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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】水素化プロセスのための金属粉末状触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20220705BHJP
   B01J 23/84 20060101ALI20220705BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20220705BHJP
   C07C 29/17 20060101ALI20220705BHJP
   C07C 33/03 20060101ALI20220705BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220705BHJP
【FI】
B01J23/89 Z
B01J23/84 Z
B01J32/00
C07C29/17
C07C33/03
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019554920
(86)(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018061067
(87)【国際公開番号】W WO2018202638
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】17168888.0
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ゴイ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】メドロック, ジョナサン, アラン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513455(JP,A)
【文献】国際公開第2015/044410(WO,A1)
【文献】特表2015-521096(JP,A)
【文献】特開平05-184926(JP,A)
【文献】特表2006-526499(JP,A)
【文献】特開2002-282691(JP,A)
【文献】BENSALEM, A. et al.,Reaction Kinetics and Catalysis Letters,Vol.60,pp.71-77,<DOI:10.1007/BF02477692>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 29/17
C07C 33/03
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-炭素三重結合を含む有機出発物質の水素による選択的接触水素化における、金属合金担体を含む粉末状触媒系の使用であって、前記金属合金担体は、
(i)前記金属合金担体の総重量に基づいて55重量%(wt%)~70wt%のCoと、
(ii)前記金属合金担体の総重量に基づいて20wt%~35wt%のCrと、
(iii)前記金属合金担体の総重量に基づいてwt%~10wt%のMoと、
を含み、前記金属合金担体は、金属酸化物層で被覆されPdで含浸され、前記金属酸化物層はCeO とZnOとを含み、CeO :ZnOのモル比は2:1~1:2であることを特徴とする金属合金担体を含む粉末状触媒系の使用。
【請求項2】
炭素-炭素三重結合を含む前記有機出発物質は、式(I)
【化1】

(式中、
は、直鎖型又は分岐型C~C35アルキル或いは直鎖型又は分岐型C~C35アルケニル部位であり、C鎖は置換されることができ、
は直鎖型又は分岐型C~Cアルキルであり、C鎖は置換されることができ、
はH又は-C(CO)C~Cアルキルである)の化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
炭素-炭素三重結合を含む前記有機出発物質は、以下の式
【化2】

から選ばれる1つの化合物である、請求項1又は請求項2に記載の使用。
【請求項4】
水素がHガスの形態で使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記金属合金担体は、Cu、Fe、Ni、Mn、Si、Ti、Al、及びNbからなる群から選択される少なくとも1つの更なる金属を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記金属合金担体は炭素を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
炭素-炭素三重結合を含む有機出発物質の水素による選択的接触水素化用の、金属合金担体を含む粉末状触媒系であって、前記金属合金担体は、
(i)前記金属合金担体の総重量に基づいて55重量%(wt%)~70wt%のCoと、
(ii)前記金属合金担体の総重量に基づいて20wt%~35wt%のCrと、
(iii)前記金属合金担体の総重量に基づいてwt%~10wt%のMoと、
を含み、前記金属合金担体は、金属酸化物層で被覆されPdで含浸され、前記金属酸化物層はCeO とZnOとを含み、CeO :ZnOのモル比は2:1~1:2であることを特徴とする、金属合金担体を含む粉末状触媒系。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新しい金属粉末触媒系(触媒)、水素化プロセスにおけるその製造及びその使用に関する。
【0002】
粉末状触媒はよく知られており、化学反応に使用される。このような触媒の重要な種類は、例えばリンドラー触媒である。
【0003】
リンドラー触媒は、又様々な形態の鉛で処理される炭酸カルシウム担体に堆積したパラジウムからなる不均一触媒である。
【0004】
このような触媒は重要であることから、常に改善が必要である。
【0005】
本発明の目的は、改善された特性を有する粉末状触媒を見出すことである。
【0006】
本発明による粉末状触媒は、炭酸カルシウム担体の代わりに、担体材料として金属(又は金属合金)を有する。
【0007】
この金属合金は、パラジウム(Pd)が堆積された金属酸化物層で被覆されている。
【0008】
更に、本発明による新しい触媒は鉛(Pb)を含まない。これは、この特許出願の一部である全ての粉末状触媒系に適用される。
【0009】
従って、本発明は、
(i)金属合金担体の総重量に基づいて55重量%(wt%)~80wt%のCoと、
(ii)金属合金担体の総重量に基づいて20wt%~40wt%のCrと、
(iii)金属合金担体の総重量に基づいて2wt%~10wt%のMoと、
を含む金属合金担体を含む粉末状触媒系(I)に関し、この場合に、前記金属合金担体は、金属酸化物層で被覆されPdナノ粒子で含浸され、金属酸化物層はCeOを含むことを特徴とする。
【0010】
全てのパーセントが常に100になることは明らかである。
【0011】
従って、本発明は、
(i)金属合金担体の総重量に基づいて55重量%(wt%)~80wt%のCoと、
(ii)金属合金担体の総重量に基づいて20wt%~40wt%のCrと、
(iii)金属合金担体の総重量に基づいて2wt%~10wt%のMoと、
からなる金属合金担体からなる粉末状触媒系(I’)に関し、この場合に、前記金属合金担体は、金属酸化物層で被覆されPdナノ粒子で含浸され、金属酸化物層は、CeOを含むことを特徴する。
【0012】
触媒系は粉末の形態である。
【0013】
この新しい触媒は多くの利点を有する:
〇触媒は反応後のリサイクル(及び除去)が容易である。これは、例えば、ろ過によって行うことができる。
〇触媒は複数回使用することができる(再利用可能)。
〇触媒は簡単に製造できる。
〇触媒の取り扱いは簡単である。
〇水素化は溶媒の有無にかかわらず実行できる。
〇触媒は鉛を含まない。
〇触媒は水素化反応で高い選択性及び活性を示す。
【0014】
担体として使用される金属合金は、コバルト/クロム/モリブデン合金として知られている。このような合金は、商業的に、例えば、EOS GmbH Germany(EOS CobaltChrome MP1(登録商標))、Attenborough Dental UK(Megallium(登録商標))及びInternational Nickelから入手可能である。
【0015】
このような合金は、通常、歯科の分野で使用される。特に、これらは歯科補綴物の製造に使用される。
【0016】
触媒系は粉末の形態である。
【0017】
本発明で使用される適切な金属合金は、コバルト/クロム/モリブデン合金である。このような合金は、例えば、EOS GmbH Germany(EOS CobaltChrome MP1(登録商標))、Attenborough Dental UK(Megallium(登録商標))及びInternational Nickelから入手可能である。
【0018】
好ましい金属合金は、
(i)金属合金の総重量に基づいて55wt%~70wt%のCoと、
(ii)金属合金の総重量に基づいて20wt%~35wt%のCrと、
(iii)金属合金の総重量に基づいて4wt%~10wt%のMoと、
を含む。
【0019】
更に好ましい金属合金は、
(i)金属合金の総重量に基づいて55wt%~70wt%のCoと、
(ii)金属合金の総重量に基づいて20wt%~35wt%のCrと、
(iii)金属合金の総重量に基づいて4wt%~10wt%のMoと、
からなる。
【0020】
従って、本発明は、粉末状触媒系(I)である粉末状触媒系(II)に関し、この場合は、金属合金担体は、
(i)金属合金担体の総重量に基づいて55wt%~70wt%のCoと、
(ii)金属合金担体の総重量に基づいて20wt%~35wt%のCrと、
(iii)金属合金担体の総重量に基づいて4wt%~10wt%のMoと、
を含む。
【0021】
金属合金担体は、例えば、Cu、Fe、Ni、Mn、Si、Ti、Al、及び/又はNbなどの更なる金属を含むことができる。
【0022】
従って、本発明は、粉末状触媒系(I)である粉末状触媒系(ΙI’)に関し、この場合に、金属合金担体は、
(i)金属合金担体の総重量に基づいて55wt%~70wt%のCoと、
(ii)金属合金担体の総重量に基づいて20wt%~35wt%のCrと、
(iii)金属合金担体の総重量に基づいて4wt%~10wt%のMoと、
からなる。
【0023】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(I)又は(II)である粉末状触媒系(III)に関し、この場合に、合金は、例えば、Cu、Fe、Ni、Mn、Si、Ti、Al及び/又はNbなどの更なる金属を含む。
【0024】
更に、金属合金担体は同様に炭素を含むことができる。
【0025】
従って、本発明は又、触媒系(I)、(II)又は(III)である粉末状触媒系(IV)に関し、この場合に、金属合金担体は、Cu、Fe、Ni、Mn、Si、Ti、Al、及びNbからなる群から選択される少なくとも1つの更なる金属を含む。
【0026】
従って、本発明は又、触媒系(I)、(II)、(III)又は(IV)である粉末状触媒系(V)に関し、この場合に、金属合金担体は炭素を含む。
【0027】
本発明の実施形態の金属酸化物層(CeOを含む)は、金属合金担体を被覆し、非酸性(好ましくは塩基性又は両性)である。又、適切な非酸性金属酸化物層は、金属がZn、Cr、Mn、Mg、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの更なる金属酸化物を含むことができる。
【0028】
金属合金担体は、好ましくは、金属酸化物層CeO(厚さ0.5~3.5μm)の薄層、及び任意選択的に少なくとも1つの更なる金属酸化物で被覆され、この場合に、金属はZn、Cr、Mn、Mg、Cu及びAlからなる群から選択される。
【0029】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(I)、(I’)(II)、(II’)、(III)、(IV)又は(V)である粉末状触媒系(VI)に関し、金属合金担体は、CeOの薄層と、任意選択的に少なくとも1つの更なる金属(Cr、Mn、Mg、Cu、及び/又はAl)酸化物で被覆される。
【0030】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(VI)である粉末状触媒系(VI’)に関し、この場合に、金属酸化物の層は、0.5~3.5μmの厚さを有する。
【0031】
金属合金担体の被覆は、一般的に知られているプロセス、例えば浸漬被覆などによって行われる。
【0032】
通常、本発明の触媒系(触媒)は、触媒の総重量に基づいて0.1wt%~50wt%、好ましくは0.1wt%~30wt%、より好ましくは0.5wt%~5wt%、最も好ましくは0.5wt%~2wt%のCeOを含む。
【0033】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(I)、(I’)(II)、(II’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)又は(VI’)である粉末状触媒系(VII)に関し、この場合に、触媒は、触媒系の総重量に基づいて0.1wt%~50wt%(好ましくは0.1wt%~30wt%、より好ましくは0.5wt%~10wt%、最も好ましくは0.5wt%~2wt%)のCeOを含む。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、非酸性金属酸化物層は、CeOと、少なくとも1つの更なる金属酸化物とを含み、この場合に、金属は、Zn、Cr、Mn、Mg、Cu及びAlからなる群から選択される。
【0035】
本発明のより好ましい実施形態では、非酸性金属酸化物層は、CeOと、Alとを含む。
【0036】
又、本発明のより好ましい実施形態では、非酸性金属酸化物層は、CeOと、ZnOとを含む。
【0037】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(I)、(I’)(II)、(II’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VI’)又は(VII)である粉末状触媒系(VIII)に関し、この場合に、非酸性金属酸化物層は、CeOと、Alとを含む。
【0038】
従って、本発明は又、粉末状触媒系I)、(I’)(II)、(II’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VI’)又は(VII)である粉末状触媒系(IX)に関し、この場合に、非酸性金属酸化物層は、CeOと、ZnOとを含む。
【0039】
CeOとAlの混合物が使用される場合、CeO:Alの比は2:1~1:2(好ましくは1:1)であることが好ましい。
【0040】
CeOとZnOの混合物が使用される場合、CeO:ZnOの比は2:1~1:2(好ましくは1:1)であることが好ましい。
【0041】
金属酸化物の混合物を使用する場合、金属酸化物の総含有量は、触媒系の総重量に基づいて50wt%を超えることはない。
【0042】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(VIII)である粉末状触媒系(VIII’)に関し、この場合に、CeO:Alの比は2:1~1:2(好ましくは1:1)である。
【0043】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(VIII)又は(VIII’)である粉末状触媒系(VIII’’)に関し、この場合に、触媒は、触媒系の総重量に基づいて0.1wt%~50wt%(好ましくは0.1wt%~30wt%、より好ましくは0.5wt%~10wt%、最も好ましくは0.5wt%~2wt%)の金属酸化物を含む。
【0044】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(IX)である粉末状触媒系(IX’)に関し、この場合に、CeO:ZnOの比は2:1~1:2(好ましくは1:1)である。
【0045】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(IX)又は(IX’)である粉末状触媒系(IX’’)に関し、この場合に、触媒は、触媒系の総重量に基づいて0.1wt%~50wt%(好ましくは0.1wt%~30wt%、より好ましくは0.5wt%~10wt%、最も好ましくは0.5wt%~2wt%)の金属酸化物を含む。
【0046】
次いで、被覆された金属合金は、Pdナノ粒子によって含浸される。ナノ粒子は、一般的に知られている方法、例えば、PdClを前駆体として使用して合成され、次いで水素によって還元される。
【0047】
又、音波処理工程を含むプロセスによって金属合金にPdナノ粒子を含浸させるプロセスを使用することができる。音波処理は、試料の粒子を攪拌するために音響エネルギーを適用する動作である。通常、超音波周波数(>20kHz)が使用され、プロセスは超音波処理又は超-音波処理とも知られている。
【0048】
通常、超音波浴又は超音波プローブを使用して適用される。
【0049】
このようなプロセスは、通常(好ましくは)以下の工程を含む:
(a)ポリエチレングリコールを任意選択的に加えるPd塩の水溶液を調製する工程、
(b)工程(a)の溶液を加熱し、溶液を音波処理にかける工程、
(c)還元剤、好ましくはギ酸塩溶液をPd溶液に加える工程、
(d)金属酸化物粉末を加える工程、
(e)工程(d)で得られた懸濁液をろ過し乾燥する工程。
【0050】
以下では、音波処理工程が関与するプロセスの工程について、以下で更に詳しく説明する。
【0051】
[工程(a)]
Pd塩を水(又は水性溶媒、これは水が少なくとも1つの他の溶媒と混合されることを意味する)に溶解する。任意の一般的に知られ使用されているPd塩を使用できる。適切な塩は、PdCl2又はNa2PdCl4である。1つのPd塩並びに2つ以上のPd塩の混合物であり得る。更に、少なくとも1つの界面活性剤を溶液に加えることが有利である。適切なものは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)又はグルコサミドである。
【0052】
[工程(b)]
工程の溶液は通常、高温まで加熱される。通常、溶媒(又は使用される溶媒混合物)の沸点ほど高い温度までではない。
通常、30~80℃の温度まで加熱される。
音波処理は、通常、30~50kHzの周波数で実行される。
音波処理工程の期間は、通常、少なくとも10分で、20を超えることが好ましい(適切で好ましい範囲は30~120分)。音波処理工程の期間の最大長さは重要ではない。
音波処理工程は、超音波浴又は浸漬プローブを使用して実行できる。又は更には、両方の方法の組み合わせが可能である。
【0053】
[工程(c)]
工程(b)の溶液に還元剤を加える。通常、これはギ酸ナトリウム溶液である。しかし又、他のギ酸塩(又はギ酸塩の混合物)を使用できる。任意選択的に(代わりに又は更に)又、H2ガス、L-アスコルビン酸、及び/又はギ酸を加えることができる。
【0054】
[工程(d)]
工程(c)の溶液に、金属酸化物粉末(又は金属酸化物粉末の混合物)が加えられる。通常、反応混合物は攪拌される。
【0055】
[工程(e)]
最後に、工程(d)の懸濁液をろ過し、通常、得られたドープされた金属酸化物粉末を洗浄し乾燥させる。
【0056】
通常、Pdナノ粒子は、非酸性金属酸化物層にあり、0.5~20nm、好ましくは2~15nm、より好ましくは5~12nmの平均粒径を有する。(平均粒径は、電子顕微鏡法で測定できる)。
【0057】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(I)、(I’)(II)、(II’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XI’)、(XI’’)、(XII)、(ΧΙΙ’)又は(XII’’)である粉末状触媒系(X)に関し、この場合に、Pdナノ粒子は、0.5~20nm(好ましくは2~15nm、より好ましくは5~12nm)の平均粒径を有する。
【0058】
本発明による触媒は、触媒の総重量に基づいて0.001wt%~5wt%、好ましくは0.01wt%~2wt%、より好ましくは0.05wt%~1wt%のPdナノ粒子を含む。
【0059】
従って、本発明は又、粉末状触媒系(I)、(I’)(II)、(II’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XI’)、(XII)、(XII’)又は(XIII)である粉末状触媒系(XIV)に関し、この場合に、触媒は、触媒の総重量に基づいて0.001wt%~5wt%(好ましくは0.01wt%~2wt%、より好ましくは0.05wt%~1wt%)のPdナノ粒子を含む。
【0060】
通常、触媒は使用前に活性化される。活性化は、H下での熱活性化などのよく知られたプロセスを使用して行われる。
【0061】
本発明の触媒は、有機出発物質、特に炭素-炭素三重結合を含む有機出発物質、更に特にアルキノール化合物の選択的接触水素化に使用される。
【0062】
従って、本発明は又、有機出発物質、特に炭素-炭素三重結合を含む有機出発物質、更に特にアルキノール化合物の選択的接触水素化における、粉末状触媒系(触媒)(I)、(Ι’)(II)、(ΙΙ’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(VIII’)、(VIII’’)、(IX)、(ΙΧ’)又は(IX’’)の使用に関する。
【0063】
好ましくは、本発明は、式(I)
【化1】

(式中、
は、直鎖型又は分岐型C~C35アルキル或いは直鎖型又は分岐型C~C35アルケニル部位であり、C鎖は置換されることができ、
は、直鎖型又は分岐型C~Cアルキルであり、C鎖は置換されることができ、
はH又は-C(CO)C~Cアルキルである)の化合物を、触媒(I)、(I’)(II)、(II’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(VIII’)、(VIII’’)、(IX)、(IX’)又は(IX’’)の存在下で水素と反応させるプロセスに関する。
【0064】
従って、本発明は、式(I)
【化2】

(式中、
は、直鎖型又は分岐型C~C35アルキル或いは直鎖型又は分岐型C~C35アルケニル部位であり、C鎖は置換されることができ、
は直鎖型又は分岐型C~Cアルキルであり、C鎖は置換されることができ、
はH又は-C(CO)C~Cアルキルである)の化合物を、触媒(I)、(Ι’)(II)、(ΙΙ’)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VI’)、(VII)、(VIII)、(VIII’)、(VIII’’)、(IX)、(ΙΧ’)又は(IX’’)の存在下で水素と反応させるプロセス(P)に関する。
【0065】
水素は通常、Hガスの形態で使用される。
【0066】
従って、本発明は、プロセス(P1)、プロセス(P)に関し、この場合に、水素は通常Hガスの形態で使用される。
【0067】
式(I)の好ましい化合物は以下である:
【化3】
【0068】
従って、本発明は、プロセス(P2)、プロセス(P)又は(P1)に関し、この場合に、以下の化合物
【化4】

が選択的に水素化される。
【0069】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つ。特に明記しない限り、全てのパーセントは重量に関連し、温度は摂氏で示される。
【0070】
[実施例]
[実施例1:金属粉末触媒の調製]
EOS CobaltChrome MP1を、空気中450℃で3時間加熱した。プライマー溶液の調製については、Ce(NO・6HO(508ミリモル)と700mLの水をビーカーに加えた。塩が完全に溶解するまで混合物を撹拌した。溶液を90℃に加熱し、ZnO(508ミリモル)をゆっくりと溶液に加えた。撹拌を90℃で維持し、全てのZnOが完全に溶解するまで(最終CHNO3=1M)65%の硝酸を滴下した。その後、溶液を室温まで冷却し、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。ZnO/CeOの堆積は、熱処理したMP1粉末(10.0g)を25mLの前駆体溶液に加えることで行った。この混合物を室温で15分間撹拌した。その後、懸濁液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、40℃で2時間真空乾燥した後、450℃で1時間焼成した。所望の数のプライマー層が堆積されるまで、このプロセスを繰り返した。
【0071】
テトラクロロパラジウム酸ナトリウム(II)(0.48ミリモル)を133mLのミリポア水に溶解し、PEG-MS40(3.2ミリモル)を加えた。溶液を60℃に加熱し、この温度で音波処理を開始した。ギ酸ナトリウムの新しい調製溶液(16mM、67mL)を加えた。溶液をこの温度で更に60分間音波処理し、次いで室温まで冷却した後、被覆されたMP1(10.0g)を加えた。懸濁液を室温で60分間撹拌した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した。残留物を水で洗浄し、40℃で2時間真空乾燥した。触媒は、H-Ar流(1:9、総流量-450ml/分)下で4時間300℃(温度ランプ-10°/分)での温度処理を受けた。
【0072】
[水素化の実施例]
[アルキンからアルケンへの選択的半水素化]
40.0gの2-メチル-3-ブチン-2-オール(MBY)及び所望の量の金属粉末触媒を125mLのオートクレーブ反応器に加えた。水素化反応中の等温条件(338K)は、加熱/冷却ジャケットによって維持された。反応器にはガス巻込み攪拌機が装備されていた。純水素を窒素雰囲気下で必要な値で供給した。窒素でパージした後、反応器を水素でパージし、所望の温度に加熱した。実験中、外部リザーバーから水素を供給することにより、反応器内の圧力(3.0バール)を維持した。反応混合物を1000rpmで撹拌した。液体試料(200μL)を、MBYの最小変換率95%から開始して定期的に反応器から回収し、ガスクロマトグラフィー(HP 6890シリーズ、GCシステム)で分析した。選択性は、全ての反応生成物と比較して、所望の半水素化生成物(2-メチル-3-ブテン-2-オール(MBE))の量として報告される。
【0073】
[表1a及び1b:様々な酸化物層の試験結果、Pd-源、Pd-量、及びPd-還元]
上記の実施例で説明したプロセスに従って調製された触媒を、調製手順で述べたように熱活性化した。
aの反応条件:500mgの触媒、40.0MBY、1000rpm、3.0バールH、65℃。
bの反応条件:158mgの触媒、30.0MBY、1000rpm、3.0バールH、65℃。
【0074】
実験1は、従来技術から知られている酸化物層を使用した比較例である。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
新しい金属酸化物粉末は、改善された活性及び改善された選択性を示すことがわかる。
条件:500mgの触媒、40.0MBY、1000rpm、3.0バールH、65℃。
条件:158mgの触媒、30.0MBY、1000rpm、3.0バールH、65℃。
【0078】
本発明による触媒は、選択的水素化プロセスで使用される場合、改善された特性を示す。