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特許7099159リフタ装置セット、リフタ装置およびその移動用サポータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】リフタ装置セット、リフタ装置およびその移動用サポータ
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/16 20060101AFI20220705BHJP
   B66F 13/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B66F7/16
B66F13/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018150952
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026328
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(73)【特許権者】
【識別番号】393008360
【氏名又は名称】株式会社タダノエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 孟軌
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健介
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】中田 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】高篠 良和
(72)【発明者】
【氏名】常谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】図子 英二
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-214056(JP,A)
【文献】特開2004-307136(JP,A)
【文献】特開2001-335283(JP,A)
【文献】実開昭51-087876(JP,U)
【文献】特開平11-301989(JP,A)
【文献】実開平3-081179(JP,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2013-0007045(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/00-7/28
B66C 19/00-23/94
B66F 9/00-11/04
B66F 13/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、
該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置と、
前記リフタ装置の移動時に用いられる移動用サポータと、を備え、
該移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘るように、前記リフタ装置に対して着脱自在に設けられている、
ことを特徴とするリフタ装置セット。
【請求項2】
前記移動用サポータには、前記リフタ装置を持ち上げるための突出部が設けられ、
前記鉛直部材には、前記突出部が挿入されるサポータ用水平孔が備えられており、
前記サポータ用水平孔に前記突出部が挿抜されることで前記移動用サポータが前記リフタ装置に対して着脱自在となる、
ことを特徴とする請求項1に記載のリフタ装置セット。
【請求項3】
前記移動用サポータには、
フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリフタ装置セット。
【請求項4】
前記移動用サポータには、
前記リフタ装置を移動させるためのキャスタが設けられている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリフタ装置セット。
【請求項5】
伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、
該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置であって、
前記鉛直部材には、前記リフタ装置の移動時に用いられる移動用サポータの突出部が挿入されるサポータ用水平孔が、それぞれ設けられており、
前記移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘るように設けられている、
ことを特徴とするリフタ装置。
【請求項6】
前記サポータ用水平孔から前記突出部が抜け出さないための抜け止め機構が、前記鉛直部材に設けられている、
ことを特徴とする請求項5記載のリフタ装置。
【請求項7】
伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、
該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置の移動用サポータであって、
該移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘る構成を有するとともに、
前記リフタ装置を持ち上げるための突出部を有し、
前記移動用サポータには、フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔が設けられている、
ことを特徴とするリフタ装置の移動用サポータ。
【請求項8】
伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、
該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置の移動用サポータであって、
該移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘る構成を有するとともに、
前記リフタ装置を持ち上げるための突出部を有し、
該移動用サポータには、前記リフタ装置を移動させるためのキャスタが設けられている、
ことを特徴とするリフタ装置の移動用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフタ装置セット、リフタ装置およびその移動用サポータに関する。さらに詳しくは、主要部材同士を分解することなく移動可能なリフタ装置を含むリフタ装置セット、リフタ装置およびその移動用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
リフタ装置は、吊り上げ対象である機械部品等を挟んで、例えば左右方向に一対の伸縮可能な鉛直部材と、これらの鉛直部材を、鉛直部材の上部で左右方向に接続する水平部材と、を含んでいる。すなわちリフタ装置は、例えば正面方向から見た時に門型の構成となる。特許文献1、2には、鉛直部材(特許文献1の昇降機20、特許文献2のジャッキ11)と、水平部材(特許文献1の補強連結部材26、特許文献2の昇降フレーム10)とを含んでいるリフタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-69154号公報
【文献】特開2009-120297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来工場内などでリフタ装置の配置を変更する場合、リフタ装置をそのまま吊り上げる能力を有するクレーンがその工場に設けられていない場合、リフタ装置は、鉛直部材と水平部材とに分解され、それぞれがクレーンで搬送されたあと、特許文献1で開示されているような方法で再組立される。このため、特に半導体工場など、大型のクレーン設備を設けることができない工場では、分解組立の作業が増大するという問題がある。
【0005】
この問題に対し、左右にそれぞれ配置される鉛直部材の下に移動台車が設けられるリフタ装置が特許文献2で開示されている。しかし、このようなリフタ装置は、移動台車が設けられることで、水平部材の上下方向の動作範囲が小さくなったり、機械要素が増えることによりコストが高くなったりするという問題がある。
【0006】
また、リフタ装置をそのままフォークリフトで持ち上げて搬送する方法も考えられる。しかし、フォークリフトの爪の幅を、リフタ装置の左右の鉛直部材の下に位置させるまで広げることはできず、またリフタ装置の水平部材を直接フォークリフトの爪で持ち上げる場合は、フォークリフトの定格荷重の関係から持ち上げが困難になる場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、リフタ装置を構成する主要部材同士を分解することなく、シンプルな手段で移動することが可能なリフタ装置を含むリフタ装置セット、リフタ装置およびその移動用サポータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明のリフタ装置セットは、伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置と、前記リフタ装置の移動時に用いられる移動用サポータと、を備え、該移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘るように、前記リフタ装置に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする。
第2発明のリフタ装置セットは、第1発明において、前記移動用サポータには、前記リフタ装置を持ち上げるための突出部が設けられ、前記鉛直部材には、前記突出部が挿入されるサポータ用水平孔が備えられており、前記サポータ用水平孔に前記突出部が挿抜されることで前記移動用サポータが、前記リフタ装置に対して着脱自在となることを特徴とする。
第3発明のリフタ装置セットは、第1発明または第2発明において、前記移動用サポータには、フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔が設けられていることを特徴とする。
第4発明のリフタ装置セットは、第1発明または第2発明において、前記移動用サポータには、前記リフタ装置を移動させるためのキャスタが設けられていることを特徴とする。
第5発明のリフタ装置は、伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置であって、前記鉛直部材には、前記リフタ装置の移動時に用いられる移動用サポータの突出部が挿入されるサポータ用水平孔が、それぞれ設けられており、前記移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘るように設けられていることを特徴とする。
第6発明のリフタ装置は、第5発明において、前記サポータ用水平孔から前記突出部が抜け出さないための抜け止め機構が、前記鉛直部材に設けられていることを特徴とする。
第7発明のリフタ装置の移動用サポータは、伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置の移動用サポータであって、該移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘る構成を有するとともに、前記リフタ装置を持ち上げるための突出部を有し、前記移動用サポータには、フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔が設けられていることを特徴とする。
第8発明のリフタ装置の移動用サポータは、伸縮可能な、2以上の鉛直部材と、該2以上の鉛直部材の間に亘って設けられている水平部材と、から構成されているリフタ装置の移動用サポータであって、該移動用サポータは、前記2以上の鉛直部材に亘る構成を有するとともに、前記リフタ装置を持ち上げるための突出部を有し、該移動用サポータには、前記リフタ装置を移動させるためのキャスタが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、リフタ装置セットが、リフタ装置の移動時に用いられる移動用サポータを備えているので、リフタ装置の主要部材同士を分解することなく、リフタ装置を移動させることができる。また移動用サポータが着脱自在であるので、リフタ装置に移動台車のような専用の移動機構を設ける必要がなくなり、リフタ装置のコストを抑えたり、リフタ装置の水平部材の上下方向の動作範囲を広げたりすることができる。
第2発明によれば、移動用サポータの突出部と、鉛直部材のサポータ用水平孔により、移動用サポータが着脱自在となるので、シンプルな構成で移動用サポータをリフタ装置に固定したり、外したりすることができる。
第3発明によれば、2以上の鉛直部材に亘る移動用サポータに、フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔が設けられているので、比較的定格荷重の小さいフォークリフトでリフタ装置を移動させることができる。
第4発明によれば、移動用サポータにリフタ装置を移動させるためのキャスタが設けられているので、フォークリフトが利用できない環境下でのリフタ装置の移動が可能となる。
第5発明によれば、鉛直部材には、リフタ装置の移動時に用いられる移動用サポータの突出部が挿入されるサポータ用水平孔が、それぞれ設けられているので、移動用サポータを利用して、リフタ装置の主要部材同士を分解することなく、リフタ装置を移動させることができる。また移動用サポータは着脱自在となるので、リフタ装置にすえつけられている移動台車のような専用の移動機構を設ける必要がなくなり、リフタ装置のコストを抑えたり、リフタ装置の水平部材の上下方向の動作範囲を広げたりすることができる。
第6発明によれば、サポータ用水平孔から突出部が抜け出さないための抜け止め機構が、鉛直部材に設けられているので、リフタ装置を移動させる際にリフタ装置から移動用サポータが脱落することを防止できる。
第7発明によれば、リフタ装置の移動用サポータに、フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔が設けられているので、この移動用サポータを用いて、比較的定格荷重の小さいフォークリフトでリフタ装置を移動させることができる。
第8発明によれば、リフタ装置の移動用サポータに、リフタ装置を移動させるためのキャスタが設けられているので、この移動用サポータを用いると、フォークリフトが利用できない環境下でのリフタ装置の移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るリフタ装置セットの正面図である。
図2図1のリフタ装置セットを構成するリフタ装置の正面図である。
図3図1のリフタ装置セットを構成するリフタ装置の側面図である。
図4図1のリフタ装置セットを構成する移動用サポータの正面図である。
図5図1のリフタ装置セットを構成する移動用サポータの平面図である。
図6図1のリフタ装置セットを構成する移動用サポータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのリフタ装置セット、リフタ装置および移動用サポータを例示するものであって、本発明はリフタ装置セット、リフタ装置、および移動用サポータを以下のものに限定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに本明細書では、「水平」、「鉛直」の表現は、「実質的水平」、「実質的鉛直」を意味しており、厳密に「水平」、「鉛直」である必要はない。加えて、図1~6で示すようにXYZ座標を定め、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向と称することがある。この場合、図1の紙面に表されているリフタ装置セットの中心に、リフタ装置セットの使用者が手前を見るように立って、前後左右上下を表すので、図1の紙面において右側を左、左側を右、奥行き側を後、手前側を前、上側を上、下側を下と称する。
【0012】
(リフタ装置セット10)
図1には、本発明の第1実施形態に係るリフタ装置セット10の正面図を示す。リフタ装置セット10は、リフタ装置20を含んでいる。このリフタ装置20は、伸縮可能な、2つの鉛直部材22と、これらの鉛直部材22の間に亘って設けられている水平部材21と、から構成されている。またリフタ装置セット10は、リフタ装置20の移動時に用いられる移動用サポータ30がリフタ装置20に対して着脱自在に設けられている。この移動用サポータ30は、リフタ装置20を構成する、2つの鉛直部材22に亘るように設けられている。
【0013】
リフタ装置セット10が、リフタ装置20の移動時に用いられる移動用サポータ30を備えているので、リフタ装置20の主要部材同士を分解することなく、リフタ装置20を移動させることができる。また移動用サポータ30が着脱自在であるので、リフタ装置20に移動台車のような専用の移動機構を設ける必要がなくなり、リフタ装置20のコストを抑えたり、リフタ装置20の水平部材21の上下方向の動作範囲を広げたりすることができる。
以下、リフタ装置セット10を構成するリフタ装置20と移動用サポータ30とについてそれぞれ説明する。
【0014】
(リフタ装置20)
図2には、リフタ装置セット10を構成するリフタ装置20の正面図を、図3にはその側面図を示す。本実施形態に係るリフタ装置20は、2つの鉛直部材22を有しており、この2つの鉛直部材22は、これらの鉛直部材22の間に吊下げられる荷物が配置できるように、X方向に所定の距離をもって配置されている。これらの鉛直部材22の上部において、これらの鉛直部材22の間に亘って水平部材21が設けられている。すなわちリフタ装置20は、図2で示すように、例えば正面方向から見た時に門型の構成となる。なお、本実施形態では、図2の紙面において、鉛直部材22はX方向にそれぞれ1つずつ設けられているが、持ち上げ荷重が大きくなる場合は、X方向のそれぞれの位置に複数の鉛直部材22を(例えばY方向に2つ並べて)設けることも可能である。
【0015】
鉛直部材22は、基礎鉛直部材22b(実線で表示)と、この基礎鉛直部材22bの内側に入り込み、上下動が可能である上下鉛直部材22a(破線で表示)とを含んで構成されている。すなわち鉛直部材22は、基礎鉛直部材22bと上下鉛直部材22aとの入れ子構造になっている。鉛直部材22の内部に設けられている油圧シリンダ(不図示)により、上下鉛直部材22aが上下に動作する。この構成により、鉛直部材22は伸縮可能となる。リフタ装置20の使用者は、鉛直部材22を伸縮させることにより吊下げた荷物を上下に動作させることができる。なお、鉛直部材22を伸縮可能とする構成は、この構成に限定されない。例えば、空圧シリンダを使用することも可能であり、ボールねじを使用することも可能である。
【0016】
水平部材21は、所定の距離をもって配置されている鉛直部材22の間に亘るように設けられている。また水平部材21には、鉛直部材22の間にある荷物を吊下げるための吊下げ部材23が設けられている。この吊下げ部材23は、水平部材21の長手方向であるX方向に動作可能となっている。
【0017】
鉛直部材22の下部には、基礎部材26が設けられている。この基礎部材26は、リフタ装置20の前後方向に伸びる部材である。また、基礎部材26の前後先端には、走行ローラ27が設けられている。この走行ローラ27が設けられていることにより、リフタ装置20は、走行可能となる。なお本明細書では、走行ローラ27によりリフタ装置20が動くことを「走行」と称し、走行ローラ27によらないでリフタ装置20が動くことを「移動」と称する。
【0018】
鉛直部材22を構成する基礎鉛直部材22bの上下中心の下方に、サポータ受け部25がそれぞれ設けられている。このサポータ受け部25は、鉛直部材22の左右方向に張り出すように設けられている。また、サポータ受け部25の下方向には、サポータ用水平孔24が設けられている。サポータ用水平孔24には、後述する移動用サポータ30の突出部32が挿入され、突出部32が挿入されたサポータ用水平孔24では、このサポータ用水平孔24の上部でリフタ装置20が持ち上げられる。本実施形態では、サポータ用水平孔24は、鉛直部材22の左右外側の面、すなわち鉛直部材22から見て荷物を吊る側と反対側の面に設けられている。また、本実施形態では、鉛直部材22の左右内側の面、すなわち鉛直部材22から見て荷物を吊る側には、サポータ用水平孔24は設けられない。鉛直部材22の一方にのみサポータ用水平孔24が設けられていることにより、後述する移動用サポータ30の突出部32の位置決めを厳密に行う必要がなくなり、作業効率が高くなる。
【0019】
鉛直部材22には、サポータ用水平孔24から移動用サポータ30の突出部32が抜け出さないようにするための抜け止め機構が設けられている。この抜け止め機構は、本実施形態では移動用サポータ30が所定の位置に位置した後に、サポータ受け部25の上面から抜け止めピン28を差し込む機構である。更に詳細に説明すると、サポータ受け部25には、ピン用金具25aが設けられており、このピン用金具25aに抜け止めピン28が差し込まれ、ピン用金具25aで抜け止めピン28の上下位置が決定される。
【0020】
鉛直部材22には、リフタ装置20の移動時に用いられる移動用サポータ30の突出部32が挿入されるサポータ用水平孔24が、それぞれ設けられているので、移動用サポータ30を利用して、リフタ装置20の主要部材同士を分解することなく、リフタ装置20を移動させることができる。また移動用サポータ30は着脱自在となるので、リフタ装置20に移動台車のような専用の移動機構を設ける必要がなくなり、リフタ装置20のコストを抑えたり、リフタ装置20の水平部材21の上下方向の動作範囲を広げたりすることができる。
【0021】
サポータ用水平孔24から突出部32が抜け出さないための抜け止め機構が、鉛直部材22に設けられているので、リフタ装置20を移動させる際にリフタ装置20から移動用サポータ30が脱落することを防止できる。
【0022】
(移動用サポータ30)
図4には、リフタ装置セット10を構成する移動用サポータ30の正面図を、図5にはその平面図を、図6にはその側面図を示す。移動用サポータ30は、サポータ水平部材31を有している。このサポータ水平部材31の左右方向の長さは、リフタ装置20を構成する、2つの鉛直部材22に亘る長さである。すなわち、移動用サポータ30は、リフタ装置20の、左右の鉛直部材22を同時に持ち上げることができる長さを有している。
【0023】
また本実施形態に係る移動用サポータ30には、リフタ装置20を持ち上げるための突出部32が4つ設けられている。突出部32は、サポータ水平部材31の上部に設けられている。突出部32は、サポータ水平部材31から後方、すなわち図5の紙面において上側に向けて突出する構造である。この突出部32は、サポータ水平部材31の長手方向に移動させたうえで固定される。本実施形態では、各突出部32のうち、第1突出部32aと第2突出部32bとが、左側、すなわち図2の紙面における右側の鉛直部材22を挟むように位置し、第3突出部32cと第4突出部32dとが、右側、すなわち図2の紙面における左側の鉛直部材22を挟むように位置する。また第1突出部32a、および第4突出部32dは、左右の鉛直部材22に設けられているサポータ用水平孔24に挿入されるように位置し、第2突出部32b、および第3突出部32cは、サポータ受け部25の鉛直部材22の左右内側の面を持ち上げることができるように位置している。
【0024】
本実施形態に係る移動用サポータ30には、フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔34が設けられている。この爪用水平孔34は、移動用サポータ30の左右方向の中心線を対称軸として左右対称に設けられている。
【0025】
リフタ装置20用の移動用サポータ30に、フォークリフトの爪が挿入される爪用水平孔34が設けられているので、この移動用サポータ30を用いて、比較的定格荷重の小さいフォークリフトでリフタ装置20を移動させることができる。すなわち、移動用サポータ30が設けられていないリフタ装置20の水平部材21部分をフォークリフトで持ち上げる場合は、フォークの爪の位置が高くなるため、比較的定格荷重の大きいフォークリフトにより搬送を行うこととなるが、移動用サポータ30が設けられているリフタ装置セット10の場合、フォークの爪の位置を低く抑えることができるので、定格荷重の比較的小さいフォークリフトでの移動が可能となる。
【0026】
また本実施形態に係る移動用サポータ30には、リフタ装置20を移動させるためのキャスタ35が4つ設けられている。キャスタ35は、リフタ装置20を持ち上げたときに、リフタ装置20が前後(Y方向)に揺れるのを防止するように、前後方向に所定の間隔を有するように配置され、左右方向にも所定の間隔を有するように配置されている。またキャスタ35の定格荷重は、リフタ装置セット10を動作させることができる定格荷重である。またキャスタ35には、キャスタ35の上下位置を調整するための位置調整ねじ37が設けられている。
【0027】
移動用サポータ30には、把手部33が設けられている。移動用サポータ30の使用者は、この把手部33により移動用サポータ30、および移動用サポータ30を備えたリフタ装置セット10を所望の位置に移動させることができる。また、移動用サポータ30には、補助用把手部38が左右対称に設けられている。
【0028】
リフタ装置20用の移動用サポータ30に、リフタ装置20を移動させるためのキャスタ35が設けられているので、この移動用サポータ30を用いると、フォークリフトが利用できない環境下でのリフタ装置20の移動が可能となる。
【0029】
本実施形態に係る移動用サポータ30には、爪用水平孔34とキャスタ35との両方が搭載されているが、いずれかを搭載する場合もある。
【0030】
また、本実施形態では、サポータ用水平孔24が左右それぞれの鉛直部材22に設けられていたが、例えば片方のみに設けられたり、サポータ用水平孔24が設けられなかったりする場合もある。この場合、サポータ受け部25によりリフタ装置20が持ち上げられる。
【0031】
(リフタ装置セット10の移動手順)
移動用サポータ30の使用者は、フォークリフトを操作して、移動用サポータ30の爪用水平孔34にフォークリフトの爪を挿入し、移動用サポータ30を持ち上げ、移動用サポータ30をリフタ装置20に装着する。
【0032】
具体的には、使用者は、まず移動用サポータ30の一部の突出部32(第1突出部32aおよび第4突出部32d)を、リフタ装置20に設けられているサポータ用水平孔24に合うように事前に位置決めする。すなわち第1突出部32aを左の鉛直部材22のサポータ用水平孔24に、第4突出部32dを右の鉛直部材22のサポータ用水平孔24に合うように位置決めする。また、残りの突出部32(第2突出部32bおよび第3突出部32c)を、サポータ用水平孔24に挿入される突出部32と対になって、リフタ装置20の鉛直部材22を挟み込むように位置決めする。すなわち第2突出部32bを、第1突出部32aと共に左の鉛直部材22を挟むように、第3突出部32cを、第4突出部32dと右の鉛直部材22を挟むように位置決めする。
【0033】
そして、使用者は、フォークリフトを操作して、移動用サポータ30の爪用水平孔34にフォークリフトの爪を挿入して移動用サポータ30を持ち上げる。その後、使用者は、移動用サポータ30の突出部32をサポータ用水平孔24に挿入し、その後で抜け止めピン28により移動用サポータ30の突出部32がサポータ用水平孔24から抜け出さないようにする。具体的には、サポータ受け部25のピン用金具25aの上から抜け止めピン28を差込み、移動用サポータ30に設けられている補助用把手部38の前側(図1において手前側)に抜け止めピン28が位置するようにし、移動用サポータ30がリフタ装置20から前側(図1において手前側)に移動しないようにする。
【0034】
次に移動用サポータ30の使用者は、フォークリフトを用いて、リフタ装置セット10を別の位置へ移動させる。具体的には、使用者は、フォークリフトで移動用サポータ30と一体となったリフタ装置セット10を持ち上げ、別の位置へ移動させた後、リフタ装置セット10を下ろす。
【0035】
最後に移動用サポータ30の使用者は、移動用サポータ30をリフタ装置20から取り外す。具体的には、抜け止めピン28を抜いて、サポータ用水平孔24から、移動用サポータ30の突出部32を引き抜くことで、移動用サポータ30をリフタ装置20から取り外す。これによりリフタ装置20は、主要部材同士を分解することなく移動することができる。
【0036】
リフタ装置セット10の移動手順は、上記の手順に限られない。例えば、上記の手順では、フォークリフトを用いて移動用サポータ30を持ち上げて、リフタ装置20に装着していたが、使用者はキャスタ35の位置調整ねじ37により移動用サポータ30の上下位置を調整し、この移動用サポータ30の突出部32をサポータ用水平孔24に挿入させることもできる。
【0037】
また、フォークリフトが使用できないときは、移動用サポータ30の使用者は、キャスタ35の位置調整ねじ37を用いて、移動用サポータ30を備えたリフタ装置セット10全体を持ち上げ、把手部33を用いて、リフタ装置セット10を別の位置へ移動させることもできる。
【0038】
(他の実施形態)
本実施形態では、移動用サポータ30の上下の位置を調整するために位置調整ねじ37が用いられたが、移動用サポータ30はこの構造に限定されない。例えば位置調整ねじ37に替えて簡易的な油圧ジャッキを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 リフタ装置セット
20 リフタ装置
21 水平部材
22 鉛直部材
24 サポータ用水平孔
30 移動用サポータ
32 突出部
34 爪用水平孔
35 キャスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6