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特許7099200フォトマスク、及びそれを用いたカラーフィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】フォトマスク、及びそれを用いたカラーフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220705BHJP
   G03F 1/00 20120101ALI20220705BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018165151
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020038283
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 純一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】河本 龍士
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-228723(JP,A)
【文献】特開2007-335543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
G03F 1/00-1/92
G03F 7/20-7/24
G03F 9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に着色画素を形成するブラックマトリクスと、複数の前記開口部を区画する額縁部と、を一括形成するカラーフィルタ作製用のフォトマスクであって、
前記フォトマスクは、透光部と、遮光部と、透過率が1種以上異なる半遮光部と、を有し、
前記半遮光部の透過率は50%以下であり、前記遮光部よりも高く、
前記透光部により前記額縁部及び前記ブラックマトリクスを形成し、
前記遮光部及び前記半遮光部により前記開口部を形成し、
前記額縁部にもっとも近い前記開口部は、前記半遮光部の中でもっとも透過率が高い前記半遮光部で形成する、
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
開口部に着色画素を形成するブラックマトリクスと、複数の前記開口部を区画する額縁部と、を一括形成するカラーフィルタ作製用のフォトマスクであって、
前記フォトマスクは、遮光部と、透光部と、透過率が1種以上異なる半透光部と、を有し、
前記半透光部の透過率は50%以上であり、前記透光膜よりも低く、
前記遮光部により前記額縁部及び前記ブラックマトリクスを形成し、
前記透光部及び前記半透光部により前記開口部を形成し、
前記額縁部にもっとも近い前記開口部は、前記半透光部の中でもっとも透過率が低い前記半透光部で形成する、
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項3】
請求項1に記載の前記半遮光部、または請求項2に記載の前記半透光部は、
遮光性を有する薄膜のドットパターンからなる、
ことを特徴とする請求項1、または2に記載のフォトマスク。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフォトマスクを用いる、
ことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ作製用フォトマスク、及びそれを用いたカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一対の透明性基板間に液晶層を挟持した液晶パネルにより構成されている。具体的には、着色画素等を形成したカラーフィルタ基板と、薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動回路を形成したTFTアレイ基板とを対向させ、ギャップを制御するスペーサを介して貼り合わせ、ギャップ内に液晶が封入され構成されている。
【0003】
最近では、液晶パネル自身の大型化が要求されるとともに、生産効率の向上も求められる。このため、カラーフィルタ基板では、マザーガラスのサイズを大型化して、多面付けしたカラーフィルタ基板を効率良く製造することが特に重要である。例えば、図6(a)では、1枚のマザーガラス40Mに4×4のカラーフィルタ基板40が面付けされている。以下、本願では、面付けされたカラーフィルタ基板の単位を「セル」と呼ぶことがある。
【0004】
各セル40のアクティブエリア46は、図6(b)のように、額縁部45によって区画されている。アクティブエリア46内では、図6(c)のように、ブラックマトリクス(BM)線により着色画素を形成するための開口部44が区画されている。BMは、カラーフィルタ基板をTFTアレイ基板と貼り合わせた後に、TFTアレイのソース配線と呼ばれる細線と、ゲート配線と呼ばれる太線に平面視でそれぞれ略重なるようなBM細線42とBM太線43により格子状にパターニングされている。額縁部45の線幅は、BM細線42、BM太線43よりもはるかに太い線幅となっている。
尚、本願では、BM細線とBM太線を区別しない場合、単にBMパターンと呼ぶ。
【0005】
カラーフィルタ基板の製造では、ガラス基板等からなる透明性基板上に、BM細線42とBM太線43と額縁部45とを一括して形成した後、R(赤)、G(緑)、B(青)等の着色画素を形成する。BM、額縁部、着色画素のパターンは通常、フォトリソグラフィ法により、感光性樹脂組成物(感光性レジスト)にフォトマスクを用いた近接(プロキシミティ)露光、現像等を行って形成される。
【0006】
BM、額縁部パターンの構成材料・方法については、近年、環境面の問題や、製造方法の簡便さから、従来のCr(クロム)に替わって黒色顔料を分散させた感光性レジストにフォトリソグラフィを行って、直接形成する方法が多く採用されるようになっている。このような樹脂BM、樹脂額縁部は、所定の光学濃度を確保するための膜厚が、Crパターンと比較して厚くなる。
【0007】
一方、近年の液晶表示装置の高精細化(具体的には700ppi=pixels per inch程度以上)、高明度化に伴いBMパターンの設計線幅も高精細化しており、アクティブエリア46内のBMパターンと額縁部45の設計線幅差が大きくなっている(図6(c)参照)。このため、製造工程中のBMパターンと額縁部45の一括現像プロセスにおいて、局所的な現像レート差が生じ、アクティブエリア46内で、額縁部45近傍のBMパターンが本来の設計線幅よりも細く仕上がる現象が発生している。
【0008】
すなわち、アクティブエリア46内のBMは格子状パターンのため、感光性レジストが除去され現像液の消費領域となり現像液が疲労するが、額縁部45では感光性レジストが
除去されないため、非消費領域となり現像液の疲労がない。従って、額縁部45に近いほど現像液の活性状態が維持されるので、額縁部45近傍のBMパターンの線幅はアクティブエリアの中央領域と比較して現像が進み、細くなってしまう。この現象はマイクロローディング効果と呼ばれる。
尚、BMパターンの線幅細りはBM細線、BM太線ともに起こりうるが、本願では以下、特に問題となるBM細線の細り(消失、未解像)について説明する。
【0009】
図7は、マイクロローディング効果によるBM細線の線幅細りと部分的な消失を例示する模式平面図である。図7の左列の図は通常のフォトマスクの一部を示し、右列の図は該フォトマスクと、光硬化型であるネガ型感光性レジスト(以下、ネガレジストと略記する)を用いて転写したBMパターンと額縁部55を示している。図7(a)のように、額縁部55となるフォトマスク51Pの透光部55pにもっとも近いBM細線エリア52a内のBM細線52pが、右側のBM細線52qのように細く転写されている。
【0010】
図7(b)は図7(a)よりもさらにBMパターンの高精細化が進んだ場合であり、額縁部55となるフォトマスク61Pの透光部65pにもっとも近いBM細線エリア62a内のBM細線62pは、元々の設計線幅が小さいため転写の結果さらに細くなり、右側のBM細線エリア62bのように、剥れが発生し、BM細線が消失している。
【0011】
上記のような、マイクロローディング効果によるBM細線の線幅細り(アクティブエリア面内均一性の劣化)は額縁部に近い位置ほど大きく、近年のマザーガラスの大型化に伴って顕著になり、表示装置の表示品質を悪化させる原因となっている。尚、本願では額縁部にもっとも近いBM細線エリアで、一定幅で細くなる場合を主に説明するが、該エリア内で見ても、図8のように、額縁部55に近くなるほど細くなる。
【0012】
上記の問題に対し、BMパターン形成用のフォトマスクにおいて、カラーフィルタの額縁部近傍領域のBMの線幅を、現像工程でアクティブエリア中央領域の線幅に対して細くなる分だけあらかじめ太く設計する補正(線幅補正)を施しておくという方法が開示されている(特許文献1)。
【0013】
図9は、線幅補正と、マイクロローディング効果によるBM細線の線幅細りとの関係を例示する模式平面図である。図9(a)では、細くなるエリア52cのBM細線を52rのようにあらかじめ太く補正したフォトマスク51Rを用いた結果、現像後のパターン51Sでは、BM線幅52sのように細りが解消されている。
【0014】
しかしながら、線幅補正法では、図9(b)のように、さらにBMパターンの高精細化が進むと、エリア62cのBM細線62rのように遮光部が極めて狭くなり、その結果転写したエリア62dでは解像性が失われ、BM細線として形成できなくなる。
【0015】
また、上記のような、現像工程にてBMの線幅がアクティブエリア中央領域に対して細くなるカラーフィルタの額縁部近傍領域は、BMパターンの形状によって異なる。そのため、現像工程においてBM線幅が実際に細くなるカラーフィルタ額縁部近傍領域を正確に把握しておくことは容易ではない。
【0016】
同様に、様々な形状のBMパターンを有するカラーフィルタに対して、額縁部近傍領域を正確に把握して、上記のようなフォトマスクの線幅補正を適正に施すことは膨大な手間と困難を有する。
【0017】
さらに、セル形状も用途によっては単純な四角形から例えば円形のような複雑なものも登場しており、その点においても、上記のようなフォトマスクの線幅補正を適正に施す実
際の作業に対して大きな障壁となる。
【0018】
一方で、大型基板上の現像処理の均一化(現像液分布、置換効率の均一化)については、傾斜搬送、現像液スプレーノズルの揺動などの対策が行われている。この対策は、基板全面に対する現像処理の均一化には寄与するものの、局所的な額縁部とアクティブエリアとの現像液均一化への効果は乏しいと考えられる。
【0019】
さらに、額縁部にハーフトーンマスクを用い、BMパターン部と比較して、額縁部に光が少なく照射されるように露光量を調整し、額縁部の厚みを薄くして、物理的に現像液の流れを変え、現像液が額縁部近傍に滞留することを防止する提案がなされている(特許文献2)。
【0020】
しかしながら、ハーフトーンマスクで額縁部を形成する方法は、BM線幅の細りやくびれを防止する反面、額縁部の光学濃度が規定の濃度より下がってしまうため、補正として額縁部にBM層を積層することがあるが、工程が増えるとともに積層部が剥がれる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特開2002-122856号公報
【文献】特開2009-244523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、現像によるBMの額縁部近傍における線幅の細りが抑えられ、BM線幅の面内均一性に優れる高精細カラーフィルタを製造するためのフォトマスク、及びそれを用いたカラーフィルタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、開口部に着色画素を形成するブラックマトリクスと、複数の前記開口部を区画する額縁部と、を一括形成するカラーフィルタ作製用のフォトマスクであって、
前記フォトマスクは、透光部と、遮光部と、透過率が1種以上異なる半遮光部と、を有し、
前記半遮光部の透過率は50%以下であり、前記遮光部よりも高く、
前記透光部により前記額縁部及び前記ブラックマトリクスを形成し、
前記遮光部及び前記半遮光部により前記開口部を形成し、
前記額縁部にもっとも近い前記開口部は、前記半遮光部の中でもっとも透過率が高い前記半遮光部で形成する、ことを特徴とするフォトマスクとしたものである。
【0024】
請求項2に記載の発明は、開口部に着色画素を形成するブラックマトリクスと、複数の前記開口部を区画する額縁部と、を一括形成するカラーフィルタ作製用のフォトマスクであって、
前記フォトマスクは、遮光部と、透光部と、透過率が1種以上異なる半透光部と、を有し、
前記半透光部の透過率は50%以上であり、前記透光膜よりも低く、
前記遮光部により前記額縁部及び前記ブラックマトリクスを形成し、
前記透光部及び前記半透光部により前記開口部を形成し、
前記額縁部にもっとも近い前記開口部は、前記半透光部の中でもっとも透過率が低い前記
半透光部で形成する、ことを特徴とするフォトマスクとしたものである。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の前記半遮光部、または請求項2に記載の前記半透光部は、
遮光性を有する薄膜のドットパターンからなる、ことを特徴とする請求項1、または2に記載のフォトマスクとしたものである。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のフォトマスクを用いる、
ことを特徴とするカラーフィルタの製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、現像によるBMの額縁部近傍における線幅の細りが抑えられ、BM線幅の面内均一性に優れる高精細カラーフィルタを製造するためのフォトマスクが提供され、それを用いたカラーフィルタの製造方法が提供される。尚、本開示のフォトマスク、及びそれを用いたカラーフィルタの製造方法は、線幅補正を行わないカラーフィルタ製造用のフォトマスクに対するものであるが、適宜線幅補正と併用しても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の第1実施形態のフォトマスクに係る、(a)部分的な模式平面図、(b)A-A’断面の光強度分布、(c)現像途中のA-A’断面のネガレジスト膜厚分布、(d)現像後のパターンの模式平面図である。
図2】本開示の第2実施形態のフォトマスクに係る、(a)部分的な模式平面図、(b)C-C’断面の光強度分布、(c)現像途中のC-C’断面のポジレジスト膜厚分布、(d)現像後のパターンの模式平面図である。
図3】本開示の第3実施形態のフォトマスクに係る、(a)部分的な模式平面図、(b)E-E’断面の光強度分布、(c)現像途中のE-E’断面のネガレジスト膜厚分布、(d)現像後のパターンの模式平面図である。
図4】(a)本開示の第1実施形態のフォトマスクの変形例に係る、図1(a)で額縁部にもっとも近い半遮光部(B部で代表する)の模式平面図、(b)本開示の第2実施形態のフォトマスクの変形例に係る、図2(a)で額縁部にもっとも近い半透光部(D部で代表する)の模式平面図である。
図5】(a)本開示の第1実施形態のフォトマスクの別の変形例に係る、図1(a)で額縁部にもっとも近い半遮光部(B部で代表する)の模式平面図、(b)本開示の第2実施形態のフォトマスクの別の変形例に係る、図2(a)で額縁部にもっとも近い半透光部(D部で代表する)の模式平面図である。
図6】従来のカラーフィルタ製造における、(a)カラーフィルタの面付け、(b)セル、(c)現像工程での現像液の未消費領域、消費領域を説明するための模式平面図である。
図7】従来のカラーフィルタ製造における、マイクロローディング効果によるBM細線の(a)線幅細り、(b)部分的な消失を例示する模式平面図である。
図8】従来のカラーフィルタ製造において、マイクロローディング効果により、BM細線の線幅が、BM細線エリア内で額縁部に近くなるほど細くなる場合を例示する模式平面図である。
図9】従来のカラーフィルタ製造における、線幅補正とマイクロローディング効果によるBM細線の線幅細りとの関係に係り、(a)BM細線の線幅細りが解消した場合、(b)BM細線として解像しない場合を例示する模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係るフォトマスク、及びそれを用いたカラーフィルタの製造
方法について図面を用いて説明する。同一の構成要素については便宜上の理由がない限り同一の符号を付ける。各図面において、見易さのため構成要素の厚さや比率は誇張されていることがあり、構成要素の数も減らして図示していることがある。また、本発明は以下の実施形態そのままに限定されるものではなく、主旨を逸脱しない限りにおいて、適宜の組み合わせ、変形によって具体化できる。
【0030】
図1(a)は、本開示の第1実施形態のフォトマスクに係り、開口部に着色画素を形成するブラックマトリクスと、複数の開口部を区画する額縁部とを、ネガレジストを用いて、一括形成するためのフォトマスクの部分的な模式平面図である。
尚、本願では、BMパターンを形成した場合に、BM細線は図1のX方向に延在してY方向に並列し、BM太線はY方向に延在してX方向に並列し、開口部はX方向に長い長方形状である場合を例として説明する。また、額縁部はX方向及びY方向ともに延在するが、本願ではY方向に延在する額縁部15を代表として説明する。
【0031】
第1実施形態のフォトマスク10は、透光部12、13、15と、遮光部17-2、17-3と、透過率が1種以上異なる半遮光部(図1では17-1の1種のみ)とを有し、半遮光部17-1の透過率は50%以下であるが、遮光部17-2、17-3よりも透過率が高い(換言すれば遮光率が低い)。
【0032】
第1実施形態のフォトマスク10とネガレジストを用いてリソグラフィを行うことで、現像終了後は図1(d)に示すように、透光部15により額縁部5、透光部13によりBM太線3、透光部12によりBM細線2-1、2-2、2-3が形成される。また、遮光部17-2、17-3は、それぞれ開口部4-2、4-3となる。額縁部5にもっとも近い開口部4-1は、透過率が1種以上異なる半遮光部の中でもっとも透過率が高い半遮光部17-1で形成される。
【0033】
第1実施形態のフォトマスク10を用いることで、従来は消失したり(図7(b)右)、あるいは線幅補正を施しても解像しなかった(図9(b)右)高精細なBM細線を設計線幅に近く形成することができる。以下、理由を述べる。
【0034】
図1(b)は、本開示の第1実施形態のフォトマスク10を通過した光の、フォトマスク10のA-A’断面に沿う光強度分布であり、上側(矢印の指示方向)ほど透過率が高いことを意味している。透光部12、13、15ではもっとも透過率が高く、遮光部17-2、17-3ではもっとも透過率が低く遮光されている。また、上記のように、半遮光部17-1の透過率は50%以下であるが、遮光部よりも透過率が高い(換言すれば遮光率が低い)。
【0035】
図1(c)は、現像途中のA-A’断面に沿うネガレジスト膜厚分布であり、上側(矢印の指示方向)ほど膜厚が厚いことを意味している。このように、ネガレジストの現像途中において、透光部13、15を通過した光で露光された部分はもっとも膜厚が厚く、遮光部17-2、17-3で遮光された部分はもっとも膜厚が薄くなる。半遮光部17-1を通過した光で露光された部分は中間的な膜厚となる。
【0036】
換言すれば、半遮光部17-1を通過した光で露光された部分は、遮光部17-2、17-3で遮光された部分に比べ、現像速度が遅くなる。従って、現像過程において、透光部13、15を通過した光で露光された部分と半遮光部17-1を通過した光で露光された部分との段差d2は、透光部13、15を通過した光で露光された部分と遮光部17-2、17-3で遮光された部分との段差d1よりも小さくなる。
【0037】
すなわち、第1実施形態のフォトマスク10を用いて露光したネガレジストの現像では
、額縁部近傍において、アクティブエリア中央領域よりも現像液の消費が遅くなるので、現像液の疲労も継続して進行してゆく。また、額縁部近傍の段差d2は、アクティブエリア中央領域の段差d1よりも小さいので、現像液が額縁部近傍に滞留する現象も低減する。これらのことから、従来のように線幅補正を行わない場合、額縁部近傍のBMパターンの線幅が細くなる問題を抑制し、高精細なBM細線では消失する問題を解消して、設計線幅に近く形成することができる。
【0038】
図2(a)は、本開示の第2実施形態のフォトマスクに係り、開口部に着色画素を形成するブラックマトリクスと、複数の開口部を区画する額縁部とを、ポジレジストを用いて、一括形成するためのフォトマスクの部分的な模式平面図である。
【0039】
第2実施形態のフォトマスク20は、遮光部22、23、25と、透光部27-2、27-3と、透過率が1種以上異なる半透光部(図2では27-1の1種のみ)とを有し、半透光部27-1の透過率は50%以上であるが、透光部27-2、27-3よりも透過率が低い。
【0040】
第2実施形態のフォトマスク20とポジレジストを用いてリソグラフィを行うことで、現像終了後は図2(d)に示すように、遮光部25により額縁部5、遮光部23によりBM太線3、遮光部22によりBM細線2-1、2-2、2-3が形成される。また、透光部27-2、27-3は、それぞれ開口部4-2、4-3となる。額縁部5にもっとも近い開口部4-1は、透過率が1種以上異なる半透光部の中でもっとも透過率が低い半透光部27-1で形成される。
【0041】
第2実施形態のフォトマスク20を用いることで、従来は消失したり(図7(b)右)、あるいは線幅補正を施しても解像しなかった(図9(b)右)高精細なBM細線を設計線幅に近く形成することができる。以下、理由を述べる。
【0042】
図2(b)は、本開示の第2実施形態のフォトマスク20を通過した光の、フォトマスク20のC-C’断面に沿う光強度分布であり、上側(矢印の指示方向)ほど透過率が高いことを意味している。遮光部22、23、25は遮光されておりもっとも透過率が低く、透光部27-2、27-3はもっとも透過率が高い。また、上記のように、半透光部27-1の透過率は50%以上であるが、透光部よりも透過率が低い。
【0043】
図2(c)は、現像途中のC-C’断面に沿うポジレジスト膜厚分布であり、上側(矢印の指示方向)ほど膜厚が厚いことを意味している。このように、ポジレジストの現像途中において、遮光部23、25で遮光された部分はもっとも膜厚が厚く、透光部27-2、27-3を通過した光で露光された部分はもっとも膜厚が薄くなる。半透光部27-1を通過した光で露光された部分は中間的な膜厚となる。
【0044】
換言すれば、半透光部27-1を通過した光で露光された部分は、透光部27-2、27-3を通過した光で露光された部分に比べ、現像速度が遅くなる。従って、現像過程において、遮光部23、25で遮光された部分と半透光部27-1を通過した光で露光された部分との段差d3は、遮光部23、25で遮光された部分と透光部27-2、27-3を通過した光で露光された部分との段差d1よりも小さくなる。
【0045】
すなわち、第2実施形態のフォトマスク20を用いて露光したポジレジストの現像では、額縁部近傍において、アクティブエリア中央領域よりも現像液の消費が遅くなるので、現像液の疲労も継続して進行してゆく。また、額縁部近傍の段差d3は、アクティブエリア中央領域の段差d1よりも小さいので、現像液が額縁部近傍に滞留する現象も低減する。これらのことから、従来のように線幅補正を行わない場合、額縁部近傍のBMパターンの線幅が細くなる問題を抑制し、高精細なBM細線では消失する問題を解消して、設計線幅に近く形成することができる。
【0046】
図3(a)は、本開示の第3実施形態のフォトマスクに係る、第1実施形態のフォトマスクと同様に、開口部に着色画素を形成するブラックマトリクスと、複数の開口部を区画する額縁部とを、ネガレジストを用いて、一括形成するためのフォトマスクの部分的な模式平面図である。
【0047】
第3実施形態のフォトマスク30を第1実施形態のフォトマスク10と比較すると、第1実施形態のフォトマスク10では、額縁部にもっとも近いBM細線エリア12aの17-1のみが半遮光部であったのに対し、第3実施形態のフォトマスク30では、額縁部にもっとも近いBM細線エリア32aの37-1に加え、2番目に近いBM細線エリア32bの37-2も半遮光部となっている。さらに、半遮光部37-1の透過率(遮光率)は半遮光部37-2の透過率(遮光率)よりも高い(低い)。
【0048】
本開示のフォトマスクではこのように、ネガレジストを用いる場合、透過率が異なる半遮光部が複数種あってもよく、透過率はいずれも50%以下であるが、額縁部に近いBM細線エリアの半遮光部ほど透過率が高い(遮光率が低い)。
【0049】
図3(b)は、本開示の第3実施形態のフォトマスク30を通過した光の、フォトマスク30のE-E’断面に沿う光強度分布であり、上側(矢印の指示方向)ほど透過率が高いことを意味している。透光部32、33、35ではもっとも透過率が高く、半遮光部37-1、37-2、遮光部37-3の順に透過率が低くなっている。
【0050】
図3(c)は、現像途中のE-E’断面に沿うネガレジスト膜厚分布であり、上側(矢印の指示方向)ほど膜厚が厚いことを意味している。このように、ネガレジストの現像途中において、透光部33、35を通過した光で露光された部分はもっとも膜厚が厚く、半遮光部37-1を通過した光で露光された部分、半遮光部37-2を通過した光で露光された部分、遮光部37-3で遮光された部分の順に膜厚が薄くなる。
【0051】
換言すれば、半遮光部37-2を通過した光で露光された部分は、遮光部37-3で遮光された部分に比べ現像速度が遅く、半遮光部37-1を通過した光で露光された部分は、半遮光部37-2で遮光された部分に比べさらに現像速度が遅くなる。従って、現像過程において、透光部33、35を通過した光で露光された部分と半遮光部37-2を通過した光で露光された部分との段差をd4、透光部33、35を通過した光で露光された部分と半遮光部37-1を通過した光で露光された部分との段差をd5、透光部33、35を通過した光で露光された部分と遮光部37-3で遮光された部分との段差d1とすると、d1>d4>d5の順に小さくなる。
【0052】
すなわち、第3実施形態のフォトマスク30を用いて露光したネガレジストの現像では、額縁部近傍において、額縁部に近いBM細線エリアほど現像液の消費が遅くなるので、現像液の疲労も継続して進行してゆく。また、額縁部近傍の段差は、額縁部に近いBM細線エリアほどアクティブエリア中央領域の段差d1よりも小さくなるので、現像液が額縁部近傍に滞留する現象もさらに低減する。これらのことから、従来のように線幅補正を行わない場合、額縁部近傍のBMパターンの線幅が細くなる問題を抑制し、高精細なBM細線では消失する問題を解消して、設計線幅に近く形成することができる。
【0053】
図3ではネガレジストを用いてカラーフィルタを作製するフォトマスクについて説明したが、同様の形態はポジレジストを用いるフォトマスクについても可能であり、透過率が異なる半透光部が複数種あってもよく、透過率はいずれも50%以上であるが、額縁部に
近いBM細線エリアの半透光部ほど透過率が低い。この場合のフォトマスク透過後の光強度、及び現像途中の膜厚の説明は、図1図2の説明の比較から容易に類推できるので省略する。
【0054】
図4(a)は、本開示の第1実施形態のフォトマスクの変形例に係る、図1(a)で額縁部にもっとも近いBM細線エリア12a内の半遮光部(B部で代表する)の模式平面図である。図1(a)では、個々の半遮光部はいずれも、面内で同じ透過率であるとしたが、額縁部方向(X方向)に分割されていてもよく、図4(a)のように、額縁部にもっとも近いB-1の透過率がもっとも高く、B-2、B-3の順に低くなっていてもよい。
【0055】
図4(b)は、本開示の第2実施形態のフォトマスクの変形例に係り、図2(a)で額縁部にもっとも近いBM細線エリア22a内の半透光部(D部で代表する)の模式平面図である。図2(a)では、個々の半透光部はいずれも、面内で同じ透過率であるとしたが、額縁部方向(X方向)に分割されていてもよく、図4(b)のように、額縁部にもっとも近いD-1の透過率がもっとも低く、D-2、D-3の順に高くなっていてもよい。
【0056】
図4では、半遮光部や半透光部は、額縁部にもっとも近いBM細線エリア12a、22a内で分割され異なる透過率をもつ、としたが、額縁部にもっとも近いBM細線エリアに限らず、第3実施形態のフォトマスク30で額縁部に2番目に近いBM細線エリア32bのように、本開示のフォトマスクでは、2番目以降のBM細線エリア内の半遮光部や半透光部が分割された異なる透過率を有していてもよい。
【0057】
半遮光部(半透光部)が分割されている場合、「透過率」は、該半遮光部(半透光部)面内の「平均透過率」が、額縁部にもっとも近い1番目でもっとも高く(低く)、2番目、・・・、n番目の順に高く(低く)なっているものとする。図4に代表される、前記の半遮光部や半透光部が分割され異なる透過率をもつ形態は、図8のように、同じBM細線エリア内で額縁部に近くなるほど線幅が細くなる場合に特に有効である。
【0058】
本開示のフォトマスクが備える半遮光部、または半透光部を形成する方法は、主に2通りある。第1の方法は、金属酸化物や金属窒化物に代表される、通常ハーフトーン膜と呼ばれる半透明性の薄膜をパターニングして形成する方法である。透過率は、成膜時に酸素や窒素の含有量を変化させることや、膜厚を変えることで適宜選択することができる。
【0059】
第2の方法は、フォトマスクの遮光膜として通常使用されるCrなどの遮光性を有する薄膜をドットパターン状にパターニングする方法である。ドットパターンはカラーフィルタ基板上に解像転写されないが、ドットの形状、大きさ、配置密度を変化させることで露光時の透過率を適宜変化させることができる。このようなフォトマスクは「濃度分布マスク」とも呼ばれ、例えば特開2002-244273号公報に詳細に開示されている。
【0060】
第1の方法と第2の方法を比較すると、第1の方法では、ハーフトーン膜の成膜工程とパターニング工程が必要であるのに対し、第2の方法では、遮光部用の薄膜で遮光部形成と同時にドットパターンを形成すればよいので、別途成膜工程とパターニング工程を追加する必要がない、という利点がある。
【0061】
ドットパターンを用いる第2の方法のもうひとつの利点は、ドットの大きさや配置密度を変化させることは、ハーフトーン膜の元素組成や膜厚を変化させるよりも自由度が高い、ということである。従って、図4のように個々の半遮光部(半透光部)内で透過率を変化させる場合、ハーフトーン膜では段階的にならざるを得ないが、ドットパターンでは、より連続的に変化させることができる。
【0062】
一方で、ドットパターンのパターニングは、ハーフトーン膜のパターニングに比べ、オリジナルパターン形成のための電子線描画機のデータボリュームが大きくなる、という不利な点がある。これを軽減するひとつの方法として、ドットパターンを個々の半遮光部(半透光部)内の全面に形成せず、間欠的に形成する方法がある。
【0063】
すなわち、図5に示すように、個々の半遮光部(半透光部)内で、ドットパターンが存在しない遮光部O(透光部T)を含むようにドットパターンB’-1、B’-2、B’-3、(D’-1、D’-2、D’-3)をX方向に配置する。このように配置しても、Y方向に上下に隣り合うBM細線同士(不図示)の現像途中では間欠的に連結状態が維持されるので、BM細線が剥離して消失することを抑制する。尚、ここで、B’-1、B’-2、B’-3、及びD’-1、D’-2、D’-3は、それぞれ同じ透過率であっても、図4と同様の順序に異なっていてもよい。また、遮光部O(透光部T)の幅は0.1~20.0μmが好ましい。
【0064】
以上のことから、半遮光部、または半透光部を形成する方法として、第1の方法と第2の方法のいずれを選択するかは、カラーフィルタの用途・仕様に応じたフォトマスクのパターン、線幅等の設計条件、及び製造条件を考慮して適宜選択するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のフォトマスクを用いたカラーフィルタの製造方法は、高い表示品質が求められる高精細液晶表示装置、及びそれを構成するカラーフィルタ基板、液晶表示パネルの製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
10、20、30・・・・・・本開示のフォトマスク
2-1、2-2、2-3・・・BM細線
3・・・・・・・・・・・・・BM太線
4-1、4-2、4-3・・・開口部
5・・・・・・・・・・・・・額縁部
12、13、15、32、33、35・・・透光部
17-1、37-1、37-2・・・・・・半遮光部
17-2、17-3、37-3・・・・・・遮光部
22、23、25・・・・・・・・・・・・遮光部
27-1・・・・・・・・・・・・・・・・半透光部
27-2、27-3・・・・・・・・・・透光部
12a、22a、32a、32b・・・・BM細線エリア
B・・・・・・・半遮光部の1つ
B-1、B-2、B-3、B’-1、B’-2、B’-3・・・分割された半遮光部
D・・・・・・・半透光部の1つ
D-1、D-2、D-3、D’-1、D’-2、D’-3・・・分割された半透光部
O・・・・・・・遮光部
T・・・・・・・透光部
40M・・・・・マザーガラス
40・・・・・・セル(カラーフィルタ)
41・・・・・・セル(カラーフィルタ)の一部
42・・・・・・BM細線
43・・・・・・BM太線
44・・・・・・開口部
45・・・・・・額縁部(現像液の未消費領域)
46・・・・・・アクティブエリア(現像液の消費領域)
51P、61P・・・・フォトマスク(線幅補正なし)の一部
51Q、61Q・・・51P、61Pによる、現像後のカラーフィルタの一部
52p、62p・・・・BM細線となる、フォトマスクの透光部(線幅補正なし)
52a、62a、52e・・・フォトマスクの、額縁部にもっとも近いBM細線エリア
52q、52t・・・現像後のBM細線(線幅補正なし)
52b、62b・・・現像後の、額縁部にもっとも近いBM細線エリア
55p、65p・・・・額縁部となる、フォトマスクの透光部(線幅補正なし)
51R、61R・・・・フォトマスク(線幅補正あり)の一部
51S、61S・・・51R、61Rによる、現像後のカラーフィルタの一部
52r、62r・・・・フォトマスクのBM細線(線幅補正あり)
52c、62c・・・フォトマスクの、額縁部にもっとも近いBM細線エリア
52s・・・・・・・現像後のBM細線(線幅補正あり)
52d、62d・・・現像後の、額縁部にもっとも近いBM細線エリア
55・・・・・・・・・額縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9