(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】化学発光硫黄検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 21/76 20060101AFI20220705BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01N21/76
G01N30/74 Z
(21)【出願番号】P 2019017208
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 雅史
(72)【発明者】
【氏名】中野 茂暢
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059876(JP,A)
【文献】米国特許第05916523(US,A)
【文献】特開2000-298096(JP,A)
【文献】特開平09-054074(JP,A)
【文献】特開平09-108312(JP,A)
【文献】特開2007-101351(JP,A)
【文献】特開2017-207294(JP,A)
【文献】特開2015-219039(JP,A)
【文献】特開平08-313310(JP,A)
【文献】米国特許第05531105(US,A)
【文献】米国特許第05384024(US,A)
【文献】Agilent 8355 化学発光硫黄検出器/Agilent 8255 化学発光窒素検出器,ユーザーマニュアル,米国,Agilent Technologies,2015年10月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/83
G01N 30/00-G01N 30/96
G01N 35/00-G01N 35/10
G01N 37/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1供給口及び該第1供給口よりも下流側に位置する第2供給口を有するガス流路、及び該ガス流路を加熱する加熱手段を備えた加熱炉と、
前記第1供給口を通して前記ガス流路に酸化剤ガスを供給し、前記第2供給口を通して還元剤ガスを供給する酸化還元用ガス供給ユニットと、
前記ガス流路を通過してきた試料ガスをオゾンと反応させるための反応セルと、
前記反応セル内にオゾンを供給するオゾン供給ユニットと、
前記反応セルに接続された真空ポンプと、
前記反応セル内で発生した光を検出する光検出器と、
シャットダウン動作を開始させるためのシャットダウン信号を受け付ける信号受付部と、
前記信号受付部が前記シャットダウン信号を受け付けたことに基づいて、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる還元剤ガスの供給動作、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる酸化剤ガスの供給動作、前記加熱手段による前記ガス流路の加熱動作、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作、及び前記真空ポンプによる真空引き動作が、自動で停止されるように各部を制御するシャットダウン機能部と
、
前記ガス流路内の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出信号に基づいて、前記ガス流路内の温度が所定の温度判定値を下回ったか否かを判定する温度判定部と
を備え、
前記シャットダウン機能部が、前記加熱手段による前記ガス流路の加熱動作が停止された後に、前記温度判定部により前記ガス流路内が前記温度判定値を下回ったと判定されたことに基づいて、前記真空ポンプによる真空引き動作を停止させる、化学発光硫黄検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の化学発光硫黄検出器において
、
前記シャットダウン機能部が、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作が停止された後に、前記温度判定部により前記ガス流路内が前記温度判定値を下回ったと判定されたことに基づいて、前記真空ポンプによる真空引き動作を停止させる、化学発光硫黄検出器。
【請求項3】
請求項1に記載の化学発光硫黄検出器において、
前記オゾン供給ユニットが、オゾン発生器と、該オゾン発生器にオゾン生成用酸素を供給する酸素供給部とを備え、
前記シャットダウン機能部が、前記オゾン発生器を停止させた後、前記酸素供給部を停止させることにより、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作を停止させる、化学発光硫黄検出器。
【請求項4】
第1供給口及び該第1供給口よりも下流側に位置する第2供給口を有するガス流路、及び該ガス流路を加熱する加熱手段を備えた加熱炉と、
前記第1供給口を通して前記ガス流路に酸化剤ガスを供給し、前記第2供給口を通して還元剤ガスを供給する酸化還元用ガス供給ユニットと、
前記ガス流路を通過してきた試料ガスをオゾンと反応させるための反応セルと、
前記反応セル内にオゾンを供給するオゾン供給ユニットと、
前記反応セルに接続された真空ポンプと、
前記反応セル内で発生した光を検出する光検出器と
、
前記ガス流路内の温度を検出する温度センサと
を具備する化学発光硫黄検出器の動作を制御するためのコンピュータ用プログラムであって、コンピュータを、
前記温度センサの検出信号に基づいて、前記ガス流路内の温度が所定の温度判定値を下回ったか否かを判定する温度判定部と、
シャットダウン動作を開始させるためのシャットダウン信号を受け付ける信号受付部と、
前記信号受付部が前記シャットダウン信号を受け付けたことに基づいて、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる還元剤ガスの供給動作、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる酸化剤ガスの供給動作、前記加熱手段による前記ガス流路の加熱動作、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作、及び前記真空ポンプによる真空引き動作が、自動で停止されるように各部を制御する
ものであって、前記加熱手段による前記ガス流路の加熱動作が停止された後に、前記温度判定部により前記ガス流路内が前記温度判定値を下回ったと判定されたことに基づいて、前記真空ポンプによる真空引き動作を停止させるシャットダウン機能部と
して動作させる、化学発光硫黄検出器用プログラム。
【請求項5】
前記シャットダウン機能部が、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作が停止された後に、前記温度判定部により前記ガス流路内が前記温度判定値を下回ったと判定されたことに基づいて、前記真空ポンプによる真空引き動作を停止させる、請求項4に記載の化学発光硫黄検出器用プログラム。
【請求項6】
前記化学発光硫黄検出器において、前記オゾン供給ユニットが、オゾン発生器と、該オゾン発生器にオゾン生成用酸素を供給する酸素供給部とを備えており、
前記シャットダウン機能部が、前記オゾン発生器を停止させた後、前記酸素供給部
を停止させることにより、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作を停止させる、請求項4に記載の化学発光硫黄検出器用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発光硫黄検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学発光硫黄検出器(SCD:Sulfur Chemiluminescence Detector)は、化学発光を利用して試料中の硫黄化合物を高感度に検出可能な検出器であり、通常、ガスクロマトグラフ(GC)と組み合わせて使用される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
GCのカラムで分離された試料成分を含むガス(試料ガス)は、SCDに設けられた加熱炉に導入される。加熱炉は、燃焼管と該燃焼管を加熱するヒータとを備えている。燃焼管には、フローコントローラを介して酸化剤及び還元剤が供給されるようになっており、試料ガスが前記燃焼管の内部を通過する過程で酸化剤によって酸化され、該試料ガス中の硫黄化合物から二酸化硫黄(SO2)が生成される。さらに、このSO2が前記燃焼管の内部を通過する過程で還元剤によって還元されて一酸化硫黄(SO)が生成される。このSOは、加熱炉の後段に設けられた反応セルに導入される。反応セルには真空ポンプが接続されており、該真空ポンプによって該反応セルの内部のガスが吸引された後、オゾン発生器において生成されたオゾン(O3)が反応セルに供給される。これにより、反応セル内でSOとオゾンが反応して、二酸化硫黄の励起種(SO2
*)が生成される。このSO2
*が化学発光を経て基底状態に戻る際の発光強度が光検出器によって検出され、該発光強度から前記試料ガス中に含まれる硫黄化合物が定量される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SCDでは、試料ガスに含まれる硫黄化合物の定量分析が終了すると、加熱炉、フローコントローラ、真空ポンプ、及びオゾン発生器等を予め決められた順序で停止させる「シャットダウン」という作業を行った上で、SCD全体の電源を切る必要がある。シャットダウンの作業の順番を誤ると、SCDの部品の一部が汚染したり、次回のSCDを用いた定量分析を正常に実行できなかったりするおそれがある。ところが、従来のSCDでは、作業者が手動で各機器を順に停止させており、シャットダウン作業を実施する作業者の負担が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、SCDをシャットダウンするための作業を容易に行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る化学発光硫黄検出器は、
第1供給口及び該第1供給口よりも下流側に位置する第2供給口を有するガス流路、及び該ガス流路を加熱する加熱手段を備えた加熱炉と、
前記第1供給口を通して前記ガス流路に酸化剤ガスを供給し、前記第2供給口を通して還元剤ガスを供給する酸化還元用ガス供給ユニットと、
前記ガス流路を通過してきた試料ガスをオゾンと反応させるための反応セルと、
前記反応セル内にオゾンを供給するオゾン供給ユニットと、
前記反応セルに接続された真空ポンプと、
前記反応セル内で発生した光を検出する光検出器と、
シャットダウン動作を開始させるためのシャットダウン信号を受け付ける信号受付部と、
前記信号受付部が前記シャットダウン信号を受け付けたことに基づいて、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる還元剤ガスの供給動作、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる酸化剤ガスの供給動作、前記加熱手段による前記ガス流路の加熱動作、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作、及び前記真空ポンプによる真空引き動作が、自動で停止されるように各部を制御するシャットダウン機能部と
を具備することを特徴とする。
【0008】
上記化学発光硫黄検出器において、さらに、
前記ガス流路内の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出信号に基づいて、前記ガス流路内の温度が所定の温度判定値を下回ったか否かを判定する温度判定部と
を備え、
前記シャットダウン機能部が、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作が停止された後に、前記温度判定部により前記ガス流路内が前記温度判定値を下回ったと判定されたことに基づいて、前記真空ポンプによる真空引き動作を停止させることが好ましい。
【0009】
また、上記化学発光硫黄検出器においては、
前記オゾン供給ユニットが、オゾン発生器と、該オゾン発生器にオゾン生成用酸素を供給する酸素供給部とを備え、
前記シャットダウン機能部が、前記オゾン発生器を停止させた後、前記酸素供給部を停止させることにより、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作を停止させることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る化学発光硫黄検出器用プログラムは、
第1供給口及び該第1供給口よりも下流側に位置する第2供給口を有するガス流路、及び該ガス流路を加熱する加熱手段を備えた加熱炉と、
前記第1供給口を通して前記ガス流路に酸化剤ガスを供給し、前記第2供給口を通して還元剤ガスを供給する酸化還元用ガス供給ユニットと、
前記ガス流路を通過してきた試料ガスをオゾンと反応させるための反応セルと、
前記反応セル内にオゾンを供給するオゾン供給ユニットと、
前記反応セルに接続された真空ポンプと、
前記反応セル内で発生した光を検出する光検出器と
を具備する化学発光硫黄検出器の動作を制御するためのコンピュータ用プログラムであって、コンピュータを、
シャットダウン動作を開始させるためのシャットダウン信号を受け付ける信号受付部と、
前記信号受付部が前記シャットダウン信号を受け付けたことに基づいて、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる還元剤ガスの供給動作、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる酸化剤ガスの供給動作、前記加熱手段による前記ガス流路の加熱動作、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作、及び前記真空ポンプによる真空引き動作が、自動で停止されるように各部を制御するシャットダウン機能部と
して動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の通り、本発明によれば、信号受付部がシャットダウン信号を受け付けると、化学発光硫黄検出器において、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる還元剤ガスの供給動作、前記酸化還元用ガス供給ユニットによる酸化剤ガスの供給動作、前記加熱手段による前記ガス流路の加熱動作、前記オゾン供給ユニットによるオゾン供給動作、及び前記真空ポンプによる真空引き動作が、自動で停止されるように各部が制御される。このため、作業者は、信号受付部にシャットダウン信号を入力させるための作業をするだけで、SCDを簡単にシャットダウンすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態によるSCDを備えたGCシステムの外観を示す正面図。
【
図3】前記GCシステムの内部構成を模式的に示す正面図。
【
図4】前記GCシステムの内部構成を模式的に示す上面図。
【
図5】前記SCDの加熱炉付近の構成を示す断面図。
【
図6】前記SCDによるシャットダウン動作を示すフローチャート。
【
図7】本発明のSCDを含んだGCシステムの別の構成例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための構成について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る化学発光硫黄検出器(SCD)を備えたガスクロマトグラフシステム(GCシステム)の一実施形態の外観を示す正面図である。
図2は、本実施形態によるSCDの概略構成を示す図である。
図3及び
図4は、前記GCシステムの内部構造を示す模式図であり、
図3は正面図、
図4は上面図である。
図5は、SCDの加熱炉付近の構成を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るGCシステムはGC100とSCD200とを備えて構成されている。
GC100は、試料導入部110と、カラム140を収容して加熱するカラムオーブン120と、制御基板(図示略)等が収容された制御基板収容部130とを備えている。カラムオーブン120の前面は開閉可能な扉121となっており、制御基板収容部130の前面には操作パネル132が設けられている。
【0015】
GC100では、試料導入部110においてキャリアガスの流れに試料が導入され、該試料を含むキャリアガスが、カラムオーブン120に収容されたカラム140の入口端に導入される。前記試料は、カラム140を通過する過程で成分毎に分離され、分離された各試料成分を含むガス(以下「試料ガス」とよぶ)が順次カラム140の出口端から溶出する。
【0016】
図2に示すように、SCD200は、加熱炉210と、該加熱炉210を通過したガスをオゾンと反応させるための反応セル231と、反応セル231内に発生した化学発光を光学フィルタ232を通して検出する発光検出部233(本発明における「光検出器」に相当)と、反応セル231に供給するオゾンを生成するオゾン発生器234と、反応セル231および加熱炉210内を真空引きする真空ポンプ236と、反応セル231と真空ポンプ236の間に配設された該反応セル231から排出されるガスからオゾンを除去するオゾンスクラバ235と、フローコントローラ237と、制御/処理部300と、これらを収容する筐体240(
図1参照)とを備えている。反応セル236とオゾンスクラバ235の間の配管には、反応セル231内の真空度を測定するための真空計238が設けられている。また、SCD200は、GC100との境界に配置されて、GC100とSCD200とを連結するためのインターフェース250を備えている。
【0017】
図3及び
図4に示すように、SCD200において加熱炉210は、SCD200の筐体240の上部前側に収容されており、反応セル231及びその他の構成要素(
図3及び
図4では省略)は、筐体240内部の残りの空間(例えば加熱炉210の下方や後方)に収容されている。なお、SCD200の筐体240のうち、加熱炉210が収容されている空間の上面は取外し可能な天板241(
図1参照)となっている。
【0018】
図5に示すように、加熱炉210は、外部燃焼管211と、内部燃焼管212と、酸化剤供給管213と、不活性ガス導入管214と、ヒータ215(本発明における「加熱手段」に相当)と、これらを収容するハウジング216とを備えている。外部燃焼管211及び内部燃焼管212が本発明における「ガス流路」に相当する。外部燃焼管211は、酸化剤供給管213の内部に、酸化剤供給管213と同軸に配置されており、不活性ガス導入管214は、その一端(左端)が外部燃焼管211の右端に挿入されている。また、内部燃焼管212は、その一端(右端)が外部燃焼管211の左端に挿入されている。外部燃焼管211、内部燃焼管212、酸化剤供給管213、及び不活性ガス導入管214は、いずれもアルミナなどのセラミックで構成されている。なお、酸化剤供給管213には、外部燃焼管211内の温度を検出する温度センサ211aが設置されている。
【0019】
酸化剤供給管213及び外部燃焼管211の右端には、コネクタ217が取り付けられ、不活性ガス導入管214はこのコネクタ217に挿通されている。なお、コネクタ217の左端面には溝217a(本発明における「第1供給口」に相当)が切られており、該溝217aを介して酸化剤供給管213と外部燃焼管211との間で気体の流通が可能となっている。不活性ガス導入管214の右端は加熱炉210のハウジング216から突出しており、GC100とSCD200の境界に配置されたインターフェース250の内部に設けられた配管251の左端に接続されている。
【0020】
なお、インターフェース250は、配管251に加えて、これを加熱するためのヒータ252と、配管251及びヒータ252を収容するハウジング253を備えており、SCD200の筐体240の右側壁242に設けられた開口242a及びGC100の筐体の左側壁122に設けられた開口122aに挿通されている。配管251の右端はインターフェース250のハウジング253から突出しており、該右端には第1ジョイント221が取り付けられている。この第1ジョイント221には、不活性ガス導入管214に不活性ガス(ここでは窒素)を供給するための不活性ガス流路264が接続されている。また、第1ジョイント221には、GC100のカラム140を挿通するための孔(図示略)が設けられている。カラム140の出口側の端部は、この孔から第1ジョイント221に挿通され、インターフェース250内の配管251を経て加熱炉210の内部、具体的には、不活性ガス導入管214の内部であって、不活性ガス導入管214の左端よりもやや右側の位置まで差し込まれる。
【0021】
酸化剤供給管213、外部燃焼管211、及び内部燃焼管212の左端は、加熱炉210のハウジング216から突出し、更にSCD200の筐体240の左側壁243に設けられた開口243aから外部に突出している。筐体240の外部において、酸化剤供給管213の左端には、第2ジョイント222が取り付けられており、この第2ジョイント222には、酸化剤供給管213に酸化剤(ここでは酸素)を供給するための酸化剤流路265が接続されている。外部燃焼管211は、この第2ジョイント222に挿通されており、その左端には第3ジョイント223が取り付けられている。この第3ジョイント223には、外部燃焼管211に還元剤(ここでは水素)を供給するための還元剤流路266が接続されている。内部燃焼管212は、この第3ジョイント223に挿通されており、その左端は反応セル231に至る移送管270に接続されている。
【0022】
移送管270は可撓性のチューブで構成されており、SCD200の筐体240の外部で折り返して筐体240の左側壁243に設けられた別の開口243b(
図4参照)から再び筐体240の内部に進入し、筐体240内の反応セル231に接続されている。なお、
図5では図示を省略しているが、SCD200の左側壁243の外面には、開口243a、243bを覆う位置に開閉可能なカバー271が設けられている。
【0023】
不活性ガス流路264、酸化剤流路265、及び還元剤流路266は、いずれもフローコントローラ237に接続されている。また、フローコントローラ237には、オゾン発生器234にオゾン生成用の酸素を供給するための酸素流路267が接続されている。フローコントローラ237は、不活性ガス流路264と不活性ガス供給源261とを接続する配管、酸化剤流路265及び酸素流路267と酸化剤供給源262とを接続する配管、還元剤流路266と還元剤供給源263とを接続する配管、及びこれらの配管を開閉するバルブ239を備えている。フローコントローラ237は、バルブ239の開閉を制御することによって、不活性ガス供給源261、酸化剤供給源262、及び還元剤供給源263からそれぞれ不活性ガス流路264、酸化剤流路265、還元剤流路266、及び酸素流路267に供給されるガスの流量を調整している。なお、不活性ガス供給源261、酸化剤供給源262、及び還元剤供給源263は、例えば、それぞれ窒素、酸素(本発明における「酸化剤ガス」に相当)、及び水素(本発明における「還元剤ガス」に相当)を充填したガスボンベ等から成るものとすることができる。
【0024】
不活性ガス供給源261からフローコントローラ237を経て不活性ガス流路264に供給された窒素は、第1ジョイント221、及び配管251を経て不活性ガス導入管214の右端に流入し、不活性ガス導入管214の内部を左方に向かって進行する。
【0025】
酸化剤供給源262からフローコントローラ237を経て酸化剤流路265に供給された酸素は、第2ジョイント222を介して酸化剤供給管213の左端に流入し、酸化剤供給管213の内壁と外部燃焼管211の外壁との間の空間を右方に向かって進行する。酸化剤供給管213の右端に達した酸素は、外部燃焼管211の右端面に形成された溝211bから外部燃焼管211の内部に流入し、外部燃焼管211内を左方に向かって進行する。
【0026】
還元剤供給源263からフローコントローラ237を経て還元剤流路266に供給された水素は、第3ジョイント223(本発明における「第2供給口」に相当)を経て外部燃焼管211の左端に流入し、外部燃焼管211の内壁と内部燃焼管212の外壁との間の空間を右方に向かって進行する。内部燃焼管212の右端付近まで到達した水素は、そこから内部燃焼管212の中に引き込まれ、内部燃焼管212の内部を左方に向かって進行する。
【0027】
GC100のカラム140の出口端から加熱炉210の内部に導入された試料ガスは、外部燃焼管211の右端にて酸素と混合され、外部燃焼管211の内部を左方に進行しつつ、高温で酸化分解される。このとき、試料成分が硫黄化合物である場合には、二酸化硫黄が生成される。酸化分解された試料成分を含むガスは、外部燃焼管211の左端付近から導入される水素と共に内部燃焼管212に引き込まれる。前記酸化分解された試料成分に二酸化硫黄が含まれる場合は、ここで二酸化硫黄が水素と反応して一酸化硫黄に還元される。内部燃焼管212を通過したガスは、移送管270を通じて反応セル231に導入される。
【0028】
なお、不活性ガス導入管214からは、カラム140の出口端の周囲に窒素が供給される。この窒素は、カラム140の劣化による検出器汚染を防止する効果、及び加熱炉210内での酸化還元反応を促進する効果を有している。
【0029】
外部燃焼管211及び内部燃焼管212の内部での酸化還元反応を促進するため、ヒータ215によって、加熱炉210の内部は、最も高温になる領域で500℃以上(望ましくは700℃~1200℃)となるように加熱される。
【0030】
移送管270から反応セル231に送られたガスは、反応セル231内でオゾンと混合される。このとき、一酸化硫黄とオゾンの反応によって生じる化学発光が光学フィルタ232を介して光電子増倍管等から成る発光検出部233で検出される。前記オゾンは、酸化剤供給源262から酸素流路267を経て供給される酸素を用いてオゾン発生器234で生成され、反応セル231に供給される。このとき、酸素流路267を経てオゾン発生器234に供給される酸素の流量もフローコントローラ237によって制御される。本発明においては、オゾン発生器234、フローコントローラ237、酸化剤供給源262、酸素流路267からオゾン供給ユニットが構成される。反応セル231の下流には、オゾンスクラバ235と真空ポンプ236が設けられており、真空ポンプ236によって吸引された反応セル231内のガスは、オゾンスクラバ235によってオゾンを除去された上で、排気として外部に排出される。
【0031】
発光検出部233からの検出信号は制御/処理部300に送られ、制御/処理部300にて該検出信号に基づいて試料ガス中の硫黄化合物の濃度が求められる。制御/処理部300は、例えばCPU、ROM、RAM、及び外部周辺機器などと通信するための入出力回路などを備えたマイクロコンピュータなどにより具現化することができ、例えばROMに格納された制御プログラムや制御用パラメータに従った演算処理をCPUを中心に実行することによって、前記検出信号の処理や、各部の動作制御、具体的には、加熱炉210のヒータ215、インターフェース250のヒータ252、発光検出部233、オゾン発生器234、真空ポンプ236、及びフローコントローラ237等の制御が行われる。また、制御/処理部300には、作業者の指示を入力するためのキーボート、マウス、タッチパネル、又は操作ボタン等から成る入力装置320が接続されている。
【0032】
さらに、
図2では、制御/処理部300に係るように信号受付部311、シャットダウン機能部312、及び温度判定部313が示されている。これらは、本実施形態に係るSCD200の特徴的な動作であるシャットダウン動作を実現するための機能手段であり、いずれも制御/処理部300のメモリに格納されたシャットダウンプログラムを制御/処理部300のCPUが実行することによりソフトウェア的に実現される。
【0033】
以下、上記の機能手段によって実現されるシャットダウン動作の手順について
図6のフローチャートを参照して説明する。
GC100のカラム140から加熱炉210の内部に試料ガスが導入されてから、制御/処理部300にて該試料ガス中の硫黄化合物の濃度を求めるまでの全ての処理が終了すると、作業者は、入力装置320から制御/処理部300へシャットダウン動作の実行指示を入力する。そして、この指示が信号受付部311に受け付けられると(ステップ11)、シャットダウン機能部312の制御のもと、シャットダウン動作が開始される。
【0034】
シャットダウン動作では、まずは、制御/処理部300によりフローコントローラ237が制御され、還元剤供給源263から還元剤流路266への水素の供給、及び酸化剤供給源262から酸化剤流路265への酸素の供給が順に停止される(ステップ12)。
次に、制御/処理部300により、加熱炉210のヒータ215の駆動電源が停止され(ステップ13)、その後、オゾン発生器234が停止される(ステップ14)。そして、オゾン発生器234を停止してから、所定時間(例えば1分間)が経過すると、制御/処理部300により、フローコントローラ237が制御され、酸素流路267への酸素の供給が停止され(ステップ15)、これにより、停止状態にあるオゾン発生器234に対する酸素の供給が停止される。
【0035】
その後、温度センサ211aの検出信号が制御/処理部300に入力されると、該検出信号が予め定められた閾値以上であるか否かが温度判定部313にて判定される(ステップ16)。そして、温度センサ211aの検出信号が予め定められた閾値を下回った(つまり、外部燃焼管211内の温度が所定の温度判定値(例えば50℃)未満)であると判定された場合(ステップ16にてNo)には、制御/処理部300によりフローコントローラ237が制御され、不活性ガス流路264への窒素の供給が停止される(ステップ17)。また、真空ポンプ236が停止される(ステップ18)。これにより、反応セル231内の真空度が低下(圧力が上昇)していく。
【0036】
以上によりシャットダウン動作が終了する。したがって、シャットダウン動作のために各機器を順に停止させる操作を作業者が手動で行う必要がない。
また、外部燃焼管211内が十分に冷却されていない状態で該外部燃焼管211への不活性ガスの供給を停止したり、真空ポンプ236を停止したりすると、加熱炉210の部品が汚染されたり、SCD200に接続されているカラムが汚染するおそれがあるが、本実施形態では、温度センサ211aによって外部燃焼管211内の温度を検出し、その温度が判定値を下回った後にフローコントローラ237を制御して不活性ガス流路264への窒素の供給を停止し、真空ポンプ236を停止するようにしたため、そのようなおそれがない。
【0037】
また、オゾン発生器234が動作している状態で該オゾン発生器234への酸素の供給が停止されると、オゾン発生器234が損傷するおそれがあるが、本実施形態では、オゾン発生器234を停止してからフローコントローラ237を制御して酸素流路267への酸素供給を停止したため、そのようなおそれがない。
【0038】
なお、シャットダウン動作が終了した旨を作業者に通知する通知手段(例えばブザー、ランプ等)を設けても良い。これにより、作業者は、シャットダウン動作が終了したことを認識することができる。
【0039】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。 例えば、上記実施形態では、酸化剤として酸素を使用するものとしたが、酸素に変えて空気を使用することもできる。また、上記実施形態では不活性ガスとして窒素を使用するものとしたが、その他の不活性ガス(例えばヘリウム)を使用することもできる。また、不活性ガスの供給はSCDの動作に必須のものではないため、本発明に係るSCDは、不活性ガス供給源261、不活性ガス流路264、不活性ガス導入管214等を有しない構成とすることもできる。
【0040】
また、上記実施形態では、信号受付部311、シャットダウン機能部312、及び温度判定部313を実現するためのプログラムをSCDに内蔵されたマイクロコンピュータ(制御/処理部300)に搭載するものとしたが、上記プログラムは、SCD200に接続されたGC100内のマイクロコンピュータに搭載されるもの(
図7)としてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、SCD200に設けられた入力装置320から作業者がシャットダウン動作の実行開始を指示することとしたが、これに限らず、作業者がGC100の操作パネル132から前記シャットダウン動作の実行指示を行うものとしてもよい。さらに、作業者が入力装置を操作してシャットダウン動作の実行開始を指示する構成に代えて、GC100の動作を制御するためのプログラムにSCD200におけるシャットダウン動作の実行開始指示信号を出力する処理を組み込み、GC100の動作が開始されてから適宜のタイミングで、SCD200においてシャットダウン動作が自動的に開始されるようにしても良い。このようなプログラムはGC100内のマイクロコンピュータに搭載しても良い。また、本発明に係るプログラムは、必ずしも単体のプログラムである必要はなく、例えば、SCD200を制御するためのプログラムや、GC100を制御するためのプログラムの一部に組み込まれたものであってもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、横型の加熱炉(すなわち水平方向に延在する燃焼管を内蔵した加熱炉)を備えたSCDに本発明を適用する例を示したが、これに限らず、特許文献1に記載のような縦型の加熱炉(すなわち鉛直方向に延在する燃焼管を内蔵した加熱炉)を備えたSCDにも本発明を同様に適用することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、4つの流路を1つのフローコントローラで制御する例を示したが、1つの流路につき1つのフローコントローラ、もしくは2つの流路につき1つのフローコントローラで制御する構成とすることもできる。
【0044】
また、上記実施形態で説明したシャットダウン動作の順番は一例であり、必ずしもこの順番である必要はない。例えば、オゾン発生器234は酸化剤流路267への酸素供給の停止の前に行われていればよい。そのため、オゾン発生器234の停止はシャットダウン動作実行指示後、すぐに行われてもよい。
【符号の説明】
【0045】
100…ガスクロマトグラフ
200…化学発光硫黄検出器
210…加熱炉
211…外部燃焼管
212…内部燃焼管
213…酸化剤供給管
214…不活性ガス導入管
215…ヒータ
216…ハウジング
231…反応セル
233…発光検出部
234…オゾン発生器
235…オゾンスクラバ
236…真空ポンプ
300…制御/処理部
311…信号受付部
312…シャットダウン機能部
313…温度判定部
400…パーソナルコンピュータ