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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】乗物用シート及びシートバックフレーム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20220705BHJP
   B60N 2/897 20180101ALI20220705BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/897
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018217544
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020082909
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 隼人
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-173271(JP,A)
【文献】特開昭63-153009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/897
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストステーがシート上方から差し込まれて装着されるヘッドレストサポートと、前記ヘッドレストサポートがシート高さ方向に差し込まれて装着されるシートバックのアッパフレームと、を有する乗物用シートであって、
前記アッパフレームが、互いにシート高さ方向に対面する天板部及び底板部と、前記天板部と前記底板部との間を繋ぐシート高さ方向に延びる立壁部と、を有し、
前記ヘッドレストサポートが、前記天板部に形成された天板孔と前記底板部に形成された底板孔とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部と、前記差込み部を前記天板孔と前記底板孔とに対する差込み位置から水平変位させることで前記アッパフレームに対して抜け止めされる係止位置へと移行可能な係止構造と、を有し、
前記アッパフレームの前記立壁部が、前記係止位置へと移行された前記差込み部の外周面と当接する当接部を有し、
前記当接部が、前記立壁部の一般面から部分的に突出して、前記差込み部の外周面に向かってシート高さ方向に両斜面が並ぶ向きに張り出す錐台形状とされ、
前記当接部の前記両斜面とこれらを繋ぐ平坦面とが、それぞれ、対応する凹形状に形成された前記差込み部の外周面と当接する乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記ヘッドレストサポートが、前記差込み位置からの水平回転により前記係止位置へと移行される乗物用シート。
【請求項3】
ヘッドレストサポートがシート高さ方向に差し込まれて装着されるアッパフレームを有するシートバックフレームであって、
前記アッパフレームが、互いにシート高さ方向に対面する天板部及び底板部と、前記天板部と前記底板部との間を繋ぐシート高さ方向に延びる立壁部と、を有し、
該立壁部が、前記ヘッドレストサポートの前記天板部に形成された天板孔と前記底板部に形成された底板孔とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部が前記天板孔と前記底板孔とに対する差込み位置から水平変位されて前記アッパフレームに対して抜け止めされる係止位置へと移行されることで前記差込み部の外周面と当接する当接部を有し、
前記当接部が、前記立壁部の一般面から部分的に突出して、前記差込み部の外周面に向かってシート高さ方向に両斜面が並ぶ向きに張り出す錐台形状とされ、
前記当接部の前記両斜面とこれらを繋ぐ平坦面とが、それぞれ、対応する凹形状に形成された前記差込み部の外周面と当接するシートバックフレーム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シート及びシートバックフレームに関する。詳しくは、ヘッドレストステーがシート上方から差し込まれて装着されるヘッドレストサポートと、ヘッドレストサポートがシート高さ方向に差し込まれて装着されるシートバックのアッパフレームと、を有する乗物用シート及びシートバックフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートにおいて、ヘッドレストがシートバックの上部に対して上側から差し込まれて装着された構成が知られている(特許文献1)。具体的には、ヘッドレストは、その下部から延びる左右一対のヘッドレストステーが、シートバックの上部に埋設された左右一対のヘッドレストサポート内にそれぞれ上側から差し込まれることで、これらヘッドレストサポートに位置固定された状態にロックされて保持されるようになっている。
【0003】
上述した左右一対のヘッドレストサポートは、シートバックのアッパフレームを成す上下一対の板部に対して、それぞれ上側から貫通した状態に差し込まれて結合されている。上記結合により、各ヘッドレストポートは、上述したアッパフレームの上下一対の板部によって、高さ方向に広い支持スパンで支えられた状態とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9539922号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、ヘッドレストに車両衝突等に伴う前後方向の過大な負荷が入力された際に、各ヘッドレストサポートを支える上下一対の板部に過大な曲げの負荷が入力されて、各板部による各ヘッドレストサポートの支持形態が崩れてしまうおそれがある。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ヘッドレストサポートを支えるシートバックのアッパフレームの構造強度を合理的に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の乗物用シート及びシートバックフレームは次の手段をとる。
【0007】
すなわち、本発明の乗物用シートは、ヘッドレストステーがシート上方から差し込まれて装着されるヘッドレストサポートと、ヘッドレストサポートがシート高さ方向に差し込まれて装着されるシートバックのアッパフレームと、を有する乗物用シートである。アッパフレームが、互いにシート高さ方向に対面する天板部及び底板部と、天板部と底板部との間を繋ぐシート高さ方向に延びる立壁部と、を有する。ヘッドレストサポートが、天板部に形成された天板孔と底板部に形成された底板孔とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部と、差込み部を天板孔と底板孔とに対する差込み位置から水平変位させることでアッパフレームに対して抜け止めされる係止位置へと移行可能な係止構造と、を有する。アッパフレームの立壁部が、係止位置へと移行された差込み部の外周面と当接する当接部を有する。
【0008】
上記構成によれば、ヘッドレストサポートをアッパフレームにシート上方から差し込んで係止位置へと移行させることで、アッパフレームの立壁部に形成された当接部がヘッドレストサポートの差込み部の外周面に当接する。それにより、ヘッドレストサポートに掛かる荷重を、アッパフレームの天板部や底板部の他、立壁部にも分散して伝達できるようになる。上記構成により、ヘッドレストサポートを支えるアッパフレームの構造強度を合理的に高めることができる。なお、差込み部の水平変位には、水平方向の回転も含まれる。
【0009】
また、本発明の乗物用シートは、更に次のように構成されていてもよい。当接部が、立壁部の一般面から部分的に突出する突出部とされる。
【0010】
上記構成によれば、強度部材としてのアッパフレームに突出形状の当接部を設けることで、ヘッドレストサポートを大型化することなく、差込み部をアッパフレームの立壁部に当接させられる構造を得ることができる。
【0011】
また、本発明の乗物用シートは、更に次のように構成されていてもよい。当接部が、差込み部の外周面に対して互いの平坦面同士を当接させる面当接構造とされる。
【0012】
上記構成によれば、ヘッドレストサポートに掛かる荷重を、平坦面同士の当接構造を介して、アッパフレームの立壁部に対して適切に分散して伝達することができる。
【0013】
また、本発明の乗物用シートは、更に次のように構成されていてもよい。当接部が、差込み部の外周面に向かってシート高さ方向に両斜面が並ぶ向きに張り出す錐台形状とされる。当接部の両斜面とこれらを繋ぐ平坦面とが、それぞれ、対応する凹形状に形成された差込み部の外周面と当接する。
【0014】
上記構成によれば、ヘッドレストサポートに掛かるシート高さ方向の荷重を、アッパフレームの立壁部に対して適切に分散して伝達することができる。
【0015】
また、本発明の乗物用シートは、更に次のように構成されていてもよい。ヘッドレストサポートが、差込み位置からの水平回転により係止位置へと移行される。
【0016】
上記構成によれば、ヘッドレストサポートの差込み部を天板孔及び底板孔内で自転させて差込み位置から係止位置へと移行することができるため、各々の孔形状を小さく抑えることができると共に移行操作を簡便に行うことができる。
【0017】
また、本発明のシートバックフレームは、ヘッドレストサポートがシート高さ方向に差し込まれて装着されるアッパフレームを有するシートバックフレームである。アッパフレームが、互いにシート高さ方向に対面する天板部及び底板部と、天板部と底板部との間を繋ぐシート高さ方向に延びる立壁部と、を有する。立壁部が、ヘッドレストサポートの天板部に形成された天板孔と底板部に形成された底板孔とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部が天板孔と底板孔とに対する差込み位置から水平変位されてアッパフレームに対して抜け止めされる係止位置へと移行されることで差込み部の外周面と当接する当接部を有する。
【0018】
上記構成によれば、ヘッドレストサポートをアッパフレームにシート上方から差し込んで係止位置へと移行させることで、アッパフレームの立壁部に形成された当接部がヘッドレストサポートの差込み部の外周面に当接する。それにより、ヘッドレストサポートに掛かる荷重を、アッパフレームの天板部や底板部の他、立壁部にも分散して伝達できるようになる。上記構成により、ヘッドレストサポートを支えるアッパフレームの構造強度を合理的に高めることができる。なお、差込み部の水平変位には、水平方向の回転も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る乗物用シートの概略構成を表した正面側斜視図である。
図2】同背面側斜視図である。
図3】同正面図である。
図4】同背面図である。
図5】ヘッドレストサポートをアッパフレームに装着する前の状態を表した背面側斜視図である。
図6】同背面図である。
図7図5からヘッドレストサポートをアッパフレームに差し込んだ状態を表した背面側斜視図である。
図8】同背面図である。
図9図7からヘッドレストサポートを水平回転させてアッパフレームに装着した状態を表した背面側斜視図である。
図10】同背面図である。
図11図8のXI-XI線断面図である。
図12図10のXII-XII線断面図である。
図13図3のXIII-XIII線断面図である。
図14図3のXIV-XIV線断面図である。
図15図3のXV-XV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
《第1の実施形態》
始めに、第1の実施形態に係るシート1(乗物用シート)の構成について、図1図15を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、シート1の左右方向を指し、「シート高さ方向」と示す場合には、シート1の上下方向を指し、「シート前後方向」と示す場合には、シート1の前後方向を指すものとする。
【0022】
<シート1の概略構成について>
図1図4に示すように、本実施形態に係るシート1は、自動車の前部側座席として構成されている。上記シート1は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となる不図示のシートクッションと、頭凭れ部となるヘッドレスト3と、を備える。上記シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、不図示のリクライナを介してシートクッションの左右両サイドの後端部に連結されている。
【0023】
ヘッドレスト3は、シートバック2の上部にシート上方から差し込まれて装着されている。具体的には、ヘッドレスト3は、その下面部から垂下する左右一対の丸棒形状のヘッドレストステー3Aを具備する構成とされている。一方、シートバック2の上部には、左右一対のヘッドレストサポート20の頭部21が露出して設けられている。これら頭部21には、上記一対のヘッドレストステー3Aをシート上方から差し込むことの可能な丸孔形状の差込孔20Aがシート高さ方向に貫通して形成されている。
【0024】
上記構成により、ヘッドレスト3は、その左右一対のヘッドレストステー3Aを対応するヘッドレストサポート20の頭部21の差込孔20A内にそれぞれ差し込むことにより、シートバック2の上部に装着されるようになっている。詳しくは、上記差し込みにより、左側のヘッドレストサポート20の頭部21に設けられた不図示の係止爪が、同側のヘッドレストステー3Aの外周部に形成された不図示の係止溝内に横から弾性的に嵌合する。それにより、左右各側のヘッドレストステー3Aのヘッドレストサポート20に対するシート高さ方向の移動がそれぞれ係止されて、ヘッドレスト3がシートバック2の上部に固定された状態となる。
【0025】
上記各ヘッドレストステー3Aのヘッドレストサポート20に対する位置固定は、左側のヘッドレストサポート20の頭部21に設けられたツマミ21Aが使用者によって左側から押し込まれる操作により解除される。すなわち、同操作により、上記ツマミ21Aと一体に設けられた不図示の係止爪が同側のヘッドレストステー3Aの係止溝との嵌合状態から外される。それにより、ヘッドレスト3をシートバック2の上部から外すことができる状態となる。
【0026】
上記各ヘッドレストサポート20は、それぞれ、図5図8に示すように、シートバック2の上部骨格を成すアッパフレーム10に対してシート上方から差し込まれて組み付けられている。そして、各ヘッドレストサポート20は、それぞれ、上記組み付けの後に、図9図10に示すように、アッパフレーム10に対して水平方向に約90度回されることにより、アッパフレーム10に対して回り止めされた状態に係止されている。上記組み付けにより、各ヘッドレストサポート20は、上記アッパフレーム10に対してシート高さ方向にも動かないように係止されるようになっている。上記アッパフレーム10は、シートバック2の骨格を成すバックフレーム2Fの上部骨格として構成されている。ここで、バックフレーム2Fが本発明の「シートバックフレーム」に相当する。
【0027】
<アッパフレーム10の構成について>
以下、上記各ヘッドレストサポート20の具体的な構成について、アッパフレーム10の構成と併せて詳しく説明する。図1図5及び図13に示すように、アッパフレーム10は、1枚の金属製の板材が側面視略コ字状となる形に曲げ加工されて形成されている。上記曲げ加工により、アッパフレーム10は、互いにシート高さ方向に対面する平板状の天板部11及び底板部12と、これらの前縁同士を繋ぐ立板状の前板部13と、を有する形に形成されている。ここで、上記前板部13が本発明の「立壁部」に相当する。
【0028】
上記天板部11には、その左右2箇所の位置に、シート高さ方向に貫通する略丸孔形状の天板孔11Aが形成されている。また、底板部12にも、上記各天板孔11Aとシート高さ方向に並ぶ左右2箇所の位置に、シート高さ方向に貫通する略丸孔形状の底板孔12Aが形成されている。上記左右一対の天板孔11Aは、互いに左右対称な孔形状に形成されている。また、左右一対の底板孔12Aも、互いに左右対称な孔形状に形成されている。
【0029】
上記各天板孔11Aは、詳しくは、丸孔形状に貫通した丸孔部11A1と、丸孔部11A1のシート幅方向の両側位置に孔形状をキー溝状に拡張させる張出し孔部11A2と、を有する孔形状とされている。各底板孔12Aも同様に、丸孔形状に貫通した丸孔部12A1と、丸孔部12A1のシート幅方向の両側位置に孔形状をキー溝状に拡張させる張出し孔部12A2と、を有する孔形状とされている。
【0030】
更に詳しくは、上記各天板孔11Aのシート幅方向の内側に張り出す各張出し孔部11A2には、それらの張り出した先の端部から更に孔形状をシート前方へL字状に屈曲させる形に拡張させる誤組付け防止孔部11A3が形成されている。同様に、各底板孔12Aのシート幅方向の内側に張り出す各張出し孔部12A2にも、それらの張り出した先の端部から更に孔形状をシート前方へL字状に屈曲させる形に拡張させる誤組付け防止孔部12A3が形成されている。
【0031】
また、上記各天板孔11Aには、それらの後側半周の孔周りの領域に、パンチの押し込みによってシート下方向に半円筒状に張り出す形とされたバーリング部11Bが形成されている。また、各底板孔12Aにも、それらの後側半周の孔周りの領域に、パンチの押し込みによってシート上方向に半円筒状に張り出す形とされたバーリング部12Bが形成されている。図1図3及び図13に示すように、前板部13には、その左右2箇所の位置に、シート後方向に略四角錐台形状に凹む当接凹部13Aが形成されている。これら当接凹部13Aは、図5及び図13に示すように、上記左右一対の各天板孔11A及び各底板孔12Aとシート幅方向の配置が重なる位置に形成されている。ここで、各当接凹部13Aが本発明の「当接部」に相当する。
【0032】
<ヘッドレストサポート20の構成について>
一方、各ヘッドレストサポート20も、そのうちの一方(左方)の頭部21に前出のツマミ21Aが付いている点を除いて、互いに左右対称なサポート形状に形成されている。具体的には、各ヘッドレストサポート20は、内部に金属製の芯材がインサートされた、高い構造強度を備える樹脂成形部品から成る。上記各ヘッドレストサポート20は、それぞれ、図5に示すように、略四角錐台形状の頭部21と、頭部21の略中央箇所から垂下状に延びる略円筒形状の差込み部22と、を有する。上記各ヘッドレストサポート20の頭部21の上面から差込み部22の下面にかけては、それぞれ、シート高さ方向に真っ直ぐ貫通する丸孔形状の差込孔20Aが形成されている。
【0033】
上記各ヘッドレストサポート20の差込み部22の上部箇所には、同差込み部22の一般外周面よりもひとまわり大きな同心円状の円板形状に張り出すフランジ部23が形成されている。また、上記各ヘッドレストサポート20の差込み部22の下部箇所には、その前後位置(図示では左右位置)より張り出す下支え部24が形成されている。同下支え部24は、差込み部22の前側位置(図示では左側位置)より突出する前突起24Aと、差込み部22の後側位置(図示では右側位置)より突出する後突起24Bと、から成る。これら前突起24Aと後突起24Bとは、それらの天板面がシート高さ方向に真っ直ぐ向いた形状とされる。上記後突起24Bには、上記アッパフレーム10の各天板孔11Aと各底板孔12Aとに形成された誤組付け防止孔部11A3,12A3の屈曲形状に対応して屈曲状に延びる誤組付け防止突起24Cが形成されている。
【0034】
また、上記差込み部22のフランジ部23と下支え部24との間の中間箇所には、上記下支え部24の形成箇所と同じ前後位置(図示では左右位置)より縦長棒形状に張り出す前側リブ25と後側リブ26とが形成されている。上記前側リブ25は、図13に示すように、その縦長棒形状に張り出した先の面(前面)が、ヘッドレストサポート20がアッパフレーム10に対して水平方向に約90度回されてセットされるのに伴い、前出のアッパフレーム10の前板部13に形成された当接凹部13Aの後側張出形状に略合致する凹台形面25Aとして形成されている。ここで、上記凹台形面25Aが本発明の「差込み部の外周面」に相当する。
【0035】
具体的には、上記前側リブ25の凹台形面25Aは、上記前板部13の当接凹部13Aの張り出した先の平坦面13A1と対面状に面当接する平坦面25A1を有する。また、上記前側リブ25の凹台形面25Aは、上記前板部13の当接凹部13Aの張り出した先の上斜面13A2及び下斜面13A3とそれぞれ対面状に面当接する上斜面25A2及び下斜面25A3を有する。なお、厳密には、上記前側リブ25の凹台形面25Aの上斜面25A2及び下斜面25A3は、それらの斜面の前角部から突出して形成された上凸部25B1及び下凸部25B2が、それぞれ、前板部13の当接凹部13Aの対応する上斜面13A2及び下斜面13A3と当接するようになっている。
【0036】
後側リブ26は、図13に示すように、その縦長棒形状に張り出した先の上面部からシート上方向に突出する上突起26Aと、上記張り出した先の下面部からシート下方向に突出する下突起26Bと、を有する。上記後側リブ26は、ヘッドレストサポート20がアッパフレーム10に対して水平方向に約90度回されてセットされる時には、上記上突起26Aと下突起26Bとが、前出のアッパフレーム10の天板孔11A及び底板孔12Aの孔周りから半円筒状に張り出す各バーリング部11B,12Bの外周側を通るようになっている。それにより、後側リブ26は、上記各バーリング部11B,12Bとの干渉を避けた形で、アッパフレーム10の天板部11と底板部12との間に上記上突起26Aと下突起26Bとをシート高さ方向にそれぞれ突き出させた状態としてセットされるようになっている。
【0037】
また、図13に示すように、上記差込み部22には、その前側リブ25のシート高さ方向の略中央に位置する外周部箇所と、後側リブ26と後突起24Bとの間の外周部箇所とに、それぞれ、径方向の内側に押し込まれやすい弾性構造とされた押込み部27が形成されている。同押込み部27は、上記差込み部22の前側リブ25のシート高さ方向の略中央箇所に形成された前側押込み部27Aと、上記差込み部22の後側リブ26と後突起24Bとの間の外周部箇所に形成された後側押込み部27Bと、から成る。
【0038】
上記前側押込み部27Aは、その上下2箇所に入れられた切り込みにより、差込み部22の他の外周部よりも径方向の内側に弾性変形しやすい構成とされている。また、後側押込み部27Bも同様に、その上下2箇所に入れられた切り込みにより、差込み部22の他の外周部よりも径方向の内側に弾性変形しやすい構成とされている。上記前側押込み部27Aと後側押込み部27Bとは、それぞれ、それらの自由状態における外周面が、差込み部22の他の一般外周面よりも径方向の外側に僅かに張り出す膨らみ面形状とされている。また、上記前側押込み部27Aと後側押込み部27Bとは、それらの自由状態における内周面が、差込み部22の他の一般内周面と略同一円状を成す面形状とされている。
【0039】
上記構成の前側押込み部27Aは、図13及び図14に示すように、ヘッドレストサポート20がアッパフレーム10に対して水平方向に約90度回されてセットされるのに伴い、前出の前側リブ25と共に前板部13の当接凹部13Aに面当接するように押し当てられる。それにより、前側押込み部27Aは、上記当接凹部13Aの平坦面13A1により後側に押圧されて、差込み部22の径方向の内側に押し込まれる。同押込みにより、前側押込み部27Aは、図14に示すように、差込み部22の差込孔20A内に部分的に入り込む形に変形し、差込孔20Aの孔形状を部分的に狭めた状態となる。
【0040】
また、後側押込み部27Bは、図13及び図15に示すように、ヘッドレストサポート20がアッパフレーム10に対して水平方向に約90度回されてセットされるのに伴い、前出のアッパフレーム10の底板孔12Aの孔周りから半円筒状に張り出すバーリング部12Bの内周面に押し当てられる。それにより、後側押込み部27Bは、上記バーリング部12Bの内周面により前側に押圧されて、差込み部22の径方向の内側に押し込まれる。同押込みにより、後側押込み部27Bは、図15に示すように、差込み部22の差込孔20A内に部分的に入り込む形に変形し、差込孔20Aの孔形状を部分的に狭めた状態となる。
【0041】
上記により、図13に示すように、前側押込み部27Aと後側押込み部27Bとが互いにシート高さ方向にズレた位置で、差込み部22の差込孔20A内に押し込まれた状態となる。その結果、差込孔20Aの孔形状が、シート高さ方向にズレた前後2箇所の位置から僅かに押し狭められた状態となる。したがって、上記押し狭められた差込孔20Aにヘッドレストステー3Aが差し込まれた際に、ヘッドレストステー3Aが差込孔20A内で前後にガタ付くことが抑制されることとなる。なお、上記ヘッドレストステー3Aは、ヘッドレストサポート20をシート高さ方向に略貫通する位置までシート下方向に差し込まれるようになっている。
【0042】
<ヘッドレストサポート20のアッパフレーム10への組み付け手順について>
上記構成の各ヘッドレストサポート20は、図5図6に示すように、前出のアッパフレーム10に対して次のようにシート上方から差し込まれて組み付けられる。先ず、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を、アッパフレーム10の天板部11に形成された左右一対の天板孔11Aと、底板部12に形成された左右一対の底板孔12Aと、にそれぞれ貫通するようにシート上方から差し込む。詳しくは、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を、それらの下支え部24の前突起24Aをシート幅方向の外側(図示では左側)に向け、かつ、それらの誤組付け防止突起24Cの付いた後突起24Bをシート幅方向の内側(図示では右側)に向けた状態として、各天板孔11A及び底板孔12Aの丸孔部11A1,12A1内にシート上方から差し込む。
【0043】
上記差し込みにより、各ヘッドレストサポート20は、図5図7図8に示すように、それらの差込み部22が各天板孔11A及び底板孔12Aの丸孔部11A1,12A1内にシート上方から貫通して差し込まれる。それと共に、下支え部24の前突起24Aと後突起24Bとが、それぞれ、各天板孔11A及び底板孔12Aの左右の張出し孔部11A2,12A2内にそれぞれシート上方から貫通して差し込まれる。上記の差し込みは、各ヘッドレストサポート20のフランジ部23の下面部に突出して形成された押当て部28が天板部11の上面に当たる位置(差込み位置P1)にて係止されるようになっている。
【0044】
上記押当て部28が天板部11の上面に当たる位置までの差し込みにより、各ヘッドレストサポート20は、それらの下支え部24の前突起24Aと後突起24Bとが、それぞれ、上記底板孔12Aの左右の張出し孔部12A2をシート下方に抜けた位置まで通される。また、各差込み部22の前側リブ25と後側リブ26とが、それぞれ、上記天板部11と底板部12との間に介在する高さ位置へと通される。しかし、より厳密には、各ヘッドレストサポート20は、それらのフランジ部23の下面部に突出する押当て部28の突出形状により、実際には上記に示した差込み位置P1よりも僅かにシート上方に戻された位置にて係止されるようになっている。
【0045】
次に、図9図10に示すように、上記差込み位置P1に差し込んだ各ヘッドレストサポート20を、その位置から水平方向に約90度旋回させる。具体的には、左側のヘッドレストサポート20であれば平面視で図示時計回り方向、右側のヘッドレストサポート20であれば平面視で図示反時計回り方向にそれぞれ90度旋回させるように回転させる。それにより、各ヘッドレストサポート20は、それらの下支え部24の前突起24Aと後突起24Bとがそれぞれ各底板孔12Aの左右の張出し孔部12A2から回転方向にズレて底板部12の下面に下側から添えられる形に回し込まれる。同様に、各ヘッドレストサポート20の前側リブ25と後側リブ26も、それぞれ、各天板孔11Aの左右の張出し孔部11A2や各底板孔12Aの左右の張出し孔部12A2から回転方向にズレて、天板部11の下面に下側から添えられると共に底板部12の上面にも上側から添えられる形に回し込まれる。
【0046】
上記の旋回は、各ヘッドレストサポート20が上記の差込み位置P1から約90度旋回されることで、それらのフランジ部23の下面部に突出して形成された前出の押当て部28が、各天板孔11Aのシート幅方向の外側(図示では左側)の張出し孔部11A2と重なって弾性的に嵌り込むことで係止されるようになっている(図11図12参照)。すなわち、各ヘッドレストサポート20は、上記差込み位置P1(図11参照)からの旋回により、図13に示すようにそれらの下支え部24の前突起24Aと後突起24Bとが底板部12の下面に回し込まれる下支えと、それらの前側リブ25と後側リブ26とが天板部11の下面に回し込まれる下支えと、によって、天板部11上の押当て部28にシート下方への押し込み力が掛けられるようになっている。
【0047】
その作用により、各ヘッドレストサポート20は、上記の差込み位置P1(図11参照)から約90度旋回されてそれらの押込み部27が各天板孔11Aの張出し孔部11A2と重ねられる位置(係止位置P2)となることで、各張出し孔部11A2内に落とし込まれて嵌合するようになっている(図12参照)。また、上記嵌合に併せて、図13に示すように各差込み部22の前側リブ25とフランジ部23との間の外周部箇所に部分的に肉盛りされた形に形成された係止部29Aが、上記天板孔11Aの丸孔部11A1の前側内周の中間部に形成された段差状の係止面11A4に旋回方向に突き当てられて係止されるようになっている(図12参照)。
【0048】
上記押込み部27の嵌合と係止部29Aの係止とによって、各ヘッドレストサポート20が、天板部11に対して回り止めされた状態となる(係止位置P2)。また、図13に示すように、上記嵌合により、各ヘッドレストサポート20は、それらのフランジ部23が天板部11上に底付きした状態となる。また、各ヘッドレストサポート20の前側リブ25が、アッパフレーム10の前板部13の各当接凹部13Aに後側から面当接した状態となる。また、各ヘッドレストサポート20の前側リブ25と後側リブ26とが、アッパフレーム10の天板部11と底板部12との間にシート高さ方向に突っ張り棒状に介在した状態となる。ここで、上記前側リブ25と後側26が、それぞれ本発明の「係止構造」に相当する。
【0049】
また、各ヘッドレストサポート20の押込み部27を成す前側押込み部27Aと後側押込み部27Bとが、それぞれ、アッパフレーム10の前板部13の各当接凹部13Aの平坦面13A1と底板孔12Aの後側のバーリング部12Bの内周面とに押し当てられて、各差込み部22の差込孔20A内に押し込まれる形に変形した状態となる。また、各ヘッドレストサポート20の前側リブ25とフランジ部23との間に形成された肉盛り状の係止部29Aが、天板孔11Aの丸孔部11A1の前側内周面に後側から添えられた状態となる。また、各ヘッドレストサポート20の前側リブ25と下支え部24の前突起24Aとの間に形成された差込み部22の外周面上から肉盛り状に張り出す肉盛り部29Bが、底板孔12Aの丸孔部12A1の前側内周面に後側から添えられた状態となる。
【0050】
更に、各ヘッドレストサポート20の後側リブ26とフランジ部23との間に位置する差込み部22の後側外周面が、天板孔11Aの後側のバーリング部11Bの内周面の回転方向の略全域に亘って面当接した状態に添えられた状態となる。更に、各ヘッドレストサポート20の後側リブ26と下支え部24の後突起24Bとの間に位置する前出の後側押込み部27Bを含む差込み部22の後側外周面が、底板孔12Aの後側のバーリング部12Bの内周面の回転方向の略全域に亘って面当接した状態に添えられた状態となる。
【0051】
上記の組み付けにより、各ヘッドレストサポート20は、アッパフレーム10に対して、ヘッドレスト3から受けるシート前後方向の負荷荷重を広く分散して受け止めることができる状態に組み付けられるようになっている。すなわち、各ヘッドレストサポート20は、ヘッドレスト3に車両の前部衝突の発生等に伴うシート後方からの過大な負荷荷重が掛けられた時には、それらの前側リブ25の上斜面25A2及び平坦面25A1とアッパフレーム10の前板部13の上斜面13A2及び平坦面13A1との各当たりや、後側リブ26と下支え部24の後突起24Bとの間の差込み部22の後側外周面と、底板孔12Aの後側のバーリング部12Bの内周面と、の各当たりによって、上記の負荷荷重を広くアッパフレーム10に分散して受け止めることができるようになっている。加えて、各ヘッドレストサポート20の前側リブ25とフランジ部23との間の係止部29Aと、天板孔11Aの丸孔部11A1の前側内周面と、の各当たりによっても、上記の負荷荷重の分散効果を更に高めることができるようになっている。
【0052】
また、各ヘッドレストサポート20は、ヘッドレスト3に車両の後部衝突の発生等に伴うシート前方からの過大な負荷荷重が掛けられた時には、それらの後側リブ26とフランジ部23との間の差込み部22の後側外周面と、天板孔11Aの後側のバーリング部11Bの内周面と、の各当たりや、前側リブ25の下斜面25A3及び平坦面25A1と、アッパフレーム10の前板部13の下斜面13A3及び平坦面13A1と、の各当たりによって、上記の負荷荷重を広くアッパフレーム10に分散して受け止めることができるようになっている。加えて、各ヘッドレストサポート20の前側リブ25と下支え部24の前突起24Aとの間に形成された肉盛り部29Bと、底板孔12Aの丸孔部12A1の前側内周面と、の各当たりによっても、上記の負荷荷重の分散効果を更に高めることができるようになっている。
【0053】
また、各ヘッドレストサポート20は、それらのフランジ部23と前側リブ25及び後側リブ26との間に、アッパフレーム10の天板部11をシート高さ方向に挟み込む形をとる構成とされている。また、各ヘッドレストサポート20は、それらの前側リブ25及び後側リブ26と下支え部24の前突起24A及び後突起24Bとの間に、アッパフレーム10の底板部12をシート高さ方向に挟み込む形をとる構成とされている。これらの構成により、各ヘッドレストサポート20は、上記のような過大な負荷荷重が掛けられた際に、アッパフレーム10が天板部11と底板部12との間をシート高さ方向に広げたり狭めたりするように変形することを適切に防止することができるようになっている。
【0054】
図5図6に示すように、前出の各フランジ部23の下面部に突出して形成された押当て部28は、これらの嵌り込む各張出し孔部11A2と合致する周方向の横幅を備えた略矩形板形状に突出して形成されている。これら押当て部28は、各ヘッドレストサポート20をアッパフレーム10にシート上方から差し込む時の回転向き状態における後側の位置に形成されている。その理由は、次の通りである。すなわち、各ヘッドレストサポート20をアッパフレーム10にシート上方から差し込む作業は、通常、作業者がシートバック2の背裏側に立った位置から行われる。なぜなら、シートバック2の下部に組み付けられる不図示のシートクッションが、シート前方に延びる形状となっているため作業の邪魔となるからである。
【0055】
そして、作業者がシートバック2の背裏側に立った位置から各ヘッドレストサポート20をアッパフレーム10にシート上方から組み付ける際、上記の押当て部28が作業者に近い後側の位置に形成されていることで、作業者が押当て部28に近い頭部21の後側領域に親指で上側から強く力を掛けることで、押当て部28をアッパフレーム10の天板部11上に強く押し付けてフランジ部23を押し撓ませることができる。したがって、図7図8に示すように、各ヘッドレストサポート20を、アッパフレーム10に差し込んだ差込位置P1から図9図10に示す係止位置P2へと旋回させる際に、上記押当て部28をアッパフレーム10の天板部11上に強く押し込みながら旋回させることができ、各ヘッドレストサポート20の下支え部24と前側リブ25と後側リブ26とをアッパフレーム10の天板部11や底板部12と干渉させないように円滑に旋回させることができる。
【0056】
図8に示すように、上記各ヘッドレストサポート20の差込み部22の後側の外周面上には、その押当て部28の直上となる頭部21とフランジ部23との間の位置に、ヘッドレストサポート20の差し込み後の旋回方向(図示では左向きの矢印)を表示する矢印表示部20Bが形成されている。上記矢印表示部20Bにより、作業者が各ヘッドレストサポート20をアッパフレーム10に差し込んだ後の旋回方向を間違えないように矢印表示部20Bを見て確認することができるようになっている。
【0057】
<まとめ>
以上をまとめると、第1の実施形態に係るシート1は次のような構成となっている。すなわち、ヘッドレストステー(3A)がシート上方から差し込まれて装着されるヘッドレストサポート(20)と、ヘッドレストサポート(20)がシート高さ方向に差し込まれて装着されるシートバック(2)のアッパフレーム(10)と、を有する乗物用シート(1)である。アッパフレーム(10)が、互いにシート高さ方向に対面する天板部(11)及び底板部(12)と、天板部(11)と底板部(12)との間を繋ぐシート高さ方向に延びる立壁部(13)と、を有する。
【0058】
ヘッドレストサポート(20)が、天板部(11)に形成された天板孔(11A)と底板部(12)に形成された底板孔(12A)とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部(22)と、差込み部(22)を天板孔(11A)と底板孔(12A)とに対する差込み位置(P1)から水平変位(旋回)させることでアッパフレーム(10)に対して抜け止めされる係止位置(P2)へと移行可能な係止構造と、を有する。アッパフレーム(10)の立壁部(13)が、係止位置(P2)へと移行された差込み部(22)の外周面(25A)と当接する当接部(13A)を有する。
【0059】
上記構成によれば、ヘッドレストサポート(20)をアッパフレーム(10)にシート上方から差し込んで係止位置(P2)へと移行させることで、アッパフレーム(10)の立壁部(13)に形成された当接部(13A)がヘッドレストサポート(20)の差込み部(22)の外周面(25A)に当接する。それにより、ヘッドレストサポート(20)に掛かる荷重を、アッパフレーム(10)の天板部(11)や底板部(12)の他、立壁部(13)にも分散して伝達できるようになる。上記構成により、ヘッドレストサポート(20)を支えるアッパフレーム(10)の構造強度を合理的に高めることができる。
【0060】
また、当接部(13A)が、立壁部(13)の一般面から部分的に突出する突出部とされる。上記構成によれば、強度部材としてのアッパフレーム(10)に突出形状の当接部(13A)を設けることで、ヘッドレストサポート(20)を大型化することなく、差込み部(22)をアッパフレーム(10)の立壁部(13)に当接させられる構造を得ることができる。
【0061】
また、当接部が(13A)、差込み部(22)の外周面(25A)に対して互いの平坦面(13A1,25A1)同士を当接させる面当接構造とされる。上記構成によれば、ヘッドレストサポート(20)に掛かる荷重を、平坦面(13A1,25A1)同士の当接構造を介して、アッパフレーム(10)の立壁部(13)に対して適切に分散して伝達することができる。
【0062】
また、当接部(13A)が、差込み部(22)の外周面(25A)に向かってシート高さ方向に両斜面(13A2,13A3)が並ぶ向きに張り出す錐台形状とされる。当接部(13A)の両斜面(13A2,13A3)とこれらを繋ぐ平坦面(13A1)とが、それぞれ、対応する凹形状に形成された差込み部(22)の外周面(25A)と当接する。上記構成によれば、ヘッドレストサポート(20)に掛かるシート高さ方向の荷重を、アッパフレーム(10)の立壁部(13)に対して適切に分散して伝達することができる。
【0063】
また、ヘッドレストサポート(20)が、差込み位置(P1)からの水平回転により係止位置(P2)へと移行される。上記構成によれば、ヘッドレストサポート(20)の差込み部(22)を天板孔(11A)及び底板孔(12A)内で自転させて差込み位置(P1)から係止位置(P2)へと移行することができるため、各々の孔形状を小さく抑えることができると共に移行操作を簡便に行うことができる。
【0064】
また、第1の実施形態に係るバックフレーム2Fは次のような構成となっている。すなわち、ヘッドレストサポート(20)がシート高さ方向に差し込まれて装着されるアッパフレーム(10)を有するシートバックフレーム(2F)である。アッパフレーム(10)が、互いにシート高さ方向に対面する天板部(11)及び底板部(12)と、天板部(11)と底板部(12)との間を繋ぐシート高さ方向に延びる立壁部(13)と、を有する。
【0065】
立壁部(13)が、ヘッドレストサポート(20)の天板部(11)に形成された天板孔(11A)と底板部(12)に形成された底板孔(12A)とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部(22)が天板孔(11A)と底板孔(12A)とに対する差込み位置(P1)から水平変位(旋回)されてアッパフレーム(10)に対して抜け止めされる係止位置(P2)へと移行されることで差込み部(22)の外周面(25A)と当接する当接部(13A)を有する。
【0066】
上記構成によれば、ヘッドレストサポート(20)をアッパフレーム(10)にシート上方から差し込んで係止位置(P2)へと移行させることで、アッパフレーム(10)の立壁部(13)に形成された当接部(13A)がヘッドレストサポート(20)の差込み部(22)の外周面(25A)に当接する。それにより、ヘッドレストサポート(20)に掛かる荷重を、アッパフレーム(10)の天板部(11)や底板部(12)の他、立壁部(13)にも分散して伝達できるようになる。上記構成により、ヘッドレストサポート(20)を支えるアッパフレーム(10)の構造強度を合理的に高めることができる。
【0067】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0068】
1.本発明の乗物用シートの構成は、自動車用のシートの他、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートや、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
【0069】
2.ヘッドレストサポートのアッパフレームに対する差込み位置からの水平変位は、水平回転の他、横スライドや前後スライド等の水平移動であってもよい。また、これらを組み合わせた移動であってもよい。
【0070】
3.アッパフレームの立壁部は、天板部と底板部とを繋ぐ形でシート高さ方向に延びるものであれば良く、天板部と底板部との前縁同士を繋ぐ前板部の他、後縁同士を繋ぐ後板部であっても良い。また、上記立壁部は、上記前板部と後板部の両方から成るものであっても良い。また、天板部と底板部との間をシート幅方向に仕切るように延びる仕切板部から成るものであっても良い。上記立壁部は、必ずしも立板状の構造から成るものでなくても良く、天板部と底板部との間を繋ぐようにシート高さ方向に延びる形状のものであれば良い。
【0071】
4.アッパフレームの立壁部に設けられる当接部は、必ずしもヘッドレストサポートの差込み部の外周面に向かって突出するものでなくても良い。すなわち、上記当接部は、上記差込み部の外周面形状との関係によって、突出しないものや遠ざかる方向に凹むような形状から成るものであっても良い。上記当接部は、ヘッドレストサポートの差込み部の外周面に対して、面状に当接するものの他、線状に当接するものや点状に当接するものであっても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 シート(乗物用シート)
2 シートバック
2F バックフレーム(シートバックフレーム)
3 ヘッドレスト
3A ヘッドレストステー
10 アッパフレーム
11 天板部
11A 天板孔
11A1 丸孔部
11A2 張出し孔部
11A3 誤組付け防止孔部
11A4 係止面
11B バーリング部
12 底板部
12A 底板孔
12A1 丸孔部
12A2 張出し孔部
12A3 誤組付け防止孔部
12B バーリング部
13 前板部(立壁部)
13A 当接凹部(当接部)
13A1 平坦面
13A2 上斜面
13A3 下斜面
20 ヘッドレストサポート
20A 差込孔
20B 矢印表示部
21 頭部
21A ツマミ
22 差込み部
23 フランジ部
24 下支え部
24A 前突起
24B 後突起
24C 誤組付け防止突起
25 前側リブ(係止構造)
25A 凹台形面(差込み部の外周面)
25A1 平坦面
25A2 上斜面
25A3 下斜面
25B1 上凸部
25B2 下凸部
26 後側リブ(係止構造)
26A 上突起
26B 下突起
27 押込み部
27A 前側押込み部
27B 後側押込み部
28 押当て部
29A 係止部
29B 肉盛り部
P1 差込み位置
P2 係止位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15