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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】蒸気システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 27/00 20060101AFI20220705BHJP
   F22B 3/04 20060101ALI20220705BHJP
   F22B 37/26 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F22B27/00
F22B3/04
F22B37/26 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018183171
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051706
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直之
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206486(JP,A)
【文献】特開2017-83155(JP,A)
【文献】特開2008-255888(JP,A)
【文献】特開2015-190726(JP,A)
【文献】特開2007-247971(JP,A)
【文献】米国特許第4493608(US,A)
【文献】特開2015-206488(JP,A)
【文献】特開2012-72984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 27/00
F22B 3/04
F22B 37/26
F22D 11/06
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生装置と、
前記蒸気発生装置で発生させた蒸気を昇圧する蒸気昇圧装置と、
前記蒸気昇圧装置の吸込側の蒸気温度を検出する吸込蒸気温度検出手段と、
前記蒸気昇圧装置の吐出側の蒸気温度を検出する吐出蒸気温度検出手段と、
前記蒸気昇圧装置の吐出側の蒸気圧力を検出する吐出蒸気圧力検出手段と、
前記蒸気昇圧装置の起動と停止を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記吐出蒸気温度検出手段の検出温度が前記吐出蒸気圧力検出手段の検出圧力に対応する飽和温度以上、かつ、前記吸込蒸気温度検出手段の検出温度が100℃以上の状態が予め設定された第1時間継続した場合に、前記蒸気昇圧装置を起動させる蒸気システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蒸気昇圧装置の運転中、前記吐出蒸気温度検出手段の検出温度が前記吐出蒸気圧力検出手段の検出圧力に対応する飽和温度未満、又は、前記吸込蒸気温度検出手段の検出温度が100℃未満の場合に、前記蒸気昇圧装置を停止させる請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項3】
前記蒸気発生装置は、
回収した蒸気ドレンを再蒸発させてフラッシュ蒸気と温水とに分離するフラッシュタンクと、
蒸気ドレンを前記フラッシュタンクに回収するドレン回収ラインと、
フラッシュ蒸気を前記フラッシュタンクから前記蒸気昇圧装置に送気する蒸気送気ラインと、
温水を前記フラッシュタンクから排出するドレン排出ラインと、
前記ドレン回収ラインに設けられた入口弁、前記蒸気送気ラインに設けられた蒸気送気弁、及び前記ドレン排出ラインに設けられたドレン排出弁を少なくとも含む複数の制御弁から構成される流通経路切替手段と、を備える請求項1又は請求項2に記載の蒸気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生装置及び蒸気昇圧装置を備える蒸気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、0.05~0.2MPa程度の低圧蒸気を発生させることのできる蒸気発生装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の蒸気発生装置は、高圧蒸気利用設備から排出される蒸気ドレン(蒸気凝縮水)を圧力容器(フラッシュタンク)に回収し、この回収した蒸気ドレンを圧力容器の内部で再蒸発させて低圧蒸気と温水とに分離する。引用文献2に記載の蒸気発生装置は、圧力容器の内部に配置した伝熱チューブに廃ガスや廃温水等の熱源流体を流通させると共に、伝熱チューブに水を噴霧して蒸発させ、低圧蒸気を発生させる。引用文献3に記載の蒸気発生装置は、廃温水等の熱源流体からヒートポンプ回路により熱を汲み上げて水を加熱し、低圧蒸気を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-7762号公報
【文献】特開昭62-280501号公報
【文献】特開2012-247146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低圧蒸気は単位体積当たりのエンタルピーが小さいため、低圧蒸気をそのままの状態で利用できる蒸気利用設備が限られている。そこで、低圧蒸気を蒸気昇圧装置により0.4~0.7MPa程度まで昇圧し、得られた中圧蒸気を蒸気利用設備に供給することが行われている。蒸気昇圧装置は、例えば雌雄一対のスクリューローターの間に形成される圧縮作動室に蒸気を導入し、この蒸気を連続して圧縮して昇圧する。また、蒸気昇圧装置は、等温圧縮に近い状態で圧縮動作を行わせるために、スクリューローターを収容したケーシング内に冷却水を噴射しながら運転している(特開2010-138721号公報)。噴射により微粒化された水滴は、ローター表面で蒸発して圧縮蒸気から気化潜熱分の熱を奪い、圧縮蒸気を冷却する。これにより、ローターの熱膨張が抑制され、ローターの齧りや損傷が防止される。
【0005】
一方、蒸気昇圧装置は、圧縮作動室内で蒸気が飽和温度未満になると、蒸気の凝縮が起こり、ローターの表面が凝縮水の液膜で覆われてしまうことがある。蒸気昇圧装置がこのような状態であると、噴射された水滴が蒸発する前に液膜に吸収されて表面積が減少し、冷却水の蒸発量が減少してしまう。冷却水の蒸発量が減少すると、ローターの冷却が不十分となるため、様々な不具合が生じるおそれがある。そこで、市販の水噴射式の蒸気昇圧装置においては、運転中に吐出側の蒸気が飽和温度未満になると、蒸気昇圧装置を停止させる機能を付与している。
【0006】
ところで、蒸気配管が十分に暖まっていない状態で蒸気昇圧装置を起動させると、吐出側の蒸気が飽和温度未満になっているために、直ぐに蒸気昇圧装置が停止されてしまう。そのため、蒸気発生装置の冷態起動時には、蒸気昇圧装置の起動と停止が頻発し、異常や故障を招くおそれがある。
【0007】
従って、本発明は、蒸気発生装置の冷態起動時に、蒸気昇圧装置を運転に適した状態で起動させることのできる蒸気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生させた蒸気を昇圧する蒸気昇圧装置と、前記蒸気昇圧装置の吸込側の蒸気温度を検出する吸込蒸気温度検出手段と、前記蒸気昇圧装置の吐出側の蒸気温度を検出する吐出蒸気温度検出手段と、前記蒸気昇圧装置の吐出側の蒸気圧力を検出する吐出蒸気圧力検出手段と、前記蒸気昇圧装置の起動と停止を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記吐出蒸気温度検出手段の検出温度が前記吐出蒸気圧力検出手段の検出圧力に対応する飽和温度以上、かつ、前記吸込蒸気温度検出手段の検出温度が100℃以上の状態が予め設定された第1時間継続した場合に、前記蒸気昇圧装置を起動させる蒸気システムに関する。
【0009】
また、前記制御手段は、前記蒸気昇圧装置の運転中、前記吐出蒸気温度検出手段の検出温度が前記吐出蒸気圧力検出手段の検出圧力に対応する飽和温度未満、又は、前記吸込蒸気温度検出手段の検出温度が100℃未満の場合に、前記蒸気昇圧装置を停止させることが好ましい。
【0010】
また、前記蒸気発生装置は、回収した蒸気ドレンを再蒸発させてフラッシュ蒸気と温水とに分離するフラッシュタンクと、蒸気ドレンを前記フラッシュタンクに回収するドレン回収ラインと、フラッシュ蒸気を前記フラッシュタンクから前記蒸気昇圧装置に送気する蒸気送気ラインと、温水を前記フラッシュタンクから排出するドレン排出ラインと、前記ドレン回収ラインに設けられた入口弁、前記蒸気送気ラインに設けられた蒸気送気弁、及び前記ドレン排出ラインに設けられたドレン排出弁を少なくとも含む複数の制御弁から構成される流通経路切替手段と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸気発生装置の冷態起動時に、蒸気昇圧装置を運転に適した状態で起動させることのできる蒸気システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る蒸気システムの概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係るフラッシュ蒸気発生装置の運転制御処理を示すフローチャートである。
図3】本実施形態に係るフラッシュ蒸気発生装置の蒸気昇圧機起動制御処理を示すフローチャートである。
図4】本実施形態に係るフラッシュ蒸気発生装置の蒸気昇圧機チェック処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これは、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
(実施形態)
まず、本発明の実施形態の概略を説明する。本発明の実施形態は、フラッシュ蒸気発生装置の冷態起動時に、蒸気昇圧機を運転に適した状態で起動させるものである。
【0014】
<蒸気システム1>
図1は、本実施形態に係る蒸気システム1の概略構成を示す図である。
蒸気システム1は、複数の蒸気ボイラ装置11と、スチームヘッダ12と、高圧蒸気利用設備13と、中圧蒸気利用設備14と、フラッシュ蒸気発生装置20(蒸気発生装置)と、蒸気昇圧機30(蒸気昇圧装置)と、給水タンク40とを備える。
また、蒸気システム1は、第1蒸気ラインL11と、第2蒸気ラインL12と、第3蒸気ラインL13と、第4蒸気ラインL14と、第1ドレンラインL31と、第2ドレンラインL32と、第3ドレンラインL33と、ボイラ給水ラインL41とを備える。
なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、ラインに配置される弁やセンサ等の各構成については、その一部を省略して記載している。さらに、ラインについても、本発明の説明に必要なものを主に記載し、一部については、その記載を省略している。
【0015】
蒸気ボイラ装置11は、例えば、多管式小型貫流ボイラにより構成される。複数の蒸気ボイラ装置11は、高圧蒸気S1(例えば、0.8MPa以上の蒸気)の供給源となる。蒸気ボイラ装置11は、ガス燃料や油燃料をバーナで燃焼させて水管内のボイラ水を加熱し、高圧蒸気S1を発生させる。蒸気ボイラ装置11の運転台数及び各蒸気ボイラ装置11の燃焼状態を制御することにより、蒸気発生量が調整可能に構成されている。
【0016】
第1蒸気ラインL11は、蒸気ボイラ装置11で発生した高圧蒸気S1をスチームヘッダ12に供給する。
スチームヘッダ12は、各蒸気ボイラ装置11で発生した高圧蒸気S1を一箇所に集め、ボイラ間の蒸気圧力のばらつきを吸収させる。スチームヘッダ12に集められた高圧蒸気S1は、複数の蒸気利用設備(負荷機器)に向けて供給される。
【0017】
第2蒸気ラインL12は、スチームヘッダ12に集められた高圧蒸気S1を、高圧蒸気利用設備13に供給する。
高圧蒸気利用設備13は、スチームヘッダ12から供給される高圧蒸気S1を熱源として利用する設備である。高圧蒸気利用設備13としては、例えば、クリーニング工場のアイロナー、及び食品加工工場のフライヤー等の生産設備が該当する。
【0018】
第3蒸気ラインL13は、スチームヘッダ12に集められた高圧蒸気S1を減圧して中圧蒸気S2とし、中圧蒸気S2を中圧蒸気利用設備14に供給する。第3蒸気ラインL13には、高圧蒸気S1から中圧蒸気S2(例えば、0.4~0.7MPa程度の蒸気)を得るために、図示しない減圧弁が設けられている。
中圧蒸気利用設備14は、スチームヘッダ12から供給される中圧蒸気S2、又は後述する蒸気昇圧機30から供給される中圧蒸気S2を熱源として利用する設備である。中圧蒸気利用設備14としては、例えば、クリーニング工場の乾燥機、食品加工工場の濃縮釜等の生産設備が該当する。
【0019】
第4蒸気ラインL14は、フラッシュ蒸気発生装置20で生成したフラッシュ蒸気S3を昇圧して中圧蒸気S2とし、この中圧蒸気S2を中圧蒸気利用設備14に供給する。第4蒸気ラインL14の上流側の端部は、フラッシュ蒸気発生装置20の蒸気出口に接続されている。第4蒸気ラインL14の下流側の端部は、第3蒸気ラインL13に接続されている。第4蒸気ラインL14には、フラッシュ蒸気S3から所要圧力の中圧蒸気S2を得るために、蒸気昇圧機30が設けられている。
【0020】
蒸気昇圧機30としては、例えば、スクリュー式圧縮機を使用することができる。蒸気昇圧機30は、フラッシュ蒸気発生装置20の制御手段29(後述する)から送信される駆動指令信号及び停止指令信号により制御される。
【0021】
第4蒸気ラインL14において、蒸気昇圧機30の吸込側には、温度センサ31(吸込蒸気温度検出手段)が設けられている。また、蒸気昇圧機30の吐出側には、温度センサ32(吐出蒸気温度検出手段)と、圧力センサ33(吐出蒸気圧力検出手段)とが設けられている。
温度センサ31は、吸込側において、第4蒸気ラインL14を流通するフラッシュ蒸気S3の温度を検出する。
温度センサ32は、吐出側において、第4蒸気ラインL14を流通する中圧蒸気S2の温度を検出する。
圧力センサ33は、吐出側において、第4蒸気ラインL14を流通する中圧蒸気S2の蒸気圧力を検出する。
温度センサ31、温度センサ32及び圧力センサ33は、フラッシュ蒸気発生装置20の制御手段29に接続され、検出信号を制御手段29に送出する。
【0022】
第1ドレンラインL31は、高圧蒸気利用設備13で発生した蒸気ドレンDを、給水タンク40に回収させる。高圧蒸気利用設備13の蒸気出口側にはスチームトラップ321が設けられている。スチームトラップ321は蒸気ドレンDを高圧蒸気S1から分離し、自動で排出する機器である。第1ドレンラインL31は、スチームトラップ321から給水タンク40まで配管されている。
【0023】
第1ドレンラインL31は、蒸気ドレンDを給水タンク40に回収する際には、バイパス弁V25によりラインが開放され、蒸気ドレンDをフラッシュ蒸気発生装置20のフラッシュタンク21に回収する際には、バイパス弁V25によってラインが遮断される。そのため、第1ドレンラインL31は、フラッシュタンク21に対して蒸気ドレンDを迂回させるバイパスラインとして機能する。
バイパス弁V25は、後述する流通経路切替手段28を構成する制御弁であり、制御手段29からの駆動信号により制御される。バイパス弁V25は、例えば、比例制御式電動弁である。
【0024】
第2ドレンラインL32は、高圧蒸気利用設備13で発生した蒸気ドレンDをフラッシュ蒸気発生装置20に導入させる。第2ドレンラインL32は、第1ドレンラインL31から分岐し、下流側の端部がフラッシュ蒸気発生装置20のドレン入口に接続されている。
【0025】
第3ドレンラインL33は、フラッシュ蒸気発生装置20から排出された温水Wを給水タンク40に回収させる。第3ドレンラインL33は、上流側の端部がフラッシュ蒸気発生装置20の温水出口に接続されており、下流側の端部が、第1ドレンラインL31に合流している。
【0026】
ボイラ給水ラインL41は、図示しない補給ラインによって給水タンク40に供給された補給水と、温水W(又は蒸気ドレンD)が混合されたボイラ給水を、各蒸気ボイラ装置11に供給する。ボイラ給水ラインL41の上流側の端部は、給水タンク40に接続されている。また、ボイラ給水ラインL41の下流側の端部は、分岐ラインを介して各蒸気ボイラ装置11に接続されている。補給水は、例えば、軟化水である。
【0027】
<フラッシュ蒸気発生装置20>
フラッシュ蒸気発生装置20は、フラッシュタンク21と、ドレン回収ラインL21と、蒸気送気ラインL22と、ドレン排出ラインL23と、ブローラインL24と、初期ドレン排出ラインL25と、流通経路切替手段28(入口弁V22、蒸気送気弁V23、ドレン排出弁V24)と、制御手段29とを備える。
【0028】
フラッシュタンク21は、回収した蒸気ドレンDを再蒸発させてフラッシュ蒸気S3と温水Wとに分離するための圧力容器である。フラッシュタンク21は、大気圧における沸点を超える液体を保有する容器であるので、労働安全衛生法施行令第1条第6号に定める小型圧力容器に適合するように製造されている。フラッシュタンク21の上部には、圧力容器内の圧力が高まった際に、圧力を放出するための安全弁(逃し弁ともいう。図示せず)が接続されている。
【0029】
ドレン回収ラインL21は、第1ドレンラインL31から第2ドレンラインL32に流入する蒸気ドレンDを、フラッシュタンク21に回収させる。ドレン回収ラインL21の上流側の端部は、装置のドレン入口になっており、下流側の端部は、フラッシュタンク21の胴部と接続されている。ドレン回収ラインL21には、入口弁V22が設けられている。
入口弁V22は、流通経路切替手段28を構成する制御弁であり、制御手段29からの駆動信号により制御される。入口弁V22は、例えば、比例制御式電動弁である。
【0030】
蒸気送気ラインL22は、フラッシュ蒸気S3をフラッシュタンク21から第4蒸気ラインL14へ送気させる。蒸気送気ラインL22の上流側の端部は、フラッシュタンク21の頂部と接続されている。また、蒸気送気ラインL22の下流側の端部は、装置の蒸気出口になっている。蒸気送気ラインL22には、蒸気送気弁V23が設けられている。
蒸気送気弁V23は、流通経路切替手段28を構成する制御弁であり、制御手段29からの駆動信号により制御される。蒸気送気弁V23は、例えば、比例制御式電動弁である。
【0031】
ドレン排出ラインL23は、フラッシュタンク21内の温水W(フラッシュ蒸気S3を分離後の蒸気ドレンD)を、第3ドレンラインL33へ送出させる。ドレン排出ラインL23の上流側の端部は、フラッシュタンク21の底部と接続されている。また、ドレン排出ラインL23の下流側の端部は、装置のドレン出口になっている。つまり、フラッシュタンク21で分離された温水Wは、第3ドレンラインL33及び第1ドレンラインL31を通じて給水タンク40に回収された後、ボイラ給水の一部として再利用される。ドレン排出ラインL23には、ドレン排出弁V24が設けられている。
ドレン排出弁V24は、流通経路切替手段28を構成する制御弁であり、制御手段29からの駆動信号により制御される。ドレン排出弁V24は、例えば、比例制御式電動弁である。
【0032】
ブローラインL24は、フラッシュタンク21内の温水W(フラッシュ蒸気S3を分離後の蒸気ドレンD)を別のドレンライン(図示せず)に送出する。別のドレンラインは、温水Wを、ブロー出口に排出する。ブローラインL24の上流側の端部は、ドレン排出弁V24の上流側のドレン排出ラインL23から分岐されている。ブローラインL24の下流側の端部は、装置のブロー出口になっている。ブローラインL24には、図示しない手動弁が設けられている。
【0033】
初期ドレン排出ラインL25は、高圧蒸気利用設備13の冷態起動時に、ドレン回収ラインL21に流入した低温の蒸気ドレンDを排出する。初期ドレン排出ラインL25の上流側の端部は、ドレン回収ラインL21から分岐されている。初期ドレン排出ラインL25の下流側の端部は、ブローラインL24に集合されている。初期ドレン排出ラインL25には、初期ドレン排出弁(図示せず)が設けられている。
初期ドレン排出弁は、流通経路切替手段28を構成する制御弁であり、制御手段29からの駆動信号により制御される。初期ドレン排出弁は、例えば、比例制御式電動弁である。
【0034】
流通経路切替手段28は、上述のように、入口弁V22、蒸気送気弁V23、ドレン排出弁V24、初期ドレン排出弁、及びバイパス弁V25の各制御弁からなる。
【0035】
制御手段29は、温度センサ31、32及び圧力センサ33からの検出信号に基づいて、蒸気昇圧機30の起動及び停止を制御する。また、制御手段29は、流通経路切替手段28等を制御する。制御手段29は、例えば、シーケンス制御を実行可能なPLC(Programmable Logic Controller)により構成される。PLCのメモリ領域には、各種のプログラムの他、予め入力された制御用の設定データや、センサ類による運転中の検出データが記憶される。
【0036】
<処理の説明>
次に、フラッシュ蒸気発生装置20の処理について説明する。
図2は、本実施形態に係るフラッシュ蒸気発生装置20での運転制御処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS(以降、単に「S」という。)10において、フラッシュ蒸気発生装置20の制御手段29は、電源投入(ON)を受け付けると、S11において、起動準備処理を行う。
起動準備処理では、制御手段29は、流通経路切替手段28を制御して、所定の開閉状態に各弁をリセットする。具体的には、流通経路切替手段28により、入口弁V22を全閉にし、蒸気送気弁V23を全閉にし、ドレン排出弁V24を全開にし、初期ドレン排出弁を全閉にし、バイパス弁V25を全開にする。通常、各弁は、装置停止時に所定の開閉状態に制御される。しかし、装置停止中に手動で弁操作が行われる場合を考慮して、起動準備処理により所定の開閉状態にリセットしている。なお、各弁の開度は、全閉が0%、全開が100%である。
【0037】
S12において、制御手段29は、運転スイッチONを受け付けると、S13において、運転処理を行う。
運転処理では、制御手段29は、フラッシュタンク21の容器内の水位を判断し、水位に応じた処理を行う。また、制御手段29は、入口弁V22、蒸気送気弁V23、ドレン排出弁V24、初期ドレン排出弁、及びバイパス弁V25の制御処理を並行して行う。なお、運転処理の詳細については、本願出願人による特願2017-50426号等に記載されている。
S14において、制御手段29は、蒸気昇圧機30の起動制御処理を行う。
【0038】
ここで、蒸気昇圧機30の起動制御処理について、図3に基づき説明する。
図3のS20において、制御手段29は、各センサから検出信号を受信する。ここで、各センサとは、少なくとも温度センサ31、温度センサ32及び圧力センサ33を含む。そして、各センサは、検出信号を一定の時間間隔で送出するものとする。なお、制御手段29が各センサに対して、例えば、一定の時間間隔で問合せをすることで、各センサが問合せに応答して検出信号を送出するものであってもよい。また、例えば、運転スイッチONの間は、制御手段29は、各センサから検出信号を常に受信するものであってもよい。
【0039】
S21において、制御手段29は、検出信号による検出データが、第1条件を満たすか否かを判断する。第1条件は、温度センサ32の検出データが示す温度(検出温度)が、圧力センサ33の検出データが示す圧力(検出圧力)に対する飽和温度以上であり、かつ、温度センサ31の検出データが示す温度(検出温度)が100℃以上の状態をいう。
検出データが第1条件を満たす場合(S21:YES)には、制御手段29は、処理をS22に移す。他方、検出データが第1条件を満たさない場合(S21:NO)には、制御手段29は、処理をS20に移す。
【0040】
S22において、制御手段29は、一定の時間間隔で受信している検出信号による検出データが上述した第1条件を満たした状態で、指定時間(第1時間)を経過したか否かを判断する。つまり、ここでは、制御手段29は、指定時間の間継続して第1条件を満たすか否かを判断している。指定時間を経過した場合(S22:YES)には、制御手段29は、処理をS23に移す。他方、指定時間を経過していない場合(S22:NO)には、制御手段29は、処理をS20に移す。指定時間を経過していない場合とは、第1条件を満たした状態で、まだ指定時間を経過していない場合の他、途中で第1条件を満たさなくなった場合を含む。
【0041】
S23において、制御手段29は、蒸気昇圧機30に対して駆動指令信号を送信することで、蒸気昇圧機30を起動させる。その後、制御手段29は、処理を図2のS15に移す。
この起動制御処理によって、フラッシュ蒸気発生装置20の運転を開始しても、第1条件を指定時間継続して満たさないと、蒸気昇圧機30の起動を開始しないようにできる。
図2のS15において、制御手段29は、蒸気昇圧機チェック処理を行う。
【0042】
ここで、蒸気昇圧機30のチェック処理について、図4に基づき説明する。このチェック処理は、蒸気昇圧機30の運転を継続して行うか否かを判断する処理である。
図4のS30において、制御手段29は、各センサから検出信号を受信する。この処理は、図3のS20の処理と同様である。
【0043】
S31において、制御手段29は、検出信号による検出データが、第2条件を満たすか否かを判断する。第2条件は、温度センサ32の検出データが示す温度が、圧力センサ33の検出データが示す圧力に対する飽和温度未満の状態をいう。
検出データが第2条件を満たす場合(S31:YES)には、制御手段29は、処理をS33に移す。他方、検出データが第2条件を満たさない場合(S31:NO)には、制御手段29は、処理をS32に移す。
【0044】
S32において、制御手段29は、検出信号による検出データが、第3条件を満たすか否かを判断する。第3条件は、温度センサ31の検出データが示す温度が100℃未満の状態をいう。
検出データが第3条件を満たす場合(S32:YES)には、制御手段29は、処理をS33に移す。他方、検出データが第3条件を満たさない場合(S32:NO)には、制御手段29は、本処理を終了し、処理を、図2のS16に移す。
S33において、制御手段29は、蒸気昇圧機30に対して停止指令信号を送信することで、蒸気昇圧機30を停止させる。その後、制御手段29は、本処理を終了し、処理を、図2のS16に移す。
【0045】
図2のS16において、制御手段29は、運転スイッチOFFを受け付けたか否かを判断する。運転スイッチOFFを受け付けた場合(S16:YES)には、制御手段29は、処理をS17に移し、フラッシュ蒸気発生装置20の運転を停止させる停止処理を行う。他方、運転スイッチOFFを受け付けていない場合(S16:NO)には、制御手段29は、処理をS18に移す。
S18において、制御手段29は、蒸気昇圧機30が運転中であるか否かを判断する。運転中である場合(S18:YES)には、制御手段29は、処理をS15に移す。他方、運転中ではない場合(S18:NO)には、制御手段29は、処理をS14に移す。
【0046】
以上説明した本実施形態の蒸気システム1によれば、以下のような効果を奏する。
蒸気システム1は、フラッシュ蒸気発生装置20と、蒸気昇圧機30と、蒸気昇圧機30の吸込側の蒸気温度を検出する温度センサ31と、蒸気昇圧機30の吐出側の蒸気温度を検出する温度センサ32と、蒸気昇圧機30の吐出側の蒸気圧力を検出する圧力センサ33と、蒸気昇圧機30の起動と停止を制御する制御手段29と、を含んで構成される。制御手段29は、蒸気昇圧機30の吐出側の蒸気の温度が、吐出側の蒸気の圧力に対応する飽和温度以上であり、かつ、蒸気昇圧機30の吸込側の蒸気の温度が100℃以上である状態が予め設定された第1時間継続した場合に、蒸気昇圧機30を起動させる。これにより、蒸気昇圧機30の一次側に供給されるフラッシュ蒸気S3の温度が100℃に達するまでは、蒸気昇圧機30の起動が禁止され、フラッシュ蒸気S3を蒸気昇圧機30に送気する第1蒸気送気ライン22が十分に暖まった状態で蒸気昇圧機30が起動される。よって、蒸気昇圧機30に吐出側温度が飽和温度未満になると停止させる機能が付与されていても、蒸気昇圧機30の起動と停止が頻発する状況となってしまうのを防止することができる。
【0047】
また、制御手段29は、蒸気昇圧機30の吐出側の蒸気の温度が、蒸気の圧力に対応する飽和温度未満、又は、蒸気昇圧機30の吸込側の蒸気の温度が100℃未満となった場合に、蒸気昇圧機30の運転を停止させる。これにより、蒸気昇圧機30の吐出側の圧力が維持された状態で、吸込側から供給されるフラッシュ蒸気S3の温度が低下した場合にも、蒸気昇圧機30の運転が停止される。よって、蒸気昇圧機30の吸込側においてフラッシュ蒸気S3の凝縮が起こったとしても、ドレンが作動中の圧縮作動室に侵入することがなく、蒸気昇圧機30の異常・故障リスクをより低減することができる。
【0048】
また、フラッシュ蒸気発生装置20は、回収した蒸気ドレンDを再蒸発させてフラッシュ蒸気S3と温水Wとに分離するフラッシュタンク21と、蒸気ドレンDをフラッシュタンク21に回収するドレン回収ラインL21と、フラッシュ蒸気S3をフラッシュタンク21から蒸気昇圧機30に送気する蒸気送気ラインL22と、温水Wをフラッシュタンク21から排出するドレン排出ラインL23と、ドレン回収ラインL21に設けられた入口弁V22、蒸気送気ラインL22に設けられた蒸気送気弁V23、及びドレン排出ラインL23に設けられたドレン排出弁V24を少なくとも含む複数の制御弁から構成される流通経路切替手段28と、を含んで構成される。これにより、蒸気発生装置として、フラッシュ蒸気発生装置20を用いることができる。そして、フラッシュ蒸気発生装置20の運転時に、制御弁の制御を行うことで、蒸気昇圧機30にフラッシュ蒸気S3を送出して、所要の中圧蒸気を安価に得ることができる。
【0049】
以上、本発明の蒸気システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
蒸気システムは、蒸気発生装置と、蒸気昇圧装置とを備えるものであればよく、例えば、高圧蒸気利用設備や中圧蒸気利用設備を備えた本発明の蒸気システムに限定されるものではない。
【0050】
また、本実施形態では、蒸気システム1を、蒸気発生装置としてのフラッシュ蒸気発生装置20を含んで構成したが、これに限らない。即ち、蒸気システムを、シェルアンドチューブ方式の低圧蒸気発生装置、又はヒートポンプ方式の低圧蒸気発生装置を含んで構成してもよい。
【0051】
また、蒸気昇圧機チェック処理において、第2条件と第3条件とを順番に満たすか否かを判定したが、同時に行ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 蒸気システム
11 蒸気ボイラ装置
12 スチームヘッダ
13 高圧蒸気利用設備
14 中圧蒸気利用設備
20 フラッシュ蒸気発生装置
21 フラッシュタンク
29 制御手段
30 蒸気昇圧機
31,32 温度センサ
33 圧力センサ
40 給水タンク
D 蒸気ドレン
L21 ドレン回収ライン
L22 蒸気送気ライン
L23 ドレン排出ライン
S3 フラッシュ蒸気
V22 入口弁
V23 蒸気送気弁
V24 ドレン排出弁
W 温水
図1
図2
図3
図4