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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/06 20060101AFI20220705BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20220705BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C09J5/06
B29C65/48
H05B3/00 340
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018183988
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020050827
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 絋次朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】森脇 幹文
(72)【発明者】
【氏名】中井 正規
(72)【発明者】
【氏名】市原 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨永 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】氏平 直樹
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-212459(JP,A)
【文献】特開平08-109359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B29C 65/48
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の部材と、該複数の部材の接合対象部に配置された熱硬化性接着剤とを備えた接合対象物の接合を行うための装置であって、
前記複数の部材の積層方向一方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第1電極と、
前記複数の部材の積層方向一方側又は他方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第2電極とを備え、
前記接合対象部は、前記複数の部材の積層方向に垂直な方向に延びるように配置されており、
前記第1電極及び前記第2電極の位置が、前記接合対象物の位置に対して、前記接合対象部が延びる方向に相対的に変化するように、両電極及び/又は前記接合対象物が連続的に移動可能に構成されており、
前記第1電極及び前記第2電極を、前記接合対象物の前記接合対象部近傍の表面に加圧当接させた状態で、両電極間に通電し、前記接合対象物において発生する抵抗発熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させて前記接合対象物の接合を行う
ことを特徴とする接合装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1電極及び前記第2電極は、ともに前記複数の部材の積層方向一方側に配置されており、
前記複数の部材の積層方向他方側に、前記第1電極及び前記第2電極と対向するように配置された支持部材を備えた
ことを特徴とする接合装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第1電極及び前記第2電極は、略円柱状のガン本体と、該ガン本体の先端に配置された電極部とを備えており、
前記接合対象物の表面に、前記電極部を加圧当接させて、両電極間に通電を行う
ことを特徴とする接合装置。
【請求項4】
請求項において、
前記第1電極及び前記第2電極は、ローラ電極であり、
前記ローラ電極を、前記接合対象物の表面に加圧当接させた状態で回転させることにより、前記接合対象物の接合を連続的に行う
ことを特徴とする接合装置。
【請求項5】
積層された複数の部材と、該複数の部材の接合対象部に配置された熱硬化性接着剤とを備えた接合対象物の接合を行う方法であって、
前記複数の部材の積層方向一方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第1電極と、
前記複数の部材の積層方向一方側又は他方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第2電極とを備えた装置を用い
前記第1電極及び前記第2電極を、前記接合対象物の前記接合対象部近傍の表面に加圧当接させた状態で、両電極間に通電し、前記接合対象物において発生する抵抗発熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させて前記接合対象物の接合を行うものであり、
前記接合対象部は、前記複数の部材の積層方向に垂直な方向に延びるように配置されており、
前記第1電極及び前記第2電極の位置が、前記接合対象物の位置に対して、前記接合対象部が延びる方向に相対的に変化するように、両電極及び/又は前記接合対象物を連続的に移動させることにより、前記接合対象物の接合を連続的に行う
ことを特徴とする接合方法。
【請求項6】
請求項において、
前記複数の部材は、最外層に配置された金属部材を備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、ともに前記金属部材の表面に当接可能に配置されており、
前記第1電極及び前記第2電極を、前記金属部材の前記接合対象部近傍の表面に加圧当接させた状態で、両電極間に通電し、前記金属部材において発生する抵抗発熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させて前記接合対象物の接合を行う
ことを特徴とする接合方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、
前記第1電極及び前記第2電極は、略円柱状のガン本体と、該ガン本体の先端に配置された電極部とを備えており、
前記接合対象物の表面に、前記電極部を加圧当接させて、両電極間に通電を行う
ことを特徴とする接合方法。
【請求項8】
請求項において、
前記第1電極及び前記第2電極は、ローラ電極であり、
前記ローラ電極を、前記接合対象物の表面に加圧当接させた状態で回転させることにより、前記接合対象物の接合を連続的に行う
ことを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のボディ製造工程等においては、熱硬化性接着剤を用いて互いに重ね合わせられた部材を接合する場合、塗装乾燥工程における塗装乾燥炉を用いたワークの加熱乾燥時に、併せて接着剤を硬化させることが行われている。
【0003】
しかしながら、塗装乾燥炉を用いた硬化のみでは、工程間搬送時のワーク変形等により接着剤の塗布状態が変化するため、接合品質を保証することが困難であるという問題があった。
【0004】
上記問題を解決するため、例えば高周波誘導加熱にて接着剤を加熱硬化する方法や、磁場による誘導電流発生にて接着剤を加熱硬化する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-006908号公報
【文献】特開2008-115285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、ワーク形状に合わせて一品一葉のコイルを作製する必要があること等の問題があった。また、特許文献2のものでは、高価な磁石を用いる必要があることや、ワーク形状により渦電流の発生状態が変化するため精密な制御が困難であること等の問題があった。このように、上記文献の技術は、いずれも汎用性や生産性、コスト性等において改善の余地があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、汎用性、生産性及びコスト性に優れるとともに、ワークに求められる十分な接合品質をもたらし得る接合装置及び接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の技術に係る部材の接合装置は、積層された複数の部材と、該複数の部材の接合対象部に配置された熱硬化性接着剤とを備えた接合対象物の接合を行うための装置であって、前記複数の部材の積層方向一方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第1電極と、前記複数の部材の積層方向一方側又は他方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第2電極とを備え、前記接合対象部は、前記複数の部材の積層方向に垂直な方向に延びるように配置されており、前記第1電極及び前記第2電極の位置が、前記接合対象物の位置に対して、前記接合対象部が延びる方向に相対的に変化するように、両電極及び/又は前記接合対象物が連続的に移動可能に構成されており、前記第1電極及び前記第2電極を、前記接合対象物の前記接合対象部近傍の表面に加圧当接させた状態で、両電極間に通電し、前記接合対象物において発生する抵抗発熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させて前記接合対象物の接合を行うことを特徴とする。
【0009】
本技術によれば、第1電極及び第2電極間の通電により接合対象物において抵抗発熱が生じる。そして、当該抵抗発熱により熱硬化性接着剤を硬化させることができる。そうして、特に高剛性を要する接合対象部における熱硬化性接着剤の硬化を確実に行うことができるとともに、接合対象物に求められる十分な接合品質を確保することができる。そして、簡便な構成で熱硬化性接着剤の硬化を行うことができるから、汎用性、生産性及びコスト性に優れた接合装置をもたらすことができる。
【0010】
第2の技術は、第1の技術において、前記第1電極及び前記第2電極は、ともに前記複数の部材の積層方向一方側に配置されており、前記複数の部材の積層方向他方側に、前記第1電極及び前記第2電極と対向するように配置された支持部材を備えたことを特徴とする。
【0011】
本技術によれば、複数の部材の積層方向他方側に厚い部材等が存在し、電極を配置することができない場合であっても、複数の部材の積層方向一方側に配置された第1電極及び第2電極間に通電させることで、両電極が加圧当接された部材において発生する抵抗発熱により熱硬化性接着剤を硬化させ、接合対象物の接合を行うことができる。
【0012】
第1の技術において、前記接合対象部は、前記複数の部材の積層方向に垂直な方向に延びるように配置されており、前記第1電極及び前記第2電極の位置が、前記接合対象物の位置に対して、前記接合対象部が延びる方向に相対的に変化するように、両電極及び/又は前記接合対象物が連続的に移動可能に構成されている。
【0013】
本技術によれば、接合対象物を、複数の部材の積層方向に垂直な方向に連続的に接合させる必要がある場合、両電極及び/又は接合対象物を移動させることにより、接合対象部が延びる方向に両電極及び複数の部材の相対的な位置を連続的に変化させることができ、延いては、接合対象物の連続的な接合が可能となる。
【0014】
の技術は、第1又は第2の技術において、前記第1電極及び前記第2電極は、略円柱状のガン本体と、該ガン本体の先端に配置された電極部とを備えており、前記接合対象物の表面に、前記電極部を加圧当接させて、両電極間に通電を行うことを特徴とする。
【0015】
本技術によれば、第1電極及び第2電極の各々に備えられた電極部が接合対象物の表面に加圧当接されるから、両電極間に通電したときに、電流経路の広がりを抑制することができ、接合対象部の範囲が制限される場合であっても、効果的に接合対象物の接合を行うことができる。
【0016】
の技術は、第の技術において、前記第1電極及び前記第2電極は、ローラ電極であり、前記ローラ電極を、前記接合対象物の表面に加圧当接させた状態で回転させることにより、前記接合対象物の接合を連続的に行うことを特徴とする。
【0017】
本技術によれば、接合対象部が広範囲に亘る場合や、部材が長尺部材であり接合対象部が当該長尺部材の長手方向に延びるように配置されている場合に、簡易な構成で接合対象物の接合を迅速に行うことができる。
【0018】
の技術に係る接合方法は、積層された複数の部材と、該複数の部材の接合対象部に配置された熱硬化性接着剤とを備えた接合対象物の接合を行う方法であって、前記複数の部材の積層方向一方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第1電極と、前記複数の部材の積層方向一方側又は他方側に、前記接合対象物の表面に当接可能に配置された第2電極とを備えた装置を用い、前記第1電極及び前記第2電極を、前記接合対象物の前記接合対象部近傍の表面に加圧当接させた状態で、両電極間に通電し、前記接合対象物において発生する抵抗発熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させて前記接合対象物の接合を行うものであり、前記接合対象部は、前記複数の部材の積層方向に垂直な方向に延びるように配置されており、前記第1電極及び前記第2電極の位置が、前記接合対象物の位置に対して、前記接合対象部が延びる方向に相対的に変化するように、両電極及び/又は前記接合対象物を連続的に移動させることにより、前記接合対象物の接合を連続的に行うことを特徴とする。
【0019】
本技術によれば、第1電極及び第2電極間の通電により部材において抵抗発熱が生じる。そして、当該抵抗発熱により熱硬化性接着剤を硬化させることができる。そうして、特に高剛性を要する接合対象部における熱硬化性接着剤の硬化を確実に行うことができるとともに、接合対象物に求められる十分な接合品質を確保することができる。そして、簡便な構成で熱硬化性接着剤の硬化を行うことができるから、汎用性、生産性及びコスト性に優れた接合方法をもたらすことができる。
【0020】
の技術は、第の技術において、前記複数の部材は、最外層に配置された金属部材を備え、前記第1電極及び前記第2電極は、ともに前記金属部材の表面に当接可能に配置されており、前記第1電極及び前記第2電極を、前記金属部材の前記接合対象部近傍の表面に加圧当接させた状態で、両電極間に通電し、前記金属部材において発生する抵抗発熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させて前記接合対象物の接合を行うことを特徴とする。
【0021】
本技術によれば、第1電極及び第2電極間の通電により、金属部材において発生する抵抗発熱により接合を行うから、複数の部材が樹脂部材を含んでいる場合であっても、接合対象物の接合を行うことができる。
【0022】
第5の技術において、前記接合対象部は、前記複数の部材の積層方向に垂直な方向に延びるように配置されており、前記第1電極及び前記第2電極の位置が、前記接合対象物の位置に対して、前記接合対象部が延びる方向に相対的に変化するように、両電極及び/又は前記接合対象物を連続的に移動させることにより、前記接合対象物の接合を連続的に行う。
【0023】
本技術によれば、接合対象物を、複数の部材の積層方向に垂直な方向に連続的に接合させる必要がある場合、両電極及び/又は接合対象物を移動させることにより、接合対象部が延びる方向に両電極及び接合対象物の相対的な位置を連続的に変化させることができ、延いては、接合対象物の連続的な接合が可能となる。
【0024】
の技術は、第5又は第6の技術において、前記第1電極及び前記第2電極は、略円柱状のガン本体と、該ガン本体の先端に配置された電極部とを備えており、前記接合対象物の表面に、前記電極部を加圧当接させて、両電極間に通電を行うことを特徴とする。
【0025】
本技術によれば、第1電極及び第2電極の各々に備えられた電極部が接合対象物の表面に加圧当接されるから、両電極間に通電したときに、電流経路の広がりを抑制することができ、接合対象部の範囲が制限される場合であっても、効果的に複数の部材の接合を行うことができる。
【0026】
の技術は、第の技術において、前記第1電極及び前記第2電極は、ローラ電極であり、前記ローラ電極を、前記接合対象物の表面に加圧当接させた状態で回転させることにより、前記接合対象物の接合を連続的に行うことを特徴とする。
【0027】
本技術によれば、接合対象部が広範囲に亘る場合や、部材が長尺部材であり接合対象部が長尺部材の長手方向に延びるように配置されている場合に、簡易な構成で接合対象物の接合を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上述べたように、本開示によると、第1電極及び第2電極間の通電により接合対象物において抵抗発熱が生じる。そして、当該抵抗発熱により熱硬化性接着剤を硬化させることができる。そうして、特に高剛性を要する接合対象部における熱硬化性接着剤の硬化を確実に行うことができるとともに、接合対象物に求められる十分な接合品質を確保することができる。そして、簡便な構成で熱硬化性接着剤の硬化を行うことができるから、汎用性、生産性及びコスト性に優れた接合装置をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係る接合装置の機能構成を示す模式図である。
図2図1の接合装置を用いてワークの接合を行う様子を模式的に示す斜視図である。
図3】ワークの接合手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態2に係る接合方法を説明するための接合装置の模式的な断面図である。
図5】実施形態3に係る接合方法を説明するための接合装置の模式的な断面図である。
図6】実施形態4に係る接合装置の構成を示す模式的な断面図である。
図7】実施形態5に係る接合装置の構成を示す模式的な断面図である。
図8】実施形態6に係る接合装置の構成を示す模式的な断面図である。
図9】実施形態7に係る接合装置の構成を示す模式的な断面図である。
図10図9の接合装置を用いてワークの接合を行う様子を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0031】
(実施形態1)
<部材の接合装置>
-装置概略-
図1は、接合装置100の機能構成の模式図である。図1に示すように、接合装置100は、第1電極101と、第2電極102と、支持部材400と、電源50と制御部60と、表示部70と、入力部80とを備えている。
【0032】
本実施形態に係る接合装置100は、積層された2つの部材501,502(複数の部材)と、部材501,502の接合対象部505に配置された熱硬化性接着剤503とを備えたワーク500(接合対象物)の接合を行うための装置である。ワーク500は、第1電極101及び第2電極102と、支持部材400との間に挟み込まれる。
【0033】
なお、説明の便宜上、図1において、第1電極101、第2電極102、支持部材400及びワーク500(接合対象物)を含む要部の断面以外の機械的構造は図示を省略している。また、接合装置100は、図1に示す以外にも多くの構成要素、例えば、第1電極101及び第2電極102が支持された装置基台や、第1電極101及び第2電極102の駆動機構、第1電極101、第2電極102及び支持部材400の加圧機構、並びに、当該加圧機構を駆動させるためのエアチューブ等を備えているが、これらについても図示及びその詳細な説明を省略する。
【0034】
-方向-
本明細書において、便宜的に、要部における方向を以下のとおり称することがある。すなわち、図1に示すように、ワーク500に対して、第1電極101及び第2電極102が配置された方向を「上方向」、支持部材400が配置された方向を「下方向」と称することがある。この場合、「上下方向」はワーク500の部材501,502の「積層方向」に相当する。また、図1に示すように、図1の紙面に平行であり且つ「上下方向」に垂直な方向であって、第1電極101側を「左方向」、第2電極102側を「右方向」と称することがある。そして、「上下方向」及び「左右方向」に垂直な方向を「前後方向」と称することがあり、図1の紙面の手前側を「前方向」、奥側を「後方向」と称することがある。なお、上記方向は、要部以外の構成、すなわち電源50、制御部60、表示部70、入力部80や、その他の図示しない構成の配置を制限するものではない。
【0035】
-第1電極及び第2電極-
図1図2に示すように、第1電極101は、ワーク500の上側(複数の部材の積層方向一方側)に配置され、回転軸101Eにより回転軸101E周りに回転可能に支持された円盤状のローラ電極である。第1電極101は、ワーク500の上側の部材501の表面(部材の積層方向一方側の表面)に当接可能に配置されている。
【0036】
第2電極102は、第1電極101と同様に、ワーク500の上側(複数の部材の積層方向一方側)に配置され、回転軸102Eにより回転軸102E周りに回転可能に支持された円盤状のローラ電極である。第2電極102は、ワーク500の上側の部材501の表面(部材の積層方向一方側の表面)に当接可能に配置されている。第1電極101と、第2電極102とは、上下方向の径及び左右方向の幅が同一であり、左右方向に離間した状態で配置されている。第1電極101及び第2電極102の上下方向の径、左右方向の幅及び左右方向の距離等は、接合対象部505の範囲や、ワーク500の構成に応じて適宜設定され得る。回転軸101Eの中心軸と回転軸102Eの中心軸とは同軸となるように構成されており、両回転軸101E,102Eは接続部110で物理的に接続されている。なお、第1電極101と第2電極102とは互いに絶縁されており、接続部110において電気的には接続されていない。
【0037】
回転軸101E,102Eを接続する接続部110には、両回転軸101E,102Eを図2中矢印Q1で示す方向に回転させるための駆動手段(不図示)が付設されている。接続部110に備えられた駆動手段は制御部60に電気的に接続されており、制御部60の指令に応じて、予め設定された所定の回転速度で、第1電極101及び第2電極102を回転させるように構成されている。
【0038】
-支持部材-
支持部材400は、ワーク500の下側(複数の部材の積層方向他方側)に、第1電極101及び第2電極102と対向するように配置され、回転軸400Eにより回転軸400E周りに回転可能に支持された円盤状のローラ部材である。支持部材400は、第1電極101及び第2電極102とともにワーク500を挟み込んで、当該ワーク500を支持するためのものである。
【0039】
支持部材400の回転軸400Eは、回転軸101E,102Eの回転に連動して図2中矢印Q2で示す方向に回転するように構成されている。そして、第1電極101,第2電極102,支持部材400の回転に伴って、ワーク500は、符号D1で示す方向に移動する。
【0040】
支持部材400の上下方向の径は、特に限定されるものではないが、第1電極101及び第2電極102と同程度又は少し小さい径とすることができる。これにより、ワーク500の送りがスムーズとなる。支持部材400の左右方向の幅は、第1電極101及び第2電極102のワーク500への十分な接触を確保する観点から、第1電極101の左端から第2電極の右端までの幅と同程度以上の幅であることが望ましい。
【0041】
なお、第1電極101、第2電極102及び支持部材400の回転方向を逆方向とし、ワーク500を前方に送る構成としてもよい。また、ワーク500の代わりに、第1電極101、第2電極102及び支持部材400をワーク500に対して前側又は後側に移動させる構成としてもよい。
【0042】
-加圧機構-
第1電極101及び第2電極102の接続部110及び支持部材400の回転軸400Eには、第1電極101,第2電極102及び支持部材400を上下方向に移動させ、各電極101,102及び支持部材400をワーク500に当接させて加圧するための加圧機構(不図示)が付設されている。本実施形態において、加圧機構は、エアシリンダと圧縮ポンプ等で構成されているが、特にこれに限定されず、例えば、油圧シリンダやサーボモータ等を用いるようにしてもよい。
【0043】
具体的に、接続部110に備えられた加圧機構は、第1電極101及び第2電極102を下方向に加圧し、回転軸400Eに備えられた加圧機構は、支持部材400を上方向に加圧するように構成されている。接続部110及び回転軸400Eに備えられた加圧機構はそれぞれ制御部60に電気的に接続されている。なお、接続部110に設けられた加圧機構と、回転軸400Eに設けられた加圧機構とは、互いに独立にワーク500に対し加圧可能に構成されている。そして、各加圧機構のそれぞれの加圧力は予め所定の値に設定されている。各加圧機構の加圧力は、それぞれ同じであっても、互いに異なっていてもよい。また、第1電極101及び第2電極102とワーク500との十分な接触が確保される場合は、第1電極101及び第2電極102だけを加圧させて、支持部材400を加圧させない構成、又はその逆の構成としてもよい。
【0044】
-その他の構成-
電源50は、直流電源又は交流電源であり、第1電極101と第2電極102とにそれぞれ電気的に接続されている。電源50は、制御部60からの所定の接合条件に応じた制御信号によって、第1電極101と第2電極102との間に、所定の量の電流を所定時間流すように構成されている。
【0045】
制御部60は、第1電極101及び第2電極102の駆動手段及び加圧機構、支持部材400の加圧機構,電源50に電気的に接続されており、これらの構成に対して、それぞれ所定の接合条件に応じて制御信号を送るように構成されている。また、制御部60は、表示部70及び入力部80にも電気的に接続されている。制御部60は、通常、CPU(Central Processing Unit)と外部機器とのインターフェース等から構成される。
【0046】
制御部60には、ワーク500の構造や材質等に応じて予め設定された接合プログラムが格納されていてもよい。なお、当該接合プログラムは、制御部60と別に設けられた図示しない記憶部に格納されていてもよい。その場合は、制御部60が接合プログラムを記憶部から読み込んで、所定の接合を実行するように接合装置100の各部に制御信号を送る。この接合プログラムには、ワーク500の構造や材質等に応じた、電流値、通電時間、加圧力、加圧時間等の接合条件が設定されている。なお、記憶部は制御部60の内部に組み込まれていてもよい。
【0047】
表示部70は、制御部60に接続されており、例えば、これから実行しようとする接合プログラムの内容を表示したり、接合中の各種情報、例えば、通電電流値の時間変化等を表示したりするように構成されている。なお、表示部70には、上記以外のデータを表示させてもよい。表示部70は、通常、ブラウン管や液晶ディスプレイ等の表示デバイスを含んでいる。
【0048】
入力部80は、例えば、接合プログラムの修正内容等を直接、制御部60に入力できるように構成されている。また、制御部60等から,これから実行しようとする接合プログラムを呼び出すための指令を入力できるように構成されている。入力部80は、キーボードやタッチパネル等で構成され得る。また、タッチパネルを使用する場合には、表示部70と入力部80とが共通化されていてもよい。
【0049】
≪ワーク≫
第1電極101及び第2電極102と、支持部材400(支持部材)との間には、溶接対象のワーク500が挟み込まれる。このワーク500は、上側に配置された部材501と、下側に配置された部材502とが、接合対象部505に配置された熱硬化性接着剤503を介して積層されてなる。
【0050】
部材501,502は、例えば、アルミニウム、鋼、鉄及びこれらの合金等の金属製の部材や、カーボン繊維強化複合金属材料製の部材等である。これらの部材は、具体的には例えば、フロントパネル、フロアパネル、リアパネル、サイドシル、トンネルレイン、クロスメンバ、フレーム、アウターパネル等の自動車用の車両部品や、航空機、電車等その他の車両部品、建材、工業製品等において互いに接合され得る部材である。
【0051】
図2に示すように、熱硬化性接着剤503が配置された接合対象部505は、前後方向に延びるように配置されている。
【0052】
上述のごとく、第1電極101,第2電極102,支持部材400の回転に伴って、ワーク500は、図2中符号D1で示す方向に送られる。そうすると、第1電極101及び第2電極102の位置が、ワーク500の位置に対して、接合対象部505が延びる方向、すなわち図2中符号D2で示す方向に相対的に移動する。そうして、ワーク500における接合対象部505の接合を連続的に行うことができる。
【0053】
なお、接合対象部505周りの加熱が可能であれば、ワーク500は、部材501,502に加え、さらにこれらの部材に積層された部材を有していてもよい。
【0054】
≪熱硬化性接着剤≫
熱硬化性接着剤503としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等を主成分とする一液加熱硬化型接着剤や、繊維強化複合材料であるUDテープ等が挙げられる。なお、UDテープは、部材501及び部材502の表面に貼り付けることで両部材501,502間に介在させ、両部材501,502の板剛性を向上させることができる。熱硬化性接着剤503の硬化条件は、特に限定されるものではなく、熱硬化性接着剤503の種類に応じて適宜決定されるが、具体的に例えば140~160℃×20分や、80℃×60分(低温硬化タイプ)などが挙げられる。
【0055】
<部材の接合方法>
接合装置100を用いたワーク500の接合方法は、図3に示すように、配置工程S1と、条件設定工程S2と、硬化工程S3とを備えている。
【0056】
≪配置工程≫
配置工程S1において、まず部材501,502の接合対象部505に対応する接着剤配置部に、熱硬化性接着剤503を配置し、部材501,502を積層させてワーク500を準備する。
【0057】
そして、ワーク500を接合装置100の第1電極101及び第2電極102と支持部材400との間に配置させる。
【0058】
≪条件設定工程≫
条件設定工程S2において、ワーク500の接合条件を設定する。具体的には例えば、部材501,502の材質を考慮し、熱硬化性接着剤503の硬化条件に応じた温度上昇を可能とすべく、第1電極101及び第2電極102間に流す電流量、通電時間に関する通電条件を設定する。電流量は一定としてもよいし、時間変化する構成としてもよい。また、熱硬化性接着剤503の十分な硬化を促し、部材501,502を接合対象部505において十分に接合させ、高剛性を得る観点から、第1電極101、第2電極102及び支持部材400の加圧力、加圧時間等に関する加圧条件を設定する。加圧力は一定でもよいし、時間変化する構成としてもよい。さらに、両電極101,102の回転速度、すなわちワーク500の送り速度に関する送り条件等も設定する。速度も一定としてもよいし、時間変化する構成としてもよい。また、接合対象部505が連続して設けられておらず、所定間隔を開けて、点在している場合には、両電極101,102にパルス状に通電して、所望の接合対象部505において接合が行われるように構成することができる。
【0059】
なお、例えば、部材501,502としてアルミニウム合金製の厚さ5mm程度の板材、熱硬化性接着剤503としてエポキシ樹脂を主成分とする硬化条件140~160℃×20分の一液加熱硬化型接着剤を使用した場合、部材501の接合対象部505周りの温度が抵抗発熱により140~160℃程度になり、且つ20分程度その温度を保持することができるように、通電条件、加圧条件、送り条件等を設定する。
【0060】
≪硬化工程≫
硬化工程S3において、条件設定工程S2において設定した接合条件に応じたワーク500の接合を行う。具体的には例えば、予め設定した加圧条件で第1電極101、第2電極102及び支持部材400をワーク500の接合対象部505近傍の表面に加圧当接させる。この状態で、予め設定された通電条件に応じて、第1電極101及び第2電極102間に通電させる。そうすると、図1に示すように、例えば第1電極101及び第2電極102間に符号Pで示すように電流が流れる。そうすると、部材501の抵抗により電流経路P周りに熱が発生する。そうして、所定の加圧時間、通電時間の間、加圧及び通電を行い、部材501の電流経路P周りに生じた抵抗発熱により熱硬化性接着剤503を十分に硬化させ、ワーク500の接合を行う。
【0061】
なお、所定個所における熱硬化性接着剤503の硬化が十分に行われ、ワーク500の接合が行われたら、第1電極101、第2電極102及び支持部材400の加圧力を保持したまま、駆動手段により第1電極101及び第2電極102を回転させて、ワーク500をD1方向に少し送る。そうすると、第1電極101及び第2電極102の位置は、ワーク500の位置に対して、図2の符号101A,102Aで示すように、前側に向かって相対的に移動する。その後、第1電極101及び第2電極102を停止させるとともに両電極間に通電を行い、先に接合を行った個所の前側に隣接する個所の接合を行う。このようにして、第1電極101及び第2電極102の停止及び回転と、両電極間の通電とを繰り返し、図2に示すように、前後方向に延びる接合対象部505の連続的な接合を行う。なお、部材501,502の材質、熱硬化性接着剤503の物性に応じて、第1電極101及び第2電極102を停止させることなく連続的に回転させて、常にワーク500をD1方向に送る構成としてもよい。
【0062】
また、図1では、電流経路Pは、第1電極101側から第2電極102側に向かって電流が流れるように記載されているが、電源50が直流電源である場合は、逆方向に電流が流れる構成としてもよいし、電源50として交流電源を用いて、電流の流れる方向が定期的に変更される構成としてもよい。なお、部材501の加熱を均一化するとともに、接合装置100及びワーク500の局所的な過熱を抑制する観点から、電源50を交流電源として、電流が流れる方向を切り替える構成とすることが望ましい。
【0063】
<作用効果>
本実施形態に係る接合装置100及び接合方法によれば、第1電極101及び第2電極102間に通電させ、部材501において発生する抵抗発熱により熱硬化性接着剤503を硬化させるから、特に高剛性を要する接合対象部505における熱硬化性接着剤503の硬化を確実に行うことができる。
【0064】
また、例えば部材502が厚い場合や、部材502の下側にさらに別部材が存在する場合等、部材502の下側に電極を配置することができない場合であっても、第1電極101及び第2電極102は、ともに上側の部材501側に配置されているから、両電極間に通電させることで、部材501において生じる抵抗発熱により熱硬化性接着剤503を硬化させ、ワーク500を接合させることができる。
【0065】
なお、部材501及び/又は部材502がカーボン繊維強化複合金属材料製の部材である場合、通常のスポット溶接等では、カーボン拡散に起因する部材501及び/又は部材502の変形等により接合が困難となり得る。本実施形態に係る接合装置100及び接合方法によれば、熱硬化性接着剤503を硬化させることで部材501,502を接合させるから、両部材501,502の変形等を抑制して、高品質の接合を行うことができる。
【0066】
このように、本実施形態に係る接合装置100及び接合方法によれば、ワーク500に求められる高剛性等の十分な接合品質を確保することができる。また、簡便な構成で熱硬化性接着剤503の硬化を行うことができるから、例えば製造ラインに組み込むこと等も容易であり、汎用性、生産性及びコスト性に優れた接合装置100及び接合方法をもたらすことができる。
【0067】
(実施形態2)
以下、本開示に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
ワーク500の構造は、実施形態1のものに限られない。
【0069】
すなわち、例えば図4に示すように、部材502は、樹脂製の部材であってもよい。樹脂は、具体的には例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等である。また、部材502は、上記樹脂中に炭素繊維、ガラスファイバ、バサルトファイバ等の強化繊維を含む繊維強化樹脂製の部材やUDテープ等であってもよい。繊維強化樹脂製の部材やUDテープ等は、軽量且つ強度及び耐久性に優れる。また、樹脂製の部材は、成形性、強度、意匠性、機能性等の向上の観点から、フィラー、顔料、染料、耐衝撃性改良剤、UV吸収剤等の添加材が1種又は2種以上含まれているものであってもよい。
【0070】
部材502が樹脂製の部材である場合、耐熱性の観点から、部材502の直下に電極を配置することが困難となり得る。接合装置100であれば、第1電極101及び第2電極102は、ともに上側の部材501側に配置されているから、両電極は、下側の樹脂製の部材502に直接接触しない。そうして、両電極間に通電させることで、部材501において生じる抵抗発熱により熱硬化性接着剤503を硬化させ、ワーク500を接合させることができる。
【0071】
(実施形態3)
図5に示すように、ワーク500は、部材501,502のいずれも樹脂製の部材であり、部材501の表面、すなわち、ワーク500の上側の最外層に金属製の部材510が配置された構成であってもよい。具体的には例えば、ワーク500は、金属製の部材510として、樹脂製の部材501の上側の表面に金属メッキ処理が施されたものや、金属製の薄板を配置させたもの等である。また、図5では部材501の上側全面に部材510が配置されているように示しているが、当該構成に限られるものではなく、第1電極101及び第2電極102の当接箇所及び両電極間にのみ、金属メッキ処理が施されたものや、金属製の薄板を配置させたもの等であってもよい。
【0072】
このような構成のワーク500であっても、接合装置100であれば、第1電極101及び第2電極102は、ともに上側の最外層の部材510に当接するように配置されているから、両電極は、樹脂製の部材501,502に直接接触しない。そうして、両電極間に通電させることで、部材510において生じる抵抗発熱により部材501を介して熱硬化性接着剤503を加熱硬化させ、ワーク500を接合させることができる。
【0073】
(実施形態4)
上記実施形態1~3の接合装置100では、第1電極101及び第2電極102は、ともに上側に配置される構成であったが、図6に示すように、第1電極101を上側、第2電極102を下側に配置して、両電極でワーク500を挟み込む構成としてもよい。この場合、支持部材400は不要となる。また電流経路Pは、ワーク500を通過する方向に生じる。本構成とすることにより、部材501,502及び熱硬化性接着剤503において生じる抵抗発熱により、熱硬化性接着剤503の硬化を促進させることができ、より早く効果的にワーク500の接合を行うことができる。なお、本構成では、部材501,502いずれも直接電流が流れるから、部材501,502としては実施形態1と同様にいずれも金属製の部材であることが望ましい。
【0074】
なお、図6では、第1電極101を上側、第2電極102を下側に配置した構成を図示しているが、第1電極101を下側、第2電極102を上側に配置した構成としてもよい。
【0075】
第1電極101及び第2電極102は、いずれか一方に駆動手段を設け、一方側を回転させる構成とするとともに、他方側を一方側に連動させて回転させるようにしてもよい。また、第1電極101及び第2電極102の両方に駆動手段を設け、両電極ともに互いに独立に回転可能に構成してもよい。また、加圧手段は、第1電極101及び第2電極102のいずれか一方に設ける構成としてもよい。また、第1電極101及び第2電極102の両方に加圧手段を設け、両電極ともに互いに独立にワーク500を加圧可能に構成してもよい。
【0076】
(実施形態5)
図7に示すように、図1の第1電極101及び第2電極102を、支持部材400に代えて、下側にも配置する構成としてもよい。この構成では、電源50は、下側に配置された第1電極101及び第2電極102にも電気的に接続されている。また、制御部60は、下側の第1電極101及び第2電極102の接続部110にも電気的に接続されている。
【0077】
本構成とすることで、部材502にも電流経路Pが形成されるとともに、上側又は下側の第1電極101と下側又は上側の第2電極102と間を流れる電流経路Pも形成されるから、部材501,502及び熱硬化性接着剤503において生じる抵抗発熱により、ワーク500の接合をより効果的に促進させることができる。
【0078】
なお、本構成において、部材502が樹脂製の部材である場合、部材502の下側に図5に示す金属製の部材510を配置させたものをワーク500としてもよい。
【0079】
また、第1電極101及び第2電極102の上下方向の径、左右方向の幅、両電極間の左右方向の距離等は、上側の構成と下側の構成とで、同一としてもよいし、異なる構成としてもよい。
【0080】
(実施形態6)
実施形態1~3,5に係る接合装置100(図1図4図5図7参照)では、第1電極101及び第2電極102は接続部110で接続されている構成であったが、接続部110を設けない構成としてもよい。そして、第1電極101及び第2電極102が互いに独立に駆動及び/又は加圧されるようにしてもよい。この場合、駆動手段及び加圧機構は、第1電極101及び第2電極102にそれぞれ設けられる構成とすることができる。
【0081】
具体的には例えば、実施形態5に係る接合装置100(図7参照)において、第1電極101及び第2電極102に接続部110を設けない構成としたものを図8に示す。図8に示す構成では、ワーク500の上下に配置された2組の第1電極101及び第2電極102の各々を独立して加圧可能に構成することができる。そうして、例えば、上下の第1電極101間に通電しつつ、上下の第2電極102間の加圧力を第1電極101よりも強めて、図8に示すように、上側の第1電極101から上下の第2電極102間を介して下側の第2電極102に通じる電流経路Pが形成されるようにすることができる。そうして、第1電極101及び第2電極102の加圧力を調整することにより、電流経路Pの形成位置を調整することができる。なお、図8の構成において、例えば第2電極102間に通電しつつ第1電極101の加圧力を調整するようにしてもよい。
【0082】
(実施形態7)
実施形態1~6では、第1電極101及び第2電極102は、ローラ電極であったが、図9及び図10に示すように、第1電極及び第2電極として、上下方向に延びる略円柱状のガン本体101B,102Bと、該ガン本体101B,102Bの先端に配置された電極部101C,102Cとを備えた電極を採用する構成としてもよい。図9図10に示すように、第1電極101及び第2電極102は、電極部101C,102Cを介して、ワーク500の接合対象部505近傍の部材501表面に加圧当接される。そうして、両電極間に通電を行い、ワーク500の接合を行う。
【0083】
本構成によれば、第1電極101及び第2電極102がそれぞれ備える電極部101C,102Cがワーク500の表面に加圧当接されるから、両電極間に通電したときに、電流経路Pの過度の広がりを抑制することができ、接合対象部505の範囲が制限される場合であっても、効果的にワーク500の接合を行うことができる。
【0084】
なお、図10に示すように、ワーク500をD1方向へ移動させるか、及び/又は、第1電極101及び第2電極102と、支持部材400とをD2方向へ移動させて、前後方向に延びる接合対象部505を連続的に接合させる構成としてもよい。
【0085】
(その他の実施形態)
図1図4図5図9の接合装置100では、支持部材400はローラ部材であったが、支持部材400は、ローラ部材に限られるものではなく、直方体等の形状を有する部材であってもよい。この場合、支持部材400の平坦な面上に、ワーク500が配置され得る。そして、本構成において、支持部材400は回転させる必要はなく、支持部材400を移動させる場合は、水平方向に平行移動させるようにすればよい。
【0086】
また、接合装置100による接合を行った後に、塗装乾燥炉による熱硬化性接着剤503のさらなる硬化工程を設けてもよい。そうして、接合装置100による予備接合の後、塗装乾燥炉による最終硬化を行うことで、より確実な接合品質を得ることができる。
【0087】
さらに、接合装置100は、接合対象の部材501,502がともに金属部材であり、熱硬化性接着剤503が存在していない個所においては、抵抗溶接装置としても使用することができる。具体的には例えば、熱硬化性接着剤503による接合とスポット溶接とを組み合わせたウェルドボンド接合等を行う場合や、製造ライン等において熱硬化性接着剤503による接合を行うワークと抵抗溶接を行うワークとが混在している場合等が挙げられる。このような場合には、第1電極101と第2電極102の当接位置、加圧力及び通電条件等を調整することにより、熱硬化性接着剤503が存在している個所は熱硬化性接着剤503の熱硬化による接合、熱硬化性接着剤503が存在していない個所はスポット溶接による接合を行うことができる。そうして、熱硬化性接着剤503による接合とスポット溶接による接合とをともに1台の接合装置100により行うことができ、作業工程を簡潔化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、熱硬化性接着剤を用いた部材の接合装置及び接合方法において、汎用性、生産性及びコスト性に優れるとともに、ワークに求められる十分な接合品質をもたらし得る接合装置及び接合方法を提供することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0089】
100 接合装置
101 第1電極
101B ガン本体
101C 電極部
102 第2電極
102B ガン本体
102C 電極部
400 支持部材
500 ワーク(接合対象物)
501 部材(複数の部材、金属部材)
502 部材(複数の部材、金属部材)
503 熱硬化性接着剤
505 接合対象部
510 部材(複数の部材、金属部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10