(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220705BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220705BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
H04N5/74 Z
(21)【出願番号】P 2018095327
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白木 慎也
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山川 泰弘
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-533715(JP,A)
【文献】特開2011-010405(JP,A)
【文献】特開2017-102262(JP,A)
【文献】特開2012-204679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部、
前記光源部が発した光の強度を検出する光検出部、
前記光源部が発する光を反射するDMD部、
前記DMD部が反射した光を受けて像を映し出すスクリーン部、
外部から入力された第1映像信号を形式の異なる第2映像信号に変換して出力する変換部、
前記光源部を駆動する駆動部、
目標光強度を出力する第1制御部、
前記変換部が出力した前記第2映像信号に基づい
て前記DMD部の反射制御をするDMD制御部、
前記目標光強度が入力され、前記光検出部が検出した光強度が前記目標光強度に近づくように前記駆動部をフィードバック制御する電源管理部、
を備え、前記スクリーン部に映し出された像が発した表示光を透光性部材に出射し、前記表示光の虚像を前記透光性部材越しに視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記第1制御部が起動した後、
前記第1制御部は前記DMD制御部を起動し、
前記変換部は前記DMD制御部が起動した後に起動する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記電源管理部の起動に先んじて前記駆動部を起動する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DMD(Digital Mirror Device)方式により虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のDMD方式のヘッドアップディスプレイ装置として特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなDMD方式のヘッドアップディスプレイ装置においては、外部から入力される映像信号の形式が車両製造業者毎に異なる場合が多く、外部から入力される映像信号の形式を共通の形式に変換する変換部を設けることが好ましい。
また、赤色,緑色,青色の3原色のLEDから発せられた光をDMDで反射して表示画像を構成するにあたって、所望の色を表示するためにLEDの温度や発している光強度を用いてLEDの駆動電圧をフィードバック制御することが好ましい。
【0005】
DMD方式のヘッドアップディスプレイ装置において、上記したような様々な機能を実現するための各種素子を組み合わせて構成するが、各素子の起動順によっては正常に起動しない場合がある。
【0006】
本開示は、このような事情を考慮し、確実に正常起動するヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
光源部、
前記光源部が発した光の強度を検出する光検出部、
前記光源部が発する光を反射するDMD部、
前記DMD部が反射した光を受けて像を映し出すスクリーン部、
外部から入力された第1映像信号を形式の異なる第2映像信号に変換して出力する変換部、
前記光源部を駆動する駆動部、
目標光強度を出力する第1制御部、
前記変換部が出力した前記第2映像信号に基づいて前記DMD部の反射制御をするDMD制御部、
前記目標光強度が入力され、前記光検出部が検出した光強度が前記目標光強度に近づくように前記駆動部をフィードバック制御する電源管理部、
を備え、前記スクリーン部に映し出された像が発した表示光を透光性部材に出射し、前記表示光の虚像を前記透光性部材越しに視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記第1制御部が起動した後、
前記第1制御部は前記DMD制御部を起動し、
前記変換部は前記DMD制御部が起動した後に起動する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ヘッドアップディスプレイ装置を確実に正常起動できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】ヘッドアップディスプレイ装置の制御ブロック図。
【
図4】ヘッドアップディスプレイの起動順を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置1を添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1を参照する。ヘッドアップディスプレイ装置1は、投射部10、第1反射部11、第2反射部12、スクリーン部13、第3反射部14、第4反射部15、投射部10を制御する制御部16を備える。
【0012】
ヘッドアップディスプレイ装置1は、投射部10から表示画像Mを表す表示光Lを発する。投射部10から発せられた表示光L1は、第1反射部11,第2反射部12で反射した後、スクリーン部13に投影されて、スクリーン部13上に表示画像Mを形成する。スクリーン部13上に形成された表示画像Mから発せられた表示光L2は、第3反射部14、第4反射部15で反射した後、車両の風防ガラス(透光性部材)2に投射される。視認者(主に車両の運転者)は、ヘッドアップディスプレイ装置1が生成する画像可視領域であるアイボックス3内に視点4を置くことで、車両の前方の景色(実風景)を風防ガラス2越しに表示光L2の虚像Vを視認することができる。
【0013】
図2を参照する。投射部10は、光源部20、光学部30、DMD部40、光検出部PSN、光源温度検出部TSN1、DMD温度検出部TSN2、を備える。
【0014】
光源部20は、赤色LED21、緑色LED22、青色LED23を備える。光源温度検出部TSN1は、光源部20の温度T1を検出するサーミスタであり、光源部20の近傍に設けられる。
【0015】
光学部30は、反射鏡31、ダイクロイックミラー32,33、反射鏡34、凸レンズ35、プリズム36,37、投光レンズ38、を備える。
【0016】
DMD部40は、DMD(Digital Mirror Device)である。DMD温度検出部TSN2は、DMD部40の温度T2を検出するサーミスタであり、DMD部40の近傍に設けられる。
【0017】
赤色LED21から発せられた赤色光線Rは、反射鏡31を反射し、ダイクロイックミラー32,33を透過する。緑色LED22から発せられた緑色光線Gは、ダイクロイックミラー32を反射し、ダイクロイックミラー33を透過する。青色光線Bは、ダイクロイックミラー33を反射する。これら光線R,G,Bは、反射鏡34で反射され、凸レンズ35、プリズム36,37を透過してDMD部40に入射する。ここで、反射鏡34に反射された光線R,G,Bの一部はプリズム36に反射されて光検出部PSNに入射する。DMD部40に入射した光は、所定の光強度となるようにDMD部40からプリズム37に向けて反射され、投光レンズ38を通過して表示光Lとして出射される。
【0018】
図3を参照する。投射部10を制御する制御部16の構成を説明する。制御部16は、第1制御部CPU1、シリアルパラレル変換部SP、駆動部DRV、第2制御部(DMD制御部)CPU2、電源管理部PMIC、を備える。
【0019】
第1制御部CPU1は、マイクロコントローラである。第1制御部CPU1は、第1外部コントローラECU1から環境光の照度ILが入力され、この照度ILに基づいて目標光強度Ptを定めて第2制御部CPU2に出力する。また、第1制御部CPU1は、光源温度検出部TSN1が検出した温度T1が入力され、この温度T1を第2制御部CPU2に出力する。
【0020】
シリアルパラレル変換部SPは、第2外部コントローラECU2からシリアル通信型式の第1映像信号VS1が入力され、この第1映像信号VSをパラレル通信型式の第2映像信号VS2に変換して第2制御部CPU2に出力する。第1映像信号VS1は、例えば、OpenLDI(Open LVDS Display Interface)規格の映像信号である。第2映像信号VS2は、例えば、VESA(Video Electronics Standards Association)規格の映像信号である。
【0021】
駆動部DRVは、光源部20を点灯駆動するLEDドライバである。駆動部DRVは、後述する電源管理部PMICからの制御信号Vtに応じた電圧で光源部20を駆動し、駆動電圧を電源管理部PMICにフィードバック信号Vnとして出力する。
【0022】
第2制御部CPU2は、DMDコントローラである。第2制御部CPU2は、シリアルパラレル変換部SPから入力された第2映像信号VS2に対応する画像を表示するべく、DMD部40に表示制御信号DISPを出力し、後述する電源管理部PMICに目標光強度Ptを出力する。また、第2制御部CPU2は、DMD温度検出部TSN2が検出した温度T2が入力され、この温度T2が所定温度以上になったときに、故障モードとして、DMD部40を非表示とするように表示制御信号DISPを出力し、電源管理部PMICに目標光強度Ptをゼロとして出力して光源部20を消灯させる。
【0023】
電源管理部PMICは、駆動部DRVの出力を管理制御するパワーマネジメントIC(Power Management Integrated Circuit)である。電源管理部PMICは、光検出部PSNが検出した光強度Pnが第2制御部CPU2から入力された目標光強度Ptとなるように、駆動部DRVから入力されるフィードバック信号Vnを制御信号Vtにフィードバックして駆動部DRVに出力する。電源管理部PMICは、制御信号Vtに対し光強度Pnが正常範囲外である場合、駆動部DRVあるいは光源部20に異常が生じたと判断し、駆動部DRVに光源部20の駆動を停止させる。
【0024】
図4を参照する。制御部16の各部の起動順について説明する。制御部16は、車両のイグニッションがONされると、車両のバッテリ電源が図示しないコンバータにより所定の電圧に変換されて第1制御部CPU1に供給され、第1制御部CPU1が起動する(ステップS1)。第1制御部CPU1が起動した後、第1制御部CPU1は、駆動部DRVを起動しフィードバック信号Vnが電源管理部PMICに送信可能な状態にする(ステップS2)。次に、第1制御部CPU1は、第2制御部CPU2及び電源管理部PMICを起動する(ステップS3)。第2制御部CPU2が起動した後、第1制御部CPU1は、シリアルパラレル変換部SPを起動し第2映像信号VS2が第2制御部CPU2に送信可能な状態にする(ステップS4)。その後、第2制御部CPU2は、DMD部40を起動する(ステップS5)。DMD部40を起動した後、第2外部コントローラECU2から入力される第1映像信号VS1に対応する表示光Lを表示する通常動作を行う(ステップS6)。
【0025】
制御部16の各部の起動順において、DMD制御部CPU2は起動時に変換部SPから第2映像信号VS2が入力されてしまうと、電源の回り込みによりリセット電圧の判定が正常に行えず、DMD制御部CPU2が正常に起動できなくなる場合がある。
本開示のヘッドアップディスプレイ装置1は、DMD制御部CPU2が起動した後に変換部SPを起動することにより、確実にDMD制御部CPU2が正常に起動できる。
【0026】
また、制御部16の各部の起動順において、電源管理部PMICの起動時に駆動部DRVからフィードバック信号Vnが出力可能な状態にない場合、電源管理部PMICのフィードバック制御において異常が発生したと判断してしまい光源部20の点灯開始ができなくなってしまう場合がある。
本開示のヘッドアップディスプレイ装置1は、電源管理部PMICの起動に先んじて駆動部DRVを起動することにより、確実に電源管理部PMICが正常に起動できる。
【符号の説明】
【0027】
1 ヘッドアップディスプレイ装置
2 風防ガラス(透光性部材)
3 アイボックス
4 視点
10 投射部
13 スクリーン部
16 制御部
20 光源部
PSN 光検出部
40 DMD部
SP シリアルパラレル変換部
DRV 駆動部
CPU2 DMD制御部
PMIC 電源管理部
VS1 第1映像信号
VS2 第2映像信号
Pn 光強度
Pt 目標光強度