(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/29 20180101AFI20220705BHJP
F21S 41/24 20180101ALI20220705BHJP
F21S 45/48 20180101ALI20220705BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20220705BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20220705BHJP
F21V 29/504 20150101ALI20220705BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20220705BHJP
F21W 102/18 20180101ALN20220705BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220705BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20220705BHJP
【FI】
F21S41/29
F21S41/24
F21S45/48
F21S41/143
F21S41/16
F21V29/504
F21W102:13
F21W102:18
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2018163037
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100214226
【氏名又は名称】青木 博文
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 秀丸
(72)【発明者】
【氏名】高木 駿太
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212068(JP,A)
【文献】特開2013-200992(JP,A)
【文献】特開2015-176745(JP,A)
【文献】特開2017-139145(JP,A)
【文献】特開2014-067715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/29
F21S 41/24
F21S 45/48
F21S 41/143
F21S 41/16
F21V 29/504
F21W 102/13
F21W 102/18
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と前記光源からの光を配光制御する光学制御部材とヒートシンクとを備えた車両用灯具であって、
前記光学制御部材は、
前記配光制御を行う複合光学レンズと、
前記複合光学レンズに一体形成された複数の脚部と、を備え、
前記複合光学レンズは、
光を入射させる入射面と、
前記入射面から入射した光を前方側に照射する出射面と、
前記入射面と前記出射面の間に形成されたシェード部と、を備え、
前記脚部が、それぞれ前記複合光学レンズの前記出射面と前記シェード部の頂線の間の位置に繋がっており、
前記脚部は、
一端が前記複合光学レンズに繋がった支持部と、
前記支持部の他端側に繋がり、前記光学制御部材を固定するための固定部と、を備え、
前記ヒートシンクは、それぞれの前記固定部に対応して設けられた固定機構を備え、
それぞれの前記固定機構は、
前記光学制御部材の位置決めを行う位置決めピンと、
前記光学制御部材を取り付けるネジを螺合させるネジ螺合孔と、を備え、
それぞれの前記固定部は、
前記位置決めピンに対応した第1貫通孔と、
前記ネジ螺合孔に対応した第2貫通孔と、を備え、
前記脚部は、前記複合光学レンズのレンズ光軸を挟んで対向する位置に一対設けられ、
前記第1貫通孔は、前記第1貫通孔の中心間を結ぶ直線が前記レンズ光軸上を通るように前記固定部に形成され、
前記光学制御部材は、前記光源の発光中心に前記レンズ光軸がほぼ一致するように設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記脚部は、前記複合光学レンズの車両幅方向の側面に繋がるように一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記車両用灯具は、前記光源を有する光源装置を備え、
前記光源装置は、
前記光源が設けられ、前記光源と前記ヒートシンクの間に位置する熱伝達部材と、
前記光源と外部コネクタとの間の電気的な接続を行う電気配線を内蔵する絶縁樹脂で形成されたコネクタ接続部材と、を備え、
前記熱伝達部材及び前記コネクタ接続部材は、
前記位置決めピンに対応した貫通孔と、
前記ネジ螺合孔に対応した貫通孔と、を備え、
前記光学制御部材は、前記脚部が前記コネクタ接続部材上に設置された状態で、前記ネジによって、前記光源装置と共に前記ヒートシンクに固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
光源と前記光源からの光を配光制御する光学制御部材を備えた車両用灯具であって、
前記光学制御部材は、
前記配光制御を行う複合光学レンズと、
前記複合光学レンズに一体形成された複数の脚部と、を備え、
前記複合光学レンズは、
光を入射させる入射面と、
前記入射面から入射した光を前方側に照射する出射面と、
前記入射面と前記出射面の間に形成されたシェード部と、を備え、
前記脚部が、それぞれ前記複合光学レンズの前記出射面と前記シェード部の頂線の間の位置に繋がっており、
前記複合光学レンズは、
前記頂線より前記入射面側の上側に形成され、第1拡散配光パターンを形成する光を前記出射面に向けて反射する第1リフレクタ面と、
前記頂線より前記入射面側の下側に形成され、集光配光パターンを形成する光を前記出射面に向けて反射する第2リフレクタ面と、を備えていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
光源と前記光源からの光を配光制御する光学制御部材を備えた車両用灯具であって、
前記光学制御部材は、
前記配光制御を行う複合光学レンズと、
前記複合光学レンズに一体形成された複数の脚部と、を備え、
前記複合光学レンズは、
光を入射させる入射面と、
前記入射面から入射した光を前方側に照射する出射面と、
前記入射面と前記出射面の間に形成されたシェード部と、を備え、
前記脚部が、それぞれ前記複合光学レンズの前記出射面と前記シェード部の頂線の間の位置に繋がっており、
前記シェード部は、前記頂線から前方側に傾斜する前方側傾斜面を有しており、
前記複合光学レンズには、前記光源からの直射光の一部を前記前方側傾斜面の少なくとも一部に向けて反射する反射面が形成されており、
前記反射面で反射され、更に、前記前方側傾斜面で反射された光が、オーバーヘッド配光として前記出射面から照射されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
光源と前記光源からの光を配光制御する光学制御部材を備えた車両用灯具であって、
前記光学制御部材は、
前記配光制御を行う複合光学レンズと、
前記複合光学レンズに一体形成された複数の脚部と、を備え、
前記複合光学レンズは、
光を入射させる入射面と、
前記入射面から入射した光を前方側に照射する出射面と、
前記入射面と前記出射面の間に形成されたシェード部と、を備え、
前記脚部が、それぞれ前記複合光学レンズの前記出射面と前記シェード部の頂線の間の位置に繋がっており、
前記シェード部は、前記頂線から後方側に傾斜する後方側傾斜面を有しており、
前記複合光学レンズは、前記出射面に向けて前記出射面で配光制御する予定でない反射光を反射する、前記後方側傾斜面で反射された光が、直接、照射される部位に形成された光散乱部を備えていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項7】
前記複合光学レンズは、重心が前記出射面と前記シェード部の頂線の間に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記光学制御部材は、前記複合光学レンズを避けるように形成された前記脚部間を繋ぐ補強部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光源ユニットに反射鏡が一体的に形成されたレンズ保持部が取り付けられ、そのレンズ保持部にレンズを保持させるように取り付けた車両用灯具が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レンズ保持部にレンズを保持させるように取り付ける態様の場合、光源ユニットの光源に対するレンズ保持部の位置ズレに加え、レンズ保持部に対するレンズの位置ズレが起るため、光源に対するレンズの位置精度が悪くなるという問題がある。
【0005】
また、レンズ保持部に対して反射鏡を一体的に設ける形態の場合、全体的に見てサイズが大きくなるという問題もある。
【0006】
一方、レンズにシェード部やリフレクタ面を一体的に形成した複合光学レンズを用いるとともに、その複合光学レンズに一体的に固定のための脚部を形成することで位置精度の向上と小型化を共に実現させ、上記のような問題を解決することが考えられる。
【0007】
しかし、複合光学レンズの場合、その複合光学レンズの入射面及び出射面以外の外面を利用してリフレクタ面等を形成することになるため、光学特性に影響を与えないように脚部を設けることが重要となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複合光学レンズの光学特性に影響を与えないように脚部が設けられた光学制御部材を備える車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用灯具は、光源と前記光源からの光を配光制御する光学制御部材を備えた車両用灯具であって、前記光学制御部材は、前記配光制御を行う複合光学レンズと、前記複合光学レンズに一体形成された複数の脚部と、を備え、前記複合光学レンズは、光を入射させる入射面と、前記入射面から入射した光を前方側に照射する出射面と、前記入射面と前記出射面の間に形成されたシェード部と、を備え、前記脚部が、それぞれ前記複合光学レンズの前記出射面と前記シェード部の頂線の間の位置に繋がっている。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記車両用灯具は、ヒートシンクを備え、前記脚部は、一端が前記複合光学レンズに繋がった支持部と、前記支持部の他端側に繋がり、前記光学制御部材を固定するための固定部と、を備え、前記ヒートシンクは、それぞれの前記固定部に対応して設けられた固定機構を備えている。
【0011】
(3)上記(2)の構成において、それぞれの前記固定機構は、前記光学制御部材の位置決めを行う位置決めピンと、前記光学制御部材を取り付けるネジを螺合させるネジ螺合孔と、を備え、それぞれの前記固定部は、前記位置決めピンに対応した第1貫通孔と、前記ネジ螺合孔に対応した第2貫通孔と、を備え、前記脚部は、前記複合光学レンズのレンズ光軸を挟んで対向する位置に一対設けられ、前記第1貫通孔は、前記第1貫通孔の中心間を結ぶ直線が前記レンズ光軸上を通るように前記固定部に形成され、前記光学制御部材は、前記光源の発光中心に前記レンズ光軸がほぼ一致するように設けられている。
【0012】
(4)上記(3)の構成において、前記脚部は、前記複合光学レンズの車両幅方向の側面に繋がるように一対設けられている。
【0013】
(5)上記(3)又は(4)の構成において、前記車両用灯具は、前記光源を有する光源装置を備え、前記光源装置は、前記光源が設けられ、前記光源と前記ヒートシンクの間に位置する熱伝達部材と、前記光源と外部コネクタとの間の電気的な接続を行う電気配線を内蔵する絶縁樹脂で形成されたコネクタ接続部材と、を備え、前記熱伝達部材及び前記コネクタ接続部材は、前記位置決めピンに対応した貫通孔と、前記ネジ螺合孔に対応した貫通孔と、を備え、前記光学制御部材は、前記脚部が前記コネクタ接続部材上に設置された状態で、前記ネジによって、前記光源装置と共に前記ヒートシンクに固定されている。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの構成において、前記複合光学レンズは、重心が前記出射面と前記シェード部の頂線の間に位置するように形成されている。
【0015】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの構成において、前記光学制御部材は、前記複合光学レンズを避けるように形成された前記脚部間を繋ぐ補強部を備えている。
【0016】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つの構成において、前記複合光学レンズは、前記頂線より前記入射面側の上側に形成され、第1拡散配光パターンを形成する光を前記出射面に向けて反射する第1リフレクタ面と、前記頂線より前記入射面側の下側に形成され、集光配光パターンを形成する光を前記出射面に向けて反射する第2リフレクタ面と、を備えている。
【0017】
(9)上記(1)から(8)のいずれか1つの構成において、前記シェード部は、前記頂線から前方側に傾斜する前方側傾斜面を有しており、前記複合光学レンズには、前記光源からの直射光の一部を前記前方側傾斜面の少なくとも一部に向けて反射する反射面が形成されており、前記反射面で反射され、更に、前記前方側傾斜面で反射された光が、オーバーヘッド配光として前記出射面から照射される。
【0018】
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つの構成において、前記シェード部は、前記頂線から後方側に傾斜する後方側傾斜面を有しており、前記複合光学レンズは、前記出射面に向けて前記出射面で配光制御する予定でない反射光を反射する、前記後方側傾斜面で反射された光が、直接、照射される部位に形成された光散乱部を備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複合光学レンズの光学特性に影響を与えないように脚部が設けられた光学制御部材を備える車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両の平面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の灯具ユニットの分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の複合光学レンズの断面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の入射面側が見えるようにした複合光学レンズの斜視図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の出射面側が見えるようにした複合光学レンズの斜視図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の光散乱部を説明するための図である。
【
図7】本発明に係る実施形態の光学制御部材の斜視図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の複合光学レンズを側面から見た平面図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の光学制御部材を前から見た平面図である。
【
図10】本発明に係る実施形態の光学制御部材に対して、回転方向にズレる力が加わった場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0022】
また、実施形態及び図中において、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両102の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両102に乗車する運転者から見た方向を示す。
なお、言うまでもないが「上」、「下」は鉛直方向での「上」、「下」でもあり、「左」、「右」は水平方向での「左」、「右」でもある。
【0023】
図1は、本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両102の平面図である。
図1に示すように、本発明に係る実施形態の車両用灯具は、車両102の前方側の左右のそれぞれに設けられる車両用の前照灯(101L、101R)であり、以下では単に車両用灯具と記載する。
【0024】
本実施形態の車両用灯具は、車両前方側に開口したハウジング(図示せず)と開口を覆うようにハウジングに取り付けられるアウターレンズ(図示せず)を備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に灯具ユニット1(
図2参照)等が配置されている。
【0025】
図2は本発明に係る実施形態の灯具ユニット1の分解斜視図である。
図2に示すように、灯具ユニット1は、ヒートシンク10と、ヒートシンク10に取り付けられ、光源22を有する光源装置20と、光源装置20上に配置され、光源22からの光を配光制御する光学制御部材30と、を備えている。
【0026】
(ヒートシンク10)
ヒートシンク10は、光源装置20を配置するベース部11と、ベース部11の裏面から後方側に延在するように設けられ、車両幅方向に並ぶ複数の放熱フィン12と、ベース部11の鉛直方向(
図2の上下方向)の中央側に設けられ、後述する光学制御部材30のそれぞれの脚部32の固定部32Bに対応して設けられた固定機構と、を備えている。
【0027】
そして、それぞれの固定機構は、ベース部11から前方側に突出する位置決めピン11Aと、位置決めピン11Aよりも車両幅方向の中央側に離間してベース部11に形成されたネジ螺合孔11Bと、を備えている。
なお、固定機構間の位置決めピン11Aは車両幅方向に離間して位置し、固定機構間の位置決めピン11A(本例では2つの位置決めピン11A(以下、一対の位置決めピン11Aと呼ぶ場合がある。))及び、ネジ螺合孔11B(本例では2つのネジ螺合孔11B(以下、一対のネジ螺合孔11Bと呼ぶ場合がある。))は、ベース部11の上下方向の中央側の位置で、車両幅方向にほぼ一列に並ぶように設けられている。
この一対のネジ螺合孔11Bには、後述する光源装置20、及び、光学制御部材30を共止めするように一対のネジNが螺合固定される。
【0028】
放熱フィン12は、それぞれ鉛直方向の一方側(
図2では上側)にベース部11よりも延在しており、ベース部11より鉛直方向に延在している部分(
図2では上側の部分)が、後述する光源装置20の接続部23Bを収容可能にベース部11側から後方側に切欠かれたような形状になっている。
【0029】
本実施形態では、ヒートシンク10は、ベース部11、放熱フィン12、及び、位置決めピン11A等が一体成形されたアルミダイカスト製のヒートシンク10になっているが、これに限定される必要はなく、熱伝導率の高い金属又は樹脂等を用いて形成されたものであればよい。
【0030】
(光源装置20)
光源装置20は、熱伝達部材21と、熱伝達部材21上に配置された光源22と、熱伝達部材21上に配置され、光源22に対応する位置に設けられた開口部23Aと外部コネクタが接続される接続部23Bを有するコネクタ接続部材23と、を備えている。
【0031】
なお、接続部23Bは、熱伝達部材21よりも鉛直方向の一方側(
図2では上側)に位置し、熱伝達部材21よりも一部が後方側に出っ張るように設けられており、先に触れたように、この出っ張った部分が、放熱フィン12の後方側に切欠かれたような形状の部分に位置することになる。
【0032】
本実施形態では、光源22が設けられた熱伝達部材21が、光源22とヒートシンク10のベース部11の間に双方に接触するように位置し、光源22で発生する熱を速やかに広い範囲に拡散しつつ、熱を効率よくヒートシンク10に伝達して光源22の冷却効率を高める役目を果たす。
【0033】
このため、本実施形態では、熱伝達部材21に光源22よりも外径の大きいアルミ製の板材を用いているが、材料はアルミに限定される必要はなく、熱伝導率の高いアルミ以外の金属又は樹脂等であってもよい。
【0034】
光源22は、光を透過する発光領域22Bを有する基板22Aと、基板22Aの裏側に配置され、発光領域22Bを発光させるための光を出射する発光チップ(図示せず)と、を備え、本実施形態では、発光チップにLDチップ(レーザーダイオードチップ)が用いられたLD光源(レーザー光源)になっているが、発光チップにLEDチップを用いたLED光源(発光ダイオード光源)としてもよい。
なお、本実施形態の光源22(発光チップ)は、平面発光部を有する、ランバーシアン分布又はこれに近いものになっている。
【0035】
しかしながら、光源22にLD光源を用いる方がLED光源の場合より、後述する複合光学レンズ31の小型化が行いやすいため、光源22にはLD光源を用いるのが好ましい。
【0036】
コネクタ接続部材23は、例えば、耐熱性に優れた電気絶縁性の樹脂(単に絶縁樹脂ともいう。)を用いたインサート成形で、光源22と外部コネクタとの間の電気的な接続を行うための電気配線(図示せず)を内部に内蔵するように形成された部材である。
【0037】
そして、その電気配線(図示せず)の一端側が開口部23Aに導出され光源22との電気的な接続が行われ、その電気配線(図示せず)の他端側が接続部23B内に導出され、外部コネクタとの電気的な接続が行われるようになっている。
なお、コネクタ接続部材23と熱伝達部材21は、例えば、接着剤、又は、ネジ等の固定手段で一体化されている。
【0038】
また、コネクタ接続部材23は、必ずしも、電気絶縁性の樹脂である必要はなく、電気絶縁性であれば、樹脂以外の材料を使用することが可能である。
しかしながら、後ほど説明するように、コネクタ接続部材23は、光学制御部材30の熱による劣化を抑制する断熱部材としての役割を果たすため、熱伝導率の低い材料を用いることが好ましく、電気を通さない樹脂は、一般的に熱伝導率が低いため電気絶縁性の樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
そして、熱伝達部材21及びコネクタ接続部材23の双方には、ベース部11に設けられた一対の位置決めピン11Aに対応した位置に形成された位置決めピン11Aを通す一対の貫通孔24Aと、ベース部11に設けられたネジ螺合孔11Bに対応した位置に形成されたネジNを通す一対の貫通孔24Bと、を備えており、位置決めピン11Aで位置決めされた状態でネジNによってヒートシンク10に対して固定できるようになっている。
【0040】
(光学制御部材30)
光学制御部材30は、光源22からの光を配光制御する複合光学レンズ31と、複合光学レンズ31に一体形成された一対の脚部32と、複合光学レンズ31を避けるように脚部32と一体形成された脚部32間を繋ぐ補強部33と、を備えている。
なお、脚部32は一対(2個)に限らず、3個以上であってもよく、複合光学レンズ31を安定して支持できるように複数設けられる。
【0041】
本実施形態では、光学制御部材30は、透明な樹脂(例えば、アクリル系樹脂等)で、複合光学レンズ31、脚部32、及び、補強部33を一体成形したものとしており、以下、複合光学レンズ31、脚部32、及び、補強部33の順でより詳細に説明する。
【0042】
[複合光学レンズ31]
図3は複合光学レンズ31の断面図であり、レンズ光軸Zに沿って鉛直方向に切断した断面を側面側から見た断面図である。
なお、
図3には、模式的に記載した光源22も併せて図示している。
また、
図4は本実施形態の入射面31B側が見えるようにした複合光学レンズ31の斜視図であり、
図5は本実施形態の出射面31A側が見えるようにした複合光学レンズ31の斜視図である。
【0043】
図3及び
図4に示すように、複合光学レンズ31は、光源22(
図3参照)からの光を入射させる入射面31Bと、入射面31Bから入射した光を前方側に照射する、微細な凹凸等を有しない前方側に突出したスムーズな曲面とされた出射面31Aと、入射面31Bと出射面31Aの間に形成されたシェード部31Cと、が一体成形されたレンズになっている。
【0044】
なお、本実施形態のように、出射面31Aにプリズムのような凹凸を形成しないことで光のスジやムラの発生を抑制でき、運転者に不快感を与えることのないロービーム配光パターンを形成することができる。
【0045】
シェード部31Cは、複合光学レンズ31の入射面31Bと出射面31Aの間の位置の鉛直方向下側から複合光学レンズ31の内側にほぼ三角形状の窪みを形成するようにして形成されており、その三角形状の窪みの頂点となる位置がカットオフラインの形状に合わせた頂線31CAとなるようにされている。
【0046】
なお、頂線31CAは、斜めカットオフラインの上側を形成する部分が出射面31Aの後方焦点又は後方焦点近傍に位置するように形成されている。
【0047】
そして、複合光学レンズ31は、シェード部31Cの頂線31CAより入射面31B側の上側(鉛直方向上側)に形成され、ロービーム配光パターンの第1拡散配光パターンを形成する光L1を出射面31Aに向けて反射する自由曲面の半ドーム状の第1リフレクタ面31Dと、頂線31CAより入射面31B側の下側(鉛直方向下側)に形成され、ロービーム配光パターンの集光配光パターンを形成する光L2を出射面31Aに向けて反射する自由曲面の半ドーム状の第2リフレクタ面31Eと、を備えており、
図4を見るとわかるように、第1リフレクタ面31Dと第2リフレクタ面31Eの隣接する位置の車両幅方向の幅は、第1リフレクタ面31Dの方が大きく、良好にロービーム配光パターンの第1拡散配光パターンを形成できるようにしている。
【0048】
逆に、第1リフレクタ面31Dと第2リフレクタ面31Eの隣接する位置の車両幅方向の幅は、第2リフレクタ面31Eの方が小さく、高光度にしやすくすることで良好にロービーム配光パターンの集光配光パターンを形成できるようにしている。
なお、第1リフレクタ面31Dと第2リフレクタ面31Eの基本光路の前方焦点は、出射面31Aの後方焦点とほぼ一致している。
【0049】
このように、本実施形態では、1つの複合光学レンズ31でロービーム配光パターンの第1拡散配光パターンと集光配光パターンが形成できるためロービーム配光パターンを形成するための灯具ユニット1を数多く設ける必要がなく、車両用灯具の小型化が行えるようになっている。
なお、カットオフライン上端近傍にはやや黄色味のある集光配光パターンの分光と第1拡散配光パターンの青味のある分光とが多重され、分光色を緩和できるものになっている。
【0050】
一方、本実施形態では、入射面31Bは、全体形状が複合光学レンズ31の内側に凹む凹面状であって、中央側にロービーム配光パターンの第1拡散配光パターンより小さいロービーム配光パターンの第2拡散配光パターン(中拡散配光パターン)を形成する光L3を入射させる複合光学レンズ31の外側に突出する凸面31BAを有している。
【0051】
この凸面31BAは、
図4に示すように、外径がほぼ矩形状(正方形状)で、
図3に示すように、頂線31CAの斜めカットオフラインの上側を形成する部分又は頂線31CAの斜めカットオフラインの上側を形成する部分近傍に前方側焦点が位置するように形成されている。
【0052】
そして、凸面31BAの中心と光源22の発光中心が車両幅方向及び鉛直方向で見てほぼ一致するように光源22が凸面31BAの後方側に位置するため、この凸面31BAから入射する光は大きな屈折を伴わず、緩やかに頂線31CAの斜めカットオフラインの上側を形成する部分に向けて集光され、更に前方側焦点から緩やかに出射面31Aに向けて広がり良好な中拡散配光パターンを形成できるようになっている。
【0053】
このように、本実施形態では、集光配光パターンと第1拡散配光パターンに多重される、中程度の拡散配光パターン(中拡散配光パターン)である第2拡散配光パターンも形成されるため、ロービーム配光パターンとしての光度分布をより良好なものとすることができる。
【0054】
そして、凸面31BAの外側の入射面31Bが後方側に広がる形状とし、入射面31Bの全体形状が複合光学レンズ31の内側に凹む凹面状とされていることで、前方側に向けて光を照射する光源22の光の広がりを考慮して、その光を無駄なく複合光学レンズ31内に入射させることができる。
なお、入射面31Bの全体形状の複合光学レンズ31の内側に凹む凹面状の後方焦点は、第1リフレクタ面31D及び第2リフレクタ面31Eの後方焦点とほぼ一致しており、それらの後方焦点は、光源22の発光中心とほぼ一致している。
【0055】
ところで、ロービーム配光パターンのカットオフラインのところで明暗がくっきりしすぎている場合、視認性が悪くなるため、本実施形態では、
図3に示すように、出射面31Aを、第1拡散配光パターンを形成する光L1のうちの一部(本例では下側の一部)が集光配光パターン及び第2拡散配光パターンのカットオフラインの上側に照射される形状に形成するようにしている。
【0056】
具体的には、レンズ光軸Zに対して0.2度から0.5度程度上向きに光が照射されるように出射面31Aの下側の曲率を滑らかに調整している。
【0057】
このため、集光配光パターン及び第2拡散配光パターンのカットオフラインの上側にも光が照射され、カットオフラインの鮮明度が適切に下がるため視認性を向上させることができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、複合光学レンズ31が、ロービーム配光パターンだけでなく、オーバーヘッド配光を併せて形成するものとしている。
具体的には、シェード部31Cが、複合光学レンズ31の内側にほぼ三角形状の窪みを形成するようにして形成されているため、シェード部31Cは、頂線31CAから前方側に傾斜する前方側傾斜面31CCを有している。
【0059】
この前方側傾斜面31CCは、光を斜め上側に反射させるのに利用できることから、本実施形態では、複合光学レンズ31に、光源22からの直射光の一部を前方側傾斜面31CCの少なくとも一部に向けて反射する反射面31Gを形成するものとして、反射面31Gで反射され、更に、前方側傾斜面31CCで反射された光L4が、オーバーヘッド配光として出射面31Aから照射されるようにしている。
【0060】
具体的には、
図3から
図5に示すように、複合光学レンズ31の第1リフレクタ面31Dと後述する光散乱部31Fの間の位置の上側に、光源22からの直射光の一部を前方側傾斜面31CCの少なくとも一部に向けて反射する反射面31Gを形成するようにしている。
【0061】
なお、本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、反射面31Gで反射された光が照射される前方側傾斜面31CCの部分に出射面31A側への反射角度を調節するための反射角度調節部31CCAを設けたものとしている。
【0062】
しかしながら、前方側傾斜面31CCが反射角度調節部31CCAを備えたものとすることは必須の要件ではなく、反射面31Gで反射された光が、オーバーヘッド配光に適した反射角度で出射面31Aに向けて反射されるように、前方側傾斜面31CC全体の傾斜状態が設定されたものになっていてもよい。
【0063】
また、第1リフレクタ面31D、第2リフレクタ面31E、前方側傾斜面31CC(反射角度調節部31CCAだけでもよい)、及び、反射面31Gは、光を反射する機能が求められるため、光の反射率が高くなるように、白や銀の着色を施すようにしてもよい。
【0064】
本実施形態のように、光源22が前方側に光を照射するように配置され、複合光学レンズ31が、光の広がりを利用し、上側に広がる光で最も大きいロービーム配光パターンの拡散配光パターン(第1拡散配光パターン)を形成し、下側に広がる光でロービーム配光パターンの集光配光パターンを形成し、中央側の光でロービーム配光パターンの中拡散配光パターン(第2拡散配光パターン)を形成するものとしているので、多数の灯具ユニット1を用いなくても良好なロービーム配光パターンを形成できるだけでなく、シェード部31Cの前方側傾斜面31CCの一部に向けて反射する反射面31Gを形成することでオーバーヘッド配光も形成できるものとなっている。
【0065】
ところで、複合光学レンズ31では、出射面31Aで配光制御する予定でない光が複合光学レンズ31の出射面31Aから前方側に照射される場合があり、そのような光の照射を抑制するために、本実施形態では、複合光学レンズ31が光散乱部31Fを備えるものとしており、以下、光散乱部31Fについて詳細に説明する。
【0066】
図6は光散乱部31Fを説明するための図であり、
図3に対応する断面図になっている。
図6に示すように、シェード部31Cが、複合光学レンズ31の内側にほぼ三角形状の窪みを形成するようにして形成されているため、シェード部31Cは、頂線31CAから後方側に傾斜する後方側傾斜面31CBを有するものになっており、第1リフレクタ面31Dで反射された光の一部、及び、光源22からの直射光の一部が、この後方側傾斜面31CBで反射されると、その反射光の一部は、頂線31CAより前方側の上側の面で反射され、出射面31Aから前方側に照射される。
【0067】
そして、このような光は、出射面31Aで配光制御する予定ではない光であり、灯室内や車両近傍に照射される有害光となるおそれがある。
つまり、後方側傾斜面31CBで反射された光が、直接、照射される部位は、出射面31Aに向けて出射面31Aで配光制御する予定でない反射光を反射する部位になっており、この部位で反射された光は出射面31Aから照射されたときに有害光となるおそれがある。
【0068】
そこで、
図6に示すように、複合光学レンズ31が、シェード部31Cの頂線31CAよりも出射面31A側に形成され、出射面31Aに向けて出射面31Aで配光制御する予定でない反射光を反射する部位に形成された光散乱部31Fを備えるものとしている。
【0069】
具体的には、光散乱部31Fは、出射面31Aに向けて出射面31Aで配光制御する予定でない反射光を反射する、後方側傾斜面31CBで反射された光が、直接、照射される複合光学レンズ31の部位に形成されており、これによって、
図6に示すように、光が散乱され、その光の多くは光散乱部31Fから出射する光L5となり、有害光として照射されることが抑制される。
なお、このように、光散乱部31Fから出射する光L5が外部に漏れるのを確実に抑制するために、入射面31B及び出射面31Aを除く複合光学レンズ31の部分を覆うカバーを設け、遮光するようにしてもよい。
【0070】
一方、光散乱部31Fで散乱する光の一部は、依然として、出射面31Aから前方側に照射される光L6となるが、その光L6は大幅に光量が低下しているため、灯室内や車両近傍に照射されても害をなさないものになっている。
【0071】
なお、光散乱部31Fは、複合光学レンズ31の表面に微細な凹凸(例えばプリズム)を形成したものとしているが、光を効率よく散乱できる構造であればこれに限定されるものではない。
また、後方側傾斜面31CBにも光散乱部を設けるようにしてもよく、そうすることで、より一層、灯室内や車両近傍に照射されるおそれのある光の光量を低下させることができる。
【0072】
このように、本実施形態では、複合光学レンズ31が、シェード部31Cの頂線31CAよりも出射面31A側に形成され、出射面31Aに向けて出射面31Aで配光制御する予定でない反射光を反射する部位に形成された光散乱部31Fを備えているので、複合光学レンズ31の出射面31Aで配光制御する予定でない光が複合光学レンズ31の出射面31Aから前方側に照射されることが抑制され、灯室内や車両近傍に照射される有害光を抑制することができる。
【0073】
[脚部32]
図7は光学制御部材30の斜視図であり、出射面31A側が見えるようにした斜視図である。
また、
図8は、複合光学レンズ31を側面から見た平面図であり、
図9は光学制御部材30を前から見た平面図である。
【0074】
図7及び
図9に示すように、脚部32は、複合光学レンズ31の車両幅方向(
図9の左右方向)の側面に繋がるように一対設けられている。
【0075】
具体的には、それぞれの脚部32は、複合光学レンズ31の車両幅方向(
図9の左右方向)の側面に一端が繋がった支持部32Aと、一端から後方側に延在した支持部32Aの他端側に繋がり、車両幅方向に出っ張った光学制御部材30を光源装置20と共にヒートシンク10に固定するための固定部32Bと、を備えている。
【0076】
より詳細には、それぞれの脚部32(より詳細には支持部32Aの一端)は、
図8に示す複合光学レンズ31の出射面31Aとシェード部31Cの頂線31CAの間(範囲R参照)の位置に繋がっており、この範囲Rの側面は、光学的な制御(例えば、反射等)を行わない設計が行いやすい位置であり、そこに脚部32を繋げるようにしたことで、複合光学レンズ31の光学特性に影響を与えないように脚部32を設けることができる。
【0077】
また、本実施形態では、
図8に示すように、複合光学レンズ31は、前後方向で見た重心CBの位置が出射面31Aとシェード部31Cの頂線31CAの間に位置するように形成されている。
【0078】
そして、それぞれの脚部32(より詳細には支持部32Aの一端)が、その重心CBの位置のある複合光学レンズ31の出射面31Aとシェード部31Cの頂線31CAの間(範囲R参照)の位置に繋がっている。
【0079】
このように、それぞれの脚部32(より詳細には支持部32Aの一端)がその重心CBの位置の近くに繋がっているため、複合光学レンズ31の安定した支持が可能であるとともに、それぞれの脚部32(より詳細には支持部32Aの一端)にかかる負荷が少ないものになっている。
【0080】
なお、
図7を見るとわかるように、支持部32Aは、一端から他端側に向けて幅がほぼ一定で車両幅方向外側に若干傾斜するように延在した直線部と、直線部から他端側に向けて後方側に延在し、他端側ほど鉛直方向の幅が広くなる末広がり部と、を備えている。
【0081】
そして、末広がり部の最も他端側の鉛直方向の幅が、後述する補強部33の鉛直方向の幅よりも広くなっており、光学制御部材30を樹脂成型するときに、支持部32Aに対応する金型内での樹脂の流動性がよくなるようにしている。
【0082】
一方、
図2を参照して触れたように、ヒートシンク10は、それぞれの固定部32Bに対応して設けられたヒートシンク10のそれぞれの固定機構が、光学制御部材30の位置決めを行う位置決めピン11Aと、光学制御部材30を取り付けるネジNを螺合させるネジ螺合孔11Bと、を備えており、それに対応して、それぞれの固定部32Bは、位置決めピン11Aに対応した第1貫通孔34Aと、ネジ螺合孔11Bに対応した第2貫通孔34Bと、を備えている。
【0083】
そして、
図2を見るとわかるように、光学制御部材30は、脚部32(より詳細には固定部32B)がコネクタ接続部材23上に設置された状態で、ネジNによって、光源装置20と共にヒートシンク10に固定されるようになっている。
なお、本実施形態では、後述する補強部33もコネクタ接続部材23上に設置された状態となる。
【0084】
このように、脚部32が、脚部32と熱伝達部材21の間に介在し、断熱部材として機能するコネクタ接続部材23上に設置され、高温になるおそれがある熱伝達部材21に、直接、接触しないため、光学制御部材30(より詳細には固定部32B及び後述する補強部33)の熱による劣化を抑制することができる。
【0085】
また、
図9に示すように、脚部32(より詳細には固定部32B)は、複合光学レンズ31のレンズ光軸Zを挟んで対向する位置に一対設けられており、位置決めピン11Aに対応した第1貫通孔34Aは、第1貫通孔34Aの中心間を結ぶ直線Hがレンズ光軸Z上を通るように固定部32Bに形成されている。
【0086】
そして、光学制御部材30は、光源22の発光中心にレンズ光軸Zがほぼ一致するように設けられている。
このため、光学制御部材30に対して、正面視で見て(
図9に示す前から見た平面図の状態)、回転方向にズレる力が加わったときに、光源22の発光中心とレンズ光軸Zのズレが発生し難くなっている。
【0087】
図10は光学制御部材30に対して、回転方向にズレる力が加わった場合を説明するための図である。
なお、
図10では、回転方向にズレる力が加わった場合の状態が理解しやすいように、位置決めピン11Aについては小さめに描いているが、実際には、位置決めピン11Aは第1貫通孔34Aへの挿入に支障がない範囲でできるだけ大きな直径を有するものとされる。
【0088】
また、
図10では、
図9で示した第1貫通孔34Aの中心間を結ぶ直線Hを点線で示し、回転方向にズレる力が光学制御部材30に加わり、光学制御部材30が回転方向に動いた後の光学制御部材30の状態のときの第1貫通孔34Aの中心間を結ぶ直線Hを実線で示すようにしている。
【0089】
図10に示すように、光学制御部材30は、回転方向の力が加わったときに、第1貫通孔34Aと位置決めピン11Aの間の隙間の範囲で回転することになる。
なお、ネジNで固定された後であれば、このような回転は起こらないが、固定作業時のネジNでの固定が完了するまでの間には、このような回転が起る場合がある。
【0090】
しかしながら、脚部32(より詳細には固定部32B)が、複合光学レンズ31のレンズ光軸Zを挟んで対向する位置に一対設けられており、位置決めピン11Aに対応した第1貫通孔34Aが、第1貫通孔34Aの中心間を結ぶ直線Hがレンズ光軸Z上を通るように固定部32Bに形成されている、より正確には、第1貫通孔34Aがレンズ光軸Zからほぼ等距離に位置するとともに、第1貫通孔34Aは、固定部32Bにレンズ光軸Zと2つの第1貫通孔34Aの中心が直線上に並ぶように形成されているため、光学制御部材30の回転はレンズ光軸Zを中心とした回転となる。
【0091】
このため、光学制御部材30に回転方向の力が加わってもレンズ光軸Zの位置が大幅にズレることが抑制されるので、レンズ光軸Zが光源22の発光中心にほぼ一致している状態を維持することができ、位置ズレによる配光パターンへの影響を最小限に留めることができる。
【0092】
[補強部33]
補強部33は、先にも触れたが、
図7及び
図9に示すように、複合光学レンズ31を避けるように脚部32間を繋ぐように設けられている。
【0093】
具体的には、本実施形態では、光学制御部材30が、複合光学レンズ31を避けるように一対の脚部32間の上側を繋ぐように設けられた一方の補強部33と、複合光学レンズ31を避けるように一対の脚部32間の下側を繋ぐように設けられた他方の補強部33と、を備え、一対の固定部32B(支持部32Aの他端側の一部を含む)と一対の補強部33で、前方側から光学制御部材30を見た正面視で、複合光学レンズ31を囲うほぼ矩形リング形状となるようになっている。
【0094】
このように補強部33で一対の脚部32が繋がっていると、振動等で脚部32が変位することが抑制され、脚部32の耐久性を高めることができる。
なお、本実施形態では、一対の固定部32B近傍を補強部33で繋げるようにしているが、必ずしも、一対の固定部32B近傍を繋げるように補強部33を設ける必要はなく、支持部32A間を繋げるようにしてもよい。
【0095】
ただし、本実施形態のように、一対の固定部32B近傍を繋げるように補強部33を設けることで、この補強部33もコネクタ接続部材23上に設置された状態とすることができるため、光学制御部材30の設置安定性を高めることができる。
【0096】
以上のように、本実施形態によれば、光学制御部材30のレンズにシェード部31C、第1リフレクタ面31D、及び、第2リフレクタ面31E等を作り込んだ複合光学レンズ31を用いるようにしているため、レンズと別体のシェード部材やリフレクタ部材を使用する場合に比べ、大幅に部品点数を減らすことができるだけでなく、小型化ができるものになっている。
【0097】
その上で、複合光学レンズ31に固定のための脚部32を一体形成したときに、複合光学レンズ31の光学特性に影響を与えないように、脚部32がそれぞれ複合光学レンズ31の出射面31Aとシェード部31Cの頂線31CAの間の位置に繋がっているので、良好なロービーム配光パターンを形成することができる。
【0098】
しかも、レンズホルダ等を介さず複合光学レンズ31に一体形成された脚部32で光源装置20上に設置されるようになっているため、光源22に対する複合光学レンズ31の位置精度を向上させることができる。
【0099】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、耐久性等の面で見れば、補強部33を設けることが好ましいが、必ずしも補強部33を設けなければならないわけではなく、補強部33を省略するようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、複合光学レンズ31の車両幅方向の側面に脚部32が繋がるものとしているが、これに限定されるものでもない。
【0101】
このように、本発明は、上記実施形態に変更や改良を行ったものも発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0102】
1 灯具ユニット
10 ヒートシンク
11 ベース部
11A 位置決めピン
11B ネジ螺合孔
12 放熱フィン
20 光源装置
21 熱伝達部材
22 光源
22A 基板
22B 発光領域
23 コネクタ接続部材
23A 開口部
23B 接続部
24A、24B 貫通孔
30 光学制御部材
31 複合光学レンズ
31A 出射面
31B 入射面
31BA 凸面
31C シェード部
31CA 頂線
31CB 後方側傾斜面
31CC 前方側傾斜面
31CCA 反射角度調節部
31D 第1リフレクタ面
31E 第2リフレクタ面
31F 光散乱部
31G 反射面
32 脚部
32A 支持部
32B 固定部
33 補強部
34A 第1貫通孔
34B 第2貫通孔
CB 重心
L1、L2、L3、L4、L5、L6 光
N ネジ
Z レンズ光軸
101L、101R 車両用の前照灯
102 車両