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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】パネル設置構造およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/94 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
E04B2/94
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018015638
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019132059
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 勝重
(72)【発明者】
【氏名】増田 弘
(72)【発明者】
【氏名】折原 良樹
(72)【発明者】
【氏名】豊島 一也
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-088954(JP,A)
【文献】特開平04-289358(JP,A)
【文献】特開平06-123144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/88-2/96
E04B 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の梁に固定される複数の支持部材と、前記梁の長手方向に並ぶように前記複数の支持部材にそれぞれ支持される複数のパネルとを備えるパネル設置構造であって、
前記支持部材によって前記パネルを個別に吊り下げる吊下構造と、
吊り下げられた隣り合う前記パネルそれぞれを支持する前記支持部材のうち、互いに異なる前記パネルを支持し隣り合う2個の前記支持部材を連結する連結部材と、を備え、
前記支持部材は、前記パネルの主部の背面に沿って上下方向に延在するパネル対向部を有し、かつ、前記梁から垂れ下がるように前記梁に固定され、
前記パネルは、前記パネルの主部が前記支持部材の前記パネル対向部に対向するように配置され、
前記支持部材の前記パネル対向部の下端部は、パネル連結部により前記吊下構造に固定されており、
前記連結部材は、前記パネル連結部を介して2個の前記支持部材の下端部同士を連結する
パネル設置構造。
【請求項2】
前記梁の長手方向における前記パネルに対する前記連結部材の位置を調整する第1調整構造をさらに含む
請求項1に記載のパネル設置構造。
【請求項3】
前記パネルは背面から突出する突出部を含み、
前記連結部材は隣り合う前記パネルの前記突出部の少なくとも一方に支持されるガイドを含む
請求項1または2に記載のパネル設置構造。
【請求項4】
前記梁の長手方向に直交する水平方向における前記梁に対する前記支持部材の位置を調整する第2調整構造をさらに含む
請求項1~3のいずれか一項に記載のパネル設置構造。
【請求項5】
前記梁に対する前記支持部材の傾きを規制する規制構造をさらに含む
請求項1~4のいずれか一項に記載のパネル設置構造。
【請求項6】
建築物の梁に固定される複数の支持部材と、前記梁の長手方向に並ぶように前記複数の支持部材にそれぞれ支持される複数のパネルとを備えるパネル設置構造を製造するためのパネル施工方法であって、
前記パネル設置構造は、前記支持部材によって前記パネルを個別に吊り下げる吊下構造と、隣り合う前記パネルそれぞれを支持する前記支持部材のうち、互いに異なる前記パネルを支持し隣り合う2個の前記支持部材を連結する連結部材と、を備え、前記支持部材は、前記パネルの主部の背面に沿って上下方向に延在するパネル対向部を有し、
前記支持部材を、前記梁から垂れ下がるように前記梁に固定する工程と、
前記パネルの主部を前記支持部材の前記パネル対向部に対向するように配置して、前記支持部材の前記パネル対向部の下端部をパネル連結部により前記吊下構造に係合することによって、前記支持部材を介して前記梁に前記パネルを吊り下げる吊り下げ工程と、
隣り合う前記パネルそれぞれの前記支持部材のうちで互いに異なる前記パネルを支持し隣り合う2個の前記支持部材の下端部同士について、2個の前記支持部材の下端部それぞれの前記パネル連結部を介して2個の前記支持部材の下端部同士を前記連結部材により連結するパネル連結工程と、
前記支持部材に対する前記連結部材の結合位置を調整する工程と、を含む
パネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネル設置構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁の一例として複数のパネルにより構成される外壁が知られている。複数のパネルを設置するためのパネル設置構造の一例では、建築物の梁を利用してパネルが設置される。特許文献1に開示されるパネル設置構造は鉄骨梁(H)のフランジ(h2)に固定される取付板(31)、および、垂壁パネル(1)を支持するために取付板(31)に溶接されるチャンネル材(32)を備えている。2枚の垂壁パネル(1)にそれぞれ設けられた係合金具(2)が1つのチャンネル材(32)に結合されることにより、垂壁パネル(1)がチャンネル材(32)を介して鉄骨梁(H)に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-235396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外壁の施工に関する作業者の負荷を軽減するため、パネルを容易に設置できることが好ましい。特許文献1のパネルの設置構造では、鉄骨梁(H)に対する取付板(31)およびチャンネル材(32)の取り付け位置が規定の位置からずれている場合、2枚の垂壁パネル(1)の取り付け位置も規定の位置からずれる。垂壁パネル(1)の規定の位置からのずれが解消されるように垂壁パネル(1)の位置を調整する場合、2枚の垂壁パネル(1)をチャンネル材(32)から取り外して取付板(31)およびチャンネル材(32)の取り付け位置を調整する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に関するパネルの連結構造は建築物の梁に固定される複数の支持部材と、前記梁の長手方向に並ぶように前記複数の支持部材にそれぞれ支持される複数のパネルとを備えるパネル設置構造であって、前記支持部材に前記パネルを個別に吊り下げる吊下構造と、前記支持部材に吊り下げられた隣り合う前記パネルを連結する連結部材とを備える。
上記パネル設置構造によれば、支持部材にパネルが個別に吊り下げられているため、梁に対する任意のパネルの位置を調整する場合、他のパネルを支持部材から取り外す必要がない。このため、パネルを容易に設置できる。また、隣り合うパネル同士が連結部材で連結されることによりパネル同士の相対的な姿勢の変化が生じにくい。このため、パネルのずれが抑えられ、外壁の美観が高められる。
【0006】
(2)好ましい例では(1)に記載のパネルの設置構造において、前記連結部材は隣り合う前記パネルのそれぞれを支持する前記支持部材に結合される。
上記パネル設置構造によれば、パネルに負荷がかかりにくい。
【0007】
(3)好ましい例では(1)または(2)に記載のパネルの設置構造において、前記梁の長手方向における前記パネルに対する前記連結部材の位置を調整する第1調整構造をさらに含む。
上記パネル設置構造によれば、パネルと連結部材との位置調整が必要な場合に、支持部材およびパネルではなく連結部材の操作により位置調整を実施できる。このため、連結部材の位置調整に関する作業の負荷が軽減される。
【0008】
(4)好ましい例では(1)~(3)のいずれか一項に記載のパネルの設置構造において、前記パネルは背面から突出する突出部を含み、前記連結部材は隣り合う前記パネルの前記突出部の少なくとも一方に支持されるガイドを含む。
このため、連結部材の位置が安定する。
【0009】
(5)好ましい例では(1)~(4)のいずれか一項に記載のパネルの設置構造において、前記梁の長手方向に直交する水平方向における前記梁に対する前記支持部材の位置を調整する第2調整構造をさらに含む。
上記パネル設置構造によれば、梁に対する支持部材の位置調整により水平方向におけるパネルの位置を調整できる。このため、パネルのずれが抑えられ、外観の美観が高められる。
【0010】
(6)好ましい例では(1)~(5)のいずれか一項に記載のパネルの設置構造において、前記梁に対する前記支持部材の傾きを規制する規制構造をさらに含む。
上記パネル設置構造によれば、支持部材の傾きに起因するパネルのずれが抑えられ、外壁の美観が高められる。
【0011】
(7)本発明に関するパネルの施工方法は、建築物の梁に固定される複数の支持部材と、前記梁の長手方向に並ぶように前記複数の支持部材にそれぞれ支持される複数のパネルとを備えるパネル設置構造を製造するためのパネル施工方法であって、前記支持部材に前記パネルを吊り下げる吊り下げ工程と、前記支持部材に吊り下げられた隣り合う前記パネルを連結部材により連結するパネル連結工程とを含む。
上記パネルの施工方法によれば、上記(1)に記載のパネルの連結構造により得られる効果と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に関するパネル設置構造およびその施工方法によれば、パネルを容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のパネル設置構造を備える建築物の外観を示す図。
図2図1のパネルの斜視図。
図3図1のパネル設置構造の正面図。
図4図1のパネル設置構造の背面図。
図5図4のD5-D5線に沿う断面図。
図6図4のD6-D6線に沿う断面図。
図7】規定位置の場合のパネルの底面図。
図8】ずれ位置の場合のパネルの底面図。
図9図1の角部の背面図。
図10図4の支持部材の側面図。
図11図4の支持部材の正面図。
図12図11の支持部材の梁対向部およびその周辺の拡大図。
図13図4のフックおよびその周辺の拡大図。
図14図4の第1連結部材の斜視図。
図15】スペーサーの正面図。
図16】吊り下げ工程を示す図。
図17】支持部材にパネルが仮置きされた状態のフックおよびその周辺の拡大図。
図18】支持部材にパネルが仮置きされた状態の斜視図。
図19】調整工程を示す図。
図20】パネル連結工程において、ナットが緩められた状態のパネル設置構造の正面図。
図21】パネル設置工程において、第1連結部材がパネルに対してスライドしている状態のパネル設置構造の正面図。
図22】パネル設置工程が完了した状態のパネル設置構造の正面図。
図23】第1変形例の第1連結部材の正面図。
図24】第2変形例の第1連結部材の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
図1はパネル設置構造10を備える建築物100の一例を示す。建築物100の一例は個別住宅または集合住宅である。一例では、建築物100はルーフバルコニー110を備える。ルーフバルコニー110の外壁110Aの下方には、複数のパネル140により構成される外壁130が設けられる。複数のパネル140は梁120(図3参照)に固定される複数の支持部材20(図3参照)にそれぞれ支持される。外壁130は複数のパネル140が梁120の長手方向に沿って並べられる直線部131、および、2枚のパネル140が角を形成するように並べられる角部132に区分される。梁120の一例は、H形鋼、リップ溝形鋼、および、I形鋼である。図5等に図示される例では、梁120はH形鋼である。H形鋼である梁120はウェブ121および一対のフランジ122により構成される。一対のフランジ122のうち、パネル140に近い側のフランジ122と支持部材20とが連結される。
【0015】
図2は1枚のパネル140の正面側の斜視図である。パネル140は直方体形状の主部141、および、主部141の背面141Aから突出する突出部142を備える。主部141の正面141Bには、外壁130の美観を高めるための模様141BXが形成される。模様141BXの一例は主部141の長手方向または短手方向に延びる複数の溝である。突出部142には、梁120等を隠す軒裏サイディング200(図5参照)が取り付けられる。パネル140を構成する材料は任意に選択できる。一例では、パネル140を構成する材料はコンクリートである。パネル140の重量および寸法は任意に選択できる。一例では、パネル140は一般的な個別住宅または集合住宅の外壁に用いられるパネルよりも大型のパネルである。パネル140の重量の一例は20kgである。パネル140の長手方向の最大の長さLAの一例は100cmである。パネル140の短手方向の最大の長さLBの一例は20cmである。図6に示されるように、複数のパネル140のうち、隣り合うパネル140の間にはシーリングバックアップ材11(以下「バックアップ材11」)、および、シーリング材12が配置される。バックアップ材11およびシーリング材12は隣り合うパネル140のうちの一方のパネル140の端部140Aと他方のパネル140の端部140Bとの間に配置される。バックアップ材11はシーリング材12よりも背面141A側に設けられる。隣り合うパネル140同士がシーリング材12を介して結合しているため、複数のパネル140の相対的な位置がずれにくい。
【0016】
図4に示されるパネル設置構造10を構成する主な要素はパネル140、複数の支持部材20、吊下構造30、および、連結部材40である。複数の支持部材20は梁120の長手方向に沿って並べられ、パネル140を支持する。支持部材20を構成する材料は任意に選択できる。好ましい例では、支持部材20を構成する材料はパネル140を長期間にわたり支持した場合であっても変形しにくい材料である。その一例はステンレス鋼である。1枚のパネル140を支持する支持部材20の数は任意に選択できる。図3および図4等で図示される例では、1枚のパネル140を支持する支持部材20の数は2である。好ましい例では、2つの支持部材20のうち、一方の支持部材20は1枚のパネル140の長手方向の中央よりも一方の端部140A側に設けられる。他方の支持部材20は1枚のパネル140の長手方向の中央よりも他方の端部140B側に設けられる。
【0017】
吊下構造30は複数の支持部材20にパネルを個別に吊り下げるための構造である。吊下構造30は溝31および鋼材32を含む。溝31はパネル140の主部141の背面141Aに設けられる。背面141Aに設けられる溝31の数は1または複数である。図示される例では、溝31の数は2である。2つの溝31はパネル140の短手方向において所定の間隔をあけて設けられる。溝31は主部141の長手方向に沿って延びる。溝31はパネル140の一方の端部140Aから他方の端部140Bまで設けられる。鋼材32は溝31に配置され、支持部材20と結合する。鋼材32は溝31内において、パネル140に固定される。鋼材32の一例はリップ溝形鋼、H形鋼、および、I形鋼である。図示される例では、鋼材32はリップ溝形鋼である。リップ溝形鋼である鋼材32は図5に示されるように、ウェブ32A、一対のフランジ32B、および、リップ32Cにより構成される。鋼材32内には、ウェブ32A、一対のフランジ32B、および、リップ32Cに囲まれた内部空間32Dが形成される。一方のリップ32Cと他方のリップ32Cとの間には、内部空間32Dを鋼材32の外部に開放する開口32Eが形成される。鋼材32は中心軸とパネル140の長手方向とが平行となるように溝31に設置される。
【0018】
一例では、パネル設置構造10の施工工程において、複数のパネル140が支持部材20により支持されている状態であり、かつ、隣り合うパネル140同士がシーリング材12により結合していない状態(以下「連結前状態」)が形成される。連結前状態においては、複数のパネル140の相対的な位置のずれ(以下「パネル140の位置ずれ」)が発生するおそれがある。パネル140の位置ずれが発生する要因は様々である。一例では、パネル140の位置ずれの発生の要因は風等の天候の影響、パネル140を施工している作業者(以下「作業者」)の身体の一部がパネル140に触れること、および、バックアップ材11を隣り合うパネル140の間に配置するときのバックアップ材11とパネル140との摩擦である。図7はパネル140の位置ずれが発生していないパネル140の位置(以下「規定位置」)における隣り合うパネル140の底面図である。図8はパネル140の位置ずれが発生しているパネル140の位置(以下「ずれ位置」)における隣り合うパネル140の底面図である。パネル140の位置ずれの規定の方法は任意である。一例では、パネル140の位置ずれは梁120の長手方向に直交する水平方向(以下「奥行き方向」)における隣り合うパネル140の正面141Bの位置の差(以下「正面位置の差XA」)により規定される。一例では、正面位置の差XAが0mm以上5mm未満の範囲に含まれる場合、パネル140の位置が規定位置とされ、正面位置の差XAが5mm以上の範囲に含まれる場合、パネル140の位置がずれ位置とされる。図4に示される連結部材40は複数のパネル140が支持部材20により支持されている状態において、パネル140の位置ずれが発生しないように、支持部材20に吊り下げられた隣り合うパネル140を連結する。連結部材40は第1連結部材41(図4参照)および第2連結部材42(図9参照)を含む。第1連結部材41は外壁130のうち直線部131を構成する隣り合うパネル140を連結する。第2連結部材42は外壁130のうち角部132を構成する隣り合うパネル140を連結する。角部132は出隅(図9参照)および入隅(図示略)を含む。
【0019】
図10図13を参照して、支持部材20の詳細な構成について説明する。
支持部材20は支持鋼材50、パネル連結部60、第2調整構造70、および、規制構造80を備える。支持鋼材50は溝形鋼とおおよそ同じ形状を有する形鋼である。支持鋼材50はウェブ51および一対のフランジ52を備える。支持鋼材50はパネル対向部53および梁対向部54に区分される。パネル対向部53と梁対向部54とは曲げ部55により繋がる。曲げ部55は曲げ加工された部分である。一例では、曲げ部55の曲げ角度は90度である。
【0020】
パネル対向部53のウェブ51には、パネル連結部60が挿入される2つの孔53Aが設けられる。図13に示されるように、孔53Aはウェブ51の長手方向に延びる長孔である。図11または図13に示されるように、パネル対向部53の一対のフランジ52には2つの切り欠き53Bが設けられる。切り欠き53Bは2つの孔53Aの近傍にそれぞれ設けられる。切り欠き53Bには、梁対向部54側に向けて突出するフック53Cが設けられる。フック53Cが鋼材32の一方のリップ32Cに引っ掛けられることにより、支持部材20にパネル140が吊り下げられる。なお、図13では、2つの切り欠き53Bのうちの一方の下側の切り欠き53Bのみを図示している。
【0021】
図10に示されるパネル連結部60は回転部材61、操作軸62、および、ナット63により構成される。回転部材61は板金である。図11に示されるように、回転部材61は短辺61Aおよび長辺61Bを含む。短辺61Aの長さは鋼材32(図4参照)のリップ32C間に形成される開口32Eの幅よりも短い。長辺61Bの長さは開口32Eの幅よりも長い。長辺61Bの長さは鋼材32における各フランジ32Bの内面間の距離とおおよそ等しい。回転部材61の形状はおおよそ矩形である。回転部材61の4つの角のうち1組の対角には面取り部61Cが形成される。
【0022】
回転部材61には操作軸62が挿入される孔61Dが形成される。操作軸62の一例はクリンチングスタッドである。操作軸62は孔61Dに圧入される。回転部材61および操作軸62は相対的に移動および回転しないように結合される。操作軸62はねじ62Aおよびヘッド62Bを含む。ねじ62Aは回転部材61に対して一方側に突出する。図10に示されるように、操作軸62はウェブ51に対してヘッド62Bと反対側に突出する突出部62Cを含む。突出部62Cはねじ62Aを含む。ねじ62Aにはナット63が取り付けられる。操作軸62および回転部材61は支持鋼材50に対して回転する。一例では、ナット63が固定された状態で工具を用いて操作軸62にトルクが与えられることにより、操作軸62および回転部材61が回転する。回転部材61は第1回転位置および第2回転位置を取り得る。図11に示される第1回転位置では、回転部材61の短辺61Aがウェブ51の長手方向と平行となる。第2回転位置では、回転部材61の長辺61Bがウェブ51の長手方向と平行となる。
【0023】
図12に示される第2調整構造70は奥行方向における梁120に対する支持部材20の位置を調整する。第2調整構造70は孔71、ボルト72、および、複数のナット73、74、75を含む。梁120に対する支持部材20の位置調整により奥行方向におけるパネル140の位置を調整できる。このため、パネル140の位置ずれが抑えられ、外観の美観が高められる。
【0024】
孔71は梁対向部54を貫通する孔であり、奥行方向に延びる長孔である。ボルト72は孔71に挿入される。ナット73、74は支持鋼材50に対するボルト72の位置を固定する。ナット73、74は孔71にボルト72が挿入されている状態において、梁対向部54のウェブ51を挟み込むように締め付けられる。ナット75は梁120に対するボルト72の位置を固定する。ナット75は梁120の一方のフランジ122に設けられるボルト孔122A(図16参照)にボルト72が挿入された状態でフランジ122の内面122Bと接触するように締め付けられる。
【0025】
図12に示される規制構造80は梁120に対する支持部材20の傾きを規制する。このため、支持部材20の傾きに起因するパネル140の位置ずれが抑えられ、外壁130の美観が高められる。規制構造80はボルト孔81およびボルト82を含む。ボルト孔81は梁対向部54を貫通する。ボルト82はボルト孔81に挿入される。支持部材20と梁120とが連結されている状態において、ボルト孔81の先端82Aが梁120の一方のフランジ122の外面122C(図16参照)と接触するようにボルト孔81に対するボルト82の位置が調整される。ボルト82の先端82Aがフランジ122の外面122Cと接触している場合、梁120に対して支持部材20を傾けるような外力が回転部材61側から支持部材20に作用した場合であっても、ボルト82の先端82Aとフランジ122の外面122Cとが接触しているため、梁120に対する支持部材20の傾きが規制される。
【0026】
図14はパネル140の背面141A側から見た第1連結部材41の斜視図である。第1連結部材41は支持部材20に吊り下げられた隣り合うパネル140を連結する。第1連結部材41によるパネル140の連結態様は任意に選択できる。図4等に示される第1例では、第1連結部材41は隣り合うパネル140のそれぞれを支持する支持部材20を連結する。このため、パネル140に負荷がかかりにくい。第2例では、第1連結部材41は支持部材20に吊り下げられた隣り合うパネル140の任意の箇所を連結する。第1連結部材41は基礎部41A、一対の接触部41B、および、ガイド41Cを含む。基礎部41Aはパネル140の長手方向に延びる板状の部分である。接触部41Bは基礎部41Aの両端部から立ち上がる板状の部分である。ガイド41Cは基礎部41Aから突出部142(図4参照)と平行に突出する。ガイド41Cは隣り合うパネル140の突出部142の上面に支持される。このため、第1連結部材41の位置が安定する。なお、パネル140の製造誤差、または、表面の凹凸等により、隣り合うパネル140の突出部142の上面は必ずしも面一であるとは限らない。このため、第1連結部材41はガイド41Cが隣り合うパネル140の突出部142の上面の一方と隙間を介して対向するように設置される場合もある。接触部41Bには、梁120の長手方向におけるパネル140に対する第1連結部材41の位置を調整する第1調整構造43が設けられる。このため、パネル140と第1連結部材41との位置調整が必要な場合に、支持部材20およびパネル140ではなく第1連結部材41の操作により位置調整を実施できる。このため、第1連結部材41の位置調整に関する作業の負荷が軽減される。第1調整構造43の構成は任意に選択可能である。図14等に示される第1例では、第1調整構造43は接触部41Bに設けられる梁120の長手方向に長い溝43Aを含む。第2例では、第1調整構造43は接触部41Bに設けられるパネル140の長手方向に長い穴を含む。第1例および第2例の場合、支持部材20の一部が第1連結部材41の溝43Aまたは穴に挿入される。支持部材20の一部に沿って第1連結部材41が移動することにより、パネル140に対する第1連結部材41の位置が調整される。このため、第1連結部材41の位置調整に関する作業の負荷が軽減される。
【0027】
溝43Aには、支持部材20の操作軸62(図22参照)が挿入される。溝43Aは梁120の長手方向の一方に開口する第1端部43AX、および、閉じられた第2端部43AYを含む。支持部材20の操作軸62を溝43Aの第1端部43AXから溝43A内に挿入できるため、支持部材20と第1連結部材41との結合に関する作業の負荷が軽減される。パネル連結部60のナット63が接触部41Bと接触する位置まで締め付けられることにより、接触部41Bがナット63およびフランジ52により挟み込まれる。このため、支持部材20に対する第1連結部材41の位置が固定された状態(以下「連結状態」)が形成される。パネル設置構造10は連結状態においてパネル140の位置ずれが発生する場合に位置ずれを修正するためのスペーサー44(図15参照)をさらに備える。
【0028】
スペーサー44は支持鋼材50のウェブ51とパネル140の背面141Aとの間に配置される板金である。スペーサー44には、パネル連結部60の操作軸62が挿入されるように切り欠かれた切り欠き44A、および、切り欠き44Aの近傍に形成される孔44Bが設けられる。例えば、複数のスペーサー44を重ねた状態で複数のスペーサー44の孔44Bにワイヤ等を通すことにより、複数のスペーサー44を容易に作業現場に搬入できる。
【0029】
パネル140の施工方法の一例について説明する。パネル140の施工方法は梁連結工程、吊り下げ工程、調整工程、パネル連結工程、および、シーリング工程を含む。図16に示されるように、梁連結工程では、支持部材20と梁120とが連結される。梁連結工程では、最初に第2調整構造70のボルト72が梁120のボルト孔122Aに挿入され、ナット75がフランジ122の内面122Bと接触するように締め付けられる。梁連結工程では、複数の支持部材20の全てが梁120と連結される。
【0030】
吊り下げ工程は梁連結工程の後に実施される。吊り下げ工程では、支持部材20にパネル140が個別に吊り下げられる。吊り下げ工程では、第1回転位置である回転部材61が開口32Eを介して内部空間32Dに挿入されるように、パネル140が支持部材20に吊り下げられる。このとき、図17に示されるように、フック53Cが鋼材32の一方のリップ32Cに引っ掛かるため、図18に示されるように、パネル140が支持部材20に仮置きされた状態が形成される。次に、ナット63の回転が規制された状態で回転部材61が第2回転位置となるように操作軸62が操作される。第2回転位置では、回転部材61が鋼材32から抜ける方向への移動が鋼材32の一対のリップ32Cにより規制される。なお、吊り下げ工程を梁連結工程よりも前に実施することもできる。この場合、支持部材20にパネル140が仮置きされた状態で梁連結工程が実施される。
【0031】
調整工程では、梁120に対するパネル140の高さ方向の位置の調整(以下「パネル140の高さ調整」)、および、奥行方向における梁120に対するパネル140の傾きの調整(以下「パネル140の傾き調整」)が実施される。一例では、パネル140の高さ調整、および、パネル140の傾き調整の順に実施される。図19に示されるように、パネル140の高さ調整においては、ナット73およびナット74が緩められ、高さ方向における梁120に対する支持部材20およびパネル140の位置が調整される。なお、パネル140の高さ調整においては、規制構造80のボルト82がナット73を締め付ける工具と干渉しないように、ボルト82の先端82Aがボルト孔81から突出しない位置まで下げられることが好ましい。より好ましい例では、規制構造80のボルト82がボルト孔81から抜かれた状態でパネル140の高さ調整が実施される。パネル140の傾き調整では、規制構造80のボルト82の先端82Aがフランジ122の外面122Cと接触するようにボルト82が締め付けられる。
【0032】
パネル連結工程では隣り合うパネル140のそれぞれを支持する支持部材20を第1連結部材41により結合する。図20に示されるように、パネル連結工程では、パネル連結部60のナット63とウェブ51との間に隙間が形成されるように、ナット63が緩められる。次に、図21に示されるように、第1連結部材41のガイド41Cが突出部142に載るように第1連結部材41が突出部142上に設置される。次に、図22に示されるように、ガイド41Cが突出部142上を滑るように長手方向にスライドされる。第1端部43AXを通過した操作軸62が溝43Aに入った場合、接触部41Bと接触するまでナット63が締め付けられる。
【0033】
シーリング工程はパネル連結工程の後に実施される。シーリング工程では、最初に、パネル140の背面141Aからバックアップ材11が隣り合うパネル140の隙間に挿入される。次に、シーリング材12がパネル140の正面141Bから隣り合うパネル140の隙間に挿入される。
【0034】
パネル設置構造10によれば、次のような効果が得られる。
支持部材20にパネル140が個別に吊り下げられているため、調整工程において、梁120に対する任意のパネル140の位置を調整する場合、他のパネル140を支持部材20から取り外す必要がない。このため、パネル140を容易に設置できる。また、隣り合うパネル140同士が連結部材40で連結されることによりパネル140同士の相対的な姿勢の変化が生じにくい。このため、パネル140の位置ずれが抑えられ、外壁130の美観が高められる。
【0035】
(変形例)
上記実施形態は本発明に関するパネル設置構造およびその施工方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するパネル設置構造およびその施工方法は実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。
【0036】
・第1調整構造43の構成は任意に変更可能である。図23に示される第1変形例の第1調整構造43はパネル140の短手方向に長い溝143Aを備える。第1変形例の第1調整構造43を備える第1連結部材41はパネル連結工程において、パネル連結部60の上方または下方からパネル140の短手方向に沿ってスライドされるようにして溝143Aに操作軸62が挿入される。図24に示される第2変形例の第1調整構造43は、接触部41Bを貫通する孔243Aを含む。第2変形例の第1調整構造43を備える第1連結部材41はパネル連結工程において、奥行き方向にスライドされるようにして孔243Aに操作軸62が挿入される。
【符号の説明】
【0037】
20 :支持部材
30 :吊下構造
40 :連結部材
41C :ガイド
43 :第1調整構造
70 :第2調整構造
80 :規制構造
100 :建築物
120 :梁
140 :パネル
141A:背面
142 :突出部
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