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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】電磁波計測用プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20220705BHJP
   G01R 29/10 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01R29/08 F
G01R29/10 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020554993
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2019043165
(87)【国際公開番号】W WO2020091071
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2018206436
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514277260
【氏名又は名称】シンクランド株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100154634
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 みさ子
(72)【発明者】
【氏名】久武 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮地 邦男
(72)【発明者】
【氏名】及川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】東條 誠
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/164110(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026494(WO,A1)
【文献】特開2008-145796(JP,A)
【文献】特開2013-200300(JP,A)
【文献】特開2014-035268(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125502(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0188305(US,A1)
【文献】中島滉,2点測定型プローブを用いた非同期電気光学検出技術による準ミリ波の一次元位相分布測定,電子情報通信学会2016年エレクトロニクスソサイエティ大会講演論文集,日本,2016年09月06日,1,p.195
【文献】久武信太郎,光技術に基づくミリ波・テラヘルツ波計測,電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集,日本,2016年09月06日,SS126 - 126
【文献】佐藤圭,EOプローブを用いた高SHF帯アンテナ近傍の電界分布測定,電子情報通信学会2016年総合大会講演論文集,日本,2016年03月01日,通信講演論文集1,p.330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象電磁波に応じて電気光学効果によって生じる光信号の変化を計測用プローブによって測定し、前記計測用プローブと前記計測対象電磁波とを相対的に移動しながら検出された光信号の変化の差分値に基づいて前記計測対象電磁波の空間分布状態を計測する電磁波計測システムに使用される計測用プローブであって、
前記電気光学効果を奏する電気光学結晶と、該電気光学結晶の根元側に設けられ光信号を伝達する第1の光ファイバと、該電気光学結晶の先端側に設けられ光信号を反射する反射部とからなるセンサ構成を有する第1測定部と、
前記センサ構成を有する第2測定部とを有し、
前記第1の光ファイバの軸方向に垂直な第1の方向及び第2の方向において、前記電気光学結晶のサイズが前記計測対象電磁波の波長の1/3以下に設定されている
ことを特徴とする計測用プローブ。
【請求項2】
前記第1の方向及び前記第2の方向において、前記電気光学結晶のサイズが前記計測対象電磁波の波長の1/6以上に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の計測用プローブ。
【請求項3】
前記第1測定部及び前記第2測定部における前記電気光学結晶には、
周波数の相違する2つの光信号がそれぞれ入力される
ことを特徴とする請求項1に記載の計測用プローブ。
【請求項4】
前記2つの光信号の周波数の差分から前記計測対象電磁波の周波数を差分した差分周波数が一定となるように調整された状態で、前記2つの光信号が入力されることを特徴とする
ことを特徴とする請求項2に記載の計測用プローブ。
【請求項5】
前記第1測定部において光信号が反射する第1の反射点と前記第2測定部において光信号が反射する第2の反射点との距離である離隔距離が、前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の計測用プローブ。
【請求項6】
前記第1測定部における反射部と前記第2測定部における反射部とは、
前記第1の光ファイバ及び前記第2測定部における第2の光ファイバの軸方向に平行な第3方向における離隔距離である反射離隔距離だけずらして配置されており、該反射離隔距離は、前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の計測用プローブ。
【請求項7】
前記反射離隔距離は、
前記離隔距離よりも小さく設定されている
ことを特徴とする請求項6に記載の計測用プローブ。
【請求項8】
第1面に前記第1の光ファイバを嵌合するための溝が形成され、該第1面と対向する第2面に前記第2測定部における第2の光ファイバを嵌合するための溝が形成された中央板と、前記中央板の前記第1面と対向する面の対向する位置に溝が形成された第1板と、前記中央板の前記第2面と対向する面の対向する位置に溝が形成された第2板とが貼り合わされて構成され、前記中央板と前記第1板の溝に前記第1の光ファイバが挟まれ、前記中央板と前記第2板の溝に前記第2の光ファイバが挟まれており、
前記中央板の前記第1面に形成された2つの溝は、前記第1測定部において光信号が反射する第1の反射点と前記第2測定部において光信号が反射する第2の反射点との距離である離隔距離だけ離隔した位置に形成されており、前記中央板は、前記第1面から前記第2面までの厚みが前記離隔距離と同一である
ことを特徴とする請求項1に記載の計測用プローブ。
【請求項9】
一の電気光学結晶の根元側に、前記第1測定部における前記第1の光ファイバ及び前記第2測定部における第2の光ファイバが接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の計測用プローブ。
【請求項10】
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバは、
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバと略同一サイズの孔が形成されたキャピラリに貫通されている
ことを特徴とする請求項9に記載の計測用プローブ。
【請求項11】
前記一の電気光学結晶において、
先端側の反射部から前記第1の光ファイバ及び前記第2測定部における前記第2の光ファイバの軸方向に平行な第3方向における離隔距離である反射離隔距離だけずらして配置された機能膜を有し、
該反射離隔距離は、
前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されており、
前記機能膜は、
前記第1測定部に伝達される波長の光信号を透過し、前記第2測定部に伝達される波長の光信号を反射する
ことを特徴とする請求項9に記載の計測用プローブ。
【請求項12】
前記一の電気光学結晶に対し、
第1~第4の光ファイバが離隔距離だけ離隔した位置にそれぞれ接続されており、
先端側の反射部から前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの軸方向である第3方向において反射離隔距離だけずらして配置された機能膜を有し、
該反射離隔距離は、
前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されており、
第1~第4の光ファイバは、
該第1~第4の光ファイバと略同一サイズの孔が形成されたキャピラリに貫通されている
ことを特徴とする請求項9に記載の計測用プローブ。
【請求項13】
前記第1測定部及び前記第2測定部は、
先端面が同一平面上に形成されており、
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバの軸方向である第3方向において、前記第2の光ファイバの延長線上において前記第1の光ファイバの反射部から前記反射離隔距離だけずらして配置された前記機能膜を有する一方、前記第1の光ファイバの延長線上には前記機能膜が形成されていない
ことを特徴とする請求項12に記載の計測用プローブ。
【請求項14】
前記第1測定部が有する第1の電気光学結晶と、
前記第2測定部が有する第2の電気光学結晶と、
前記第1の電気光学結晶及び前記第2の電気光学結晶の位置を固定する固定部とを有し、
前記第1測定部において光信号が反射する第1の反射点と前記第2測定部において光信号が反射する第2の反射点との距離である離隔距離が、前記第1の電気光学結晶及び前記第2の電気光学結晶のサイズよりも大きく設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の計測用プローブ。
【請求項15】
電磁波計測システムに使用される計測用プローブであって、
電気光学効果を奏する第1の電気光学結晶と、該第1の電気光学結晶の根元側に設けられ光信号を伝達する第1の光ファイバと、該第1の電気光学結晶の先端側に設けられ光信号を反射する第1の反射部とを有する第1測定部と、
第2の電気光学結晶と、該第2の電気光学結晶の先端側に設けられた第2の光ファイバと、該第2の電気光学結晶の先端側に設けられた第2の反射部とを備える第2測定部と
を有し、
前記第1の電気光学結晶及び前記第2の電気光学結晶は一つの電気光学結晶であり、該一つの電気光学結晶の根元側に、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバが接続されている
ことを特徴とする計測用プローブ。
【請求項16】
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバにおけるファイバ芯部材とほぼ同一サイズを有する複数の孔に対し、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバにおけるファイバ芯部材を挿通した状態で固定するキャピラリ
を有することを特徴とする請求項15に記載の計測用プローブ。
【請求項17】
前記キャピラリの先端側に、
前記ファイバ芯部材とほぼ同一サイズを有する複数の光学部品が挿通されている
ことを特徴とする請求項16の計測用プローブ。
【請求項18】
前記キャピラリの先端面と、前記孔に挿通された前記ファイバ芯部材又は
前記光学部品の先端面が同一平面上に位置する
ことを特徴とする請求項17に記載の計測用プローブ。
【請求項19】
前記第1測定部において光信号が反射する第1の反射点と前記第2測定部において光信号が反射する第2の反射点との距離である離隔距離が、計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されている
ことを特徴とする請求項15に記載の計測用プローブ。
【請求項20】
前記一つの電気光学結晶において、
先端の反射部からずらして配置され、前記第1測定部に伝達される波長の光信号を透過し、前記第2測定部に伝達される波長の光信号を反射する機能膜を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の計測用プローブ。
【請求項21】
前記一つの電気光学結晶において、
前記第1測定部と同一波長の光信号が入射される第3測定部を有する
ことを特徴とする請求項20に記載の計測用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁波の空間分布状態を測定する電磁波計測用プローブに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波レーダの普及に伴い、ミリ波など高周波でなる電磁波の空間分布状態(1次元、2次元、3次元における振幅や位相、強度、周波数など)を高精度で測定する必要性が高まっている。そこで、光が電磁波の影響を受けている物質と作用する時に発生する電気光学効果を奏する、いわゆる電気光学結晶を用いて電磁波の空間分布状態を計測する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、2つの電気光学結晶を用いた差分測定により、計測対象電磁波の同期信号を使用することなく電磁波の空間分布状態を測定する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-343410
【文献】特開2017-15703
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる構成の差分測定を実現するためには、電磁波の空間分布状態を計測するための計測用プローブが必要とされている。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は電磁波の空間分布状態を計測するための電磁波計測用プローブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、本発明の計測用プローブでは、計測対象電磁波に応じて電気光学効果によって生じる光信号の変化を計測用プローブによって測定し、前記計測用プローブと前記計測対象電磁波とを相対的に移動しながら検出された光信号の変化の差分値に基づいて前記計測対象電磁波の空間分布状態を計測する電磁波計測システムに使用される計測用プローブであって、
前記電気光学効果を奏する電気光学結晶と、該電気光学結晶の根元側に設けられ光信号を伝達する第1の光ファイバと、該電気光学結晶の先端側に設けられ光信号を反射する反射部とからなるセンサ構成を有する第1測定部と、
前記センサ構成を有する第2測定部とを有し、
前記第1の光ファイバの軸方向に垂直な第1の方向及び第2の方向において、前記電気光学結晶のサイズが前記計測対象電磁波の波長の1/3以下に設定されている
ことを特徴とする。
【0008】
また本発明の電磁波計測用プローブでは、電磁波計測システムに使用される計測用プローブであって、
電気光学効果を奏する第1の電気光学結晶と、該第1の電気光学結晶の根元側に設けられ光信号を伝達する第1の光ファイバと、該第1の電気光学結晶の先端側に設けられ光信号を反射する第1の反射部とを有する第1測定部と、
第2の電気光学結晶と、該第2の電気光学結晶の先端側に設けられた第2の光ファイバと、該第2の電気光学結晶の先端側に設けられた第2の反射部とを備える第2測定部と
を有し、
前記第1の電気光学結晶及び前記第2の電気光学結晶は一つの電気光学結晶であり、該一つの電気光学結晶の根元側に、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、電磁波の空間分布状態を計測するための電磁波計測用プローブ実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態における電磁波計測システムの概略図である。
図2】第1の実施の形態における電磁波計測装置の配置を示す概略図である。
図3】電磁波計測装置のブロック図である。
図4】電磁波計測装置の計測時の走査例を示す概略図である。
図5】計測用プローブの概念(1)を説明する概略図である。
図6】計測用プローブの概念(2)を示す概略図である。
図7】第1の実施の形態における電磁波計測装置の光及び電気信号の流れを説明する概略図である。
図8】第1の実施の形態における計測用プローブの構成(1)を示す概略図である。
図9】第1の実施の形態における計測用プローブの構成(2)を示す概略図である。
図10】第2の実施の形態における計測用プローブの構成を示す概略図である。
図11】第2の実施の形態における電磁波計測装置の光及び電気信号の流れを説明する概略図である。
図12】シミュレーションによる離隔距離の相違に応じた分解能の比較を示すグラフ(E面/300GHz)
図13】シミュレーションによる離隔距離の相違に応じた分解能の比較を示すグラフ(H面/300GHz)
図14】シミュレーション値と計測値の比較を示すグラフ(E面/75.6GHz/結晶数4)
図15】シミュレーション値と計測値の比較を示すグラフ(H面/75.6GHz/結晶数4)
図16】シミュレーション値と計測値の比較を示すグラフ(E面/300GHz/結晶数1)
図17】シミュレーション値と計測値の比較を示すグラフ(H面/300GHz/結晶数1)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、1は全体として電磁波計測システムを示しており、電磁波計測装置2によって測定し、計算装置3によって集計が行われる。図1及び図2では、計測対象として自動車4に搭載されたレーダ4Aが発生する電磁波を計測する場合を模式的に示している。電磁波計測システム1は、レーダ4Aから参照信号を受信することなく、すなわち計測対象と直接的に信号同期をさせることなく計測対象電磁波を測定する非同期系の電磁波計測システムである。
【0014】
計測対象となるレーダ4Aは、三角波型に周波数変調を施した連続波を用いるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダである。従って、測定対象となる計測対象電磁波は、FMCW信号である。なおf(RF)は関数ではなく、信号の周波数である測定周波数である。以下、同様にしてカッコ付けで信号の名称を表記する。また図面においてカッコは使用せず、単にfRFと表記している。
【0015】
図2に示すように、電磁波計測装置2は、レーダ4Aの近傍に配置され、電磁波を測定すると共に、測定結果を計算装置3に供給する。
【0016】
図3に示すように、電磁波計測装置2は、図示しないMPU(Micro Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)構成でなる制御部50が予めROMに記憶された電磁波計測プログラムに従って全体を統括している。電磁波計測装置2は、外部インターフェース52を介して計算装置3と連携し、電磁波計測を行っている。
【0017】
電磁波計測装置2は、駆動部51によって計測用プローブ60が変位することにより測定が実行される。図4に示すように、駆動部51は、箱状の電磁波計測装置2の筐体内におけるXY方向への移動により、外側に突出する計測用プローブ60をXY平面上でジグザグに走査させる。なお図示しないが、駆動部51は、計測用プローブ60をYZ平面及びXZ平面上、若しくは立体的に走査させることも可能である。
【0018】
計算装置3は、図示しないCPU(Centralo Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有するコンピュータ構成でなり、無線又は有線により電磁波計測装置2から供給されるデータに基づいて電磁波の空間分布状態(1次元、2次元、3次元における振幅、位相、強度、周波数などの分布)を計算する。具体的には、例えばXY平面、XZ平面、YZ平面における電磁波の空間振幅分布や空間位相分布などの空間分布を算出して映像化したり、電磁波の強度や周波数などの数値が想定値外となった領域を特定する。これにより、電磁波計測システム1では、レーダ4Aのアンテナの励振分布の診断や遠方界放射パターンの計算をしたりできる。
【0019】
図5及び図6は、計測用プローブ1060を説明するための概念図である。なお、実施形態としての計測用プローブ60の構成の詳細については後述する。図5及び図6では便宜上、実施形態の構成に1000を加算した番号を附して説明する。計測用プローブ1060は、Z方向と平行に延びる4本のEO(Electro-Optic)センサ1060A,1060X,1060Y,1060Zによって構成されている。各EOセンサ1060A,1060X,1060Y,1060Zは、4本の偏波保持ファイバ1061A,1061X,1061Y,1061Zにそれぞれ接続されている。なお偏波保持ファイバの代わりにシングルモードファイバなどの光ファイバを使用することも可能である。
【0020】
各EOセンサ(1060A,1060X,1060Y,1060Z)は、互いに位置が固定されている。EOセンサ1060Aを基準とすると、EOセンサ1060XはX方向に離隔距離ΔXだけ、EOセンサ1060YはY方向に離隔距離ΔYだけ、EOセンサ1060ZはX方向及びY方向に離隔距離ΔX、ΔY並びにZ方向に離隔距離ΔZだけずれた位置に固定されている。なお図6に示すように、離隔距離ΔX、ΔYはそれぞれ偏波保持ファイバ61の中心間の距離であり、ΔZ(図5参照)はEOセンサ1060AとEOセンサ1060Zの先端面1060Aaと1060Za間の距離である。
【0021】
各EOセンサを構成する電気光学結晶の先端面1060a(1060Aa,1060Xa,1060Ya,1060Za)には、反射ミラーが形成されている。従って、偏波保持ファイバ61を介して各EOセンサに供給される光信号は各先端面1060a上の反射点において反射され、偏波保持ファイバ61に再入力される。このとき、光信号はf(RF)でなる計測対象電磁波の影響により電気光学効果(電気光学結晶の屈折率変化)による変調(光信号の変化)を受ける。
【0022】
また各EOセンサには離隔距離Δ(ΔX、ΔY、ΔZ)が設けられており、この離隔距離Δの分だけ計測対象電磁波の位相や振幅が変化する。従って、電磁波計測システム1では、EOセンサ1060Aにおいて得られた信号とEOセンサ1060X,1060Y、1060Zにおいて得られた信号とを差分することにより、離隔距離Δに応じた計測対象電磁波の変化を差分値(以下、これを離隔距離差分と呼ぶ)として算出する。そして電磁波計測システム1では、離隔距離差分を積分することにより、離隔距離差分に基づいて電磁波の空間分布状態を算出する。
【0023】
図7に、電磁波計測装置2における光信号供給部20、計測用プローブ60、光信号処理部30及び電気信号処理部40の構成を示している。光信号供給部20は、例えばレーザ光源21、EOM(Electro-Optic Modulators)22及びEOM23、シンセサイザ24から構成される光コム発生器である。レーザ光源21は、LO(Local Oscillator)光源であり、光信号を出射してEOM22及び23に供給する。EOM22及び23は、シンセサイザ24によって生成される周波数間隔信号f(CG)を参照し、入力された光信号を2つの周波数f(1)及びf(2)を有するTWO-TONE信号に変調する。この2つの入力光信号をそれぞれ入力光信号E1及びE2と呼ぶ。ここで、入力光信号E1及びE2の入力周波数f(LO)は(1)式及び(2)式で表される。
【0024】
f(LO)=f(1)-f(2) ・・・(1)式
【0025】
f(IF)=|f(RF)-f(LO)|
ただし、f(LO),f(RF)>>f(IF) ・・・(2)式
【0026】
差分周波数f(IF)は、電気信号として扱える周波数(例えば100kHz-10MHz程度)に設定される。ここで上述したように、f(RF)はFMCW信号であり、時間軸に応じて周波数が変化する。電磁波計測システム1では、差分周波数f(IF)が一定になるよう入力光信号E1及びE2の周波数f(1)及びf(2)を調整するフィードバック制御が行われる。
【0027】
入力光信号は、4つに分波され、サーキュレータ31(31A,31X,31Y,31Z)を介して計測用プローブ60における各EOセンサ60A,60X,60Y,60Zにそれぞれ供給される。
【0028】
各EOセンサ60A,60X,60Y,60Zでは、計測対象電磁波(測定周波数f(RF))の影響による変調を発生させた状態で入力光信号E1及びE2を測定光信号として偏波保持ファイバ61側に戻す。サーキュレータ31は、測定光信号を光経路L1~L4へ入力する。以下、光経路L1について説明するが、光経路L2~L4においても構成及び動作は同一であり、説明を省略する。
【0029】
上述したように、入力光信号E1及びE2は、周波数f(1)及びf(2)の対である。各EOセンサ60A,60X,60Y,60Zでは、周波数f(1)及びf(2)を中心として測定周波数f(RF)間隔で並んだ変調サイドバンドES1及びES2を発生させる。このため変調サイドバンドES1及びES2の一つは、元の入力光信号E1及びE2の対となる入力光信号E2及びE1の周波数f(2)及びf(1)に対し、差分周波数f(IF)だけずれた周波数に出現する。光フィルタ32は、入力光信号E2及び変調サイドバンドES1、又は入力光信号E1及び変調サイドバンドES2の一方を通過させ、フォトダイオード33Aに供給する。
【0030】
フォトダイオード33Aは、入力光信号及び変調サイドバンドを差分周波数f(IF)でなるビート信号として電気信号に変換する。この結果、フォトダイオード33Aは、差分周波数f(IF)を有する測定電気信号を出力し、電気信号処理部40の電気経路S1に入力する。
【0031】
電気信号処理部40では、測定電気信号から基準信号が生成される電気経路S1と、離隔距離差分を含む測定電気信号から離隔距離差分が検出される電気経路S2~S4を有している。電気経路S2~S4におけるロックインアンプ(LIA)47X、47Y,47Zにおいて測定電気信号から基準信号が差分されることにより、離隔距離差分が算出される。以下、基準信号が電気経路S2に入力される場合について説明するが、電気経路S3及びS4についても構成及び動作は同一であり、説明を省略する。
【0032】
電気経路S1では、検出時の基準となるベース周波数f(S)を有するベース信号が基準信号に対して混合され、基準混合信号が生成される。その後、電気経路S2のミキサ45Xで乗算され差分周波数f(IF)成分と計測対象電磁波におけるゆらぎが除去された後、ロックインアンプ47XによってX方向の離隔距離差分が検出される。なおここでは、離隔距離差分として、位相と振幅を検出している。
【0033】
このときロックインアンプ47Xは、検出頻度が駆動部51における計測用プローブ60の移動速度との関係において、計測対象電磁波の波長の1/2を上回らないように離隔距離差分を検出する。これにより、確実に計測対象電磁波による影響を検出することができる。
【0034】
一方、電気経路S1Bにおいて基準混合信号がロックインアンプ47Aに入力されることで、差分周波数f(IF)成分が揺らいだ時にフィルタ43Aで付加される余剰位相揺らぎが検出される。なおこの電気経路S1bは必ずしも必要ではない。
【0035】
次に、計測用プローブ60の構成について説明する。
【0036】
図8(A)に示すように、計測用プローブ60は、X方向に2つ、Y方向に2つの合計4つのEOセンサ60A,60X,60Y,60ZがXY平面上においてそれぞれ離隔距離ΔX,ΔYだけ離隔した状態で格子状に配置されている。またEOセンサ60X,60Zの位置関係を表す図8(B)に示すように、EOセンサ60Zのみがその先端をEOセンサ60A,60X,60Yの先端よりも離隔距離ΔZだけ離隔して配置されている。
【0037】
各EOセンサ60A,60X,60Y,60Zの構成は同一である。ここでは、EOセンサ60Xについて説明し、他についての説明を省略する。
【0038】
EOセンサ60Xは、全体としてZ方向に長い直方体形状を有しており、一辺が結晶辺CRでなる底面形状が正方形の光学素子が連なると共に、根元側に偏波保持ファイバ61Xが接続されている。結晶辺CR及び偏波保持ファイバ61の直径φに制限は無いが、例えばCR=1.0mm、φ=0.5mmのものが使用される。結晶辺CR及び直径φは、離隔距離ΔX,ΔY,ΔZや製造手法などの各種条件に応じて適宜選択される。EOセンサ60Xは、先端側から反射基板62X、EO結晶63X、ガラス基板64X、コリメータレンズ65Xが光学接着剤によって固着されることにより形成されている。
【0039】
好ましくは、EO結晶63は、自然複屈折を有する結晶である。具体的には、EO結晶63は、たとえば、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、BaTaO3(チタン酸バリウム)、SBN(ニオブ酸ストロンチウムバリウム)、およびZGP(リン化亜鉛ゲルマニウム)等の自然複屈折を有する無機結晶である。
【0040】
あるいは、EO結晶63は、たとえば、DAST(4-N,N-ジメチルアミノ-4’-N’-メチル-スチルバゾリウムトシレート)、DASC(4-N,N-ジメチルアミノ-4’-N’-メチル-スチルバゾリウム-パラ-クロロベンゼンスルホネート)、DSTMS(4-N,N-ジメチルアミノ-4’-N’-メチル-スチルバゾリウム2,4,6-トリメチルトルエンスルホネート)、およびOH1(2-(3-(4-ヒドロシスチリル)-5,5-ジメチルシクロヘクス-2-エニリデン)マロノニトリル)等の自然複屈折を有する有機非線形光学結晶である。
【0041】
なお、EO結晶63は、たとえば、GaP(リン化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、InP(リン化インジウム)、ZnTe(テルル化亜鉛)およびCdTe(テルル化カドミウム)等の自然複屈折を有しない無機結晶であってもよいし、または、自然複屈折を有しない有機結晶であってもよい。
【0042】
なおEO結晶63は、EO結晶63の光学軸と偏光軸とを一致(ここではEO結晶63の根元側における偏光保持ファイバ61の軸方向に一致)させることにより、計測対象電磁波によって電気光学結晶に屈折率変化を生じさせ、入力光信号の位相及び振幅を変調させることにより光信号を変化させている。
【0043】
ここで、EO結晶63の結晶辺CR(X方向及びY方向)は、計測対象電磁波の波長λ(帯域の中間値)の1/2以下に設定されることが好ましい。計測対象電磁波の波長λが大きい(100mm以上)場合、EOセンサによる攪乱の影響が小さかった。しかしながら、計測対象電磁波の波長λが小さく(100mm未満、特に25mm未満)なると、EOセンサにおける結晶サイズに応じて攪乱が問題となる。本願発明人は、結晶辺CRを波長λの1/2以下、より好ましくは1/4以下に設定することにより、計測データにおける攪乱の影響を許容できるレベルまで低減できることを確認した。例えば結晶辺CR=1mmの結晶を使用した場合、計測対象電磁波の波長λは0.5mm以上(周波数600GHz未満)、より好ましくは0.25mm以上(周波数1200GHz未満)となる。
【0044】
反射基板62Xは、EOセンサ60Xにおける先端面60Xaを構成する根元側にミラー膜が形成されており、根元側から供給される光信号を根元側に全反射する。EO結晶63Xは、電気光学効果を呈する結晶であり、電磁波に応じて光信号の状態を変化させる。ガラス基板64Xは、強度の低いEO結晶63Xを補強するために取り付けられている。コリメータレンズ65Xは、偏波保持ファイバ61Xから供給される変調光信号を平行光に変換し、変調光信号を反射基板62Xで反射させる。なお、反射基板62Xにおいて変調光信号が反射する点を反射点とする。すなわち反射点は、XY方向において偏波保持ファイバ61の中心の延長線上にあり、Z方向において反射基板62Xの根元側面となる。
【0045】
偏波保持ファイバ61A,61X,61Y,61Zは、EOセンサ60A,60X,60Y,60Zの中心に、光学軸に偏波軸を合わせて接続されており、離隔距離ΔX、ΔY、ΔZは所定の値に設定されている。
【0046】
ここで、離隔距離ΔX,ΔY,ΔZは、計測対象電磁波の波長λ(帯域の中間値)の1/2以下に設定されることにより、ほぼ同一時刻性を満たすとみなすことができ、高い計測が可能となるからである。また離隔距離ΔX,ΔY,ΔZを波長λの1/3以下、より好ましくは1/4以下に設定することにより、同一時刻性を高めて離隔距離差分の検出精度をさらに向上させることができる。また、計測用プローブ60の形状によって生じる計測対象電磁波の乱れを小さくするため、離隔距離ΔZは離隔距離ΔX、ΔYよりも小さく設定されることが好ましい。
【0047】
上述したように、計測対象電磁波は、三角波型に周波数変調を施したFMCW信号であり、時間に応じて周波数が変化する。したがって、周波数変調に伴いフィルタの帯域を広める必要があり、同一時刻性を高めることの重要性が高くなる。このため、時間に応じて周波数が変化する変調を施した変調信号を計測対象電磁波とする場合には、離隔距離ΔX,ΔY,ΔZを波長λの1/4以下に設定することが好ましい。
【0048】
また、単体でEOセンサを用いる場合と異なり、複数のEOセンサを小さな離隔距離ΔX,ΔY(波長λの1/2、特に1/4以下)に配置する場合には、EO結晶63同士が互いに干渉を引き起こす場合がある。EO結晶63同士の離隔距離である結晶間距離CDは、波長λの1/10以下に設定されることにより干渉を低減でき、好ましい。結晶間距離CDが大きいと干渉を引き起こすと共に結晶辺CRを小さく設定しなければならず、加工性に困難を生じる可能性がある。
【0049】
さらに、計測用プローブ60におけるXY方向のプローブサイズWSは、計測対象電磁波の波長λの1.5倍以下、特に1.0倍、さらに1/2以下であることが好ましい。プローブサイズWSが小さい方が計測対象電磁波に対して生じさせる攪乱を小さくできるからである。
【0050】
具体的に、例えば計測対象電磁波の波長λが5mm、周波数60GHzの場合、離隔距離ΔX、ΔYは波長λの1/4である1.25mmに、離隔距離ΔZは、波長λの1/8である0.625mmに設定される。また、結晶辺CRは波長λの1/5である1.0mmに、結晶間距離CDは波長λの1/20である0.25mm(結晶辺CRの1/4)、プローブサイズWSは波長λの0.45倍である2.25mm(結晶辺CRの2.25倍)に設定される。
【0051】
4つのEOセンサ60A,60X,60Y,60Zに接続された偏波保持ファイバ61A,61X,61Y,61Zは、上板66A、中間板66B、下板66Cからなる固定基板66に挟まれて固定されている。
【0052】
図9(A)~(C)に示すように、固定基板66は、全体として扁平な3枚の矩形の板状部材でなり、上板66Aの下面、中間板66Bの上下面、下板66Cの上面に、Z方向に平行な2本のV字状の溝66Aa,66Ba,66Bb,66Caが形成されている。この溝は、偏波保持ファイバ61A,61X,61Y,61Zの直径φの1/2程度に形成されており、対向する溝66Aa、66Baと、溝66Bb,66Caとを、嵌合させたときに、上板66Aの下面と中間板66Bの上面との間、及び中間板66Bの下面及び下板66Cとの間に僅かに(例えば直径φの1/10~1/50程度)隙間ができるようにその形状及び大きさが決められている。なお溝66Aa,66Ba,66Bb,66Caの形状としては、断面が台形状の切り欠き溝やU字状の溝などであっても良い。
【0053】
従って、上板66Aの下面と中間板66Bの上面との間に偏波保持ファイバ61A,61Xが、中間板66Bの下面及び下板66Cとの間に61Y,61Zが挟まれた状態で液状接着剤や接着シートなどを用いて固着されることにより、離隔距離ΔX,ΔYを有する計測用プローブ60を簡単に形成することができる。なお、固着の際には、固定基板66のY方向の厚さを固定するための所定の高さを有するスペーサや治具などを使用することにより、製造性を向上させることができる。
【0054】
なお、離隔距離ΔX,ΔY=1.25mm、プローブサイズWS=2.25mm、結晶辺CR=1.0mm、結晶間距離CD=0.25mmでEO結晶が配置され、反射基板の厚さ=0.5mmでなる4芯の計測用プローブを用いた場合、計測対象電磁波の周波数=60GHz(波長λが約5.0mm)、24GHz(波長λが約12.5mm)で計測が可能であった。
【0055】
このように、固定基板66に形成された溝を用いて偏波保持ファイバ61の位置を定めることにより、非常に微細なEOセンサ60において位置決め精度を向上させると共に、簡易な工程で計測用プローブ60を製造することが可能となる。また、計測用プローブ60では、EOセンサ60ごとに個別のEO結晶63を使用するため、計測対象電磁波の周波数が25GHz以下、特に10GHz以下のときに好適に使用される。
【0056】
<第2の実施の形態>
次に、図10図11を参照して第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、計測用プローブの構成と、計測用プローブに供給される光信号の周波数が上述した第1の実施の形態と相違している。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と対応する箇所に同一番号又は100を加算した符号を附し、同一箇所についての説明を省略する。
【0057】
図10に示すように、計測用プローブ160では、4つのEOセンサ160A,160X,160Y,160Zが一つの構造体170として形成されている。偏波保持ファイバ161(161A,161X,161Y,161Z)は、離隔距離ΔX、ΔYだけ離隔した位置に、偏波保持ファイバ161とほぼ同一径でなる4つの孔を有するキャピラリ169によって位置決めされ、固定されている。偏波保持ファイバ161におけるキャピラリ169より根元側には、樹脂被覆物161a(161Aa,161Xa,161Ya,161Za)が被覆されている。
【0058】
すなわち、4つのEOセンサ160(160A,160X,160Y,160Z)は、偏波保持ファイバ161を中心とした構造体170の所定のセンサ領域として形成されている。すなわちEOセンサ160では、各偏波保持ファイバ161の延長線上に反射点を有することになる。また、キャピラリ169の先端側に、偏波保持ファイバ161を延長するように該偏波保持ファイバ161と同一径でなるコリメータレンズ171(171A,171X,171Y,171Z)がそれぞれ配置されている。
【0059】
例えば、先端側の樹脂被覆物161aが剥がされた状態(すなわち、コア部と該コア部を被覆するクラッド部からなる芯部材が露出した状態)の偏波保持ファイバ161に対して、予め先端にコリメータレンズ171を固着しておき、キャピラリ169の孔に挿通させて固着することにより、偏波保持ファイバ161及びコリメータレンズ171が配置される。また、予めコリメータレンズ171をキャピラリ169の孔内に固着させた後、偏波保持ファイバ161をキャピラリ169の孔内に固着させたり、偏波保持ファイバ161を固着後にコリメータレンズ171を固着させても良い。その後、キャピラリ169の先端面を研磨し、該先端面を構造体170の根元側に貼り合わせることにより、構造体170に対して4本の偏波保持ファイバ161が接続される。
【0060】
構造体170は、反射基板162、EO結晶163、ガラス基板164に加え、反射基板162及びEO結晶163の間にサブEO結晶167、誘電体フィルム168が配置されている。サブEO結晶167及び誘電体フィルム168は、Z方向の厚さが合計で離隔距離ΔZに設定されている。誘電体フィルム168は、ベースフィルムと誘電体層(図示しない)とを有している。ベースフィルムとしては、例えばポリイミドなどの有機材料やガラスフィルムなどの無機材料などが適宜使用される。ベースフィルムは、例えば10~50μm程度の厚さを有し、供給される光信号の波長をほぼ100%透過させる材質で形成されている。誘電体フィルム168において、誘電体層は先端側又は根元側のいずれに設けられてもよいが、ここでは根元側の面に誘電体層が設けられた場合について説明する。
【0061】
誘電体層は、例えば1~10μm程度の厚さを有し、所定の波長の光(例えば1530nm)をほぼ100%(90%以上)反射する一方、他の波長の光(例えば1580nm)をほぼ100%(90%以上)透過させるという特性を有する。誘電体層は、30~100nmの範囲で急激に透過率が変化(10%未満から90%以上へ)する特性を有するものが好適に使用される。なお、反射及び透過特性を有する機能を有する薄膜を形成すればよく、必ずしも誘電体層である必要は無い。
【0062】
図11に示すように、EOセンサ160A,160X,160Yと、EOセンサ160Zとは波長の相違する光信号が供給される。例えば、EOセンサ160A,160X,160Yには1530nmの波長となる第1の入力光信号が供給される一方、EOセンサ160Zには1580nmの波長となる第2の入力光信号が供給される。
【0063】
この結果、EOセンサ160A,160X,160Yに供給された第1の入力光信号は誘電体フィルム168を通過して反射基板162によって反射され、反射基板162上に反射点を有する一方、EOセンサ160Zに供給された第2の入力光信号は誘電体フィルム168によって反射され、誘電体フィルム168上に反射点を有することになる。すなわち、EOセンサ160Zは、EOセンサ160Aを基準として、Z方向に離隔距離ΔZだけ離隔した位置の電磁波を測定することができる。
【0064】
なお、第1の入力光信号E1A、E2A(周波数f-1(1),f-1(2))及び第2の入力光信号E1B,E2B(入力周波数f-2(1),f-2(2))は、差分周波数f(IF)に拘らず、一定の値になるように供給される。これにより、入力光信号の波長に変動が生じないため、誘電体層における反射率を一定に保つことができる。
【0065】
計測用プローブ160では、第1の実施の形態と比して小型のプローブを形成することが可能である。具体的に、例えば計測対象電磁波の波長λが3mm、周波数100GHzの場合、離隔距離ΔX、ΔYは波長λの1/10である0.3mmに設定される。また、離隔距離ΔZは、波長λの1/20である0.15mmに設定される。
【0066】
本実施の形態の場合、EOセンサ160A,160X,160Yに対応するセンサ領域(破線で示す)のX方向及びY方向の各辺を結晶辺CRとする。従って、計測対象電磁波の波長λが3mm(約100GHz)の場合、好ましくは結晶辺CRは波長λの1/2以下となる1.5mm以下、より好ましくは波長λの1/4以下の0.75mm以下に設定される。例えば結晶辺CRが0.75mmの場合、構造体170として、一辺(プローブサイズWS)が1.5mmのEO結晶163が使用される。
【0067】
計測用プローブ60としてのXY方向のプローブサイズWSは、計測対象電磁波の波長λの2.0倍以下、特に1.0倍以下であることが好ましい。これにより、計測対象電磁波の攪乱を低減することが可能である。なお、離隔距離ΔX、ΔYに対し、反射点からEO結晶の外縁までのXY方向の距離である外縁距離ESは計測対象電磁波の波長λの3倍以下、特に2倍、さらに1倍以下であることが好ましい。これにより、プローブサイズWSを小さくして計測対象電磁波に対する攪乱を低減することが可能となる。
【0068】
計測用プローブ160では、1つのEO結晶を複数のEOセンサとして使用できるため、EOセンサ間に隙間を形成せずに済み、複数のEOセンサ間での回折などによる計測対象電磁波の攪乱を低減すると共に、取り扱いが容易となり非常に小さいサイズの計測用プローブを製造することが可能となる。
【0069】
なお、離隔距離ΔX,ΔY=0.5mm、プローブサイズWS=1.5mm、結晶辺CR=0.75mmのEO結晶及び反射基板の厚さ=0.5mmでなる4芯のEOセンサを用いた場合、計測対象電磁波の周波数=120GHz(波長λが約2.5mm)で計測が可能であった。また、離隔距離ΔX,ΔY=0.25mm、プローブサイズWS=0.5mm、結晶辺CR=0.25mmのEO結晶及び反射基板(ポリイミドフィルム)の厚さ=25μmでなる4芯のEOセンサを用いた場合、計測対象電磁波の周波数=300GHz(波長λが約1mm)で計測が良好であった。
【0070】
このように、1つの構造体170に対して予め位置決めされた4本の偏波保持ファイバ161を接続することにより、計測用プローブ160の小型化が可能となる。計測用プローブ160としてのサイズを小さくすることができるため、計測対象電磁波の乱れを効果的に抑制することができ、特に計測対象電磁波が高周波のときに好適に使用できる。なお、計測用プローブ160では、計測用プローブ160として一つのEO結晶163を使用するため、計測対象電磁波の周波数が10GHz以上、特に25GHz以上のときに好適に使用される。
【0071】
<シミュレーションによる検証>
次に、シミュレーションによる計測用プローブの検証結果について説明する。
【0072】
図12及び図13に、300GHzのホーンアンテナから電磁波を出力した場合において、異なる離隔距離で近傍界を測定し、その測定結果から遠方界を算出したものである。離隔距離ΔX,ΔYを変化させて計算した。図12は、E平面(x-z面)について、図13はH平面(y-z面)について示している。
【0073】
グラフ中の「S」と附された曲線は、300GHzのホーンアンテナから出力される電磁波のシミュレーション値を示している。他の曲線については、離隔距離ΔX,ΔYを変化させて近傍界を計測した結果を用いて算出した遠方界を示している。
【0074】
グラフに付加された「0.1」、「0.25」、「0.5」、「1.0」は離隔距離ΔX,ΔYを示しており、単位はmmである。300GHz=波長が1.0mmであるため、離隔距離ΔX,ΔYはそれぞれλ/10、λ/4、λ/2、1λとなる。
【0075】
グラフから分かるように、「0.1」、「0.25」では数値に大きな差違はなく、またシミュレーション値とも近い曲線を示した。また、「0.5」ではシミュレーション値からの乖離が大きくなり、「1.0」では1stローブを除くサイドローブが乖離してしまった。
【0076】
以上の結果から、離隔距離ΔX,ΔYはλ/2未満、特にλ/3以下にすることが好ましいことが分かる。
【実施例
【0077】
次に、実際に実施の形態において記載されたプローブを作製し、計測を行った結果について説明する。
【0078】
実施例プローブ1として、図8に記載のプローブ60を作製した。離隔距離ΔX,ΔY=1.25mm、プローブサイズWS=2.25mm、結晶辺CR=1.0mm、結晶間距離CD=0.25mmでEO結晶が配置され、反射基板の厚さ=0.5mmでなる4芯の計測用プローブである。
【0079】
実施例プローブ1を用いて、76.5GHzの遠方界の計測を行った。76.5GHzは波長が約3.92mmであるため、結晶辺CRは約0.25λ(λ/4)、離隔距離ΔX,ΔYは約0.32λ(約λ/3)である。
【0080】
「PO」は、一体型プローブ(実施例プローブ1)のOポートを個別プローブであると見立てて、従来のreferenceプローブ(別個のプローブ)をリファレンスとして用いて測定したデータである。1つの個別プローブを用いた計測(実施例プローブ1)と比較してより大きな乱れが生じていることがわかる。
【0081】
図14及び図15に、E面及びH面におけるシミュレーション値(図では「S」)と実測値(図では(IM)とをグラフ化して示す。また表1に、シミュレーション値と実測値との比較を示している。
【0082】
【表1】
【0083】
また、実施例プローブ2として、図10に記載のプローブ160を作製した。離隔距離ΔX,ΔY=0.25mm、プローブサイズWS=0.5mm、結晶辺CR=0.25mmのEO結晶及び反射基板(ポリイミドフィルム)の厚さ=25μmでなる4芯のEOセンサである。
【0084】
計測対象電磁波の周波数=300GHzは波長λが約1mmであるため、結晶辺CRは約0.25λ(λ/4)、離隔距離ΔX,ΔYは約0.25λ(λ/4)である。
【0085】
図16及び図17に、E面及びH面におけるシミュレーション値(図では「S」)と実測値(図では(IM)とをグラフ化して示す。また表2に、シミュレーション値と実測値との比較を示している。
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び表2からわかるように、より波長が小さく、ノイズが大きくなり易い高周波帯であるにも拘らず、実施例プローブ1と実施例プローブ2とを比較すると、シミュレーション値との差が実施例プローブ2の方が小さい。このことから、一つの結晶を使用する実施例プローブ2の方がプローブとしての性能に優れていることが確認された。
【0088】
また、一つの結晶に3本の光ファイバを接続した構成を有する2Dプローブ(離隔距離ΔX,ΔY=0.5mm)を用いて、79GHz(波長3.8mm)において計測を行った。このときの離隔距離ΔX,ΔYは約0.13λ(約λ/8)であった。
【0089】
離隔距離ΔX,ΔYをλ/4以下の十分に小さい値に設定したが、ゆがみが見られ、高い精度での計測ができなかった。離隔距離ΔX,ΔYをλ/4以下に設定しており、プローブ自体から発生する攪乱の効果は小さいものの、位相の復元精度が低下したためと考えられる。このことから、ベストな離隔距離ΔX,ΔYはλ/4近傍であり、特にλ/6以上かつλ/3以下の範囲内であることが好ましいと言える。また、結晶サイズCRも同様であり、ベストな結晶サイズCRはλ/4近傍であり、特にλ/6以上かつλ/3以下の範囲内であることが好ましいと言える。
【0090】
<動作及び効果>
以下、上記した実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて課題及び効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。また、各特徴に記載した用語の意味や例示等は、同一の文言にて記載した他の特徴に記載した用語の意味や例示として適用しても良い。
【0091】
本発明の計測用プローブ(計測用プローブ60)は、計測対象電磁波に応じて電気光学効果によって生じる光信号の変化を第1測定部(EOセンサ61A,偏波保持ファイバ61A)及び第2測定部(EOセンサ60X,60Y,60Z,偏波保持ファイバ61X,61Y,61Z)を有する計測用プローブによって測定し、前記計測用プローブを移動しながら検出された前記光信号の差分値に基づいて計測対象電磁波の空間分布状態を計測する電磁波計測システムに使用される計測用プローブであって、
前記電気光学効果を奏する電気光学結晶(EO結晶63A,63X,63Y,63Z)と、該電気光学結晶の根元側に設けられ前記光信号を伝達する光ファイバ(偏波保持ファイバ61A)と、該電気光学結晶の先端側に設けられ前記光信号を反射する反射部(反射基板62A)とからなるセンサ構成を有する第1測定部と、
前記センサ構成を有する第2測定部と、
前記光ファイバの軸方向に垂直な第1及び第2の方向において、前記電気光学結晶のサイズが前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されていることを特徴とする。
なお、電気光学結晶の根元側とは、電気光学結晶より根元側であれば良く、電気光学結晶と光ファイバの間に光学部品(補強用ガラス、コリメータレンズ、ファイバ接続部材など)が配置されていても良い。
【0092】
これにより、ノイズの少ない良好な離隔距離差分を得ることができる。
【0093】
計測用プローブにおいて、
前記第1及び第2の測定部における前記電気光学結晶には、
周波数の相違する2つの光信号が入力されることを特徴とする。
【0094】
前記第1測定部において光信号が反射する第1の反射点と前記第2測定部において光信号が反射する第2の反射点との距離である離隔距離(離隔距離ΔX,ΔY,ΔZ)が、前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されていることを特徴とする。
【0095】
これにより、第1測定部及び第2測定部で得られる光信号の同一時刻性を担保でき、高い精度での離隔距離差分の測定が可能となる。
【0096】
計測用プローブにおいて、前記離隔距離は、
前記計測対象電磁波の波長の1/3以下に設定されていることを特徴とする。
【0097】
これにより、同一性を高めることができるため、より精度の高い計測が可能となる。
【0098】
前記第1及び第2の測定部における前記電気光学結晶には、周波数の相違する2つの光信号がそれぞれ入力される。これにより、2つの光信号を電気信号として取り扱いやすい周波数に容易にコンバートできる。
【0099】
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバには、
前記2つの光信号の周波数の差分から前記計測対象電磁波の周波数を差分した差分周波数が一定となるように調整された状態で、前記2つの光信号が入力されることを特徴とする。
【0100】
これにより、一定の差分周波数を周波数とする電気信号から差分値を算出すれば良いため、後段の処理を簡素化し、差分値の精度を向上させることができる。
【0101】
計測用プローブにおいて、前記第1測定部における反射部と前記第2測定部における反射部とは、
前記第1及び第2の光ファイバの軸方向である第3方向において反射離隔距離だけずらして配置されており、該反射離隔距離は、前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されていることを特徴とする。
【0102】
これにより、第1及び第2測定部の差分値に基づき第3方向における計測対象電磁波の空間分布状態を検出することができる。
【0103】
計測用プローブにおいて、前記反射離隔距離は、
前記離隔距離よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0104】
これにより、Z方向における第1及び第2測定部の形状変化(凹凸)を小さくできるため、第1及び第2測定部が計測対象電磁波に与える影響を低減することができる。
【0105】
計測用プローブは、前記センサ構成を有し、前記第1及び前記第2測定部が並ぶ第1方向とは垂直な第2方向において前記第1の光ファイバから前記離隔距離だけ離隔して配置された第3の光ファイバを有する第3の測定部を備え、
第1面に前記第1及び第2の光ファイバを嵌合するための2つの溝が形成され、該第1面と対向する第2面に第3のファイバを嵌合するための溝が形成された中央板と、前記中央板における第1面と対向する面の対向する位置に2つの溝が形成された第1板と、前記中央板における第2面と対向する面の対向する位置に溝が形成された第2板とが貼り合わされて構成され、前記中央板と前記第1板の溝に第1及び第2の光ファイバが挟まれ、前記中央板と前記第2板の溝に前記第3の光ファイバが挟まれていることを特徴とする。
【0106】
これにより、少なくとも2方向に配置された3本の光ファイバを簡単にかつ高い精度で位置合わせを行うことができる。
【0107】
計測用プローブにおいて、前記中央板の第1面に形成された2つの溝は、前記離隔距離だけ離隔した位置に形成されており、
前記中央板は、前記第1面から前記第2面までの厚みがほぼ前記離隔距離でなることを特徴とする。
【0108】
これにより、中央板の厚さを使って少なくとも2方向に配置された3本の光ファイバを簡単にかつ高い精度で位置合わせを行うことができる。
【0109】
計測用プローブにおいて、前記センサ構成を有し、前記第1方向及び前記第2方向において前記第1の光ファイバから前記離隔距離だけ離隔して配置され、前記反射部が前記第1の光ファイバの軸方向である第3方向において前記第1測定部より反射離隔距離だけ離隔して配置された第4の光ファイバを有する第4の測定部を備えることを特徴とする。
【0110】
これにより、4本の光ファイバを有する3次元計測用プローブにおいて、4本の光ファイバの位置合わせを簡単にかつ高い精度で行うことができる。
【0111】
計測用プローブにおいて、一の電気光学結晶に対し、前記第1及び第2の光ファイバが接続されていることを特徴とする。
【0112】
これにより、予め位置合わせされた第1及び第2の光ファイバを接続するだけの簡易な工程で計測用プローブを製造することができる。また、部品点数を減少させることができ、一段と小さな計測用プローブを安価に製造することができる。
【0113】
計測用プローブにおいて、前記第1及び第2の光ファイバは、
該第1及び第2の光ファイバと略同一サイズの孔が形成されたキャピラリに貫通されていることを特徴とする。
【0114】
これにより、光ファイバを前記光学結晶及び反射部からなる構造体に接続するだけの簡易な工程で計測用プローブを製造することができる。
【0115】
計測用プローブの前記一の電気光学結晶において、
先端の反射部から前記第1及び第2の光ファイバの軸方向である第3方向において反射離隔距離だけずらして配置された機能膜(誘電体層)を有し、
該反射離隔距離は、
前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されており、
前記機能膜は、
前記第1測定部に伝達される波長の光信号を透過し、前記第2測定部に伝達される波長の光信号を反射することを特徴とする。
【0116】
これにより、第1及び第2測定部を一つの構造体として構成しつつ、反射部を第3方向に離隔させることが可能となる。
【0117】
計測用プローブでは、前記一の電気光学結晶に対し、
第1~第4の光ファイバが離隔距離だけ離隔した位置にそれぞれ接続されており、
先端の反射部から前記第1及び第2の光ファイバの軸方向である第3方向において反射離隔距離だけずらして配置された機能膜を有し、
該反射離隔距離は、
前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されており、
第1~第4の光ファイバは、
1本のキャピラリ内に埋設されていることを特徴とする。
【0118】
これにより、予め第1~第4の光ケーブルが第1及び第2方向に位置合わせされているため、後は前記電気光学結晶に接続させるだけの簡易な工程で計測用プローブを製造することが可能となる。
【0119】
計測用プローブにおいて、前記第1及び第2測定部は、
先端側を構成する先端面が同一平面上に形成されていることを特徴とする。
【0120】
これにより、計測対象電磁波に極力影響を与えずに電磁波の空間分布状態を測定することが可能となる。
【0121】
計測用プローブにおいて、前記第1及び第2の光ファイバの軸方向である第3方向となる前記第2の光ファイバの延長線上において前記先端面から反射離隔距離だけずらして配置され、前記機能膜を有する一方、前記第1の光ファイバの延長線上には前記機能膜が形成されていないことを特徴とする。
【0122】
これにより、先端面を同一平面上に形成させると共に、第1及び第2測定部を一つの構造体として構成しつつ、反射部を第3方向に離隔させることが可能となる。
【0123】
電磁波計測システム(電磁波計測システム1)において、
電気光学効果を奏する電気光学結晶と該電気光学結晶の根元側に設けられ前記光信号を伝達する光ファイバと該電気光学結晶の先端側に設けられた反射部とからなるセンサ構成を有する第1測定部と、前記計測用センサ構成を有する第2測定部とを有し、前記第1測定部において光信号が反射する第1の反射点と前記第2測定部において光信号が反射する第2の反射点との距離である離隔距離が、前記計測対象電磁波の波長の1/2以下に設定されている計測用プローブと、
第1測定部及び第2測定部間における前記電気光学結晶による光信号の変化の差分値を検出する差分検出部(光信号処理部30)と、
前記計測用プローブを移動しながら検出された前記光信号の差分値に基づいて電磁波の空間分布状態を算出する電磁波状態算出部(電気信号処理部40,計算装置3)とを備えることを特徴とする。
【0124】
これにより、電磁波計測システムにおいて、計測対象電磁波における同一の波同士を比較できるため、波自体が有するノイズ(波の幅・振幅など波自体の変形)の影響を確実に除去することができる。
【0125】
電磁波計測システムにおいて、前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバには、
周波数の相違する2つの光信号が入力されることを特徴とする。
【0126】
これにより、2つの光信号を電気信号として取り扱いやすい周波数に容易にコンバートできる。
【0127】
電磁波計測システムにおいて、前記計測用プローブを駆動する駆動部を有し、
前記差分検出部は、前記計測用プローブの移動距離が前記離隔距離未満ごとになるタイミングで前記差分値を検出することを特徴とする。
【0128】
この結果、サンプリング定理により計測対象電磁波の波形を復元することが可能である。
【0129】
本発明の光ファイバは、光信号を伝達するコア部と、前記コア部を被覆し該コア部とは屈折率の相違するクラッド部とを有するファイバ芯部材と、
前記ファイバ芯部材とほぼ同一サイズを有する複数の孔に複数の前記ファイバ心部材を挿通した状態で固定するキャピラリとを備えることを特徴とする。
【0130】
これにより、複数のファイバ芯部材を予め位置合わせした状態に固定することができるため、種々のセンサに取り付けることによって簡単に複数の光ファイバをセンサに接続することができる。
【0131】
前記キャピラリの先端側には、
前記ファイバ心部材とほぼ同一サイズを有する光学部品が挿通されていることを特徴とする。
【0132】
これにより、複数のファイバ芯部材と光学部品とを予め位置合わせした状態に固定することができる
【0133】
前記キャピラリの先端面と、前記孔に挿通された前記ファイバ心部材又は前記光学部品の先端面が同一平面上に位置することを特徴とする。
【0134】
これにより、後はセンサの根元側面に先端面を貼り合わせるだけの簡易な処理でセンサと複数の光ファイバとを接続することができる。
【0135】
近年、ミリ波レーダの普及に伴い、ミリ波など高周波でなる電磁波の空間分布状態(1次元、2次元、3次元における振幅や位相、強度、周波数など)を高精度で測定する必要性が高まっている。そこで、光が電磁波の影響を受けている物質と作用する時に発生する電気光学効果を奏する、いわゆる電気光学結晶を用いて電磁波の空間分布状態を計測する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0136】
一般的に電気光学結晶は脆くて加工性が悪く、特に1mm以下の微細加工が非常に困難である。しかしながら、計測対象電磁波の波長が短くなるのに合わせて計測用プローブによる攪乱の影響が大きくなるという問題があった。
【0137】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、攪乱の影響を低減可能な電磁波計測用プローブおよび該電磁波計測用プローブを用いた電磁波計測システムを提供するものである。
【0138】
本発明の計測用プローブは、電磁波計測システムに使用される計測用プローブであって、
前記電気光学効果を奏する電気光学結晶と、該電気光学結晶の根元側に設けられ前記光信号を伝達する光ファイバと、該電気光学結晶の先端側に設けられ前記光信号を反射する反射部とからなるセンサ構成を有する第1測定部と、
前記センサ構成を有する第2測定部とを有し、
一の電気光学結晶の根元側に、前記第1及び第2の光ファイバが接続されている
ことを特徴とする計測用プローブ。
【0139】
1つのEO結晶を複数のEOセンサとして使用できるため、誘電率が完全一致する複数のEOセンサを形成できるため、複数のEOセンサ間での干渉を生じさせることなく、非常に小さいサイズの計測用プローブを製造することが可能となる。また、EOセンサ間の隙間を形成せずに済むため、計測対象電磁波に対する攪乱を低減することが可能となる。
【0140】
<他の実施の形態>
なお上述実施形態では、車載用のレーダ4Aの検査用途に電磁波計測システム1を使用するようにした。本発明はこれに限らず、例えば滑走路や道路などに配置されるレーダ、航空機用のレーダなど種々のレーダや、アンテナなどレーダ以外の電波発生装置の検査用途に本発明を使用することが可能である。また、レーダが発する電磁波信号としてはFMCW信号に限らず、単周波数を使用するレーダであっても本発明を使用することができる。要は、計測対象電磁波による光信号の変化を複数の電気光学結晶を用いた差分値として検出することによって電磁波の空間分布状態を測定する場合に、本発明を適用することが可能である。
【0141】
また上述実施形態では、差分周波数f(IF)成分が一定になるようにフィードバック制御がなされる場合について述べた。本発明はこれに限らず、必ずしもフィードバック制御は必要ではない。また、変調周波数f(1)及びf(2)でなる入力光信号を一定にして差分周波数f(IF)成分が変調されるようにしても良い。この場合であっても、後段の処理において差分周波数f(IF)成分が相殺されベース周波数f(s)でなるベース信号に置換されるため、理論上は問題無く離隔距離差分を検出することができる。
【0142】
上述実施形態では、1つのEOセンサに対して2つの光信号を用いるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば1つのEOセンサに対して一つの光信号のみを用いてもよい。要は、2つのEOセンサ間において電磁波の影響による光信号の変化の差分値を検出する全ての方式において本発明を適用することが可能である。
【0143】
上述実施形態では、計測用プローブ60として、4つのEOセンサ60A,60X,60Y,60Zを有するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えばX方向又はY方向に離隔距離ΔX又はΔYだけ離隔する2つ又は3つのEOセンサや、Z方向に離隔距離ΔZだけ離隔する2つのEOセンサ、離隔距離ΔX、ΔZだけ離隔する3つのEOセンサ、5つ以上のEOセンサなどによって計測用プローブが構成されても良い。この場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、計測用プローブ160についても同様であり、例えば離隔距離ΔX、ΔY、ΔZだけ離隔する2つ又は3つのEOセンサ、ΔX、ΔY、ΔZの整数倍の離隔距離を組み合わせた5つ以上のEOセンサなどによって計測用プローブが構成されても良い。
【0144】
上述実施形態では、EOセンサ60Zの先端面が他のEOセンサ60A,60X,60YからΔZだけ引っ込んだ状態である場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば反射基板より先端側に光学部品を固着することにより、先端面の位置をZ方向に対して同一、又は出っ張った状態にしても良い。これにより、4つのEOセンサ60A,60X,60Y,60Zにおける先端面を同一位置にすることができ、計測対象電磁波の乱れを小さくすることができる。
【0145】
上述実施形態では、構造体170のXY平面における全体に誘電体膜が形成されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、EOセンサ160Zに対応する領域にのみ誘電体膜が形成されたり、EOセンサ160Zに対応する領域に誘電体膜が、それ以外の領域に第2の入力光信号を透過する透過膜が形成されても良い。この場合、第1の実施の形態と同様に同一周波数でなる2つの光信号を4つのEOセンサに供給すれば良い。これにより、先端面は同一とすることができるため、形状(EOセンサ160Zのみ先端面の位置が相違する)によって生じる電磁波の乱れを生じさせずに済む。なお、この場合の誘電体膜は、単に光信号を反射する反射膜であれば良い。
【0146】
上述実施形態では、溝66を使って偏波保持ファイバ61を位置合わせするようにしたが、本発明はこれに限らず、その他種々の製法を用いて偏波保持ファイバ61を位置合わせすることができる。また上述実施形態では、キャピラリ169にあらかじめ形成された孔を用いて偏波保持ファイバ161を位置決めするようにしたが、本発明はこれに限らず、その他種々の製法を用いて偏波保持ファイバ161を位置合わせすることができる。もちろん第1及び第2の実施の形態を適宜組み合わせても良く、例えば、構造体170に対して溝を有する固定基板を使用したり、4つのEOセンサに対して4つの孔を有するキャピラリを用いて位置決めをすることができる。
【0147】
上述実施形態では、計測用プローブ60を連続的に移動させながら所定間隔で離隔距離差分を検出する場合について述べた。本発明はこれに限らず、計測用プローブ60を少しずつ移動させながら、その箇所ごとに離隔距離差分を検出しても良い。また、必ずしも計測用プローブを移動させる必要は無く、例えば計測対象電磁波を発する電磁波発生装置を移動させても良い。要は、計測用プローブと計測対象電磁波とが相対的に移動できれば良い。
【0148】
上述実施形態では、4本の偏波保持ファイバが格子状に配置された場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば上段の偏波保持ファイバと下段の偏波保持ファイバとがY方向にずれた状態で配置されていても良い。また、3本の偏波保持ファイバが正三角形状に配置されても良い。
【0149】
上述実施形態では、EO結晶63の中心、又はセンサ領域の中心に偏波保持ファイバが接続されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば構造体の中心に寄るように偏りを持たせて偏波保持ファイバを接続しても良い。すなわち、偏波保持ファイバの電気光学結晶に対する位置関係に制限はない。また、必ずしも結晶サイズを計測対象電磁波の波長λの1/2以下にしなくても良い。
【0150】
上述実施形態では、電気光学効果として、屈折率の変化により光信号の位相変調を行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば光信号の偏光状態を変化させても良い。また、電気光学効果としては屈折率が電界強度の2乗に比例して変化するカー効果、屈折率が電界強度の1乗に比例して変化するポッケルス効果のいずれを利用してもよい。また、電気光学結晶としては、立方体、直方体、円柱、多角柱など種々の形状のものを使用でき、XYZ方向の比率について特に制限は無い。
【0151】
上述実施形態では、反射基板62に反射膜を設けるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、プラスチックフィルム(例えばポリイミドフィルム)や薄膜の無機素材などの薄膜材料に反射膜を形成して貼り合わせたり、EO結晶63の先端面60aにスピンコート、ディップコート、蒸着などの手法によってEO結晶に対して直接的に反射膜を設けてもよい。これにより、反射基板62の基板部分(ガラスなど)が計測対象電磁波に与える影響を抑えることができる。なお、薄膜材料に反射膜を形成する場合には、薄膜材料を200μm以下、特に100μm以下にすることにより、薄膜材料が計測対象電磁波に与える影響を最小限に抑えることができる。また、薄膜材料としては誘電率の低い(1.0に近い)材質が好適に選択される。薄膜材料として有機材料(プラスチック材料)を使用することにより、安価なで取り扱いの容易な蒸着フィルムや銅箔付フィルムなどを使用することができ、簡易で安価に反射膜を形成することができる。
【0152】
上述実施形態では、差分測定に計測用プローブを使用するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、計測対象電磁波を使用した同期系の絶対値測定においても、本発明の計測用プローブを使用することが可能である。例えば、複数の測定点を同時測定可能なプローブとして本発明の計測用プローブを使用することが可能である。この場合であっても、計測対象電磁波の攪乱を低減できるといった本願発明の効果を得ることができる。
【0153】
上述実施形態では、電磁波計測システム1が一つの計測用プローブ60を用いるようにしたが、本発明はこれに限らず、複数の計測用プローブ60を使用し、同時に複数箇所の測定を行うようにしても良い。
【0154】
上述実施形態では、電磁波計測システム1にEOセンサ160を適用したが、本発明はこれに限られない。光信号を伝達するコア部と、前記コア部を被覆し該コア部とは屈折率の相違するクラッド部とを有するファイバ芯部材と、前記ファイバ芯部材とほぼ同一サイズを有する複数の孔に複数の前記ファイバ心部材を挿通した状態で固定するキャピラリとを備える束状光ファイバであればよく、例えば他の構成を有する電磁波計測システムにEOセンサとして束状光ファイバを使用しても良い。前記キャピラリの先端側には、前記ファイバ心部材とほぼ同一サイズを有する光学部品が挿通されていることが好ましい。このとき、前記キャピラリの先端面と、前記孔に挿通された前記ファイバ心部材又は前記光学部品の先端面が同一平面上に位置することが好ましい。
【0155】
これにより、簡易な構成で種々の測定に使用可能なセンサの役割を担う束状光ファイバを作製することができる。
【0156】
上述実施形態では、第1測定部としてのEOセンサ61Aと、第2測定部としてのEOセンサ61Xとによって計測用プローブとしての計測用プローブ60を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる第1測定部と、第2測定部とによって本発明の計測用プローブを構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、例えば車載用レーダの電磁波を測定するために使用される電磁波計測用プローブに適用することができる。
【符号の説明】
【0158】
1:電磁波計測システム,2:電磁波計測装置,3:計算装置,4:自動車,4A:レーダ,20:光信号供給部,21:レーザ光源,24:シンセサイザ,30:光信号処理部,31:サーキュレータ,32A:光フィルタ,33A:フォトダイオード,40:電気信号処理部,41A:アンプ,41X:アンプ,42A:乗算器,43A:フィルタ,44A:アンプ,45X:乗算器,46:ベース信号生成器,47X:ロックインアンプ,50:制御部,51:駆動部,52:外部インターフェース,60:計測用プローブ,60A,60X,60X,60Z:EOセンサ,60Xa:先端面,61,61A,61X,61Y,61Z:偏波保持ファイバ,62X:反射基板,63X:EO結晶,64X:ガラス基板,65X:コリメータレンズ,66:固定基板,66A:上板,66Aa:溝,66B:中間板,66Ba,66Bb,66Ca:溝,66C:下板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17