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特許7099051(メタ)アクリレート組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220705BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20220705BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
C08F220/20
C08F220/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018102408
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206647
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐内 康之
(72)【発明者】
【氏名】大田 祐子
(72)【発明者】
【氏名】鏡味 忍
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-049965(JP,A)
【文献】特開2002-327031(JP,A)
【文献】特開平07-003187(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073684(WO,A1)
【文献】特開2008-308466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08F 299/00-299/08
C08F 6/00-246/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09D 101/00-201/10
C09D 11/00-13/00
C09J 9/00-201/10
C07B 31/00-61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む組成物であって、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(C)を0.0001重量部~2重量部の割合で含有する(メタ)アクリレート組成物。
成分(A):2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
成分(B):酸素による酸化を受けることにより過酸化物を生成する有機溶剤
成分(C):(メタ)アクリル酸のアルカリ金属
【請求項2】
前記成分(B)が、アルコール、エーテル、及びケトンからなる群から選択される1種以上の化合物である請求項1記載の(メタ)アクリレート組成物。
【請求項3】
前記成分(C)を構成するアルカリ金属が、ナトリウム又はカリウムである請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリレート組成物。
【請求項4】
下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む組成物の製造方法であって、
成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(C)を0.0001重量部~2重量部の割合となるよう添加及び混合する(メタ)アクリレート組成物の製造方法。
成分(A):2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
成分(B):酸素による酸化を受けることにより過酸化物を生成する有機溶剤
成分(C):(メタ)アクリル酸のアルカリ金属
【請求項5】
前記成分(B)が、アルコール、エーテル、及びケトンからなる群から選択される1種以上の化合物である請求項記載の(メタ)アクリレート組成物の製造方法。
【請求項6】
前記成分(C)を構成するアルカリ金属が、ナトリウム又はカリウムである請求項又は請求項に記載の(メタ)アクリレート組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕を含む組成物に関し、(メタ)アクリレートの製造方法、及び(メタ)アクリレートを含む硬化型組成物の技術分野に属する。
尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【背景技術】
【0002】
多官能(メタ)アクリレートは、インキ、塗料、粘着剤、接着剤、及びレジスト等の電子材料等といった種々の用途に使用されている。
これらの用途においては、多官能(メタ)アクリレートの粘度を低減させたり、バインダーやフィラーとして使用される有機高分子と混合させる目的で、多官能(メタ)アクリレートに有機溶剤を加えて有機溶剤の溶液〔以下、「(メタ)アクリレート溶液」という〕として使用されることがある。
(メタ)アクリレート溶液の製造においては、これら用途に使用する直前に有機溶剤に多官能(メタ)アクリレートを溶解させるのではなく、取り扱いやすさの観点から、事前に有機溶剤に多官能(メタ)アクリレートを溶解させ、(メタ)アクリレート溶液とした状態で貯蔵されることが一般的であり、溶液状態で良好な貯蔵安定性が要求される。
【0003】
(メタ)アクリレート溶液に用いられる有機溶剤は、使用目的及び用途等に応じて適宜選択されるが、例えば、ベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素系有機溶剤は、空気による酸化はさほど問題にならないものの、得られる溶液をたとえばプラスチック基材等の耐溶剤性が低い基材に塗工した場合に、基材を浸食する問題があるほか、安全性や環境への配慮から一般的な溶剤とは言い難い。
又、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤は、基材を浸食する効果は低いものの、一般に多官能(メタ)アクリレートの溶解性が低く、特にウレタン(メタ)アクリレートのように極性や分子量が高い(メタ)アクリレートに対する溶剤としては使用できない。
このような背景から、(メタ)アクリレート溶液に用いられる有機溶剤としては、取り扱いが容易で、多官能(メタ)アクリレートとの相溶性に優れ、乾燥時の溶剤除去が容易であり、基材への浸食の問題が低い等の理由から、アルコール、エーテル、及びケトンのような極性を有する有機溶剤が選択されることが多い。
【0004】
ところが、これらのアルコール、エーテル、及びケトンのような極性溶剤は、空気と接触することで、室温でも速やかに酸化が進行し、過酸化物が発生し易いことが知られており(例えば、非特許文献1)、このためこれら有機溶剤の過酸化物価が上昇してしまう。
一方で、有機溶剤の酸化を防止するため不活性ガス雰囲気下で保存することも考えられるが、(メタ)アクリレート溶液の場合は不活性ガス雰囲気下で保存すると、多官能(メタ)アクリレートが重合しやすくなるという問題がある。
【0005】
このような状況から、(メタ)アクリレート溶液の有機溶剤として、過酸化物価が低い有機溶剤を使用することは長期安定性の改善には意味がなく、又、状況によっては初期から過酸化物価が高い溶剤を使用せざるを得ないこともある。
(メタ)アクリレート溶液の重合防止を目的とする安定剤として、酸化防止剤が配合されており、具体的には、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤(HALS)等が一般的に使用されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、これら酸化防止剤は、溶剤中の初期過酸化物濃度が低い場合には過酸化物増加を抑える効果があるものの、いったん空気にさらされ、過酸化物価が上昇した有機溶剤に添加しても過酸化物を低減する効果はなく、多官能(メタ)アクリレートに対して長期間に渡り貯蔵安定性を付与する効果がないことが判明した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Theoretical and Experimental Chemistry, Vol.37, No.3, 2001,185-188
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/063624号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、(メタ)アクリレート溶液を製造するに当たり、過酸化物を生成し易い有機溶剤を用いたとしても、得られる溶液が長期間に渡り安定なものとすることができる組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、多官能(メタ)アクリレート溶液に、特定割合でアルカリ金属化合物を含有させることが有効であることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物及び製造方法によれば、空気酸化により過酸化物を生じやすく、多官能(メタ)アクリレートを溶解させた時の貯蔵安定性が悪くなるような極性溶剤を溶剤として使用しても、長期間にわたって貯蔵安定性を維持することができる。加えて、本発明の組成物及び製造方法によれば、硬化性にも悪影響を及ぼすことがない。
本発明の組成物及び製造方法は、特に、多官能ウレタン(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールアクリレートのような、官能基数が多い(メタ)アクリレートや、合成反応時にアミンを触媒として使用する、酸変性多官能(メタ)アクリレート等の溶液の安定化に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む組成物であって、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(C)を0.0001重量部~2重量部の割合で含有する(メタ)アクリレート組成物に関する。
成分(A):2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
成分(B):酸素による酸化を受けることにより過酸化物を生成する有機溶剤
成分(C):(メタ)アクリル酸のアルカリ金属
以下、成分(A)、成分(B)、成分(C)、その他の成分、組成物の製造方法及び用途について説明する。
【0012】
1.成分(A)
成分(A)は、多官能(メタ)アクリレート〔2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〕である。
成分(A)としては、2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「2官能(メタ)アクリレート」という)、及び3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「3官能以上(メタ)アクリレート」という)等が挙げられる。
【0013】
1)2官能(メタ)アクリレート
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価アルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;並びに
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系化合物アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート
等が挙げられる。
【0014】
前記で例示した化合物における、アルキレンオキサイド付加物の例としては、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0015】
2)3官能以上(メタ)アクリレート
3官能以上(メタ)アクリレートとしては、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば種々の化合物が挙げられ、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;並びに
イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート
等を挙げることができる。
【0016】
前記で例示した化合物における、アルキレンオキサイド付加物の例としては、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0017】
3)前記以外の多官能(メタ)アクリレート
成分(A)としては、前記の挙げた以外の多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマーを使用することもでき、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
又、水酸基を有する3個官能以上(メタ)アクリレートに酸無水物を付加させた化合物〔以下、「酸変性多官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
以下、これらの化合物について説明する。
【0018】
(1)ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物、並びに、多価アルコールを使用せずに多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。
【0019】
多価アルコールとしては、ジオールが好ましい。
ジオールとしては、低分子量ジオール、ポリエン骨格を有するジオール、ポリエステル骨格を有するジオール、ポリエーテル骨格を有するジオール及びポリカーボネート骨格を有するジオール等が挙げられる。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエン骨格を有するジオールとしては、ポリブタジエン骨格を有するジオール、ポリイソプレン骨格を有するジオール、水素添加型ポリブタジエン骨格を有するジオール及び水素添加型ポリイソプレン骨格を有するジオール等が挙げられる。
ポリエステル骨格を有するジオールとしては、前記低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオール成分と、ジカルボン酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。ジカルボン酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートジオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及びビスフェノールA等のビスフェノールと、エチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
【0020】
有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましい。
有機ジイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン及びダイマー酸ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、並びにトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0021】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート〔以下、「水酸基含有単官能(メタ)アクリレート」という〕、並びに
トリメチロールプロパンのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「水酸基含有多官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
【0022】
(2)エポキシ(メタ)アクリレート
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物である。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えばジャパンエポキシレジン(株)製エピコート827(商品名、以下同じ)、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、エピコート806、エピコート4004P等が挙げられる。又、ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート152、エピコート154等が挙げられる。
【0023】
(3)ポリエステル(メタ)アクリレート
ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との反応物である。
ポリエステルポリオールは、多価アルコールと多塩基酸との反応によって得られる。
多価アルコールとしては、前記したジオール等が挙げられる。
多塩基酸としては、例えばコハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸及びテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0024】
(4)酸変性多官能(メタ)アクリレート
酸変性多官能(メタ)アクリレートにおいて、水酸基を有する3個官能以上(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸無水物としては、前記したジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0025】
2.成分(B)
成分(B)は、酸素による酸化を受けることにより過酸化物を生成する有機溶剤である。
成分(B)は、具体的には、化学構造中に酸素原子を有する化合物であり、具体的には、アルコール、エーテル、ケトン、エステル及びカーボネート等が挙げられ、アルコール、エーテル及びケトンが、成分(A)の溶解性に優れるため好ましい。
【0026】
アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルキルアルコール;
エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル化合物;並びに
ダイアセトンアルコール等のアセトンアルコール等が挙げられる。
【0027】
エーテルの具体例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル及びt-ブチルメチルエーテル等の脂肪族エーテル;
シクロペンチルメチルエーテル等の環状アルキル基含有エーテル;
ジエチルアセタール及びジヘキシルアセタール等のアセタール;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン及びトリオキサン等の環状エーテル;
アニソール及びジフェニルエーテル等の芳香族エーテル;並びに
ジメチルセロソルブ、ジグライム、トリグライム及びテトラグライム等が挙げられる。
【0028】
ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンン等の脂肪族ケトン;シクロヘキサノン等の脂環式ケトン;並びに
アセトフェノン及びベンゾフェノン等の芳香族ケトン等が挙げられる。
【0029】
エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
カーボネートとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及び1,2-ブチレンカーボネート等が挙げられる。
【0030】
本発明の組成物は、成分(B)が高い過酸化物価を有している場合であっても、貯蔵安定性に優れるものであるが、事前に過酸化物価を測定しておき、この値が小さいものを使用することが好ましい。この場合の過酸化物価としては、500ppm以下が好ましく、0~100ppmがより好ましい。
本願発明において過酸化物価とは、成分(B)とヨウ化カリウムを反応させ、生成したヨウ素分子を硫酸ナトリウムによる滴定で得られた値をいう。
【0031】
本発明は、有機溶剤として成分(B)を使用するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて成分(B)以外の有機溶剤〔以下、「その他有機溶剤」という〕を使用することができる。
その他有機溶剤としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン及びn-デカン等の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、N-メチルピロリドン等の複素環化合物、スルホラン等のスルホン類、並びにジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類等が挙げられる。
【0032】
3.成分(C)
成分(C)は、アルカリ金属化合物である。
アルカリ金属化合物を構成するアルカリ金属としては、ナトリウム及びカリウムが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属塩も使用することができ、無機塩及び有機塩が挙げられ、有機塩が好ましい。
有機塩の具体例としては、酢酸のアルカリ金属塩、プロピオン酸のアルカリ金属塩、及び(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩等の有機カルボン酸塩が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩が、成分(A)に対する溶解性に優れるため好ましい。
【0033】
成分(C)としては、アルカリ金属化合物の水溶液として配合することが、成分(A)に対する溶解性に優れるため好ましい。
アルカリ金属化合物の水溶液におけるアルカリ金属化合物の濃度としては、5~45重量%が好ましく、より好ましくは10~40重量%である。アルカリ金属化合物の濃度をこの範囲とすることで、(メタ)アクリレート溶液に持ち込まれる水分量を最小限とすることができるため、(メタ)アクリレートの貯蔵中の塩基加水分解を防ぐことができ、さらにはアルカリ金属化合物水溶液の結晶化を防ぐことができるため冬季等の低温時でもハンドリング性を良好とすることができる。
【0034】
4.その他の成分
本発明の組成物は、前記成分(A)~(C)を必須とするものであるが、必要に応じて種々の成分を配合することができる。
その他の成分の好ましいものとしては、酸化防止剤及び重合禁止剤等が挙げられる。以下、酸化防止剤及び重合禁止剤について説明する。
【0035】
1)酸化防止剤
酸化防止剤は、成分(C)と併用することにより、酸化防止効果により優れたものとすることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール類を挙げることができる。市販されているものとしては、(株)ADEKA製のAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-70、及びAO-80等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン等のホスフィン類や、亜リン酸トリアルキルや亜リン酸トリアリール等が挙げられる。これらの誘導体で市販品としては、例えば(株)ADEKA製、アデカスタブPEP-4C、PEP-8、PEP-24G、PEP-36、HP-10、260、522A、329K、1178、1500、135A、及び3010等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物が挙げられ、市販品としては(株)ADEKA製AO-23、AO-412S、及びAO-503A等が挙げられる。
【0036】
ヒンダードアミン系酸化防止剤(HALS)は、光安定剤としても知られている成分である。
ヒンダードアミン系酸化防止剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチロキシ)-4-ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤の市販品としては、ADEKA製AL-72、BASF社製、TINUVIN 111FDL、TINUVIN123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100等が挙げられる。
【0037】
酸化防止剤としては、前記した化合物を1種用いても、2種類以上を併用してもよい。これら酸化防止剤の好ましい組合せとしては、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との併用、及びフェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤の併用が挙げられる。
【0038】
酸化防止剤の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、成分(A)合計量100重量部に対して0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.1~1重量部である。
酸化防止剤の含有割合を0.1重量部以上とすることで、貯蔵中の組成物の過酸化物上昇を防ぐことができ、一方、5重量部以下とすることで、(メタ)アクリレートに光重合開始剤を加えて活性エネルギー線を照射したときに、着色が少ない硬化物を得ることができる。
【0039】
2)重合禁止剤
本発明の組成物においては、アクリロイル基の重合を防止する目的で反応液中に重合禁止剤を添加することができる。
重合禁止剤としては、有機系重合禁止剤、無機系重合禁止剤及び有機塩系重合禁止剤等が挙げられる。
有機系重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール及び4-tert-ブチルカテコール等のフェノール系化合物、ベンゾキノン等のキノン化合物、フェノチアジン、並びにN-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム等が挙げられる。
有機系重合禁止剤としては、安定ラジカルを有する有機化合物も使用することができ、カルビノキシル及びN-オキシル化合物等が挙げられる。
N-オキシル化合物としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル及び4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等が挙げられる。
無機系重合禁止剤としては、塩化銅、硫酸銅及び硫酸鉄等が挙げられる。
有機塩系重合禁止剤としては、ジブチルジチオカルバミン酸銅、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
【0040】
重合禁止剤は、組成物に添加することも、成分(A)に含まれる場合は、そのまま使用することができる。又、成分(A)に重合禁止剤が含まれる場合であっても、重合禁止剤をさらに添加することもできる。
重合禁止剤の含有割合としては、組成物中に0.0005~1重量%が好ましく、より好ましくは0.005~0.1重量%である。重合禁止剤の含有割合を0.0005重量%以上とすることで、重合禁止効果を十分に発揮することができ、1重量%以下にすることで活性エネルギー線を照射するときの硬化性を良好なものとすることができる。
【0041】
5.組成物の製造方法
本発明の組成物は、前記成分(A)~成分(C)を必須成分として含むものである。
組成物の製造方法としては、成分(A)~成分(C)を常法に従い撹拌及び混合すれば良い。
【0042】
本発明の組成物は、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(C)を0.0001重量部~2重量部含む必要がある。
成分(C)の割合が0.0001重量部に満たない場合は、貯蔵安定性効果を発揮することができず、一方、2重量部を超えると組成物中に成分(C)が均一に溶解せずに析出したり、(メタ)アクリレートの加水分解を促進し、組成物の分解が促進されるおそれがある。
【0043】
成分(A)及び成分(B)の含有割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量%中に、成分(A)を20~90重量%及び成分(B)を10~80重量%含むことが好ましく、成分(A)を30~80重量%及び成分(B)を20~70重量%含むことがより好ましい。
成分(A)の割合を20重量%以上とすることで、乾燥工程を短縮することができ、揮散した成分(B)の回収に時間を要しないため生産性に優れるものとするこができ、成分(A)の割合を90重量%以下とすることで、組成物を低粘度とすることができ、ハンドリング性に優れるものとするものとができる。
【0044】
又、本発明の組成物は、成分(A)の製造工程において、成分(B)及び成分(C)を添加して製造することもできる。
成分(A)の製造工程における反応としては、アルコールと(メタ)アクリル酸を使用する脱水エステル化反応、アルコールと(メタ)アクリレートを使用するエステル交換反応のいずれであっても良い。
但し、成分(A)の製造工程における精製工程において、例えば、ろ過工程前に成分(B)及び成分(C)を添加すると、これらの成分が除去されてしまう。従って、成分(A)の製造が完了した後、成分(B)を添加して希釈する工程において、成分(C)を添加することが好ましい。
【0045】
6.組成物の用途
本発明の組成物は、成分(A)を原料化合物とする種々の用途に使用することができる。
特に、本発明の組成物に、光重合開始剤及び熱重合開始剤等の重合開始剤をさらに配合して、硬化型組成物として使用することが好ましい。
本発明の組成物に光重合開始剤をさらに含む組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物として好ましく使用でき、又、熱重合開始剤をさらに含む組成物は、熱硬化型組成物として好ましく使用することができる。
【0046】
又、硬化型組成物として使用する場合、さらに1個のエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「単官能不飽和化合物」という)を配合することができる。
単官能不飽和化合物の具体例としては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕が好ましい
単官能(メタ)アクリレートとして、アルキル(メタ)クリレート、脂環式基を有する単官能(メタ)クリレート、アルコキシアルキル基を有する単官能(メタ)クリレート、及び芳香族単官能(メタ)クリレート等が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレート以外の例としては、(メタ)アクリルアミド、芳香族ビニル化合物及びビニルエーテル等が挙げられる。
【0047】
このようにした得られた硬化型組成物は、種々の用途に使用でき、接着剤、粘着剤、塗料及びハードコート剤等のコーティング剤、オフセット及びインクジェット印刷等のインキ、レジスト、並びに感光性平版印刷版及びカラーレジスト等のパターン形成用組成物等が挙げられる。
これらの用途に使用する場合においては、前記した成分以外にも、目的に応じて種々成分を配合することができる。
接着剤として使用する場合には、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、ポリオール化合物、ポリマー、粘着付与剤、フィラー、金属微粒子、金属酸化物微粒子、イオントラップ剤、消泡剤、レベリング剤、色素及び顔料等が挙げられる。
粘着剤として使用する場合には、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、レベリング剤及び可塑剤等が挙げられる。
コーティング用組成物として使用する場合、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料・染料、シランカップリング剤、表面改質剤及びポリマー等が挙げられる。
インキ用として使用する場合、その他成分としては、具体的には、バインダー、顔料、可塑剤及び耐摩擦剤等が挙げられる。
レジスト及びパターン形成用組成物として使用する場合、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、表面改質剤、アルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。
【実施例
【0048】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
尚、以下においては、「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
【0049】
1.製造例
1)製造例1(ペンタエリスリトールのアクリレートの製造)
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、及び5%酸素含有窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、アクリル酸301g(4.18モル)、ペンタエリスリトール〔広栄化学(株)製〕167g(1.23モル)、酸触媒の硫酸7g、重合禁止剤のハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MQ」という)0.14g、及び有機溶媒のトルエン224gを混合し、反応温度約80℃及び370Torr(絶対圧)の条件で縮合水を除去しながら、原料ペンタエリスリトール中の全水酸基の45%がエステル化されるまで反応させた。
発生した縮合水は28gであり、未反応のペンタエリスリトールを42g回収した。反応終了後に、トルエン870gを追加した。
このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1倍モル量に相当する20%水酸化ナトリウム水溶液を攪拌下に添加して中和処理を実施し、過剰なアクリル酸及び硫酸を除去した。有機層を分離し、攪拌下で有機層100gに対して水10gを添加し水洗処理を行った。有機層を分離し、減圧下に加熱してトルエンを留去した。
得られたアクリレート(以下、「PETA1」という)は185gであり、水酸基価は204mgKOH/gであった。
【0050】
2)製造例2(ペンタエリスリトールのアクリレートの製造)
製造例1と同様の反応装置を使用し、製造例1と同じ原料化合物であるアクリル酸、ペンタエリスリトール、硫酸、MQ、及びトルエンを、製造例1と同じ重量で混合し、反応温度約80℃及び370Torr(絶対圧)の条件で縮合水を除去しながら、原料ペンタエリスリトール中の全水酸基の30%がエステル化されるまで反応させた。
発生した縮合水は18gであり、未反応のペンタエリスリトールを83.5g回収した。反応終了後に、トルエン870gを追加した。
このトルエンを追加した反応液の酸分に対して1倍モル量に相当する20%水酸化ナトリウム水溶液を攪拌下に添加して中和処理を実施し、過剰なアクリル酸及び硫酸を除去した。有機層を分離し、攪拌下で有機層100gに対して水10gを添加し水洗処理を行った。有機層を分離し、減圧下に加熱してトルエンを留去した。
得られたアクリレート(以下、「PETA2」という)は120gであり、水酸基価は224mgKOH/gであった。
【0051】
3)製造例3〔成分(A)の製造:ウレタンアクリレート〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、5%酸素含有窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、製造例1で得られた水酸基価204mgKOH/gのPETA1の100g、2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.07g、ジブチルスズジラウレート0.07gを仕込み、70℃でヘキサメチレンジイソシアネート29gを約1時間で滴下し、80℃で6時間反応させ、残存イソシアネート基が0.25%以下となったことを確認して反応を終了した。
得られたウレタンアクリレート(以下、「UA-1」という)の重量平均分子量は2,026であり、50℃での粘度は13,800mPa・sであった。
【0052】
4)製造例4〔成分(A)の製造:ウレタンアクリレート〕
製造例3において、PETA1に代え製造例2で得られた水酸基価224mgKOH/gのPETA2の100gを用いた、ヘキサメチレンジイソシアネート32gを適下した以外は、製造例3と同様にウレタン化反応を行った。
得られたウレタンアクリレート(以下、「UA-2」という)の重量平均分子量は2,330であり、50℃での粘度は23,300mPa・sであった。
【0053】
5)製造例5〔成分(A)の製造:水酸基含有ポリアクリレートの酸無水物付加物〕
製造例1と同様の反応装置を使用し、当該反応装置に、ジペンタエリスリトール400g(1.58mol)、アクリル酸821g(11.4mol)、トルエン775g、硫酸17g及びMQ2.2gを仕込み、90℃で6時間エステル化反応を行った。
上記反応終了後、トルエン1690gを添加し、ろ紙を用いて反応液をろ過し、その後、蒸留水875gで洗浄を行い、10%NaOH水溶液800gを水洗後の反応液に添加し、室温で1時間の条件で中和を行った。
上記中和処理後、有機層と水層が分離してから水層を除去し、さらに過剰なNaOHを除去する目的で蒸留水360gを添加して水洗処置を行った。その後、有機層と水層が分離してから水層を除去した。その後、50mmHg以下の減圧下で、溶剤であるトルエンを留去してジペンタエリスリトールのアクリレート(水酸基価36mgKOH/g)を得た。
得られたジペンタエリスリトールのアクリレート250gをガラス製フラスコに仕込み、無水コハク酸16g、MQの0.13gを入れ、85℃に昇温した。その中に触媒のトリエチルアミン1.3gを投入後、4時間反応を行った。反応は空気/窒素の混合雰囲気下で行い、酸価34mgKOH/gの化合物を得た(以下、「DPETA-AH」という)。
【0054】
2.実施例1~同6、比較例1~同5
成分(B)として、滴定による過酸化物価が下記であった、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGM」という)及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」という)を用いた。
・PGM:20ppm
・MEK:16ppm
後記表1に示す成分(A)、(B)及び(C)を撹拌・混合し、組成物を調製した。
得られた組成物を使用して、下記安定性試験を行った。それらの結果を、表1に示す。
【0055】
○安定性試験
表1に示す組成物10gを50mLのスクリュー瓶に加え、ふたをした後に30℃で放置し、ゲル化するまでの日数を求めた。
尚、試験期間は3か月間とし、3か月間経過してもゲル化しなかったものは「>3か月」と表した。
【0056】
【表1】
【0057】
尚、表1の略号は、下記を意味する。又、表中の括弧書きの数字は、部数を意味する。さらに、成分(C)として水溶液を使用した場合は、固形分の部数を意味する。
・20%NaOH:20%水酸化ナトリウム水溶液
・36%AANa:36%アクリル酸ナトリウム水溶液
・LA-72:HALS、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、(株)ADEKA製商品名アデカスタブLA-72
・AS3010:リン系酸化防止剤、トリイソデシルフォスファイト、(株)ADEKA製商品名アデカスタブ3010
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)
【0058】
本発明の組成物に該当する実施例1~同6の組成物は、3か月間経過してもゲル化しない貯蔵安定性に優れるものであった。
これに対して、成分(C)を含まない比較例1~同5の組成物は、貯蔵安定性が大きく低下してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の組成物及び製造方法は、多官能(メタ)アクリレートを製造する技術分野、及び多官能(メタ)アクリレートを使用する技術分野で利用することができる。特に、本発明の組成物からなる硬化型組成物は、種々の用途に使用でき、例えば、接着剤、粘着剤、コーティング剤、インキ、及びパターン形成剤等が挙げられる。