(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】接触端子、検査治具、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20220705BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220705BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2017131402
(22)【出願日】2017-07-04
【審査請求日】2020-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲宏
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-239349(JP,A)
【文献】特開2012-122905(JP,A)
【文献】特開2003-248018(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064733(WO,A1)
【文献】特開2008-256646(JP,A)
【文献】特表2004-503783(JP,A)
【文献】特開2016-080657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0122978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体と、
導電性を有する素材によりそれぞれ棒状に形成された第一中心導体及び第二中心導体とを備え、
前記第一中心導体は、
前記筒状体の内径よりも小さな外径を有し、前記筒状体の一端部側に挿通される第一棒状本体と、
当該第一棒状本体の基端部に設けられた当該第一棒状本体よりも大径の第一被抱持部と、
前記第一棒状本体の先端部に設けられた当該第一棒状本体よりも大径の第一膨出部とを有し、
前記第二中心導体は、
前記筒状体の内径よりも小さな外径を有し、前記筒状体の他端部側に挿通される第二棒状本体と、
当該第二棒状本体の基端部に設けられた当該第二棒状本体よりも大径の第二被抱持部と、
前記第二棒状本体の先端部に設けられた当該第二棒状本体よりも大径の第二膨出部とを有し、
前記筒状体は、
前記第一被抱持部を抱持する第一抱持部と、
前記第二被抱持部を抱持する第二抱持部と、
前記第一抱持部に連設された螺旋状体からなる第一ばね部と、
前記第二抱持部に連設された螺旋状体からなる第二ばね部と、
当該第一ばね部及び第二ばね部を互いに連結する筒状の連結部とを有し、
前記第一中心導体及び前記第二中心導体は、前記第一膨出部及び前記第二膨出部の先端部がそれぞれ前記連結部内に導入されるとともに、前記第一膨出部の先端面と前記第二膨出部の先端面との間に間隙を隔てて相対向した状態に維持されるように設置され
、
前記第一抱持部及び第二抱持部の少なくとも一方には、前記筒状体の一部を周方向に所定幅離間するように分断するスリットが形成され
、
前記スリットは、前記螺旋状体を構成する螺旋溝の端部から前記筒状体の軸方向に延びるように形成されている接触端子。
【請求項2】
前記第一抱持部及び前記第二抱持部は、その内面が前記第一被抱持部及び前記第二被抱持部の周面にそれぞれ圧着されている請求項
1記載の接触端子。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の接触端子と、
前記接触端子を支持する支持部材とを備える検査治具。
【請求項4】
請求項
3記載の検査治具と、
前記接触端子を検査対象に設けられた被検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の検査に使用される接触端子、この接触端子を検査対象に接触させるための検査治具、及びその検査治具を備えた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中間位置にばね部が形成された筒状体(円筒部材)に円柱状の中心導体(棒状部材)が挿通された、検査装置用の接触端子、及びこの接触端子を用いた検査治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この接触端子は、筒状体から中心導体の端部を突出させた状態で、筒状体の先端付近に中心導体が溶着、又はカシメ加工される等により固着されている。筒状体の一端部が電極部に接触し、中心導体の他端部が検査対象に当接した状態となると、ばね部の弾性復元力に応じて、筒状体の一端部が電極部に付勢されるとともに、中心導体の他端部が検査対象に付勢されることにより、電極部及び検査対象に対する接触端子の接触状態が安定化されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の検査治具では、検査用電流が、電極部に接触した筒状体の一端部からばね部を通って、検査対象に当接した中心導体の他端部に通電されるため、前記ばね部に電流が通電されることに起因したインダクタンスやインピーダンスの増大を招いていた。
【0005】
本発明の目的は、インダクタンスやインピーダンスの増大を招くおそれを低減することができる接触端子、検査治具、及び検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接触端子は、導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体と、導電性を有する素材によりそれぞれ棒状に形成された第一中心導体及び第二中心導体とを備え、前記第一中心導体は、前記筒状体一端部側に挿通される第一棒状本体と、当該第一棒状本体の基端部に設けられた当該第一棒状本体よりも大径の第一被抱持部と、前記第一棒状本体の先端部に設けられた当該第一棒状本体よりも大径の第一膨出部とを有し、前記第二中心導体は、前記筒状体の他端部側に挿通される第二棒状本体と、当該第二棒状本体の基端部に設けられた当該第二棒状本体よりも大径の第二被抱持部と、前記第二棒状本体の先端部に設けられた当該第二棒状本体よりも大径の第二膨出部とを有し、前記筒状体は、前記第一被抱持部を抱持する第一抱持部と、前記第二被抱持部を抱持する第二抱持部と、前記第一抱持部に連設された螺旋状体からなる第一ばね部と、前記第二抱持部に連設された螺旋状体からなる第二ばね部と、当該第一ばね部及び第二ばね部を互いに連結する筒状の連結部とを有し、前記第一中心導体及び前記第二中心導体は、前記第一膨出部及び前記第二膨出部の先端部がそれぞれ前記連結部内に挿入されるとともに、前記第一膨出部の先端面と前記第二膨出部の先端面との間に間隙を隔てて相対向した状態に維持されるように設置されている。
【0007】
この構成によれば、接触端子を使用した基板等の検査時には、第一棒状本体及び第二棒状本体と筒状体の内周面との間に所定の隙間が確保されるとともに、第一膨出部及び第二膨出部が筒状体の連結部に接触する。このため、筒状体の第一ばね部及び第二ばね部に電流を流すことなく、連結部を介して第一中心導体と第二中心導体とを電気的に導通させることができる。その結果、接触端子のばね部でインダクタンスやインピーダンスが増大するおそれを低減することができる。
【0008】
しかも、筒状体に第一中心導体及び第二中心導体を組み付けた状態では、第一棒状本体及び第二棒状本体により筒状体の略全体を補強することができるため、接触端子の機械的強度を十分に確保できるという利点がある。さらに、第一膨出部の先端部と第二膨出部の先端部とが当接するのを防止して、第一膨出部及び第二膨出部の先端面同士が間隙を隔てて相対向した状態に維持されるように設置したため、第一ばね部及び第二ばね部の圧縮変形が途中で阻害されるおそれを低減することができる。
【0009】
また、前記第一抱持部及び前記第二抱持部は、その内面が前記第一被抱持部及び前記第二被抱持部の周面にそれぞれ圧着されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第一中心導体及び第二中心導体と内筒体とが導通を安定して抱持することができる。
【0011】
また、前記第一抱持部及び第二抱持部の少なくとも一方には、前記筒状体の一部を周方向に分断するスリットが形成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第一棒状本体及び第二棒状本体を筒状体内に挿入して組み付ける際に、スリットを拡開変位させることにより、筒状体の第一抱持部及び第二抱持部を弾性変形させて、これに第一被抱持部及び第二被抱持部を容易に圧入することができる。そして、第一抱持部及び第二抱持部を、その復元力に応じて第一被抱持部及び第二被抱持部の周面に圧着させることができるため、第一抱持部及び第二抱持部により第一被抱持部及び第二被抱持部をそれぞれ抱持して、筒状体に対する第一中心導体及び第二中心導体の組み付け状態を安定して維持できるという利点がある。
【0013】
また、前記スリットは、前記螺旋状体を構成する螺旋溝の端部から前記筒状体の軸方向に延びように形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、例えばレーザ加工機から筒状体の周面にレーザ光を照射して螺旋溝を形成する際に、これに連続して前記スリットを容易に形成できるという利点がある。
【0015】
また、本発明に係る検査治具は、上述の接触端子と、これを支持する支持部材とを備える。
【0016】
この構成によれば、半導体素子等からなる検査対象の検査に使用する検査治具を容易かつ適正に製造することができるとともに、検査対象の被検査点及び配線の電極等に対する接触端子の接触圧を適正値に設定することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る検査装置は、上述の検査治具と、前記接触端子を検査対象に設けられた被検査点に接触させることにより得られる電気信号に基づき、前記検査対象の検査を行う検査処理部とを備える。
【0018】
この構成によれば、検査対象の検査に使用する検査装置を容易かつ適正に製造することができるとともに、半導体素子等の被検査点及び配線の電極等に対する接触端子の接触圧を適正値に設定することができる。
【発明の効果】
【0019】
このような構成の接触端子、検査治具及び検査装置は、インダクタンスやインピーダンスの増大を招くおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る接触端子及び検査治具を備えた基板検査装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す検査装置に設けられた検査部の別の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1、
図2に示す検査治具の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図5】プローブを筒状体と接触端子とに分解した構成を示す正面図である。
【
図6】
図5に示す筒状体の端部に設けられた抱持部の具体的構成を示し、(a)は筒状体の端部を拡大した正面図、(b)は筒状体を(a)の下方から見た端面図、(c)は抱持部を展開した状態を示す正面図である。
【
図7】支持部材にベースプレートが取り付けられた状態を示す
図3相当図である。
【
図8】検査対象にプローブが圧接された検査状態を示す
図3相当図である。
【
図9】本発明に係る接触端子の通電状態を説明図である。
【
図10】本発明の比較例に係る接触端子の通電状態を説明図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係るプローブの一例を示す
図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第一実施形態)
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る接触端子及び検査治具を備えた基板検査装置1の構成を概略的に示す概念図である。基板検査装置1は検査装置の一例に相当している。
図1に示す基板検査装置1は、検査対象の一例である基板101に形成された回路パターンを検査するための装置である。
【0023】
基板101は、例えばプリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、半導体基板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板であってもよい。なお、検査対象は、基板に限らず、例えば半導体素子(IC:Integrated Circuit)等の電子部品であってもよく、その他にも電気的な検査を行う対象となるものであればよい。
【0024】
図1に示す基板検査装置1は、検査部4U,4Dと、基板固定装置6と、検査処理部8とを備えている。基板固定装置6は、検査対象の基板101を所定の位置に固定するように構成されている。検査部4U,4Dは、検査治具3U,3Dを備えている。検査部4U,4Dは、図略の駆動機構によって、検査治具3U,3Dを、互いに直交するX,Y,Zの三軸方向に移動可能に支持し、さらに検査治具3U,3Dを、Z軸を中心に回動可能に支持している。
【0025】
検査部4Uは、基板固定装置6に固定された基板101の上方に位置する。検査部4Dは、基板固定装置6に固定された基板101の下方に位置する。検査部4U,4Dには、基板101に形成された回路パターンを検査するための検査治具3U,3Dが着脱可能に配設されている。検査部4U,4Dは、それぞれ、検査治具3U,3Dと接続されるコネクタを備えている。以下、検査部4U,4Dを総称して検査部4と称する。
【0026】
検査治具3U,3Dは、それぞれ、複数のプローブ(接触端子)Prと、これらのプローブPrを支持する支持部材31と、ベースプレート321とを備えている。プローブPrは接触端子の一例に相当している。ベースプレート321には、各プローブPrの一端部と接触して導通する後述の電極が設けられている。検査部4U,4Dは、ベースプレート321に設けられた各電極を介して各プローブPrの後端を、検査処理部8と電気的に接続したり、その接続を切り替えたりする図略の接続回路を備えている。
【0027】
プローブPrは、全体として略棒状の形状を有し、その具体的な構成の詳細については後述する。支持部材31には、プローブPrを支持する複数の貫通孔が形成されている。各貫通孔は、検査対象となる基板101の配線パターン上に設定された被検査点の位置と対応するように配置されることにより、各プローブPrの一端部が基板101の被検査点に接触するように構成されている。例えば、複数のプローブPrは、格子の交点位置に対応するように配設されている。当該格子の桟に相当する方向が、互いに直交するX軸方向及びY軸方向と一致するように向けられている。被検査点は、例えば配線パターン、半田バンプ、接続端子等からなっている。
【0028】
検査治具3U,3Dは、プローブPrの配置が異なる点と、検査部4U,4Dへの取り付け方向が上下逆になる点を除き、互いに同様に構成されている。以下、検査治具3U,3Dを総称して検査治具3と称する。検査治具3は、検査対象となる基板101の種類に応じて取り替え可能に構成されている。
【0029】
検査処理部8は、例えば電源回路、電圧計、電流計、及びマイクロコンピュータ等を備えている。検査処理部8は、図略の駆動機構を制御して検査部4U,4Dを移動、位置決めし、基板101の各被検査点に、各プローブPrを接触させる。これにより、各被検査点と、検査処理部8とが電気的に接続される。
【0030】
検査処理部8は、上述の状態で検査治具3の各プローブPrを介して基板101の各被検査点に検査用の電流又は電圧を供給し、各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、例えば回路パターンの断線や短絡等の基板101の検査を実行する。あるいは、検査処理部8は、交流の電流又は電圧を各被検査点に供給することによって各プローブPrから得られた電圧信号又は電流信号に基づき、検査対象のインピーダンスを測定するものであってもよい。
【0031】
図2は、
図1に示す基板検査装置1に設けられた検査部4の別の一例を示す斜視図である。
図2に示す検査部4aは、いわゆるICソケット35に検査治具3が組み込まれて構成されている。検査部4aは、検査部4のような駆動機構を備えず、ICソケット35に取り付けられたICのピン、バンプ、あるいは電極等にプローブPrが接触する構成とされている。
図1に示す検査部4U,4Dの代わりに検査部4aを設けることで、検査対象を、例えば半導体素子(IC)とし、検査装置をIC検査装置として構成することができる。
【0032】
図3は、
図1に示す支持部材31及びベースプレート321を備えた検査治具3の構成の一例を示す模式図である。
図3に示す支持部材31は、例えば板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されることにより構成されている。
図3の上方側に位置する支持プレート31aが支持部材31の一端部側となり、
図3の下方側に位置する支持プレート31cが支持部材31の他端部側となるように配設されている。そして、支持プレート31a,31b,31cを貫通するように、複数の貫通孔Hが形成されている。
【0033】
支持プレート31a,31bには、所定径の開口孔からなる挿通孔部Haがそれぞれ形成されている。支持プレート31cには、挿通孔部Haよりも細径の狭隘部Hbからなる貫通孔が形成されている。また、上方側の支持プレート31aには、後述のベースプレート321と対向する面側(一端部側)に位置する部位、つまり支持部材31の一端部には、挿通孔部Haよりも孔径の小さい小径部Ha1が形成されている。そして、支持プレート31aの小径部Ha1及び挿通孔部Haと、支持プレート31bの挿通孔部Haと、支持プレート31cの狭隘部Hbとが連通されることにより、貫通孔Hが形成されている。
【0034】
なお、細径の狭隘部Hb及び小径部Ha1を省略し、貫通孔Hの全体が所定径を有する挿通孔部Haとされた構造としてもよい。さらに、支持部材31の支持プレート31a,31bを互いに積層した例に代え、支持プレート31aと支持プレート31bとを互いに離間させた状態で、例えば支柱等により連結した構成としてもよい。また、支持部材31は、板状の支持プレート31a,31b,31cが積層されて構成される例に限らず、例えば一体の部材に貫通孔Hが設けられた構成としてもよい。
【0035】
支持プレート31aの一端部側には、例えば絶縁性の樹脂材料により構成されたベースプレート321が取り付けられ、このベースプレート321により貫通孔Hの一端部側開口部、つまり小径部Ha1の一端部側面が閉塞されるようになっている(
図7参照)。ベースプレート321には、貫通孔Hの他端部側開口部に対向する位置において、ベースプレート321を貫通するように配線34が取り付けられている。支持プレート31aに対向するベースプレート321の他端部側面と、配線34の端面とが面一になるように設定されている。この配線34の端面が、電極34aとされている。
【0036】
支持部材31の各貫通孔Hに挿入されて取り付けられるプローブPrは、導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体Paと、導電性を有する素材により棒状に形成され第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcとを備えている。
【0037】
図4は、プローブの具体的構成を示す正面図であり、
図5は、プローブPrを、筒状体Paと、第一中心導体Pbと、第二中心導体Pcとに分解して示す説明図である。筒状体Paとしては、例えば約25~300μmの外径E2と、約10~250μmの内径E1とを有するニッケルあるいはニッケル合金のチューブを用いて形成することができる。
【0038】
例えば、筒状体Paの外径E2を約120μm、内径E1を約100μm、全長を約1700μmとすることができる。また、筒状体Paの内周には、金メッキ等のメッキ層を施し、かつ筒状体Paの外周を、必要に応じて絶縁被覆した構造としてもよい。
【0039】
筒状体Paの両端部には、後述するように第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1の基端部を抱持する第一抱持部Pd1及び第二抱持部Pd2が形成されている。また、第一抱持部Pd1及び第二抱持部Pd2の間には、筒状体Paの軸方向に伸縮する第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が所定長さに亘って形成されている。さらに、筒状体Paの長さ方向の中央部には、両第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を互いに連結する連結部Pfが設けられている。
【0040】
例えば、図示を省略したレーザ加工機から、筒状体Paの周壁にレーザ光を照射して、第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2を形成することにより、筒状体Paの周面に沿って延びる螺旋状体からなる第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が構成される。そして、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を変形させることにより、筒状体Paを、その軸方向に伸縮させ得るようになっている。
【0041】
なお、筒状体Paの周壁を例えばエッチングして第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2を形成することにより、螺旋状体からなる第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を設けてもよい。また、例えば電鋳により形成された螺旋状体からなる第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を設けた構造としてもよい。
【0042】
第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を互いに連結する連結部Pfは、筒状体Paに第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2の非形成部を設けることによって残存された筒状体Paの周壁部からなり、筒状体Paの中央部に、所定長さに亘って形成されている。
【0043】
第一抱持部Pd1は、
図5に示すように、第一螺旋溝Pg1の一端部(図中、第一螺旋溝Pg1の上端部)から筒状体Paの一端部(図中、筒状体Paの上端部)に向けて、筒状体Paの軸方向と略平行に延びる第一スリットPh1により、筒状体Paの一部が分断された周壁により構成されている。また、第二抱持部Pd2は、第二螺旋溝Pg2の他端部(図中、第二螺旋溝Pg2の下端部)から筒状体Paの他端部(図中、筒状体Paの下端部)に向けて、筒状体Paの軸方向と略平行に延びる第二スリットPh2により、筒状体Paの一部が分断された周壁により構成されている。
【0044】
第一抱持部Pd1及び第二抱持部Pd2は、筒状体Paの長さ方向の中間点を中心とした点対称形状を有している。このため、第二抱持部Pd2の具体的構造のみを以下に説明し、第一抱持部Pd1については、その具体的構造の説明を省略する。
【0045】
図6は、筒状体Paの下端部に設けられた第二抱持部Pd2の具体的構成を示し、
図6(a)は、筒状体Paの下端部を拡大した平面図であり、
図6(b)は、第二抱持部Pd2を
図6(a)の下方から見た端面図である。また、
図6(c)は、第二抱持部Pd2の展開した状態を示す正面図である。
【0046】
第二抱持部Pd2の展開形状は、
図6(c)に示すように、第二スリットPh2の一側辺に対応した先端面Pd21と、第二螺旋溝Pg2の一側辺に対応した傾斜面Pd22とを備えた台形状を有している。この台形状体を、
図6(b)に示すように、円弧状に湾曲させた構造とすることにより、一部に所定幅の分断部を有するC形止め輪状の第二抱持部Pd2が筒状体Paの周壁により構成されている。
【0047】
第一中心導体Pbは、
図4及び
図5に示すように、筒状体Paの一端部内に挿通される第一棒状本体Pb1と、その基端部に設けられた第一被抱持部Pb2と、この第一被抱持部Pb2に連設された鍔部Pb3と、この鍔部Pb3に連設された接続部Pb4と、第一棒状本体Pb1の先端部に設けられた第一膨出部Pb6とを備えている。
【0048】
第一棒状本体Pb1は、筒状体Paに対して容易に挿入し得るように、第一棒状本体Pb1の外径D1が筒状体Paの内径E1よりも小さく設定されている。例えば、筒状体Paの内径E1が100μmである場合、第一棒状本体Pb1の外径D1は92μmに形成されている。また、第一中心導体Pbを筒状体Paに組み付けた際に、先端部の第一膨出部Pb6が筒状体Paの連結部Pf内に導入された状態となるように、第一被抱持部Pb2、第一棒状本体Pb1及び第一膨出部Pb6の軸方向長さが形成されている。
【0049】
第一膨出部Pb6の外径D2は、第一棒状本体Pb1の外径D1よりも大きく形成されるとともに、筒状体Paの内径E1よりも小さく形成されている。また、第一膨出部Pb6の外径D2と筒状体Paの内径E1との差が微差に設定されることにより、後述の検査時に、筒状体Paの連結部Pfと第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6とが互いに摺動可能に接触して、電気的に導通するようになっている。例えば、第一棒状本体Pb1の外径D1が92μmで、筒状体Paの内径E1が100μmである場合、第一膨出部Pb6の外径D2は94μmに形成されている。
【0050】
第一被抱持部Pb2の外径D3は、筒状体Paの内径E1よりも僅かに大きく設定されている。例えば、筒状体Paの内径E1が100μmである場合、第一被抱持部Pb2の外径D3は103μmに形成されている。この結果、第一棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入して組み付ける際に、第一抱持部Pd1が第一被抱持部Pb2により拡開され、この第一被抱持部Pb2の周面に第一抱持部Pd1の内面が圧着された状態で、第一中心導体Pbが筒状体Paに組み付けられるようになっている。
【0051】
第一中心導体Pbの鍔部Pb3は、その外径D4が筒状体Paの内径E1よりも大きく、かつ第一被抱持部Pb2の外径D3よりも大きく設定されている。例えば、筒状体Paの内径E1が100μmで、第一被抱持部Pb2の外径D3が103μmある場合、鍔部Pb3の外径D4は、125μmに形成されている。これにより、第一棒状本体Pb1を筒状体Pa内に挿入して第一中心導体Pbを組み付ける際に、鍔部Pb3が筒状体Paの端部に当接して第一棒状本体Pb1の位置決めがなされる。
【0052】
また、
図3に示すように、支持部材31の挿通孔部Ha内にプローブPrの筒状体Paを挿入した状態で、支持部材31にプローブPrを支持させ得るように、第一中心導体Pbの鍔部Pb3は、その外径D4が挿通孔部Haの内径よりも小さく形成されている。さらに、鍔部Pb3の外径D4が、支持プレート31aに形成された小径部Ha1の内径よりも大きく設定されることにより、プローブPrを支持部材31に支持させた際に、第一中心導体Pbが支持部材31から抜け落ちることが防止されるようになっている。
【0053】
第一中心導体Pbの接続部Pb4は、その外径D5が、鍔部Pb3の外径D4よりもやや細く、かつ支持プレート31aに形成された小径部Ha1の内径よりも小さく設定されることより、小径部Ha1に挿通可能に構成されている。
【0054】
また、プローブPrを支持部材31に支持させた状態で、接続部Pb4の端部がベースプレート321の小径部Ha1から支持部材31の外方に突出した状態となるように、接続部Pb4の全長が、小径部Ha1の長さよりも大きく設定されている。さらに、接続部Pb4の先端部には、先窄まりのテーパ部Pb5が形成され、後述する基板101等の検査時に、ベースプレート321に設けられた電極34aにテーパ部Pb5の先端面が当接するようになっている。
【0055】
一方、第二中心導体Pcは、第一中心導体Pbの第一棒状本体Pb1、第一被抱持部Pb2と同様の形状及び外径を有する第二棒状本体Pc1、第二被抱持部Pc2を有している。第二棒状本体Pc1の基端部には、第二被抱持部Pc2よりも大きく、かつ第一中心導体Pbの鍔部Pb3よりもやや大きい外径、例えば130μm程度の外径D4’を有する鍔部Pc3が設けられている。
【0056】
そして、鍔部Pc3に連設された接続部Pc4の先端面が、後述する検査時に、当接するように構成されている。接続部Pc4は、その外径D6が、鍔部Pc3の外径D4’よりもやや細く、かつ支持プレート31cに形成された狭隘部Hbの内径よりも小さく形成されることより、狭隘部Hb内に挿入されるようになっている。
【0057】
また、プローブPrを支持部材31に支持させた状態で、接続部Pc4の端部が支持プレート31cの狭隘部Hbから支持部材31の外方に突出した状態となるように、接続部Pc4の全長が支持プレート31cの板厚よりも大きく設定されている。さらに、接続部Pc4の先端面は、略平坦に形成されている。
【0058】
第二中心導体Pcを筒状体Paに組み付けた際に、第二膨出部Pc6が筒状体Paの連結部Pf内に挿入された状態となるように、第二被抱持部Pc2、第二棒状本体Pc1及び第二膨出部Pc6の軸方向長さが形成されている。
【0059】
また、第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを筒状体Paに組み付けた状態で、
図4に示すように第一膨出部Pb6の先端面と,第二膨出部Pc6の先端面との間に、所定の間隙KGが形成されるように、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1等の全長がそれぞれ設定されている。
【0060】
さらに、後述する検査時に、第一中心導体Pbの接続部Pb4と、第二中心導体Pcの接続部Pc4とがそれぞれ支持部材31内に押し込まれた際(
図8参照)においても、第一膨出部Pb6の先端面と,第二膨出部Pc6の先端面とが所定間隔を隔てて相対向した状態に維持されるように、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1等の軸方向長さが設定されている。
【0061】
支持プレート31a,31bに形成された挿通孔部Ha,Ha内に挿入されて支持されるプローブPrの本体部長さ、つまり筒状体Paの全長と、第一中心導体Pbの鍔部Pb3の軸方向長さと、第二中心導体Pcの鍔部Pc3の軸方向長さとを加算した長さα(
図4参照)は、支持プレート31aに形成された挿通孔部Haの全長と、支持プレート31bに形成された挿通孔部Haの全長とを加算した値である挿通孔長さβ(
図3参照)と等しい値とすることが好ましい。
【0062】
すなわち、プローブPrの本体部長さαを、支持プレート31a,31bの挿通孔長さβよりも大きく形成した場合には、両者の相違寸法(α-β)に対応した長さだけ、筒状体Paの第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を圧縮変形させた状態で、支持部材31にプローブPrを取り付ける必要がある。この構成では、プローブPrのグラツキを防止して、支持プレート31a,31bの挿通孔部Ha,Ha内にプローブPr安定して保持させることができる利点がある反面、支持部材31に対するプローブPrの取り付け作業が煩雑になるという欠点がある。
【0063】
一方、プローブPrの本体部長さαを、支持プレート31a,31bの挿通孔長さβよりも小さく形成した場合には、筒状体Paの第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を圧縮変形させることなく、支持部材31にプローブPrを容易に取り付けることができるという利点がある。この反面、支持部材31にプローブPrを取り付けた状態では、プローブPrの本体部と、支持プレート31bの挿通孔部Haとの間に隙間が形成されることが避けられないため、プローブPrにグラツキが生じ易く、支持プレート31a,31bの挿通孔部Ha,Ha内にプローブPrを安定して保持させることが困難である。
【0064】
これに対し、プローブPrの本体部長さαと、支持プレート31a,31bの挿通孔長さβとが等しくなるように、両者の長さを設定した場合には、支持部材31に対するプローブPrの取り付け作業を容易化しつつ、支持部材31にプローブPrを取り付けた状態で、プローブPrにグラツキを生じるのを防止できるという利点がある。
【0065】
図7は、検査治具3の構成の一例を示す模式的な断面図であって、支持部材31の支持プレート31aにベースプレート321を取り付けた状態を示している。
【0066】
支持部材31にベースプレート321が取り付けられる前の状態では、
図3に示すように、第一中心導体Pbの接続部Pb4はその一端部が支持プレート31aから僅かに突出している。そして、
図7に示すように、支持プレート31aの一端部側(
図7の上方側)にベースプレート321が取り付けられると、第一中心導体Pbの一端部、すなわちテーパ部Pb5の上端面が、ベースプレート321の電極34aに接触して、支持部材31の他端部側に押圧される。
【0067】
この結果、筒状体Paの第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2が圧縮されて弾性変形することにより、その付勢力に抗して接続部Pb4及びテーパ部Pb5の突出部分が、支持部材31に押し込まれる。また、プローブPrの一端部、つまりテーパ部Pb5の上端面が、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2の付勢力に応じて電極34aに圧接されることにより、プローブPrの一端部と電極34aとが安定した導電接触状態に保持される。
【0068】
なお、接続部Pb4の上端部に、必ずしも先窄まりのテーパ部Pb5を形成する必要はなく、接続部Pb4の上端面を平坦面に形成してもよい。
【0069】
図8は、検査対象である基板101のバンプBPにプローブPrの他端部が圧接された検査状態を示す模式的な断面図である。
図9は、本発明に係る接触端子の通電状態を説明図であり、
図10は、本発明の比較例に係る接触端子の通電状態を説明図である。
【0070】
プローブPrを使用した基板101等の検査時に、支持部材31が基板101に対して位置決めされた状態で、検査治具3が基板101に圧接されると、プローブPrの他端部側に設けられた第二中心導体Pcの接続部Pc4が、基板101のバンプBPに接触して、支持部材31の一端部側に押圧される。
【0071】
この結果、筒状体Paの第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2がさらに圧縮されて弾性変形することにより、その付勢力に抗して、接続部Pc4の突出部分が支持部材31の一端部側に押し込まれる。そして、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2の付勢力に応じ、プローブPrの他端部側の面、つまり接続部Pc4の下端面が基板101のバンプBPに圧接された状態で、プローブPrの他端部と基板101の被検査点(バンプBP)とが安定した導電接触状態に保持される。
【0072】
このように、導電性を有する素材により筒状に形成された筒状体Paと、導電性を有する素材により棒状に形成された第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcとを備え、この第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcが、筒状体Paに挿通される第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1を有し、筒状体Paが、その周面に沿って形成された螺旋状体からなる第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2と、前記第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1の基端部を抱持する第一抱持部Pd1及び第二抱持部Pd2とを有した構成としたため、プローブPr(接触端子)においてインダクタンスやインピーダンスの増大を招くおそれを低減することができる。その結果、プローブPrを用いた検査治具、及び検査装置は、検査の精度を向上させることが容易となる。
【0073】
すなわち、第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcの先端部に、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1よりも大径の第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6が設けたため、プローブPrを使用した基板101の検査時等に、第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6が筒状体Paの連結部Pfに対して接触する確実性が向上する。これにより、筒状体Paの第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2に通電されるのを防止して、インダクタンスやインピーダンスが増大するおそれを低減することができる。
【0074】
例えば、
図10に示す参考例に係るプローブPrSのように、第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6を省略した構造とした場合、プローブPrSを使用した基板101の検査時等に、筒状体Paが変形して第一棒状本体Pb1の中間部分Qが第一ばね部Pe1に接触したり、第二棒状本体Pc1の中間部分Qが第二ばね部Pe2に接触したりするおそれがある。
【0075】
このため、第二中心導体PcSの接続部Pc4から通電された電流は、電流経路Gに示すように、第二棒状本体Pcから第二ばね部Pe2、連結部Pf、第一ばね部Pe1及び第一棒状本体Pb1を通り、第二中心導体PcSの接続部Pb4に通電されるおそれがある。このように第一ばね部Pe1や第二ばね部Pe2に電流が流れると、ばね部がコイルとして作用する結果プローブのインダクタンスが増大する。また、ばね部で電流経路が長くなることによって電気抵抗が増大し、すなわちインピーダンスの増大を招くおそれがある。
【0076】
これに対し、
図9に示すプローブPrのように第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1よりも大径の第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2と、第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6とを設けた場合には、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1と筒状体Paの内周面との間に所定の隙間が確保される。
【0077】
したがって、
図9の電流経路Fに示すように、第二中心導体Pcの接続部Pc4から通電された電流は、第二棒状本体Pc1、第二膨出部Pc6、連結部Pf、第一膨出部Pb6、及び第一棒状本体Pb1を経て略一直線で接続部Pb4へと通電され、
図10に示す電流経路Gのように第一棒状本体Pb1又は第二棒状本体Pc1から第一ばね部Pe2又は第二ばね部Pe2に通電される経路は生じにくい。
【0078】
また、第一中心導体Pbと、第二中心導体Pcとを別体に形成し、筒状体Paの両端部に設けられた第一抱持部Pd1及び第二抱持部Pd2により、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1よりも大径の第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2をそれぞれ抱持するように構成したため、単一の中心導体を筒状体Paに組み付けるようにした場合に比べ、中心導体を構成する第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1の全長をそれぞれ短く形成することにより、これらを筒状体Paの両端部に挿入して第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを組み付ける作業を容易化することができる。
【0079】
さらに、第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcは、第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6の先端部がそれぞれ筒状体Paの連結部Pf内に導入される構成としたため、筒状体Paに第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを組み付けた状態では、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1により筒状体Paの略全体を補強することができ、プローブPrの機械的強度を十分に確保することができる。
【0080】
しかも、プローブPrを使用した基板101等の検査時に、第一膨出部Pb6の先端部と第二膨出部Pc6の先端部とが当接するのを防止して、第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6の先端面同士が間隙を隔てて相対向した状態に維持されるように設置したため(
図8参照)、第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2の圧縮変形が途中で阻害される防止することができる。
【0081】
また、第一実施形態に示すように第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2の外径D3を筒状体Paの内径E1よりも僅かに大きく設定した場合には、第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2の周面に、第一抱持部Pd1及び第二抱持部Pd2を圧着させることにより、第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを安定して抱持することが可能である。
【0082】
なお、第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2の外径D3を筒状体Paの内径E1以下に設定し、第一抱持部Pd1及び,第二抱持部Pd2を、例えば溶着、あるいはカシメ加工等、他の接続手段によって第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2に接続することも考えられる。しかし、この場合には、煩雑な接続作業が必要であるため、上述第一実施形態のように、第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2の外径D3を筒状体Paの内径E1よりも僅かに大きく設定することが望ましい。
【0083】
さらに、第一抱持部Pd1に、筒状体Paの一部を周方向に分断する第一スリットPh1を設けた場合には、第一棒状本体Pb1を筒状体Paの一端部内に挿入して組み付ける際に、第一スリットPh1を拡開変位させることにより、筒状体Paの第一抱持部Pd1を弾性変形させて、この第一抱持部Pd1内に第一被抱持部Pb2を容易に圧入することができる。そして、第一抱持部Pd1を、その復元力に応じて第一被抱持部Pb2の周面に圧着させることができるため、この第一被抱持部Pb2を第一抱持部Pd1により抱持して、筒状体Paに対する第一中心導体Pbの組み付け状態を安定して維持できるという利点がある。
【0084】
同様に、第二抱持部Pd2に、筒状体Paの一部を周方向に分断する第二スリットPh2を設けた場合には、第二棒状本体Pc1を筒状体Paの他端部内に挿入して組み付ける際に、第二スリットPh2を拡開変位させることにより、筒状体Paの第二抱持部Pd2を弾性変形させて、この第二抱持部Pd2内に第二被抱持部Pc2を容易に圧入することができる。そして、第二抱持部Pd2を、その復元力に応じて第二被抱持部Pc2の周面に圧着させることができるため、この第二被抱持部Pc2を第二抱持部Pd2により抱持して、筒状体Paに対する第二中心導体Pcの組み付け状態を安定して維持できる。
【0085】
また、上述のように第一抱持部Pd1を構成する第一スリットPh1を、第一ばね部Pe1を構成する第一螺旋溝Pg1の端部に連設して筒状体Paの軸方向に延びるように形成し、かつ第二抱持部Pd2を構成する第二スリットPh2を、第二ばね部Pe2を構成する第二螺旋溝Pg2の端部に連設して筒状体Paの軸方向に延びるように形成した場合には、例えばレーザ加工機から筒状体Paの周面にレーザ光を照射して第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2を形成する際等に、これに連続して第一スリットPh1及び
Ph2を容易に形成できるという利点がある。
【0086】
第一スリットPh1及び第二スリットPh2を筒状体Paの軸方向と略平行に延びるように構成した上述の第一実施形態に代え、第一スリットPh1及び第二スリットPh2を筒状体Paの軸方向と所定角度で傾斜させた形状としてもよい。
【0087】
さらに、上述のように第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6の外径D2を、筒状体Paの内径E1よりも僅かに小さく設定した場合には、筒状体Paに第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを組み付ける際に、第一膨出部Pb6及び第二膨出部Pc6を筒状体Pa内にスムーズに挿入して組み付けることができる。
【0088】
なお、第一中心導体Pbの鍔部Pb3及び第二中心導体Pcの鍔部Pc3を省略することも可能であるが、この鍔部Pb3,Pc3を設けた構造とすれば、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1を筒状体Pa内に挿入して第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを組み付ける際に、鍔部Pb3,Pc3により第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを位置決めすることにより、その組み付け作業を容易に行うことができる。
(第二実施形態)
【0089】
図11は、本発明の第二実施形態に係るプローブPr’の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【0090】
プローブPr’は、筒状体Paの両端部に第一スリットPh1及び第二スリットPh2が形成されていない点を除いて第一実施形態の筒状体Paと略同様に構成された筒状体Pa’と、第一実施形態と同様の構成を有する第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcとを備えている。
【0091】
筒状体Pa’は、第一螺旋溝Pg1及び第二螺旋溝Pg2によって構成された第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2と、その間に設けられた連結部Pfとを有している。また、筒状体Pa’の両端部には、その周壁からなる抱持部、つまり上述の分断部のない筒状の第一抱持部Pd1’及び第二抱持部Pd2’が設けられている。
【0092】
第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを筒状体Pa’に組み付ける際には、第一棒状本体Pb1及び第一膨出部Pb6と、第二棒状本体Pc1及び第二膨出部Pc6とを、筒状体Pa’内に挿入する。そして、第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2を筒状体Pa’の第一抱持部Pd1’及び第二抱持部Pd2’内に圧入し、この第一抱持部Pd1’及び第二抱持部Pd2’を拡開変位させる等により、第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2の周面に第一抱持部Pd1’及び第二抱持部Pd2’を圧着させる。この結果、第一被抱持部Pb2及び第二被抱持部Pc2が、第一抱持部Pd1’及び第二抱持部Pd2’によりそれぞれ抱持されるようになっている。
【0093】
また、第一中心導体Pb及び第二中心導体Pcを筒状体Pa’に組み付けた状態では、
図12に示すように第一中心導体Pbの先端面と,第二中心導体Pcの先端面との間に、所定の間隙KGが形成されるように、第一棒状本体Pb1及び第二棒状本体Pc1等の全長が設定されている。
【0094】
この構成においても、筒状体Pa’の第一抱持部Pd1’に第一棒状本体Pb1の第一被抱持部Pb2を抱持させるとともに、筒状体Pa’の第二抱持部Pd2’に第二棒状本体Pc1の第二被抱持部Pc2を抱持させることにより、半導体素子等の検査に使用する接触端子を容易かつ適正に製造することができるとともに、筒状体Pa’の第一ばね部Pe1及び第二ばね部Pe2を弾性変形させることにより、半導体素子等の被検査点及び配線の電極等に対する接触端子の接触圧を適正値に設定することができる等の利点がある。
【0095】
なお、第一スリットPh1及び第二スリットPh2の一方のみを省略し、第一スリットPh1及び第二スリットPh2の他方を筒状体Pa’に設けた構造としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 基板検査装置
3,3U,4D 検査治具
KG 間隙
Pa 筒状体
Pb 第一中心導体
Pc 第二中心導体
Pb1 第一棒状本体
Pb2 第二棒状本体
Pb2 第一被抱持部
Pc2 第二被抱持部
Pb3,Pc3, 鍔部
Pb4,Pc4 接続部
Pd1 第一抱持部
Pd2 第二抱持部
Pe1 第一ばね部
Pe2 第二ばね部
Pf 連結部
Pg1 第一螺旋溝
Pg2 第二螺旋溝
Ph1 第一スリット
Ph2 第二スリット
Pr,Pr’ プローブ