(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20220705BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 371
(21)【出願番号】P 2017147244
(22)【出願日】2017-07-28
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 由佳
(72)【発明者】
【氏名】井口 もえ木
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】田崎 モナ
(72)【発明者】
【氏名】筧 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 左近
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194775(JP,A)
【文献】特開2018-155912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08 - 9/16
C01G 1/00 - 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均円形度が0.91以上0.98以下であるトナー粒子と、
前記トナー粒子に外添された、平均一次粒径が
90nm以上180nm以下であり、一次粒子の平均円形度が0.93以上1.00以下であるシリカ粒子と、
前記トナー粒子に外添された、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であり、一次粒子の平均円形度が0.82以上0.94以下であり、一次粒子の累積84%となる円形度が0.92超であるチタン酸ストロンチウム粒子と、
を含む静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記シリカ粒子は、シラン系カップリング剤で疎水化処理された表面を有するシリカ粒子である、請求項
1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が20nm以上80nm以下である、請求項1
又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が30nm以上60nm以下である、請求項
3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、X線回折法により得られる(110)面のピークの半値幅が0.2°以上2.0°以下である、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、電気陰性度が2.0以下の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、請求項
6に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記チタン酸ストロンチウム粒子の含水率が1.5質量%以上10質量%以下である、請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記チタン酸ストロンチウム粒子の含水率が2質量%以上5質量%以下である、請求項
9に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子である、請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、ケイ素含有有機化合物で疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子である、請求項
11に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
請求項1~請求項
12のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
【請求項14】
請求項1~請求項
12のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項15】
請求項
13に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項16】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項
13に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項17】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項
13に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トナー粒子に不定形微粒子と単分散球形シリカと有機化合物とを外添したトナーが開示されている。
【0003】
特許文献2には、トナー粒子にチタン酸ストロンチウム微粒子と疎水性無機微粒子とを外添したトナーが開示されている。
【0004】
特許文献3には、トナー粒子に疎水化処理された負帯電性シリカとルチルアナタース混晶型酸化チタンと疎水化処理されたチタン酸ストロンチウムとを外添したトナーが開示されている。
【0005】
特許文献4には、トナーと、研磨粒子として立方体状又は直方体状のチタン酸ストロンチウムとを含む現像剤が開示されている。
【0006】
特許文献5には、トナー粒子に負帯電性シリカ微粒子と正帯電性チタン酸ストロンチウム微粒子とを外添したトナーが開示されている。
【0007】
特許文献6には、トナー粒子に直方体状チタン酸ストロンチウムと疎水性シリカとを外添したトナーが開示されている。
【0008】
特許文献7には、トナー母粒子に疎水性シリカと疎水性チタニアとチタン酸ストロンチウムとステアリン酸亜鉛とを外添したトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-318467号公報
【文献】特開2005-148405号公報
【文献】特開2007-093732号公報
【文献】特開2011-203758号公報
【文献】特開2015-084095号公報
【文献】特許第5248511号公報
【文献】特許第5166164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、外添剤としてシリカ粒子及びチタニア粒子のみを含む静電荷像現像用トナーに比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0012】
<1>に係る発明は、
平均円形度が0.91以上0.98以下であるトナー粒子と、
前記トナー粒子に外添されたシリカ粒子と、
前記トナー粒子に外添された、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であり、一次粒子の平均円形度が0.82以上0.94以下であり、一次粒子の累積84%となる円形度が0.92超であるチタン酸ストロンチウム粒子と、
を含む静電荷像現像用トナー。
【0013】
<2>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が20nm以上80nm以下である、<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
【0014】
<3>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が30nm以上60nm以下である、<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
<4>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、X線回折法により得られる(110)面のピークの半値幅が0.2°以上2.0°以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
<5>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
<6>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、電気陰性度が2.0以下の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、<5>に記載の静電荷像現像用トナー。
【0018】
<7>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、<6>に記載の静電荷像現像用トナー。
【0019】
<8>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子の含水率が1.5質量%以上10質量%以下である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0020】
<9>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子の含水率が2質量%以上5質量%以下である、<8>に記載の静電荷像現像用トナー。
【0021】
<10>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子である、<1>~<9>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0022】
<11>に係る発明は、
前記チタン酸ストロンチウム粒子は、ケイ素含有有機化合物で疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子である、<10>に記載の静電荷像現像用トナー。
【0023】
<12>に係る発明は、
<1>~<11>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
【0024】
<13>に係る発明は、
<1>~<11>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【0025】
<14>に係る発明は、
<12>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【0026】
<15>に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
<12>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【0027】
<16>に係る発明は、
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<12>に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0028】
<1>に係る発明によれば、外添剤としてシリカ粒子及びチタニア粒子のみを含む静電荷像現像用トナーに比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
<2>に係る発明によれば、前記チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が20nm未満である場合に比べて、流動性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
<3>に係る発明によれば、前記チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が30nm未満である場合に比べて、流動性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
<4>に係る発明によれば、X線回折法により得られる(110)面のピークの半値幅が0.2°未満であるチタン酸ストロンチウム粒子を用いた場合に比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
<5>、<6>又は<7>に係る発明によれば、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされていないチタン酸ストロンチウム粒子を用いた場合に比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
<8>に係る発明によれば、前記チタン酸ストロンチウム粒子の含水率が1.5質量%未満である場合に比べて、転写性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
<9>に係る発明によれば、前記チタン酸ストロンチウム粒子の含水率が2質量%未満である場合に比べて、転写性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
<10>又は<11>に係る発明によれば、前記チタン酸ストロンチウム粒子の表面が疎水化処理されていない場合に比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
【0029】
<12>に係る発明によれば、外添剤としてシリカ粒子及びチタニア粒子のみを含む静電荷像現像用トナーに比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤が提供される。
<13>に係る発明によれば、外添剤としてシリカ粒子及びチタニア粒子のみを含む静電荷像現像用トナーに比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーを収容したトナーカートリッジが提供される。
<14>、<15>又は<16>に係る発明によれば、外添剤としてシリカ粒子及びチタニア粒子のみを含む静電荷像現像用トナーに比べて、転写維持性に優れる静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を適用したプロセスカートリッジ、画像形成装置又は画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】チタン酸ストロンチウム粒子の一例であるチタン工業社製SW-360を外添したトナーのSEM画像と、該SEM画像を解析して求めたチタン酸ストロンチウム粒子の円形度分布グラフである。
【
図1B】別のチタン酸ストロンチウム粒子を外添したトナーのSEM画像と、該SEM画像を解析して求めたチタン酸ストロンチウム粒子の円形度分布グラフである。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0032】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0033】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0034】
本開示において、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいい、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」ともいう。
【0035】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係るトナーは、平均円形度が0.91以上0.98以下であるトナー粒子と、トナー粒子に外添されたシリカ粒子と、トナー粒子に外添された、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であり、一次粒子の平均円形度が0.82以上0.94以下であり、一次粒子の累積84%となる円形度が0.92超であるチタン酸ストロンチウム粒子と、を含む。
以下、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であり、一次粒子の平均円形度が0.82以上0.94以下であり、一次粒子の累積84%となる円形度が0.92超であるチタン酸ストロンチウム粒子を、特定チタン酸ストロンチウム粒子という。
【0036】
本実施形態に係るトナーは、特定チタン酸ストロンチウム粒子を含まず、チタニア粒子を含むトナーに比べて、転写維持性に優れる。その機序として、下記が推定される。
【0037】
従来、像保持体からのトナーのクリーニング性を良化する目的で異形状トナー粒子(例えば、平均円形度が0.91以上0.98以下のトナー粒子)が用いられている。また、外添剤として、トナーの転写性を良化する目的でシリカ粒子が用いられ、トナーの流動性と帯電特性を良化する目的でチタニア粒子が用いられている。
シリカ粒子とチタニア粒子は双方とも負帯電性であるのでトナー粒子上で静電的に反発し合うところ、シリカ粒子は、トナー粒子に対する付着力がチタニア粒子よりも弱いので、トナー粒子表面を転がり、異形状トナー粒子の凹部に偏在する傾向がある。シリカ粒子が異形状トナー粒子の凹部に偏在する結果、期待する転写性が得られなくなる。特に、低温低湿環境下(外添剤がトナー粒子上を移動しやすい環境下)や、画像面積率の低い画像を連続して形成した後(現像装置においてトナーに機械的負荷が繰り返しかかった後)に、転写性が低下する。
一方、特定チタン酸ストロンチウム粒子は、従来用いられているチタニア粒子と同様に負帯電性であり粒径も同程度であるので、トナーの流動性と帯電特性を良化する目的でチタニア粒子に代えて用いることができる。その上、特定チタン酸ストロンチウム粒子は、材質及び形状が下記(a)、(b)及び(c)であるので、トナーに期待する転写性が維持されるものと推定される。
【0038】
(a)特定チタン酸ストロンチウム粒子は、チタニア粒子に比べて、シリカ粒子との間で生じる静電反発力が小さいので、シリカ粒子を異形状トナー粒子の凹部に移行させる作用が弱い。したがって、特定チタン酸ストロンチウム粒子が外添された異形状トナーにおいては、チタニア粒子が外添された異形状トナーに比べて、シリカ粒子が異形状トナー粒子の凹部に偏在することが抑制される。
(b)特定チタン酸ストロンチウム粒子は、丸みを帯びた形状(詳細は後述する。)であるので、立方体又は直方体のチタン酸ストロンチウム粒子に比べて、粒子表面における局所的な電荷の集中が起こりにくく、シリカ粒子との間の静電反発力が比較的小さく、シリカ粒子の偏在を生じさせにくいと考えられる。
(c)平均一次粒径が10nm未満であるチタン酸ストロンチウム粒子は、トナー粒子に埋没しやすく、トナーの流動性を良化する作用が発揮されにくい。平均一次粒径が100nm超であるチタン酸ストロンチウム粒子は、トナー粒子表面に固定化されにくいため遊離しやすく、トナーの流動性を良化する作用が発揮されにくい。特定チタン酸ストロンチウム粒子は、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であるので、トナーの流動性を良化する作用が発揮される。
上記(a)、(b)及び(c)によって、本実施形態に係るトナーは、トナーの流動性を確保しつつ、転写維持性に優れると推定される。
【0039】
以下、本実施形態に係るトナーの構成を詳細に説明する。
【0040】
[トナー粒子]
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤とを含む。
【0041】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。
【0043】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸としては、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0046】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0047】
ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0048】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0049】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。
着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0051】
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0052】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0053】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0054】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0055】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0056】
[トナー粒子の特性]
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等を含む芯部と、結着樹脂を含む被覆層と、で構成されている。
【0057】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0058】
トナー粒子の体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて粒径2μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒径を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。測定した粒径の体積基準の粒度分布において、小径側から累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0059】
本実施形態においてトナー粒子の平均円形度は、像保持体からのトナーのクリーニング性を良化する観点から、0.91以上0.98以下であり、0.94以上0.98以下がより好ましく、0.95以上0.97以下が更に好ましい。
【0060】
本実施形態においてトナー粒子の円形度とは、(粒子投影像と同じ面積をもつ円の周囲長)÷(粒子投影像の周囲長)であり、トナー粒子の平均円形度とは、円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度である。トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像解析装置でトナー粒子を少なくとも3000個解析して求める。後述の[実施例]に具体的な測定方法を記載する。
【0061】
トナー粒子の平均円形度は、例えば、トナー粒子を凝集合一法で製造する場合、融合・合一工程における、分散液の撹拌速度、分散液の温度又は保持時間を調整することによって制御し得る。
【0062】
[シリカ粒子]
本実施形態においてトナーの外添剤としてのシリカ粒子は、粒度分布が単分散であってもよく、多分散であってもよく、単分散のシリカ粒子を混合して多分散としたシリカ粒子であってもよい。
【0063】
シリカ粒子は、トナーの転写性を良化する観点から、一次粒径が70nm以上200nm以下のシリカ粒子(以下、大径シリカ粒子という。)を含むことが好ましい。一次粒径70nm以上のシリカ粒子は、転写性をより良化し、一次粒径200nm以下のシリカ粒子は、トナー粒子から遊離しにくい故に期待する作用が得られやすい。
大径シリカ粒子は、上記の観点から、一次粒径が80nm以上180nm以下であることがより好ましく、一次粒径が90nm以上160nm以下であることが更に好ましい。
【0064】
シリカ粒子が単分散である場合、シリカ粒子の平均一次粒径は、トナーの転写性を良化する観点から、70nm以上200nm以下であることが好ましく、80nm以上180nm以下であることがより好ましく、90nm以上160nm以下であることが更に好ましい。
【0065】
シリカ粒子が単分散である場合、シリカ粒子の平均一次粒径と特定チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径との差は、トナーの流動性を良化する観点および転写性を維持する観点から、20nm以上180nm以下であることが好ましい。平均一次粒径の差が20nm以上であると、シリカ粒子と特定チタン酸ストロンチウム粒子との間の静電反発が抑えられ、シリカ粒子の偏在が抑えられる。一方、平均一次粒径の差が大き過ぎると、大きい方の粒子に小さい方の粒子が付着して、それぞれに期待される作用が得られにくくなるので、平均一次粒径の差は180nm以下が好ましい。
上記の観点から、シリカ粒子が単分散である場合、シリカ粒子の平均一次粒径と特定チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径との差は、30nm以上150nm以下がより好ましく、40nm以上100nm以下が更に好ましい。
【0066】
シリカ粒子が多分散である場合、その粒度分布は、トナーの転写性を良化する観点から、粒径40nm以上200nm以下の範囲に少なくとも1つのピークを有することが好ましい。シリカ粒子が多分散である場合、その粒度分布は、トナーの転写性を良化する観点から、特定チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径よりも大きい粒径範囲に少なくとも1つのピークを有することが好ましい。
シリカ粒子が多分散である場合、シリカ粒子の平均一次粒径は、例えば、50nm以180nm以下であり、60nm以上160nm以下が好ましい。
【0067】
本実施形態においてシリカ粒子の一次粒径とは、一次粒子像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)であり、シリカ粒子の平均一次粒径とは、一次粒径の個数基準の分布において小径側から累積50%となる粒径である。シリカ粒子の一次粒径は、シリカ粒子が外添されたトナーのSEM(走査型電子顕微鏡)画像を撮影し、SEM画像におけるトナー粒子上のシリカ粒子を少なくとも300個画像解析して求める。後述の[実施例]に具体的な測定方法を記載する。
【0068】
シリカ粒子の一次粒径は、例えば、シリカ粒子をゾルゲル法で製造する場合、シリカゾル懸濁液を調製する際の撹拌速度によって制御し得る。シリカゾル懸濁液を調製する際の撹拌速度が速いほど、シリカ粒子の一次粒径が小さくなる。
【0069】
大径シリカ粒子(一次粒径が70nm以上200nm以下のシリカ粒子)の一次粒子の平均円形度は、0.90以上1.00以下が好ましく、0.92以上0.98以下がより好ましく、0.93以上0.96以下が更に好ましい。
【0070】
本実施形態においてシリカ粒子の一次粒子の円形度とは、4π×(一次粒子像の面積)÷(一次粒子像の周囲長)2であり、一次粒子の平均円形度とは、円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度である。シリカ粒子の一次粒子の円形度は、シリカ粒子が外添されたトナーのSEM画像を撮影し、SEM画像におけるトナー粒子上のシリカ粒子を少なくとも300個画像解析して求める。後述の[実施例]に具体的な測定方法を記載する。
大径シリカ粒子の一次粒子の円形度は、SEM画像におけるトナー粒子上のシリカ粒子のうち粒径70nm以上200nm以下の粒子を少なくとも300個画像解析して求める。
【0071】
シリカ粒子の一次粒径の平均円形度と、特定チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒子の平均円形度との差は、トナーの転写性を維持する観点から、0.15以下であることが好ましい。平均円形度の差が大き過ぎると、特定チタン酸ストロンチウム粒子とシリカ粒子との間で局所的に大きな静電反発力がはたらき、シリカ粒子の偏在を生じさせやすくなると考えられるので、平均円形度の差は0.15以下が好ましい。
【0072】
大径シリカ粒子(一次粒径が70nm以上200nm以下のシリカ粒子)の一次粒子の平均円形度と、特定チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒子の平均円形度との差は、トナーの転写性を維持する観点から、0.15以下であることが好ましい。平均円形度の差が大き過ぎると、特定チタン酸ストロンチウム粒子と大径シリカ粒子との間で局所的に大きな静電反発力がはたらき、大径シリカ粒子の偏在を生じさせやすくなると考えられるので、平均円形度の差は0.15以下が好ましい。
【0073】
シリカ粒子は、一次粒径を制御する観点と、粒度分布が単分散であるシリカ粒子を得る観点とから、湿式製法で製造されたシリカ粒子であることが好ましい。
【0074】
シリカ粒子の湿式製法としては、テトラアルコキシシランを材料としたゾルゲル法が好ましい。シリカ粒子を製造するゾルゲル法は公知である。ゾルゲル法は、例えば、テトラアルコキシシランと水とアルコールとを混合した混合液にアンモニア水を滴下しシリカゾル懸濁液を調製すること、シリカゾル懸濁液から湿潤シリカゲルを遠心分離すること、及び、湿潤シリカゲルを乾燥してシリカ粒子を得ることを含む。テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
シリカ粒子の表面は、疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤にシリカ粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量は、例えば、シリカ粒子100質量部に対して1質量部以上10質量部以下である。
【0076】
シリカ粒子の外添量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上7.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下が更に好ましい。
【0077】
[特定チタン酸ストロンチウム粒子]
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であり、一次粒子の平均円形度が0.82以上0.94以下であり、一次粒子の累積84%となる円形度が0.92超である。
【0078】
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、トナーの流動性を良化する観点から、平均一次粒径が10nm以上100nm以下である。チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が10nm未満であると、トナー粒子に埋没しやすく、トナーの流動性を良化する作用が得られにくい。チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が100nm超であると、トナー粒子表面を転がりやすく、異形状トナー粒子の凹部に偏在する結果、トナーの流動性を良化する作用が得られにくい。
上記の観点から、特定チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径は、10nm以上100nm以下であり、20nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上60nm以下が更に好ましく、30nm以上60nm以下が更に好ましい。
【0079】
本実施形態において特定チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒径とは、一次粒子像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)であり、特定チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径とは、一次粒径の個数基準の分布において小径側から累積50%となる粒径である。特定チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒径は、チタン酸ストロンチウム粒子が外添されたトナーの電子顕微鏡画像を撮影し、トナー粒子上のチタン酸ストロンチウム粒子を少なくとも300個画像解析して求める。後述の[実施例]に具体的な測定方法を記載する。
【0080】
特定チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径は、例えば、チタン酸ストロンチウム粒子を湿式製法により製造する際の各種条件によって制御し得る。
【0081】
特定チタン酸ストロンチウム粒子の形状は、転写維持性に優れる観点から、立方体又は直方体ではなく、丸みを帯びた形状であることが好ましい。
チタン酸ストロンチウム粒子は、結晶構造がペロブスカイト構造であり、通常は、粒子形状が立方体又は直方体である。しかし、立方体又は直方体のチタン酸ストロンチウム粒子、つまり、角を有するチタン酸ストロンチウム粒子においては、角に電荷が集中し、角とシリカ粒子との間で局所的に大きな静電反発力がはたらき、シリカ粒子の偏在を生じさせやすくなると考えられる。低温低湿環境下における転写効率をより長期的に維持するためには、チタン酸ストロンチウム粒子の形状は、角の少ない形状、つまり、丸みを帯びた形状であることが好ましい。
【0082】
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、一次粒子の平均円形度が0.82以上0.94以下であり、一次粒子の累積84%となる円形度が0.92超である。
本実施形態において特定チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒子の円形度とは、4π×(一次粒子像の面積)÷(一次粒子像の周囲長)2であり、一次粒子の平均円形度とは、円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度であり、一次粒子の累積84%となる円形度とは、円形度の分布において小さい側から累積84%となる円形度である。特定チタン酸ストロンチウム粒子の円形度は、チタン酸ストロンチウム粒子が外添されたトナーの電子顕微鏡画像を撮影し、トナー粒子上のチタン酸ストロンチウム粒子を少なくとも300個画像解析して求める。後述の[実施例]に具体的な測定方法を記載する。
【0083】
特定チタン酸ストロンチウム粒子について、一次粒子の累積84%となる円形度は、丸みを帯びた形状の指標の一つである。一次粒子の累積84%となる円形度(以下、累積84%円形度ともいう。)について説明する。
【0084】
図1Aは、チタン酸ストロンチウム粒子の一例であるチタン工業社製SW-360を外添したトナーのSEM画像と、該SEM画像を解析して求めたチタン酸ストロンチウム粒子の円形度分布のグラフである。SEM画像が示すとおり、SW-360は、主たる粒子形状が立方体であって、直方体の粒子および粒径の比較的小さい球形粒子が混じっていた。本例のSW-360の円形度分布は、0.84から0.92の間に集中しており、平均円形度が0.888、累積84%円形度が0.916であった。このことは、SW-360の主たる粒子形状が立方体であること、立方体の投影像には円に近い順に正六角形(円形度約0.907)、扁平な六角形、正方形(円形度約0.785)、長方形があること、立方体のチタン酸ストロンチウム粒子はトナー粒子に角を立てて付着しており投影像は主として六角形になること、の反映と考えられる。
SW-360の実際の円形度分布が上記のとおりであること及び立体の投影像の理論的な円形度からして、立方体又は直方体のチタン酸ストロンチウム粒子は、一次粒子の累積84%円形度が0.92を下回るものと推定できる。
一方、
図1Bは、別のチタン酸ストロンチウム粒子を外添したトナーのSEM画像と、該SEM画像を解析して求めたチタン酸ストロンチウム粒子の円形度分布のグラフである。SEM画像が示すとおり、本例のチタン酸ストロンチウム粒子は、丸みを帯びた形状であった。本例のチタン酸ストロンチウム粒子は、平均円形度が0.883、累積84%円形度が0.935であった。
以上のことから、特定チタン酸ストロンチウム粒子について、一次粒子の累積84%円形度は、丸みを帯びた形状の指標の一つとなり、0.92超であると丸みを帯びた形状であると言える。
【0085】
特定チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒子の平均円形度は、トナーの転写性を維持する観点から、0.82以上0.94以下が好ましく、0.84以上0.94以下がより好ましく、0.86以上0.92以下が更に好ましい。
【0086】
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、X線回折法により得られる(110)面のピークの半値幅が0.2°以上2.0°以下であることが好ましく、0.2°以上1.0°以下であることがより好ましい。
特定チタン酸ストロンチウム粒子のX線回折法により得られる(110)面のピークは、回折角度2θ=32°付近に現れるピークである。このピークは、ペロブスカイト結晶の(110)面のピークに相当する。
粒子形状が立方体又は直方体であるチタン酸ストロンチウム粒子は、ペロブスカイト結晶の結晶性が高く、(110)面のピークの半値幅は通常0.2°未満である。例えば、チタン工業社製のSW-350(主たる粒子形状が立方体であるチタン酸ストロンチウム粒子)を解析したところ、(110)面のピークの半値幅は0.15°であった。
一方、丸みを帯びた形状のチタン酸ストロンチウム粒子は、ペロブスカイト結晶の結晶性が相対的に低く、(110)面のピークの半値幅が拡がる。
特定チタン酸ストロンチウム粒子は丸みを帯びた形状であることが好ましく、丸みを帯びた形状の指標の一つとして、(110)面のピークの半値幅は、0.2°以上2.0°以下が好ましく、0.2°以上1.0°以下がより好ましく、0.2°以上0.5°以下が更に好ましい。
【0087】
チタン酸ストロンチウム粒子のX線回折は、X線回折装置(例えば、リガク社製、商品名RINT Ultima-III)を用いて測定する。測定の設定は、線源CuKα、電圧40kV、電流40mA、試料回転速度:回転なし、発散スリット:1.00mm、発散縦制限スリット:10mm、散乱スリット:開放、受光スリット:開放、走査モード:FT、計数時間:2.0秒、ステップ幅:0.0050°、操作軸:10.0000°~70.0000°とする。本開示においてX線回折パターンにおけるピークの半値幅は、半値全幅(full width at half maximum)である。
【0088】
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン及びストロンチウム以外の金属元素(以下、ドーパントともいう。)がドープされていることが好ましい。特定チタン酸ストロンチウム粒子は、ドーパントを含むことにより、ペロブスカイト構造の結晶性が下がり丸みを帯びた形状となる。
【0089】
特定チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントは、チタン及びストロンチウム以外の金属元素であれば特に制限されない。イオン化したときに、チタン酸ストロンチウム粒子を構成する結晶構造に入り得るイオン半径となる金属元素が好ましい。この観点から、特定チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントは、イオン化したときのイオン半径が、40pm以上200pm以下である金属元素が好ましく、60pm以上150pm以下である金属元素がより好ましい。
【0090】
特定チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントとしては、具体的には、ランタノイド、シリカ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リン、硫黄、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、イットリウム、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、ビスマスが挙げられる。ランタノイドとしては、ランタン、セリウムが好ましい。これらの中でも、ドープしやすくチタン酸ストロンチウム粒子の形状制御がしやすい観点から、ランタンが好ましい。
【0091】
特定チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントとしては、特定チタン酸ストロンチウム粒子を過度に負帯電させない観点から、電気陰性度が2.0以下の金属元素が好ましく、電気陰性度が1.3以下の金属元素がより好ましい。本実施形態において電気陰性度は、オールレッド・ロコウの電気陰性度である。電気陰性度が2.0以下の金属元素としては、ランタン(電気陰性度1.08)、マグネシウム(1.23)、アルミニウム(1.47)、シリカ(1.74)、カルシウム(1.04)、バナジウム(1.45)、クロム(1.56)、マンガン(1.60)、鉄(1.64)、コバルト(1.70)、ニッケル(1.75)、銅(1.75)、亜鉛(1.66)、ガリウム(1.82)、イットリウム(1.11)、ジルコニウム(1.22)、ニオブ(1.23)、銀(1.42)、インジウム(1.49)、錫(1.72)、バリウム(0.97)、タンタル(1.33)、レニウム(1.46)、セリウム(1.06)等が挙げられる。
【0092】
特定チタン酸ストロンチウム粒子内のドーパントの量は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しながら丸みを帯びた形状とする観点から、ストロンチウムに対しドーパントが0.1モル%以上20モル%以下となる範囲が好ましく、0.1モル%以上15モル%以下となる範囲がより好ましく、0.1モル%以上10モル%以下となる範囲が更に好ましい。
【0093】
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、含水率が1.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。含水率が1.5質量%以上10質量%以下(より好ましくは2質量%以上5質量%以下)であると、特定チタン酸ストロンチウム粒子の抵抗が適度な範囲に制御され、チタン酸ストロンチウム粒子同士の静電的反発による偏在抑制に優れる。特定チタン酸ストロンチウム粒子の含水率は、例えば、チタン酸ストロンチウム粒子を湿式製法により製造し、乾燥処理の温度及び時間を調節することにより制御することができる。チタン酸ストロンチウム粒子を疎水化処理する場合は、疎水化処理した後における乾燥処理の温度及び時間を調節することにより、特定チタン酸ストロンチウム粒子の含水率を制御することができる。
【0094】
特定チタン酸ストロンチウム粒子の含水率は、次のように測定する。
測定試料20mgを温度22℃/相対湿度55%のチャンバーにて17時間静置し調湿した後、温度22℃/相対湿度55%の室内にて、熱天秤(島津製作所製TGA-50型)によりチッ素ガス雰囲気中にて30℃/分の温度上昇速度にて30℃から250℃まで加熱し、加熱減量(加熱によって失われた質量)を測定する。
そして、測定した加熱減量を元に以下の式にて含水率を算出する。
含水率(質量%)=(30℃から250℃における加熱減量)÷(調湿後加熱前の質量)×100
【0095】
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、特定チタン酸ストロンチウム粒子の作用を良化する観点から、疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子であることが好ましく、ケイ素含有有機化合物により疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子であることがより好ましい。
【0096】
-特定チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法-
特定チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン酸ストロンチウム粒子そのものであってもよく、チタン酸ストロンチウム粒子の表面を疎水化処理した粒子でもよい。チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法は、特に制限されないが、粒径及び形状を制御する観点から、湿式製法であることが好ましい。
【0097】
・チタン酸ストロンチウム粒子の製造
チタン酸ストロンチウム粒子の湿式製法は、例えば、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理を行う製造方法である。本製造方法においては、酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などによって、チタン酸ストロンチウム粒子の粒径が制御される。
【0098】
酸化チタン源としてはチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品が好ましい。ストロンチウム源としては、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0099】
酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiO2モル比で0.9以上1.4以下が好ましく、1.05以上1.20以下がより好ましい。反応初期の酸化チタン源濃度は、TiO2として0.05モル/L以上1.3モル/L以下が好ましく、0.5モル/L以上1.0モル/L以下がより好ましい。
【0100】
チタン酸ストロンチウム粒子の形状を、立方体又は直方体ではなく、丸みを帯びた形状にする観点から、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にドーパント源を添加することが好ましい。ドーパント源としては、チタン及びストロンチウム以外の金属の酸化物が挙げられる。ドーパント源としての金属酸化物は、例えば、硝酸、塩酸又は硫酸に溶解した溶液として添加する。ドーパント源の添加量は、ストロンチウム源に含まれるストロンチウム100モルに対して、ドーパント源に含まれる金属が0.1モル以上20モル以下となる量が好ましく、0.5モル以上10モル以下となる量がより好ましい。
【0101】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、高いほど結晶性の良好なチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しながら丸みを帯びた形状とする観点から、60℃以上100℃以下の範囲が好ましい。アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込み原料に対し例えば0.001当量/h以上1.2当量/h以下であり、0.002当量/h以上1.1当量/h以下が適切である。
【0102】
アルカリ水溶液を添加した後、未反応のストロンチウム源を取り除く目的で酸処理を行う。酸処理は、例えば塩酸を用いて、反応液のpHを2.5乃至7.0、より好ましくは4.5乃至6.0に調整する。酸処理後、反応液を固液分離し、固形分を乾燥処理してチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。
【0103】
・表面処理
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理は、例えば、疎水化処理剤であるケイ素含有有機化合物と溶媒とを混合してなる処理液を調製し、撹拌下、チタン酸ストロンチウム粒子と処理液とを混合し、さらに撹拌を続けることで行われる。表面処理後は、処理液の溶媒を除去する目的で乾燥処理を行う。
【0104】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるケイ素含有有機化合物としては、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0105】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン;が挙げられる。
【0106】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるシラザン化合物としては、例えば、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0107】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;等が挙げられる。
【0108】
前記処理液の調製に用いる溶媒としては、ケイ素含有有機化合物がアルコキシシラン化合物又はシラザン化合物である場合はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)が好ましく、ケイ素含有有機化合物がシリコーンオイルである場合は炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン)が好ましい。
【0109】
前記処理液において、ケイ素含有有機化合物の濃度は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が更に好ましい。
【0110】
表面処理に用いるケイ素含有有機化合物の量は、チタン酸ストロンチウム粒子100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上40質量部以下がより好ましく、5質量部以上30質量部以下が更に好ましい。
【0111】
特定チタン酸ストロンチウム粒子の外添量は、トナー粒子100質量部に対して、0.2質量部以上4質量部以下が好ましく、0.4質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.6質量部以上2質量部以下が更に好ましい。
【0112】
特定チタン酸ストロンチウム粒子の外添量は、シリカ粒子100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上90質量部以下がより好ましく、30質量部以上80質量部以下が更に好ましい。
【0113】
[その他の外添剤]
本実施形態に係るトナーは、本実施形態の効果を得られる範囲で、シリカ粒子及びチタン酸ストロンチウム粒子以外のその他の外添剤を含んでいてもよい。その他の外添剤としては、例えば、下記の無機粒子および樹脂粒子が挙げられる。
【0114】
その他の外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0115】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量は、通常、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0116】
その他の外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えばフッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0117】
その他の外添剤の外添量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0118】
[トナーの製造方法]
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0119】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0120】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0121】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0122】
-樹脂粒子分散液準備工程-
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0123】
樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0124】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0126】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、転相乳化法によって分散媒に樹脂粒子を分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて中和したのち、水系媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの転相を行い、樹脂を水系媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0127】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下が更に好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0128】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0129】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0130】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0131】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0132】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0133】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0134】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0135】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0136】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成されたトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0137】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。さらに、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0138】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0139】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。磁性粉分散型キャリア及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面に樹脂を被覆したキャリアであってもよい。
【0140】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0141】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等の添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0142】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。
【0143】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0144】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0145】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0146】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0147】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0148】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を説明するが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0149】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図2に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0150】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写ベルトクリーニング装置30が備えられている。
【0151】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0152】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエローの画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0153】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
【0154】
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0155】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0156】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0157】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0158】
感光体1Y上のイエローのトナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。感光体1Y上に残留したトナーは、感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0159】
第2ユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0160】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0161】
トナー画像が転写された記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0162】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0163】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0164】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、現像手段と、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0165】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0166】
図3は、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図3に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図3中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0167】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0168】
図2に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kが着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の色に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0169】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0170】
<トナー粒子の作製>
[トナー粒子(1)]
-樹脂粒子分散液(1)の調製-
・テレフタル酸 :30モル部
・フマル酸 :70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 : 5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:95モル部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を220℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら30分間かけて230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。こうして、重量平均分子量18,000、ガラス転移温度60℃のポリエステル樹脂を得た。
【0171】
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間撹拌した。次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を撹拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下した。滴下終了後、室温(20℃乃至25℃)に戻し、撹拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2-ブタノールを1000ppm以下まで低減させた樹脂粒子分散液を得た。該樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整し、樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0172】
-着色剤粒子分散液(1)の調製-
・C.I.Pigment Blue 15:3(大日精化工業): 70部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬、ネオゲンRK) : 5部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合し、ホモジナイザー(IKA社、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した。分散液中の固形分量が20質量%となるようイオン交換水を加え、体積平均粒径170nmの着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0173】
-離型剤粒子分散液(1)の調製-
・パラフィンワックス(日本精蝋、HNP-9) :100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬、ネオゲンRK): 1部
・イオン交換水 :350部
上記の材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(1)(固形分量20質量%)を得た。
【0174】
-トナー粒子(1)の作製-
・樹脂粒子分散液(1) :403部
・着色剤粒子分散液(1) : 12部
・離型剤粒子分散液(1) : 50部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower): 2部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液30部を添加した。次いで、ホモジナイザー(IKA社、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて液温30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し30分間保持した。その後、樹脂粒子分散液(1)100部を追加し1時間保持し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、84℃まで加熱し2.5時間保持した。次いで、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることによりトナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)の体積平均粒径は5.7μmであった。
【0175】
[トナー粒子(2)]
融合・合一工程における温度/保持時間を80℃/1.5時間に変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、トナー粒子(2)を作製した。トナー粒子(2)の体積平均粒径は5.7μmであった。
【0176】
[トナー粒子(3)]
融合・合一工程における温度/保持時間を82℃/2.5時間に変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、トナー粒子(3)を作製した。トナー粒子(3)の体積平均粒径は5.6μmであった。
【0177】
[トナー粒子(4)]
融合・合一工程における温度/保持時間を88℃/3時間に変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、トナー粒子(4)を作製した。トナー粒子(4)の体積平均粒径は5.8μmであった。
【0178】
[トナー粒子(5)]
融合・合一工程における温度/保持時間を75℃/1時間に変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、トナー粒子(5)を作製した。トナー粒子(5)の体積平均粒径は5.6μmであった。
【0179】
[トナー粒子(6)]
融合・合一工程における温度/保持時間を95℃/5時間に変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、トナー粒子(6)を作製した。トナー粒子(6)の体積平均粒径は5.8μmであった。
【0180】
<シリカ粒子の作製>
[シリカ粒子(1)]
テトラメトキシシラン150部と、イオン交換水100部と、25質量%のアルコール100部とを混合した。この混合液の液温を30℃に保ち、撹拌翼で撹拌速度200rpmで撹拌しながら、25質量%アンモニア水150部を5時間かけて滴下し、シリカゾル懸濁液を調製した。シリカゾル懸濁液を湿潤シリカゲルと溶媒とに遠心分離し、湿潤シリカゲルを120℃で2時間乾燥し、シリカを得た。シリカ100部とエタノール500部とをエバポレーターに入れ、温度を40℃に維持したまま15分間撹拌した。次いで、シリカ100部に対して10部のジメチルジメトキシシランを入れ、さらに15分間撹拌した。次いで、系内の温度を90℃に上げてエタノールを除去し、表面処理されたシリカを取り出して120℃で30分間真空乾燥した。乾燥したシリカを粉砕し、シリカ粒子(1)を得た。
【0181】
[シリカ粒子(2)]
25質量%アンモニア水150部を滴下する際の撹拌速度を240rpmに変更した以外は、シリカ粒子(1)の作製と同様にして、シリカ粒子(2)を作製した。
【0182】
[シリカ粒子(3)]
25質量%アンモニア水150部を滴下する際の撹拌速度を150rpmに変更した以外は、シリカ粒子(1)の作製と同様にして、シリカ粒子(3)を作製した。
【0183】
[シリカ粒子(4)]
25質量%アンモニア水150部を滴下する際の撹拌速度を280rpmに変更した以外は、シリカ粒子(1)の作製と同様にして、シリカ粒子(4)を作製した。
【0184】
[シリカ粒子(5)]
25質量%アンモニア水150部を滴下する際の撹拌速度を95rpmに変更した以外は、シリカ粒子(1)の作製と同様にして、シリカ粒子(5)を作製した。
【0185】
<チタン酸ストロンチウム粒子の作製>
[チタン酸ストロンチウム粒子(1)]
脱硫及び解膠したチタン源であるメタチタン酸をTiO2として0.7モル採取し、反応容器に入れた。次いで、反応容器に、塩化ストロンチウム水溶液を、SrO/TiO2モル比が1.1になるように0.77モル添加した。次いで、反応容器に、酸化ランタンを硝酸に溶解した溶液を、ストロンチウム100モルに対してランタンが2.5モルになる量添加した。3つの材料の混合液における初期TiO2濃度が0.75モル/Lになるようにした。次いで、混合液を撹拌し、混合液を90℃に加温し、液温を90℃に維持し撹拌しながら、10N水酸化ナトリウム水溶液153mLを3.8時間かけて添加し、さらに、液温を90℃に維持しながら1時間撹拌を続けた。次いで、反応液を40℃まで冷却し、pH5.5になるまで塩酸を添加し1時間撹拌を行った。次いで、デカンテーションと水への再分散とを繰り返すことによって沈殿物を洗浄した。洗浄した沈殿物を含むスラリーに塩酸を加えpH6.5に調整し、濾過により固液分離を行い、固形分を乾燥させた。乾燥した固形分にi-ブチルトリメトキシシランのエタノール溶液を、固形分100部に対してi-ブチルトリメトキシシランが20部になる量添加して1時間撹拌を行った。濾過により固液分離を行い、固形分を130℃の大気中で7時間乾燥し、チタン酸ストロンチウム粒子(1)を得た。
【0186】
[チタン酸ストロンチウム粒子(2)]
10N水酸化ナトリウム水溶液の滴下にかける時間を、0.7時間に変更した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(2)を作製した。
【0187】
[チタン酸ストロンチウム粒子(3)]
10N水酸化ナトリウム水溶液の滴下にかける時間を、1時間に変更した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(3)を作製した。
【0188】
[チタン酸ストロンチウム粒子(4)]
10N水酸化ナトリウム水溶液の滴下にかける時間を、3時間に変更した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(4)を作製した。
【0189】
[チタン酸ストロンチウム粒子(5)]
10N水酸化ナトリウム水溶液の滴下にかける時間を、9.5時間に変更した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(5)を作製した。
【0190】
[チタン酸ストロンチウム粒子(6)]
10N水酸化ナトリウム水溶液の滴下にかける時間を、12時間に変更した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(6)を作製した。
【0191】
[チタン酸ストロンチウム粒子(7)]
10N水酸化ナトリウム水溶液の滴下にかける時間を、15時間に変更した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(7)を作製した。
【0192】
[チタン酸ストロンチウム粒子(8)]
チタン酸ストロンチウム粒子(8)として、チタン工業社製SW-360を準備した。SW-360は、金属元素がドープされておらず、表面が未処理のチタン酸ストロンチウム粒子である。
【0193】
[チタン酸ストロンチウム粒子(9)]
ストロンチウム100モルに対してランタンが9.5モルになる量添加した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(9)を作製した。
【0194】
[チタン酸ストロンチウム粒子(10)]
ストロンチウム100モルに対してランタンが0.5モルになる量添加した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(9)を作製した。
【0195】
[チタン酸ストロンチウム粒子(11)]
ドープする元素をランタンからニオブへ変更するため、酸化ランタンを硝酸に溶解した溶液を、酸化ニオブを硝酸に溶解した溶液に変更し、酸化ニオブを硝酸に溶解した溶液をストロンチウム100モルに対してニオブが2.5モルになる量添加した以外は、チタン酸ストロンチウム粒子(1)の作製と同様にして、チタン酸ストロンチウム粒子(11)を作製した。
【0196】
<酸化チタン粒子の準備>
酸化チタン粒子(1)として、テイカ社製JMT-150IBを準備した。JMT-150IBは、表面がイソブチルシランで疎水化処理された酸化チタン粒子である。
【0197】
<キャリアの作製>
・フェライト粒子(平均粒径35μm) :100部
・トルエン : 14部
・スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比15/85): 2部
・カーボンブラック :0.2部
フェライト粒子を除く上記材料をサンドミルにて分散して分散液を調製し、この分散液をフェライト粒子とともに真空脱気型ニーダに入れ、撹拌しながら減圧し乾燥させることによりキャリアを得た。
【0198】
<トナー及び現像剤の作製:実施例1~49、比較例1~14>
トナー粒子(1)~(6)のいずれか100部に、シリカ粒子(1)~(5)のいずれか2部と、チタン酸ストロンチウム粒子(1)~(11)のいずれか又は酸化チタン粒子(1)の1部とを表1~表3に示す組み合わせのとおり添加し、ヘンシェルミキサーを用いて撹拌周速30m/秒で15分間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いを用いて篩分し外添トナーを得た。
【0199】
外添トナー10部とキャリア100部とをVブレンダーに入れ、20分間撹拌した。その後、目開き212μmの篩で篩分して現像剤を得た。
【0200】
<トナーの分析>
[トナー粒子の形状特性]
外添剤を外添する前のトナー粒子を、フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、FPIA-3000)で解析し、円形度=(粒子投影像と同じ面積をもつ円の周囲長)÷(粒子投影像の周囲長)を求め、トナー粒子3000個の円形度分布において小さい側から累積50%となる円形度を、トナー粒子の平均円形度とした。
【0201】
[シリカ粒子の形状特性]
シリカ粒子を含む外添剤が外添されたトナーを、エネルギー分散型X線分析装置(EDX装置)(堀場製作所製、EMAX Evolution X-Max80mm2)を取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ製、S-4800)を用いて、倍率4万倍で画像を撮影した。EDX分析によって、Siの存在に基づき一視野内からシリカの一次粒子を300個以上特定した。SEMは、加速電圧15kV、エミッション電流20μA、WD15mmで観察し、EDX分析は、同条件で検出時間60分間とした。
特定したシリカ粒子を画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事株式会社)で解析し、一次粒子像それぞれの円相当径と面積と周囲長とを求め、さらに、円形度=4π×(面積)÷(周囲長)2を求めた。そして、円相当径の分布において小径側から累積50%となる円相当径を平均一次粒径とし、円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度を平均円形度とした。
いずれの実施例も、シリカ粒子の粒度分布は単分散であった。
【0202】
[チタン酸ストロンチウム粒子の形状特性]
別途用意したトナー粒子とチタン酸ストロンチウム粒子とを、ヘンシェルミキサーを用いて撹拌周速30m/秒で15分間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いを用いて篩分し、チタン酸ストロンチウム粒子を付着させた外添トナーを得た。
上記の外添トナーについて、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ製、S-4700)を用いて、倍率4万倍で画像を撮影した。無作為に選んだ300個のチタン酸ストロンチウム粒子の画像情報をインターフェイスを介して、画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事株式会社)で解析し、一次粒子像それぞれの円相当径と面積と周囲長とを求め、さらに、円形度=4π×(面積)÷(周囲長)2を求めた。そして、円相当径の分布において小径側から累積50%となる円相当径を平均一次粒径とし、円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度を平均円形度とし、円形度の分布において小さい側から累積84%となる円形度を累積84%円形度とした。
【0203】
なお、チタン酸ストロンチウム粒子及びシリカ粒子が外添されているトナーから、チタン酸ストロンチウム粒子の形状特性を求める場合は、シリカ粒子をトナーから除去した後、トナーからチタン酸ストロンチウム粒子を分離して、分離したチタン酸ストロンチウム粒子について形状測定を行うことができる。具体的には、下記の処理および測定方法が適用できる。
200mLのガラス瓶に、0.2質量%トリトンX-100水溶液(Acros Organics製)40mLと、トナー2gとを入れ、500回撹拌して分散させる。次いで、分散液の液温を20℃±0.5℃に保ちながら、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US-300AT)を用いて超音波を印加する。超音波印加は、印加時間:300秒間連続、出力:75W、振幅:180μm、超音波振動子と容器底面との距離:10mmとする。次いで、分散液を、小型高速冷却遠心機(佐久間製作所製、M201-IVD)を用いて冷却温度0℃にて3000rpmで2分間遠心し、上澄み液を除去し、残りのスラリーを濾紙(アドバンテック製、定性濾紙No.5C、110nm)にて濾過する。濾紙上の残留物をイオン交換水で2回洗浄し、乾燥させ、比較的大きい粒径で比重の小さいシリカ粒子を除いたトナーを得る。
次いで、200mLのガラス瓶に、0.2質量%トリトンX-100水溶液(Acros Organics製)40mLと、上記の処理後のトナー2gとを入れ、500回撹拌して分散させる。次いで、分散液の液温を20℃±0.5℃に保ちながら、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US-300AT)を用いて超音波を印加する。超音波印加は、印加時間:30分間連続、出力:75W、振幅:180μm、超音波振動子と容器底面との距離:10mmとする。次いで、分散液を、小型高速冷却遠心機(佐久間製作所製、M201-IVD)を用いて冷却温度0℃にて3000rpmで2分間遠心し、上澄み液を得る。澄み液をメンブレンフィルター(メルク製、MF-Millipore メンブレンフィルターVSWP、孔径0.025μm)にて吸引濾過した後、メンブレンフィルター上の残留物を乾燥させてチタン酸ストロンチウム粒子を得る。
メンブレンフィルター上に集めたチタン酸ストロンチウム粒子を、カーボン支持膜(イーエムジャパン株式会社製、U1015)上に付着させエアーブローした後、EDX装置(堀場製作所製、EMAX Evolution X-Max80mm2)を取り付けた透過型電子顕微鏡(TEM)(FEI社製、TalosF200S)を用いて、倍率32万倍で画像を撮影する。EDX分析によって、Ti及びSrの存在に基づき一視野内からチタン酸ストロンチウムの一次粒子を300個以上特定する。TEMは、加速電圧200kV、エミッション電流0.5nAで観察し、EDX分析は、同条件で検出時間60分間とする。
特定したチタン酸ストロンチウム粒子の画像情報をインターフェイスを介して、画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事株式会社)で解析し、一次粒子像それぞれの円相当径と面積と周囲長とを求め、さらに、円形度=4π×(面積)÷(周囲長)2を求める。そして、円相当径の分布において小径側から累積50%となる円相当径を平均一次粒径とし、円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度を平均円形度とし、円形度の分布において小さい側から累積84%となる円形度を累積84%円形度とする。
【0204】
[チタン酸ストロンチウム粒子のX線回折]
トナー粒子に外添する前のチタン酸ストロンチウム粒子(1)~(11)それぞれを試料として、既述の測定条件でX線回折法により結晶構造解析を行った。チタン酸ストロンチウム粒子(1)~(11)は、回折角度2θ=32°付近に、ペロブスカイト結晶の(110)面のピークに相当するピークを有していた。(110)面のピークの半値幅はそれぞれ下記の値であった。
・チタン酸ストロンチウム粒子(1):ピーク半値幅0.35°
・チタン酸ストロンチウム粒子(2):ピーク半値幅0.95°
・チタン酸ストロンチウム粒子(3):ピーク半値幅0.70°
・チタン酸ストロンチウム粒子(4):ピーク半値幅0.45°
・チタン酸ストロンチウム粒子(5):ピーク半値幅0.30°
・チタン酸ストロンチウム粒子(6):ピーク半値幅0.26°
・チタン酸ストロンチウム粒子(7):ピーク半値幅0.23°
・チタン酸ストロンチウム粒子(8):ピーク半値幅0.15°
・チタン酸ストロンチウム粒子(9):ピーク半値幅0.55°
・チタン酸ストロンチウム粒子(10):ピーク半値幅0.22°
・チタン酸ストロンチウム粒子(11):ピーク半値幅0.37°
【0205】
[チタン酸ストロンチウム粒子の含水率]
トナー粒子に外添する前のチタン酸ストロンチウム粒子を試料として、既述の測定方法で含水率を測定した。チタン酸ストロンチウム粒子(1)~(7)及び(9)~(11)は、含水率2質量%以上5質量%以下の範囲であった。
【0206】
<トナー及び現像剤の評価>
[トナーの流動性]
パウダーレオメータ(freeman technology社製のFT4)を用いて、トナーの流動性を評価した。回転翼は、freeman technology社製の2枚翼プロペラ型の直径48mmブレードを用いた。
【0207】
トナーを、温度22℃/相対湿度50%の環境に8時間以上放置した後に、内径50mm、高さ140mmの200mL容器に入れた。容器底部から通気流量50mL/minで空気を流入させながら、先端スピード100mm/sで回転する回転翼を、容器底面からの高さ110mmから10mmまで、進入角度-5°で移動させながら、回転トルクと垂直荷重を測定した。
【0208】
底面からの高さHに対する回転トルクまたは垂直荷重から、高さHに対してのエネルギ勾配(mJ/mm)を求め、エネルギ勾配を積分して得られた面積がトータルエネルギ量(mJ)となる。本実施例では、底面からの高さ10mmから110mmの区間を積分してトータルエネルギ量を求めた。コンディショニングとエネルギ測定操作のサイクルを5回行って得られた平均値を、トータルエネルギ量(mJ)とした。トータルエネルギ量(mJ)を下記のとおり分類した。A及びBが許容範囲である。結果を表1~表3に示す。
【0209】
A:20mJ未満
B:20mJ以上、25mJ未満
C:25mJ以上、30mJ未満
D:30mJ以上
【0210】
[クリーニング性]
富士ゼロックス社製700Digital Color Press改造機に現像剤を装填し、低温低湿(温度10℃/相対湿度20%)下に24時間放置後、A4サイズの普通紙に画像面積割合1%の画像を10万枚連続で出力した。99901枚~10万枚の100枚を目視で観察し、色筋発生を下記のとおり分類した。A及びBが許容範囲である。結果を表1~表3に示す。
【0211】
A:色筋発生なし
B:1枚以上5枚以下に色筋発生
C:6枚以上10枚以下に色筋発生
D:11枚以上に色筋発生
【0212】
[転写性]
富士ゼロックス社製700Digital Color Press改造機に現像剤を装填した。感光体上にトナー載り量が5g/m2になるように現像電位を調整し、低温低湿(温度10℃/相対湿度20%)下、画像面積割合5%の画像をA4サイズの普通紙に1000枚連続で出力した。次いで1枚出力する際に、感光体上のトナー像が中間転写体(中間転写ベルト)へ移行した直後に(つまり、感光体のクリーニング前に)評価機を止めた。転写されずに感光体上に残留しているトナーをメンディングテープで取り、その重量を測定した。現像時のトナー載り量と、トナー残留量とから、下記式(1)により、初期の転写効率を求め、下記のとおり分類した。A及びBが許容範囲である。結果を表1~表3に示す。
【0213】
式(1):転写効率=(現像時のトナー載り量-トナー残留量)÷現像時のトナー載り量×100
【0214】
A:転写効率が98%以上
B:転写効率が95%以上、98%未満
C:転写効率が90%以上、95%未満
D:転写効率が90%未満
【0215】
[転写維持性]
低温低湿(温度10℃/相対湿度20%)下で5万枚連続して出力した後に上記の試験を行い、上記式(1)により、5万枚出力後の転写効率を求めた。さらに、下記式(2)により転写維持性を求め、下記のとおり分類した。A及びBが許容範囲である。結果を表1~表3に示す。
【0216】
式(2):転写維持性=5万枚出力後の転写効率÷初期の転写効率×100
【0217】
A:転写維持性が98%以上
B:転写維持性が95%以上、98%未満
C:転写維持性が90%以上、95%未満
D:転写維持性が90%未満
【0218】
[シリカ粒子の凹部への偏在度]
富士ゼロックス社製700Digital Color Press改造機に現像剤を装填し、低温低湿(温度10℃/相対湿度20%)下に24時間放置後、画像面積割合1%の画像を10000枚連続で出力した。現像機内に残るトナーを採取し、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S-4100)でトナー粒子100個を観察し、トナー粒子の凸部及び凹部に在るシリカ粒子の個数を数えた。凸部における単位面積当たりのシリカ粒子の平均個数aと、凹部における単位面積当たりのシリカ粒子の平均個数bとを算出し、下記のとおり分類した。A及びBが許容範囲である。結果を表1~表3に示す。
【0219】
A:a/bが1超
B:a/bが0.8超、1以下
C:a/bが0.6超、0.8以下
D:a/bが0.6以下
【0220】
【0221】
【0222】
【符号の説明】
【0223】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写ベルトクリーニング装置(中間転写体クリーニング手段の一例)
P 記録紙(記録媒体の一例)
【0224】
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)