(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ヨーク組立体、及びトルク検出装置、並びにヨーク組立体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
G01L3/10 305
(21)【出願番号】P 2018210741
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】外山 祐一
(72)【発明者】
【氏名】岡 伸政
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-250227(JP,A)
【文献】特開2008-241564(JP,A)
【文献】特開2013-053865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0279320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク検出装置の部品であり、2個一組のヨークリング、及び固定用金属製カラー、並びに舵角検出装置のメインギヤを備えた樹脂製保持筒からなるヨーク組立体であって、
前記2個一組のヨークリングは、夫々円環部及び磁極爪からなり、各磁極爪の軸方向へ延びる爪部同士を向かい合わせて各磁極爪が周方向に等間隔に並ぶように配置したものであり、
前記ヨークリングは、軸方向で、前記カラーと前記メインギヤとの間に位置し、
前記保持筒の前記メインギヤの端面の内径側に、
前記円環部が前記カラーに近い前記ヨークリングにおける、前記メインギヤに近づくように軸方向へ延びる爪部の少なくとも一つに対し、前記爪部の爪先の側方に繋がる一対の溝部を有するとともに、
前記保持筒の前記メインギヤの端面に、
前記円環部が前記メインギヤに近い前記ヨークリングにおける、前記円環部の内周縁から径方向内方へ延びる内方延出部の少なくとも二つに対し、前記内方延出部の側面に繋がる孔部を有する、
ヨーク組立体。
【請求項2】
同軸上に連結された第1軸及び第2軸に対し、円筒磁石を前記第1軸に固定し、請求項1記載のヨーク組立体を前記第2軸に固定し、前記円筒磁石が形成する磁界内での相対角変位に応じて前記ヨーク組立体の前記2個一組のヨークリングに夫々生じる磁束の変化により前記第1軸及び第2軸に加わる回転トルクを検出するトルク検出装置。
【請求項3】
トルク検出装置の部品であるヨーク組立体に舵角検出装置のメインギヤを射出成形により一体成形するヨーク組立体の製造方法であって、
前記トルク検出装置は、
同軸上に連結された第1軸及び第2軸に対し、円筒磁石を前記第1軸に固定し、前記ヨーク組立体を前記第2軸に固定し、前記円筒磁石が形成する磁界内での相対角変位に応じて前記ヨーク組立体の2個一組のヨークリングに夫々生じる磁束の変化により前記第1軸及び第2軸に加わる回転トルクを検出するものであり、
前記ヨーク組立体は、
前記2個一組のヨークリング、及び前記第2軸が圧入される金属製カラー、並びに舵角検出装置のメインギヤを備えた樹脂製保持筒からなり、
前記2個一組のヨークリングは、夫々円環部及び磁極爪からなり、各磁極爪の軸方向へ延びる爪部同士を向かい合わせて各磁極爪が周方向に等間隔に並ぶように配置したものであり、
前記ヨークリングは、軸方向で、前記カラーと前記メインギヤとの間に位置し、
成形型における下型に、
前記円環部が前記カラーに近い前記ヨークリングにおける、前記メインギヤに近づくように軸方向へ延びる爪部の少なくとも一つに対し、前記爪部の爪先の周方向両側の側面に当接する一対の突起を設けるとともに、
前記円環部が前記メインギヤに近い前記ヨークリングにおける、前記円環部の内周縁から径方向内方へ延びる内方延出部の少なくとも二つに対し、前記内方延出部の側面に当接する位置決めピンを立設してなり、
前記成形型を開いて、インサート品である、前記2個一組のヨークリング及び前記カラーを前記下型にセットする工程と、
前記成形型を閉じて、溶融した前記保持筒の成形樹脂材料を射出して、前記保持筒を射出成形する工程と、
を含むヨーク組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出装置の部品であるヨーク組立体に舵角検出装置のメインギヤを一体成形してなるヨーク組立体、及びトルク検出装置、並びにヨーク組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の負担を軽減するために、自動車等の車両には電動パワーステアリング装置が広く用いられている。電動パワーステアリング装置は、操舵補助用のモータの駆動制御に用いるトルク検出装置を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、自動車等の車両の安全性を向上させるために、横滑り防止装置が広く用いられている。横滑り防止装置には、ステアリングホイールの操舵角度を検出する舵角検出装置が必要になる(例えば、特許文献2、及び非特許文献1参照)。
【0004】
電動パワーステアリング装置に備えるトルク検出装置及び舵角検出装置において、トルク検出装置の部品であるヨーク組立体に舵角検出装置のメインギヤを射出成形で一体化し、部品点数削減等により製造コストを低減したものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
トルク検出装置は、回転トルクを検出する軸に前記ヨーク組立体を固定し、円筒磁石が形成する磁界内での相対角変位に応じて前記ヨーク組立体の2個一組のヨークリングに夫々生じる磁束の変化により回転トルクを検出するものである。したがって、前記ヨーク組立体を製造する際には、2個一組のヨークリングを夫々の内周側に等配された複数の磁極爪が交互に並ぶように成形型内で周方向の位置決め(以下、「ヨークリングの周方向位置決め」という)をする必要がある(例えば、特許文献1、特許文献3、及び特許文献4参照)。
【0006】
例えば、特許文献1のヨーク組立体の製造方法では、ヨークリングの周方向位置決めを、2個一組のヨークリング50,50の円環部に設けた位置決め孔54,54及び55,55に、下型80の中芯81の外周に近接する同心円周上に立設した一対の位置決めピン82,82を通すことにより行っている。
【0007】
また、特許文献3のヨーク組立体の製造方法では、ヨークリングの周方向位置決めを、2個一組のヨークリング34,35の磁極爪37,38の基部51,52の側面53,54に、下型80の中芯81の外周に近接する同心円周上に立設した二対の位置決めピン82,83を当接することにより行っている。
【0008】
さらに、特許文献4のヨーク組立体の製造方法では、ヨークリングの周方向位置決めを、下型110の成形品の内径側に設けた凸部114の支持面116に第1ヨークリング60の第1磁極歯61を接触させること、及び前記凸部114の側面115に第2ヨークリング70の第2磁極歯71を接触させることにより行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5183036号公報
【文献】特開2008-241564号公報
【文献】特許第5871151号公報
【文献】特許第5844387号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】村越豊,中村匡秀,「EPS一体型舵角センサの開発」,JTEKT ENGINEERING JOURNAL No.1009 自動車関連技術特集号,2011年12月,p.72-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1のようなトルク検出装置の部品であるヨーク組立体に舵角検出装置のメインギヤを一体成形してなるヨーク組立体において、2個一組のヨークリングに対して、固定用カラーと前記メインギヤを反対側に配置したものがある。
このようなヨーク組立体を成形する際には、成形型の下型の上面上に前記メインギヤを成形することになる。
【0012】
このようなヨーク組立体の成形において、ヨークリングの周方向位置決めを、特許文献1のように、ヨークリング50,50の円環部に設けた位置決め孔54,54及び55,55に、下型80の上面に立設した一対の位置決めピン82,82を通すことにより行うと、前記位置決めピンがある箇所では、前記メインギヤを成形できる十分な肉厚を確保できない。
【0013】
また、ヨークリングの周方向位置決めを、特許文献3のように、ヨークリング34,35の磁極爪37,38の基部51,52の側面53,54に、下型80の上面に立設した二対の位置決めピン82,83を当接することにより行うと、両方のヨークリング34,35の間を位置決めピン82,83が通るので、位置決めピン82,83の径の大きさに制約がある。それにより、射出成形の圧力により細長い位置決めピンが折れる場合や、射出成形の圧力により細長い位置決めピンが変形してヨークリングの位置決め精度が低下するおそれがある。
【0014】
さらに、ヨークリングの周方向位置決めを、特許文献4のように、下型110の成形品の内径側に設けた凸部114の支持面116に第1ヨークリング60の第1磁極歯61を接触させること、及び前記凸部114の側面115に第2ヨークリング70の第2磁極歯71を接触させることにより行うと、第2ヨークリングの周方向の位置決め精度が低下するおそれがある。すなわち、第2ヨークリングの第2磁極歯の基端部は曲げ加工により周方向に曲げ部が膨らむ方向に変形する(曲げ巾の根元寸法がプラスに変化する)ので、前記凸部の側面に接触させて位置決めした際に周方向の位置決め精度を出し難い。
【0015】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとする課題は、トルク検出装置の部品であるヨーク組立体に舵角検出装置のメインギヤを一体成形してなるヨーク組立体で、ヨークリングに対して固定用カラーと前記メインギヤを反対側に配置したもの、及び前記ヨーク組立体を備えたトルク検出装置、並びに前記ヨーク組立体の製造方法において、ヨークリングの周方向位置決めを精度良く行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕トルク検出装置の部品であり、2個一組のヨークリング、及び固定用金属製カラー、並びに舵角検出装置のメインギヤを備えた樹脂製保持筒からなるヨーク組立体であって、
前記2個一組のヨークリングは、夫々円環部及び磁極爪からなり、各磁極爪の軸方向へ延びる爪部同士を向かい合わせて各磁極爪が周方向に等間隔に並ぶように配置したものであり、
前記ヨークリングは、軸方向で、前記カラーと前記メインギヤとの間に位置し、
前記保持筒の前記メインギヤの端面の内径側に、
前記円環部が前記カラーに近い前記ヨークリングにおける、前記メインギヤに近づくように軸方向へ延びる爪部の少なくとも一つに対し、前記爪部の爪先の側方に繋がる一対の溝部を有するとともに、
前記保持筒の前記メインギヤの端面に、
前記円環部が前記メインギヤに近い前記ヨークリングにおける、前記円環部の内周縁から径方向内方へ延びる内方延出部の少なくとも二つに対し、前記内方延出部の側面に繋がる孔部を有する、
ヨーク組立体。
【0017】
〔2〕同軸上に連結された第1軸及び第2軸に対し、円筒磁石を前記第1軸に固定し、請求項1記載のヨーク組立体を前記第2軸に固定し、前記円筒磁石が形成する磁界内での相対角変位に応じて前記ヨーク組立体の前記2個一組のヨークリングに夫々生じる磁束の変化により前記第1軸及び第2軸に加わる回転トルクを検出するトルク検出装置。
【0018】
〔3〕トルク検出装置の部品であるヨーク組立体に舵角検出装置のメインギヤを射出成形により一体成形するヨーク組立体の製造方法であって、
前記トルク検出装置は、
同軸上に連結された第1軸及び第2軸に対し、円筒磁石を前記第1軸に固定し、前記ヨーク組立体を前記第2軸に固定し、前記円筒磁石が形成する磁界内での相対角変位に応じて前記ヨーク組立体の2個一組のヨークリングに夫々生じる磁束の変化により前記第1軸及び第2軸に加わる回転トルクを検出するものであり、
前記ヨーク組立体は、
前記2個一組のヨークリング、及び前記第2軸が圧入される金属製カラー、並びに舵角検出装置のメインギヤを備えた樹脂製保持筒からなり、
前記2個一組のヨークリングは、夫々円環部及び磁極爪からなり、各磁極爪の軸方向へ延びる爪部同士を向かい合わせて各磁極爪が周方向に等間隔に並ぶように配置したものであり、
前記ヨークリングは、軸方向で、前記カラーと前記メインギヤとの間に位置し、
成形型における下型に、
前記円環部が前記カラーに近い前記ヨークリングにおける、前記メインギヤに近づくように軸方向へ延びる爪部の少なくとも一つに対し、前記爪部の爪先の周方向両側の側面に当接する一対の突起を設けるとともに、
前記円環部が前記メインギヤに近い前記ヨークリングにおける、前記円環部の内周縁から径方向内方へ延びる内方延出部の少なくとも二つに対し、前記内方延出部の側面に当接する位置決めピンを立設してなり、
前記成形型を開いて、インサート品である、前記2個一組のヨークリング及び前記カラーを前記下型にセットする工程と、
前記成形型を閉じて、溶融した前記保持筒の成形樹脂材料を射出して、前記保持筒を射出成形する工程と、
を含むヨーク組立体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明に係るヨーク組立体、及びトルク検出装置、並びにヨーク組立体の製造方法によれば、ヨークリングに対して固定用カラーと舵角検出装置のメインギヤを反対側に配置したヨーク組立体、及びその製造方法において、主に以下のような作用効果を奏する。
【0020】
(1)ヨーク組立体を成形する際に、成形型の下型に設けた位置決めピンを、下型に近いヨークリングの内方延出部の側面に当接させて当該ヨークリングの周方向位置決めを行う。それにより、抜き加工で寸法が安定する内方延出部の側面に位置決めピンを当接させているので、当該ヨークリングの周方向の位置決め精度が高くなる。
(2)ヨーク組立体を成形する際に、成形型の下型に設けた一対の突起を、下型から遠いヨークリングの軸方向へ延びる爪部の爪先の周方向両側面に当接させて当該ヨークリングの周方向位置決めを行う。それにより、抜き加工で寸法が安定する爪部の爪先の側面に突起を当接させているので、当該ヨークリングの周方向の位置決め精度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の実施の形態に係るヨーク組立体の斜視図である。
【
図2A】本発明の実施の形態に係るヨーク組立体の縦断面斜視図である。
【
図2B】同じく上下を反転させた縦断面斜視図である。
【
図3】インサート品であるヨークリング及びカラー、並びに前記下型の分解斜視図である。
【
図4】インサート品であるヨークリング及びカラーを成形型の下型にセットした状態を示す部分縦断面斜視図である。
【
図6A】位置決めピンによるヨークリングの位置決めを示す平面図である。
【
図6B】位置決めピンによるヨークリングの位置決めを示す要部拡大平面図である。
【
図7】インサート成形品であるヨーク組立体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のヨーク組立体は、トルク検出装置の部品である。
トルク検出装置は、同軸上に連結された第1軸及び第2軸に対し、外周に複数の磁極を並設した円筒磁石を前記第1軸に固定し、前記ヨーク組立体を前記第2軸に固定し、前記円筒磁石が形成する磁界内での相対角変位に応じて前記ヨーク組立体の2個一組のヨークリングに夫々生じる磁束の変化により前記第1軸及び第2軸に加わる回転トルクを検出する。
【0023】
本明細書において、トルク検出装置が検出する回転トルクの回転軸の方向を「軸方向」という。
ヨーク組立体については、その上下を言う場合、自動車等の車両の電動パワーステアリング装置におけるトルク検出装置としての使用状態を基準とする。すなわち、ステアリングホイール側を「上」とする。
【0024】
<ヨーク組立体>
図1A及び
図1Bの斜視図、並びに
図2A及び
図2Bの縦断面斜視図に示すように、本発明の実施の形態に係るヨーク組立体1は、上側ヨークリング2及び下側ヨークリング3、前記第2軸が圧入される金属製カラー4、並びに樹脂製保持筒5を備える。
保持筒5は、2個一組のヨークリング2,3を夫々の内周側に等配された複数の磁極爪6,6,…が交互に並ぶように位置決めした状態で、ヨークリング2,3及びカラー4を一体に保持するとともに、舵角検出装置のメインギヤ7を備える。
【0025】
ヨークリング2,3は、軸方向で、カラー4とメインギヤ7との間に位置する。
上側ヨークリング2の円環部2Aは、下側ヨークリング3の円環部3Aよりもメインギヤ7に近く、下側ヨークリング3の円環部3Aは、上側ヨークリング2の円環部2Aよりもカラー4に近い。
保持筒5のメインギヤ7の端面7Aの内径側には、後述するように形成された溝部A,A,…があり、メインギヤ7の端面7Aには、後述するように形成された孔部B,Bがある。
【0026】
図3の分解斜視図、及び
図4の部分縦断面斜視図は、成形型8の下型9とともに、インサート品であるヨークリング2,3、及びカラー4を示している。
ヨーク組立体1の保持筒5を成形する際には、上側ヨークリング2の円環部2Aを下側に、下側ヨークリング3の円環部3Aを上側に配置し、磁極爪6,6,…の方向を
図3及び
図4のようにした状態で、
図1Bのようなヨーク組立体1を成形する。
【0027】
上側ヨークリング2は、円環部2A及び磁極爪6,6,…からなり、下側ヨークリング3は、円環部3A及び磁極爪6,6,…からなる。
上側ヨークリング2の磁極爪6は、円環部2Aの内周縁から径方向内方へ延びる内方延出部6A、及び内方延出部6Aの内周縁から軸方向へ、カラー4に近づくように延びる爪部6Bからなる。
下側ヨークリング3の磁極爪6は、円環部3Aの内周縁から径方向内方へ延びる内方延出部6A、及び内方延出部6Aの内周縁から軸方向へ、カラー4から遠ざかるように(メインギヤ7に近づくように)延びる爪部6Bからなる。
【0028】
<ヨーク組立体の製造方法>
(成形型)
ヨーク組立体1の樹脂製の保持筒5を成形する成形型8は、
図3の分解斜視図、及び
図4の部分縦断面斜視図に示す下型9、及び図示しない上型と、これらの間にて径方向に分離可能な、図示しない一対の中間型とを組み合わせて構成される。
下型9は、上面の中央に垂直に立設された円柱形の中芯10を備える。中芯10は、成形対象となる保持筒5の内径と略等しい外径を有し、カラー4を受ける段部10Aを備える。
【0029】
また、下型9は、円環部3Aがカラー4に近いヨークリング3における、メインギヤ7に近づくように軸方向へ延びる爪部6Bの少なくとも一つに対し、爪部6Bの爪先の周方向両側の側面に当接する一対の突起11,11を備える。突起11,11は、ヨークリング2には接触しないように設ける。
一対の突起11,11は、
図5の平面図に示すように、例えば周方向の2箇所に備えているが、1箇所のみ、又は3箇所以上としてもよい。すなわち、一対の突起11,11は、少なくとも1箇所に設ける。
さらに、下型9には、円環部2Aがメインギヤ7に近いヨークリング2における、内方延出部6A,6A,…の二つに対し、内方延出部6Aの側面に当接する位置決めピン12,12を立設している。位置決めピン12は、少なくとも二つ設ける。
【0030】
(インサート品セット工程)
成形型8を開いて、インサート品である、2個一組のヨークリング2,3及びカラー4を、
図3及び
図4に示すように、下型9の中芯10に外嵌するようにセットするインサート品セット工程を行う。
ヨークリング2,3は、それらの円環部2A,3Aが前記中間型に嵌め込まれるので、軸方向に位置決めされる。
カラー4は、中芯10の段部10Aに受け止められるので、軸方向に位置決めされる。
【0031】
この状態では、
図6Aの平面図、及び
図6Bの要部拡大平面図に示すように、下型9の位置決めピン12,12が、ヨークリング2の対向する内方延出部6A,6Aの側面に当接している。それにより、ヨークリング2が時計回り及び反時計回りの両方向へ移動できない。よって、位置決めピン12,12に内方延出部6A,6Aの側面を当接させることにより、ヨークリング2の周方向の位置決めが完了する。
位置決めピン12を、爪部6Bを曲げ加工した際に周方向に膨らむ方向に変形した曲げ部には当接させず、抜き加工で寸法が安定する内方延出部6Aの側面に当接させているので、ヨークリング2の周方向の位置決め精度が高くなる。
その上、位置決めピン12,12で、一方のヨークリング2のみを位置決めするとともに、ヨークリング2の円環部2Aは、ヨークリング3の円環部3Aよりも下型9の上面に近い。それにより、位置決めピン12,12の長さを短くできるとともに、射出成形工程におけるメインギヤ7の歯の成形に干渉しない位置に位置決めピン12,12を配置できる。
【0032】
また、
図4に示すように、下型9の一対の突起11,11が、ヨークリング3の爪部6Bの爪先の周方向両側の側面に当接している。それにより、ヨークリング3が時計回り及び反時計回りの両方向へ移動できない。よって、突起11,11に爪部6Bの爪先の両側面を当接させることにより、ヨークリング3の周方向の位置決めが完了する。
突起11を、抜き加工で寸法が安定する爪部6Bの爪先の側面に当接させているので、ヨークリング3の周方向の位置決め精度が高くなる。
その上、下型9の一対の突起11,11は、ヨーク組立体の内径側に位置するので、射出成形工程におけるメインギヤ7の歯の成形に干渉しない。
【0033】
(射出成形工程)
成形型8を閉じて、溶融した保持筒5の成形樹脂材料を射出することにより保持筒5を射出成形する射出成形工程を行う。
【0034】
(成形品取出し工程)
前記成形樹脂材料を冷却・固化させた後、成形型8を開いて、エジェクタピンにより突き出すことにより、インサート成形品であるヨーク組立体1を取り出す成形品取出し工程を行う。
【0035】
ヨーク組立体1には、
図7の縦断面図、及び
図1Aの斜視図に示すように、下型9の突起11,11,…の形状に溝部A,A,…が形成され、外部から視認できる。溝部Aは、円環部3Aがカラー4に近いヨークリング(下側ヨークリング)3における、メインギヤ7に近づくように軸方向へ延びる爪部6Bの爪先の側方に繋がる。
また、ヨーク組立体1には、
図7の縦断面図、及び
図1Aの斜視図に示すように、下型9の位置決めピン12,12の形状に孔部B,Bが形成され、外部から視認できる。孔部Bは、円環部2Aがメインギヤ7に近いヨークリング(上側ヨークリング)2における、内方延出部6Aの側面に繋がる。
【0036】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ヨーク組立体
2 上側ヨークリング
2A 円環部
3 下側ヨークリング
3A 円環部
4 カラー
5 保持筒
6 磁極爪
6A 内方延出部
6B 爪部
7 メインギヤ
7A 端面
8 成形型
9 下型
10 中芯
10A 段部
11 突起
12 位置決めピン
A 溝部
B 孔部