(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】短絡点標定システム、短絡点標定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20220705BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01R31/08
H02J13/00 301D
(21)【出願番号】P 2018132836
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】萱沼 晴男
(72)【発明者】
【氏名】武井 寛
(72)【発明者】
【氏名】太田 真二
(72)【発明者】
【氏名】久松 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特許第4044489(JP,B2)
【文献】特開平10-213621(JP,A)
【文献】特開2004-215478(JP,A)
【文献】特開平11-51993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08
H02J 13/00
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線系統情報管理システムから、短絡が発生したときに、電圧の計測結果と、電流の計測結果とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電流の計測結果から得られる短絡が発生したときの電流波形である短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定する電流値判定部と、
前記取得部が取得した前記電圧の計測結果から得られる短絡が発生したときの電圧波形である短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定する電圧波形判定部と、
前記取得部が取得した前記電流の計測結果から得られる前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定する電流波形判定部と、
前記電流値判定部による判定結果と、前記電圧波形判定部による判定結果と、前記電流波形判定部による判定結果との少なくとも一つの判定結果に応じて、前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析する解析部と、
前記解析部が前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析することによって得られた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出する短絡点導出部と
を備える、短絡点標定システム。
【請求項2】
前記解析部は、前記電流値判定部が前記短絡電流波形にオーバーフローが発生していると判定し、前記電圧波形判定部が前記短絡電圧波形に乱れが発生していないと判定し、前記電流波形判定部が前記短絡電流波形に乱れが発生していると判定した場合に、前記短絡が発生する前の電圧値と、電流値と、計測点までのインピーダンス情報とに基づいて、変電所が送電した電圧値を導出し、導出した前記変電所が送電した前記電圧値と短絡が発生したときの電圧値とに基づいて、前記短絡電流の実効値を導出する、請求項1に記載の短絡点標定システム。
【請求項3】
前記解析部は、前記電流値判定部が前記短絡電流波形にオーバーフローが発生していると判定し、前記電圧波形判定部が前記短絡電圧波形に乱れが発生していると判定し、前記電流波形判定部が前記短絡電流波形に乱れが発生していないと判定した場合に、前記短絡電流波形から導出される電流の瞬時値と位相との関係に基づいて、波高値を導出し、導出した波高値から、前記短絡電流の実効値を導出する、請求項1又は請求項2に記載の短絡点標定システム。
【請求項4】
前記取得部が取得した前記短絡電圧波形と、前記短絡電流波形とに基づいて、前記短絡の種別を判定する短絡種別判定部を備え、
前記短絡点導出部は、前記短絡種別判定部が判定した前記短絡の種別にさらに基づいて、短絡点を導出する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の短絡点標定システム。
【請求項5】
配電線系統情報管理システムから、短絡が発生したときに、電圧の計測結果と、電流の計測結果とを取得するステップと、
前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる短絡が発生したときの電流波形である短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定するステップと、
前記取得するステップで取得した前記電圧の計測結果から得られる短絡が発生したときの電圧波形である短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、
前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、
前記短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かの判定結果との少なくとも一つの判定結果に応じて、前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析するステップと、
前記解析するステップで前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析することによって得られた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出するステップとを有する、コンピュータが実行する、短絡点標定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
配電線系統情報管理システムから、短絡が発生したときに、電圧の計測結果と、電流の計測結果とを取得するステップと、
前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる短絡が発生したときの電流波形である短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定するステップと、
前記取得するステップで取得した前記電圧の計測結果から得られる短絡が発生したときの電圧波形である短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、
前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、
前記短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かの判定結果との少なくとも一つの判定結果に応じて、前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析するステップと、
前記解析するステップで前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析することによって得られた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出するステップと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、短絡点標定システム、短絡点標定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
配電線の短絡点などの事故点の特定方法について説明する。
時限投入機能を持った開閉器が、配電線のいくつかの区間毎に設置されている。配電線用の変電所に設置されている保護継電器が事故を検出した際に、配電線遮断器の開放と再閉路とに合わせて開閉器が順次投入され、事故区間が特定される。配電線の事故点(故障設備)は、事故区間が特定された後に、巡視又は事故探査によって、発見される。
【0003】
送電線の事故点の標定について説明する。
短絡事故標定として、FL(Fault Locator)装置が、送電線に設置される。FL装置は、事故時の電圧と通過電流とを測定し、送電線固有のインピーダンス情報を用いて演算することで、事故点までの距離を算出する。FL装置は、センサーおよび演算部を必要とするため高額であり、配電線に用いられていない。
配電線の事故点を特定する技術に関して、短絡事故が発生した場合に、短絡位置を特定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、短絡点よりも電源側に位置する2つの測定地点における対地電圧の電位差を用いて、線路距離とインピーダンスZoとの関係から、短絡位置を標定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護継電器が事故を検出した際に、配電線遮断器の開放と再閉路とに合わせて開閉器を順次投入することによって、事故区間を特定する場合には、事故の様相が継続していることが前提となる。再閉路の後に、事故の様相が継続していない場合、保護継電器が再動作しないため、事故区間を特定できない。このような場合においても、配電設備の健全性の確認、今後の事故の発生につながる可能性の判断、事故要因の特定などを行うために、事故点を発見する必要がある。しかし、事故区間の特定ができていないため、事故が発生した配電線の全区間について、巡視によって、事故点を発見するしかなく、事故点の発見に多大な時間を要している。
【0006】
仮に、配電線にFL装置を設置することを想定した場合、FL装置を設置するには、過大な設備投資が必要であり、採算性にも問題がある。
本発明は、前述した点に鑑みてなされたものであり、その目的は、配電線の短絡点の発見に要する時間を短縮できる短絡点標定システム、短絡点標定方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、配電線系統情報管理システムから、短絡が発生したときに、電圧の計測結果と、電流の計測結果とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記電流の計測結果から得られる短絡が発生したときの電流波形である短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定する電流値判定部と、前記取得部が取得した前記電圧の計測結果から得られる短絡が発生したときの電圧波形である短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定する電圧波形判定部と、前記取得部が取得した前記電流の計測結果から得られる前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定する電流波形判定部と、前記電流値判定部による判定結果と、前記電圧波形判定部による判定結果と、前記電流波形判定部による判定結果との少なくとも一つの判定結果に応じて、前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析する解析部と、前記解析部が前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析することによって得られた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出する短絡点導出部とを備える、短絡点標定システムである。
本発明の一態様の短絡点標定システムにおいて、前記解析部は、前記電流値判定部が前記短絡電流波形にオーバーフローが発生していると判定し、前記電圧波形判定部が前記短絡電圧波形に乱れが発生していないと判定し、前記電流波形判定部が前記短絡電流波形に乱れが発生していると判定した場合に、前記短絡が発生する前の電圧値と、電流値と、計測点までのインピーダンス情報とに基づいて、変電所が送電した電圧値を導出し、導出した前記変電所が送電した前記電圧値と短絡が発生したときの電圧値とに基づいて、前記短絡電流の実効値を導出する。
本発明の一態様の短絡点標定システムにおいて、前記解析部は、前記電流値判定部が前記短絡電流波形にオーバーフローが発生していると判定し、前記電圧波形判定部が前記短絡電圧波形に乱れが発生していると判定し、前記電流波形判定部が前記短絡電流波形に乱れが発生していないと判定した場合に、前記短絡電流波形から導出される電流の瞬時値と位相との関係に基づいて、波高値を導出し、導出した波高値から、前記短絡電流の実効値を導出する。
本発明の一態様の短絡点標定システムにおいて、前記取得部が取得した前記短絡電圧波形と、前記短絡電流波形とに基づいて、前記短絡の種別を判定する短絡種別判定部を備え、前記短絡点導出部は、前記短絡種別判定部が判定した前記短絡の種別にさらに基づいて、短絡点を導出する。
本発明の一態様は、配電線系統情報管理システムから、短絡が発生したときに、電圧の計測結果と、電流の計測結果とを取得するステップと、前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる短絡が発生したときの電流波形である短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定するステップと、前記取得するステップで取得した前記電圧の計測結果から得られる短絡が発生したときの電圧波形である短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、前記短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かの判定結果との少なくとも一つの判定結果に応じて、前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析するステップと、前記解析するステップで前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析することによって得られた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出するステップとを有する、コンピュータが実行する、短絡点標定方法である。
本発明の一態様は、コンピュータに、配電線系統情報管理システムから、短絡が発生したときに、電圧の計測結果と、電流の計測結果とを取得するステップと、前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる短絡が発生したときの電流波形である短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定するステップと、前記取得するステップで取得した前記電圧の計測結果から得られる短絡が発生したときの電圧波形である短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、前記取得するステップで取得した前記電流の計測結果から得られる前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定するステップと、前記短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かの判定結果と、前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かの判定結果との少なくとも一つの判定結果に応じて、前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析するステップと、前記解析するステップで前記短絡電流波形と、前記短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析することによって得られた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出するステップとを実行させるプログラムある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、配電線の短絡点の発見に要する時間を短縮できる短絡点標定システム、短絡点標定方法およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の短絡点標定システムが適用される配電線系統の一例を示す模式図である。
【
図2】実施形態の配電線系統を構成する短絡点標定システムを示すブロック図である。
【
図3】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その1)を示す図である。
【
図4】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その2)を示す図である。
【
図5】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その3)を示す図である。
【
図6】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その4)を示す図である。
【
図7】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その5)を示す図である。
【
図8】単相短絡の場合の短絡電流の波形の一例を示す。
【
図9】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その6)を示す図である。
【
図10】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その7)を示す図である。
【
図11】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その1)を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その2)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本実施形態の短絡点標定システム、短絡点標定方法およびプログラムを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0011】
(実施形態)
(短絡点標定システム)
図1は、実施形態の短絡点標定システムが適用される配電線系統の一例を示す模式図である。
実施形態の短絡点標定システムは、配電線系統に適用される。配電線系統は、発電所からの電力を、変電所300を介して住宅、商業施設、工業施設などの需要家負荷へ供給する。
配電線電力系統には、短絡点標定システム100と、配電線系統情報管理システム200と、変電所300と、配電線DLと、自動開閉器400-1~自動開閉器400-n(nは、n>0の整数)と、遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nとが含まれる。
図1には、n=3の場合について示されている。
配電系統は、複数の配電区間に分けられており、配電区間と隣の配電区間との間(配電線DLの立ち上がり部)の各々には、自動開閉器400-1~自動開閉器400-nの各々が取り付けられる。
自動開閉器400-1~自動開閉器400-nの各々には、自動開閉器400-1~自動開閉器400-nの各々を遠方から制御する遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nが、それぞれ接続される。
以下、自動開閉器400-1~自動開閉器400-nのうちの任意の自動開閉器を、自動開閉器400と呼ぶ。また、遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nのうちの任意の遠方制御装置を、遠方制御装置500と呼ぶ。
【0012】
自動開閉器400は、その端子間の導通(投入)と、絶縁(開放)とを切替可能である。自動開閉器400は、配電線DLの事故からの復旧に対応する場合に、所定の条件下で開放から投入へ自動的に切替える。事故の一例は、短絡である。また、配電線DLの地絡などの事故が発生した場合、変電所300の遮断器がリレーによって開放になり、自動開閉器400も開放になる。また、自動開閉器400は、変電所300の遮断器の再投入によって所定の方向から電力供給を受けた場合にタイマーが作動し、タイマーが所定の時間の経過を検出した場合に投入に切替わる。
自動開閉器400は、電圧と電流とを計測するセンサーを内蔵する。自動開閉器400は、電圧の計測結果とその電圧を計測した時間と、電流の計測結果とその電流を計測した時間とを含む計測結果を、それぞれ、自動開閉器400に接続された遠方制御装置500へ周期的に通知する。
【0013】
遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nの各々は、自動開閉器400-1~自動開閉器400-nの各々が周期的に通知した計測結果を取得し、取得した計測結果を、配電線DLに重畳する。遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nの各々が、配電線DLへ重畳した計測結果は、光ファイバーOFなどの伝送路を経由して、配電線系統情報管理システム200へ送信される。
図1に示される例では、自動開閉器400-1に接続された光ファイバーOFを経由して、配電線系統情報管理システム200へ送信される。
配電線系統情報管理システム200は、遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nの各々が通知した計測結果を取得し、取得した計測結果を記憶する。
保護継電器(図示なし)は、変電所300に設置され、事故が発生したことを検出する。遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nの各々に整定された電流値以上の電流が通過すると、遠方制御装置500-1~遠方制御装置500-nの各々は、事故が発生したことを示す情報(以下「事故発生情報」という)を、配電線系統情報管理システム200へ通知する。ここで、事故発生情報には、事故の種類を示す情報(本実施形態では、「短絡」)と、事故の発生時刻を示す情報(以下「事故発生時刻情報」という)が含まれる。具体的には、
図1に示されるように、自動開閉器400-2と自動開閉器400-3との間の短絡点SPで配電線DLが短絡した場合には、遠方制御装置500-2は、事故発生情報を、配電線系統情報管理システム200へ通知する。
配電線系統情報管理システム200は、遠方制御装置500-2が通知した事故発生情報を取得し、取得した事故発生情報に含まれる事故発生時刻情報に基づいて、記憶している計測結果のうち、事故が発生した時刻から所定の時間前と、事故が発生した時刻以降の計測結果を、短絡点標定システム100へ、送信する。
【0014】
短絡点標定システム100は、配電線系統情報管理システム200と、インターネットなどのネットワーク50を介して接続される。短絡点標定システム100は、配電線系統情報管理システム200が送信した計測結果(事故が発生した時刻から所定の時間前と、事故が発生した時刻以降の計測結果)を受信し、受信した計測結果に含まれる電圧の計測結果と電圧を計測した時間を示す情報(以下「短絡電圧情報」という)と、電流の計測結果と電流を計測した時間を示す情報(以下「短絡電流情報」という)とのうち、短絡電流情報、又は短絡電圧情報と短絡電流情報とに基づいて、短絡電流の実効値を導出する。短絡点標定システム100は、導出した短絡電流の実効値と、配電線DLのインピーダンスから導出される短絡電流とが一致する点を求めることによって、短絡点を標定する。
【0015】
以下、配電線電力系統に含まれる短絡点標定システム100と、配電線系統情報管理システム200と、変電所300と、自動開閉器400と、遠方制御装置500とのうち、短絡点標定システム100について説明する。
(短絡点標定システム100)
図2は、実施形態の配電線系統を構成する短絡点標定システム100を示すブロック図である。
短絡点標定システム100は、パーソナルコンピュータ、サーバー、又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。
短絡点標定システム100は、通信部110と、記憶部120と、情報処理部130と、各構成要素を
図2に示されているように電気的に接続するためのアドレスバスやデータバスなどのバスライン150とを備える。
【0016】
通信部110は、通信モジュールによって実現される。通信部110はネットワーク50を介して、配電線系統情報管理システム200などの外部の通信装置と通信する。具体的には、通信部110は、配電線系統情報管理システム200が送信した計測結果(事故が発生した時刻から所定の時間前と、事故が発生した時刻以降の計測結果)を受信し、受信した計測結果を情報処理部130へ出力する。また、通信部110は、情報処理部130が出力した短絡点を標定した結果を、配電線系統情報管理システム200などの所定の通信装置へ送信する。
【0017】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、又はこれらのうち複数が組み合わされたハイブリッド型記憶装置などにより実現される。記憶部120の一部又は全部は、短絡点標定システム100の一部として設けられる場合に代えて、NAS(Network Attached Storage)や外部のストレージサーバなど、短絡点標定システム100のプロセッサがネットワーク50を介してアクセス可能な外部装置により実現されてもよい。記憶部120には、情報処理部130により実行されるプログラム121と、アプリ122と、配電線インピーダンス123と、短絡電圧情報124と、短絡電流情報125とが記憶される。
【0018】
アプリ122は、短絡点標定システム100に、配電線系統情報管理システム200が送信した計測結果を受信させる。
アプリ122は、短絡点標定システム100に、受信した計測結果に含まれる短絡電圧情報と、短絡電流情報とを、計測時刻と関連づけて記憶させる。
アプリ122は、短絡点標定システム100に、記憶させた短絡電圧情報と、短絡電流情報とのうち、短絡電流情報から得られる電流波形(以下「短絡電流波形」という)にオーバーフロー(OVF)が発生しているか否かを判定させる。ここで、オーバーフローとは、時間が経過しても、短絡電流が、上限値付近で水平を描いていることによってある一定値以上にならない部分をいう。
アプリ122は、短絡点標定システム100に、記憶させた短絡電圧情報と、短絡電流情報とのうち、短絡電圧情報から得られる電圧波形(以下「短絡電圧波形」という)に乱れが発生しているか否かを判定させる。
アプリ122は、短絡点標定システム100に、記憶させた短絡電圧情報と、短絡電流情報とのうち、短絡電流情報から得られる短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定させる。
【0019】
アプリ122は、短絡点標定システム100に、短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定した結果と、短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定した結果と、短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定した結果とに応じて、短絡電流波形、又は短絡電流波形と短絡電圧波形とを解析することによって、短絡電流の実効値を導出させる。
アプリ122は、短絡点標定システム100に、導出させた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出させる。
配電線インピーダンス123は、変電所300から、自動開閉器400-1~自動開閉器400-nの各々が設置された位置までの配電線インピーダンスである。
短絡電圧情報124は、配電線系統情報管理システム200が送信した計測結果に含まれる短絡電圧情報である。
短絡電流情報125は、配電線系統情報管理システム200が送信した計測結果に含まれる短絡電流情報である。
【0020】
情報処理部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部120に格納されたプログラム121や、アプリ122を実行することにより実現される機能部(以下「ソフトウェア機能部」という)である。なお、情報処理部130の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
情報処理部130は、例えば、取得部131と、短絡種別判定部132と、電流値判定部134と、電圧波形判定部135と、電流波形判定部136と、解析部137と、短絡点導出部138とを備える。
【0021】
取得部131は、通信部110が出力した計測結果を取得する。
取得部131は、取得した計測結果に含まれる短絡電圧情報と、短絡電流情報とを、短絡種別判定部132へ出力する。また、取得部131は、取得した計測結果に含まれる短絡電圧情報と、短絡電流情報とのうち、短絡電流情報を、電流値判定部134と、電流波形判定部136へ出力する。また、取得部131は、取得した計測結果に含まれる短絡電圧情報と、短絡電流情報とのうち、短絡電圧情報を、電圧波形判定部135へ出力する。また、取得部131は、取得した計測結果に含まれる短絡電圧情報と、短絡電流情報とを、解析部137へ出力する。また、取得部131は、取得した計測結果に含まれる短絡電圧情報と、短絡電流情報とを関連付けて、記憶部120に記憶する。
【0022】
短絡種別判定部132は、取得部131が出力した短絡電圧情報と、短絡電流情報とを取得し、取得した短絡電圧情報と、短絡電流情報とに基づいて、発生した短絡の種類が、三相短絡と、単相短絡と、異相間地絡短絡とのうちのいずれかであるかを判定する。
具体的には、短絡種別判定部132は、取得した短絡電圧情報と、短絡電流情報とのうちの短絡電流情報に基づいて、事故が発生する前の相電流比で、電流上昇率がX%以上であるか否かを判定する。具体的には、短絡種別判定部132は、短絡電流情報を画像処理することによって、事故が発生する前の相電流比で、電流上昇率がX%以上であるか否かを自動的に判定する。
【0023】
短絡種別判定部132は、三相とも電流上昇率がX%以上であると判定した場合には短絡電圧情報に基づいて、事故が発生した後の三相の電圧が上昇しているか否かを判定する。具体的には、短絡種別判定部132は、短絡電圧情報を画像処理することによって、事故が発生した後の三相の電圧が上昇しているか否かを自動的に判定する。短絡種別判定部132は、三相の電圧の全てが上昇していないと判定した場合には三相短絡と判定する。短絡種別判定部132は、三相の電圧のうち、一相の電圧でも上昇している場合には、単相短絡と判定する。
一方、短絡種別判定部132は、三相のうち、二相の電流上昇率がX%以上であると判定した場合には単相短絡であると判定する。短絡種別判定部132は、三相のうち、一相の電流上昇率がX%以上であると判断した場合には異相間地絡短絡であると判定する。
短絡種別判定部132は、短絡の種別の判定結果を示す情報(以下「短絡種別情報」を、電圧波形判定部135と、電流波形判定部136と、短絡点導出部138とへ出力する。
短絡種別情報が異相間地絡短絡を示す場合には、処理を終了する。
【0024】
電流値判定部134は、取得部131が出力した短絡電流情報を取得し、取得した短絡電流情報から得られる短絡電流の波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定する。具体的には、電流値判定部134は、短絡電流情報を画像処理することによって、短絡電流情報から得られる短絡電流の波形にオーバーフローが発生しているか否かを自動的に判定する。
図3は、実施形態の短絡点標定システム100の動作の一例(その1)を示す図である。
図3において、横軸は時間であり、縦軸は電流[A]である。ここで、時間は、ある基準とする時間からの経過時間で表されている。ここで、ある基準とする時間は、事故が発生する所定の時間前の時間である。
図3は、電流値判定部134が、短絡電流を判定する処理の一例を示す。
電流値判定部134は、
図3に示されるように、短絡電流の波形に、時間が経過しても、短絡電流が、上限値付近で水平を描いていることによってある一定値以上にならない箇所(部分)(以下「OVF(オーバーフロー)箇所」という)がある場合にオーバーフローが発生していると判定し、ない場合にオーバーフローが発生していないと判定する。
図3に示される例では、時刻が0.08以降にオーバーフローが発生している。
電流値判定部134は、短絡電流の波形にOVF箇所があるか否かの判定結果(以下「オーバーフロー判定結果」という)を、解析部137に出力する。
【0025】
電圧波形判定部135は、取得部131が出力した短絡電圧情報を取得する。また、電圧波形判定部135は、短絡種別判定部132が出力した短絡種別情報を取得する。また、電圧波形判定部135は、後述する解析部137が出力した短絡電圧の波形の判定を指示する情報(以下「短絡電圧波形判定指示情報」という)を取得した場合、短絡種別判定部132から取得した短絡種別情報に基づいて、取得部131から取得した短絡電圧情報から得られる短絡電圧の波形に乱れが発生しているか否かを判定する。ここで、解析部137は、オーバーフロー判定結果に基づいて、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合、電圧波形判定部135に短絡電圧波形判定指示情報を出力する。
【0026】
以下、短絡電圧の波形に乱れが発生しているか否かを判定する処理について、単相短絡と、三相短絡とに分けて説明する。
単相短絡の場合について説明する。
図4は、実施形態の短絡点標定システム100の動作の一例(その2)を示す図である。
図5は、実施形態の短絡点標定システム100の動作の一例(その3)を示す図である。
図4と
図5とは、電圧波形判定部135が、短絡電圧の波形を判定する処理の一例を示す。
図4と
図5とは、単相短絡の場合を示す。
図4において、(1)の左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、(1)の右図はオーバーフローが発生していない場合で、且つ短絡電圧と短絡電流との両方の乱れがない場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。(2)の左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、(2)の右図はオーバーフローが発生している場合で、且つ短絡電圧と短絡電流との両方の乱れがない場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。(3)の左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、(3)の右図は、オーバーフローが発生している場合で、且つ短絡電圧の乱れはないが、短絡電流の乱れがある場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。
図5において、左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、右図はオーバーフローが発生している場合で、且つ短絡電圧の乱れがあるが。短絡電流の乱れがない場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。
電圧波形判定部135は、単相短絡の場合に、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合で、
図4の(2)~(3)のような短絡電圧の波形(上段)が得られた場合には乱れがないと判定する。
また、電圧波形判定部135は、単相短絡の場合に、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合で、
図5の短絡電圧の波形(上段)のような歪みや、電圧波形の切れ込みなどの乱れが含む波形が得られた場合には乱れがあると判定する。
【0027】
三相短絡の場合について説明する。
図6は、実施形態の短絡点標定システム100の動作の一例(その4)を示す図である。
図7は、実施形態の短絡点標定システム100の動作の一例(その5)を示す図である。
図6と
図7とは、電圧波形判定部135が、短絡電圧の波形を判定する処理の一例を示す。
図6と
図7とは、三相短絡の場合を示す。
図6において、(1)の左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、(1)の右図はオーバーフローが発生していない場合で、且つ短絡電圧と短絡電流との両方の乱れがない場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。(2)の左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、(2)の右図はオーバーフローが発生している場合で、且つ短絡電圧と短絡電流との両方の乱れがない場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。(3)の左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、(3)の右図はオーバーフローが発生している場合で、且つ短絡電圧の乱れはないが、短絡電流が乱れている場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。
図7において、左図は事故が発生する前の電圧の波形(上段)と電流の波形(下段)であり、右図は、オーバーフローが発生している場合で、且つ短絡電圧の乱れがあるが、短絡電流の乱れがない場合の短絡電圧の波形(上段)と短絡電流の波形(下段)とを示す。
電圧波形判定部135は、三相短絡の場合に、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合で、
図6の(2)~(3)のような短絡電圧の波形(上段)が得られた場合には乱れがないと判定する。
また、電圧波形判定部135は、三相短絡の場合に、
図7の短絡電圧の波形(上段)のような歪みや、電圧波形の切れ込みなどの乱れを含む波形が得られた場合には乱れがあると判定する。
電圧波形判定部135は、短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かの判定結果(以下「短絡電圧判定結果」という)を、解析部137へ出力する。
図2に戻り、説明を続ける。
【0028】
電流波形判定部136は、取得部131が出力した短絡電流情報を取得する。また、電流波形判定部136は、短絡種別判定部132が出力した短絡種別情報を取得する。また、電流波形判定部136は、解析部137が出力した短絡電流の波形の判定を指示する情報(以下「短絡電流波形判定指示情報」という)を取得した場合、短絡種別判定部132から取得した短絡種別情報に基づいて、取得部131から取得した短絡電流情報から得られる短絡電流の波形に乱れが発生しているか否かを判定する。ここで、解析部137は、短絡電圧判定結果に基づいて、短絡電圧の波形に乱れが発生していない場合に、電流波形判定部136に、短絡電流波形判定指示情報を出力する。
【0029】
電流波形判定部136は、単相短絡の場合に、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合で、
図4の(2)、
図5のような短絡電流の波形(下段)が得られた場合には乱れがないと判定する。また、電流波形判定部136は、単相短絡の場合に、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合で、
図4の(3)のような短絡電流の波形(下段)が得られた場合には、短絡電流の波形に歪みや、電流波形の切れ込みなどの乱れが含まれているため、乱れがあると判定する。
【0030】
電流波形判定部136は、三相短絡の場合に、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合で、
図6の(2)、
図7のような短絡電流の波形(下段)が得られた場合には乱れがないと判定する。また、電流波形判定部136は、三相短絡の場合に、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合で、
図6の(3)のように、歪みや、電流波形の切れ込みなどの乱れが含む波形が得られた場合には乱れがあると判定する。
電流波形判定部136は、短絡電流波形に乱れが発生しているか否かの判定結果(以下「短絡電流判定結果」という)を、解析部137へ出力する。
図2に戻り、説明を続ける。
【0031】
解析部137は、取得部131が出力した短絡電圧情報と、短絡電流情報とを取得する。また、解析部137は、電流値判定部134が出力したオーバーフロー判定結果を取得する。
解析部137は、取得したオーバーフロー判定結果が、短絡電流の波形にオーバーフローが発生していないことを示す場合に、取得部131から取得した短絡電流情報に基づいて、短絡電流の波形の波高値から実効値を導出する。解析部137は、導出した短絡電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。以下、短絡電流の波形の波高値から実効値を導出する手法を、実効値算出法という。
短絡電流の波形にオーバーフローが発生していない場合には、
図4の(1)と
図6の(1)に該当する。この場合、解析部137は、
図4の(1)と
図6の(1)との短絡電流の波形(下段)から、波高値を求め、求めた波高値を、式(1)にしたがって、実効値に換算する。
【0032】
I=Is/√2 (1)
【0033】
式(1)において、Iは短絡電流実効値であり、Isは短絡電流波高値である。
図8は、単相短絡の場合の短絡電流の波形の一例を示す。
図8において、横軸は時間であり、縦軸は電流[A]である。このような短絡電流の波形が得られている場合、波高値は1750Aであるため、短絡電流実効値は1240Aとなる。このように構成することによって、短絡点標定で使用する実効値に、波高値を換算できる。
図8には、単相短絡の場合について説明したが、三相短絡の場合も同様に、短絡電流実効値を導出できる。
図2に戻り、説明を続ける。
【0034】
解析部137は、取得したオーバーフロー判定結果が短絡電流の波形にオーバーフローが発生していることを示す場合に、短絡電圧波形判定指示情報を作成し、作成した短絡電圧波形判定指示情報を、電圧波形判定部135へ出力する。
解析部137は、電圧波形判定部135が出力した短絡電圧判定結果を取得し、取得した短絡電圧判定結果が短絡電圧波形に乱れが見られないことを示す場合に、短絡電流波形判定指示情報を作成し、作成した短絡電流波形判定指示情報を、電流波形判定部136へ出力する。
解析部137は、電流波形判定部136が出力した短絡電流判定結果を取得し、取得した短絡電流判定結果が短絡電流波形に乱れが見られることを示す場合に、短絡電圧情報に基づいて、短絡電流の波形を解析する。
具体的には、解析部137は、短絡が発生したときの電圧降下に基づいて、短絡電流を導出する。以下、短絡が発生したときの電圧降下に基づいて、短絡電流を導出する手法を、電圧降下量法という。
具体的には、短絡電流の波形にオーバーフローが発生し、短絡電圧に乱れが発生していないが、短絡電流に乱れが発生している場合は、
図4の(3)と、
図6の(3)に該当する。この場合、解析部137は、
図4の(3)又は
図6の(3)の短絡電圧の波形(上段)から、電圧降下量を求め、求めた電圧降下量から、短絡電流を導出する。
【0035】
図9は、実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その6)を示す図である。
図9は、電圧降下量法で、短絡電流を導出する処理を示す。
解析部137は、事故が発生する前の電圧値と、電流値と、記憶部120の配電線インピーダンス123に記憶されている計測点までのインピーダンス情報に基づいて、電源端の電圧値(送り出し電圧)Vを導出する。
解析部137は、式(2)にしたがって、短絡電流波高値Isを導出する。
【0036】
Is=(V-Va2)/Z (2)
【0037】
式(2)において、Vは送出し電圧であり、Va2は自動開閉器400-1~自動開閉器400-nのいずれか一つが計測した電圧値であり、Zは自動開閉器400-1~自動開閉器400-nのうちの情報を取得した任意の自動開閉器から変電所300側のインピーダンスである。
この場合、パーセントインピーダンス%Zsは、式(3)で表される。
【0038】
%Zs=(√3IZ/6600)×100 (3)
【0039】
式(3)から、基準電流I=(10MVA/6600)/√3=874.7Aが得られる。
また、送出し電圧Vは、式(4)にしたがって、導出される。
【0040】
V=Va+(Z×Ia) (4)
【0041】
式(4)において、Iaは短絡前の電流値である。
解析部137は、導出した短絡電流波高値Isから、短絡電流の実効値を導出する。解析部137は、導出した短絡電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。
このように構成することによって、短絡が発生したときに、自動開閉器400-1~自動開閉器400-nのいずれか一つが計測した電圧値から得られる電圧降下に基づいて、短絡電流を導出できる。
図2に戻り、説明を続ける。
【0042】
解析部137は、電圧波形判定部135から取得した短絡電圧判定結果が短絡電圧波形に乱れがあることを示す場合に、取得した短絡電流情報に基づいて、短絡電流の波形を解析する。
具体的には、解析部137は、短絡電流の波形のオーバーフローが発生していない部分の電流値に基づいて、短絡電流の波高値を導出し、導出した波高値から、実効値を導出する。以下、短絡電流の波形のオーバーフローが発生していない部分の電流値に基づいて、短絡電流の実効値を導出する手法を、正弦波換算法という。
短絡電流の波形にオーバーフローが発生し、短絡電圧に乱れが発生している場合は、
図5、
図7に該当する。この場合、解析部137は、
図5又は
図7の短絡電流の波形(下段)から、短絡電流の波形のオーバーフローが発生していない部分の電流値に基づいて、短絡電流の波高値を導出し、導出した波高値から、実効値を導出する。
【0043】
図10は、実施形態の短絡点標定システム100の動作の一例(その7)を示す図である。
図10は、正弦波換算法で、短絡電流の実効値を導出する処理を示す。
図10において、(1)は短絡電流波形の一例を示し、横軸は時間であり、縦軸は電流[A]である。(2)は位相角θと電流値iとの関係を示す。
解析部137は、短絡電流の波形から、OVF箇所以外の部分(以下「正常部分」という)を抽出する。解析部137は、抽出した正常部分について、位相角θと、電流値iとを導出する。具体的には、ゼロクロスから頂点(90度)までについて、一サイクルのサンプル数の1/4個のデータについて、電流波高値を導出する。
図10に示される例では、(1)において、時間が0.08以降の部分が抽出される。そして、(2)に示されるように、位相角が30度のときに電流値が20Aであった場合と、位相角が15度のときに電流値が10.35Aであった場合が示されている。
解析部137は、導出した位相角θと、電流値iとに基づいて、式(5)から、電流波高値Isを導出する。
【0044】
Is=i/sinθ (5)
【0045】
解析部137は、導出した複数の電流波高値のうち、最大となるものを、電流波高値Isとする。解析部137は、電流波高値Isに基づいて、電流の実効値を導出する。解析部137は、導出した電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。
【0046】
図10に示される例では、位相角が30度のときに電流値が20Aであった場合には、Is=20/sin30を計算することによって、Is=40が得られる。また、位相角が15度のときに電流値が10.35Aであった場合には、Is=10.35/sin15を計算することによって、Is=40が得られる。
このように構成することによって、短絡が発生したときに得られる短絡電流の波形に基づいて、短絡電流波高値を導出できる。
図2に戻り、説明を続ける。
解析部137は、電流波形判定部136が出力した短絡電流判定結果を取得し、取得した短絡電流判定結果が短絡電流波形に乱れが見られないことを示す場合に、短絡電流情報に基づいて、短絡電流の波形を解析する。具体的には、解析部137は、前述した電圧降下量法と正弦波換算法との両方で、短絡電流の実効値を導出する。解析部137は、電圧降下量法で導出した短絡電流の実効値と、正弦波換算法で導出した短絡電流の実効値とのうち、値が大きい方を採用する。解析部137は、採用した短絡電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。
短絡点導出部138は、短絡種別判定部132が出力した短絡種別情報を取得する。また、短絡点導出部138は、解析部137が出力した電流の実効値を示す情報を取得する。短絡点導出部138は、取得した短絡種別情報が単相短絡を示す場合には、取得した電流の実効値を示す情報に基づいて、電流の実効値を、三相短絡電流に変換(換算)する。短絡事故標定手法に用いる短絡電流は、三相短絡電流である。このため、短絡点導出部138は、短絡種別判定部132が単相短絡と判定した場合には、電流の実効値を、三相短絡電流に換算する。具体的には、短絡点導出部138は、電流の実効値に2/√3を乗算する。短絡点導出部138は、三相短絡電流に変換した電流の実効値と、配電線DLのインピーダンスから導出される短絡電流とが一致する点を求めることによって、短絡点を標定する。
一方、短絡点導出部138は、短絡種別情報が三相短絡を示す場合には、取得した電流の実効値を示す情報に基づいて、短絡電流の実効値と、配電線DLのインピーダンスから導出される短絡電流とが一致する点を求めることによって、短絡点を標定する。また、短絡点導出部138は、短絡種別情報が異相間地絡短絡を示す場合には、処理を終了する。短絡点導出部138は、短絡点を標定した結果を、通信部110へ出力する。
【0047】
(短絡点標定システムの動作)
図11は、本実施形態の短絡点標定システムの動作の一例(その1)を示すフローチャートである。
図11に示される例では、短絡点標定システム100は、短絡電圧情報と、短絡電流情報とに基づいて、短絡種別を判定する。
(ステップS1)
保護継電器(図示なし)が、短絡を検出する。
(ステップS2)
短絡点標定システム100の通信部110は、配電線系統情報管理システム200が送信した計測結果を受信し、受信した計測結果を、情報処理部130へ出力する。情報処理部130の取得部131は、通信部110が出力した計測結果を取得し、取得した計測結果に含まれる短絡電圧情報と、短絡電流情報とを、短絡種別判定部132へ出力する。
(ステップS3)
短絡種別判定部132は、取得部131が出力した短絡電圧情報と短絡電流情報とを取得し、取得した短絡電圧情報と、短絡電流情報とのうちの短絡電流情報に基づいて、三相の電流上昇率がX%以上であるか否かを判定する。
【0048】
(ステップS4)
短絡種別判定部132は、三相の電流上昇率がX%以上であると判定した場合には短絡電圧情報に基づいて、三相の電圧が上昇しているか否かを判定する。
(ステップS5)
短絡種別判定部132は、ステップS4で三相の電圧の全てが上昇していないと判定した場合には三相短絡と判定する。
(ステップS6)
短絡種別判定部132は、ステップS3で三相の電流上昇率がX%以上でない、つまり三相の電流上昇率がX%未満である場合には、二相の電流上昇率がY%以上であるか否かを判定する。ここで、X%とY%とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(ステップS7)
短絡種別判定部132は、ステップS4で三相の電圧が上昇していると判定した場合、又はステップS6で二相の電流上昇率がY%以上である場合には、単相短絡と判定する。
(ステップS8)
短絡種別判定部132は、ステップS6で短絡種別判定部132は、二相の電流上昇率がY%以上でない、つまり二相の電流上昇率がY%未満である場合には異相間地絡短絡と判定する。
【0049】
図12は、実施形態の短絡点標定システム100の動作の一例(その2)を示すフローチャートである。
図12に示される例では、短絡点標定システム100は、短絡電流情報と、短絡電流情報と短絡電圧情報とのいずれか一方に基づいて、実効値算出法と、電圧降下量法と、正弦波換算法とのうち、短絡電流の実効値を導出する方法を選択する。そして、短絡点標定システム100は、選択した方法で導出した短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を探索する。
図12では、電流値判定部134が、取得部131が出力した短絡電流情報を取得した後、電圧波形判定部135が、取得部131が出力した短絡電圧情報を取得した後、電流波形判定部136が、取得部131が出力した短絡電流情報を取得した後、解析部137が、取得部131が出力した短絡電圧情報と、短絡電流情報とを取得した後の動作について説明する。
【0050】
(ステップS11)
電流値判定部134は、取得した短絡電流情報から得られる短絡電流の波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定する。電流値判定部134は、オーバーフロー判定結果を、解析部137へ出力する。
(ステップS12)
解析部137は、電流値判定部134が出力したオーバーフロー判定結果を取得する。解析部137は、オーバーフロー判定結果に基づいて、短絡電流の波形にオーバーフローが発生していない場合、実効値算出法で、短絡電流の実効値を導出する。解析部137は、短絡電流の波形から、波高値を求め、求めた波高値を、実効値に換算する。解析部137は、導出した短絡電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。
(ステップS13)
解析部137は、電流値判定部134が出力したオーバーフロー判定結果を取得する。解析部137は、オーバーフロー判定結果に基づいて、短絡電流の波形にオーバーフローが発生している場合、電圧波形判定部135に、短絡電圧波形判定指示情報を出力する。電圧波形判定部135は、解析部137が出力した短絡電圧波形判定指示情報を取得した場合、取得部131から取得した短絡電圧情報から得られる短絡電圧の波形に乱れが発生しているか否かを判定する。電圧波形判定部135は、短絡電圧判定結果を、解析部137へ出力する。
【0051】
(ステップS14)
解析部137は、電圧波形判定部135が出力した短絡電圧判定結果を取得する。解析部137は、短絡電圧判定結果に基づいて、短絡電圧の波形に乱れが発生していない場合、電流波形判定部136に、短絡電流波形判定指示情報を出力する。
電流波形判定部136は、解析部137が出力した短絡電流波形判定指示情報を取得した場合、取得部131から取得した短絡電流情報から得られる短絡電流の波形に乱れが発生しているか否かを判定する。電流波形判定部136は、短絡電流判定結果を、解析部137へ出力する。
(ステップS15)
解析部137は、電流波形判定部136が出力した短絡電流判定結果を取得する。解析部137は、短絡電流判定結果に基づいて、短絡電流の波形に乱れが発生している場合、電圧降下量法で、短絡電流の実効値を導出する。解析部137は、電圧降下に基づいて、短絡電流を導出する。解析部137は、導出した短絡電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。
(ステップS16)
解析部137は、電流波形判定部136が出力した短絡電流判定結果を取得する。解析部137は、短絡電流判定結果に基づいて、短絡電流の波形に乱れが発生していない場合、電圧降下量法と正弦波換算法とで、短絡電流の実効値を導出する。解析部137は、電圧降下量法で導出した短絡電流の実効値と、正弦波換算法で導出した短絡電流の実効値とのうち、値が大きい方を採用する。解析部137は、採用した短絡電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。
【0052】
(ステップS17)
解析部137は、電圧波形判定部135が出力した短絡電圧判定結果を取得する。解析部137は、短絡電圧判定結果に基づいて、短絡電圧の波形に乱れが発生している場合、正弦波換算法で、短絡電流の実効値を導出する。解析部137は、短絡電流の波形のオーバーフローが発生していない部分の電流値に基づいて、短絡電流の実効値を導出する。解析部137は、導出した短絡電流の実効値を示す情報を、短絡点導出部138へ出力する。
(ステップS18)
短絡点導出部138は、短絡種別判定部132が出力した短絡種別情報を取得する。また、短絡点導出部138は、解析部137が出力した短絡電流の実効値を示す情報を取得する。短絡点導出部138は、取得した短絡種別情報が単相短絡を示す場合には、取得した電流の実効値を示す情報に基づいて、電流の実効値を、三相短絡電流に変換(換算)する。短絡点導出部138は、三相短絡電流に変換した電流の実効値と、配電線DLのインピーダンスから導出される短絡電流とが一致する点を求めることによって、短絡点を標定する。また、短絡点導出部138は、短絡種別情報が三相短絡を示す場合には、取得した電流の実効値を示す情報に基づいて、短絡電流の実効値と、配電線DLのインピーダンスから導出される短絡電流とが一致する点を求めることによって、短絡点を標定する。また、短絡点導出部138は、短絡種別情報が異相間地絡短絡を示す場合には、処理を終了する。
【0053】
前述した実施形態では、短絡点標定システム100と、配電線系統情報管理システム200とが別々の装置である場合について説明したが、この例に限られない。例えば、短絡点標定システム100と、配電線系統情報管理システム200とが一体の装置であってもよい。
前述した実施形態では、短絡点標定システム100が、短絡電圧情報と、短絡電流情報とに基づいて、発生した短絡の種類が、三相短絡と、単相短絡と、異相間地絡短絡とのうちのいずれかであるかを、画像処理によって、自動的に判定する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、ユーザに目視によって判定させ、判定結果を入力させるようにしてもよい。この場合、短絡点標定システム100は、ユーザが入力した判定結果に基づいて、処理を行う。
前述した実施形態では、短絡点標定システム100が、短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを、画像処理によって、自動的に判定させる場合について説明したが、この例に限られない。例えば、ユーザに目視によって判定させ、判定結果を入力させるようにしてもよい。この場合、短絡点標定システム100は、ユーザが入力した判定結果に基づいて、処理を行う。
前述した実施形態では、短絡点標定システム100が、短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを、画像処理によって、自動的に判定させる場合について説明したが、この例に限られない。例えば、ユーザに目視によって判定させ、判定結果を入力させるようにしてもよい。この場合、短絡点標定システム100は、ユーザが入力した判定結果に基づいて、処理を行う。
前述した実施形態では、短絡点標定システム100が、短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを、画像処理によって、自動的に判定させる場合について説明したが、この例に限られない。例えば、ユーザに目視によって判定させ、判定結果を入力させるようにしてもよい。この場合、短絡点標定システム100は、ユーザが入力した判定結果に基づいて、処理を行う。
前述した実施形態では、正弦波換算法で、短絡電流の実効値を導出する場合に、解析部137は、導出した複数の電流波高値のうち、最大となるものを、電流波高値Isとする場合について説明したが、この例に限られない。例えば、解析部137は、導出した複数の電流波高値の平均値を電流波高値Isとしてもよいし、中間値を電流波高値Isとしてもよい。
実施形態の短絡点標定システム100は、電柱に電線を架線した架空配電線と、ケーブルを地中に埋設した地中配電線とのいずれであっても、適用できる。
【0054】
実施形態の短絡点標定システム100によれば、短絡点標定システム100は、実効値算出法によって、短絡電流の実効値を導出する。具体的には、短絡点標定システム100は、短絡が発生した場合に、配電線系統情報管理システム200が送信した計測結果を受信し、受信した計測結果に含まれる短絡電流情報に基づいて、短絡電流の実効値を導出する。短絡点標定システム100は、導出した短絡電流の実効値と、記憶している配電線DLのインピーダンス情報とを用いて、短絡点までの距離を導出する。このように構成することによって、自動開閉器400が記憶し、伝送する計測結果に基づいて、電流の実効値を導出できるため、短絡点までの距離を算出できる。
また、短絡点標定システム100は、電圧降下量法によって、短絡電流の実効値を導出する。具体的には、短絡点標定システム100は、事故が発生する前の電圧値と、電流値と、記憶している計測点までのインピーダンス情報とから、送り出し電圧を導出する。また、短絡点標定システム100は、導出した送り出し電圧値と、短絡が発生した後の電圧値とに基づいて、短絡電流によって生じた分の電圧降下量を導出する。短絡点標定システム100は、導出した電圧降下量と、自動開閉器400までのインピーダンスの情報とから、短絡電流の実効値を導出する。短絡点標定システム100は、導出した短絡電流の実効値と、記憶している配電線のインピーダンス情報とを用いて、短絡点までの距離を導出する。このように構成することによって、自動開閉器400が記憶し、伝送する短絡電流の計測結果が、計測上限値を超えて、上限値付近で水平線を描く程過大であった場合でも、電流の実効値を導出できるため、短絡点までの距離を算出できる。
また、短絡点標定システム100は、正弦波換算法によって、短絡電流の実効値を導出する。具体的には、短絡点標定システム100は、短絡電流の波形から、OVF箇所以外の部分を抽出し、抽出した部分に含まれる測定値を、その測定値の位相に対応する基本正弦波の値で除算することによって、電流の波高値を導出する。短絡点標定システム100は、導出した短絡電流の実効値と、記憶している配電線DLのインピーダンス情報とを用いて、短絡点までの距離を導出する。このように構成することによって、短絡電圧の波形に欠損や乱れが大きく、短絡電圧の値が読み取れないため、電圧降下量を利用できない場合であっても、電流の実効値を導出できるため、短絡点までの距離を算出できる。
また、短絡点標定システム100は、配電線DLの短絡が発生した場合に、実効値算出法、電圧降下量法、正弦波換算法の順序で、電流の実効値を導出する。短絡点標定システム100は、導出した短絡電流の実効値と、記憶している配電線DLのインピーダンス情報とを用いて、短絡点までの距離を導出する。このように構成することによって、FL装置を導入するなどの高額な設備投資をすることなく、従来と比較して、巡視時間を短縮できる。
【0055】
<構成例>
一構成例として、配電線系統情報管理システムから、短絡が発生したときに、電圧の計測結果と、電流の計測結果とを取得する取得部と、取得部が取得した電流の計測結果から得られる短絡が発生したときの電流波形である短絡電流波形にオーバーフローが発生しているか否かを判定する電流値判定部と、取得部が取得した電圧の計測結果から得られる短絡が発生したときの電圧波形である短絡電圧波形に乱れが発生しているか否かを判定する電圧波形判定部と、取得部が取得した電流の計測結果から得られる前記短絡電流波形に乱れが発生しているか否かを判定する電流波形判定部と、電流値判定部による判定結果と、電圧波形判定部による判定結果と、電流波形判定部による判定結果との少なくとも一つの判定結果に応じて、短絡電流波形と、短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析する解析部と、解析部が短絡電流波形と、短絡電圧波形とのいずれか一方又は両方を解析することによって得られた短絡電流の実効値に基づいて、短絡点を導出する短絡点導出部とを備える、短絡点標定システムである。
一構成例として、解析部は、電流値判定部が短絡電流波形にオーバーフローが発生していると判定し、電圧波形判定部が短絡電圧波形に乱れが発生していないと判定し、電流波形判定部が短絡電流波形に乱れが発生していると判定した場合に、前記短絡が発生する前の電圧値と、電流値と、計測点までのインピーダンス情報とに基づいて、変電所が送電した電圧値を導出し、導出した前記変電所が送電した前記電圧値と短絡が発生したときの電圧値とに基づいて、短絡電流の実効値を導出する。
一構成例として、解析部は、電流値判定部が短絡電流波形にオーバーフローが発生していると判定し、電圧波形判定部が短絡電圧波形に乱れが発生していると判定し、電流波形判定部が短絡電流波形に乱れが発生していないと判定した場合に、短絡電流波形から導出される電流の瞬時値と位相との関係に基づいて、波高値を導出し、導出した波高値から、前記短絡電流の実効値を導出する。
一構成例として、取得部が取得した短絡電圧波形と、短絡電流波形とに基づいて、短絡の種別を判定する短絡種別判定部を備え、短絡点導出部は、短絡種別判定部が判定した短絡の種別にさらに基づいて、短絡点を導出する。
【0056】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0057】
なお、上述した短絡点標定システム100は、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各機能ブロックの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録する。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPUが実行することで実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体のことをいう。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置を含む。
【0058】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、短時間の間、動的にプログラムを保持するものを含んでいてもよい。短時間の間、動的にプログラムを保持するものは、例えば、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線である。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、サーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。また、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記プログラムは、プログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。プログラマブルロジックデバイスは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【0059】
なお、上述の短絡点標定システム100は内部にコンピュータを有している。そして、上述した短絡点標定システム100の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
50…ネットワーク、100…短絡点標定システム、110…通信部、120…記憶部、121…プログラム、122…アプリ、123…配電線インピーダンス、124…短絡電圧情報、125…短絡電流情報、130…情報処理部、131…取得部、132…短絡種別判定部、134…電流値判定部、135…電圧波形判定部、136…電流波形判定部、137…解析部、138…短絡点導出部、200…配電線系統情報管理システム、300…変電所、400、400-1、400-2、・・・、400-n…自動開閉器、500、500-1、500-2、・・・、500-n…遠方制御装置