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特許7098857物理量分布図の作成方法、及び物理量分布図作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】物理量分布図の作成方法、及び物理量分布図作成装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20220705BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20220705BHJP
   G01C 7/02 20060101ALI20220705BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220705BHJP
【FI】
G06T1/00 285
G01T1/16 A
G01C7/02
G06T7/00 640
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017046496
(22)【出願日】2017-03-10
(65)【公開番号】P2018151775
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-01-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504275786
【氏名又は名称】株式会社松浦電弘社
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】津野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】村木 広和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明彦
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 実
(72)【発明者】
【氏名】松浦 隆弘
【審査官】宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-96807(JP,A)
【文献】特表2013-514572(JP,A)
【文献】特開2014-62797(JP,A)
【文献】特開2014-98605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/50
G06T 7/00 - 7/90
G06T 9/00 - 9/40
G01T 1/00 - 1/16
G01T 1/167 - 7/12
G01C 1/00 - 1/14
G01C 5/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象範囲内でそれぞれ地点ごとに異なる物理量の分布図を作成する方法であって、
前記対象範囲を移動しながら、隣接画像が重複するように該対象範囲内の各地点の地面を撮影して複数の地面画像を取得するとともに、該対象範囲内の各地点の前記物理量を計測する移動計測工程と、
前記対象範囲を移動するときの移動速度を速度計測手段によって計測する移動速度計測工程と、
取得された前記地面画像を、使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別する画像選別工程と、
前記移動計測工程で得られた前記物理量に基づいて、それぞれの前記地面画像に対して該物理量を付与する物理量設定工程と、
前記地面画像間で重複する部分の特徴点を合わせて合成することによって、前記対象範囲の正射画像を作成する正射画像作成工程と、
前記正射画像を基図として各地点における前記物理量を示すことで、物理量分布図を作成する分布図作成工程と、を備え、
前記画像選別工程では、前記移動速度があらかじめ定められた閾値以上になるときに取得された前記地面画像を前記使用地面画像と判断し、該移動速度があらかじめ定められた閾値よりも小さいときに取得された該地面画像を前記不使用地面画像と判断し、
前記正射画像作成工程では、前記画像選別工程で前記使用地面画像と判断された前記地面画像に基づいて、前記対象範囲の前記正射画像を作成する、
ことを特徴とする物理量分布図の作成方法。
【請求項2】
対象範囲内でそれぞれ地点ごとに異なる物理量の分布図を作成する方法であって、
前記対象範囲を移動しながら、隣接画像が重複するように該対象範囲内の各地点の地面を撮影して複数の地面画像を取得するとともに、該対象範囲内の各地点の前記物理量を計測する移動計測工程と、
前回の前記地面画像の取得位置から今回の前記地面画像の取得位置までの移動距離を移動距離計測手段によって計測する工程と、
取得された前記地面画像を、使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別する画像選別工程と、
前記移動計測工程で得られた前記物理量に基づいて、それぞれの前記地面画像に対して該物理量を付与する物理量設定工程と、
前記地面画像間で重複する部分の特徴点を合わせて合成することによって、前記対象範囲の正射画像を作成する正射画像作成工程と、
前記正射画像を基図として各地点における前記物理量を示すことで、物理量分布図を作成する分布図作成工程と、を備え、
前記画像選別工程では、前回取得した前記地面画像の中心点を基準とするあらかじめ定められた円の半径よりも前記移動距離が小さいときに取得された前記地面画像を重複充足と判断し、該移動距離が前回取得した該地面画像の中心点を基準とするあらかじめ定められた円の半径以上になるときに取得された前記地面画像を重複不足と判断し、連続して重複充足と判断された前記地面画像のうち最後の判断に係る該地面画像を前記使用地面画像として選定するとともに、重複充足と判断された他の前記地面画像は前記不使用地面画像として選定し、
前記正射画像作成工程では、前記画像選別工程で前記使用地面画像と判断された前記地面画像に基づいて、前記対象範囲の前記正射画像を作成する、
ことを特徴とする物理量分布図の作成方法。
【請求項3】
前記移動計測工程では、支持柱に固定された画像取得手段によって地面を撮影するとともに、該支持柱に固定された計測手段によって物理量を計測する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の物理量分布図の作成方法。
【請求項4】
対象範囲内でそれぞれ地点ごとに異なる物理量の分布図を作成する物理量分布図作成装置であって、
前記対象範囲を移動しながら地面を撮影した地面画像を取得しうる画像取得手段と、
前記対象範囲内の前記物理量を計測する計測手段と、
前記対象範囲を移動するときの移動速度を取得する速度計測手段と、
前記画像取得手段で取得された前記地面画像を、使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別する画像選別手段と、
前記計測手段で計測された前記物理量に基づいて、前記画像取得手段で取得した前記地面画像に対して前記物理量を付与する物理量設定手段と、
前記地面画像間で重複する部分の特徴点を合わせて合成することによって、前記対象範囲の正射画像を作成する正射画像作成手段と、
前記正射画像を基図として各地点における前記物理量を示すことで、物理量分布図を作成する分布図作成手段と、を備え、
前記画像選別手段は、前記移動速度があらかじめ定められた閾値以上になるときに取得された前記地面画像を前記使用地面画像と判断し、該移動速度があらかじめ定められた閾値よりも小さいときに取得された該地面画像を前記不使用地面画像と判断し、
前記正射画像作成手段は、前記画像選別手段で選別された前記使用地面画像に基づいて、前記対象範囲の前記正射画像を作成する、
ことを特徴とする物理量分布図作成装置。
【請求項5】
対象範囲内でそれぞれ地点ごとに異なる物理量の分布図を作成する物理量分布図作成装置であって、
前記対象範囲を移動しながら地面を撮影した地面画像を取得しうる画像取得手段と、
前記対象範囲内の前記物理量を計測する計測手段と、
前回の前記地面画像の取得位置から今回の前記地面画像の取得位置までの移動距離を計測する移動距離計測手段と、
前記画像取得手段で取得された前記地面画像を、使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別する画像選別手段と、
前記計測手段で計測された前記物理量に基づいて、前記画像取得手段で取得した前記地面画像に対して前記物理量を付与する物理量設定手段と、
前記地面画像間で重複する部分の特徴点を合わせて合成することによって、前記対象範囲の正射画像を作成する正射画像作成手段と、
前記正射画像を基図として各地点における前記物理量を示すことで、物理量分布図を作成する分布図作成手段と、を備え、
前記画像選別手段は、前回取得した前記地面画像の中心点を基準とするあらかじめ定められた円の半径よりも前記移動距離が小さいときに取得された前記地面画像を重複充足と判断し、該移動距離が前回取得した該地面画像の中心点を基準とするあらかじめ定められた円の半径以上になるときに取得された前記地面画像を重複不足と判断し、連続して重複充足と判断された前記地面画像のうち最後の判断に係る該地面画像を前記使用地面画像として選定するとともに、重複充足と判断された他の前記地面画像は前記不使用地面画像として選定し、
前記正射画像作成手段は、前記画像選別手段で選別された前記使用地面画像に基づいて、前記対象範囲の前記正射画像を作成する、
ことを特徴とする物理量分布図作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、対象領域における例えば放射線量率といった物理量の分布図を作成する技術に関するものであり、より具体的には、特段の測位手段を必要とすることなく物理量分布図を作成することができる方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が原因とされる環境破壊が進み、地球環境の保全は世界的な問題となっている。1997年には京都議定書が締結され、温室効果ガスの削減目標を定めるなど、多くの国が積極的にこの問題に取り組んでいる。我が国でも、これまで官民を挙げて温室効果ガスの削減対策が実施されており、そのひとつが原子力発電である。原子力による発電は、その発電力もさることながら、いわゆる化石エネルギーによる発電に比べ温室効果ガスの排出量が極めて少ないため、従前の発電方式からこの方式へ転換が図られてきた。
【0003】
一方、我が国は地震が頻発する国として知られ、東北地方太平洋沖地震をはじめ、兵庫県南部地震、新潟県中越地震など大きな地震が発生し、そのたびに甚大な被害を被ってきた。先の東日本大震災では、津波によって計り知れない被害を受けたうえ、さらに福島原子力発電所の原子炉が破損したことによって放射性物質が大量に漏れ出すという事故も発生した。
【0004】
原子力発電所から漏出した放射性物質は、その周辺にとどまらず広い範囲にわたって拡散した。これは、放射性物質がエアロゾル等に付着した結果、このエアロゾル等が輸送体となって放射性物質を遠方まで連行し、雨水等によって地上に降下したものと考えられている。いずれにしろ、原子力発電所の事故による影響は広い範囲に及んでおり、放射性物質汚染対処特別措置法では、事故由来放射性物質の環境汚染状況について重点的に調査測定をすべき「汚染状況重点調査地域」として、100を超える市町村を指定している。
【0005】
広い範囲に放射性物質が拡散したとしても、場所によって放射線量は異なり、極めて高い放射線量を示す地域もあれば、環境に影響を与えない程度の放射線量を示す地域もある。高い放射線量を示す地域では、当然ながら人体に対する影響を考えなければならない。1年間の放射線量(mSv/年)を指標として各居住区に制限を設けており、50mSv以上が帰宅困難区域、20mSv以上が居住制限区域、1mSv以上が避難指示解除準備区域とされ、いずれも複数の市町村が今なお該当している。このような制限区域に対して適切な除染対策を行い、すべての制限を早期に解除することが喫緊の課題である。
【0006】
ところで、その地域全体としてはそれほど高い放射線量を示さないものの、局所的に極めて高い放射線量を示すケースがある。あるいは、居住制限区域であっても部分的に低い放射線量を示すケースも考えられる。周辺に比べ局所的に高い放射線量を示す地点(以下、「ホットスポット」という。)を抽出することは、生活安全上極めて重要であり、また、高い放射線量の中にあって部分的に低線量を示す地点を抽出することは、除染作業が軽減されるうえ、除染により発生した汚染土を保管する場所(仮置き場や中間貯蔵施設など)が不足している状況の下、発生する汚染土量を削減する結果となり極めて有益といえる。
【0007】
このように、局所的な放射線量を把握する場合、航空機等による全体計測ではなく、狭い範囲に区切って部分的に計測する手法が用いられる。実際、福島県では20万戸を超える住宅に対して1戸ずつ調査を行い、結果に応じて除染対策を進めている。なお、住宅の放射線量を計測する際は、「放射性物質による局所的汚染箇所への対処ガイドライン―環境省―」(以下、単に「汚染箇所対処ガイドライン」という。)に従い、局所的に汚染箇所が予測される箇所(以下、「汚染予測箇所」という。)を抽出した上で、当該箇所を中心に計測している。これは現実に汚染されている「局所的汚染箇所」をできる限り早急に発見するためで、建物の雨樋、排水口、側溝・排水路、雨水枡などが汚染予測箇所として例示されている。
【0008】
しかしながら、汚染予測箇所の抽出は人の判断によって行われるものであり、抽出精度は調査者の知識や経験に依存するところとなる。大量の調査住宅を考えると大勢の調査者が計測に当たることになり、したがって汚染予測箇所の抽出基準が不均一となり、その結果、局所的汚染箇所が正しく発見されないおそれもある。また、計測結果は位置情報とともに記録しなければ適切な除染対策を実施することはできないが、放射線量を計測する一方で同時に位置計測を行い、その上、計測値と位置情報を関連付けて記録することはそれほど容易なことではない。実際は、用意した紙図面に概ねの計測位置を記しているのが現状であり、そのため誤記や記録漏れを生じることもあるが、これを事後的に確かめることはできない。
【0009】
屋外を対象に放射線量を調査する場合、計測値と位置情報を関連付けて記録するには衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を併用することが考えられる。調査地点の位置座標をGNSSで測位していくことで、計測値と位置情報をセットとして記録できるわけである。しかしながらGNSSによる単独測位では10m程度の誤差が生じることが知られており、さらに屋根や庭木といった障害がある場合は敷地外に大きく外れた点を座標として出力するケースもある。
【0010】
そこで特許文献1では、GNSSによる測位と自律航法による測位を併用した放射線分布計測技術を提案している。この技術によれば、GNSS測位と自律航法測位の結果を用いて補正することによってその測位精度を高めつつ、計測値と位置情報を関連付けて記録することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2015-175803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の技術によれば、2種類の測位を併用することからGNSS測位のみの結果よりも高精度の位置座標を取得できるが、自律航法測位は誤差が累積していくことが知られており、またGNSSによる単独測位も既述のとおり大きな誤差を生ずることがあるため、多点数を測位するケースではいくつかの計測点で高精度の位置座標を取得できないことも考えられる。また、屋外と屋内の両方で調査する場合、屋内ではGNSS測位が利用できないため屋外と屋内で使用する測位手段を交換しなければならないという手間も生ずる。
【0013】
そこで本願発明の発明者らは、調査対象とする範囲(以下、「対象範囲」という。)内の物理量の分布を把握するに当たって、GNSS測位のように積極的に測位することなく、計測地点の物理量と位置情報を関連付けて当該物理量の分布図(以下、「物理量分布図」という。)を作成することができる技術の提供を本願発明の課題とした。なおここでいう「物理量」とは、放射線量率や地磁気、温度、種々のガス濃度など場所によって異なる値を示すあらゆる属性を意味する。
【0014】
上記課題を解決するため本願発明の発明者らは、地面(屋外の地表面や、屋内の床面など)を写した複数の画像から対象範囲の正射画像を作成することとした。通常、画像のみから正射画像を作成するには、重複しあう多数の画像が必要とされ、そのため高速(例えば、30fps)で撮影できる画像取得手段(カメラやビデオカメラ等)が使用される。その結果、大量の画像を取得することとなり、すなわち大量(いわば必要以上)の画像を用いて正射画像を作成することとなって、その作成(解析)に相当の時間とコストが掛かってしまう。そこで、画像のみから正射画像を作成する際にその作成時間とコストを低減することができる技術の提供も本願発明の課題とした。
【0015】
ここまで説明したように本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、GNSS測位のように積極的に測位することなく物理量分布図を作成することができる物理量分布図の作成方法、及び物理量分布図作成装置を提供することである。また、正射画像の作成時間とコストを低減することができる技術の提供も本願発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明は、移動しながら取得した地面画像から対象範囲の正射画像を作成し、地面画像に物理量を付与することで物理量分布図を作成する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0017】
本願発明の物理量分布図の作成方法は、対象範囲の物理量分布図を作成する方法であり、移動計測工程と、物理量設定工程、正射画像作成工程、分布図作成工程を備えた方法である。移動計測工程では、対象範囲を移動しながら、隣接画像が重複するように地面を撮影して複数の地面画像を取得するとともに、物理量を計測する。物理量設定工程では、移動計測工程で得られた物理量に基づいて、それぞれの地面画像に対して代表物理量を付与する。また正射画像作成工程では、複数の地面画像に基づいて対象範囲の正射画像を作成する。そして分布図作成工程では、正射画像に代表物理量を表示することで物理量分布図を作成する。
【0018】
本願発明の物理量分布図の作成方法は、物理量として放射線量率を計測する方法とすることもできる。この場合、物理量設定工程では、地面画像に対して代表放射線量率を付与し、分布図作成工程では、正射画像に代表放射線量率を表示する。
【0019】
本願発明の物理量分布図の作成方法は、取得した地面画像のうち一部を用いて物理量分布図を作成する方法とすることもできる。この場合、移動計測工程では、対象範囲を移動する速度に基づいて地面画像を正射画像の作成に使用するか否か判断し、物理量設定工程では、正射画像の作成に使用すると判断された地面画像(以下、「使用地面画像」という。)に対して代表物理量を付与し、正射画像作成工程では、使用地面画像に基づいて対象範囲の正射画像を作成する。また、移動速度に代えて隣接画像の重複の程度に基づいて、地面画像を正射画像の作成に使用するか否か判断することもできる。隣接画像の重複の程度は、対象範囲を移動した移動距離に基づいて求めることができる。
【0020】
本願発明の物理量分布図の作成方法は、地面から略一定の高さに固定した画像取得手段で地面を撮影する方法とすることもできる。この場合、正射画像作成工程では、画像取得手段と地面との距離に基づいて地面画像の縮尺を求め、この縮尺が付与された正射画像を用いて正射画像を作成する。
【0021】
本願発明の物理量分布図の作成方法は、支持柱に固定された画像取得手段によって地面を撮影するとともに、この支持柱に固定された計測手段によって物理量を計測する方法とすることもできる。
【0022】
本願発明の物理量分布図の作成方法は、対象範囲内で2以上の地点の平面座標を取得する測位工程をさらに備えた方法とすることもできる。この場合、正射画像作成工程では、測位工程で取得された平面座標に基づいて所定の座標系が設定された正射画像を作成する。
【0023】
本願発明の物理量分布図作成装置は、対象範囲の物理量分布図を作成する装置であり、画像取得手段と、計測手段、物理量設定手段、正射画像作成手段、分布図作成手段を備えたものである。画像取得手段は、地面から略一定の高さに固定され、対象範囲を移動しながら地面を撮影した地面画像を取得しうるものであり、計測手段は、対象範囲内の物理量を計測するものである。また物理量設定手段は、計測手段で計測された物理量に基づいて地面画像に対して代表物理量を付与するものであり、正射画像作成手段は、隣接画像が重複する複数の地面画像に基づいて対象範囲の正射画像を作成するものである。そして分布図作成手段は、正射画像に代表物理量を表示することで物理量分布図を作成するものである。
【0024】
本願発明の物理量分布図作成装置は、速度計測手段と、画像選別手段、画像記憶手段をさらに備えたものとすることもできる。速度計測手段は、対象範囲を移動するときの移動速度を取得するものである。また画像選別手段は、速度計測手段で取得した移動速度に基づいて、地面画像を使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別するものである。そして画像記憶手段は、画像選別手段で選別された使用地面画像のみを記憶するものである。この場合の正射画像作成手段は、使用地面画像に基づいて対象範囲の正射画像を作成する。
【発明の効果】
【0025】
本願発明の物理量分布図の作成方法、及び物理量分布図作成装置には、次のような効果がある。
(1)複数の地面画像からなる正射画像を利用することから、(任意座標系における)位置精度が高い物理量分布図を作成することができる。
(2)従来に比べて完成までの手間が低減され、すなわち短期間で完成することから、鮮度の高い物理量分布図を作成することができる。また短期間で物理量分布図を作成することができるため、早い時期に現場での概略対策(除染等)を立案することができる。
(3)GNSS測位を必須としないことから、屋内を計測した物理量分布図も作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は時間経過に伴って取得されていく地面画像を説明するモデル図、(b)は時間経過に伴って取得されていく物理量を説明するモデル図、(c)は時間経過に伴って取得されていく移動速度を説明するモデル図。
図2】本願発明の物理量分布図の作成方法の主な工程の流れを示すフロー図。
図3】支持柱(ポール)形式の柱物理量分布図作成装置を示すモデル図。
図4】(a)は適度に重複した隣接画像を説明するモデル図、(b)は過度に重複した隣接画像を説明するモデル図。
図5】地面画像に物理量を設定する仕様を説明するモデル図。
図6】定期的に地面画像を抽出する仕様を説明するモデル図。
図7】移動速度に基づいて地面画像を使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別する仕様を説明するモデル図。
図8】移動速度に基づいて地面画像を使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別する仕様を説明するフロー図。
図9】(a)はn番目に取得した地面画像の画像範囲P(n)と許容重複範囲L(n)を示すモデル図であり、(b)は許容重複範囲L(n)と他の地面画像の画像範囲を比較したモデル図。
図10】本願発明の物理量分布図作成装置の主な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願発明の物理量分布図の作成方法、及び物理量分布図作成装置の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0028】
1.定義
本願発明の実施形態の例を説明するにあたって、はじめにここで用いる主な用語の定義を示しておく。
【0029】
(対象範囲)
既述のとおり調査対象とする範囲を、ここでは「対象範囲」ということとする。例えば対象範囲としては、住宅や学校の敷地や、あるいは施設内の所定範囲など、屋外及び屋内を含む様々な領域が挙げられる。
【0030】
(地面画像)
本願発明は、計測した物理量の計測位置を表すための基礎となる平面図(いわゆる、基図)として、正射画像(オルソ画像)を利用することを1つの特徴としている。この正射画像は、平面位置を表す概ね水平面を撮影して得られるものであり、「概ね水平面」のことをここでは「地面」としている。したがって地面としては、屋外の地表面や水面、あるいは屋内の床面といった面を例示することができる。そして、地面を撮影して得られる画像ことをここでは「地面画像」ということとする。
【0031】
また本願発明では、調査者(あるいは移動体)が移動しながら定期的(例えば、1/30秒間隔)、断続的、あるいは連続的に、地面画像を取得する。つまり移動後、時間を追うごとに逐次地面画像が取得されていく。図1(a)は、時間経過に伴って取得されていく地面画像を説明するモデル図である。この図に示すように、ここではそれぞれの地面画像を区別するため、取得した順にP、P、P、・・・Pを各地面画像の名称とし、それぞれ地面画像を取得した時期(タイミング)をTp、Tp、Tp、・・・Tpということとする。
【0032】
(物理量)
既述のとおり、放射線量率や地磁気、温度、種々のガス濃度など場所によって異なる(位置に紐づく)値を示すあらゆる属性を、ここでは「物理量」ということとする。本願発明は、地面画像と同様、調査者等が移動しながら定期的(例えば、1秒間隔)、断続的、あるいは連続的に、物理量を取得する。つまり移動後、時間を追うごとに逐次物理量が取得されていく。図1(b)は、時間経過に伴って取得されていく物理量を説明するモデル図である。この図に示すように、ここではそれぞれの物理量を区別するため、取得した順にR、R、R、・・・Rを各物理量の名称とし、それぞれ物理量を取得した時期(タイミング)をTr、Tr、Tr、・・・Trということとする。
【0033】
(移動速度)
後述するように、正射画像を作成する上で地面画像を抽出する(換言すると、余分な地面画像を間引く)ために、調査者等が移動する速度を計測することもできる。ここでは、この移動する速度のことを「移動速度」ということとする。移動速度もやはり、調査者等が移動しながら定期的(例えば、1/5秒間隔)、断続的、あるいは連続的に、取得される。つまり移動後、時間を追うごとに逐次移動速度が取得されていく。図1(c)は、時間経過に伴って取得されていく移動速度を説明するモデル図である。この図に示すように、ここではそれぞれの移動速度を区別するため、取得した順にV、V、V、・・・Vを各移動速度の名称とし、それぞれ移動速度を取得した時期(タイミング)を v1 v2 v3 、・・・ vn ということとする。
【0034】
2.物理量分布図の作成方法
次に、本願発明の物理量分布図の作成方法について図2を参照しながら説明する。図2は、本願発明の物理量分布図の作成方法の主な工程の流れを示すフロー図である。なおここでは便宜上、調査者が歩行により移動しながら調査するケースで説明するが、本願発明は調査者のほか必要な機器を搭載した移動体(自動車や飛行体、ロボットなど)で移動しながら実施することもできる。
【0035】
図2に示すように、まずは対象範囲の移動計測を行う(Step100)。移動計測は、調査者が歩行しながら地面画像を取得(Step111)し、かつ物理量を計測(Step121)していく工程である。また、移動しながら移動速度(つまり歩行速度)を計測(Step131)することもできるし、移動しながら位置座標を測位(GNSS測位や屋内測位)することもできる。GNSS測位や屋内測位を使用して、対象範囲の2以上の地点の平面座標を取得することで、所定の座標系(例えば世界測地系など)が設定された対象範囲の正射画像を作成することができる。
【0036】
移動計測に用いる機器は、当然ながら調査者とともに移動する必要があるため、調査者が携行しやすいように一体の装置とするとよい。例えば図3に示すように、支持柱190(ポール)に画像取得手段111と計測手段121を固定したものを携行用計測装置し、これを携行して調査することができる。この図に示す携行用計測装置を利用すると、画像取得手段111から地面までの距離(つまり画像取得手段111の高さ)が略一定に保たれ、この結果、取得される地面画像の縮尺を求めることが可能となり、すなわち地面画像によって作成される正射画像の縮尺も把握することができる。もちろん携行用計測装置は、支持柱(ポール)形式に限らず、背負子形式やヘルメット固定形式など種々の形態とすることができる。
【0037】
計測手段121は、1つのみ携行することもできるし複数個を携行することもできる。複数の計測手段121を利用する場合は、図3に示すようにそれぞれ計測する高さ(つまり固定位置)を変えるとよい。また、2種類以上の計測手段121を支持柱190に取り付け、移動しながら2種類以上の物理量(例えば、放射線量率とガス濃度など)を同時に計測することもできる。
【0038】
支持中190には、画像取得手段111と計測手段121のほか、加速度計やDMI(Distance Measuring Indicator)といった速度計測手段131、GNSS受信機などの測位手段140も取りつけることもできる。図3に示す携行用計測装置では、さらに地面画像や計測した物量量をその場で表示するモニタと、各種機器の制御ユニットやバッテリー等を収容するバックパックも備えている。
【0039】
調査者は、例えば図3に示すような携行用計測装置を持って対象範囲内を網羅するように歩行していき、対象範囲内の各地点で地面画像と物理量、あるいは移動速度を取得する。なお、地面画像と物理量、移動速度は、定期的、断続的、あるいは連続的に、かつ自動的に計測されるが、それぞれ計測するタイミングは異なるため、調査地点は必ずしも一致するわけではない。
【0040】
移動計測工程で取得された地面画像と物理量、あるいは移動速度は、計測されるたびに(つまりリアルタイムに)取得した時間と関連付けて記憶されていく。地面画像であれば図1(a)に示すPとTpが関連付けられて(セットとして)記憶され、また物理量であれば図1(b)に示すRとTrが関連付けられて記憶され、そして移動速度であれば図1(c)に示すVとTvが関連付けられて記憶されるわけである。
【0041】
移動計測工程で地面画像と物理量を取得できると、正射画像を作成(Step200)し、物理量を設定(Step300)する。正射画像作成工程(Step200)では、複数の地面画像間を合成して対象範囲の正射画像を作成する。具体的には、隣接する地面画像間に収められた特徴点を合わせて(マッチングして)合成していく、SfM(Structure from Motion)技術を用いて対象範囲の正射画像を作成する。そのため地面画像取得工程(Step111)では、図4(a)に示すように隣接する2枚の画像(以下、「隣接画像」という。)が適度に重複(ラップ)するように地面画像を取得する。
【0042】
物理量設定工程(Step300)では、取得した個々の地面画像に対して物理量を設定する。図5は、地面画像に物理量を設定する仕様を説明するモデル図である。この図に示すように、各地面画像には1つの物理量が設定される(対応付けられる)。このとき、地面画像Pに設定される物理量Rは、地面画像Pを取得した時間Tpに最も近い時間で取得された物理量Rが選出される。例えば図5で説明すると、地面画像Pを取得した時間Tpに最も近い物理量取得時間はTrであり、したがって地面画像Pに対して物理量Rが設定される。
【0043】
物理量の取得に対して地面画像を取得する時間間隔が短いと、取得する物理量よりも地面画像の数のほうが多くなる。この場合、図5に示すように1の物理量(R)を複数の地面画像(P,P,P)に設定してもよいし、その物理量を取得した時間に最も近い地面画像にのみ設定(→)してもよい。1の物理量を1の地面画像に設定するケースでは、物理量が設定されない地面画像に関しては他の地面画像に設定された物理量で補完(内挿)することができる。例えば図5の場合、物理量Rは地面画像Pにのみ設定されて、地面画像Pに設定される物理量は物理量Rと物理量Rに基づいて補完され、地面画像Pに設定される物理量は物理量Rと物理量Rに基づいて補完されるわけである。
【0044】
対象範囲の正射画像が作成され(Step200)、それぞれの地面画像に対して物理量が設定される(Step300)と、物理量分布図が作成される(Step400)。物理量分布図は、対象範囲の正射画像を基図とし、各地点における物理量の値を示した図である。対象範囲の正射画像を構成する各地面画像には物理量が設定されていることから、物理量分布図が作成できるわけである。なお物理量を示す平面位置は、対応する地面画像の画像中心点とするなど、あらかじめ定めた特定の点とすることができる。
【0045】
ところで、対象範囲の正射画像は、重複する隣接画像の特徴点を利用して合成していくことで作成すると説明した。歩行(移動)しながら、しかも隣接画像を重複させて画像を取得するためには、高速(例えば、30fps)で撮影できる画像取得手段(特にビデオカメラ)を使用することになる。つまり、歩行速度に対して高速(短時間間隔)で写真を取得することになり、その結果、大量の地面画像を取得し記憶することになるわけである。この場合、図4(b)に示すように隣接画像の大部分が重複することになるが、合成画像を作成するにはこれほど重複する必要はない。
【0046】
そこで、取得した全ての地面画像を使用するのではなく、適度に抽出(つまり、間引いた)画像のみを使用することが考えられる。例えば図6に示すように、定期的に抽出された地面画像のみを記憶し使用するとよい。この図では、使用する地面画像(以下、「使用地面画像」という。)を黒丸で表し、使用しない地面画像(以下、「不使用地面画像」という。)を白丸で表しており、6回取得するごとに使用地面画像を抽出して記憶する例を示している。使用地面画像を抽出(間引く)ことで、画像を記憶する領域を小さくすることができ、正射画像を作成する際の解析コストを削減できて好適となる。
【0047】
定期的に地面画像を削減できたとしても、調査者の歩行速度が極端に低下したり、あるいは停止したりすると、図4(b)に示すように過重複の隣接画像を取得することとなってしまう。そこで、移動計測工程として移動側を計測する(Step131)ことによって余分な速度地面画像を排除することもできる。図7は、移動速度に基づいて地面画像を使用地面画像又は不使用地面画像のいずれかに選別する仕様を説明するモデル図であり、図8は、その仕様を説明するフロー図である。以下、図7図8に基づいて詳しく説明する。
【0048】
図7に示すように、使用地面画像の取得間隔(抽出された画像の取得間隔)よりも短い期間で平均速度算出期間tを設定し、その間の平均速度Vaを求める。そして図8に示すように、その平均速度があらかじめ設定した閾値よりも小さいときは、次に取得される使用地面画像を「不使用地面画像」と位置付けなおし、破棄して記憶しない。一方、平均速度があらかじめ設定した閾値以上になるときは、次に取得される使用地面画像はそのまま記憶して正射画像作成用として使用する。これによって、調査者が過度に遅く歩行している場合、あるいは停止している場合は、余分な画像を記憶することがなく、正射画像を作成する際の解析コストも削減できて好適となる。
【0049】
また不使用地面画像の判定は、隣接する画像の重複の程度に基づいて行うこともできる。図9(a)はn番目に取得した地面画像の画像範囲P(n)と許容重複範囲L(n)を示すモデル図であり、図9(b)は許容重複範囲L(n)と他の地面画像の画像範囲P(n+1)、P(n+2)を比較したモデル図である。なお、n番目の地面画像における画像範囲や許容重複範囲(あるいは後述する中心点)を指す場合は、画像範囲P(n)、許容重複範囲L(n)などカッコ内にnを示すこととし、共通する地面画像の画像範囲や許容重複範囲を指す場合は、単に画像範囲P、許容重複範囲Lで示すこととする。
【0050】
画像範囲Pは、画像取得手段111で取得される範囲であり、例えばビデオカメラを使用する場合は撮像素子の大きさと画角、焦点距離、ビデオカメラと地表までの距離から決定することができる。あるいは、あらかじめ実測することで画像取得手段111の画像範囲Pを定めておくこともできる。また許容重複範囲Lは、正射画像合成に必要な重複範囲となることを判断するための基準範囲であり、すなわち隣接画像の中心点がこの許容重複範囲Lにある場合は正射画像合成を作成するために十分な重複程度であると判断できる。なお図9(a)では、画像範囲Pの中心点Pを基準とした円を許容重複範囲Lとしているが、これに限らず画像範囲Pの相似形(例えば長方形)とするなど、任意の形状で許容重複範囲Lを設定することができる。
【0051】
以下、隣接画像の重複程度によって使用地面画像又は不使用地面画像を判定する仕様について、図9(b)を参照しながら説明する。まず、画像範囲P(n)を取得した位置から、画像範囲P(n+1)を取得した位置までの距離(以下、「移動距離L」という。)を取得する。このとき、移動しながら距離を測定することができる手段(装置)を利用するとよい。例えば、加速度を測る加速度センサや、加速度センサに角度を測るジャイロを組み合わせて得られる自律航法システム、車輪(タイヤ)の回転から距離を計測するDMIといったものを利用することで、移動距離Lを取得することができる。あるいは、GNSS測位によって2点間の距離を求め、これを移動距離として取得してもよい。なお、移動距離Lの測定は関連する画像範囲の重複の度合いを把握できる程度の時間または移動距離の範囲で相応の精度が得られるものであればよく、本願発明で達成しようとする測位の精度に比べ大きく下回るものであっても構わない。そして移動距離Lが得られると、画像範囲P(n)の中心点P(n)をから移動距離Lだけ動いた中心点P(n+1)を算出し、この中心点P(n+1)が許容重複範囲L(n)にある(つまり、移動距離Lがその半径を下回る)場合は、重複が充足していると判断し、そうでない(つまり、移動距離Lがその半径以上になる)場合は重複が不足していると判断する。
【0052】
さら過重複した地面画像を間引くため、画像範囲PA(n)の後の地面画像が連続して充足判断される場合は、重複不足とされた地面画像の1つ手前の地面画像(つまり、連続して重複充足と判断された地面画像のうち最後の判断に係る地面画像)のみを使用地面画像として選定し、他の充足判断された地面画像は不使用地面画像として破棄する。例えば図9(b)に示すn+k番目の画像範囲PA(n+k)の中心点PO(n+k)は画像範囲PA(n)内にあり、その次の画像範囲PA(n+k+1)の中心点PO(n+k+1)は画像範囲PA(n)の外にあることから、この場合はn+k番目の地面画像が使用地面画像として選定される。なおこのケースで、n番目~n+k番目の間にある地面画像が十分な重複を得ていたとしても、これらの地面画像は間引かれて不使用地面画像とされる。
【0053】
3.物理量分布図作成装置
続いて、本願発明の物理量分布図作成装置について図10を参照しながら説明する。なお、本願発明の物理量分布図作成装置は、本願発明の物理量分布図の作成方法を行う際に利用することができるものであり、したがって「2.物理量分布図の作成方法」で説明した内容と重複する説明はここでは避け、受信機の物理量分布図作成装置に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.物理量分布図の作成方法」で説明したものと同様である。もちろんあらかじめ定義した用語は、ここでの説明でも、「2.物理量分布図の作成方法」でも適用される。
【0054】
図10は、本願発明の物理量分布図作成装置100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように物理量分布図作成装置100は、画像取得手段111と計測測手段121、正射画像作成手段150、物理量設定手段160、分布図作成手段170を備えている。その他、画像抽出手段112や、物理量記憶手段122、速度計測手段131、移動速度記憶手段132、画像選別手段113、画像記憶手段114、測位手段140、出力手段180を備えたものとすることもできる。なお、この図に示す破線内で囲まれた手段をまとめて既述した携行用計測装置とすることができる。
【0055】
計測手段121で取得された物理量は物理量記憶手段122に記憶され、速度計測手段131で取得された移動速度は移動速度記憶手段132に記憶される。また画像取得手段111で取得された地面画像は、図6に示すように画像抽出手段112で抽出された使用地面画像のみが画像記憶手段114に記憶される。あるいは、画像抽出手段112で抽出された使用地面画像のうち、画像選別手段113によって選別した使用地面画像のみを画像記憶手段114で記憶することもできる。この画像選別手段113は、図7図8に示すように移動速度に基づいて(閾値と照らし合わせることで)、選別された使用地面画像をさらに使用地面画像あるいは不使用地面画像に選別する手段である。測位手段140は、GNSS測位や屋内測位など平面位置座標を測位することができる手段である。
【0056】
正射画像作成手段150は、画像記憶手段114で記憶された使用地面画像を読みだして対象範囲の正射画像を作成手段であり、物理量設定手段160は、物理量記憶手段122から物理量を読み出すとともに使用地面画像を読みだして物理量の設定を行う(図5)手段である。そして分布図作成手段170が、対象範囲の正射画像と物理量が設定された各使用地面画像に基づいて物理量分布画像を作成し、ディスプレイやプリンタ等の出力手段180でこの物理量分布画像を出力する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明の物理量分布図の作成方法、及び物理量分布図作成装置は、住宅や学校のほか、農地や果樹園、森林といった屋外のほか、建物内や施設内など屋内における各種物理量の分布図作成に利用できる。高い放射線量を示す箇所を確実に抽出できることを考えれば、本願発明は、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献が期待できる発明である。
【符号の説明】
【0058】
100 本願発明の物理量分布図作成装置
111 画像取得手段
112 画像抽出手段
113 画像選別手段
114 画像記憶手段
121 計測手段
122 物理量記憶手段
131 速度計測手段
132 移動速度記憶手段
140 測位手段
150 正射画像作成手段
160 物理量設定手段
170 分布図作成手段
180 出力手段
図1
図2
図3
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図6
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図8
図9
図10