(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ホイール
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20220705BHJP
B60C 7/24 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B60C7/00 B
B60C7/24
(21)【出願番号】P 2018135811
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 正弘
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05579818(US,A)
【文献】特開2003-320807(JP,A)
【文献】特表2011-517305(JP,A)
【文献】実公第015752(大正14年)(JP,Y1T)
【文献】国際公開第02/038398(WO,A1)
【文献】特開2008-100553(JP,A)
【文献】特開昭55-059006(JP,A)
【文献】特開2003-104015(JP,A)
【文献】特開平10-147118(JP,A)
【文献】特開2003-182303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00
B60C 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムと、このリムに装着されたソリッドタイヤとを備えたホイールであって、
上記ソリッドタイヤが、その内周面に位置し周方向に延びる突条を備えており、
周方向に垂直な断面において、上記突条の突出方向が、半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜しており、これにより上記突条が上記ソリッドタイヤの側面から軸方向外側に突出しており、
上記リムが、上記内周面と接触する面に周方向に延びる溝を備えており、
上記溝に、上記突条が嵌め込まれてお
り、
周方向に垂直な断面において、上記突条の断面積が、上記溝の面積の110%以上120%以下である、ホイール。
【請求項2】
リムと、このリムに装着されたソリッドタイヤとを備えたホイールであって、
上記ソリッドタイヤが、その内周面に位置し周方向に延びる突条を備えており、
周方向に垂直な断面において、上記突条の突出方向が、半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜しており、これにより上記突条が上記ソリッドタイヤの側面から軸方向外側に突出しており、
上記リムが、上記内周面と接触する面に周方向に延びる溝を備えており、
上記溝に、上記突条が嵌め込まれており、
上記突条の長さが上記突条の幅より大きい、ホイール。
【請求項3】
上記突条の突出方向の半径方向に対する角度が10°以上45°以下である請求項1
又は2に記載のホイール。
【請求項4】
軸方向に計測した上記突条の上記ソリッドタイヤの側面からの突出幅が、3mm以上10mm以下である請求項1から3のいずれかに記載のホイール。
【請求項5】
上記突条の先端が円弧状であり、この円弧の曲率半径が3mm以上8mm以下である、請求項1から4のいずれかに記載のホイール。
【請求項6】
上記突条の硬さが80以上95以下である請求項1から5のいずれかに記載のホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールに関する。詳細には、本発明は、リムとソリッドタイヤとを備えるホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にフォークリフト等の産業車両には、リムと、このリムに装着されたソリッドタイヤ(中実タイヤとも称される)とを備えるホイールが使用される。このホイールには、高い荷重が負荷されることが多い。このため、車両の発進時、制動時、旋回時等に、タイヤとリムとの間には大きな力が加わる。この力に起因する、タイヤのリムに対する滑り(リムスリップ)やタイヤのリムからの外れ(リム外れ)を防止することが重要となる。
【0003】
リムとソリッドタイヤとを備えるホイールについての検討が、特開2014-177276公報で開示されている。このホイールでは、ソリッドタイヤの内周面に突起が設けられ、リムの、この内周面と接触する面(接触面)に溝が設けられている。これらを系合することで、タイヤをリムに固定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらにリム滑り及びリム外れの防止性能が向上したホイールが求められている。内周面に突起が設けられたソリッドタイヤにおいて、突起を大きくすることで、これらの性能は改善されうる。ソリッドタイヤのリムへの装着(リム組みと称される)の際に、ソリッドタイヤは、リムの接触面上を、リムの軸方向の一方の外側からもう一方の端に向けて押し込まれる。突起を大きくする方法では、リム組みの際に、突起がリムの縁に引っかかり易くなる。これは、リム組みの作業効率に影響を及ぼしうる。
【0006】
本発明の目的は、リム滑り及びリム外れが抑制され、リム組みが容易なホイールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リムと、このリムに装着されたソリッドタイヤとを備えたホイールに関する。上記ソリッドタイヤは、その内周面に位置し周方向に延びる突条を備えている。周方向に垂直な断面において、上記突条の突出方向は、半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜しており、これによりこの突条は、上記ソリッドタイヤの側面から軸方向外側に突出している。上記リムは、周方向に延びる溝を備えている。上記溝に、上記突条が嵌め込まれている。
【0008】
好ましくは、上記突条の突出方向の半径方向に対する角度は、10°以上45°以下である。
【0009】
好ましくは、周方向に垂直な断面において、上記突条の断面積は、上記溝の面積の110%以上120%以下である。
【0010】
好ましくは、軸方向に計測した上記突条の上記ソリッドタイヤの側面からの突出幅は、3mm以上10mm以下である。
【0011】
好ましくは、上記突条の先端が円弧状であり、この円弧の曲率半径は3mm以上8mm以下である。
【0012】
好ましくは、上記突条の硬さは80以上95以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るホイールでは、ソリッドタイヤは、内周面に位置し周方向に延びる突条を備える。周方向に垂直な断面において、突条の突出方向は、半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜しており、突条は、タイヤの側面から軸方向外側に突出している。この外側方向に傾斜した突条は、リム組みにおいて外側からリムの縁に接触したとき、容易に折れ曲がる。この突条は、リムの縁に引っかかり難い。このホイールでは、リム組みが容易である。また、この傾斜した突条がリムの溝に嵌め込まれることで、タイヤはリムに強固に固定される。さらに、この傾斜した突条は、リム組み時にタイヤがリムに押し込まれた方向と逆方向にタイヤが動くことを効果的に防止する。このホイールでは、リム滑り及びリム外れが防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るホイールが示された断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のリムの一部が示された拡大断面図である。
【
図4】
図4(a)、(b)及び(c)は、
図1のタイヤがリムに組み込まれる様子がこの順に時系列で示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るホイール2が示された断面図である。
図1において、上下方向がホイール2の半径方向であり、左右方向がホイール2の軸方向であり、紙面と垂直方向がホイール2の周方向である。
図1に示されるように、このホイール2は、ソリッドタイヤ4とリム6とを備えている。タイヤ4は、リム6に装着されている。
【0017】
図1において、一点鎖線CLは、タイヤ4の赤道面を表す。両矢印Hは、このタイヤ4の断面高さを表す。断面高さHは、赤道面CLとタイヤ4の内周面8との交点から、トレッド面10の外側端までの半径方向距離である。両矢印Wは、タイヤ4の総幅を表す。総幅Wは、軸方向におけるタイヤ4の一方の外側端から他方の外側端までの距離である。この実施形態では、タイヤ4の扁平率(H/W)は、30%以上100%以下である。このタイヤ4は、ニューマチック型である。このタイヤ4は、トレッド12、中間層14、ベース層16、ビードコア18及び突条20を備えている。
【0018】
なお、
図1ではタイヤ4はリム6に装着されているが、断面高さH及び総幅Wは、タイヤ4がリム6に装着されていない状態で計測される。本発明では、断面高さH及び総幅Wに限らず、タイヤ4の各部材の寸法及び角度は、タイヤ4がリム6に装着されていない状態で計測される。測定時には、タイヤ4には荷重がかけられない。
【0019】
トレッド12は、半径方向外向きに凸な形状をしている。トレッド12は、路面と接地するトレッド面10を形成する。図示されないが、トレッド面10には、溝が刻まれている。この溝によりトレッドパターンが形成される。トレッド12は、耐摩耗性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0020】
中間層14は、トレッド12の半径方向内側に位置する。中間層14は、架橋ゴムよりなる。
図1において、両矢印Hmは、中間層14の半径方向高さである。この実施形態では、高さHmの断面高さHに対する比(Hm/H)は、35%以下である。比(Hm/H)は、0%でもよい。すなわち、このタイヤ4が中間層14を備えていなくてもよい。
【0021】
ベース層16は、中間層14の半径方向内側に位置している。ベース層16の半径方向内側面は、このタイヤ4の内周面8を形成する。ベース層16は、架橋ゴムよりなる。図示されていないが、本実施形態では、ベース層16は短繊維を含んでいる。短繊維は、有機繊維からなるコードを短く裁断したものである。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。複数種類の短繊維を混合したものが用いられてもよい。このベース層16が短繊維を含んでいなくてもよい。
【0022】
図1において、両矢印Hbは、ベース層16の半径方向高さである。この実施形態では、高さHbの断面高さHに対する比(Hb/H)は、20%以上60%以下である。この実施形態では、ベース層16の高さHbと中間層14の高さHmの和の、断面高さHに対する比(Hb+Hm)/Hは、60%以下である。
【0023】
ビードコア18は、ベース層16の内部に位置する。ビードコア18は、ベース層16に埋没されている。ビードコア18は、周方向に延びている。ビードコア18は、リング状である。図示されないが、ビードコア18は、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。ビードコア18は、タイヤ4がリム6を締め付ける力を向上させる。
図1のタイヤ4では、ベース層16内に4本のビードコア18が位置している。ビードコア18の数は4本に限られない。ビードコア18の数が3本以下でもよい。ビードコア18の数が0本でもよい。すなわち、ビードコア18が存在しなくてもよい。ビードコア18の数が5本以上でもよい。典型的には、ビードコア18の数は0本以上6本以下である。
【0024】
突条20は、タイヤ4の内周面8に位置する。突条20は、タイヤ4の内周面8の、一方の軸方向外側端の近辺に位置する。図示されないが、突条20は、周方向に延びている。この実施形態では、突条20はリング状を呈する。
【0025】
図2には、タイヤ4の一部が拡大されて示されている。これは、突条20の周辺が拡大された図である。
図2で示されるように、突条20の突出方向は、半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜している。周方向に垂直な断面において、突条20の両側面22は、いずれも半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜している。突条20は、タイヤ4の側面32aから軸方向外側に突出している。この実施形態では、突条20はベース層16と同じ架橋ゴムよりなる。突条20が、ベース層16と異なる架橋ゴムよりなっていてもよい。
【0026】
リム6は、金属よりなる。リム6は、典型的にはスチールよりなる。リム6が、スチール以外の金属からなっていてもよい。リム6は、シート24とフランジ26とを備えている。
【0027】
シート24は、円筒状を呈する。周方向に垂直な断面において、シート24は実質的に軸方向に延びている。シート24の外周面28は、タイヤ4の内周面8と接触している。シート24の外周面28には、溝30が設けられている。溝30は、周方向に延びている。溝30は、シート24の一方の軸方向の端の近辺に位置している。溝30の位置は、突条20の位置と対応している。
図1で示されるように、この溝30に、突条20が嵌め込まれている。
【0028】
図3には、シート24の溝30の近辺が拡大されて示されている。
図3で示されるように、溝30の深さ方向は、半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜している。溝30は、タイヤ4の側面32aから軸方向外側に突出している。この実施形態では、この溝30を形成するために、シート24の端は、鉤状に湾曲している。
【0029】
フランジ26は、溝30が存在する端とは反対側の、シート24の軸方向の端に位置している。フランジ26は、周方向に延びている。フランジ26は、円環状を呈している。周方向に垂直な断面において、フランジ26は半径方向外側に向けて延びている。フランジ26は、タイヤ4の一方の側面32bと接触している。
【0030】
上記のとおり、このリム6ではシート24の軸方向の一方の端の近辺には溝30が設けられ、他方の端にはフランジ26が位置している。この明細書では、軸方向において、溝30が設けられた側が「リム6の溝側」と称され、フランジ26が位置する側が「リム6のフランジ側」と称される。突条20は、溝30に対応する位置において、軸方向外側に向けて傾斜している。すなわち、突起は、リム6の溝側の外側に向けて傾斜している。
【0031】
このホイール2の組み立てでは、ソリッドタイヤ4がリム6に装着される(これは、リム組みと称される)。
図4(a)、(b)及び(c)には、リム組みの様子が時系列で示されている。タイヤ4は、リム6の溝側の外側からフランジ側に向けて、軸方向に移動される。
図4(a)の矢印Aで示されるのが、タイヤ4の移動方向である。この図で示されるように、タイヤ4はシート24に沿って移動する。
図4(a)では、タイヤ4の一部がリム6のシート24の半径方向外側まで到達している。突条20は、まだリム6に到達していない。
【0032】
タイヤ4が移動されて、突条20が、リム6の溝側の外側からリム6のシート24の縁34と当接する。さらにタイヤ4が移動されると、
図4(b)に示されるように、突条20は変形する。リム6の溝側の外側方向に向けて傾斜している突条20は、さらに外側に向けて折れ曲がる。さらにタイヤ4が移動して、突条20はシート24の縁34を乗り越える。
図4(c)で示されるように、突条20は溝30に嵌まり込む。タイヤ4のフランジ側の側面32bはフランジ26と当接し、タイヤ4の内周面8の全体がシート24の外周面28と当接する。タイヤ4は、フランジ26と突条20が嵌まり込んだ溝30とに挟まれて、リム6に強固に固定される。これにて、タイヤ4のリム6への装着が終了する。
【0033】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0034】
本発明に係るホイール2では、ソリッドタイヤ4は、その内周面8に位置し周方向に延びる突条20を備える。周方向に垂直な断面において、突条20の突出方向は、半径方向内側に向けて軸方向外側方向(リム6の溝側の外側方向)に傾斜している。この方向に傾斜した突条20は、リム6の溝側の外側からリム6の縁34に接触したとき、外側に向けて容易に折れ曲がる。この突条20は、リム6の縁34に引っかかり難い。この突条20は、リム組みの邪魔になり難い。このホイール2は、リム組みが容易である。
【0035】
このホイール2では、突条20がリム6の溝30に嵌め込まれている。これにより、タイヤ4はリム6に固定される。この突条20は、タイヤ4の側面32aから軸方向外側に突出している。このため、溝30もタイヤ4の側面32aから軸方向外側に突出している。タイヤ4は軸方向の両外側から溝30とフランジ26とに挟まれることで、より強固にリム6に固定される。このホイール2では、リム滑り及びリム外れが効果的に防止されている。
【0036】
この突条20は、リム6の溝側の外側方向に向けて傾斜しているため、リム6のフランジ側に向けて折れ曲がり難い。この突条20は、タイヤ4がリム6に対してリム組み時と逆方向(フランジ側から溝側へ向かう方向)に動くことを防止する。このホイール2では、リム外れがさらに効果的に防止されている。
【0037】
図2において、実線HLは、突条20の軸方向内側の根元から軸方向に引いた直線である。符号C1は直線HLと突条20の外側の側面22aとの交点を表し、符号C2は直線HLと突条20の内側の側面22bを延長した線との交点を表す。符号Cは、交点C1と交点C2との中点を表す。直線PLは、中点Cと、突条20の頂点とを結ぶ直線である。この断面において、突条20の先端部分の形状が直線状の辺であるときは、直線PLは、中点Cとこの辺の中点を結ぶ線として定義される。突条20の突出方向は、直線PLが延びる方向として定義される。符号θは、突条20の突出方向と半径方向とがなす角度である。
【0038】
角度θは、10°以上が好ましい。角度θが10°以上の突条20は、リム組み時にリム6の縁34に接触したとき、外側に折れ曲がり易い。この突条20は、リム6の縁34に引っかかり難い。このホイール2は、リム組みが容易である。さらに、角度θが10°以上の突条20は、フランジ側に向けて折れ曲がり難い。この突条20は、タイヤ4がリム6に対してリム組み時と逆方向に動くことを防止する。このホイール2では、リム外れが効果的に防止されている。この観点から、角度θは15°以上がより好ましい。角度θは、45°以下が好ましい。角度θが45°以下の突条20は、リム組み時、リム6の縁34を乗り越えた後に、溝30に嵌まり込み易い。このホイール2は、リム組みが容易である。この観点から、角度θは40°以下がより好ましい。
【0039】
図2において、符号C3は、タイヤ4の側面32aの延長線と、直線HLとの交点である。実線VLは、交点C3から半径方向に引いた直線である。両矢印W1は、軸方向に計測した、突条20の突出幅である。これは、突条20の軸方向外側端と直線VLとの距離である。突出幅W1は、3mm以上が好ましい。突出幅W1が3mm以上の突条20は、フランジ側に向けて折れ曲がり難い。この突条20は、タイヤ4がリム6に対してリム組み時と逆方向に動くことを防止する。このホイール2では、リム外れが効果的に防止されている。突出幅W1は、10mm以下が好ましい。突出幅W1が10mm以下の突条20は、リム組み時、リム6の縁34を乗り越えた後に、溝30に嵌まり込み易い。このホイール2は、リム組みが容易である。
【0040】
図2において、両矢印Lpは、突条20の長さを表す。これは、中点Cと突条20の頂点との距離である。長さLpは、5mm以上が好ましい。長さLpが5mm以上の突条20は、タイヤ4をリム6に強固に固定する。このホイール2では、リム滑り及びリム外れが防止されている。この観点から、長さLpは、8mm以上がより好ましい。長さLpは、20mm以下が好ましい。長さLpが20mm以下の突条20は、リム組み時にリム6の縁34を超えやすい。この突条20は、リム6の縁34に引っかかり難い。このホイール2は、リム組みが容易である。この観点から、長さLpは、15mm以下がより好ましい。
【0041】
図2において、両矢印Wpは、突条20の幅を表す。幅Wpは、直線PLに垂直な方向に計測した、交点C1と交点C2との距離である。幅Wpは5mm以上が好ましい。幅Wpが5mm以上の突条20は、タイヤ4をリム6に強固に固定する。このホイール2では、リム滑り及びリム外れが防止されている。幅Wpは10mm以下が好ましい。幅Wpが10mm以下の突条20は、リム組み時に、リム6の縁34に接触したとき、外側に折れ曲がり易い。この突条20は、リム6の縁34に引っかかり難い。このホイール2では、リム組みが容易である。
【0042】
周方向に垂直な断面において、突条20の先端の形状は、円弧状が好ましい。突条20の先端を円弧状とすることで、この突条20は、リム組み時にリム6の縁34に引っかかり難い。この突条20は、リム6の縁34を乗り越えた後に、溝30に嵌まり込み易い。このホイール2では、リム組みが容易である。この円弧の曲率半径は、3mm以上が好ましく、8mm以下が好ましい。
【0043】
前述のとおり、溝30の深さ方向は、半径方向内側に向けて軸方向外側方向に傾斜している。溝30の深さ方向は、突条20の突出方向と実質的に同じであるのが好ましい。すなわち、周方向に垂直な断面において、溝30の軸方向外側の側面36aの半径方向に対する傾斜角度は、突条20の軸方向外側の側面22aの半径方向に対する傾斜角度と同等であり、溝30の軸方向内側の側面36bの半径方向に対する傾斜角度は、突条20の軸方向内側の側面22bの半径方向に対する傾斜角度と同等であるのが好ましい。ここで二つの傾斜角度が同等であるとは、これらの傾斜角度の差の絶対値が5°以下であり、好ましくは2°以下であることを意味する。
【0044】
突条20の断面積Spは、突条20の、直線HLより半径方向内側の部分の面積として定義される。
図3において、実線RLは、溝30の開口の軸方向内側端から軸方向に引いた直線である。溝30の面積Sgは、溝30の、直線RLより半径方向内側の部分の面積として定義される。このホイール2では、断面積Spの面積Sgに対する比(Sp/Sg)は、110%以上が好ましい。比(Sp/Sg)を110%以上とすることで、この突条20は、溝30に強固に固定される。このホイール2では、リム滑り及びリム外れが効果的に防止されている。比(Sp/Sg)は、120%以下が好ましい。比(Sp/Sg)を120%以下とすることで、この突条20は、リム組み時、リム6の縁34を乗り越えた後に、溝30に嵌まり込み易い。このホイール2は、リム組みが容易である。
【0045】
突条20の硬さHDは、80以上が好ましい。硬さHDを80以上とすることで、この突条20はタイヤ4を強固にリム6に固定する。このホイール2では、リム滑り及びリム外れが効果的に防止されている。この観点から、硬さHDは82以上がより好ましい。硬さHDは95以下が好ましい。硬さHDを95以下とすることで、この突条20は、リム組み時にリム6の縁34に接触したとき、外側に折れ曲がり易い。この突条20は、リム6の縁34に引っかかり難い。この突条20は、リム6の縁34を乗り越えた後に、溝30に嵌まり込み易い。このホイール2は、リム組みが容易である。この観点から、硬さHDは93以下がより好ましい。
【0046】
本願において、突条20の硬さHDは「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。
図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられて、硬さが測定される。測定は、23℃の温度下でなされる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0048】
[実施例1]
図1に示された構成を備えた、前輪用のホイール及び後輪用のホイールを得た。下記の表1の実施例1に、これらのホイールの仕様が示されている。前輪用のホイールのソリッドタイヤのサイズはT.21×8-9とされ、後輪用のホイールのソリッドタイヤのサイズはT.18×7-8とされた。これらのソリッドタイヤの突条の長さLpは15mm、突条の幅Wpは8mm、突出幅W1は5mmとされた。突条の硬さHDは、90とされた。
【0049】
[比較例1、実施例2]
突条の幅Wpと突出長さLpを変えずに、角度θを表1のとおりとした他は実施例1と同様にして、比較例1及び実施例2のホイールを得た。
【0050】
[実施例3]
突条の幅Wpを変更して、比(Sp/Sg)を表1のとおりとした他は実施例1と同様にして、実施例3のホイールを得た。
【0051】
[実施例4]
突条の幅Wpを変更して、比(Sp/Sg)を表1のとおりとした他は実施例2と同様にして、実施例4のホイールを得た。
【0052】
[リムスリップ及びリム外れ]
前輪用のホイールを車両(2t積みのフォークリフト)の前輪に、後輪用のホイールをこの車両の後輪に装着した。この車両で、テストコースを走行した。テストコースには、6個のパイロンが、車両の進行方向に、10m間隔で配置された。車両には、1.5tの荷物を積載した。このパイロン間を時速10km/hでスラローム走行した後、直進でスタート点に戻り、急ブレーキをかけて停車させた。この走行を30分繰り返した。さらに、荷物を下ろして無積載の状態で、同様の走行を30分繰り返した。この荷物を積載しての走行と、無積載での走行とを交互に繰り返し、合計240分走行した。
【0053】
上記の車両の前輪用のホイールについて、リムスリップ量が測定された。具体的には、走行前にタイヤとリムとに渡って引いた直線の、走行後でのタイヤとリムの境界でのずれ量が測定された。この結果が、比較例1を100とした指数で、表1の「リムスリップ」の欄に示されている。値が小さいほどリムスリップ量が小さい。値が小さいほど、好ましい。
【0054】
上記の車両の後輪用のホイールについて、突条の溝からのはみ出し量が確認された。この結果が、A、B、Cの三段階で表1の「リム外れ」の欄に示されている。はみ出し量がゼロの場合がAとされた。A、B、Cの順にはみ出しが少ない。A、B、Cの順に好ましい。
【0055】
[リム組み性]
上記のホイールについて、タイヤチェンジャーを使用して、ソリッドタイヤをリムに装着した。この装着の容易性について、作業者による官能評価を実施した。この結果がA、B、Cの三段階で表1のリム組み性の欄に示されている。A、B、Cの順に好ましい。
【0056】
【0057】
表1に示されるように、実施例のホイールは、比較例のホイールに比べて総合的に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明されたホイールは、種々の産業車両にも適用されうる。
【符号の説明】
【0059】
2・・・ホイール
4・・・ソリッドタイヤ
6・・・リム
8・・・タイヤの内周面
10・・・トレッド面
12・・・トレッド
14・・・中間層
16・・・ベース層
18・・・ビードコア
20・・・突条
22・・・突条の側面
24・・・シート
26・・・フランジ
28・・・シートの外周面
30・・・溝
32・・・タイヤの側面
34・・・リムの縁
36・・・溝の側面