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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】樹脂製品の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/08 20060101AFI20220705BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20220705BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20220705BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20220705BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F16B5/08 B
F16F15/08 E
F16F1/36 N
F16B5/07 D
F02M35/10 101N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019021623
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128779
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】垣本 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 繁鉱
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-125627(JP,A)
【文献】実開昭60-189639(JP,U)
【文献】特開2007-237365(JP,A)
【文献】特開平08-135632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00- 5/12
F16B 5/07
F16B 5/08
F16F 15/08
F16F 1/00- 6/00
F16B 11/00
F02M 35/10
B29C 63/00- 63/48
B29C 65/00- 65/82
B23P 19/00- 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ樹脂材料により形成され、かつそれぞれに設けられた接合部において互いに接合される第1構成部材及び第2構成部材を少なくとも備え、前記第2構成部材には、挿通孔を有する被着部が設けられた製品本体部と、弾性材料により筒状に形成され、かつ外周に環状溝を有し、前記挿通孔の周縁部が前記環状溝に嵌合されることにより、前記被着部に装着される弾性部材とを備える樹脂製品を製造する樹脂製品の製造方法であって、
前記樹脂製品の製造装置として振動溶着機を用い、同振動溶着機における固定治具及び可動治具の一方に前記弾性部材をセットする第1工程と、
前記挿通孔を前記弾性部材に対向させた状態で前記第2構成部材を、前記固定治具及び前記可動治具のうち、前記弾性部材がセットされたものにセットする第2工程と、
前記固定治具及び前記可動治具のうち、前記弾性部材がセットされていないものに前記第1構成部材をセットする第3工程と、
前記固定治具及び前記可動治具を互いに接近させることで、前記接合部において互いに接近する側へ押し付けられた前記第1構成部材及び前記第2構成部材の一方を、押し付け方向に直交する方向へ前記可動治具で振動させることにより、前記弾性部材を前記挿通孔に挿通させ、同挿通孔の周縁部を前記環状溝に嵌合させるとともに、両接合部を溶着させる第4工程と
を備える樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記弾性部材を前記固定治具に対し、動きを規制した状態でセットし、
前記第2工程では、前記第2構成部材を前記固定治具にセットし、
前記第3工程では、前記第1構成部材を前記可動治具にセットし、
前記第4工程では、前記可動治具により前記第1構成部材を振動させる請求項1に記載の樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂製品の製造方法に用いられる樹脂製品の製造装置であって、
前記固定治具及び前記可動治具のうち、前記弾性部材がセットされるものには、前記弾性部材が載置される載置部と、前記載置部に載置された前記弾性部材をその載置された位置に保持する保持部とが設けられている樹脂製品の製造装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記載置部に載置された前記弾性部材を取り囲むように同載置部から突出する突部により構成されている請求項3に記載の樹脂製品の製造装置。
【請求項5】
前記保持部の先端は、前記載置部に載置された前記弾性部材の前記環状溝よりも、前記載置部側へ遠ざかった箇所に位置している請求項4に記載の樹脂製品の製造装置。
【請求項6】
前記載置部には、同載置部に載置された前記弾性部材から遠ざかる方向へ凹む凹部が設けられている請求項3~5のいずれか1項に記載の樹脂製品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材が装着された樹脂製品を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、挿通孔53を有する被着部52が設けられた製品本体部51と、ゴム等の弾性材料により筒状に形成され、かつ被着部52に装着される弾性部材55とを備える樹脂製品50が知られている(例えば、特許文献1参照)。弾性部材55は、外周に環状溝56を有しており、被着部52における挿通孔53の周縁部54が環状溝56に嵌合されることにより、同被着部52に装着される。
【0003】
このような製品本体部51及び弾性部材55を備える樹脂製品50としては、例えば、車載エンジン用の樹脂製の吸気マニホールドが挙げられる。この吸気マニホールドでは、製品本体部が複数の樹脂製の構成部材によって構成され、そのうちの1つの構成部材に被着部が設けられ、弾性部材がこの被着部に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-137792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記弾性部材55を被着部52に装着する際には、同弾性部材55が挿通孔53に挿通される。しかし、弾性部材55において環状溝56とは異なる箇所が挿通孔53よりも大径であることに加え、弾性部材55が硬質の弾性材料によって形成されている。そのため、環状溝56が挿通孔53に対向する位置まで、弾性部材55を同挿通孔53に挿通することが難しい。特に、手作業で弾性部材55を被着部52に装着する場合には、専従の作業者が必要となる。また、作業者が大きな力で弾性部材55を被着部52側へ押す必要があり、装着作業に時間がかかる。この作業を繰り返し行うことは作業者にとって重労働である。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、樹脂製品の製造に際し、手で弾性部材を押す作業を行うことなく、弾性部材を被着部に装着することのできる樹脂製品の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する樹脂製品の製造方法は、それぞれ樹脂材料により形成され、かつそれぞれに設けられた接合部において互いに接合される第1構成部材及び第2構成部材を少なくとも備え、前記第2構成部材には、挿通孔を有する被着部が設けられた製品本体部と、弾性材料により筒状に形成され、かつ外周に環状溝を有し、前記挿通孔の周縁部が前記環状溝に嵌合されることにより、前記被着部に装着される弾性部材とを備える樹脂製品を製造する樹脂製品の製造方法であって、前記樹脂製品の製造装置として振動溶着機を用い、同振動溶着機における固定治具及び可動治具の一方に前記弾性部材をセットする第1工程と、前記挿通孔を前記弾性部材に対向させた状態で前記第2構成部材を、前記固定治具及び前記可動治具のうち、前記弾性部材がセットされたものにセットする第2工程と、前記固定治具及び前記可動治具のうち、前記弾性部材がセットされていないものに前記第1構成部材を装着する第3工程と、前記固定治具及び前記可動治具を互いに接近させることで、前記接合部において互いに接近する側へ押し付けられた前記第1構成部材及び前記第2構成部材の一方を、押し付け方向に直交する方向へ前記可動治具で振動させることにより、前記弾性部材を前記挿通孔に挿通させ、同挿通孔の周縁部を前記環状溝に嵌合させるとともに、両接合部を溶着させる第4工程とを備える。
【0008】
上記の製造方法によれば、第1工程では、振動溶着機における固定治具及び可動治具の一方に弾性部材がセットされる。
第2工程では、被着部の挿通孔が弾性部材に対向させられ、この状態で、第2構成部材が、固定治具及び可動治具のうち、弾性部材がセットされたものにセットされる。
【0009】
第3工程では、第1構成部材が、固定治具及び可動治具のうち、弾性部材がセットされていないものに装着される。
第4工程では、固定治具及び可動治具が互いに接近させられる。この接近により、接合部において互いに接近する側へ押し付けられた第1構成部材及び第2構成部材の一方が、可動治具によって、押し付け方向に直交する方向へ振動させられる。この際、弾性部材及び被着部は互いに接近する側へ押し付けられる。また、この弾性部材に上記振動が伝わる。弾性部材は、振動方向における両側へ揺れを伴って撓みながら挿通孔にスムーズに入っていく。環状溝が挿通孔に対向する位置まで弾性部材が同挿通孔に入ると、挿通孔の周縁部が環状溝に嵌合される。この嵌合により、弾性部材が被着部に装着された状態になる。また、上述した押圧状態での振動により、両接合部が溶着させられる。すなわち、互いに接近する側へ押し付けられた両接合部が擦り合わされ、そのときに発生する摩擦熱によって、両接合部が接触部分において溶融して接合される。
【0010】
このように、振動溶着の際の圧力と振動が利用されて、弾性部材が被着部に装着されるため、手で弾性部材を大きな力で押して被着部に装着する作業が不要となる。
上記課題を解決する樹脂製品の製造装置は、上記樹脂製品の製造方法に用いられるものであって、前記固定治具及び前記可動治具のうち、前記弾性部材がセットされるものには、前記弾性部材が載置される載置部と、前記載置部に載置された前記弾性部材をその載置された位置に保持する保持部とが設けられている。
【0011】
上記の製造装置によれば、弾性部材が振動溶着機にセットされる際には、固定治具及び可動治具のうち、セットの対象となるものに設けられた載置部に弾性部材が載置される。
ここで、振動溶着時の振動により弾性部材が載置部に対しずれると、同弾性部材が挿通孔に挿通されないおそれがある。この点、上記の構成によれば、載置部に載置された弾性部材は、保持部によって、その載置された位置に保持される。従って、互いに接近する側へ押し付けられた第1構成部材及び第2構成部材の一方が可動治具によって振動させられる際に、弾性部材が載置部に対し動く(ずれる)ことが規制される。そのため、弾性部材の挿通孔への挿通が的確に行われる。
【0012】
また、上記振動に伴い、仮に弾性部材が載置部に対し摺動すると摩擦熱が発生し、弾性部材の載置部との境界部分が熱の影響を受けるおそれがある。しかし、上記のように弾性部材の動きが保持部によって規制されるため、摩擦熱の発生が抑制され、弾性部材が熱の影響を受けにくい。
【発明の効果】
【0013】
上記樹脂製品の製造方法及び製造装置によれば、樹脂製品の製造に際し、手で弾性部材を押す作業を行うことなく、弾性部材を被着部に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態における樹脂製品の一部を破断して示す概略構成図。
図2】一実施形態における樹脂製品の被着部と、同被着部に装着される弾性部材とを示す部分断面図。
図3】一実施形態における樹脂製品を振動溶着機とともに示す概略図。
図4】一実施形態の固定治具に弾性部材がセットされる前の状態を示す部分断面図。
図5】一実施形態の固定治具に弾性部材及び第2構成部材がともにセットされた状態を示す部分断面図。
図6】一実施形態の振動溶着機が用いられて、弾性部材が被着部に装着された状態を示す部分断面図。
図7】従来技術を説明する図であり、樹脂製品の被着部に弾性部材が装着される前の状態を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、樹脂製品の製造方法及び製造装置を具体化した一実施形態について、図1図6を参照して説明する。
最初に、本実施形態の製造方法及び製造装置によって製造される樹脂製品の概略構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、樹脂製品10は、製品本体部11及び弾性部材20を備えている。製品本体部11は、それぞれ熱可塑性の樹脂材料により形成された第1構成部材12及び第2構成部材13を備えている。第1構成部材12の外周縁部にはフランジ状の接合部12aが形成され、第2構成部材13の外周縁部にはフランジ状の接合部13aが形成されている。各接合部12a,13aには、溶着用の突条部(図示略)が形成されている。これらの第1構成部材12及び第2構成部材13は、いずれも射出成形法等の樹脂成形法によって形成されている。第1構成部材12及び第2構成部材13は、接合部12a,13aにおいて互いに接合されている。
【0017】
第2構成部材13には、第1構成部材12から遠ざかる側(図1の下方)へ突出する被着部14が形成されている。被着部14は、先端(図1の下端)に円形の挿通孔15を有している。
【0018】
図2に示すように、弾性部材20は、硬質ゴム等の硬質の弾性材料により、中心軸線L1に沿う方向(図2の上下方向)の両端が開放された略円筒状をなしている。弾性部材20の中心軸線L1に沿う方向の中間部分には、同中心軸線L1を中心とする円環状の環状溝21が形成されている。環状溝21の内底部は、上記挿通孔15の孔径(内径)よりも僅かに小さな外径を有している。環状溝21は、被着部14における挿通孔15の周縁部16の厚みよりも僅かに大きな溝幅を有している。弾性部材20では、中心軸線L1に沿う方向について、環状溝21の両側で形状が異なっている。そこで、両部分を区別するために、一方(図2の下方)の部分を基端部22といい、他方(図2の上方)部分を先端部23というものとする。先端部23は、環状溝21から遠ざかるに従い縮径するテーパ状をなしている。先端部23の外径は、最も小さい箇所でも、挿通孔15の孔径(内径)よりも大きく設定されている。これに対し、基端部22は、外径が中心軸線L1に沿う方向に均一の円環板状をなしている。基端部22の外径は、上記先端部23の外径よりも大きく設定されている。上記の構成を有する弾性部材20としては、例えばグロメットが挙げられる。
【0019】
次に、上記樹脂製品10を製造する際に用いられる製造装置30について説明する。
製造装置30は、図3において二点鎖線で示される振動溶着機31を備えている。振動溶着機31は、固定治具32と、その固定治具32の上方に配置されて固定治具32に対して、二点鎖線の矢印で示す方向へ振動する可動治具39とを備えている。
【0020】
固定治具32は、略円筒状の受け部35を備えている。受け部35は、固定治具32の底壁部33上に配置され、ノックピン34等によって同底壁部33に固定されている。
図4に示すように、受け部35の上部には、上記弾性部材20の基端部22が載置される載置部36が形成されている。受け部35において、載置部36の周囲には、同載置部36に載置された上記基端部22を、その載置された位置に保持する保持部37が設けられている。保持部37は、載置部36に載置された基端部22を取り囲むように同載置部36から上方へ突出する円環状の突部によって構成されている。保持部37の内径は、基端部22の外径よりも僅かに大きく設定されている。図5に示すように、保持部37の載置部36からの突出長さは、基端部22の板厚よりも1mm程度短く設定されている。この設定により、保持部37の先端(図5の上端)は、載置部36に載置された弾性部材20の環状溝21よりも、載置部36側(図5の下側)へ遠ざかった箇所に位置する。さらに、載置部36の保持部37との境界部分には、同載置部36に載置された弾性部材20から遠ざかる方向(下方)へ凹む円環状の凹部38が設けられている。
【0021】
次に、本実施形態の作用として、上記製造装置30を用いて上記樹脂製品10を製造する方法について図4図6を参照して説明する。また、効果についても併せて説明する。
この製造方法は、第1~第4工程を備えている。次に、各工程について説明する。
【0022】
<第1工程>
第1工程では、図4及び図5に示すように、受け部35の載置部36上に、弾性部材20の基端部22が載置される。このとき、載置部36の周囲に設けられた円環状の保持部37は、基端部22を載置部36に導くガイド部として機能する。基端部22が、保持部37によって囲まれた領域に挿通されれば、弾性部材20は基端部22において載置部36に対し、位置決めされた状態で載置される。そのため、弾性部材20を位置決めした状態で載置部36に載置する作業を簡単かつ適切に行うことができる。
【0023】
また、弾性部材20が載置部36に載置されると、その弾性部材20の基端部22は保持部37によって取り囲まれる。この保持部37は、載置部36に載置された基端部22が、その位置から動くのを規制する。このようにして弾性部材20は固定治具32に対し、動きを規制された状態でセットされる。
【0024】
さらに、載置部36に凹部38が設けられていることから、基端部22の載置部36との接触面積は、凹部38が設けられない場合よりも小さい。
<第2工程>
第2工程では、接合部13aが上側に位置し、かつ被着部14が下側に位置するように第2構成部材13の姿勢が合わせられる(図3参照)。図5に示すように、挿通孔15の中心軸線L2が弾性部材20の中心軸線L1と合致するように、又はそれに近い状態となるように、挿通孔15が弾性部材20に対向させられる。この状態で、第2構成部材13が固定治具32にセットされることで、被着部14のうち挿通孔15の周縁部16が、弾性部材20における先端部23の先端面(上面)に接触した状態又それに近い状態となる。
【0025】
上記のように、第2構成部材13が固定治具32にセットされる際には、載置部36に載置された弾性部材20の基端部22が保持部37によって動きを規制される。
<第3工程>
第3工程では、接合部12aが下端に位置するように第1構成部材12の姿勢が合わせられる。この状態で第1構成部材12が可動治具39にセットされる(図3参照)。
【0026】
<第4工程>
第4工程では、第2構成部材13の接合部13aに対し、第1構成部材12の接合部12aが重なるように、固定治具32の上側に可動治具39が配置される(図3参照)。この状態で、固定治具32及び可動治具39が互いに接近させられる。この接近により、第1構成部材12及び第2構成部材13が接合部12a,13aにおいて互いに接近する側へ押し付けられる。上記接近は、本実施形態では、固定治具32が可動治具39側へ移動されることによりなされる。第2構成部材13の接合部13aが第1構成部材12の接合部12aに押し付けられる。
【0027】
この際、図5に示すように、弾性部材20の先端部23が被着部14の周縁部16に押し付けられる。この状態で、図3において二点鎖線の矢印で示すように、第1構成部材12が可動治具39によって、押し付け方向に直交する方向(図3では左右方向)へ、1.7mm程度の振幅で振動させられる。
【0028】
上記のように、弾性部材20の先端部23が被着部14の被着部14に押し付けられた状態で、上記振動が第2構成部材13及び被着部14を介して弾性部材20に伝わる。弾性部材20は、振動方向における両側へ揺れを伴って撓みながら挿通孔15にスムーズに入っていく。環状溝21が挿通孔15に対向する位置まで弾性部材20の先端部23が入ると、図6に示すように、被着部14における挿通孔15の周縁部16が環状溝21に嵌合される。この嵌合により、弾性部材20が被着部14に装着された状態になる。また、図3に示すように、上記押圧状態での第1構成部材12の振動により、両接合部12a,13aが溶着される。すなわち、接合部12aの突条部が接合部13aの突条部に押圧された状態で振動する。このときに発生する摩擦熱によって、両接合部12a,13aが突条部において溶融して接合される。
【0029】
このように、振動溶着の際の圧力と振動とが利用されて、弾性部材20が被着部14に装着されるため、手で弾性部材20を大きな力で被着部14側へ押す作業が不要となり、作業者にかかる負担が軽減される。また、弾性部材20の被着部14への装着が繰り返されても、作業者にかかる負担が増えるのを抑制することができる。
【0030】
また、手作業で弾性部材20を被着部14に装着する専従の作業者が不要となる。そのため、それまで弾性部材20を被着部14に装着する作業をしていた作業者を、別の作業に振り分けることができる。
【0031】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・一般に、第1構成部材12及び第2構成部材13の振動溶着と、弾性部材20の被着部14への装着とは、別々の工程で行われるが、本実施形態では同一の工程で行われる。そのため、樹脂製品10の製造工数を削減することができる。また、1つの樹脂製品10を製造する時間を短縮することもできる。
【0032】
・一般的な振動溶着機を用い、固定治具32に受け部35を追加するのみで、製造装置30を構成することができる。また、振動溶着の条件を変更しなくてすむ。
・ここで、振動溶着機31の振動により弾性部材20が載置部36に対し動く(ずれる)と、同弾性部材20が挿通孔15に挿通されないおそれがある。この点、本実施形態によれば、載置部36に載置された弾性部材20は、保持部37によって、その載置された位置に保持される。従って、振動溶着時に、弾性部材20が載置部36に対し動く(ずれる)ことが規制される。そのため、弾性部材20の挿通孔15への挿通を的確に行うことができる。
【0033】
・上記振動に伴い、仮に、弾性部材20が載置部36に対し摺動すると、摩擦熱が発生し、弾性部材20の載置部36との境界部分が熱の影響を受けるおそれがある。しかし、上記のように弾性部材20の動きが保持部37によって規制されるため、摩擦熱の発生が抑制され、弾性部材20が熱の影響を受けにくい。
【0034】
・仮に、受け部35が固定治具32に代えて可動治具39に取り付けられ、弾性部材20が可動治具39にセットされると、その可動治具39が振動する際に、弾性部材20が同可動治具39に対し摺動するおそれがある。この場合には、上記と同様に摩擦熱が発生し、弾性部材20が熱の影響を受ける懸念がある。しかし、本実施形態では、弾性部材20が固定治具32に対し、動きを規制された状態でセットされる。弾性部材20は、可動治具39が振動しても、固定治具32に対し動きにくい。そのため、この場合にも上記と同様に摩擦熱の発生が抑制され、弾性部材20が熱の影響を受けにくい。
【0035】
・載置部36に凹部38が設けられていて、同弾性部材20の載置部36との接触面積が、凹部38が設けられない場合よりも少なくなっている。従って、振動が伝わった弾性部材20が載置部36に対し摺動したとしても、同弾性部材20と載置部36との間で発生する摩擦熱が少なくなる。そのため、弾性部材20は、凹部38が設けられない場合に比べ、摩擦熱による影響を受けにくい。
【0036】
図6に示すように、保持部37の先端(上端)が、載置部36に載置された弾性部材20の環状溝21よりも、載置部36側へ遠ざかった箇所、表現を変えると、環状溝21よりも低い箇所に位置している。そのため、弾性部材20の挿通孔15への挿通に伴い、被着部14における挿通孔15の周縁部16が環状溝21に嵌合される際に、保持部37が被着部14と干渉するのを抑制することができる。
【0037】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・上記製造方法及び製造装置によって製造される樹脂製品10は、振動溶着によって接合される樹脂製の複数の構成部材を備え、その構成部材の1つに設けられた被着部に弾性部材が装着されるものであれば特に限定されない。
【0038】
該当する樹脂製品としては、例えば、車載エンジン用の樹脂製の吸気マニホールドが挙げられる。この吸気マニホールドでは、製品本体部を構成する複数の樹脂製構成部材の1つに被着部が設けられ、弾性部材がこの被着部に装着される。この場合、弾性部材は、エンジンの振動が吸気マニホールドに伝わるのを抑制する防振材として用いられる。
【0039】
・上記製造方法及び製造装置は、接合部12a,13aが第1構成部材12及び第2構成部材13の外周縁部とは異なる箇所に設けられた樹脂製品を製造する場合にも適用可能である。
【0040】
・製品本体部11は、第1構成部材12及び第2構成部材13を必須とし、これらに対し、1又は複数の新たな構成部材が加えられて構成されるものであってもよい。
・保持部37は、載置部36を取り囲む円周上において、互いに周方向に離間した状態で配置された複数の突部によって構成されてもよい。
【0041】
・受け部35における凹部38は、載置部36の保持部37との境界部分において周方向に互いに離間した複数箇所に設けられてもよい。
・受け部35における凹部38は、載置部36において保持部37との境界部分とは異なる箇所に設けられてもよい。
【0042】
・摩擦熱によって受ける影響が許容できるほど小さければ、受け部35が固定治具32に代えて可動治具39に取り付けられてもよい。この場合には、樹脂製品10の製造に際し、第1工程において弾性部材20が可動治具39にセットされ、第2工程において、挿通孔15が弾性部材20に対向させられた状態で第2構成部材13が可動治具39にセットされる。第3工程では、第1構成部材12が固定治具32にセットされる。第4工程では、固定治具32及び可動治具39が互いに接近させられることで、接合部12a,13aにおいて互いに接近する側へ押し付けられた第1構成部材12及び第2構成部材13のうちの第2構成部材13が、可動治具39によって、押し付け方向に直交する方向へ振動させられる。
【0043】
このようにしても、弾性部材20の先端部23を被着部14の挿通孔15に挿通させ、同挿通孔15の周縁部16を環状溝21に嵌合させて弾性部材20を被着部14に装着するとともに、両接合部12a,13aを溶着させることができる。
【0044】
・第4工程では、第1構成部材12及び第2構成部材13を、接合部12a,13aにおいて互いに接近する側へ押し付けるために、可動治具39が固定治具32側へ移動されてもよいし、可動治具39及び固定治具32の双方が互いに接近する側へ移動されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…樹脂製品、11…製品本体部、12…第1構成部材、12a,13a…接合部、13…第2構成部材、14…被着部、15…挿通孔、16…周縁部、20…弾性部材、21…環状溝、30…製造装置、31…振動溶着機、32…固定治具、36…載置部、37…保持部、38…凹部、39…可動治具。
図1
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図5
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図7