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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】質問回答システム、質問回答方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20220705BHJP
   G06F 3/04817 20220101ALI20220705BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20220705BHJP
【FI】
G06F16/90 100
G06F3/04817
G06Q50/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017251086
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019117517
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 淳志
(72)【発明者】
【氏名】安積 裕也
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-209820(JP,A)
【文献】特開2013-109575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0042057(US,A1)
【文献】特開2010-020390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0063993(US,A1)
【文献】大川 良希 外1名,対話者の感情を推定した応答文生成のための言語モデルの提案,一般社団法人 人工知能学会 第29回全国大会論文集CD-ROM [CD-ROM] 2015年度 人工知能学会全国大会(第29回)論文集,日本,社団法人人工知能学会,2015年06月02日,pp. 1--2 (1K3-5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06F 3/048-3/04895
G06Q 50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対話形式のユーザインタフェースを提供するユーザインタフェースサーバと、学習データ生成システムとを備える質問回答システムであって、
学習データ生成システムが、
問い合わせに対する回答の情報に対し、当該問い合わせから推定したユーザの感情に対応した感情表現に関する情報を付加した学習データを生成する感情表現部と、
生成した前記学習データを、問い合せに対する回答を導出する回答生成エンジンに送信する学習データ提供部と
を備え、
前記ユーザインタフェースサーバが、
ユーザからの問い合わせを入力する入力部と、
入力された問い合わせを前記回答生成エンジンに出力する出力部と、
前記問い合わせに対応して前記回答生成エンジンが導出する、ユーザの質問内容から推定されるユーザの感情に対応した感情表現の情報が付加された回答を、当該回答生成エンジンから受信する受信部と、
前記回答生成エンジンから受信した回答を前記ユーザに対して送信する送信部と
を備え、
前記感情表現部が、
前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答のみではなく、当該感情とは異なる感情に対応する感情表現が付加された回答を生成し、前記問い合せと、複数の異なる前記感情表現が付加された回答とを前記学習データとして生成し、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答を推奨回答とする
質問回答システム。
【請求項2】
前記ユーザインタフェースサーバが提供するユーザインタフェースは感情情報を入力できるインタフェースを備え、
前記ユーザインタフェースサーバが、
前記インタフェースから入力された前記ユーザの感情情報を、前記問い合せとともに入力し、
前記回答生成エンジンが導出した前記ユーザの前記問い合せ及び前記感情情報に対応した前記回答を前記ユーザに出力する
ことを特徴とする請求項に記載の質問回答システム。
【請求項3】
前記感情表現部が、少なくとも日時や季節、天候を含む環境の状況を示す環境パラメータを用いて、前記学習データを生成する
ことを特徴とする請求項1または請求項に記載の質問回答システム。
【請求項4】
前記感情表現部が、感情表現の情報が付加された回答に加えて、当該回答に対応するキャラクタアイコンを含む学習データを生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の質問回答システム。
【請求項5】
対話形式のユーザインタフェースを提供するユーザインタフェースサーバと、学習データ生成システムとを備える質問回答方法であって、
学習データ生成システムにおける、
感情表現部が、問い合わせに対する回答の情報に対し、当該問い合わせから推定したユーザの感情に対応した感情表現に関する情報を付加した学習データを生成する感情表現過程と、
学習データ提供部が、生成した前記学習データを、問い合せに対する回答を導出する回答生成エンジンに送信する学習データ提供過程と、
前記ユーザインタフェースサーバにおける、
ユーザからの問い合わせを入力する入力過程と、
入力された問い合わせを前記回答生成エンジンに出力する出力過程と、
前記問い合わせに対応して前記回答生成エンジンが導出する、ユーザの質問内容から推定されるユーザの感情に対応した感情表現の情報が付加された回答を、当該回答生成エンジンから受信する受信過程と、
前記回答生成エンジンから受信した回答を前記ユーザに対して送信する送信過程部と
を含み、
前記感情表現過程では、
前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答のみではなく、当該感情とは異なる感情に対応する感情表現が付加された回答を生成し、前記問い合せと、複数の異なる前記感情表現が付加された回答とを前記学習データとして生成し、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答を推奨回答とする、ことを含む
質問回答方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質問回答システム、質問回答方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自治体や企業での問い合わせへの対応や申込みの受付などは、コールスタッフが対応していることが多い。しかしながら、コールスタッフによる対応では、多大な人的資源が必要になる。そこで、ネットワークを活用して、自治体や企業が個人情報を適切に管理しながら、問い合わせへの対応や申込みの受付などをより効率的に行うことが要望されている。また、ユーザと対話を行いながら、質問の回答を導くような対話型のシステムとしては、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に示されるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-20937号公報
【文献】特開平11-44755号公報
【文献】特開2003-58464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
問い合わせ内容に対する迅速な応答、問い合わせ対応が可能な時間の拡大、オペレータの熟練度にかかわらない安定した対応といった業務品質向上や業務効率化のニーズから、チャットボットが急速に注目を浴びている。チャットボットは、オペレータに代わってコンピュータと対話することで、ユーザの質問に対する問題解決に当たるものである。しかしながら、従来のチャットボットを利用したサービスでは、無味乾燥で単調な受け答えや、パターン化された回答である。このため、チャットボットの知識量を増やし、問い合わせに対する回答の正答率を上げたとしても、チャットボットの回答に対して親しみや共感などを得たい場合、顧客(ユーザ)が十分な満足を得られていない。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、顧客(ユーザ)の質問内容などから、この顧客の感情状態を推定し、この感情状態に対応した感情表現を含む回答が行え、顧客満足度を向上できる質問回答システム、質問回答方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る質問回答システムは、対話形式のユーザインタフェースを提供するユーザインタフェースサーバと、学習データ生成システムとを備える質問回答システムであって、学習データ生成システムが、問い合わせに対する回答の情報に対し、当該問い合わせから推定したユーザの感情に対応した感情表現に関する情報を付加した学習データを生成する感情表現部と、生成した前記学習データを、問い合せに対する回答を導出する回答生成エンジンに送信する学習データ提供部とを備え、前記ユーザインタフェースサーバが、ユーザからの問い合わせを入力する入力部と、入力された問い合わせを前記回答生成エンジンに出力する出力部と、前記問い合わせに対応して前記回答生成エンジンが導出する、ユーザの質問内容から推定されるユーザの感情に対応した感情表現の情報が付加された回答を、当該回答生成エンジンから受信する受信部と、前記回答生成エンジンから受信した回答を前記ユーザに対して送信する送信部とを備え、前記感情表現部が、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答のみではなく、当該感情とは異なる感情に対応する感情表現が付加された回答を生成し、前記問い合せと、複数の異なる前記感情表現が付加された回答とを前記学習データとして生成し、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答を推奨回答とすることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る質問回答システムは、前記ユーザインタフェースサーバが提供するユーザインタフェースは感情情報を入力できるインタフェースを備え、前記ユーザインタフェースサーバが、前記インターフェースから入力された前記ユーザの感情情報を、前記問い合せとともに入力し、前記回答生生成エンジンが導出した前記ユーザの前記問い合せ及び前記感情情報に対応した前記回答を前記ユーザに出力することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る質問回答システムは、前記感情表現部が、少なくとも日時や季節、天候を含む環境の状況を示す環境パラメータを用いて、前記学習データを生成することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る質問回答システムは、前記感情表現部が、感情表現の情報が付加された回答に加えて、当該回答に対応するキャラクタアイコンを含む学習データを生成することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る質問回答方法は、対話形式のユーザインタフェースを提供するユーザインタフェースサーバと、学習データ生成システムとを備える質問回答方法であって、学習データ生成システムにおける、感情表現部が、問い合わせに対する回答の情報に対し、当該問い合わせから推定したユーザの感情に対応した感情表現に関する情報を付加した学習データを生成する感情表現過程と、学習データ提供部が、生成した前記学習データを、問い合せに対する回答を導出する回答生成エンジンに送信する学習データ提供過程と、前記ユーザインタフェースサーバにおける、ユーザからの問い合わせを入力する入力過程と、入力された問い合わせを前記回答生成エンジンに出力する出力過程と、前記問い合わせに対応して前記回答生成エンジンが導出する、ユーザの質問内容から推定されるユーザの感情に対応した感情表現の情報が付加された回答を、当該回答生成エンジンから受信する受信過程と、前記回答生成エンジンから受信した回答を前記ユーザに対して送信する送信過程部とを含み、前記感情表現過程では、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答のみではなく、当該感情とは異なる感情に対応する感情表現が付加された回答を生成し、前記問い合せと、複数の異なる前記感情表現が付加された回答とを前記学習データとして生成し、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答を推奨回答とする、ことを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る質問回答方法、対話形式のユーザインタフェースを提供するユーザインタフェースサーバと、学習データ生成システムとを備える質問回答方法であって、学習データ生成システムにおける、感情表現部が、問い合わせに対する回答の情報に対し、当該問い合わせから推定したユーザの感情に対応した感情表現に関する情報を付加した学習データを生成する感情表現過程と、学習データ提供部が、生成した前記学習データを、問い合せに対する回答を導出する回答生成エンジンに送信する学習データ提供過程と前記ユーザインタフェースサーバにおける、ユーザからの問い合わせを入力する入力過程と、入力された問い合わせを前記回答生成エンジンに出力する出力過程と、前記問い合わせに対応して前記回答生成エンジンが導出する、ユーザの質問内容から推定されるユーザの感情に対応した感情表現の情報が付加された回答を、当該回答生成エンジンから受信する受信過程と、前記回答生成エンジンから受信した回答を前記ユーザに対して送信する送信過程部とを含み、前記感情表現過程では、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答のみではなく、当該感情とは異なる感情に対応する感情表現が付加された回答を生成し、前記問い合せと、複数の異なる前記感情表現が付加された回答とを前記学習データとして生成し、前記問い合わせにおける質問の情報から推定される感情に対応する感情表現が付加された回答を推奨回答とする、ことを含む
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、顧客(ユーザ)の質問内容などから、この顧客の感情状態を推定し、この感情状態に対応した感情表現を含む回答が行え、顧客満足度を向上できる質問回答システム及び質問回答システムの学習方法を提供することができる。例えば、回答生成エンジンにより対話形式で質問と回答とを行う際に、相手の「感情」に合わせて「共感」を示す感情表現の一言を加えられるようになる。これにより、ユーザの感情を推定して、顧客満足度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る質問回答システムの概要を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る質問回答システムにおける ユーザ端末の対話画面を示す図である。
図3】終話時のユーザの誘導方法の一例の説明図である。
図4】感情パラメータと追加される情報のうち、追加する一言の一例である。
図5】顧客の感情を理解したことを示すキャラクタアイコンの動作の一例の図である。
図6】環境パラメータとして日時を用いた場合の終話時に追加される一言の一例である。
図7】学習データ生成システムでの処理を示す機能ブロック図である。
図8】FAQデータの一例の図である。
図9】学習データの一例の図である。
図10】ユーザからの質問に対する回答生成エンジンの回答の一例の図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る質問回答システムにおけるユーザ端末の対話画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る質問回答システム1の概要を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る質問回答システム1は、ユーザ端末11と、ユーザインタフェースサーバ12と、回答生成エンジン13と、学習データ生成システム14とを備える。ユーザ端末11とユーザインタフェースサーバ12との間は、ネットワーク15により接続可能とされている。
【0017】
ユーザ端末11は、ユーザ(顧客)21が保有する端末である。ユーザ端末11としては、スマートフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)等が利用できる。スマートフォンやタブレット端末を用いる場合には、専用のアプリケーションプログラムが用意されている。また、ユーザ端末11としては、スマートスピーカ、ゲーム機、専用端末等を用いても良い。
【0018】
ユーザインタフェースサーバ12は、事業やアプリケーションについての問い合わせ窓口となるユーザインタフェースを提供する。本実施形態では、ユーザインタフェースサーバ12は、ユーザ端末11と回答生成エンジン13との間で、キャラクタアイコンと会話を楽しみながら問題解決が行える対話形式のユーザインタフェースを提供している。また、ユーザインタフェースサーバ12は、コールスタッフ22とのインタフェースも提供しており、回答生成エンジン13では対応できない質問事項については、ユーザ21は、コールスタッフ22と直接会話して、問題解決が行える。なお、回答生成エンジン13で全ての問題解決が可能になれば、コールスタッフ22は不要とできる。
【0019】
回答生成エンジン13は、ユーザ21とチャットで会話しながら、ユーザ21からの問い合わせに対する回答を対話形式で出力する。回答生成エンジン13は、ユーザインタフェースサーバ12を介してユーザ端末11から質問のテキスト文を受け取ると、入力テキスト文を解析し、最適な回答を導出(推定)し、ユーザインタフェースサーバ12を介して、導出した回答をユーザ端末11に返す。回答生成エンジン13は、最適な回答の導出を行う際、例えば、入力された問い合せのテキスト文に対して、形態素解析、意味解析、同意語の単語への変換処理等を行い、キーワードや意味に適合する最適なデータを構成し、自身の推論エンジンへの入力データとする。
【0020】
なお、会話形式の処理を行う回答生成エンジン13としては、質問に対する最適な回答が返せれば、どのような形式のものを用いても良い。本実施形態における回答生成エンジン13は、例えば、推定モデルとしてニューラルネットワークなどを用いた一般的な機械学習モデル、あるいは所定のルールにより回答を導出する質問部及び回答部からなる、ルールベース推論を行う一般的な推論エンジンなどのAI(artificial intelligence)システムを用いた機能により構成される。
【0021】
本実施形態では、回答生成エンジン13には、コールスタッフの顧客対応した経験による、過去の問合せに対する回答の履歴として蓄積されたFAQ(Frequently Asked Questions)データを用いて、問合せにおける質問とこの質問に対する回答とを学習データとして学習させている。このため、コールスタッフにより長期に渡って蓄積されてきた、過去の質問に対応した対顧客への回答履歴であるFAQデータを活かして、回答精度の向上が図れる。また、回答生成エンジン13を学習させる際に、キャラクタアイコンのキャラクタの持つイメージ(印象)に合わせるように回答のテキスト文の言い回しをキャラクタ毎に変換し、かつ顧客の感情に対応した感情表現を示す情報を付加したFAQデータを学習データとしている。これにより、キャラクタの有するイメージと一言の親和性を向上させることができ、回答生成エンジン13を、顧客が自身の質問の回答を得た際における満足度が高いシステムを構築できる。
【0022】
なお、顧客の感情に対応した感情表現を示す情報を付加する方法として、顧客の感情に対応した感情表現を示す一言を回答に付加する、感情表現を示す文言に修正する、等が挙げられる。また、ここではキャラクタのアイコンを用いる例で説明しているが、キャラクタのアイコンを用いない場合は、キャラクタの持つイメージ(印象)に合わせるように回答のテキスト文の言い回しをキャラクタ毎に変換する処理を省略することができる。また、キャラクタを用いる場合は、回答生成エンジン13で回答の導出と共に表示するキャラクタのアイコンを導出し、生成された回答内容にあったキャラクタのアイコンを表示してもよい。
【0023】
また、上述したように、本実施形態においては、感情表現を示す一言を回答に付加したFAQデータを学習データとして回答生成エンジン13の推論エンジンを学習させるのではなく、回答生成エンジン13に対して、データベースを備え、キャラクタに対応した言い回し、あるいは感情表現を示す一言を、質問のテキスト文から抽出した単語及び感情パラメータの各々の組合わせに対応して、上記データベースに蓄積する構成とする構成としても良い。そして、回答生成エンジン13内の推定エンジンが質問のテキスト文を、抽出した単語及びキャラクタに対応した言い回しに変換し、感情パラメータに対応した感情表現を示す一言を付加する回答生成部を、回答生成エンジン13内に別に設ける構成としても良い。
【0024】
なお、本実施形態では、質問回答システム1は、例えば、テキスト文を用いたチャットにより、ユーザ21と仮想のキャラクタとが会話するような構成となっている。
しかしながら、音声認識機能を備え、ユーザ21と音声による会話を行いながら、ユーザ21からの問い合わせに対する回答を音声で出力するように構成しても良い。この場合、回答の音声は、テキスト文をキャラクタのイメージに対応する周波数や抑揚を持たせた音声データに変換し、よりキャラクタの有するイメージと一言の親和性を向上させるようにしても良い。
【0025】
また、このとき、ユーザインタフェースサーバ12は、ユーザ21の問合せを入力し、問合せのテキスト文あるいはこの問合せの音声をテキスト文に変換する。そして、ユーザインタフェースサーバ12は、質問のテキスト文あるいは変換した質問のテキスト文を、回答生成エンジン13あるいは学習データ生成システム14に対して出力する。また、ユーザインタフェースサーバ12は、回答生成エンジン13から上記質問に対する回答のテキスト文が供給された場合、この回答のテキスト文を音声データに変換し、ユーザ端末11に回答を音声で出力させるようにする。
【0026】
学習データ生成システム14は、すでに述べたように、蓄積されたコールスタッフの過去の顧客対応の履歴を回答生成エンジン13に反映させるために、コールスタッフ22対応したFAQデータから、回答生成エンジン13への学習データを生成して提供している。すなわち、コールスタッフは、例えば、BPO(Business Process Outsourcing)センターなどのサポートの下に、音声通信やテキストによるチャットでユーザ21と直接的に会話しながら、日々、顧客対応の業務を行っている。BPOセンターは、コールスタッフから新たな質問に対する回答の情報提供を受けると、コールスタッフからの質問/回答の情報を蓄積して履歴の更新を行う。また、学習データ生成システム14は、所定の期間毎に、新たに蓄積された問合せとその回答とから学習データを生成し、回答生成エンジン13に対しれ、推論エンジンの再学習を行わせる構成としてもよい。
【0027】
このようにして、学習データ生成システム14は、コールスタッフの経験に基づく多数のFAQデータが履歴として蓄積されており、また、徐々にこの蓄積される履歴のFAQデータが増加していく。
学習データ生成システム14は、回答生成エンジン13の学習データを生成する際に、履歴として蓄積されているFAQデータにおける回答を、キャラクタに合わせた言い回しに変換する処理を行い、かつ感情表現を示す一言の情報を付加し、この言い回しを変換し、かつ感情表現を示す一言を付加したFAQデータを学習データとして、データベースに蓄積する。学習データ生成システム14は、このデータベースにおける言い回しを変換し、かつ感情表現を示す一言のデータを付加した回答のFAQデータを、学習データとして所定の周期毎に回答生成エンジン13に送り、回答生成エンジン13にこの学習データを用いた学習あるいは再学習を行わせる。
【0028】
これにより、回答生成エンジン13は、キャラクタに合わせた言い回しに変換する処理を行い、感情表現を示す一言のデータを付加したFAQデータを学習データとして、推論エンジンに対する学習(機械学習或いはルールベースの推論エンジンの再構築)を行わせる。この学習により、回答生成エンジン13は、ユーザインタフェースサーバ12を介してユーザ端末11から質問のテキスト文を受け取ると、質問のテキスト文の解析結果を入力し、キャラクタアイコン(後述)自身のキャラクタに合わせた言い回しへの変換及び感情表現を示す一言のデータが付加された最適な回答を導出し、ユーザインタフェースサーバ12を介して、ユーザ端末11に返す。すなわち、ユーザインターフェースサーバ12は、問合せにおけるユーザの質問内容から推定される、このユーザの感情に対応した感情表現を示す一言を付加した回答を、回答生成エンジン13から入力する。そして、ユーザインターフェースサーバ12は、回答生成エンジン13から供給されたユーザの感情に対応した感情表現を示す一言を付加した回答を、ユーザ端末11に対して出力する。
【0029】
ネットワーク15は、例えばインターネットやイントラネットと称されるIP(Internet Protocol)ネットワークである。物理層及びデータリンク層等の下位層の構成としては、LAN(Local Area Network)、無線LAN(IEEE802.11)、移動体通信網、CATV(Community Antenna TeleVision)通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、衛星通信網等が想定される。
【0030】
次に、本発明の第1の実施形態に係る質問回答システム1の概要について説明する。
【0031】
本発明の第1の実施形態に係る質問回答システム1は、企業や自治体のサービスや手続きについての問い合わせ、アプリケーションの使い方に関する問い合わせに利用できる。事業やアプリケーションについての問い合わせを行う際には、ユーザ21は、各自のユーザ端末11によりユーザインタフェースサーバ12のURL(Uniform Resource Locator)をアクセスする。
【0032】
ユーザ端末11でユーザインタフェースサーバ12のURLをアクセスすると、ユーザ端末11に、図2に示すような対話画面100が表示される。図2は、本発明の第1の実施形態に係る質問回答システムにおける ユーザ端末11の対話画面の一例を示す図である。図2(A)に示すように、対話画面100の中央には、キャラクタアイコン101が表示される。キャラクタアイコン101の吹き出し102に、ガイダンス等を表すテキストが表示される。対話画面100の下側には入力欄103が設けられる。図2(B)に示すように、ユーザ21は、この入力欄103にテキスト文(あるいは音声)を入力する。
【0033】
ユーザインタフェースサーバ12は、ユーザ端末11から供給される、ユーザ21が入力したテキスト文(あるいは音声を変換したテキスト文)を、回答生成エンジン13に対して送信する。回答生成エンジン13は、ユーザ21の入力した問い合せのテキスト文を解析し、この問合せの質問に対する最適な回答を推論エンジンにより導出し、ユーザインタフェースサーバ12に対して出力する。そして、ユーザインタフェースサーバ12は、回答生成エンジン13の導出した回答をユーザ端末11に返信する。これにより、図2(C)に示すように、対話画面100には、ユーザ21が入力したテキスト105と、キャラクタアイコン101による回答を示すテキスト106とが交互に表示される。
【0034】
なお、この実施形態では、キャラクタアイコン101が画面の左右のほぼ中心に、吹き出しにより隠れないように表示されている。これは、画面の左右の中央にあり、常に観察できる状態で表示される画面構成は、シンメトリ効果から、ユーザ21に安心感を与えるという心理的効果があるからである。勿論、キャラクタアイコン101を左右の一方の側に配置し、キャラクタアイコン101による回答を示すテキストと、ユーザ21の入力テキストとを左右に分けるようにしてもよい。この場合、回答を示すテキストと、ユーザ21の入力テキストとが一目して分かるようになる。
【0035】
このように、本実施形態では、ユーザ21はキャラクタアイコン101と会話をしながら、事業やアプリケーションについての問い合わせに対する回答を得ることができる。また、本実施形態では、回答生成エンジン13を学習させる際に、キャラクタアイコン101に合わせて言い回しを変換し、感情表現を付加したFAQデータを学習データとしている。このため、ユーザ21の質問に対する回答に感情表現が付加されることになる。
【0036】
例えば、ユーザ21が入力欄103に「結婚したときの手続きを教えて下さい」というテキスト文を入力すると、回答生成エンジン13は、「わあ、おめでとう」という「喜び」の感情を表現してから、「婚姻届などは各市の市民課などに問い合わせてみてね」というような回答を、キャラクタアイコン101の言葉として返答する。
【0037】
また、回答生成エンジン13は、終話時に、気遣いのメッセージを送る。すなわち、回答生成エンジン13は、例えば朝なら「今日も1日がんばってね」、月曜午前なら「今週もがんばっていこー」、夜なら「もうこんな時間、ゆっくり休んでね」というような一言を、キャラクタアイコン101の言葉として最後に付け加える。
【0038】
なお、終話時のユーザの誘導方法としては、回答生成エンジン13はユーザ21にサービスに対する感想や意見を誘導する質問をし、ユーザ21から返される一言を分析して、終話時の一言を決めるようにしても良い。図3は、このような終話時のユーザの誘導方法の一例の説明図である。この例では、回答生成エンジン13は、事業系質問の3秒後に、「お役に立てたかな?他に相談はない?」というような、ユーザ21にサービスに対する感想や意見を誘導する質問を行う。
【0039】
そして、ユーザ21から「ありがとう」というような肯定的な一言が返されたら、回答生成エンジン13は、「わーい、どういたしまして…」のような一言をユーザ21に返す。ユーザ21から「役に立ってないよ」のような否定的な言葉が返されたら、回答生成エンジン13は、「ガーン、、力不足でごめんね、…」というような一言をユーザ21に返す。
【0040】
このように、本実施形態では、回答生成エンジン13に、感情を考慮した人間的な回答の文章を出力させている。これにより、顧客の質問内容に対する回答生成エンジン13からの回答を、コールスタッフからの回答に近づけ、かつ画面に表示されるキャラクタのイメージに対応した言い交わし、問い合せ時における感情に対応した感情表現の一言を付加した回答をユーザ21が得ることができ、問い合せの回答に対するユーザ21の満足度を向上させることができる。このことについて、更に説明する。
【0041】
質問回答システム1における顧客満足度の構成要素としては、「回答の精度」、「フォローアップの迅速さ」とともに、「対応者の知識、能力」、「親身な対応」が重要な要素となる。特に、礼節を守り、顧客の状況や感情を推定(以下、理解と示す場合もある)して問い合わせに答える、というような「親身な対応」が、顧客満足度の構成要素としては非常に重要になっている。コールスタッフ22の場合には、「親身な対応」を十分に考慮して、顧客に対応している。回答生成エンジン13が対応する場合にも、コールスタッフ22の場合と同様に、「回答の精度」、「フォローアップの迅速さ」とともに、顧客の状況や感情を理解した「親身な対応」が求められる。
【0042】
「親身な対応」を感じさせる顧客対応としては、相手の「感情」に合わせて「共感」を示す感情表現としての一言を加えることが重要であると考えられる。すなわち、人間の感情としては「困り」、「怒り」、「喜び」、「悲しみ」等がある。相手の感情が「困り」であれば「それは困ったね」、相手の感情が「怒り」であれば「ごめんね」、というように、相手の感情に合わせた感情表現としての一言を加えると、心理学的な効果により、顧客満足度が向上する。
【0043】
そこで、本実施形態において、回答生成エンジン13の学習を行う際に、学習データ生成システム14は、問い合せと、この問い合せに対するオペレータの回答とが履歴として蓄積されているFAQデータに対して、感情パラメータを付加して、学習データとして回答生成エンジン13に出力している。回答生成エンジン13は、このような感情パラメータの付加された学習データを学習することにより、ユーザの感情パラメータに応じて、ユーザの感情を推定し、感情表現としての情報を追加して回答する。なお、追加する情報としては、前述のように、感情表現としての一言を加えること以外に、テキスト文の一部を感情表現を示す文言に修正する、等が挙げられる。
【0044】
図4は、感情パラメータと追加される情報のうち、追加する一言の一例である。例えば、「喜び」の感情パラメータなら、「わあ、おめでとう」の一言を追加する。「悲しみ」の感情パラメータなら、「悲しそうだね」の一言を追加する。「困り」の感情パラメータなら、「困っているみたいだね」の一言を追加する。「怒り」の感情パラメータなら、「怒らないでね。ごめんね」の一言を追加する。これにより、回答生成エンジン13がユーザ21と対応する場合にも、相手の「感情」に合わせて「共感」を示す一言を加えられるようになり、顧客満足度を向上させることができる。
【0045】
なお、上述の例では、回答生成エンジン13が顧客の感情を感情パラメータに対応して推定し、この感情に対応した一言を追加してユーザに対する回答を返すようにしている。しかし、感情表現を文字列で表現するだけではなく、顧客の感情を回答生成エンジン13が理解したように、キャラクタアイコン101が感情表現を示す動作を行うように動かすようにしても良い。図5は、顧客の感情を理解したことを示すキャラクタアイコン101の動作の一例である。キャラクタアイコン101を感情表現を示す動作を行うように動かすことで、ボディランゲージによりユーザに感情を伝えることができ、顧客満足度が向上する。図5(A)は、通常の表情をしたキャラクタアイコン101を示している。また、図5(B)は、手を振って挨拶をしているキャラクタアイコン101を示している。図5(C)は、困った表情をしたキャラクタアイコン101を示している。
【0046】
この場合、学習データ生成システム14は、上述した感情表現を示す動作のアニメーションデータ(動画データ)を、学習データとしてのFAQデータにおける回答に対応して、回答生成エンジン13に学習を行わせる。これにより、回答生成エンジン13は、顧客の感情に対応した回答のテキスト文とともに、顧客の感情に対応した感情表現としての動作を行うキャラクタのアニメーションを導出し、ユーザインタフェースサーバ12に出力する。そして、ユーザインタフェースサーバ12は、回答生成エンジン13から供給される感情表現が付加された回答とともに、顧客の感情に対応した感情表現としての動作を行うキャラクタのアニメーションをユーザ端末11へ送信する。
【0047】
また、人間は、会話の中において、最後に示された文字あるいは言葉を最も印象的に覚えている。このことから、終話時に、印象に残る感情表現を示す言葉を追加することが重要であると考えられる。そこで、本実施形態において、学習データ生成システム14は、感情表現を示す一言として、ユーザとの終話時の日時や季節、天候などの環境状況を示す環境パラメータを付加した一言を付加して、これを学習データとして回答生成エンジン13に出力している。回答生成エンジン13は、このような環境パラメータに対応した感情表現の一言が付加された学習データを学習することにより、そのときの環境状況及びユーザの感情に対応した、効果的な終話時の感情表現を示す一言を追加する。
【0048】
また、環境パラメータを用いてを生成された学習データにより回答を導出する場合、ユーザーインターフェースサーバ12が内蔵する時計機能や外部の天候データベース等から日時、季節、天候等の環境パラメータを取得し、回答生成エンジン13に送信し、回答生成エンジン13で環境パラメータを用いた回答を導出してもよいし、回答生成エンジン13が回答を導出する際に、回答生成エンジン13が内蔵する時計機能や外部の天候データベース等から日時、季節、天候等の環境パラメータを取得し環境パラメータを用いた回答を導出してもよい。
【0049】
図6は、環境パラメータとして日時を用いた場合の終話時に追加される一言の一例である。例えば、「朝」の環境パラメータなら、「今日も1日がんばってね」の一言を追加する。「月曜午前」の環境パラメータなら、「今週もがんばっていこー」の一言を追加する。「夜」の環境パラメータなら、「もうこんな時間、ゆっくり休んでね」の一言を追加する。「金曜日の午後~土曜日の午前」の環境パラメータなら、「お互い良い週末をー」の一言を追加する。
【0050】
また、環境パラメータには、前述のように、季節の情報も含まれており、例えば、季節が「冬」であれば、「寒いから風邪を引かないようにね!」の一言を追加する。
また、上述した環境パラメータに加えて、会話時の天気を、インターネットなどのネットワークから天気予報などから抽出し、天気パラメータとして用いてもよい。この場合、会話時の天気に対応した一言、例えば、雨が降りそうであれば、「傘を忘れずにね!」の一言を追加する。
また、会話の最初に示された文字あるいは言葉も印象的に覚えている場合もあるため、ユーザとの会話開始時に環境パラメータを付加した一言を付加して、これを学習データとして回答生成エンジン13に出力してもよい。例えば、季節が「冬」であれば、「おはよう、今日も寒いね。」の一言を追加する。
【0051】
図7は、学習データ生成システム14での処理を示す機能ブロック図である。図7に示すように、学習データ生成システム14は、表現変換部151と、感情表現部152と、学習データ提供部153とを備えている。
【0052】
表現変換部151は、問い合せ及びこの問合せに対するコールスタッフの回答の履歴におけるFAQデータにおける回答のテキスト文の言い回しの文章を、キャラクタアイコン101のキャラクタのイメージに合わせた言い回しの文章のテキスト文に変換する。
【0053】
感情表現部152は、キャラクタイメージの言い回しに合わせた、ユーザへの回答のテキスト文に対して感情表現の一言のデータ(感情パラメータ)を付加する。このとき、感情表現部152は、問い合せのテキスト文から感情パラメータを示す情報を、テキスト文における感情分析により抽出する。この感情分析は、例えばFAQデータにおける問い合せのテキスト文を形態素解析し、得られた各単語からなる単語列がネガティブかポジティブのいずれを示しているかのネガポジ分析(文章がネガティブな意味合いを持つのか、ポジティブな意味合いを持つのかの分析)をすることで行う。感情表現部152は、例えば、問い合せのテキスト文において、「結婚」のようなキーワードがあれば、「喜び」であると推定でき、この場合には、「喜び」の感情表現の一言のデータを感情パラメータとして付加する。
【0054】
感情表現部152は、同様に、「悲しみ」のキーワードがあれば、「悲しみ」の感情表現の一言のデータを付加し、「困り」のキーワードがあれば、「困り」の感情表現の一言のデータを付加し、「怒り」のキーワードがあれば、「怒り」の感情表現の一言のデータを付加する。なお、感情分析は、上述の単語列に対してネガティブかポジティブのネガポジ分析だけでなく、各種のものが提案されている。感情表現部152での感情分析は、どのように行っても良い。また、厳密な感情分析には、人間の補助が必要である。感情表現部152での感情分析には、コールスタッフやBPOセンターのオペレータのサポートがあっても良い。
【0055】
学習データ提供部153は、表現変換部151でキャラクタに合わせた言い回しに変換し、感情表現部152で感情パラメータを付加した回答を含むFAQデータを、学習データとして回答生成エンジン13に送信し、回答生成エンジン13を学習させる。
【0056】
図8は、コールスタッフの問い合せに対する回答を履歴として蓄積したFAQデータの一例である。図8に示すように、例えば「結婚したときの手続きを教えて下さい」という質問に対して、「婚姻の届出などは各市の市民課などにお問い合わせください」というように、よくある質問とその回答とがFAQデータとして、学習データ生成システム14のデータベースに学習データとして蓄積される。このFAQデータは、コールスタッフ22を対象としたものであることから、図8に示すように、フォーマルな言葉使いになっているのが一般的である。
【0057】
図9は、学習データ生成システム14から回答生成エンジン13に送られる学習データの一例である。図9に示したように、フォーマルな言葉使いになっているFAQデータにおける回答は、表現変換部151により、キャラクタアイコン101のイメージに合わせた言い回しに変換される。これにより、表現変換部151は、例えば、「婚姻の届出などは各市の市民課などにお問い合わせください」というフォーマルな表現のFAQデータを、図9に示すように、「婚姻届などは各市の市民課などに問い合わせてみてね」というように、キャラクタアイコン101のキャラクタのイメージに合わせた言い回しに変換する。
【0058】
また、感情表現部152は、FAQデータの回答に対して、問い合せにおけるユーザの感情に対応した感情パラメータを付加する。これにより、図9に示すように、例えば「結婚したときの手続きを教えて下さい」という質問では、「結婚」のようなキーワードから「喜び」の感情が推定され、「喜び」の感情パラメータが付加される。このキャラクタアイコン101に合わせた言い回しに変換され、感情パラメータが付加されたFAQデータが、学習データとして、回答生成エンジン13に送られる。
すなわち、学習データ生成システム14は、FAQデータにおける問い合せのテキスト文から単語などを抽出し、質問内容を示す質問データと質問した顧客の感情を示す感情パラメータを付加した回答とを、回答生成エンジン13への学習データとしている。ここで、学習データ生成システム14は、学習データにおける問い合せに対する回答のテキスト文を、キャラクタのイメージに対応した言い回しに変換し、かつこのテキスト分に対して感情パラメータに対応した一言を付加して、回答生成エンジン13の出力する回答である導出結果として用いている。
【0059】
図10は、ユーザ21からの質問に対する回答生成エンジン13の回答の一例である。回答生成エンジン13は、図9に示すように、キャラクタアイコン101に合わせた言い回しに変換され、感情パラメータが付加されたFAQデータを学習データとして学習する。また、回答生成エンジン13は、感情パラメータに対して、図4に示したような一言を追加する。したがって、ユーザ21からの質問に対する回答生成エンジン13の回答は、図10に示すようになる。
【0060】
例えば、ユーザ端末11から、「結婚したときの手続きを教えて下さい」というような質問があると、回答生成エンジン13は、図9に示したように、「婚姻届などは各市の市民課などに問い合わせてみてね」という回答と、「喜び」の感情パラメータを検索する。「喜び」の感情パラメータを検索したことから、回答生成エンジン13は、図4に示した追加する一言から、ユーザの感情に対応した「わあ、おめでとう」の一言を導出して、この一言を回答をした後に、図9に示した「婚姻届などは各市の市民課などに問い合わせてみてね」というキャラクタのイメージに対応した言い回しによる回答のテキスト文を導出結果として出力する。
【0061】
その結果、図10に示すように、ユーザ端末11からの「結婚したときの手続きを教えて下さい」というような質問に対して、回答生成エンジン13は、この質問のテキスト文から感情パラメータを抽出し、他の質問も質問内容を示す単語とともにこの感情パラメータを入力データとすることにより、「わあ、おめでとう。婚姻届などは各市の市民課などに問い合わせてみてね」という、キャラクタの言い回し及び感情パラメータに対応する一言を付加した回答を導出し、この導出結果である回答を、ユーザインタフェースサーバ12を介してユーザ端末11へ返す。
【0062】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る質問回答システム1では、回答生成エンジン13に学習を行わせる際に、学習データ生成システム14のデータベースに蓄積されているFAQデータに対して、質問のテキスト文から抽出した感情パラメータを付加している。このような感情パラメータの付加され、回答のテキスト文にキャラクタに対応した言い回し及び上記感情パラメータに対応した一言を付加したFAQデータを学習データとして学習すると、回答生成エンジン13は、感情パラメータに応じて、顧客の感情を理解した一言を追加して回答するようになる。これにより、回答生成エンジン13がユーザ21と対応する場合に、相手の「感情」に合わせて「共感」を示す一言を加えられるようになり、問い合せに対応した回答に対する顧客満足度を向上させることができる。
【0063】
また、本発明の第1の実施形態に係る質問回答システム1では、回答生成エンジン13は、終話時に、気遣いのメッセージを送るようにしている。顧客は、最後の言葉を最も印象的に記憶している傾向が強く、終話時に気遣いのメッセージを送ると、仮想のキャラクタが顧客の感情に対して「共感」を有していると認識して親近効果が生じ、質問への仮想のキャラクタの回答に対する顧客満足度を向上させることができる。
【0064】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述の第1の実施形態では、学習データ生成システム14で、FAQデータにおける質問のテキスト文からユーザの感情を推定して、FAQデータにおける回答のテキスト文に対して、感情パラメータとして、言い回し及び顧客の感情に対応した情報を付加することで、ユーザの感情に合わせた対応を回答生成エンジン13が行えるようにしている。
一方、この第2の実施形態では、感情パラメータを示す言い回し及び顧客の感情に対応した情報を付加する際、顧客の感情とは異なる複数の感情を示す情報を、異なる感情毎に対応させて付加して、学習データとしている。例えば、学習データ生成システム14は、ユーザの問い合せから推定される、このユーザの感情が「喜び」である場合、この感情と異なる「悲しみ」、「困り」、「怒り」などの感情表現を示す情報を付加した回答も学習データとする。そして、学習データ生成システム14は、ユーザの問い合せから推定される感情に対応する感情表現を、この問い合せに対する推奨回答として学習する。
また、ユーザインタフェースサーバ12は、感情を入力できるユーザインタフェースをユーザ端末11に提供し、ユーザ21から回答生成エンジン13に、問い合せにおけるユーザ21の感情の情報を直接送信できるようにしている。他の構成については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0065】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る質問回答システムにおける対話画面200を示すものである。図11に示すように、対話画面200の中央には、キャラクタアイコン101が表示される。キャラクタアイコン101の吹き出し102に、ガイダンス等を表すテキストが表示される。また、対話画面200には入力欄103が設けられる。これらの構成は、図2に示した第1の実施形態における対話画面100と同様である。
【0066】
本実施形態では、更に、対話画面200の下側に、感情選択欄210が設けられる。感情選択欄210には、それぞれ、「喜び」、「悲しみ」、「困り」、「怒り」の感情を表すアイコン211a、211b、211c、211dが配置されている。これらのアイコン211a、211b、211c、211dは、感情を入力できるユーザインタフェースとなる。ユーザ21は、入力欄103に質問事項のテキストを入力する際に、感情選択欄210に配置されているアイコン211a~211dの中から、自分の感情に近いものを選択する。そして、ユーザ端末11は、ユーザ21がアイコン211a~211dから選択したアイコンの示す情報を、ユーザ21の感情を示す情報としてユーザインタフェースサーバ21に送信する。これにより、ユーザインタフェースサーバ12は、ユーザ端末11から送信される、ユーザ21の感情を示す情報を、問い合せの質問のテキスト文とともに回答生成エンジン13に対して送信する。
【0067】
このように、本実施形態では、ユーザ21は、質問事項とともに、そのときの感情を回答生成エンジン13に送ることができる。回答生成エンジン13は、選択されたアイコン211a~211dの情報に基いて、ユーザ21の感情の情報を取得できる。回答生成エンジン13は、ユーザ21からの問い合せの質問に回答する場合、問い合せに対する回答として、このユーザ21が選択したアイコンに応じた感情の一言が追加された回答を、データベースから導出して回答を返す。一方、このとき、ユーザ21がいずれのアイコンも選択しなかった場合、回答生成エンジン13は、推奨回答を導出、すなわち、問い合せのテキスト文から抽出したユーザ21の感情に対応した回答を導出する。
【0068】
つまり、ユーザ21からの質問が「結婚したときの手続きを教えてください」であり、そのとき選択されたアイコンが「怒り」を示すアイコン211dであったとする。この場合、回答生成エンジン13は、「喜び」を共有する「わあ、おめでとう」の一言ではなく、怒りに対応した「申し訳ないです」の一言を追加して、「婚姻届などは各市の市民課などに問い合わせてみてね」という回答を返す。また、回答生成エンジン13は、ユーザ21の選択したアイコン211dにより、「結婚したときの手続きを教えてください」という質問に対する感情が「喜び」ではなく、「怒り」であるということを判定する。
【0069】
これに対して、ユーザ21からの質問が「結婚したときの手続きを教えてください」であり、そのとき選択されたアイコンが「困り」を示すアイコン211cであったとする。この場合、回答生成エンジン13は、「困り」を共有する「困っているみたいだね」の一言を追加して、「婚姻届などは各市の市民課などに問い合わせてみてね」という回答を返す。また、回答生成エンジン13は、ユーザ21にアイコン211cが選択されたことにより、「結婚したときの手続きを教えてください」という質問に対する感情が、どのように手続きをして良いか判らないという「困り」であるということを判定する。
【0070】
このように、本実施形態では、回答生成エンジン13は、ユーザ21の感情を直接取得し、顧客の感情を理解した感情表現の一言を追加している。これにより、ユーザ21は、自身の感情に的確に対応した一言が付加された回答を得ることができ、質問への回答に対する顧客満足度を、第1の実施形態に比較してより向上できる。すなわち、本実施形態では、回答生成エンジン13は、ユーザ21の感情を、ユーザ21の選択したアイコンの示す感情状態により直接取得するため、質問に対する感情を高い精度で判定することができ、質問への回答に対する顧客満足度を向上できる。
【0071】
また、第2の実施形態において、ユーザインターフェースサーバ12がユーザ21がアイコンで選択した感情を示す情報を、問い合せの質問のテキスト文とともに、回答生成エンジン13に対して送信していたが、ユーザインターフェースサーバ12が問い合せの質問のテキスト文のみを回答生成エンジン13に対して送信する構成としてもよい。この構成の場合、回答生成エンジン13は、質問のテキスト文から抽出した感情の一言が付加された推奨回答とともに、他の感情に対応した感情表現の回答それぞれも、ユーザインターフェースサーバ12に対して送信する。そして、ユーザインターフェースサーバ12は、ユーザ21がアイコンで選択した感情に対応する感情表現の一言が付加された回答を、問い合せに対する複数の回答から選択し、ユーザ端末11に対して送信する。
【0072】
上述した実施形態における質問回答システム1の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0073】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0074】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
11:ユーザ端末、12:ユーザインタフェースサーバ、13:回答生成エンジン、14:学習データ生成システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11