるようにするために、それぞれの車両のコーティングジョブをこの点において、評価し、最適化することが望ましい。
【0008】
それぞれの車両コーティングジョブの反射を評価し、最適化するために、広範囲のそれぞれの車両コーティングジョブを施したサンプル表面を提供し、又はそれらをそれぞれの被覆でコーティングすることが知られている。このようにしてコーティングされたサンプル表面は、次いで、それぞれの表面から所定の距離に配置されたLiDARセンサを用いて、LiDARセンサによる視認性又は検出性に関して試験される。これは、それぞれのサンプル表面が、まずLiDARセンサの動作波長を有する光、一般的にはレーザパルスに曝され、そして、それぞれの表面で反射された光が、次にLiDARセンサで受信され、そして、特にその光量や強度が評価されることを意味する。様々なサンプル表面についてこの場合に生じる反射値が互いに比較される。このような比較に基づいて、与えられたコーティングジョブから、LiDARセンサによる検出に最適なコーティングジョブを最終的に選択するため、それぞれのコーティングジョブ又はそれぞれのコーティングの継続的な修正が行われる。LiDARセンサとサンプル表面の間の距離は、この場合、可能な限り多くの考えられるシナリオ、特に道路交通をエミュレートできるように、変化し得る。
【0009】
コーティングジョブ、コーティング、車両コーティング及び車両コーティングジョブという用語は、本開示の範囲において互いに同義的に使用される。
【0010】
それぞれの車両が被覆されているそれぞれのコーティングの反射のこのような評価及び最適化を可能な限り効率的にするために、車両が所定のコーティング、又は所定のコーティングジョブで塗装される場合に、車両がLiDARセンサにとってどの程度良好に視認できるかをシミュレーション及び可視化する可能性を提供することが本発明の1つの目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的に対する解決は、独立特許請求項の特徴によって提供される。有利な構成は、それぞれ従属請求項及び明細書に見いだすことができる。
【0012】
表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションするための方法が提供される。本発明による方法は、少なくとも以下のステップ:
- 表面にコーティングを塗布することと;
- 複数の照射及び/又は測定角度で、コーティングによって被覆された表面からの、LiDARセンサの動作波長を有する光のそれぞれの反射を測定することと;
- コーティングに対する双方向反射率分布関数を、それぞれの照射及び/又は測定角度の関数として、それぞれの測定された反射に適合させることと;
- LiDARセンサによって放出され且つコーティングによって被覆された表面によって反射された光の伝播を、適合された双方向反射率分布関数に基づいて、光線追跡アプリケーションによってシミュレーションすることであって、LiDARセンサは点光源とカメラを含むユニットとしてシミュレーションされ、コーティングによって被覆された表面はカメラの前に可変方向とともに可変距離で配置される又は配置され得るプロファイルとしてシミュレーションされ、好ましくは、適合された双方向反射率分布関数を使用してコンピュータグラフィックスモデルがプロファイルに適用されることと;
- 適合された双方向反射率分布関数を考慮しつつ、LiDARセンサ又は光源とカメラを含むユニットの方向に、プロファイルによって反射された(シミュレーションされた)光の輝度を示す輝度画像を出力することと、
を含む。
【0013】
輝度画像を「出力する」とは、この場合、シミュレーションの前ステップに基づいて輝度画像が決定され、特に計算され、そしてそこから導出された結果が表示されることを意味する。表示される結果は、この場合、輝度画像そのものであってもよく、又はそこから導出される画像、例えば、可視性の画像であってもよい。輝度画像の表現/表示は、様々な方法で構成されることができる。例えば、異なる輝度の領域は、対応する異なるパターン/陰影又は異なる色によって、互いから区別可能に表現又は表示されてよい。任意の他の適切な表現/表示の種類も想定される。
【0014】
LiDARセンサの典型的な動作波長は905nm又は1550nmである。これは、LiDARセンサが、905nm又は1550nmの波長の光のみを放出し、また、これ(弾性後方散乱)のみを検出することができることを意味する。
【0015】
本発明による方法の1つの可能な構成では、コーティング配合に基づいて製造され、LiDARセンサに対する視認性が調査されるコーティングは、狭い平坦なサンプル表面に塗布され、また任意にクリアコートで覆われている。後続の方法ステップでは、すなわち、コーティングによって被覆された表面からの、LiDARセンサの動作波長を有する光のそれぞれの反射を測定する間は、ゴニオ分光光度計が一般的に使用される。測定は、複数の照射及び/又は測定角度で行われ、それらの測定幾何学形状は、照射及び観察又は測定方向又は角度がほぼ等しいものも含まれる。
【0016】
分光ゴニオメーター、ゴニオ反射計、反射ゴニオメーター、反射率ゴニオメーター又は簡潔にゴニオメーター(ゴニオメーターが本質的に角度を決定するための装置)とも呼ばれるゴニオ分光光度計は、表面の反射挙動を測定する装置であって、特に表面又は表面を被覆するコーティングの角度依存特性を測定するための装置がこの場合に決定され得る。
【0017】
一般的に、コーティングの反射率分布関数(BRDF)は、表面又はサンプル表面に対するそれぞれ所定の照射及び測定角度で決定され、すなわち、反射又はそれぞれの反射値は、光入射及びセンサ位置又は測定位置の関数として決定される。この場合、方位角(0°の角度での基本方向(通常は北)から時計回りに360°まで測定された照射の角度方向)及び天頂角(表面から測定した、表面の上の照射の角度位置(0°~90°))は、測定幾何学形状の変数として考慮される。BRDFは、反射コーティング、又は反射コーティングがベースとするコーティング配合の基本的な光学特性である。BRDFの大きなばらつきのために、本発明によれば、LiDARセンサ自体及びコーティングで被覆された表面の両方をシミュレーションするか、又はLiDARセンサとコーティングの両方の特性を記述するモデルでそれらを表現するかを可能としている。特に、異方性反射挙動、すなわち、LiDARセンサによって放出され且つ表面によって反射される光の方向依存後方散乱挙動(異方性反射率又は微分分光反射率とも呼ばれる)は、調査対象のコーティングのBRDFに大きく影響する。
【0018】
1つの可能な構成では、コーティングに対する双方向反射率分布関数は、重み付け拡散ランバート項(diffuse Lambert term)及び少なくとも1つの鏡面ローブを有するクック・トーランス(Cook-Torrance)照射モデル項とから形成される。本発明による方法の1つの可能な構成では、双方向反射率分布関数のパラメータが、コーティングに対する双方向反射率分布関数をそれぞれの測定された反射又はそれぞれの測定によって得られたそれぞれの反射値に適合させている間に、コスト関数に関して最適化される。これは、双方向反射率分布関数のパラメータ(ランバート係数、クック・トーランス鏡面ローブの重み付けなど)が、測定された反射、又は光分光計測定データ、又は反射値を用いて補正されることを意味する。この目的のために、パラメータは、最適化されたモデルの反射情報と、測定の対応する値又は反射値との距離が最小になるように、最適化される。この場合の反射情報は、特に反射値や輝度値などを含む。
【0019】
この場合、測定データ又は測定値が少なく、それに比較してパラメータの数が多いという理由で、最適化中に不安定になることを防ぐために、制約として、最適化されたモデルが元のモデルと類似であると仮定することが考えられる。パラメータの値が信頼できる範囲に収まるような制約を設けることも考えられる。これらの条件により、対応する最適化手法、例えば、簡略化のためにダウンヒルシンプレックス法又はネルダー・ミード(Nelder-Mead)法とも呼ばれる、ネルダー・ミード(Nelder-Mead)ダウンヒルシンプレクス法で最小化できる非線形最小化条件のシステムを形成することが可能である。1つの構成では、コスト関数が、ペナルティ項、及び、測定されたそれぞれの反射と、双方向反射率分布関数に基づいてシミュレーションされたそれぞれの反射又は反射値との間の二乗差の和に基づいて形成される。
【0020】
【数1】
C:コスト関数
g:それぞれの照射方向及び観察方向の方位角及び天頂角によって特徴付けられたそれぞれの測定幾何学形状
:BRDFを決定するために使用される測定幾何学形状のセット
:BRDFを用いて現在のパラメータについて計算された反射値
:ゴニオ分光光度計で測定された反射値
P:ペナルティ関数、又はペナルティ項
【数2】
:最適化されるパラメータのベクトル
:拡散ランバート項の重み付けパラメータ
m:ベックマン(Beckmann)分布のパラメータ
:フレネル反射のパラメータ
【数3】
:スペキュラ成分の重み付けパラメータ(クック・トーランス鏡面ローブ)
D(m):ベックマン分布関数
【数4】
:フレネル反射
G:幾何学的スクリーニング項
CC:(オプションの)クリアコート層での反射を考慮した係数
N,V,L:それぞれの測定幾何学形状gから導き出される、法線方向、観察方向及び照射方向
<,>:2つのベクトルのスカラー積
【数5】
【数6】
:ペナルティ値;ここでの適用で例えばp=1e3を選択している。
【0021】
ベックマン分布は、マイクロファセット表面の角度依存性反射を記述するものである。マイクロファセット面とは、ある分布に従って表面法線に対して傾斜した小さなミラー(マイクロファセット)の集合体としてモデル内で記述され得る粗い鏡面のことである。ベックマン分布という用語は、コンピュータグラフィックスの文献(Beckmann,Petr,及びAndre Spizzichinoによるベックマンマイクロファセット分布、「粗い表面からの電磁波の散乱」マサチューセッツ州ノーウッド、Artech House, Inc.,1987,511頁,1987)で知られている。
【0022】
LiDARセンサから放出され且つコーティングで被覆された表面で反射された光の伝播は、光線追跡アプリケーションにより、適合された双方向反射率分布関数に基づいてシミュレーションされる。この場合、光線追跡アプリケーションとして、市販の光線追跡アプリケーションを使用してもよい。
【0023】
光線追跡は、光線の放出に基づいて、空間の特定の点からの物体の視認性を決定するためのアルゴリズムとして理解される。光線追跡は、同様に、表面に衝突した後の光線のさらなる経路を計算するこの基本アルゴリズムの拡張をも意味する。本発明の範囲では、光線追跡は、特にこのような拡張、すなわち、具体的には、LiDARセンサからの光線が表面に当たった後に、コーティングで被覆された表面によって反射された光線のさらなる経路の計算を意味することを意図している。光線追跡アプリケーションは、アプリケーション、略してアプリによって実行されてよい。一般に、光線追跡は、空間内の半直線の開始点と方向を示すデータ構造、すなわち光線と呼ばれるデータ構造で動作する。各ピクセルについて、LiDARセンサから又は物体から画像平面の対応するピクセルに向けられる光線の方向が計算される。
【0024】
各測定幾何学形状について、すなわち各照射及び/又は観察又は測定角度について、それぞれのコーティングされた表面について、反射値及びさらには輝度座標が決定される。それぞれの測定幾何学形状についてこのようにして決定された輝度座標又は輝度値は、考慮されるコーティングのモデル化されるそれぞれの輝度値に関連してコスト関数に設定されるために、双方向反射率分布関数の適合の際に使用される。すでに前述したように、シミュレーションはLiDARセンサの動作波長に基づいて行われる。したがって、BRDFは、この波長におけるそれぞれのコーティングされた表面の反射率を記述する。
【0025】
本発明の文脈におけるコーティングで被覆された表面は、互いに上に重なる1つ以上のコーティング層を含み得る表面であり、そこでは、多層コーティングの場合には最上層を構成する必要のない色決定コーティングは、コーティングされた物体、又はコーティングされた表面の意図された最終的な色相を本質的に決定するそのコーティング層を構成する。最上層は、逆に、例えば、クリアコート層であってもよい。
【0026】
ゴニオ分光光度計の場合、光源、任意でLiDARセンサにより放出される光、及び表面で反射される光の反射曲線は、異なる観察角度又は測定角度で決定される。反射曲線の決定は、いくつかの異なる観察角度で行われてよい。例えば、鏡面反射に対して、例えば15°、25°、45°、75°及び110°の5つの観察角度による決定で一般に十分である。これらの点から始めて、他の観察角度に対する反射曲線は外挿によって決定されることができる。測定角度を変更し、照射角度を変更しない場合、例えば、固定された観察角度は、表面に垂直な平面に対して45°とすることができる。その代わりに、観察角度を変えることも考えられ、その場合、多数の異なる観察角度が使用され得る。この場合、例えば、表面に垂直な平面に対して、15°、25°、45°、75°の4つの観察角度を使用し、外挿により他の観察角度の反射曲線を決定することが考えられる。このようにして決定された測色データ、すなわち反射曲線は、対応する観察角度及び照射角度に割り当てられたデータファイルの形で保存される。任意に、この場合、表面の位置や向きも考慮されることができる。
【0027】
本発明による方法を実行するために、一般的に従来のパーソナルコンピュータを使用すれば十分である。もちろん、より大きな計算能力を有するコンピュータを有利に使用することができる。出力される輝度画像は、すべての従来の仮想現実技術を用いて、視覚的に知覚可能なリアルなコンピュータ画像として生成されてよい。輝度画像は、従来の方法で、例えばモニターで、又はプロジェクタを用いてスクリーンで生成されてよい。当業者にとって、本発明による方法で生成される輝度画像は、紙又は代わりに他の材料に視覚的に知覚可能な表現の形で印刷されてよいことは明らかである。符号化された表現として存在する輝度画像は視覚的に評価されてよい一方、ファイルとしてのみ存在する輝度画像はコンピュータを用いて評価されてよい。輝度画像は、例えば、所望の領域、例えば、可能な限り小さい検出不可能な領域に関して評価されることができる。
【0028】
本発明による方法は、それぞれのコーティングで被覆された物体、特に車両又は車体の、例えば他の車両に設置され得るLiDARセンサによる良好な又は十分な視認性を確保するために、1つ以上のコーティング、又はそれにそれぞれ割り当てられたコーティング配合を選択する際の有用なツールとして使用されることができる。
【0029】
本発明によれば、LiDARセンサは、光ビームを全方向に均一に放出する点光源、及び反射した光ビームの輝度を記録するカメラを含むユニットとしてシミュレーションされることができる。コーティングで被覆された表面は、カメラの前に可変距離で配置され、カメラに対して可変方向を有するプロファイルとしてシミュレーションされる。このプロファイルは、例えば、車両輪郭として選択されることができ、特に、LiDARセンサを自律走行のために道路交通で使用する場合を考慮するため、LiDARセンサは、例えば、車両に搭載される。LiDARセンサ及びコーティングで被覆された表面の提案されたモデル化により、例えば、道路交通の実際のシーンをエミュレートすることが可能であり、そこでは、LiDARセンサを搭載した車両が、上記物体又は上記コーティングで被覆された表面に対応する別の車両に接近する。
【0030】
別の構成では、コンピュータグラフィックスモデルが提供され、該モデルは、予め計算された双方向性反射率分布関数のパラメータを使用して、車両輪郭又はプロファイルに適用され、予めに適合された双方向反射率分布関数でマッピングされた反射特性を可能な限り表現し、又は、車両輪郭又はプロファイルに関連してそれらを認識できるようにする。
【0031】
最後に、光線追跡シミュレーションによって、輝度画像を出力し、該輝度画像は、適合された双方向反射率分布関数を考慮しながら、プロファイルによってLiDARセンサの方向に反射された光の輝度を示す。1つの構成では、コーティングされた表面をシュミレーションしたプロファイル、特に車両輪郭の異なる領域によってどれくらいの量の光が反射されているかは、出力された輝度画像を用いて決定される。この場合、LiDARセンサにとってシミュレーションされた車両輪郭のどの部分が視認可能か、どの部分が完全に視認可能か、どの部分が高く視認可能かを、比較的正確に決定することができる。
【0032】
別の構成では、10%の拡散反射を有する基準テンプレートの反射輝度によって定義される輝度閾値が、出力された、又は出力される輝度画像に適用される。このような基準テンプレートは、通常、LiDARセンサの公称領域又は定格領域を示すために使用される。このようにして補正又はフィルタリングされた輝度画像は、この定格領域でLiDARセンサによって視認できるプロファイル又は車両輪郭の領域を示す。
【0033】
また、出力する輝度画像を、カラー画像の一種として出力することも考えられ、該カラー画像では、それぞれの輝度及びそれに関連する反射値がカラースケールで表現される。
【0034】
別の構成では、カメラ、又はカメラと点光源によってシミュレーションされたLiDARセンサに関する現在のプロファイル設定に対する、プロファイルの最大可視エリアの割合として定量化された可視領域が示される。
【0035】
さらに別の構成では、本方法は、複数のコーティング、又はコーティングがそれぞれベースとするコーティング配合について実施され、それぞれ異なるコーティング又はコーティング配合について出力された輝度画像が互いに比較され、LiDARセンサにとって最も視認性が高いコーティング配合、又はコーティングが、複数のコーティング配合、又はコーティングから選択される。
【0036】
本発明はさらに、表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションするシステムに関する。
【0037】
本発明によるシステムは、少なくとも1つの分光光度計、好ましくはゴニオ分光光度計を含んでおり、該分光光度計は、複数の照射及び/又は測定角度で、コーティングで被覆された表面からのLiDARセンサの動作波長を有する光のそれぞれの反射を測定するように構成されている。
【0038】
本発明によるシステムは、さらに、各測定された反射に対して、各照射及び/又は測定角度の関数として、コーティングに対する双方向反射率分布関数を適合させるように構成されたコンピュータユニットを備えている。本発明によるシステムは、さらに、光線追跡アプリケーションを用いて、LiDARセンサによって放出され且つコーティングによって被覆された表面によって反射された光の伝播を、適合された双方向反射率分布関数に基づいて、シミュレーションするように構成されたシミュレーションユニットを備え、そこでは、LiDARセンサは点光源とカメラとを含むユニットとしてシミュレーションされ、コーティングで被覆された表面は、カメラの前に可変方向と共に可変距離で配置されるプロファイルとしてシミュレーションされる。点光源は、この場合、すべての方向に均一に光を放出するように構成されている。
【0039】
1つの構成では、シミュレーションユニットは、コンピュータグラフィックスモデルを含み、該モデルは、適合された双方向反射率分布関数を用いることによってプロファイルに適用されるように構成されている。最後に、本発明によるシステムは、表示ユニットを備え、該表示ユニットは、LiDARセンサによって放出され且つコーティングで被覆された表面によって反射された光のシミュレーションされた伝播に基づいて輝度画像を出力又は表示するように構成されており、該輝度画像は、適合された双方向反射率分布関数を考慮しつつ、プロファイルによってLiDARセンサの方向に反射された光の輝度を示す。
【0040】
本発明はさらに、表面に塗布されたコーティングのLiDARセンサに対する視認性をシミュレーションする装置に関し、該装置は少なくとも:
- 表面にコーティングを塗布するための塗布ユニットと;
- 複数の照射及び測定角度で、コーティングで被覆された表面からのLiDARセンサの動作波長を有する光の反射を測定するための測定構成と;
- コーティングに対する双方向反射率分布関数を、それぞれの照射及び/又は測定角度の関数として、それぞれの測定された反射に適合させるためのコンピュータユニットと;
- 光線追跡アプリケーションを用いて、LiDARセンサによって放出され且つコーティングによって被覆された表面によって反射された光の伝播を、適合された双方向反射率分布関数に基づいて、シミュレーションするためのシミュレーションユニットであって、該LiDARセンサは点光源とカメラとを含むユニットとしてシミュレーションされ、コーティングで被覆された表面は、カメラの前に可変方向と共に可変距離で配置されるプロファイルとしてシミュレーションされる、シミュレーションユニットと;
- 適合された双方向反射率分布関数を考慮しつつ、プロファイルによってLiDARセンサの方向に反射された光の輝度を示す輝度画像を出力する出力ユニットと、
を含む。
【0041】
本発明による方法によれば、LiDARセンサによって放出され且つコーティングで被覆された表面によって反射される光の伝播をシミュレーションする前に、双方向反射率分布関数がそれぞれの測定された反射を用いて適合される。この目的のために、考慮されるコーティングは表面に塗布され、該表面は、LiDARセンサの動作波長を有する光によって照射され、測定装置、一般的にはゴニオ分光光度計を用いることによって、複数の照射及び/又は測定角度で測定される。これは、コーティングで被覆された表面による、放出された光好ましくはレーザパルスのそれぞれの反射が、複数の照射及び/又は測定角度で測定されることを意味する。複数の照射及び/又は測定角度について、このようにして得られたそれぞれの反射、又は反射値は、次に、コーティングに対する双方向反射率分布関数を適合させるために使用される。これは、得られた測定値を用いて、双方向反射率分布関数中の決定されるパラメータが、コスト関数を最適化することによって決定されることを意味し、該コスト関数は、例えば、測定された反射又は反射値、及びモデル化された反射又は反射値の間の二乗差の和とペナルティ項とから形成される。最適化には、例えばネルダー・ミードダウンヒルシンプレックス法などの従来の最適化法を用いることができる。今や適合された双方向反射率分布関数を用いて、LiDARセンサによって放出され、コーティングで被覆された表面によって反射された光の伝播が、いま光線追跡アプリケーションによってシミュレーションされる。このシミュレーションは、上述の構成に基づいている。
【数7】
C:コスト関数
g:それぞれの照射方向及び観察方向の方位角及び天頂角によって特徴付けられたそれぞれの測定幾何学形状
:BRDFを決定するために使用される測定幾何学形状のセット
:BRDFを用いて現在のパラメータについて計算された反射値
:ゴニオ分光光度計で測定された反射値
P:ペナルティ関数、又はペナルティ項
【数8】
:最適化されるパラメータのベクトル
:拡散ランバート項の重み付けパラメータ
m:ベックマン(Beckmann)分布のパラメータ
:フレネル反射のパラメータ
【数9】
:スペキュラ成分の重み付けパラメータ(クック・トーランス鏡面ローブ)
D(m):ベックマン分布関数
【数10】
:フレネル反射
G:幾何学的スクリーニング項
CC:(オプションの)クリアコート層での反射を考慮した係数
N,V,L:それぞれの測定幾何学形状gから導き出される、法線方向、観察方向及び照射方向
<,>:2つのベクトルのスカラー積
【数11】
【数12】
:ペナルティ値;ここでの適用で例えばp=1e3を選択している。
【0042】
本発明によるシステム、又は本発明による装置は、上述の方法を実行するために構成された一構成である。
【0043】
本発明はさらに、コンピュータプログラムを有するコンピュータプログラム製品に関し、該コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムがコンピュータユニット上で実行されたときに、上述の方法の少なくともコンピュータ支援ステップ、すなわち特に適合ステップ、シミュレーションステップ及び出力ステップを実行するように構成されたプログラムコード手段を有する。
【0044】
本発明のさらなる利点及び構成は、本明細書及び添付の図面に見出すことができる。
【0045】
なお、本発明の範囲を逸脱することなく、上述の特徴及び以下に説明する特徴は、それぞれ示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は別々に使用されることも可能であることを理解されたい。
【0046】
本発明は、例示的な実施形態を用いて図面に概略的に表されており、図面を参照して以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明による方法の一実施形態において、この場合に実行されるシミュレーションの基礎となる、可能な仮想測定構成の構造を示す。
図2】本発明による方法の別の実施形態を実行するときに出力されるような輝度画像の実施例を示す。
図3】本発明による方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明による方法の一実施形態において、LiDARセンサによって放出され且つコーティングで被覆された表面によって反射される光の伝播をシミュレーションするステップの基礎となり得るような測定構成100の構造を示す。すべての方向に均一に光を放出する点光源101が示されている。さらに、点光源101又は少なくともその近傍に配置されるカメラ102が示されている。点光源101は、905nm又は1550nmの波長を有するレーザ光104、一般的にはレーザパルスを、プロファイル103の方向に放出し、プロファイル103はこの場合車両輪郭として構成され、コーティングで被覆された表面をシュミレーションする。車両輪郭103に当たった光ビーム105、又はレーザパルスは、車両輪郭103によって少なくとも部分的に反射され、反射光ビーム105、又はレーザパルスとして、カメラ102の方向に送り返される。カメラ102は、該反射光ビーム105を記録する。この場合、カメラ102から車両輪郭103までの距離は、シミュレーション中に変化されることができる。カメラ102に対する車両輪郭103の向きについても同様である。カメラ102によるシミュレーションで記録された反射、又は反射値から、輝度画像が最終的に算出され、例えば図2に示すような表示ユニット(ここでは図示せず)に表示されることができる。
【0049】
図2は、図2aに、実行されたシミュレーション方法の結果として表示ユニット上に表示され得るような輝度画像201を示している。プロファイル202のそれぞれの領域の輝度は、それぞれの領域のそれぞれのパターニング/シェーディングによって表現されており、パターニング/シェーディングはそれぞれ、スケール203上の0.0から1.0までの範囲の輝度値のスケール値、又はスケール範囲に割り当てられている(この場合のa.u.は、相対的な量を示すために、任意単位を表す)。それぞれのパターニング/シェーディングはまたそれぞれの色に置き換えられてよく、その場合、スケール203は対応するカラースケールとして選択される。この場合、色は、例えば、0.0のスケール値のダークブルーから、0.5の領域の緑色を経て、1.0のスケール値の赤色まで範囲が及ぶことができる。
【0050】
図2bは、図2aに示されるような同プロファイル202の視認性の画像204を示している。図2bにおいて、輝度に基づいて、プロファイル202又は車両輪郭のどの部分が高く視認可能か、どの部分が実質的に視認不可か、その結果、自律走行での使用中にLiDARセンサを有する車両が他の車両と衝突し得るリスクを増大させるかに関する評価が行われることが分かる。このような視認性の画像は、輝度画像から導出され、本発明により提供される表示ユニット又は出力ユニットに、輝度画像に加えて、又は代替として表現されてよい。
【0051】
図3は、本発明による方法の1つの可能な実施形態のシーケンスのフローチャートを概略図で示している。ステップ301では、特定のコーティング配合を有するコーティングが最初に、表面、好ましくは小さな平坦面の形態のサンプル表面に塗布される。このようにしてコーティングで被覆された表面は、ステップ302で、例えばゴニオ分光光度計を用いて、その反射特性に関して測定される。これは、表面がLiDARセンサの動作波長を有する光で照射され、コーティングで被覆された表面によって反射された光がゴニオ分光光度計によって記録され及び評価されることを意味する。この場合、表面は複数の照射及び/又は測定角度で測定される。これは、照射ユニット、又はLiDARセンサの動作波長を有する照射ユニットからの光ビーム、好ましくはレーザパルスが、コーティングで被覆された表面に複数の照射角度で連続的に向けられることを意味する。さらに、それぞれの反射光ビーム、又は反射レーザービーム若しくはパルスが、ゴニオ分光光度計で記録され、その光量及び/又は強度が決定される。さらに、ゴニオ分光光度計を、コーティングで被覆された表面に対して異なる測定角度で連続的に向けることが考えられる。また、照射角度を固定して測定角度を変化させること、又は逆に照射角度を変化させて測定角度を固定することも考えられる。
【0052】
LiDARセンサの動作波長を含む白色光で表面を照射することも考えられる。ゴニオ分光光度計を用いて、LiDARセンサの動作波長で反射された光の強度が次いで測定される。
【0053】
コーティングで被覆された表面に当たった光のそれぞれの反射の測定中に、それぞれの反射値が対応して決定される。反射値を用いて、それぞれの輝度値が順次決定されることができる。したがって、測定後には、それぞれの反射又はそれぞれの反射値、及びそれに関連してそれぞれの輝度値が、それぞれの照射及び/又は測定角度について利用できるようになる。
【0054】
ステップ303では、それぞれの測定された反射が、それぞれの照射及び/又は測定角度の関数として、表面を被覆するコーティングに対する双方向反射率分布関数を適応させるために使用される。これは、コーティングに対する双方向反射率分布関数のパラメータが、測定された反射又は反射値を用いて決定されるか、少なくとも推定されることを意味する。それぞれの測定された反射は、十分な数の測定された反射を用いて、決定され得る又は少なくとも推定され得る未知のパラメータを有する多数の方程式を生じる。したがって、コーティングに対して示されるべき決定パラメータを有する特定の双方向反射率分布関数が得られ、それを用いて、それぞれの反射がそれぞれの照射及び/又は測定角度の関数として示され得る。
【0055】
今や適合された双方向反射率分布関数に基づいて、ステップ304において、光線追跡アプリケーションによって、LiDARセンサによって放出され且つコーティングで被覆された表面によって反射された光の伝播をシミュレーションすることが今や可能になる。この場合、LiDARセンサは、特定の波長、すなわちLiDARセンサの動作波長、例えば905nm又は1550nmの光を全方向に均一に放出する点光源としてシミュレーションされ、又はモデル化される。モデル化されたLiDARセンサは、さらに、光ビームを記録し、その光量及び/又は光強度を決定するように構成されたカメラを備えている。コーティングで被覆された表面は、シミュレーションの間、カメラの前に可変方向と共に可変距離で配置されるプロファイルとしてモデル化される。これは、LiDARセンサによって放出され且つコーティングで被覆された表面によって反射された光の伝播のそれぞれのシミュレーションの間は、プロファイルがカメラの前にそれぞれ異なる距離及び/又は異なる方向で配置されるようにシミュレーションされ得ることを意味する。適合された双方向反射率分布関数を用いることにより、コンピュータグラフィックスモデルがプロファイルに適用される。
【0056】
このようにしてシミュレーションされた、LiDARセンサより放出され且つコーティングで被覆された表面により反射された光の伝播に基づいて、ステップ305では、適合された双方向反射率分布関数を考慮しつつ、プロファイルによってLiDARセンサの方向に反射された光の輝度(ルミナンス)を示す輝度画像を表示ユニットに出力、又は表示することが今や可能になる。この場合、輝度画像は、表示ユニットに光として明示的に表示されてもよく、又は輝度のそれぞれの値がコーティングに対して示され、それらに割り当てられてもよい。一般に、記載された方法は、複数の異なるコーティング及び関連するコーティング配合に対して実施され、従って最終的には、それぞれの輝度画像を用いてコーティング間の比較を行うことができ、そして、コーティングがLiDARセンサに対して最も高い視認性を有し、したがって、コーティングで被覆された物体がLiDARセンサに対して最も高い検出性を有すると輝度画像が示すそのコーティング又は関連するコーティング配合を選択することができる。
図1
図2
図3