IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7099194シート後処理装置および画像形成システム
<>
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図1
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図2
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図3
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図4
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図5
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図6
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図7
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図8
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図9
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図10
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図11
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図12
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図13
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図14
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図15
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図16
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図17
  • 特許-シート後処理装置および画像形成システム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】シート後処理装置および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/40 20060101AFI20220705BHJP
   B65H 31/36 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B65H29/40
B65H31/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018163021
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033168
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 辰巳
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-241029(JP,A)
【文献】特開平1-053984(JP,A)
【文献】特開2018-135195(JP,A)
【文献】特開2004-284716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025456(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0102115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/38
B65H 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積層配置される処理トレイと、
前記処理トレイに積層配置される前記シートの搬送方向の先端部側および後端部側を整合する縦整合部材と、
前記処理トレイに積載された前記シートを上方側から押えるための、シート押え部材と、を備え、
前記縦整合部材は、
前記処理トレイ上の前記シートの積層枚数が増加するにつれて前記シート押え部材が前記シートに発生させる搬送抵抗の増加割合に連動して、前記縦整合部材により前記シートに発生させる搬送力の増加割合を増加させる、シート後処理装置。
【請求項2】
前記縦整合部材は、
回転軸と、
前記回転軸に対して放射状に設けられ、前記回転軸とともに回転する可撓性のパドルと、
前記回転軸の回転方向に対して前記パドルの後流側に、前記回転軸に対して放射状に設けられ、前記回転軸とともに回転する突起状部と、を含み、
前記パドルの先端部から前記回転軸の中心までの距離の方が、前記突起状部の先端部から前記回転軸の中心までの距離の方が長く設けられ、
前記突起状部は、前記パドルが前記突起状部側に向けて撓むための空間が設けられるように、前記パドルに対して配置されている、請求項1に記載のシート後処理装置。
【請求項3】
前記パドルは、2以上設けられ、
前記突起状部は、前記パドルと同数設けられ、
前記突起状部の先端部から前記回転軸の中心までの距離は、全て同じである、請求項2に記載のシート後処理装置。
【請求項4】
前記突起状部は剛体である、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載のシート後処理装置。
【請求項5】
前記突起状部は、少なくともその先端部は弾性部材である、請求項2または請求項3に記載のシート後処理装置。
【請求項6】
画像形成装置と、前記画像形成装置によって画像が形成されたシートに対して後処理を施すシート後処理装置とを備える、画像形成システムであって、
前記シート後処理装置は、請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート後処理装置である、画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート後処理装置および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
積載されたシートを、搬送方向および搬送方向と垂直な方向に整合して、穴明け、綴じなどの処理を行なうシート後処理装置において、積載されたシートの束を搬送方向に整合する場合、可撓性部材を有する収容パドルの回転によって、シートの束をエンドガイドに押し付ける方向に搬送する方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
シートのカール特性、シートの剛性などのシートの物性により、シートの積載枚数が増加するにつれてシートの束が膨らみ、シートの束の上側に設けられたガイド部材と接触するおそれもあることから、さまざまな形態のシート押え部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004―284716号公報
【文献】特開2007―223701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
収容パドルの回転を用いたシートの搬送の場合、シートの積載枚数が増加するにつれて、収容パドルの撓みが増加するため、シートとの接触面積が増加して搬送力が増加する。
【0006】
しかし、シートの積載枚数が増加すると、エンドガイド側の上方に設けられたシート押え部材が持ち上げられるため、シート押え部材によるシートへの押圧力が増加する。その結果、シートとシート押え部材との間に発生する摩擦力が増加し、搬送抵抗が増加する結果、シート搬送を妨げることとなる。
【0007】
通常、シート押え部材は、シートの積載枚数が少ない場合には不要であることから、ある一定の枚数又はある一定の積載高さまでは機能させず、それを超えると機能するような構成が採用されている。
【0008】
そのため搬送抵抗は、シートの積載枚数またはシートの積載高さに対して線形に増加せず、ある一定の枚数またはある一定の積載高さを超えると急激に増加する。一方、収容パドルの搬送力は略線形に増加していく。
【0009】
ある一定の枚数、または、ある一定の積載高さを超えると、収容パドルの搬送力と、シート押え部材による搬送抵抗の差は小さくなる。その結果、収容パドルの搬送力がシート押え部材による搬送抵抗に負け、収容パドルによりシートを搬送できなくなるおそれがある。
【0010】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シートの積層枚数が一定の積載高さを超えた場合であっても、収容パドルの搬送力がシート押え部材による搬送抵抗に負けることなく、収容パドルによりシートを搬送することができる構成を備えるシート後処理装置および画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このシート後処理装置においては、シートが積層配置される処理トレイと、上記処理トレイに積層配置される上記シートの搬送方向の先端部側および後端部側を整合する縦整合部材と、上記処理トレイに積載された上記シートを上方側から押えるための、シート押え部材とを備える。
【0012】
上記縦整合部材は、上記処理トレイ上の上記シートの積層枚数が増加するにつれて上記シート押え部材が上記シートに発生させる搬送抵抗の増加割合に連動して、上記縦整合部材により上記シートに発生させる搬送力の増加割合を増加させる。
【0013】
他の形態においては、上記縦整合部材は、回転軸と、上記回転軸に対して放射状に設けられ、上記回転軸とともに回転する可撓性のパドルと、上記回転軸の回転方向に対して上記パドルの後流側に、上記回転軸に対して放射状に設けられ、上記回転軸とともに回転する突起状部と、を含み、上記パドルの先端部から上記回転軸の中心までの距離の方が、上記突起状部の先端部から上記回転軸の中心までの距離の方が長く設けられ、上記突起状部は、上記パドルが上記突起状部側に向けて撓むための空間が設けられるように、上記パドルに対して配置されている。
【0014】
他の形態においては、上記パドルは、2以上設けられ、上記突起状部は、上記パドルと同数設けられ、上記突起状部の先端部から上記回転軸の中心までの距離は、全て同じである。
【0015】
他の形態においては、上記突起状部は剛体である。
他の形態においては、上記突起状部は、少なくともその先端部は弾性部材である。
【0016】
この画像形成システムにおいては、画像形成装置と、上記画像形成装置によって画像が形成されたシートに対して後処理を施すシート後処理装置とを備える。上記シート後処理装置は、上述のいずれかに記載のシート後処理装置である。
【発明の効果】
【0017】
このシート後処理装置および画像形成装置によれば、シートの積層枚数が一定の積載高さを超えた場合であっても、収容パドルの搬送力がシート押え部材による搬送抵抗に負けることなく、収容パドルによりシートを搬送することができる構成を備えるシート後処理装置および画像形成システムの提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1の画像形成システムの全体構成を示す図である。
図2】関連技術の収容パドルのみの全体構成を示す斜視図である。
図3図3は、図2中のIII-III矢視に相当する断面図である。
図4】関連技術のシートスタッカーへのシート積層状態を示す第1工程図である。
図5】関連技術のシートスタッカーへのシート積層状態を示す第2工程図である。
図6】関連技術のシートスタッカーへのシート積層状態を示す第3工程図である。
図7】関連技術のシートスタッカーへのシート積層状態を示す第4工程図である。
図8】関連技術の収容パドルによるシートへの搬送力の変化と、シート押え部材によるシートへの搬送抵抗の変化との関係を示す図である。
図9】実施の形態1の収容パドルによるシートへの搬送力の変化と、シート押え部材によるシートへの搬送抵抗の変化との関係を示す図である。
図10】実施の形態1の収容パドルのみの全体構成を示す斜視図である。
図11】実施の形態1の収容パドルを用いた場合の作用効果を示す第1模式図である。
図12】実施の形態1の収容パドルを用いた場合の作用効果を示す第2模式図である。
図13】実施の形態1の収容パドルを用いた場合の作用効果を示す第3模式図である。
図14】実施の形態1の収容パドルを用いた場合の作用効果を示す第4模式図である。
図15】実施の形態2の収容パドルのみの構成を示す断面図である。
図16】実施の形態2の収容パドルを用いた場合の作用効果を示す模式図である。
図17】実施の形態3の収容パドルを平面視した図である。
図18】実施の形態3の収容パドルによるシートへの搬送力の変化と、シート押え部材によるシートへの搬送抵抗の変化との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照しながら、各実施の形態のシート後処理装置および画像形成装置について説明する。以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している箇所がある。
【0020】
本実施の形態は、画像形成システム1に関し、この画像形成システム1は、電子写真方式の画像形成装置2と、この画像形成装置2により画像が形成されたシートに対して後処理を行なうシート後処理装置10とを備えている。画像形成装置2は、カラープリンター、モノクロプリンター、または、ファックスであってもよい。モノクロプリンタ、カラープリンタおよびファックスの複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の画像形成システム1の全体構成を示す図である。図1に示す画像形成システム1は、画像形成装置2と、画像形成装置2によって画像が形成されたシート(記録材に相当する)に対して後処理を施すシート後処理装置10とを備えている。本明細書において、上下方向および左右方向は、図1を基準とし、図1に示すシート後処理装置10の紙面に対する手前側を前方とし、奥側を後方とする。
【0022】
画像形成装置2は、例えば、電子写真方式によってカラー画像を形成する複写機である。画像形成装置2は、読み取り部3と、プリント部4とを有している。読み取り部3は、原稿の画像を読み取って画像データとしてプリント部4へ供給する。プリント部4は、感光体、露光装置、現像器、中間転写ベルト等の公知の画像形成部品を有し、これらの画像形成部品により、内蔵する給紙部から供給されるシートに画像を形成する。
【0023】
シート後処理装置10は、後処理として、画像形成装置2によって画像が形成されたシートを複数枚重ねて、穴明け、ステープル打ち等を行なう。シート後処理装置10は、搬送部11と、後処理部20と、サブトレイ70と、メイントレイ80と、制御部90とを備える。
【0024】
搬送部11は、プリント部4から排出されたシートを更に下流側に搬送する。搬送部11は、画像形成装置2に設けられていてもよい。後処理部20は、後処理(穴明け、ステープル打ち等)を行なう。サブトレイ70は、後処理が施されることなく後処理部20から排出されるシートを受ける部分である。メイントレイ80は、後処理が施されて後処理部20から排出されるシートを受ける。制御部90は、シート後処理装置10の全体を制御する部分である。制御部90は、例えば後処理部20内に設けられている。制御部90は、画像形成装置2の制御部と一体に設けられても良い。
【0025】
搬送部11は、一対の入口ローラー12と、一対の中間ローラー13と、一対の出口ローラー14と、を備えている。入口ローラー12は、プリント部4から排出される画像形成済み(印刷済み)のシートを受け取る。中間ローラー13は、シートを下流側へと搬送する。出口ローラー14は、後処理部20に向けてシートを搬送する。
【0026】
後処理部20は、一対の第1搬送ローラー21と、一対の第2搬送ローラー22と、一対の第3搬送ローラー23と、一対の第4搬送ローラー24とを備えている。第1搬送ローラー21は、搬送部11によって搬送されて来たシートを受け取るローラーである。第2搬送ローラー22は、第1搬送ローラー21から送られたシートを後述するシートスタッカー30に向けて排出するローラーである。第3搬送ローラー23および第4搬送ローラー24は、第1搬送ローラー21から送られたシートをサブトレイ70へ搬送するローラーである。
【0027】
後処理部20は、第1搬送ローラー21の下流であって第2搬送ローラー22および第3搬送ローラー23の上流に、経路切換部材25を有している。経路切換部材25は、第1搬送ローラー21で受け取ったシートを第2搬送ローラー22へ送るか、第3搬送ローラー23へ送るかを切り替える。
【0028】
後処理部20は、シートスタッカー30と、整合板31と、収容パドル32と、シート押え部材400と、を備えている。シートスタッカー30は、第2搬送ローラー22により搬送されたシートを複数枚重ねて収容する。シートスタッカー30は、処理トレイとして機能する。
【0029】
整合板31は、シートスタッカー30に搬送された複数枚のシートが互いにずれないよう整える。収容パドル32は、回転することより、シートスタッカー30に搬送されたシートの端部をシートスタッカー30のエンドガイド30aに向けて押し込む。エンドガイド30aは、シートのストッパーの役割を有する。シート押え部材400は、第1シート押え部材410、第2シート押え部材420、および、第3シート押え部材430を含む。
【0030】
第1シート押え部材410、第2シート押え部材420、および、第3シート押え部材430は、それぞれシートスタッカー30の積層されるシートの厚みおよびシートの幅(図1の紙面垂直方向)に応じてシートに当接して、積層されるシートを上面側から押え付ける。
【0031】
図2を参照して、関連技術としての収容パドル32の構成について説明する。図2は、関連技術の収容パドル32のみの全体構成を示す斜視図である。収容パドル32は、シートスタッカー30に積層配置されるシートS1の搬送方向(縦方向)の先端部側および後端部側を整合する(揃える)縦整合装置として機能する。
【0032】
収容パドル32は、回転軸32a、第1パドル310、第1パドル310の左右に設けられる第2パドル320を有する。第1パドル310および第2パドル320は、回転軸32aに固定され、回転軸32aの回転に伴ない、回転軸32aの周りを回転する。
【0033】
第1パドル310は、二つの板状のパドル312aを有し、パドル312aは、パドルベース312bに固定されている。パドルベース312bは、回転軸32aに固定されている。パドル312aは、弾性変形が可能なゴム、樹脂、エラストマー等の弾性部材で構成されている。
【0034】
第2パドル320の基本的構成は、第1パドル310と同じである。第2パドル320は、二つの板状のパドル322aを有し、パドル322aは、パドルベース322bに固定されている。パドルベース322bは、回転軸32aに固定されている。パドル322aは、弾性変形が可能なゴム、樹脂、エラストマー等の弾性部材で構成されている。
【0035】
図3を参照して、シートスタッカー30の上方に設けられる収容パドル32およびシート押え部材400について説明する。図3は、図2中のIII-III矢視に相当する断面図である。
【0036】
シート押え部材400は、シートスタッカー30のエンドガイド30a側の上方に配置されている。シート押え部材400は、シートスタッカー30に積層載置されるシートの上面側から押え付ける第1シート押え部材410、第2シート押え部材420、および、第3シート押え部材430を有している。
【0037】
図4から図7を参照して、関連技術のシート後処理装置10の後処理部20におけるシートスタッカー30へのシートの搬送および積層状態について説明する。図4から図7は、シートスタッカー30へのシート積層状態を示す第1から第4工程図である。図4から図7は、図2中のIII-III矢視に相当する断面図である。
【0038】
図4を参照して、画像形成装置2によって画像が形成されたシートS1が、第2搬送ローラー22によりシートスタッカー30へ搬送される。図5を参照して、第2搬送ローラー22により搬出されたシートS1は、一旦、左側に排出される。図6を参照して、収容パドル32が、反時計回転方向に回転し、シートS1を、シートスタッカー30のエンドガイド30a側(図中矢印F1方向)に搬送力F1が与えられる。シートS1の上面側からは、シート押え部材400により押圧力が与えられる。これにより、シートスタッカー30が、安定的に積層配置される。この押圧力は、シートS1に対する搬送抵抗R1となる。
【0039】
その後、シートS1が、第2搬送ローラー22によりシートスタッカー30へ搬送されると、収容パドル32が、反時計回転方向に回転し、シートS1をシートスタッカー30のエンドガイド30a側に搬送する。
【0040】
図7に示すように、シートスタッカー30に積層配置されたシートの積層高さが高くなると、パドル322aは撓みを大きくしながら、シートS1に搬送力F1を与えながら、シートS1をシートスタッカー30のエンドガイド30a側に搬送する。
【0041】
シート押え部材400においても、積層配置されたシートS1の積層高さが一定以上高くなると、第1シート押え部材410、第2シート押え部材420、および、第3シート押え部材430が、シートS1に搬送抵抗R1を与える。
【0042】
図8および図9を参照して、収容パドル32によるシートS1への搬送力F1の変化と、シート押え部材400によるシートS1への搬送抵抗R1の変化との関係について考察する。
【0043】
図8は、関連技術の収容パドル32によるシートS1への搬送力F1の変化と、シート押え部材400によるシートS1への搬送抵抗R1の変化との関係を示す図、図9は、本実施の形態の収容パドル32によるシートS1への搬送力F1の変化と、シート押え部材400によるシートS1への搬送抵抗R1の変化との関係を示す図である。両図ともに、縦軸に搬送力F1および搬送抵抗R1の変化を示し、横軸にシートS1の枚数又は積層高さの変化を示している。
【0044】
シートS1の枚数又は積層高さが増加すると、徐々に収容パドル32の撓みが大きくなることから、搬送力F1も徐々に大きくなる。よって、収容パドル32によるシートS1への搬送力F1は、図8中に示すように線形に増加する。
【0045】
他方、シート押え部材400のシートS1への搬送抵抗R1は、シートS1の積層高さが一定以上高くなると、シート押え部材400への当接を開始することから、シートS1の積層高さが一定の積載枚数に達するまでは増加しない。
【0046】
シート押え部材400は、シートS1の積載高さが所定高さ以下になるようにシートS1を押え付けるため、積載枚数が増加するにつれて、押圧力を大きくする必要がある。シート押え部材400には、一般的にフィルム、バネの弾性を用いる。
【0047】
シート押え部材400において、一定の積載枚数(一定の高さ)に達した後(ポイントP1以降)は、搬送抵抗R1は急激に上昇する。搬送力F1と搬送抵抗R1の増加率(グラフの傾き)は、搬送抵抗R1の方が大きいことから、シートS1の積載枚数が増えるにつれて、搬送力F1と搬送抵抗R1との差は小さくなる。
【0048】
搬送力F1と搬送抵抗R1との差がゼロに近づくと、または、搬送抵抗R1の方が大きくなると、搬送抵抗R1に対する収容パドル32によるシートS1への搬送力F1が弱くなり、シートS1をエンドガイド30a側に搬送することができない状態(スリップが発生する状態)になる。この状態になると、シートスタッカー30の上でのシートS1の整合不良が発生する。
【0049】
図9に示すように、シートスタッカー30上のシートS1の積層枚数が増加するにつれてシート押え部材400がシートS1に発生させる搬送抵抗R1の増加割合に連動して、収容パドル32によりシートS1に発生させる搬送力F1の増加割合を増加させるようにすれば、搬送力F1と搬送抵抗R1との差がゼロに近づくことは無くなり、上述したスリップが発生する状態を回避することができる。
【0050】
(実施の形態1:収容パドル32A)
図10から図14を参照して、実施の形態1のシート後処理装置および画像形成システムについて説明する。この実施の形態1においては、基本的なシート後処理装置および画像形成システムは、図1に示すシート後処理装置および画像形成システムと同じである。相違点は、収容パドルの構成にあることから、ここでは、実施の形態1の収容パドル32Aの構成について詳細に説明する。
【0051】
図10は、実施の形態1の収容パドル32Aのみの全体構成を示す斜視図である。図11から図14は、収容パドル32Aを用いた場合の作用効果を示す第1から第4模式図である。図11から図14は、図2中のIII-III矢視に相当する断面図である。
【0052】
図10を参照して、収容パドル32Aは、図2で説明した収容パドル32の構成と同様に、回転軸32a、第1パドル310、第1パドル310の左右に設けられる2つの第2パドル320を有する。第1パドル310および第2パドル320は、回転軸32aに固定され、回転軸32aの回転に伴ない、回転軸32aの周りを回転する。
【0053】
第1パドル310は、二つの板状のパドル312aを有し、パドル312aは、パドルベース312bに固定されている。パドルベース312bは、回転軸32aに固定されている。パドル312aは、弾性変形が可能なゴム、樹脂、エラストマー等の弾性部材で構成されている。
【0054】
第2パドル320の基本的構成は、第1パドル310と同じである。第2パドル320は、二つの板状のパドル322aを有し、パドル322aは、パドルベース322bに固定されている。パドルベース322bは、回転軸32aに固定されている。パドル322aは、弾性変形が可能なゴム、樹脂、エラストマー等の弾性部材で構成されている。
【0055】
第1パドル310と第2パドル320との相違点は、パドル312aとパドル322aとの長さの相違にある。第1パドル310は、搬送されるシートS1の中央に配置されることから、大きな搬送力F1を発生させるためにパドル312aは、パドル322aよりも長く設けられている。一方、第1パドル310の両側に配置される第2パドル320は、搬送されるシートS1の回転(スキュー)を防止する観点から、パドル322aは、パドル312aよりも短く設けられている。
【0056】
図10および図11を参照して、この収容パドル32Aは、突起状部324が設けられている。この突起状部324は、樹脂部材から構成されている。突起状部324は、回転軸32aの回転方向Z1に対してパドル322aの後流側に、回転軸32aに対して放射状となるように設けられている。突起状部324は、回転軸32aの延びる方向に所定の厚みを有している。この厚みの幅は、パドル322aの幅と略同一である。突起状部324は、2つのパドル322aのそれぞれの後流側に設けられるように樹脂により一体成型されている。
【0057】
パドル322aの先端部から回転軸32aの中心までの距離r1の方が、突起状部324の先端部から回転軸32aの中心までの距離r2よりも長く設けられている。突起状部324は、弾性部材からなるパドル322aが突起状部324側に向けて撓むための空間A1が設けられるように、パドル322aに対して所定距離隔てて配置されている。
【0058】
次に、図11から図14を参照して、収容パドル32Aのパドル322aによる作用効果について説明する。図11を参照して、シートS1が搬送されていない状態では、パドル322aはシートS1に当接しないため、回転方向Z1の後流側には撓まない。
【0059】
図12を参照して、シートS1が搬送され、パドル322aがシートS1に当接すると、パドル322aの先端部側は、回転方向Z1の後流側に撓む。この際、パドル322aから見て後流側の突起状部324との間には空間A1が設けられていることから、パドル322aは自由に後流側に撓むこととなる。これにより、シートS1を搬送するための搬送力F1を生じさせる。
【0060】
図13を参照して、シートスタッカー30へのシートS1の積載量が多くなると、シートS1の束の積層高さが高くなる。シートS1が熱等により上方に湾曲することによっても、シートS1の束の積層高さが高くなる。この場合には、パドル322aは撓むことが出来なくなる代わりに、パドル322aが突起状部324に巻き付くようになる。その結果、通常のゴムローラーと同じ状態となり、疑似ローラーとしてシートS1が下方に押え付けられながら、シートS1の反発力に基づき搬送力F1がシートS1に与えることとなる。
【0061】
図14を参照して、さらに、シートスタッカー30へのシートS1の積載量が多くなると、突起状部324は、早い段階からシートS1に当接することになるため、突起状部324の表面に沿ってパドル322aが巻き付く。その結果、より高い搬送力F1をシートS1に与えることとなる。
【0062】
このように本実施の形態の収容パドル32Aを用いた場合には、図9に示すように、シートスタッカー30上のシートS1の積層枚数が増加するにつれてシート押え部材400がシートS1に発生させる搬送抵抗R1の増加割合に連動して、収容パドル32によりシートS1に発生させる搬送力F1の増加割合を増加させるようにすれば、搬送力F1と搬送抵抗R1との差がゼロに近づくことは無くなり、上述したスリップが発生する状態を回避することができる。
【0063】
特に、搬送抵抗R1が急峻に増加するポイントP1(シート押え部材400が機能を開始するポイント)に合せて、突起状部324がシートS1に当接させるようにすることで、搬送力F1もポイントP1から搬送抵抗R1の増加割合と同じように増加させることができる。
【0064】
本実施の形態では、パドル322aは、2つ設けられ、突起状部324は、パドル322aと同数設けられ、突起状部324の先端部から回転軸32aの中心までの距離は、全て同じである。これにより、パドル322aが突起状部324に巻き付いた場合の、突起状部324の先端により形成される外形は同軸の円周となり、疑似ローラーとしての外径が均一となり、搬送力の均一化をはかることが可能となる。
【0065】
さらに、画像形成装置2内の定着装置を通過した際に、シートに発生するカールや、シートが持っている剛度などの物性によって、シートS1のシートスタッカー30への積載時にはシートS1は上方に向けて膨らんでいる。その膨らみを突起状部324で潰すことで、シートS1の反発力(元の状態に戻ろうとする力)を発生させる。この反発力によっても、搬送力F1を発生させている。よって、カールしたシートS1の膨らみを確実に潰すためには、突起状部324は樹脂のような硬い材料で構成するとよい。
【0066】
(実施の形態2:収容パドル32B)
本実施の形態の収容パドル32Bについて、図15および図16を参照して説明する。図15は、実施の形態2の収容パドル32Bのみの構成を示す断面図、図16は、収容パドル32Bを用いた場合の作用効果を示す模式図である。図15および図16は、図2中のIII-III矢視に相当する断面図である。
【0067】
シート後処理装置および画像形成システムの基本的構成は、実施の形態1と同じである。相違点は、収容パドルの形態にある。特に、収容パドルに採用された突起状部の構造が実施の形態1の収容パドルの形態と異なってる。
【0068】
図15を参照して、本実施の形態の収容パドル32Bの突起状部324は、樹脂製の剛性の高いベース部324aと、このベース部324aの先端側に設けられ、シートS1が当接することにより弾性変形する、弾性変形部324bとを有する。弾性変形部324bは、例えば、スポンジのような柔らかい材質で構成されている。
【0069】
本実施の形態の収容パドル32Bの突起状部324によれば、図16に示すように、シートS1の積載枚数が多い場合も、パドル322aが突起状部324に巻き付くのは実施の形態1と同じである。しかし、実施の形態1では、シートS1の膨らみを潰すことで、主として搬送力F1を発生させたが(図13参照)、本実施の形態では、弾性変形部324bを潰すことで反発力を発生させ、その反発力を利用して搬送力F1を発生させている。
【0070】
(実施の形態3:第2パドル320の配置)
図17を参照して、実施の形態3のシート後処理装置および画像形成システムについて説明する。この実施の形態3においては、第2パドル320の配置に特徴があり、他の構成は、上記各実施の形態と同じである。図17は、収容パドル32を平面視した図である。
【0071】
上記各実施の形態の第2パドル320は、第1パドル310の両側にそれぞれ設けられ、合計2カ所に配置されている。本実施の形態では、第1パドル310の両側にそれぞれ2カ所設けられ、合計4カ所に配置されている。
【0072】
幅の広いシートS1(図17中のW1で示すシート)は、幅の狭いシートS1(図17中のW2で示すシート)に比べて、通常は、シート押え部材400と接触する幅が広くなるため、搬送抵抗R1が大きくなる。従って、搬送力F1もそれに応じて増加させる必要がある。本実施の形態に示すように、第2パドル320を、幅の狭いシートには2ヶ所、幅の広いシートには4カ所に設けて、それぞれ作用するようにする。
【0073】
これにより、図18に示すように、搬送抵抗R1の増加割合に応じて搬送力F1を増加させることができるため、複数種類のシートS1の搬送の最適化を図ることが可能となる。図18は、図8および図9と同様に、収容パドルによるシートへの搬送力の変化と、シート押え部材によるシートへの搬送抵抗の変化との関係を示す図である。
【0074】
以上、本実施の形態のシート後処理装置および画像形成システムによれば、処理トレイの積載枚数が増えて搬送抵抗が増加しても、それに応じて搬送力を増加させることで、整合不良の発生しないシート後処理装置および画像形成システムを提供することが可能となる。
【0075】
第1パドル310および第2パドル320を設ける数量、および、位置については、上記各実施の形態の数量には限定されず、シート後処理装置に要求される仕様に応じて、適宜変更することが可能である。
【0076】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 画像形成システム、2 画像形成装置、3 読み取り部、4 プリント部、10 シート後処理装置、11 搬送部、12 入口ローラー、13 中間ローラー、14 出口ローラー、20 後処理部、21 第1搬送ローラー、22 第2搬送ローラー、23 第3搬送ローラー、24 第4搬送ローラー、25 経路切換部材、30 シートスタッカー、30a エンドガイド、31 整合板、32,32A,32B 収容パドル、32a 回転軸、70 サブトレイ、80 メイントレイ、90 制御部、310 第1パドル、312a,322a パドル、312b,322b パドルベース、320 第2パドル、324 突起状部、324a ベース部、324b 弾性変形部、400 シート押え部材、410 第1シート押え部材、420 第2シート押え部材、430 第3シート押え部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18