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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ピッキングリフト、及び棚設備システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220705BHJP
   B66F 9/14 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B66F9/24 A
B66F9/14 A
B66F9/24 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018160168
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020033132
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 吉洋
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0277871(US,A1)
【文献】特開2001-122599(JP,A)
【文献】特開平06-286996(JP,A)
【文献】特開2003-212499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B65G 1/00-1/133;1/14-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)棚設備の収納棚からの物品の取り出し、(b)前記収納棚への物品の収納、の少なくともどちらかの作業を行うために用いる、前記収納棚にアクセスするアクセス高さまで上昇し、前記高さから下降できる、作業者が乗って前記作業を行うピッキングリフトであって、
地上側に設置した地上側制御装置により指定された前記収納棚の地上側アクセス位置まで、誘導経路に沿って地上を自動で走行する走行装置と、
前記地上側制御装置により指定された前記アクセス高さに対して、物品が載る載荷台及び作業者が乗る作業台を自動で昇降させる昇降装置と、
前記地上側アクセス位置において前記収納棚のアクセス面が左方又は右方にある状態で、
前記昇降装置で前記載荷台及び前記作業台を上昇させる前、又は前記昇降装置で前記載荷台及び前記作業台を上昇させた後に、
前記載荷台及び前記作業台を、前記収納棚に近づくように動力でスライドさせるスライド装置と、
を備え
前記スライド装置は、前記載荷台及び前記作業台を自動でスライドさせるものであり
前記走行装置を含む車体に、前記収納棚との距離を測定するセンサを備え、
前記センサによる前記距離の測定値に応じて、前記載荷台及び前記作業台を前記収納棚に近づけるスライド量を定めてなる、
ピッキングリフト。
【請求項2】
前記スライド装置は、前記載荷台及び前記作業台を、前記走行装置の直線走行方向に向かって左方及び右方の両方へスライドできる、
請求項1に記載のピッキングリフト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピッキングリフトを備え、
前記棚設備は、前記収納棚を複数列備え、
前記ピッキングリフトは、隣り合う前記収納棚の間の通路の略中央を走行する、
棚設備システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が乗ってピッキング作業を行うピッキングリフトに関わり、さらに詳しくは、誘導経路に沿って自動走行するピッキングリフト、及び前記ピッキングリフトを備えた棚設備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多品種かつ少量の物品を取り扱う場合、それらを保管している棚設備の収納棚に対して物品単位での出し入れが必要になる。
このような作業を行うために、前記収納棚にアクセスするアクセス高さまで上昇し、前記高さから下降し、作業者が乗ってピッキング作業を行うピッキングリフトが多用されており、中央指令装置により指定された棚の位置まで誘導経路に沿って自動走行するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、自動走行しない、オペレータが運転するピッキングリフトにおいて、運転台の左右側部に、運転台の外側方へ突出される使用位置と、運転台に収納される収納位置との間で回転可能な可動式フロアを設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2のピッキングリフト30では、オペレータは、以下の作業を行う。
(1)ピッキングリフト30を運転してラック21に近づけた位置で停止する。
(2)前記収納位置にある可動式フロア44の上面がラック21の上面レベルよりも少し高い位置にくるように、目分量で昇降体33を上昇させる。
(3)前記使用位置にするように可動式フロア44を展開してラック21と接触させる。
(4)ピッキング作業を行う。
(5)前記使用位置にある可動式フロア44を折り畳んで前記収納位置に戻す。
(6)昇降体33を下降させる。
(7)ピッキングリフト30を運転して次の作業位置まで移動させる。
【0005】
特許文献2には、前記使用位置と前記収納位置との間で回転可能な可動式フロア44をピッキングリフト30に設けたことにより、運転台34とラック21との隙間45から荷物を落としたり、オペレータが運転台34から足を踏み外したりすることを防ぎ、安全にピッキング作業を行うことができる、と記載されている。
また、特許文献2には、前記可動式フロア44をピッキングリフト30に設けたことにより、運転台34とラック21との隙間45ができるだけ小さくなるようにピッキングリフト30を横付けする必要が無くなるため、このような運転操作に時間をとられることがなくなり、ピッキング作業を効率よく行うことが可能となる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平7-30638号公報
【文献】特開2003-306298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような自動走行するピッキングリフト、及び特許文献2のような自動走行しない、オペレータが運転するピッキングリフトの何れにおいても、棚設備の収納棚に沿ってピッキングリフトが走行する際には、前記収納棚とピッキングリフトの間に一定以上の隙間を設ける必要がある。
【0008】
特に自動走行するピッキングリフトにおいては、乗っている作業者に恐怖心を与えないように、できるだけ収納棚から離れた一定経路上を走行させる必要がある。
ピッキング作業の効率を高めるためには、なるべくピッキングリフトの走行速度を上げる必要がある。ピッキングリフトの走行速度を上げると自動走行(自律誘導)の補正の難易度が上がり、ピッキングリフトの蛇行の幅が大きくなる恐れがある。よって、このような観点からも、ピッキングリフトには、できるだけ収納棚から離れた一定経路上を走行させることが望ましい。
【0009】
自動走行するピッキングリフトにおいて、特許文献2の前記可動式フロアを設けた場合、棚設備の収納棚に沿って自動走行しながら、前記可動式フロアを運転台の外側方へ突出した使用位置で隙間を塞げる位置までピッキングリフトを収納棚に近づける必要がある。前記可動式フロアにより塞げる隙間の大きさは高々20cm程度であるので、乗っている作業者に恐怖心を与えないようにするためには、ピッキングリフトを低速にして収納棚に近づける必要がある。
【0010】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとする課題は、自動走行するピッキングリフトにおいて、乗っている作業者に恐怖心を与えることなく、ピッキング作業の効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るピッキングリフトは、前記課題解決のために、(a)棚設備の収納棚からの物品の取り出し、(b)前記収納棚への物品の収納、の少なくともどちらかの作業を行うために用いる、前記収納棚にアクセスするアクセス高さまで上昇し、前記高さから下降できる、作業者が乗って前記作業を行うピッキングリフトであって、
地上側に設置した地上側制御装置により指定された前記収納棚の地上側アクセス位置まで、誘導経路に沿って地上を自動で走行する走行装置と、
前記地上側制御装置により指定された前記アクセス高さに対して、物品が載る載荷台及び作業者が乗る作業台を自動で昇降させる昇降装置と、
前記地上側アクセス位置において前記収納棚のアクセス面が左方又は右方にある状態で、
前記昇降装置で前記載荷台及び前記作業台を上昇させる前、又は前記昇降装置で前記載荷台及び前記作業台を上昇させた後に、
前記載荷台及び前記作業台を、前記収納棚に近づくように動力でスライドさせるスライド装置と、
を備え
前記スライド装置は、前記載荷台及び前記作業台を自動でスライドさせるものであり
前記走行装置を含む車体に、前記収納棚との距離を測定するセンサを備え、
前記センサによる前記距離の測定値に応じて、前記載荷台及び前記作業台を前記収納棚に近づけるスライド量を定めてなる(請求項1)。
【0012】
このような構成によれば、スライド装置により、載荷台及び作業台を、収納棚に近づくようにスライドできるので、ピッキングリフトが地上を自動で走行する際に、収納棚との間隔を大きくとることかできる。それにより、地上を自動で走行する際におけるピッキングリフトの走行速度を上げても、ピッキングリフトに乗っている作業者に恐怖心を与えることがなく、ピッキングリフトが収納棚に衝突する恐れもない。
よって、ピッキング作業の効率を高めることができる。
その上、スライド装置により載荷台及び作業台を収納棚に近づくようにスライドさせた状態で作業者がピッキング作業を行うので、安全性が低下することがない。
その上さらに、走行装置により地上を自動で走行するとともに、スライド装置により載荷台及び作業台を動力でスライドさせるので、ピッキングリフトに乗った作業者の負担を軽減できる。
その上、スライド装置を自動でスライドさせるので、作業者の負担をさらに軽減できるとともに、収納棚との距離を測定するセンサにより、スライド装置のスライド量を正確に定めることができる。
【0013】
ここで、前記スライド装置は、前記載荷台及び前記作業台を、前記走行装置の直線走行方向に向かって左方及び右方の両方へスライドできるのが好ましい実施態様である(請求項2)。
【0014】
このような構成によれば、スライド装置により、載荷台及び作業台を、走行装置の直線走行方向に向かって左方及び右方の両方へスライドできることから、ピッキングリフトの走行方向を反転することなく、ピッキングリフトの左右両側の収納棚にアクセスできるので、ピッキング作業の効率を一層高めることができる。
【0017】
本発明に係る棚設備システムは、前記ピッキングリフトを備え、
前記棚設備は、前記収納棚を複数列備え、
前記ピッキングリフトは、隣り合う前記収納棚の間の通路の略中央を走行する(請求項4)。
【0018】
このような構成によれば、隣り合う収納棚の間の通路の略中央をピッキングリフトが走行するので、地上を自動で走行する際におけるピッキングリフトの走行速度を上げても作業者に恐怖心を与えることがなく、ピッキングリフトが収納棚に衝突する恐れもない。
その上、ピッキングリフトを収納棚に近づけるように走行装置を制御する必要がなく、載荷台及び作業台を左方及び右方の両方へスライドできるピッキングリフトにより隣り合う収納棚の両方にアクセスできる。
よって、ピッキング作業の効率を大幅に高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係るピッキングリフト、及び棚設備システムによれば、自動走行するピッキングリフトにおいて、乗っている作業者に恐怖心を与えることなく、ピッキング作業の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る、ピッキングリフト、及び棚設備システムを示す斜視図である。
図2】ピッキングリフトの斜視図である。
図3】ピッキングリフトの部分分解斜視図である。
図4】ピッキングリフトの部分横断面平面図である。
図5】同じく部分横断面平面図であり、載荷台及び作業台を右方へスライドさせた状態を示している。
図6】同じく部分横断面平面図であり、載荷台及び作業台を左方へスライドさせた状態を示している。
図7】本発明の実施の形態に係る、ピッキングリフト、及び棚設備システムを示す後方から見た図である。
図8】ピッキングリフトの動作例を示す平面図である。
図9】地上側制御装置による最適経路の算出方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、図1及び図2、並びに図7ないし図9において、収納棚Bからの取出し、又は収納棚Bへ収納する物品Dを、説明の簡単化のために直方体状としている。物品Dは、実際は、例えば、収納棚Bの各棚上に、トレー上や箱内等に収納された多品種かつ少量の物品である。
また、図4ないし図9において、ピッキングリフト1の作業台6に乗っている作業者Eの記載を省略している。
以下の実施形態において、ピッキングリフト1の走行方向を前、その反対方向を後とし、前方に向かって左右を定義する。
【0022】
<棚設備システム>
図1の斜視図に示すように、本発明に係る実施形態に係る棚設備システムは、棚設備A及びピッキングリフト1,1,…を備える。
棚設備システムは、地上側に設置した、図示しない地上側制御装置を備える。
地上側制御装置は、ピッキング作業の内容を規定したピッキングリストに応じて、ピッキングリフト1の走行経路を自動設定し、ピッキングリフト1に乗った作業者Eに対し、作業台6にあるモニタ画面やスピーカ等により、自動設定した走行経路、及び行き先の棚番号等を伝達する。
【0023】
棚設備Aは、収納棚Bを複数列備え、隣り合う収納棚B,Bの間に通路Cを有する。
ピッキングリフト1は、誘導経路に沿って自動走行するものであり、(a)収納棚Bからの物品Dの取り出し、(b)収納棚Bへの物品Dの収納、の少なくともどちらかの作業を行うために用いる。
ピッキングリフト1は、地上側アクセス位置(例えば、図8の地上側アクセス位置G参照)で、収納棚Bにアクセスするアクセス高さ(例えば、図7のアクセス高さH参照)まで上昇し、ピッキングリフト1に乗った作業者Eがピッキング作業を行った後、前記高さから下降する。
【0024】
<ピッキングリフト>
図2の斜視図、図3の部分分解斜視図、及び図4の部分横断面平面図に示すように、ピッキングリフト1は、走行装置2、昇降装置3、及びスライド装置4、載荷台5、及び作業台6等を備える。物品Dが載る載荷台5及び作業者Eが乗る作業台6は、マストMに沿って昇降可能に支持される。
【0025】
(走行装置)
走行装置2は、駆動操舵輪2A及び従動輪2B,2B,…を備え、地上側制御装置により指定された地上側アクセス位置まで、誘導経路に沿って地上を自動で走行する。
【0026】
(昇降装置)
昇降装置3は、地上側制御装置により指定された収納棚Bにアクセスするアクセス高さに対して、物品Dが載る載荷台5及び作業者Eが乗る作業台6を自動で昇降させる。
なお、「自動で昇降させる」とは、作業者Eが手元の操作ボタンを操作することにより昇降動作を行う場合も含む。
【0027】
(スライド装置)
スライド装置4は、載荷台5及び作業台6を、収納棚Bに近づくように左右方向へ動力でスライドさせるものである。スライド装置4は、昇降装置3の支持部3Aに連結部4A,4A,…(図3参照)を取り付けることにより、昇降装置3の支持部3Aに対して左右方向へスライド可能に支持される。
スライド装置4のアクチュエータは、例えば図3の部分分解斜視図に示す油圧シリンダ7であり、例えば位置センサ付きの両側ロッド式複動シリンダである。なお、スライド装置4のアクチュエータを電動にしてもよい。
【0028】
スライド装置4は、地上側アクセス位置(例えば、図8の地上側アクセス位置G参照)において収納棚Bのアクセス面Fが左方又は右方にある状態で、昇降装置3で載荷台5及び作業台6を上昇させる前、又は昇降装置3で載荷台5及び作業台6を上昇させた後に、載荷台5及び作業台6を、収納棚Bに近づくようにスライドさせる。
【0029】
スライド装置4は、図4の部分横断面平面図に示す位置から、図5の部分横断面平面図及び図7の後方から見た図に示すように、走行装置2の直線走行方向Iに向かって右方Rへ載荷台5及び作業台6をスライドさせることができるとともに、図6の部分横断面平面図及び図7の後方から見た図に示すように、走行装置2の直線走行方向Iに向かって左方Lへ載荷台5及び作業台6をスライドさせることができる。
スライド装置4により載荷台5及び作業台6をスライドさせる最大ストロークは、要求仕様により、例えば30cmないし100cm程度に設定する。
【0030】
本実施形態においては、スライド装置4は、載荷台5及び作業台6を自動でスライドさせるものである。なお、スライド装置4を、自動ではなく、作業者Eがレバー等を操作するマニュアル操作により、載荷台5及び作業台6を低速でスライドさせ、作業者Eが目視で確認した位置に停止させるようにしてもよい。
【0031】
(載荷台及び作業台)
載荷台5には、図2の斜視図、及び図4の部分横断面平面図に示すように、ケージ8が取り付けられる。ケージ8の扉8A,8Aは、扉開閉装置15により、リンク機構16を介して駆動され、図2の二点鎖線のように左右に開き、実線のように閉じる。
【0032】
作業者Eは、例えば図2の斜視図の二点鎖線のピッキング台車9を引きながらピッキングリフト1後方のケージ8に近づく。なお、ピッキング台車は、図2のようなピッキング台車9に限定されるものではなく、四輪又は六輪の物流台車等であってもよい。
作業者Eは、扉開閉装置15のスイッチを操作してケージ8の扉8A,8Aを開いた後、ピッキング台車9を引きながら、床から直接、ピッキングリフト1に乗り込む。
【0033】
すなわち、作業者Eは、ピッキング台車9の車輪を車輪受け5A,5Aに載せるようにピッキング台車9を載荷台5上に置き、自身は作業台6に乗り込み、扉開閉装置15のスイッチを操作してケージ8の扉8A,8Aを閉じる。
このようにピッキングリフト1に乗り込んだ作業者Eは、走行装置2が地上側アクセス位置まで走行し、昇降装置3が収納棚Bにアクセスするアクセス高さまで上昇し、スライド装置4が収納棚Bに近づくようにスライドした状態で、収納棚Bとピッキング台車9との間でピッキング作業を行う。
【0034】
(ピッキングリフトの車体に備えるセンサ)
ピッキングリフト1の走行装置2を含む車体10には、前後のレーザセンサ11,11、前後の磁気センサ12,12、2次元コード読み取りセンサ13、及びエッジスイッチ14を設ける。
【0035】
レーザセンサ11,11は、収納棚Bとの距離を測定するセンサとして機能するとともに、障害物センサとして機能する。
すなわちレーザセンサ11,11は、図1に示す収納棚Bの最下段横架部材Jと車体10との距離を測定するので、安定して連続計測することが可能である。
そして、前記距離の測定値を基に、スライド装置4により載荷台5及び作業台6を自動でスライドさせる際におけるスライド量を決定する。
なお、レーザセンサ11が障害物センサとして機能する場合、レーザセンサ11は車体10の下部に取り付けられていることから、載荷台5及び作業台6が床すれすれの高さに位置すると、レーザ光が遮られてしまうので、障害物を認識できない。そのため、少なくともピッキングリフト1の走行時には、載荷台5及び作業台6を床から一定以上の高さ(例えば、床から約30cm以上の高さ)に上昇させておく必要がある。
【0036】
磁気センサ12,12は、地上に設置した誘導手段である磁気テープを検知し、中央位置に対して幅方向のズレ量を検出する。その検出情報を基に、走行装置2の制御装置は、ピッキングリフト1を磁気テープの中央へ沿って走行させるように走行制御する。
【0037】
本実施の形態において、誘導制御に用いる誘導手段は、誘導線である磁気テープであり、すなわち磁気誘導式である。このような誘導線は、磁性体の針金等である磁気誘導式であってもよく、電線からの誘導電流を用いる電磁誘導式、又は光学テープ若しくは描かれた線を用いる光学誘導式であってもよい。
あるいは、誘導線を用いずに、各種センサで取得した情報から周囲の環境の形状を把握し、その形状データを基にピッキングリフト1の自己位置を推定し、修正しながら地図を作って動いていくSLAM(Simultaneously Localization And Mapping)等の自律誘導であってもよい。
ただし、誘導手段として誘導線を用いることにより、走行経路に沿って設置した誘導線により誘導されながらピッキングリフト1が走行するので、ピッキングリフト1の進行方向と直交する方向の位置精度を向上できる。
【0038】
2次元コード読み取りセンサ13は、例えば2次元ビジョンセンサであり、地上に設置した2次元コードを認識する。その認識情報を基に、走行装置2の制御装置は、例えば、2次元コードとの進行方向の距離を測定しながら、目標停止位置で停止するように走行制御する。
あるいは、走行装置2の制御装置は、2次元コード読取りセンサ13により2次元コードを読み取った情報からピッキングリフト1の座標データを得、その座標データを基に、別の2次元コードの目標停止位置の座標データを設定し、2次元コード読取りセンサ13が前記目標停止位置の座標データを読み取った時点で停止する。
【0039】
エッジスイッチ14は、接触物及びスイッチの損傷を防ぐクッション機能を持つ接触検出型スイッチであり、接触物との接触を検出した際にピッキングリフト1の走行装置2を停止させる。
【0040】
以上のような本発明の実施の形態に係るピッキングリフト1によれば、スライド装置4により、載荷台5及び作業台6を、収納棚Bに近づくようにスライドできるので、ピッキングリフト1が地上を自動で走行する際に、収納棚Bとの間隔を大きくとることかできる。それにより、地上を自動で走行する際におけるピッキングリフト1の走行速度を上げても、ピッキングリフト1に乗っている作業者Eに恐怖心を与えることがなく、ピッキングリフト1が収納棚Bに衝突する恐れもない。
よって、ピッキング作業の効率を高めることができる。
その上、スライド装置4により載荷台5及び作業台6を収納棚Bに近づくようにスライドさせた状態で作業者Eがピッキング作業を行うので、安全性が低下することがない。
その上さらに、走行装置2により地上を自動で走行するとともに、スライド装置4により載荷台5及び作業台6を動力でスライドさせるので、ピッキングリフト1に乗った作業者の負担を軽減できる。
【0041】
その上、スライド装置4により、載荷台5及び作業台6を、走行装置2の直線走行方向Iに向かって左方L及び右方Rの両方へスライドできることから、ピッキングリフト1の走行方向を反転することなく、ピッキングリフト1の左右両側の収納棚B,Bにアクセスできるので、ピッキング作業の効率を一層高めることができる。
その上さらに、スライド装置4を自動でスライドさせることにより、作業者Eの負担をさらに軽減できるとともに、収納棚Bとの距離を測定するレーザセンサ11,11により、スライド装置4のスライド量を正確に定めることができる。
【0042】
<棚設備システムにおけるピッキングリフトの動作例1>
図8の平面図において、所定のアクセス高さであるピッキング位置K1でピッキング作業を行う場合、ピッキングリフト1及び作業者Eは、以下の動作を行う。
【0043】
(1-1)ピッキングリフト1は、地上側制御装置が自動設定した経路を走行し、地上側アクセス位置Gに停止する。
(1-2)ピッキングリフト1は、ピッキング位置K1側(右側)の収納棚Bの最下段横架部材J(図1参照)と車体10との距離をレーザセンサ11,11(図4参照)により測定する。
(1-3)ピッキングリフト1は、前記距離の測定値を基に、スライド装置4による載荷台5及び作業台6のスライド量を決定し、スライド装置4により、図5のように載荷台5及び作業台6を右方Rへスライドさせる(スライド装置4による収納棚Bに接近するスライド動作)。
【0044】
(1-4)ピッキングリフト1は、昇降装置3により、例えば図7のように載荷台5及び作業台6をピッキング位置K1の高さまで上昇させる(昇降装置3による上昇動作)。
(1-5)作業者Eは、モニタ画面に表示されるピッキング対象の物品Dの型番と個数を確認し、ピッキング作業を行った後、タッチパネルのスイッチに触れる等の操作により、作業完了をピッキングリフト1に知らせる。
(1-6)ピッキングリフト1は、昇降装置3により、載荷台5及び作業台6を下降させる(昇降装置3による下降動作)。
(1-7)ピッキングリフト1は、スライド装置4により、載荷台5及び作業台6を、図5のように右方Rへスライドした位置から、スライドしていない図4の位置まで戻す(スライド装置4による収納棚Bから離反するスライド動作)。
(1-8)ピッキングリフト1は、走行装置2により、地上側制御装置が自動設定した経路を走行し、次の地上側アクセス位置Gまで移動する(走行装置2による移動動作)。
【0045】
上記(1-1)ないし(1-8)の動作において、(1-3)のスライド装置4による収納棚Bに接近するスライド動作、(1-4)の昇降装置3による上昇動作、(1-6)の昇降装置3による下降動作、(1-7)のスライド装置4による収納棚Bから離反するスライド動作、及び(1-8)の走行装置2による移動動作は、作業者Eがタッチパネルの動作確認スイッチに触れる等の確認操作をした後に開始するようにしてもよい。
また、(1-4)の昇降装置3による上昇動作の後に、(1-3)のスライド装置4による収納棚Bに接近するスライド動作を行うようにしてもよい。
また、(1-6)の昇降装置3による下降動作の前に、(1-7)のスライド装置4による収納棚Bから離反するスライド動作を行うようにしてもよい。
【0046】
<棚設備システムにおけるピッキングリフトの動作例2>
図8の平面図において、所定のアクセス高さであるピッキング位置K1及びK2でピッキング作業を行う場合、ピッキングリフト1及び作業者Eは、以下の動作を行う。
【0047】
(2-1)ピッキングリフト1は、隣り合う収納棚B,Bの間の通路Cの略中央を走行して地上側アクセス位置Gに停止する。
(2-2)ピッキングリフト1は、ピッキング位置K1側(右側)の収納棚Bの最下段横架部材J(図1参照)と車体10との距離をレーザセンサ11,11(図4参照)により測定するとともに、ピッキング位置K2側(左側)の収納棚Bの最下段横架部材J(図1参照)と車体10との距離をレーザセンサ11,11(図4参照)により測定する
(2-3)上記(1-3)ないし(1-5)、及び(1-7)の動作を行う。
【0048】
(2-4)ピッキングリフト1は、昇降装置3により、ピッキング位置K2の高さまで載荷台5及び作業台6を上昇又は下降させる(昇降装置3による上昇又は下降動作)。なお、ピッキング位置K1及びK2の高さが同じ場合は、この昇降装置3による上昇又は下降動作は行わない。
(2-5)ピッキングリフト1は、前記距離の測定値を基に、スライド装置4による載荷台5及び作業台6のスライド量を決定し、スライド装置4により、図6のように載荷台5及び作業台6を左方Lへスライドさせる(スライド装置4による収納棚Bに接近するスライド動作)。
(2-6)作業者Eは、モニタ画面に表示されるピッキング位置K2のピッキング対象の物品Dの型番と個数を確認し、ピッキング作業を行った後、タッチパネルのスイッチに触れる等の操作により、作業完了をピッキングリフト1に知らせる。
【0049】
(2-7)ピッキングリフト1は、昇降装置3により、載荷台5及び作業台6を下降させる(昇降装置3による下降動作)。
(2-8)ピッキングリフト1は、スライド装置4により、載荷台5及び作業台6を、図6のように左方Lへスライドした位置から、スライドしていない図4の位置まで戻す(スライド装置4による収納棚Bから離反するスライド動作)。
(2-9)ピッキングリフト1は、走行装置2により、地上側制御装置が自動設定した経路を走行し、次の地上側アクセス位置Gまで移動する(走行装置2による移動動作)。
【0050】
上記(2-1)ないし(2-9)の動作において、(2-4)の昇降装置3による上昇又は下降動作の前に、(2-5)のスライド装置4による収納棚Bに接近するスライド動作を行うようにしてもよい。
また、(2-7)の昇降装置3による下降動作の前に、(2-8)のスライド装置4による収納棚Bから離反するスライド動作を行うようにしてもよい。
【0051】
図8に示す動作例のように、隣り合う収納棚B,Bの間の通路Cの略中央をピッキングリフト1が走行することにより、地上を自動で走行する際におけるピッキングリフト1の走行速度を上げても作業者Eに恐怖心を与えることがなく、ピッキングリフト1が収納棚B,Bに衝突する恐れもない。
その上、ピッキングリフト1を収納棚Bに近づけるように走行装置2を制御する必要がなく、載荷台5及び作業台6を左方L及び右方Rの両方へスライドできるピッキングリフト1により隣り合う収納棚B,Bの両方にアクセスできる。
よって、ピッキング作業の効率を大幅に高めることができる。
【0052】
<地上側制御装置による最適経路の算出方法>
図9の平面図は、地上側制御装置による最適経路の算出方法を説明するためのものである。
【0053】
(他のピッキングリフトを考慮する必要がない場合)
これは、一台のピッキングリフトのみを運行させている場合、又は二台以上のピッキングリフトを運行させているが走行経路で他のピッキングリフトと出会わない場合が相当する。
【0054】
図9において、ピッキングリフト1Bはなく、一台のピッキングリフト1Aの運行に際し、他のピッキングリフトを考慮する必要がない場合、地上側制御装置は、ピッキング作業の内容を規定したピッキングリストと地図(特定のピッキング位置が把握できる収納棚の地図)を比較し、ピッキング対象の全ての収納棚Bにアクセスし、かつ最短の経路となるように経路を生成する。
例えば、ピッキングリフト1Aが図9に示すピッキング位置P1,P2,P3にアクセスする必要がある場合、ピッキングリフト1Aは、先ず、スタート地点から最も近いピッキング位置P1にアクセスし、次に、ピッキング位置P1に最も近いピッキング位置P2にアクセスし、次に、残りのピッキング位置P3にアクセスする順番とする。
そのような最適経路を、地上側制御装置は、ピッキングリフト1Aの走行経路として自動設定する。
【0055】
(他のピッキングリフトを考慮する必要がある場合)
これは、二台以上のピッキングリフトを運行させていて走行経路で他のピッキングリフトと出会う場合が相当する。
【0056】
図9において、ピッキングリフト1Bの走行経路で他のピッキングリフト1Aと出会う場合、地上側制御装置は、ピッキングリフト1Bのトータルのピッキング時間(全てのピッキング位置にアクセスする時間)が最小になるような経路を生成する。
例えば、ピッキングリフト1Bがピッキング位置Q1,Q2,Q3にアクセスする必要がある場合、他のピッキングリフト1Aが作業している経路は後回しにし、他のピッキングリフト1Aがいない経路を優先する。
【0057】
すなわち、ピッキングリフト1Bは、先ず、他のピッキングリフト1Aが作業している収納棚Bにあるピッキング位置Q3は後回しにし、他のピッキングリフト1Aがいない経路からアクセスできるピッキング位置Q1にアクセスし、次に、他のピッキングリフト1Aがいない経路からアクセスできるピッキング位置Q2にアクセスし、次に、残りのピッキング位置Q3にアクセスする順番とする。
あるいは、ピッキングリフト1Bは、先ず、他のピッキングリフト1Aがいない経路からアクセスできるピッキング位置Q2にアクセスし、次に、他のピッキングリフト1Aがいない経路からアクセスできるピッキング位置Q1にアクセスし、次に、残りのピッキング位置Q3にアクセスする順番とする。
それらのような最適経路を、地上側制御装置は、ピッキングリフト1Bの走行経路として自動設定する。
【0058】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1A,1B ピッキングリフト
2 走行装置
2A 駆動操舵輪
2B 従動輪
3 昇降装置
3A 支持部
4 スライド装置
4A 連結部
5 載荷台
5A 車輪受け
6 作業台
7 油圧シリンダ
8 ケージ
8A 扉
9 ピッキング台車
10 車体
11 レーザセンサ(収納棚との距離を測定するセンサ)
12 磁気センサ
13 2次元コード読み取りセンサ
14 エッジスイッチ
15 扉開閉装置
16 リンク機構
A 棚設備
B 収納棚
C 通路
D 物品
E 作業者
F 収納棚のアクセス面
G 地上側アクセス位置
H アクセス高さ
I 直線走行方向
J 収納棚の最下段横架部材
K1,K2 ピッキング位置
L 左方
M マスト
P1,P2,P3,Q1,Q2,Q3 ピッキング位置
R 右方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9