(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ホースの耐疲労性評価システム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/32 20060101AFI20220705BHJP
G01N 3/36 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01N3/32 N
G01N3/36
(21)【出願番号】P 2018173942
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】侯 剛
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-263908(JP,A)
【文献】特開平08-159940(JP,A)
【文献】特開平04-203950(JP,A)
【文献】特開2003-232688(JP,A)
【文献】米国特許第05339677(US,A)
【文献】特開2004-317316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/32-3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象のホースが予め設定された形状に固定されて設置される固定フレームと、前記ホースに所定内圧を繰り返し付与する加圧機構とを備えたホースの耐疲労性評価システムにおいて、
前記ホースの表面に付される歪みゲージおよびマーカと、前記ホースの外形を撮影するカメラ装置と、前記歪みゲージにより取得された歪みデータおよび前記カメラ装置により取得された画像データが入力される演算部とを備えて、前記歪みデータおよび前記画像データに基づいて、前記演算部により、同じ内圧時の複数の時点間での前記ホースの形状の変形具合が算出される構成にしたことを特徴とするホースの耐疲労性評価システム。
【請求項2】
前記ホースの表面温度データを取得するサーモグラフィを有し、前記表面温度データに基づいて前記演算部により、同じ内圧時の前記複数の時点間での前記表面温度の変化具合が算出されて、同じ内圧時の前記複数の時点間での前記形状の変化具合と前記表面温度の変化具合との関係が算出される構成にした請求項1に記載のホースの耐疲労性評価システム。
【請求項3】
前記ホースの周辺環境温度データを取得する温度センサを有し、前記演算部により前記周辺環境温度データと前記表面温度データとの関係が算出される構成にした請求項2に記載のホースの耐疲労性評価システム。
【請求項4】
前記表面の前記マーカが付される範囲内に前記歪みゲージが付される範囲が設定される請求項1~3のいずれかに記載のホースの耐疲労性評価システム。
【請求項5】
前記ホースの少なくとも一方端部に取付けられるホース金具を有し、このホース金具を介して前記ホースが前記固定フレームに設置された状態になる請求項1~4のいずれかに記載のホースの耐疲労性評価システム。
【請求項6】
前記表面の前記歪みゲージおよび前記マーカが付される範囲が、前記ホースの前記ホース金具の周辺範囲および前記ホースの長手方向中央部の範囲に設定される
請求項5に記載のホースの耐疲労性評価システム。
【請求項7】
前記ホースのFEM解析モデルを用いて、前記ホースに前記所定内圧を付与する過程で前記ホースの表面に生じる歪みデータが予め算出されて前記演算部に入力されていて、この算出されたFEM解析による歪みデータと前記歪みゲージにより取得された歪みデータとに基づいて、同じ内圧時の前記ホースの表面の前記歪みゲージが付された範囲での前記FEM解析による歪みデータと前記歪みゲージにより取得された歪みデータとの差異が前記演算部により算出される構成にした請求項1~6のいずれかに記載のホースの耐疲労性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースの耐疲労性評価システムに関し、さらに詳しくは、繰り返しの内圧付与によるホースの変形具合の経時変化を把握できるホースの耐疲労性評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧ゴムホース等には、使用中に相応に高い内圧が繰り返し作用するため、優れた耐疲労性が要求される。従来、ホースの耐疲労性の評価方法としては、ホースに所定内圧を繰り返し指定回数付与した時点でホースの破壊の有無を確認する方法が知られている(例えば、特許文献1の段落0050参照)。即ち、JIS K 6330-8に規定されている衝撃圧力試験による評価方法では、ホースが疲労する過程でどのように変形し、その変形がどのように進行するのかを把握できない。ホースの耐疲労性を向上させるには、このようなホースの特性を把握することが役立つため、評価方法には更なる工夫をする余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、繰り返しの内圧付与によるホースの変形具合の経時変化を把握できるホースの耐疲労性評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためホースの耐疲労性評価システムは、評価対象のホースが予め設定された形状に固定されて設置される固定フレームと、前記ホースに所定内圧を繰り返し付与する加圧機構とを備えたホースの耐疲労性評価システムにおいて、前記ホースの表面に付される歪みゲージおよびマーカと、前記ホースの外形を撮影するカメラ装置と、前記歪みゲージにより取得された歪みデータおよび前記カメラ装置により取得された画像データが入力される演算部とを備えて、前記歪みデータおよび前記画像データに基づいて、前記演算部により、同じ内圧時の複数の時点間での前記ホースの形状の変形具合が算出される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、表面に歪みゲージおよびマーカが付された状態のホースに所定内圧を繰り返し付与する過程で、歪みゲージにより取得された歪みデータと、カメラ装置により取得したホースの外形の画像データとに基づいて、同じ内圧時の複数の時点間でのースの形状変化を把握する。これにより、繰り返しの内圧付与によるホースの変形具合の経時変化を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のホースの耐疲労性評価システムを側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の評価システムを平面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1のホースを一部切り欠いて内部構造を例示する説明図である。
【
図4】別のホースを一部切り欠いて内部構造を例示する説明図である。
【
図5】所定内圧の付与サイクルを例示するグラフ図である。
【
図6】所定内圧を付与した時のホースの外径寸法の経時変化を例示するグラフ図である。
【
図7】所定内圧を付与した時のホースの長手方向寸法の経時変化を例示するグラフ図である。
【
図8】ホースのFEM解析モデルを側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のホースの耐疲労性評価システムを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0009】
図1~
図2に例示する本発明のホースの耐疲労性評価システム1(以下、評価システム1という)は、油圧ホースなどの評価対象であるホース11が予め設定された形状で固定されて設置される固定フレーム2と、ホース11に所定内圧Pを繰り返し付与する加圧機構3と、ホース11の表面に取り付けられる歪ゲージ4aおよびマーカ4bと、カメラ装置5と、演算部8とを備えている。この実施形態では、評価システム1はさらに、サーモグラフィ6と、温度センサ7と、恒温槽10とを備えている。
【0010】
図3に例示するように、ホース11は、内周側から順に、内面層12、補強層13(13a、13b、13c)、外面層15が同軸状に積層された構造となっている。図面の一点鎖線CLは、ホース軸心を示している。内面層12、外面層15は、ゴムや樹脂等によって形成されている。補強層13は補強線材14が編組されて形成されている。補強線材14としては、アラミド繊維、炭素繊維、PBO繊維などの各種樹脂繊維やスチールコードなどの金属線が使用される。
【0011】
図4に例示するように、ホース11の補強層13(13a、13b、13c、13d)は、補強線材14がスパイラル状に巻き付けられて形成されている場合もある。この補強層3の構造では、半径方向に隣り合って積層される補強層13では、互いの補強線材14は交差する方向に設定される。補強層13の積層数はホース11に要求される性能に応じて、適宜設定される。
【0012】
図1、
図2に例示するように評価システム1では、ホース11の両端部にはホース金具16が取り付けられる。ホース金具16は、ホース11を実際に使用する際に取り付けられるものを用いて、実際の加締め力でホース11に取付けるとよい。ホース11は、ホース金具16を介して固定フレーム2に固定される。この実施形態では、ホース11の両端部に取り付けられたそれぞれのホース金具16が固定フレーム2に固定されることで、ホース11が円弧状(半円形状)になっている。
【0013】
この円弧状のホース11の曲率半径は、ホース11が実際に使用される状態の曲率半径、或いは、その曲率半径よりも小さくするとよい。この曲率半径は例えば、ホース11の外径の5倍~15倍に設定される。ホース11は、円弧状ではなく直線状の状態(即ち、曲率半径が無限大)で固定フレーム2に固定することもできる。この実施形態では、固定フレーム2に1本のホース11が設置されているが、1つの固定フレーム2に複数本のホース11を設置することもできる。
【0014】
一方のホース金具16には、加圧機構3の配管3aが連結され、他方のホース金具16は閉塞された状態にする。加圧機構3は、配管3aに圧力センサ3bを備えている。加圧機構3は、ホース11の内部に作動油などの圧力流体Lを充填させて、ホース11に対して所定内圧Pを繰り返し付与する。所定内圧Pは、
図5に例示するような圧力波形によって付与される。
図5では、圧力波形は正弦波になっているが例えば三角波にすることもできる。
【0015】
圧力センサ3bにより検知された圧力データが、ホース11に付与された内圧として演算部8に逐次入力される。加圧機構3の動作は制御部9により制御される。したがって、所定内圧Pの大きさ、付与時間、圧力付与サイクルは制御部9により制御される。例えば、1台のコンピュータを演算部8および制御部9として使用することができる。
【0016】
歪ゲージ4aは、ホース11の表面の所定範囲に取り付けられる。例えば、所定内圧Pが付与された時の変形量が相対的に大きな範囲の複数カ所に歪ゲージ4aを取り付けることが好ましい。ゴム製のホース11では、圧縮変形よりも引張変形が致命的な損傷につながるので、最大の引張変形(歪データ)を取得できるように歪みゲージ4aを取り付けるとよい。この実施形態では、ホース11の長手方向中央部の範囲で半径方向外側の表面と、それぞれのホース金具16の近傍範囲で半径方向外側の表面に歪ゲージ4aが取り付けられている。
【0017】
歪ゲージ4aは、リード線を通じて演算部8に接続されている。これにより、歪ゲージ4aにより取得された歪データが演算部8に逐次入力される。この歪みゲージ4aにより取得される歪みデータによって、歪みゲージ4aが付された範囲(位置)の局所的な変形具合(変位量および変形方向)を精度よく把握できる。
【0018】
ホース11の表面にはマーカ4bが付されている。マーカ4bとしては、例えば、周囲の表面と異なる色のマーキング等を用いる。マーカ4bも歪みゲージ4aと同様に、ホース11の変形量が相対的に大きな範囲の複数カ所に取り付けることが好ましい。ホース11の表面のマーカ4bが付された範囲に歪みゲージ4aが付された状態にするとよい。この実施形態では、ホース11の長手方向および径方向に所定ピッチで離間して配置されたメッシュ状のマーカ4bがホース11の表面に付されている。
【0019】
マーカ4bは広い範囲、または、多数箇所に付すことが容易なので、マーカ4bの変形具合(移動具合)に基づいて、ホース11のより広範囲の変形具合(変位量および変形方向)を把握することができる。
【0020】
カメラ装置5は、ホース11の外形の画像データを取得する。例えばカメラ装置5として、静止画または動画を撮影できるデジタルカメラが使用される。カメラ装置5により取得された画像データは演算部8に入力される。演算部8に入力された画像データはモニタ5aに表示される。カメラ装置5は1台または複数台が設置される。この実施形態では、ホース11の側面視の画像データおよびホース11の正面視上方からの画像データが取得できるように2台のカメラ装置5が設置されている。少なくともいずれか1台のカメラ装置5によって、マーカ4bが付されている範囲の画像データが取得される。カメラ装置5の設置台数を1台にして、ホース11に対してカメラ装置5を所望の位置に移動可能にすることもできる。カメラ装置5の移動は制御部9によって制御させるとよい。
【0021】
サーモグラフィ6は、ホース11の表面温度データを非接触で取得する。サーモグラフィ6により取得された温度データは演算部8に入力される。演算部8に入力された温度データは、複数に区分された温度範囲毎に異なる色でモニタ5aに表示される。これにより、ホース11の表面の温度分布を視覚的に把握できる。カメラ装置5により取得された画像データと、サーモグラフィ6により取得された温度データは、択一的にモニタ5aに表示することも、両方を同時にモニタ5aに表示することもできる。
【0022】
サーモグラフィ6は、1台または複数台が設置される。この実施形態では、ホース11の側面視の表面温度データおよびホース11の正面視上方からの表面温度データが取得できるように2台のサーモグラフィ6が設置されている。少なくともいずれか1台のサーモグラフィ6によって、マーカ4bが付されている範囲の表面温度データが取得されるとよい。サーモグラフィ6の設置台数を1台にして、ホース11に対してサーモグラフィ6を所望の位置に移動可能にすることもできる。サーモグラフィ6の移動は制御部9によって制御させるとよい。
【0023】
温度センサ7は、ホース1の周辺環境温度データを取得する。温度センサ7により取得された周辺環境温度データは演算部8に入力される。この実施形態では、ホース1は恒温槽10の内部に配置されている。したがって、恒温槽10の内部空間の温度が周辺環境温度データとして温度センサ7により取得される。恒温槽10の内部空間の温度は、制御部9によって所望の温度に制御される
【0024】
以下、評価システム1を用いてホース11の耐疲労性を評価する手順の一例を説明する。
【0025】
図1、
図2に例示するように、ホース11は予め設定された形状で固定フレーム2に設置される。ホース11には加圧機構3の配管3aが連結される。ホース11の表面には歪みゲージ4aおよびマーカ4bが付された状態にする。ホース11のセッティングが完了した時点で、歪みゲージ4aにより歪みデータ、カメラ装置5によりホース11の画像データ、サーモグラフィ6により表面温度データ、温度センサにより周辺環境温度データがそれぞれ取得される。この時点で取得されたそれぞれのデータは、初期状態のデータとして演算部8に記憶される。
【0026】
次いで、加圧機構3によって、ホース11に所定内圧Pを繰り返し付与する。所定内圧Pの大きさ、付与時間、圧力付与サイクルは例えば、ホース11の実際の使用条件と同等の条件、または、より厳しい条件に設定される。所定内圧Pの付与は、予め設定された時間が経過するまで、または、予め設定された圧力付与サイクルの回数に達するまで、或いは、ホース11が損傷するまで繰り返し継続される。
【0027】
所定内圧Pを繰り返し付与する過程で、例えば所定の時間間隔(所定時間経過毎、或いは、所定数の圧力付与サイクル経過毎)で所定時間の間、歪みゲージ4aにより歪みデータ、カメラ装置5により画像データ、サーモグラフィ6により表面温度データ、温度センサ7により周辺環境温度データがそれぞれ取得される。即ち、ホース11に所定内圧Pを繰り返し付与しながら、それぞれのデータが取得される。
【0028】
カメラ装置5、サーモグラフィ6の設置台数が1台の場合は、それぞれのデータを取得する際にこれらを移動させて、ホース11に対して所望の複数の位置からそれぞれのデータを取得することができる。或いは、カメラ装置5やサーモグラフィ6を所定位置に固定した状態にして、ホース11(ホース11、固定フレーム2および加圧機構3)を所望の位置に移動させる構成にしてもよい。この構成によっても、ホース11に対して所望の複数の位置からそれぞれのデータを取得することができる。
【0029】
1回の圧力付与サイクルの中で、ピークとなる最大値の圧力が付与された時(即ち、所定圧力Pが付与された時)に、初期状態を基準にしてホース11の膨張具合(外径寸法の拡大変位)は最大となり、長手方向の収縮具合(長さ寸法の縮小変位)は最大となる。一方、最小値の圧力が付与された時(即ち、付与圧力ゼロの時)に、初期状態を基準にしてホース11の膨張具合(外径寸法の拡大変位)は最小となり、長手方向の収縮具合(長さ寸法の縮小変位)は最小となる。付与された圧力が最大値とゼロの間の任意の時では、ホース11の膨張具合および長手方向の収縮具合は、付与された圧力が最大値の時の状態とゼロの時の状態との中間の状態になる。
【0030】
圧力付与回数が増えるに連れてホース11は疲労するため、同じ内圧時であってもホース11の膨張具合および長手方向の収縮具合は変化する。したがって、同じ所定圧力Pが付与された時であっても、圧力付与回数が少ない時点よりも多い時点の方が、ホース11がより疲労しているので、ホース11の膨張具合および長手方向の収縮具合には経時変化が生じる。
【0031】
そこで、取得された歪みデータおよび画像データに基づいて、同じ内圧時(例えば、所定内圧Pが付与された時や付与された内圧がゼロの時など)の複数の時点間でのホース11の形状変化を把握する。具体的には、同じ内圧時の複数の時点間での歪みデータを用いて、ホース11の形状変化としてホース11の膨張具合および長手方向の収縮具合が、歪みデータの変位量として算出される。これにより、歪みゲージ4aが付された範囲(位置)のホース11の表面の局所的な変形具合(変位量および変形方向)を精度よく把握できる。
【0032】
また、画像データにはマーカ4bの画像データが含まれているので、同じ内圧時の複数の時点の画像データを比較することで、この複数の時点間でのマーカ4bの変位量(移動量)を算出できる。そこで、ホース11の形状変化としてホース11の膨張具合および長手方向の収縮具合が、このマーカ4bの変位量として算出される。これにより、マーカ4bが付された範囲のホース11の表面の変形具合(変位量および変形方向)を把握できる。マーカ4bを用いることで、歪みゲージ4aに比して、ホース11のより広範囲の変形具合を把握し易くなる。
【0033】
図6は、所定内圧Pを付与した時のホース外径寸法の経時変化を例示している。実線はホース金具16の近傍範囲のデータであり、×印はホース11が破損したことを示している。破線はホース11の長手方向中央部の範囲のデータを示している。
【0034】
図7は、所定内圧Pを付与した時のホース長手方向寸法の経時変化を例示している。実線はホース金具16の近傍範囲のデータであり、×印はホース11が破損したことを示している。破線はホース11の長手方向中央部の範囲のデータを示している。
【0035】
ホース金具16の近傍範囲は、ホース11に対して加締め力が作用するとともに、ホース金具16の影響によって周辺との剛性差が大きくなる。そのため、繰り返しの圧力付与によってホース11に損傷が発生し易い範囲である。そこで、ホース11の少なくとも一方端部にホース金具16が取り付けられた状態にして上述した評価を行うと、ホース11の実際の使用状態に近似した状態で、ホース11の耐疲労性を評価することができる。
【0036】
本発明によれば、上述したとおり、歪みデータや画像データに基づいて算出されたホース11の形状変化によって、繰り返しの内圧付与によるホース11の変形具合の経時変化を把握することができる。したがって、ホース11の経時変形が相対的に大きい範囲を特定することができ、また、どの程度の変形具合でホース11が損傷するのかを特定できる。このようにしてホース11の耐疲労性として、ホース11が疲労する過程でどのように変形し、その変形がどのように進行するのかを把握することが可能になる。把握した結果をさらに分析、検討することで、ホース11の耐疲労性を向上させる有効な対策を講じ易くなる。
【0037】
ホース11の表面の局部的な変形具合の経時変化は、歪みデータに基づいて把握して、ホース11の表面のより広範囲の変形具合の経時変化は、画像データに基づいて把握すればよい。この実施形態のように、ホース11の表面のマーカ4bが付された範囲に歪みゲージ4aが付された状態にすると、マーカ4bの変位量と歪みデータの変位量との相関関係を精度よく把握できる。この相関関係が把握できれば、例えば、同じ耐疲労性の評価を繰り返し行う場合は、ホース11の表面に付す歪みゲージ4aとマーカ4bのいずれかを省略することもできる。
【0038】
この実施形態では、所定内圧Pを繰り返し付与する過程で、サーモグラフィ6によりホース11の表面温度データが取得される。このサーモグラフィ6により取得された表面温度データに基づいて、演算部8により、同じ内圧時の複数の時点間での表面温度の変化が算出される。そして、同じ内圧時の複数の時点間でのホース11の表面形状の変化と表面温度の変化との関係が演算部8により算出される。
【0039】
例えば、所定内圧Pが付与された時の複数の時点間で、ホース11の表面形状の変化率と、表面温度の変化率との関係が算出される。これにより、比較した両者の相関関係を把握できる。例えば、ホース11の破損しそうな範囲は、周辺よりも過剰に発熱して表面温度が高くなる傾向がある。それ故、この相関関係を把握することで、ホース11の破損し易い範囲を特定することでき、また、ホース11が破損する時期を推定することが可能になる。
【0040】
さらに、この実施形態では、所定内圧Pを繰り返し付与する過程で、温度センサ7によりホース11の周辺環境温度データが取得される。この温度センサ7により取得された周辺環境温度データに基づいて、演算部8により、同じ内圧時の複数の時点間での周辺環境温度データの変化が算出される。そして、同じ内圧時の複数の時点間でのホース11の表面温度の変化と周辺環境温度の変化との関係が演算部8により算出される。これにより、ホース11の表面温度の変化に対するホース11の周辺環境温度の影響を把握できる。一般的には、周辺環境温度が高くなるに連れてホース11の表面温度が高くなる傾向を示す相関関係を把握できる。そこで、この相関関係を用いて、ホース11の表面温度の変化に対する周辺環境温度の変化の影響を排除することができる。即ち、表面温度データを周辺環境温度データに基づいて補正することで、ホース11自体の発熱による表面温度の変化を把握し易くなる。
【0041】
歪みゲージ4aおよびマーカ4bが付される範囲は、ホース11の実際の使用時に、より大きな歪み(最大歪み)が生じる範囲であることが望ましい。そこで、
図8に例示するように、ホース11のFEM解析モデルSを用いて、ホース11に所定内圧Pを付与した時のホース11における歪みデータを演算部8により予め算出する。そして、算出された歪みデータが最大値になる範囲に相当するホース11の表面の範囲に歪みゲージ4aおよびマーカ4bが付された状態にするとよい。
【0042】
図8のFEM解析モデルSではホース11が表面を多数のメッシュに区分されていて、ホース金具16は変形しない剛体で所定位置に固定された設定になっている。演算部8には、FEM解析のために、ホース11を構成するゴム部材(内面層12、外面層14)および補強線材14(補強層13)それぞれのヤング率、ポアソン比、形状データ等が演算部8に入力される。
【0043】
また、このFEM解析モデルSを用いて、ホース11に所定内圧Pを付与した時の歪みゲージ4aが付されている範囲の歪みデータを予め算出する。そして、この予め算出された歪みデータと、ホース11に所定内圧Pを付与した時に歪みゲージ4aによって取得された歪みデータと比較して、比較した両者の差異を把握する。この両者の差異の大きさによって、FEM解析の解析精度の程度が判明するので、この差異を小さくするようにFEM解析モデルSの設定を改良するとよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ホースの耐疲労性評価システム
2 固定フレーム
3 加圧機構
3a 配管
3b 圧力センサ
4a 歪ゲージ
4b マーカ
5 カメラ装置
5a モニタ
6 サーモグラフィ
7 温度センサ
8 演算部
9 制御部
10 恒温槽
11 ホース
12 内面層
13(13a、13b、13c、13d) 補強層
14 補強線材
15 外面層
16 ホース金具
CL ホース軸心
L 加圧流体
S シミュレーションモデル
S1 ホース
S2 ホース金具