(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】固体撮像素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04N 9/07 20060101AFI20220705BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220705BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H04N9/07 A
G02B3/00 A
H01L27/146 D
H04N9/07 D
(21)【出願番号】P 2017217278
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】澤野 智美
(72)【発明者】
【氏名】大久保 優
【審査官】大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011239(JP,A)
【文献】特開2017-092381(JP,A)
【文献】特開2017-011091(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082429(WO,A1)
【文献】特開2009-170562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0200623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00-1/08
G02B 3/00-3/14
H01L21/339
H01L27/14-27/148
H01L27/30
H01L29/762
H04N 5/30-5/378
H04N 9/04-9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子を二次元的に配置した半導体基板と、
上記半導体基板上に形成され、各光電変換素子に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層と、
上記カラーフィルタ層上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズと、を有し、
上記カラーフィルタの色としてグリーン、レッド及びブルーを含み、
色がグリーンのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第一マイクロレンズの頂部の曲率半径R1は、色がレッドのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さく、
上記マイクロレンズの高さは、300nm以上600nm以下の範囲内であ
り、
上記複数のマイクロレンズは、マイクロレンズの縁部が隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部で連結され、
上記複数のマイクロレンズの配置の対角方向且つ上記半導体基板の板厚方向の断面形状を対角断面と定義した場合、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm以上であり、
上記ブルーの色のカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第三マイクロレンズの頂部の曲率半径R3は、上記曲率半径R1よりも大きいことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
複数の光電変換素子を二次元的に配置した半導体基板と、
上記半導体基板上に形成され、各光電変換素子に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層と、
上記カラーフィルタ層上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズと、を有し、
上記カラーフィルタの色としてグリーン、レッド及びブルーを含み、
色がグリーンのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第一マイクロレンズの頂部の曲率半径R1は、色がレッドのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さく、
上記マイクロレンズの高さは、300nm以上600nm以下の範囲内であ
り、
上記複数のマイクロレンズは、マイクロレンズの縁部が隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部で連結され、
上記複数のマイクロレンズの配置の対角方向且つ上記半導体基板の板厚方向の断面形状を対角断面と定義した場合、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm未満であり、
上記ブルーの色のカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第三マイクロレンズの頂部の曲率半径R3は、上記曲率半径R2よりも小さいことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項3】
複数の光電変換素子を二次元的に配置した半導体基板と、
上記半導体基板上に形成され、各光電変換素子に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層と、
上記カラーフィルタ層上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズと、を有し、
上記カラーフィルタの色としてグリーン、レッド及びブルーを含み、
色がグリーンのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第一マイクロレンズの頂部の曲率半径R1は、色がレッドのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さく、
上記マイクロレンズの高さは、300nm以上600nm以下の範囲内であ
り、
上記第一マイクロレンズのプロフィール形状は放物面形状であり、
上記第二マイクロレンズのプロフィール形状は球面形状であり、
上記複数のマイクロレンズは、マイクロレンズの縁部が隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部で連結され、
上記複数のマイクロレンズの配置の対角方向且つ上記半導体基板の板厚方向の断面形状を対角断面と定義した場合、
上記ブルーの色のカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第三マイクロレンズのプロフィール形状は、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm以上であるとき球面形状であり、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm未満であるときは放物面形状であることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項4】
上記第一マイクロレンズと上記第二マイクロレンズとは、互いに同じ高さであることを特徴とする請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
上記第一マイクロレンズと上記第二マイクロレンズと上記第三マイクロレンズとは、互いに同じ高さであることを特徴とする請求項
1~請求項
3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
複数の光電変換素子を二次元的に配置した半導体基板と、
上記半導体基板上に形成され、各光電変換素子に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層と、
上記カラーフィルタ層上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズと、を有し、
上記カラーフィルタの色としてグリーン、レッド及びブルーを含み、
色がグリーンのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第一マイクロレンズの頂部の曲率半径R1は、色がレッドのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さく、
上記複数のマイクロレンズは、マイクロレンズの縁部が隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部で連結され、
上記複数のマイクロレンズの配置の対角方向且つ上記半導体基板の板厚方向の断面形状を対角断面と定義した場合、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm以上であり、
上記ブルーの色のカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第三マイクロレンズの頂部の曲率半径R3は、上記曲率半径R1よりも大きいことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項7】
複数の光電変換素子を二次元的に配置した半導体基板と、
上記半導体基板上に形成され、各光電変換素子に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層と、
上記カラーフィルタ層上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズと、を有し、
上記カラーフィルタの色としてグリーン、レッド及びブルーを含み、
色がグリーンのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第一マイクロレンズの頂部の曲率半径R1は、色がレッドのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さく、
上記複数のマイクロレンズは、マイクロレンズの縁部が隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部で連結され、
上記複数のマイクロレンズの配置の対角方向且つ上記半導体基板の板厚方向の断面形状を対角断面と定義した場合、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm未満であり、
上記ブルーの色のカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第三マイクロレンズの頂部の曲率半径R3は、上記曲率半径R2よりも小さいことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項8】
複数の光電変換素子を二次元的に配置した半導体基板と、
上記半導体基板上に形成され、各光電変換素子に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層と、
上記カラーフィルタ層上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズと、を有し、
上記カラーフィルタの色としてグリーン、レッド及びブルーを含み、
色がグリーンのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第一マイクロレンズの頂部の曲率半径R1は、色がレッドのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さく、
上記第一マイクロレンズのプロフィール形状は放物面形状であり、
上記第二マイクロレンズのプロフィール形状は球面形状であり、
上記複数のマイクロレンズは、マイクロレンズの縁部が隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部で連結され、
上記複数のマイクロレンズの配置の対角方向且つ上記半導体基板の板厚方向の断面形状を対角断面と定義した場合、
上記ブルーの色のカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第三マイクロレンズのプロフィール形状は、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm以上であるとき球面形状であり、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm未満であるときは放物面形状であることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項9】
上記第一マイクロレンズのプロフィール形状は放物面形状であり、
上記第二マイクロレンズのプロフィール形状は球面形状であり、
上記複数のマイクロレンズは、マイクロレンズの縁部が隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部で連結され、
上記複数のマイクロレンズの配置の対角方向且つ上記半導体基板の板厚方向の断面形状を対角断面と定義した場合、
上記ブルーの色のカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第三マイクロレンズのプロフィール形状は、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm以上であるとき球面形状であり、上記対角断面における上記谷部の曲率半径が135nm未満であるときは放物面形状であることを特徴とする請求項
6または請求項
7に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の固体撮像素子の製造方法であって、
上記複数のマイクロレンズは、グレイトーンマスクを用いたフォトリソグラフィ法により一括形成することを特徴とする固体撮像素子の製造方法。
【請求項11】
上記フォトリソグラフィ法に、紫外i線若しくはKRFレーザーを使用することを特徴とする、請求項1
0に記載の固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各光電変換素子に対応して微小なマイクロレンズアレイを設ける固体撮像素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ビデオカメラ、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話に搭載される撮像装置の高解像度化が進められている。撮像装置に組み込まれるCCDやCMOSセンサー等の固体撮像素子の画素微細化に伴い、1画素あたりに入射する光量減少による受光感度低下が問題となっている。
固体撮像素子には、感度低下を抑えるために、受光素子の入射側に、画素(光電変換素子)に一対一に対応させてマイクロレンズを形成する方式が広く用いられる。マイクロレンズを形成することで、入射光を効率よくフォトダイオードに集光することができ、受光感度を向上させることができる。
【0003】
固体撮像素子は、各画素に対応して複数色のカラーフィルタを設けることで、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の画素が形成されるが、色によって各画素における固体撮像素子の受光感度が異なるという問題がある。これは、色分離を行うカラーフィルタの光透過率差によって、受光感度差が発生するためである。
これら問題を解決するため、特許文献1では、各色毎の画素の感度に応じてマイクロレンズの高さを変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1では、この受光感度差に対してどのマイクロレンズをどの構造に形成すれば受光感度が改善するのか具体的な指針がない。またマイクロレンズの高さ毎に製造工程を繰り返すため、コストが上昇し、製造歩留りが低下するという課題がある。
そこで本発明は、各マイクロレンズの形状を最適化することにより受光感度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するため、本発明の一態様の固体撮像素子は、複数の光電変換素子を二次元的に配置した半導体基板と、上記半導体基板上に形成され、各光電変換素子に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層と、上記カラーフィルタ層上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズと、を有し、上記カラーフィルタの色としてグリーン、レッド及びブルーを含み、色がグリーンのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第一マイクロレンズの頂部の曲率半径R1は、色がレッドのカラーフィルタに対応する上記マイクロレンズである第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さいことを特徴とする。
また、本発明の他の態様である、上記一態様の固体撮像素子を製造する際に、複数のマイクロレンズを、グレイトーンマスクを用いたフォトリソグラフィ法により一括形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、RGB画素毎にマイクロレンズのプロフィール形状(以下、単に形状とも記載する)を最適化することにより、受光感度が向上する効果がある。
また、本発明の一態様によれば、レンズ形状を最適化するだけであるので、複数のマイクロレンズを一括形成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係る固体撮像素子の一例を示す概念図である。
【
図2】本発明に基づく固体撮像素子のレッド、グリーン、ブルーの各画素に対応する複数色のカラーフィルタの配置を模式的に説明する平面図の一部である。
【
図5】本発明に基づく固体撮像素子の製造方法を模式的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、各図に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに限定されるものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
<構造>
図1に示すように、本実施形態の固体撮像素子6は、複数の光電変換素子2を二次元的に配置した半導体基板1と、半導体基板1上に形成され、各光電変換素子2に対応させて複数色のカラーフィルタを予め設定した規則パターンで二次元的に配置したカラーフィルタ層4と、カラーフィルタ層4上に形成され、各カラーフィルタに対応して配置された複数のマイクロレンズ5と、を有する。複数の光電変換素子2は、画素位置に合わせて、二次元的に配置されている。符号3は、平坦化層である。
【0011】
本実施形態のマイクロレンズ5は、透明樹脂から構成されており、その材料は、通常、アクリル樹脂などの樹脂であり、透明が好ましい。
半導体基板1は、光電変換素子2を実装するための基板である。光電変換素子2は、画素毎に設けられ、マイクロレンズ5を経由して入射した光を電荷に変換する。平坦化層3はマイクロレンズ5の実装面を平坦化する。複数のカラーフィルタからなるカラーフィルタ層4は、平坦化層3を介して、複数の光電変換素子2上にそれぞれ形成される。カラーフィルタ層4を構成する複数色の各カラーフィルタは、光電変換素子2に入射する光の経路において、特定の波長の光を透過する役割がある。本実施形態では、カラーフィルタ層4を構成する複数のカラーフィルタは、レッド、グリーン及びブルーの3色のうちいずれか1つの色を透過させるものであり、3色のカラーフィルタR、G、Bを、
図2に示すように、ベイヤー配列したものである。
【0012】
複数のマイクロレンズ5として、
図3に示すように、カラーフィルタ層4における、対応するカラーフィルタR、G、Bの色毎に異なるプロフィール形状のマイクロレンズを配置する。
ここで、色がグリーンのカラーフィルタGに対応するマイクロレンズ5を第一マイクロレンズ7、色がレッドのカラーフィルタRに対応するマイクロレンズ5を第二マイクロレンズ8、色がブルーのカラーフィルタBに対応するマイクロレンズ5を第三マイクロレンズと呼ぶ。また、第一マイクロレンズ7の頂部の曲率半径をR1、第二マイクロレンズ8の頂部の曲率半径をR2、第三マイクロレンズの頂部の曲率半径をR3と呼ぶ。
【0013】
そして、
図3に示すように、第一マイクロレンズ7の頂部の曲率半径R1が、第二マイクロレンズ8の頂部の曲率半径R2よりも小さくなるように、第一マイクロレンズ7及び第二マイクロレンズ8の形状を設計する。
また、複数のマイクロレンズ5の縁部は隣接するマイクロレンズ間で谷状の谷部9によって連結されている。
【0014】
複数のマイクロレンズの配置の対角方向(
図2のb-b′方向)且つ半導体基板1の板厚方向の断面形状を対角断面とした場合、
図4に示すように、対角断面における谷部9は、曲率半径Rの曲面形状を有している。
ここで、複数のマイクロレンズ5の配列は、カラーフィルタ層4を構成する複数のカラーフィルタの配列に対応して形成されているため、複数のマイクロレンズ5の対角方向と、複数のカラーフィルタの対角方向とは同義である。対角方向は、各カラーフィルタが矩形形状であれば、対角線方向となる。又は、斜めに並ぶカラーフィルタの中央部を結ぶ方向を対角方向とする。
【0015】
本発明者は、マイクロレンズ5の受光感度について鋭意検討を行った結果、受光感度を向上するにはグリーン画素、レッド画素、ブルー画素毎に対応して配置されるマイクロレンズ5の形状が大きく影響していることを見出した。そして、画素毎にマイクロレンズ5の形状を変えることで、固体撮像素子の受光感度の向上に成功した。特にグリーン画素、レッド画素においてその効果が大きかった。
【0016】
具体的には第二マイクロレンズ8の頂部の曲率半径R2を、第一マイクロレンズ7の頂部の曲率半径R1よりも大きくすると良いことを突き止めた。すなわち、第一マイクロレンズ7と第二マイクロレンズ8の関係がR2>R1を満たすとき、各画素の受光感度を高めることができることを確認した。
R2>R1を満たす一例として、第二マイクロレンズ8の形状を球面形状とし、第一マイクロレンズ7の形状を球面形状よりも曲率半径の小さい放物面形状とすることが挙げられる。なお、第二マイクロレンズ8の形状を第一の放物面形状とし、第一マイクロレンズ7の形状を第一の放物面形状よりも曲率半径の小さい第二の放物面形状としてもよいことはいうまでもない。
【0017】
また、第三マイクロレンズ(不図示)の頂部の曲率半径R3は、谷部9の曲率半径Rの大きさに応じて設定することが好ましい。すなわち、第三マイクロレンズの頂部の曲率半径R3は、谷部9の曲率半径Rが135nm以上のときは、第一マイクロレンズ7の頂部の曲率半径R1よりも大きく、谷部9の曲率半径Rが135nm未満のときは、第二マイクロレンズ8の頂部の曲率半径R2よりも小さくすることが好ましい。
【0018】
各マイクロレンズ5の高さは、受光効率が向上する300nm以上600nm以下が好ましい。またRGB画素で、各マイクロレンズ5の高さは、同じであっても異なっていてもよい。
ここで、隣接するマイクロレンズ間の谷部9の曲率半径Rについて
図4を用いて詳細を説明する。
【0019】
マイクロレンズ間の谷部9の最も落ち込む点、つまり、
図4(b)に示す最下点11における曲率円10の半径が曲率半径Rである。また、この曲率半径Rは以下の式で表される。Rはマイクロレンズ間の谷部9の曲率半径、f(a)はマイクロレンズ間の谷部9の形状曲線、aは、マイクロレンズ間の谷部9の最下点11の値である。
【0020】
【0021】
<製造方法>
本実施形態は、光電変換素子の上部に形成されるマイクロレンズ5の製造方法に係わることであるため、
図5を参照しながら、以下この点につき実施例として詳しく説明する。
【実施例】
【0022】
以下の各実施例及び各比較例において、曲率半径の大きいマイクロレンズの形状として球面形状を、曲率半径の小さいマイクロレンズ形状として放物面形状を採用する場合で説明する。換言すると、球面形状の頂部の曲率半径>放物面形状の頂部の曲率半径の関係をもつ。
<実施例1>
実施例1では、マイクロレンズ5を組成する感光性マイクロレンズ材12は感光性透明樹脂であり、ポジ型の感光性樹脂を用いた例である。本実施例では、マイクロレンズ5の画素毎に異なるマイクロレンズ形状を露光法で制御する。このため、グレイトーンマスク13という特殊な露光用マスクを使用する。
【0023】
半導体基板1として、厚さ0.75mm、直径20cmのシリコンウェハを使用した。このシリコンウェハの表面上部に光電変換素子や遮光膜、パッシベーション膜を形成し、その最上層に、熱硬化タイプのアクリル樹脂塗布液を用いてスピンコートにて平坦化層を形成した。
次いで、平坦化層3の上に、カラーフィルタ層を構成する複数色のカラーフィルタを、グリーン、ブルー、レッドの3色にて3回のフォトリソグラフィの手法で、それぞれ形成した(
図5(a)を参照のこと。但し、
図5では光電変換素子2と平坦化層3は図示せず)。
【0024】
グリーンレジストは、色材としてC.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、さらにシクロヘキサノン、PGMEAなどの有機溶剤、ポリマーワニス、モノマー、開始剤を添加した構成のカラーレジストを用いた。
ブルーレジストは、色材としてC.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントバイオレット23を用い、さらにシクロヘキサノン、PGMAなどの有機溶剤、ポリマーワニス、モノマー、開始剤を添加した構成のカラーレジストを用いた。
【0025】
レッドレジストの色材は、C.I.ピグメントレッド117、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントイエロー139とした。色材以外の組成は、グリーンレジストと同様とした。
各々のカラーフィルタの膜厚は、0.5~0.8μmになるように形成した。複数のカラーフィルタの配列は、
図2のように、一画素おきにグリーンフィルタが設けられ、グリーンフィルタの間に一行おきにレッドフィルタとブルーフィルタが設けられた、いわゆるベイヤー配列とした。
【0026】
次に、カラーフィルタ層4上に1μmの膜厚のアルカリ可溶性・感光性・熱リフロー性を有するスチレン樹脂を塗布して感光性マイクロレンズ材12を形成した(
図5(b)参照)。
その後、感光性マイクロレンズ材12を、グレイトーンマスク13を使用する紫外i線によるフォトリソグラフィのプロセスによりパターン化した後、250℃で熱処理して、マイクロレンズ5を形成した(
図5(e)(d)参照)。
【0027】
グレイトーンマスク13は、作製したいマイクロレンズ形状の最下点に対して光透過率を高くした、遮光膜に濃淡のグラデュエーション(諧調)が付いたマスクとなる。この諧調の濃淡は、露光に用いる光では解像しない小径ドットの単位面積当たりの個数(粗密)差によって達成される。
本実施例1のグレイトーンマスク13は、マイクロレンズ間の谷部9の曲率半径Rを対角断面方向で225nm、グリーン画素に対応するマイクロレンズは、放物面形状、ブルーとレッド画素に対応するマイクロレンズは、球面形状になるように設計されたフォトマスクを使用した。マイクロレンズの高さが450nmの放物面形状と、球面形状が混成された画素構成を得た。
【0028】
ここで、グレイトーンマスク13を使用したフォトリソグラフィ法において、KRFレーザーを用いると、KRFレーザーの波長限界分解能により、紫外i線に比べ、マイクロレンズの曲面形状はより狭小に制御することが可能となる。
表1に、各例の構成を示す。なお、表1では、谷部を谷間と記載した。
【0029】
【0030】
表1に示す組み合わせの通り、実施例2~実施例6、比較例1~比較例4では、マイクロレンズ高さを450nmとし、マイクロレンズ間の谷部の曲率半径を変えることで、マイクロレンズの頂部の曲率半径が異なる放物面1~放物面5、球面1~球面5のマイクロレンズをそれぞれ作製した。いずれも作製した放物面、球面のマイクロレンズの頂部の曲率半径の関係は、球面形状の頂部の曲率半径>放物面形状の頂部の曲率半径である。
【0031】
<実施例2>
隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径Rが、対角断面方向で180nmとした点以外は、実施例1と同様にして実施例2のマイクロレンズを形成した。
<実施例3>
隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径Rが、対角断面方向で135nmとした点以外は、実施例1と同様にして実施例3のマイクロレンズを形成した。
【0032】
<実施例4>
本実施例4のグレイトーンマスク13はブルー画素に対応するマイクロレンズは放物面形状とし、隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径Rが、対角断面方向で135nmとした点以外は、実施例1と同様にして実施例4のマイクロレンズを形成した。
<実施例5>
本実施例5のグレイトーンマスク13はブルー画素に対応するマイクロレンズは放物面形状とし、隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径Rが、対角断面方向で90nmとした点以外は、実施例1と同様にして実施例5のマイクロレンズを形成した。
【0033】
<実施例6>
本実施例6のグレイトーンマスク13はブルー画素に対応するマイクロレンズは放物面形状とし、隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径Rが、対角断面方向で45nmとした点以外は、実施例1と同様にして実施例6のマイクロレンズを形成した。
<比較例1>
実施例1におけるRGB画素毎に異なる形状のマイクロレンズを形成する方法として、グレイトーンマスク13はグリーン画素に対応するマイクロレンズは、球面形状、ブルーとレッド画素に対応するマイクロレンズは、放物面形状になるように設計されたフォトマスクを使用した点以外は、実施例1と同様にして比較例1のマイクロレンズを形成した。
【0034】
<比較例2>
実施例2におけるRGB画素毎に異なる形状のマイクロレンズを形成する方法として、グレイトーンマスク13はグリーン画素に対応するマイクロレンズは、球面形状、ブルーとレッド画素に対応するマイクロレンズは、放物面形状になるように設計されたフォトマスクを使用した点以外は、実施例2と同様にして比較例2のマイクロレンズを形成した。
【0035】
<比較例3>
実施例5におけるRGB画素毎に異なる形状のマイクロレンズを形成する方法として、グレイトーンマスク13はグリーンとブルー画素に対応するマイクロレンズは、球面形状、レッド画素に対応するマイクロレンズは、放物面形状になるように設計されたフォトマスクを使用した点以外は、実施例5と同様にして比較例3のマイクロレンズを形成した。
【0036】
<比較例4>
実施例6におけるRGB画素毎に異なる形状のマイクロレンズを形成する方法として、グレイトーンマスク13はグリーンとブルー画素に対応するマイクロレンズは、球面形状、レッド画素に対応するマイクロレンズは、放物面形状になるように設計されたフォトマスクを使用した点以外は、実施例6と同様にして比較例4のマイクロレンズを形成した。
【0037】
表1に、各実施例と各比較例のRGB画素毎の受光感度を測定した結果も併記する。
表1から分かるように、隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径Rが225nmの実施例1と、谷部の曲率半径Rが180nmの実施例2の受光感度測定の結果は、グリーン画素に対応するマイクロレンズを放物面形状、レッド画素に対応するマイクロレンズを球面形状とし、ブルー画素に対応するマイクロレンズは球面形状とすることで、比較例1と比較例2に比べ、受光感度が向上することを確認した。
【0038】
実施例3と実施例4の受光感度測定の結果は、ブルー画素に対応するマイクロレンズを球面形状、若しくは放物面状とした場合、受光感度は同じであることを確認した。このことから、隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径が135nmの場合は、ブルー画素に対応するマイクロレンズ形状は、放物面、球面のどちらを選んでもよいとする。
隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率半径Rが90nmの実施例5と、谷部9の曲率半径Rが45nmの実施例6の受光感度測定の結果は、グリーン画素に対応するマイクロレンズを放物面形状、レッド画素に対応するマイクロレンズを球面形状とし、ブルー画素に対応するマイクロレンズを放物面形状とすることで、比較例3と比較例4に比べ、受光感度が向上することを確認した。
【0039】
また、表1において、グリーン画素と対応して配置するマイクロレンズ(すなわち第一マイクロレンズ)とレッド画素と対応して配置するマイクロレンズ(すなわち第二マイクロレンズ)を比較すると、球面形状の頂部の曲率半径>放物面形状の頂部の曲率半径の関係をもつことから、第一マイクロレンズ7と第二マイクロレンズの関係をR1<R2としたときに、谷部の曲率半径Rに影響することなく受光感度が向上していることが確認できる。
【0040】
また、第三マイクロレンズの頂部の曲率半径R3は、谷部の曲率半径Rが135nmのときを境に、谷部の曲率半径Rが135nm以上の場合は、第一マイクロレンズ7の頂部の曲率半径R1よりも大きくすることで受光感度が向上し、谷部の曲率半径Rが135nm未満のときは、第二マイクロレンズの頂部の曲率半径R2よりも小さくすることで受光感度の向上が確認できる。
尚、各実施例にてグリーンとブルー画素に対応する放物面形状マイクロレンズの頂部の曲率半径は、同じものを使用したが、異なるものであってもよい。また、レッドとブルー画素に対応する球面形状マイクロレンズの頂部の曲率半径は、同じものを使用したが、異なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1、半導体基板
2、光電変換素子
3、平坦化層
4、カラーフィルタ層
5、マイクロレンズ
6、固体撮像素子
7、第一マイクロレンズ
8、第二マイクロレンズ
9、谷部
10、隣接するマイクロレンズ間の谷部の曲率円
11、隣接するマイクロレンズ間の谷部の最下点
12、感光性マイクロレンズ材
13、グレイトーンマスク