(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】表皮材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20220705BHJP
B29L 31/30 20060101ALN20220705BHJP
【FI】
B29C59/02 B
B29L31:30
(21)【出願番号】P 2018145425
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤舛 義昭
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213865(JP,A)
【文献】特開平06-158527(JP,A)
【文献】特開2013-059881(JP,A)
【文献】特公平03-002648(JP,B2)
【文献】特許第5913755(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/065547(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0233916(US,A1)
【文献】米国特許第05490890(US,A)
【文献】特公昭42-025799(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00 - 59/18
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボス型を用いて素材を加熱プレスして、表面側に凹部が形成され且つ裏面が平坦状である表皮材を得る表皮材の製造方法であって、
前記エンボス型と弾性マットとの間で前記素材を加熱プレスして、前記凹部として、底面の深さが異なる複数の強弱表示用凹部及び底面の深さが徐変するグラデーション表示用凹部のうちの少なくとも一方の凹部を形成
し、
前記エンボス型の表面には、前記凹部を形成するための押圧リブが突設されており、
前記加熱プレスの際に、前記押圧リブは、その突出端が自然状態の前記弾性マットの表面高さよりも裏面寄り側に位置して前記素材の表面側を押圧することを特徴とする表皮材の製造方法。
【請求項2】
前記弾性マットは、シリコンゴム、フッ素ゴム又はアクリルゴムにより形成されている請求項1に記載の表皮材の製造方法。
【請求項3】
前記弾性マットは、JIS K 6253に準拠した硬さがE10~D100である請求項1又は2に記載の表皮材の製造方法。
【請求項4】
前記加熱プレスの際に、前記エンボス型の表面が前記素材の表面から離間した状態で前記押圧リブが前記素材の表面側を押圧して、前記少なくとも一方の凹部を形成する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項5】
前記素材は、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含み且つ編物からなる基布層と、前記基布層の表面に接合される表皮層と、を備え、
前記加熱プレスの際に、前記エンボス型による前記素材の前記表皮層側からの押圧により、前記基布層に前記熱可塑性樹脂繊維の熱変形による凹状の熱変形部が形成されるとともに、前記表皮層が前記熱変形部の凹状に追従することで、前記少なくとも一方の凹部を形成する請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の表皮材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材の製造方法に関し、更に詳しくは、表面側に凹部が形成され且つ裏面が平坦状とされた表皮材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表皮材の製造方法として、エンボス型を用いて素材を加熱プレスして、表面側に凹部が形成され且つ裏面が平坦状である表皮材を得る製法が一般に知られている(例えば、特許文献1等参照)。この特許文献1には、エンボス型と金属製の受け台との間で素材を加熱プレスして、底面の深さが異なる複数の強弱表示用凹部を形成することが記載されている(特許文献1の
図7等参照)。これら強弱表示用凹部によれば、美観に優れたエンボス深さの強弱を表現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-213865号公報
【文献】特開2017-113937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、エンボス型と金属製の受け台との間で素材を加熱プレスしているので、複数の強弱表示用凹部のうちで比較的浅い凹部は、エンボス型の押圧リブにより適切な押圧力を付与し難く明瞭に形成できない。そのため、現状では、例えば、
図12に示すように、複数の強弱表示用凹部103a~103cに応じて複数のエンボス型108a~108cを用意し、各エンボス型108a~108cで圧力、温度、プレス時間等をコントロールしつつ加熱プレスして、複数の強弱表示用凹部103a~103cを形成している。よって、作業工程が多く及びコストも増える。
【0005】
ここで、底面の深さが徐変するグラデーション表示用凹部により、美観に優れたエンボス深さのグラデーションを表現することが望まれている。しかし、上記特許文献1に記載された技術では、エンボス型の押圧リブと金属製の受け台との間で素材を加熱プレスしているので、グラデーション表示用凹部の全底面のうちで比較的浅い部分は、押圧リブにより適当な押圧力を付与し難く明瞭に形成できない。
【0006】
なお、上記特許文献2には、エンボス版41とクッション材45との間でシート素材2を加熱プレスしてシート生地1を得る製法が記載されているが、このクッション材45は、シート生地1の凸模様3の角部をシャープにすることを目的として、エンボス版41の凹部41"内にシート素材2を食い込ませるために用いられている(特許文献2の段落〔0012〕及び
図3等参照)。さらに、上記特許文献2では、シート生地1の各凹模様3’の底面の深さは一定であり且つ徐変していない(特許文献2の
図3及び
図4等参照)。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、美観に優れたエンボス表現を可能とする凹部を持つ表皮材を簡易且つ安価に製造できる表皮材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、エンボス型を用いて素材を加熱プレスして、表面側に凹部が形成され且つ裏面が平坦状である表皮材を得る表皮材の製造方法であって、前記エンボス型と弾性マットとの間で前記素材を加熱プレスして、前記凹部として、底面の深さが異なる複数の強弱表示用凹部及び底面の深さが徐変するグラデーション表示用凹部のうちの少なくとも一方の凹部を形成することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記弾性マットは、シリコンゴム、フッ素ゴム又はアクリルゴムにより形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記弾性マットは、JIS K 6253に準拠した硬さがE10~D100であることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記エンボス型の表面には、前記凹部を形成するための押圧リブが突設されており、前記加熱プレスの際に、前記エンボス型の表面が前記素材の表面から離間した状態で前記押圧リブが前記素材の表面側を押圧して、前記少なくとも一方の凹部を形成することを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記加熱プレスの際に、前記押圧リブは、その突出端が自然状態の前記弾性マットの表面高さよりも裏面寄り側に位置して前記素材の表面側を押圧することを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記素材は、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含み且つ編物からなる基布層と、前記基布層の表面に接合される表皮層と、を備え、前記加熱プレスの際に、前記エンボス型による前記素材の前記表皮層側からの押圧により、前記基布層に前記熱可塑性樹脂繊維の熱変形による凹状の熱変形部が形成されるとともに、前記表皮層が前記熱変形部の凹状に追従することで、前記少なくとも一方の凹部を形成することを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表皮材の製造方法によると、エンボス型と弾性マットとの間で素材を加熱プレスして、凹部として、底面の深さが異なる複数の強弱表示用凹部及び底面の深さが徐変するグラデーション表示用凹部のうちの少なくとも一方の凹部を形成する。これにより、エンボス型の押圧高さ(即ち、押込量)に応じて弾性マットによる反発力に差が生じて素材に適当な押圧力が付与される。そのため、一回の加熱プレスにより複数の強弱表示用凹部及び/又はグラデーション表示用凹部を明瞭に形成できる。そして、複数の強弱表示用凹部によれば、美観に優れたエンボス深さの強弱(即ち、深浅)が表現される。さらに、グラデーション表示用凹部によれば、美観に優れたエンボス深さのグラデーションが表現される。
また、前記弾性マットが、シリコンゴム、フッ素ゴム又はアクリルゴムにより形成されている場合は、反発弾性及び耐熱性に優れる弾性マットを採用することで、更に適当な押圧力が素材に付与されるため、複数の強弱表示用凹部及び/又はグラデーション表示用凹部をより明瞭に形成できる。
また、前記弾性マットが、JIS K 6253に準拠した硬さがE10~D100である場合は、比較的軟らかい弾性マットを採用することで、更に適当な押圧力が素材に付与されるため、複数の強弱表示用凹部及び/又はグラデーション表示用凹部をより明瞭に形成できる。
また、前記エンボス型の表面に、押圧リブが突設されており、前記加熱プレスの際に、前記エンボス型の表面が前記素材の表面から離間した状態で前記押圧リブが前記素材の表面側を押圧して、前記少なくとも一方の凹部を形成する場合は、素材に対するエンボス型の接触領域を必要最小減とすることで表皮材の表面熱劣化が抑制される。
また、前記加熱プレスの際に、前記押圧リブが、その突出端が自然状態の前記弾性マットの表面高さよりも裏面寄り側に位置して前記素材の表面側を押圧する場合は、更に適当な押圧力が素材に付与されるため、複数の強弱表示用凹部及び/又はグラデーション表示用凹部をより明瞭に形成できる。
さらに、前記素材が、基布層と、表皮層と、を備え、前記加熱プレスの際に、前記エンボス型による前記素材の前記表皮層側からの押圧により、前記基布層に前記熱可塑性樹脂繊維の熱変形による凹状の熱変形部が形成されるとともに、前記表皮層が前記熱変形部の凹状に追従することで、前記少なくとも一方の凹部を形成する場合は、編物からなる基布層を採用することで、複数の強弱表示用凹部及び/又はグラデーション表示用凹部をより明瞭に形成できるとともに、十分なクッション性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施例1に係る表皮材の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は型開き状態のエンボス加工機の縦断面図を示し、(b)は型締め状態のエンボス加工機の縦断面図を示す。
【
図2】上記表皮材の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は素材の縦断面図を示し、(b)は表皮材の縦断面図を示す。
【
図3】上記表皮材を備えるドアトリムの平面図である。
【
図5】実施例2に係る表皮材の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は型開き状態のエンボス加工機の縦断面図を示し、(b)は型締め状態のエンボス加工機の縦断面図を示す。
【
図6】上記表皮材の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は素材の縦断面図を示し、(b)は表皮材の縦断面図を示す。
【
図7】実験例及び比較例に係る表皮材の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は実験例の製法で用いるエンボス加工機の縦断面図を示し、(b)は比較例の製法で用いるエンボス加工機の縦断面図を示す。
【
図8】実験例及び比較例の製法で得られた表皮材を説明するための説明図であり、(a)は実験例の製法で得られた表皮材のエンボス模様の画像処理図を示し、(b)は比較例の製法で得られた表皮材のエンボス模様の画像処理図を示す。
【
図10】他の形態に係る表皮材を説明するための説明図であり、(a)は環状で独立した強弱表示用凹部が形成された形態を示し、(b)は環状で連続した強弱表示用凹部が形成された形態を示し、(c)は複数のグラデーション表示用凹部が形成された形態を示し、(d)はc-c線断面図を示す。
【
図11】更なる他の形態に係る表皮材を説明するための説明図であり、(a)は素材の縦断面図を示し、(b)は表皮材の縦断面図を示す。
【
図12】従来の表皮材の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は最深の凹部を形成する状態を示し、(b)は中深の凹部を形成する状態を示し、(c)は最浅の凹部を形成する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本実施形態に係る表皮材の製造方法は、エンボス型(8、38)を用いて素材(2)を加熱プレスして、表面側に凹部が形成され且つ裏面が平坦状である表皮材(4)を得る表皮材の製造方法であって、エンボス型(8、38)と弾性マット(10)との間で素材(2)を加熱プレスして、凹部として、底面の深さが異なる複数の強弱表示用凹部(3a~3d)及び底面の深さが徐変するグラデーション表示用凹部(33)のうちの少なくとも一方の凹部を形成する(例えば、
図1及び
図5等参照)。
【0013】
上記複数の強弱表示用凹部(3a~3d)の形状、個数、配置形態等は特に限定されない。これら各強弱表示用凹部(3a~3d)の底面の平面形状としては、例えば、線状、面状、環状等のうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。また、複数の強弱表示用凹部(3a~3d)は、例えば、表皮材(4)の厚さ方向の縦断面において並設されていることができる(例えば、
図2等参照)。この場合、隣り合う強弱表示用凹部(3a~3d)の底面の深さの差(S)としては、例えば、0.1~5mm(好ましくは0.5~3mm)が挙げられる。この底面の深さの差(S)が上記範囲内であれば、各強弱表示用凹部(3a~3d)でエンボス深さの強弱(即ち、深浅)が更に効果的に表現される。
【0014】
上記グラデーション表示用凹部(33)の形状、個数、配置形態等は特に限定されない。このグラデーション表示用凹部(33)の底面の平面形状としては、例えば、線状、面状、環状等のうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。また、グラデーション表示用凹部(33)は、例えば、表皮材(4)の厚さ方向の縦断面において表皮材の裏面に対して傾斜する1又は2以上の傾斜面(44)を有することができる(例えば、
図6等参照)。この傾斜面(44)の両端部(44a、44b)の底面の深さの差(S)としては、例えば、0.1~5mm(好ましくは0.5~3mm)が挙げられる。この底面の深さの差(S)が上記範囲内であれば、グラデーション表示用凹部(33)でエンボス深さのグラデーションが更に効果的に表現される。
【0015】
上記弾性マット(10)の材質、硬度、厚さ等は特に問わない。この弾性マット(10)の材質としては、例えば、天然ゴム、合成天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等のゴムや熱可塑性エラストマなどが挙げられる。これらのうち、反発弾性及び耐熱性の観点から、シリコンゴム、フッ素ゴム又はアクリルゴムであることが好ましい。さらに、弾性マット(10)のJIS K 6253に準拠した硬さとしては、例えば、E10~D100(好ましくはA10~A90)が挙げられる。この硬さが上記範囲内であれば、加熱プレスの際に更に適当な押圧力が素材に付与される。なお、上記硬さの値の最初についているアルファベットは、それぞれタイプE、タイプD又はタイプAのデュロメータで測定した値を示す。さらに、弾性マット(10)の厚さとしては、例えば、0.5~15mm(好ましくは2~8mm)が挙げられる。この厚さが上記範囲内であれば、加熱プレスの際に更に適当な押圧力が素材に付与される。
【0016】
本実施形態に係る表皮材の製造方法としては、例えば、上記エンボス型(8、38)の表面には、凹部(3a~3d、33)を形成するための押圧リブ(9a~9d、39)が突設されており、加熱プレスの際に、エンボス型の表面(8a、38a)が素材(2)の表面から離間した状態で押圧リブ(9a~9d、39)が素材(2)の表面側を押圧して、少なくとも一方の凹部(3a~3d、33)を形成する形態(例えば、
図1及び
図5等参照)が挙げられる。
【0017】
上述の形態の場合、例えば、上記加熱プレスの際に、押圧リブ(9a~9d、39)は、その突出端が自然状態の弾性マット(10)の表面高さ(H)よりも裏面寄り側に位置して素材(2)の表面側を押圧することができる(例えば、
図1及び
図5等参照)。
【0018】
本実施形態に係る表皮材の製造方法としては、例えば、上記素材(2)は、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含み且つ編物からなる基布層(12)と、基布層の表面に接合される表皮層(13)と、を備え、加熱プレスの際に、エンボス型(8、38)による素材(2)の表皮層(13)側からの押圧により、基布層(12)に熱可塑性樹脂繊維の熱変形による凹状の熱変形部(19)が形成されるとともに、表皮層(13)が熱変形部(19)の凹状に追従することで、少なくとも一方の凹部(3a~3d、33)を形成する形態(例えば、
図1及び
図5等参照)が挙げられる。
【0019】
上記編物としては、例えば、立体編み地、ジャージー、トリコット等が挙げられる。これらのうち、嵩高性の観点から、立体編み地であることが好ましい。この立体編み地は、例えば、ダブルラッセル編み機又は丸編み機等の編機により編成されていることができる。また、立体編み地は、例えば、表側編み地(15)及び裏側編み地(16)が結接糸(17)で連結された構造であることができる。この場合、例えば、上記結接糸(17)に熱可塑性樹脂繊維が少なくとも用いられ、凹状の熱変形部(19)を形成する際に、結接糸(17)が基布層(12)の厚みが小さくなるように倒れ込んでいることができる。これにより、複数の強弱表示用凹部及び/又はグラデーション表示用凹部をより明瞭に形成できるとともに、更に十分なクッション性が得られる。
【0020】
上記表側編み地(15)及び裏側編み地(16)の構成糸としては、例えば、合成繊維、再成繊維、天然繊維等のうちの1種又は2種以上の組み合わせからなる糸が挙げられる。また、結接糸(17)としては、通常、フィラメント糸が用いられる。このフィラメント糸は、マルチフィラメントでもモノフィラメントでもよく、仮撚加工等の公知の加工がなされていてもよい。このフィラメント糸を構成する繊維の種類は特に限定されず、合成繊維、再成繊維、天然繊維等のいずれでもよい。
【0021】
上記基布層(12)の厚さは、特に限定されないが、例えば、1~20mm、特に2~10mmとすることができる。この厚さが上記範囲内であれば、十分なクッション性が得られるとともに、立体賦形を十分に行うことができる。
【0022】
上記表皮層(13)は、通常、基布層(12)の一面側に接着、熱溶着等により接合されている。この表皮層(13)としては、例えば、意匠布(ファブリック)、樹脂層(PU、PVC、PP等)、合成皮革、人工皮革、天然皮革等の公知の表皮材料が用いられる。また、表皮層(13)は、単層でも良いし、複層が積層された層であっても良い。また、表皮層(13)の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01~10mm、特に0.1~5mmとすることができる。この厚さが上記範囲内であれば、基布層(12)の表面形状に良好に追従させることができる。
【0023】
上記表皮材(4)の用途等は特に限定されない。この表皮材(4)は、例えば、合成樹脂製、金属製、木製等の基材(24)上に接着、熱融着等により接合された構造体として用いることができる(例えば、
図3及び
図4等参照)。この表皮材(4)と基材(24)との間には、吸音層、弾性層等の他の機能層が介在していてもよい。
【0024】
尚、上記実施形態で記載した各構成の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例】
【0025】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「表皮材」として、自動車用ドアトリムにおけるドアオーナメント24(基材)に接合される表皮材4を例示する(
図3及び
図4参照)。
【0026】
<実施例1>
(1)表皮材の製造方法
本実施例に係る表皮材の製造方法では、
図1に示すように、エンボス加工機1により素材2を加熱プレスして、表面側に複数(図中4つ)の強弱表示用凹部3a~3dが形成(即ち、賦形)され且つ裏面が平坦状である表皮材4を得るものである。
【0027】
上記エンボス加工機1は、下側の金属製の受け台6(「定盤」とも称される。)と、この受け台6に対して近接・離間可能な上側の金属製の受け台7(「上型」とも称される。)と、を備えている。これら各受け台6、7は、図示しない加熱手段により加熱可能である。また、受け台7の底面には、エンボス型8が設けられている。このエンボス型8の表面8aには、突出高さが異なる複数(図中4つ)の押圧リブ9a~9dが突設されている。これら各押圧リブ9a~9dは、互いに並設される長尺板状に形成されている。
【0028】
上記受け台6の上面には、シリコンゴム製の弾性マット10が敷設されている。この弾性マット10のJIS K 6253に準拠した硬さは、約A10~A90とされている。さらに、弾性マット10の厚さは、約2~8mmとされている。
【0029】
上記素材2は、
図2(a)に示すように、編物からなる基布層12と、基布層12の表面に接着剤で接着された表皮層13と、を備えている。この基布層12は、その厚みが約4mmである。また、表皮層13は、その厚みが約0.4mmである。また、編物は、ダブルラッセル編み機(又は丸編み機)を用いて得られた立体編み地である。この立体編み地は、表側編み地15及び裏側編み地16が結接糸17で連結された構造である。この表側編み地15は、その構成糸がポリエステル系樹脂繊維であり、その厚みが約0.4mmである。また、裏側編み地16は、その構成糸がポリエステル系樹脂繊維であり、その厚みが約0.4mmである。さらに、結接糸17は、ポリエステル系樹脂繊維である。
【0030】
上記表皮材の製造方法では、
図1(a)に示すように、型開き状態のエンボス加工機1の弾性マット10上に素材2を基布層12が弾性マット10側となるように載置し、受け台7とともにエンボス型8を下降させる。すると、
図1(b)に示すように、エンボス型8と弾性マット10との間で素材2が加熱プレスされて、エンボス型8の各押圧リブ9a~9dが素材2の表面側を押圧することで、複数の強弱表示用凹部3a~3dが形成される。なお、本実施例では、上記加熱プレスは、加熱時間が約20秒、受け台温度が約200℃、エンボス型温度が約150℃の条件で行うものとする。
【0031】
上記加熱プレスの際には、エンボス型8の表面8aが素材2の表面から離間した状態で、押圧リブ9a~9dは、その突出端が自然状態(即ち、無負荷状態)の弾性マット10の表面高さHよりも裏面寄り側に位置して素材2の表面側を押圧する。このとき、エンボス型8の押圧リブ9a~9dの異なる押圧高さ(即ち、押込量)に応じて弾性マット10による反発力に差が生じて素材2に適当な押圧力が付与される。そして、結接糸17が倒れ込んで基布層12に凹状の熱変形部19が形成されるとともに、表皮層13が熱変形部19の凹状に追従することで、複数の強弱表示用凹部3a~3dが形成される。なお、上記熱変形部19は、基布層12の厚さよりも小さな所定厚みに調整されている。
【0032】
上記各強弱表示用凹部3a~3dは、
図2(b)に示すように、表皮材4の深さ方向に沿う縦断面において、底面21と、底面21の両側縁から立ち上がる側面22と、を備えている。これら両側面22は、凹部3a~3dの開口側に向かって互いに離れるような湾曲状に形成されている。また、各強弱表示用凹部3a~3dは、その平面形状が線状であり、互いに並設されている。また、各強弱表示用凹部3a~3dは、その並び方向に沿って順に底面21の深さが浅く(又は深く)なるように配置されている。さらに、表皮材4の厚さ方向の縦断面において、隣り合う強弱表示用凹部3a~3dの突出高さの差Sは、約0.5~3mmである。
【0033】
(2)実施例の効果
本実施例の表皮材の製造方法によると、エンボス型8と弾性マット10との間で素材2を加熱プレスして、凹部として、底面の深さが異なる複数の強弱表示用凹部3a~3dを形成する。これにより、エンボス型8の押圧高さ(即ち、押込量)に応じて弾性マット10による反発力に差が生じて素材2に適当な押圧力が付与される。そのため、一回の加熱プレスにより複数の強弱表示用凹部3a~3dを明瞭に形成できる。そして、複数の強弱表示用凹部3a~3dによれば、美観に優れたエンボス深さの強弱(即ち、深浅)が表現される。
【0034】
また、本実施例では、弾性マット10は、シリコンゴムにより形成されている。これにより、反発弾性及び耐熱性に優れる弾性マット10を採用することで、更に適当な押圧力が素材2に付与されるため、複数の強弱表示用凹部3a~3dをより明瞭に形成できる。
【0035】
また、本実施例では、弾性マット10は、JIS K 6253に準拠した硬さが約A10~A90である。これにより、比較的軟らかい弾性マット10を採用することで、更に適当な押圧力が素材2に付与されるため、複数の強弱表示用凹部3a~3dをより明瞭に形成できる。
【0036】
また、本実施例では、エンボス型8の表面8aには、押圧リブ9a~9dが突設されており、加熱プレスの際に、エンボス型8の表面8aが素材2の表面から離間した状態で押圧リブ9a~9dが素材2の表面側を押圧して、複数の強弱表示用凹部3a~3dを形成する。これにより、素材2に対するエンボス型8の接触領域を必要最小減とすることで表皮材4の表面熱劣化が抑制される。
【0037】
また、本実施例では、加熱プレスの際に、押圧リブ9a~9dは、その突出端が自然状態の弾性マット10の表面高さHよりも裏面寄り側に位置して素材2の表面側を押圧する。これにより、更に適当な押圧力が素材2に付与されるため、複数の強弱表示用凹部3a~3dをより明瞭に形成できる。
【0038】
さらに、本実施例では、素材2は、基布層12と、表皮層13と、を備え、加熱プレスの際に、エンボス型8による素材2の表皮層13側からの押圧により、基布層12に熱可塑性樹脂繊維の熱変形による凹状の熱変形部19が形成されるとともに、表皮層13が熱変形部19の凹状に追従することで、複数の強弱表示用凹部3a~3dを形成する。これにより、編物からなる基布層12を採用することで、複数の強弱表示用凹部3a~3dをより明瞭に形成できるとともに、十分なクッション性が得られる。
【0039】
さらに、本実施例では、結接糸17に熱可塑性樹脂繊維が少なくとも用いられ、凹状の熱変形部19を形成する際に、結接糸17が基布層12の厚みが小さくなるように倒れ込んでいる。これにより、複数の強弱表示用凹部3a~3dをより明瞭に形成できるとともに、更に十分なクッション性が得られる。
【0040】
さらに、本実施例では、表皮材4の裏面は平坦状であるので、ドアオーナメント24に対して表皮材4を容易且つ確実に接合できる。
【0041】
<実施例2>
次に、実施例2に係る表皮材の製造方法について説明するが、実施例1に係る表皮材の製造方法と同じ構成部分には同じ符号付けて詳説を省略し、両者の相違点であるエンボス型等について詳説する。
【0042】
(1)表皮材の製造方法について
本実施例に係る表皮材の製造方法では、
図5に示すように、エンボス加工機31により素材を加熱プレスして、表面側にグラデーション表示用凹部33が形成(即ち、賦形)され且つ裏面が平坦状である表皮材4を得るものである。
【0043】
上記エンボス加工機31の受け台7の底面には、エンボス型38が設けられている。このエンボス型38の表面38aには、突出高さが徐変する突出端面39aを有する押圧リブ39が突設されている。
【0044】
上記表皮材の製造方法では、
図5(a)に示すように、型開き状態のエンボス加工機31の弾性マット10上に素材2を基布層12が弾性マット10側となるように載置し、受け台7とともにエンボス型38を下降させる。すると、
図5(b)に示すように、エンボス型38と弾性マット10との間で素材2が加熱プレスされて、エンボス型38の押圧リブ39が素材2の表面側を押圧することで、グラデーション表示用凹部33が形成される。なお、本実施例では、上記加熱プレスは、加熱時間が約20秒、受け台温度が約200℃、エンボス型温度が約150℃の条件で行うものとする。
【0045】
上記加熱プレスの際には、エンボス型38の表面38aが素材2の表面から離間した状態で、押圧リブ39は、その突出端(具体的に突出端面39a)が自然状態(即ち、無負荷状態)の弾性マット10の表面高さHよりも裏面寄り側に位置して素材2の表面側を押圧する。このとき、エンボス型38の押圧リブ39の徐変する押圧高さ(即ち、押込量)に応じて弾性マット10による反発力に差が生じて素材2に適当な押圧力が付与される。そして、結接糸17が倒れ込んで基布層12に凹状の熱変形部19が形成されるとともに、表皮層13が熱変形部19の凹状に追従することで、グラデーション表示用凹部33が形成される。なお、上記熱変形部19は、基布層12の厚さよりも小さな所定厚みに調整されている。
【0046】
上記グラデーション表示用凹部33は、
図6(b)に示すように、表皮材4の深さ方向に沿う縦断面において、底面41と、底面41の両側縁から立ち上がる側面42と、を備えている。これら両側面42は、グラデーション表示用凹部33の開口側に向かって互いに離れるような湾曲状に形成されている。また、グラデーション表示用凹部33の平面形状は、面状である。さらに、グラデーション表示用凹部33は、表皮材4の厚さ方向の縦断面において表皮材4の裏面に対して傾斜する傾斜面44を有している。
【0047】
(2)実施例の効果
本実施例の表皮材の製造方法によると、エンボス型38と弾性マット10との間で素材2を加熱プレスして、凹部として、底面の深さが徐変するグラデーション表示用凹部33を形成する。これにより、エンボス型38の押圧高さ(即ち、押込量)に応じて弾性マット10による反発力に差が生じて素材2に適当な押圧力が付与される。そのため、一回の加熱プレスによりグラデーション表示用凹部33を明瞭に形成できる。そして、グラデーション表示用凹部33によれば、美観に優れたエンボス深さのグラデーションが表現される。
【0048】
また、本実施例では、弾性マット10は、シリコンゴムにより形成されている。これにより、反発弾性及び耐熱性に優れる弾性マット10を採用することで、更に適当な押圧力が素材2に付与されるため、グラデーション表示用凹部33をより明瞭に形成できる。
【0049】
また、本実施例では、弾性マット10は、JIS K 6253に準拠した硬さが約A10~A90である。これにより、比較的軟らかい弾性マット10を採用することで、更に適当な押圧力が素材2に付与されるため、グラデーション表示用凹部33をより明瞭に形成できる。
【0050】
また、本実施例では、エンボス型38の表面38aには、押圧リブ39が突設されており、加熱プレスの際に、エンボス型38の表面38aが素材2の表面から離間した状態で押圧リブ39が素材3の表面側を押圧して、グラデーション表示用凹部33を形成する。これにより、素材2に対するエンボス型38の接触領域を必要最小減とすることで表皮材4の表面熱劣化が抑制される。
【0051】
また、本実施例では、加熱プレスの際に、押圧リブ39は、その突出端が自然状態の弾性マット10の表面高さHよりも裏面寄り側に位置して素材2の表面側を押圧する。これにより、更に適当な押圧力が素材3に付与されるため、グラデーション表示用凹部33をより明瞭に形成できる。
【0052】
さらに、本実施例では、素材2は、基布層12と、表皮層13と、を備え、加熱プレスの際に、エンボス型38による素材2の表皮層13側からの押圧により、基布層12に熱可塑性樹脂繊維の熱変形による凹状の熱変形部19が形成されるとともに、表皮層13が熱変形部19の凹状に追従することで、グラデーション表示用凹部33を形成する。これにより、編物からなる基布層12を採用することで、グラデーション表示用凹部33をより明瞭に形成できるとともに、十分なクッション性が得られる。
【0053】
さらに、本実施例では、結接糸17に熱可塑性樹脂繊維が少なくとも用いられ、凹状の熱変形部19を形成する際に、結接糸17が基布層12の厚みが小さくなるように倒れ込んでいる。これにより、グラデーション表示用凹部33をより明瞭に形成できるとともに、更に十分なクッション性が得られる。
【0054】
さらに、本実施例では、表皮材4の裏面は平坦状であるので、ドアオーナメント(基材)24に対して表皮材4を容易且つ確実に接合できる。
【0055】
<実験例及び比較例>
次に、実験例及び比較例に係る表皮材の製造方法について説明する。本実験例の表皮材の製造方法では、エンボス加工機50A(
図7(a)参照)を用いる。このエンボス加工機50Aでは、エンボス型52と弾性マット53の間で素材2を加熱プレスして表皮材59Aが得られる。一方、比較例に係る表皮材の製造方法では、エンボス加工機50B(
図7(b)参照)を用いる。このエンボス加工機50Bでは、エンボス型52と金属製の受け台54の間で素材2を加熱プレスして表皮材59Bが得られる。
【0056】
上記エンボス型52の表面には、突出高さの異なる複数(図中4つ)の押圧リブ55a~55d、及び突出高さが徐変する突出端面を有する押圧リブ56が突設されている。これら各押圧リブ55a~55d、56は、
図9に示すように、表皮材59A、59Bのエンボス模様(テストパターン)の領域Aに複数の強弱表示用凹部57a~57dを形成するためのものである。また、押圧リブ56は、表皮材59A、59Bのエンボス模様(テストパターン)の領域Bにグラデーション表示用凹部58を形成するためのものである。この凹部58は、
図9の紙面上において、最深部Pから左方向及び上下方向に向かって徐々に深さが浅くなっている。なお、上記エンボス型52の表面には、押圧リブ55a~55d、56の他に、様々な形状の凹部を形成するための他の押圧リブ(図示省略)も突設されている。
【0057】
そして、本実験例の表皮材の製造方法では、エンボス加工機50Aを用いて素材2を加熱プレスして、所定のエンボス模様(テストパターン)を持つ表皮材59Aを得た。一方、比較例に係る表皮材の製造方法では、エンボス加工機50Bを用いて素材2を加熱プレスして、所定のエンボス模様(テストパターン)を持つ表皮材59Bを得た。そして、両者の表皮材59A、59Bのエンボス模様(テストパターン)を観察した。
【0058】
その結果、表皮材59Aのエンボス模様(テストパターン)では、
図8(a)に示すように、複数の強弱表示用凹部57a~57d及びグラデーション表示用凹部58が明瞭に形成されていた。これに対して、表皮材59Bのエンボス模様(テストパターン)では、
図8(b)に示すように、複数の強弱表示用凹部57a~57dのうちの比較的浅い凹部が明瞭に形成されていなかった。さらに、グラデーション表示用凹部58のうちの比較的浅い部分が明瞭に形成されていなかった。
【0059】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1では、線状の強弱表示用凹部3a~3dが形成された表皮材4を例示したが、これに限定されず、例えば、
図10(a)(b)に示すように、環状の強弱表示用凹部3a、3bが形成された表皮材4としてもよい。
【0060】
また、上記実施例1では、複数の独立した強弱表示用凹部3a~3dが形成された表皮材4を例示したが、これに限定されず、例えば、
図10(b)に示すように、複数の連続した強弱表示用凹部3a、3bが形成された表皮材4としてもよい。
【0061】
また、上記実施例2では、単一のグラデーション表示用凹部33が形成された表皮材4を例示したが、これに限定されず、例えば、
図10(c)(d)に示すように、複数のグラデーション表示用凹部33a、33bが形成された表皮材4としてもよい。
【0062】
また、上記実施例2では、底面に単一の傾斜面44を有するグラデーション表示用凹部33が形成された表皮材4を例示したが、これに限定されず、例えば、
図10(c)(d)に示すように、底面に互いに交差する複数の傾斜面44a、44bを有するグラデーション表示用凹部33が形成された表皮材4としてもよい。
【0063】
また、上記実施例1の複数の強弱表示用凹部3a~3dと実施例2のグラデーション表示用凹部33とを組み合わせて形成した表皮材4としてもよい。
【0064】
また、上記実施例1、2では、編物からなる基布層12を備える素材2を例示したが、これに限定されず、例えば、織物、不織布等の布帛や、発泡シート等から構成される基布層12を備える素材2としてもよい。
【0065】
また、上記実施例1、2では、単層の表皮層13を備える素材2を例示したが、これに限定されず、例えば、
図11に示すように、複層の表皮層13を備える素材としてもよい。この場合、例えば、意匠層60の表面に表面処理層61を積層してなる表皮層13を備える素材2を採用できる。なお、
図10中の符号「64」は接着層を示す。
【0066】
また、上記実施例1、2において、加熱プレスの加熱温度、時間等は、素材2の材質や凹部の形状等に応じて適宜選択される。この加熱温度は、例えば、100~200℃(特に120~180℃)とすることができる。また、加熱時間は、素材の表面側と裏面側とで異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、加熱時間は、例えば、0.1~600秒とすることができる。
【0067】
さらに、上記実施例1、2では、受け台6に対してエンボス型8、38を相対的に近接離反させてエンボス型3、38と弾性マット10との間で素材2を加熱プレスする形態を例示したが、これに限定されず、例えば、ロール状のエンボス型を回転させてエンボス型と弾性マット10との間で素材2を加熱プレスするようにしてもよい。
【0068】
さらに、上記実施例1、2では、ドアトリムに備えられる表皮材4を例示したが、これに限定されず、例えば、ルーフトリム、座席シート等の車両内装材に備えられる表皮材4としたり、ソファ等の家具に備えられる表皮材4としたり、鞄、財布、衣服等の生活用品に備えられる表皮材4としたりしてもよい。
【0069】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0070】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、車両(自動車及び鉄道車両等)、航空機、船舶、建築、アパレル等の各種産業における表皮材が関わる分野において広く利用される。
【符号の説明】
【0072】
2;素材、3a~3d;強弱表示用凹部、33;グラデーション表示用凹部、4;表皮材、8,38;エンボス型、8a,38a;エンボス型の表面、9a~9d,39;押圧リブ、10;弾性マット、12;基布層、13;表皮層、19;熱変形部。