(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20220705BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220705BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F41/04 C
(21)【出願番号】P 2019028422
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】松永 季
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210579(JP,A)
【文献】特開平09-017634(JP,A)
【文献】特開2013-161939(JP,A)
【文献】特開2015-012022(JP,A)
【文献】特開2016-018858(JP,A)
【文献】特開2006-261585(JP,A)
【文献】特開2018-006634(JP,A)
【文献】特開2010-062187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/28、37/00、41/04
H05K 1/16、3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂絶縁層が積層方向に積層された積層体と、
前記積層体の内部に形成された第1コイル導体層と、
前記第1コイル導体層の上方に形成された第2コイル導体層と、
を備え、
前記積層体は、非感光性の第1樹脂絶縁層と、感光性の第2樹脂絶縁層とを含み、
前記第1樹脂絶縁層の線膨張係数は、前記第2樹脂絶縁層の線膨張係数よりも小さく、
前記第1コイル導体層と前記第2コイル導体層との間において、前記第1樹脂絶縁層と前記第2樹脂絶縁層とが交互に積層されている、
コイル部品。
【請求項2】
前記第1コイル導体層は、前記複数の樹脂絶縁層の主面間に形成されている、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
下方の主面が前記第1コイル導体層に接触している前記樹脂絶縁層は、前記第1樹脂絶縁層であり、
上方の主面が前記第1コイル導体層に接触している前記樹脂絶縁層は、前記第2樹脂絶縁層である、
請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
下方の主面が前記第1コイル導体層に接触している前記樹脂絶縁層は、前記第2樹脂絶縁層であり、
上方の主面が前記第1コイル導体層に接触している前記樹脂絶縁層は、前記第1樹脂絶縁層である、
請求項2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記積層体に対して前記積層方向の一方の面に配設され、非樹脂からなる基板を備えた、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記積層体に対して前記積層方向の両方の面にそれぞれ配設され、非樹脂からなる一対の基板を備えた、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記基板は磁性材料からなる、
請求項5又は請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記積層体と前記基板とを接合する接着層をさらに有する、
請求項5から請求項7の何れか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品は、種々の電子機器に搭載されている。その電子部品の1つとして、例えば積層型のコイル部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。積層型のコイル部品は、複数の絶縁層が積層された積層体と、積層体の内部に形成されたコイル導体層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のコイル部品では、クラック等の内部欠陥が生じる虞がある。上述のコイル部品に用いられる絶縁層の線膨張係数は、コイル導体層の線膨張係数と異なることが一般的である。このため、製造工程や実装工程において加わる熱負荷により応力が蓄積され、クラック等の内部欠陥が生じる。特に、このような内部欠陥は、絶縁層が樹脂からなる樹脂絶縁層である場合に発生しやすい。これは、樹脂絶縁層には、コイル導体層よりも線膨張係数がかなり大きい感光性の樹脂絶縁層が用いられることが多く、樹脂絶縁層における応力の蓄積も大きくなるためである。
【0005】
本開示の目的は、内部欠陥の発生が抑制されるコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様であるコイル部品は、複数の樹脂絶縁層が積層方向に積層された積層体と、前記積層体の内部に形成された第1コイル導体層と、を備え、前記積層体は、非感光性の第1樹脂絶縁層と、感光性の第2樹脂絶縁層とを含み、前記第1樹脂絶縁層の線膨張係数は、前記第2樹脂絶縁層の線膨張係数よりも小さく、前記第1樹脂絶縁層と前記第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有する。
【0007】
この構成によれば、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分において、線膨張係数の大きな第2樹脂絶縁層の応力が解放されやすくなり、クラック等の内部欠陥の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、内部欠陥の発生が抑制されるコイル部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態のコイル部品の外観を示す概略斜視図。
【
図2】第一実施形態のコイル部品を示す概略断面図。
【
図5】第二実施形態のコイル部品を示す概略断面図。
【
図6】変更例のコイル部品の外観を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図や平面図では、理解を容易にするためハッチングを付しているが、一部の構成要素についてはハッチングを省略している場合がある。
【0013】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態を説明する。
図1に示すように、コイル部品10は、概略直方体状をなしている。
図2に示すように、コイル部品10は、複数の樹脂絶縁層31~39が積層方向Dに積層された積層体12と、積層体12の内部に形成されたコイル導体層41~44とを備えている。樹脂絶縁層31,33,35,37,39は非感光性の第1樹脂絶縁層であり、樹脂絶縁層32,34,36,38は感光性の第2樹脂絶縁層であり、積層体12は、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有している。
【0014】
図1では、コイル部品10の積層方向Dと平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向から視て、コイル部品10の長辺が延在している方向をX軸方向、コイル部品10の短辺が延在している方向をY軸方向とする。また、Z軸方向について、コイル部品10の外部端子21a~21dが存在する側を下方、その反対側を上方とする。
【0015】
第1の基板11と第2の基板13は、積層体12に対して、積層方向Dの両方の面にそれぞれ配設されている。本実施形態において、第1の基板11は積層体12の下方の面に配設され、第2の基板13は積層体12の上方の面に配設されている。
【0016】
第1の基板11は、概略直方体状をなしている。第1の基板11は、例えば非樹脂からなる。本実施形態において、第1の基板11は磁性材料からなる。第1の基板11は、例えば、フェライトの焼結体である。なお、第1の基板11は、磁性体粉を含有する樹脂の成形体であってもよい。磁性体粉は、例えば、フェライトまたは、鉄(Fe)、シリコン(Si)、クロム(Cr)等の金属磁性材料であり、樹脂材料は、例えば、エポキシ等の樹脂材料である。第1の基板11が磁性体粉を含有する樹脂である場合は、粒度分布の異なる2または3種類の磁性体粉を混在させると樹脂中に磁性体粉が適度に分散されやすくなり、好ましい。
【0017】
外部端子21a~21dは、第1の基板11の下面角部に形成されている。各外部端子21a~21dは、コイル部品10を下方から視て、概略長方形状をなしている。外部端子21a~21dは、コイル部品10を実装する実装基板のランドパターンに対してはんだ等により接続される。外部端子21a~21dは、例えばAu、Ni、Cu、Ti、Ag等の金属層がめっき、スパッタ法、蒸着、印刷等により形成されている。また、外部端子21a~21dは、Cu等の下地層上に、NiやSn等のめっき層を形成した多層構造であってもよい。
【0018】
接続部材22a~22dは、第1の基板11の各角部に形成されている。各接続部材22a~22dは、それぞれの下端において外部端子21a~21dに接続されている。接続部材22a~22dは、例えば、外部端子21a~21dの説明で例示した材料、工法で形成される。接続部材22a~22dは、外部端子21a~21dと一体に形成してもよいし、別々に形成してもよい。
【0019】
図2に示すように、コイル導体層41,43は、その平面螺旋形状の内周端側で樹脂絶縁層32~35を積層方向Dに沿って貫通するビア配線51により互いに電気的に接続され、コイル導体層42,44は、その平面螺旋形状の内周端側で樹脂絶縁層34~37を積層方向Dに沿って貫通するビア配線52により互いに電気的に接続されている。ビア配線51は、樹脂絶縁層32,33,34,35の開口部32X,33X,34X,35Xに形成された導体である。ビア配線52は、樹脂絶縁層34,35,36,37に形成された開口部34Y,35Y,36Y,37Yに形成された導体である。
【0020】
なお、
図1に示すように、積層体12には、積層体12の角部から露出するように接続部材61a~61dが形成されている。接続部材61a~61dは、積層体12の下面側においても露出しており、接続部材22a~22dに電気的に接続されている。コイル導体層41~44、ビア配線51,52、接続部材61a~61dは、例えば、外部端子21a~21dの説明で例示した材料、工法で形成される。コイル導体層41~44の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることが特に好ましく、例えば15μmである。
【0021】
また、コイル導体層41~44のそれぞれは、その平面螺旋形状の外周端側で、接続部材61a~61dの何れか一つと電気的に接続される。これにより、コイル導体層41~44は、外部端子21a~21dに電気的に接続されている。
【0022】
図4に示すように、本実施形態のコイル部品10は、第1のコイルL1と第2のコイルL2とを有する。第1のコイルL1は外部端子21aと外部端子21cとの間に接続され、第2のコイルL2は外部端子21bと外部端子21dとの間に接続される。
【0023】
詳述すると、
図1及び
図2に示すように、第1のコイルL1は、コイル導体層41,43及びビア配線51で構成される。したがって、コイル部品10においては、外部端子21a、接続部材22a,61a、コイル導体層41の外周端、コイル導体層41の内周端、ビア配線51、コイル導体層43の内周端、コイル導体層43の外周端、接続部材61c,22c、外部端子21cの順に電気的に直列接続される。同様に、第2のコイルL2は、コイル導体層42,44及びビア配線52で構成される。したがって、コイル部品10においては、外部端子21b、接続部材22b,61b、コイル導体層42の外周端、コイル導体層42の内周端、ビア配線52、コイル導体層44の内周端、コイル導体層44の外周端、接続部材61d,22d、外部端子21dの順に電気的に直列接続される。ただし、コイルの接続構成としては、上記に限られず、例えば、コイル導体層41とコイル導体層44とがビア配線51で接続され、コイル導体層42とコイル導体層43とがビア配線52で接続される構成であってもよい。同様に、コイル導体層41とコイル導体層42とがビア配線51で接続され、コイル導体層43とコイル導体層44とがビア配線52で接続される構成であってもよい。
【0024】
なお、コイル部品10が、例えばコモンモードチョークコイルである場合は、外部端子21aから外部端子21cに向かって第1のコイルL1に電流が流れる場合に、第1のコイルL1の内径側で発生する磁束の向き(
図1に示すZ軸の上向き又は下向き)は、外部端子21bから外部端子21dに向かって第2のコイルL2に電流が流れる場合に、第2のコイルL2の内径側で発生する磁束の向きと同じとなる。ただし、コイル部品10は、トランスやコイルアレイ等であってもよく、第1のコイルL1、第2のコイルL2に発生する磁束の向きは同じでも逆向きでもよい。
【0025】
第2の基板13は、概略直方体状をなしている。第2の基板13は、例えば非樹脂からなる。本実施形態において、第2の基板13は磁性材料からなる。第2の基板13は、例えば第1の基板11で例示した材料からなる。第2の基板13は、接着層71,72を介して積層体12の上面に接着されている。接着層71,72としては、例えば熱硬化性のポリイミド樹脂を用いることができる。
【0026】
積層体12の内部構成について詳述する。コイル部品10では、積層体12は、非感光性の第1樹脂絶縁層及び感光性の第2樹脂絶縁層を含み、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有する。第1樹脂絶縁層及び第2樹脂絶縁層は、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等の種々の樹脂材料を用いることができる。
【0027】
具体的には、
図2に示すように、積層体12は、第1の基板11上に積層方向Dに積層された9つの樹脂絶縁層31~39を備えている。樹脂絶縁層31,33,35,37,39は、非感光性の第1樹脂絶縁層であり、樹脂絶縁層32,34,36,38は、感光性の第2樹脂絶縁層である。なお、
図2では、積層体12において、非感光性の第1樹脂絶縁層と感光性の第2樹脂絶縁層とを区別するため、非感光性の第1樹脂絶縁層は白抜きで、感光性の第2樹脂絶縁層はドットハッチングで図示されている。なお、
図2において、第1の基板11及び第2の基板13に付したドットハッチングは感光性を示すものではない。
【0028】
コイル導体層41は、樹脂絶縁層31の上側の主面と、樹脂絶縁層32の下側の主面の間に形成されている。コイル導体層41は、例えば
図3に示すように、樹脂絶縁層31の上側の主面(上面)において平面螺旋(渦巻=スパイラル)状に巻回されている。コイル導体層42は、樹脂絶縁層33の上側の主面と、樹脂絶縁層34の下側の主面の間に形成されている。コイル導体層42は、図示しないが、コイル導体層41と同様に、樹脂絶縁層33の上側の主面(上面)において平面螺旋状に形成されている。コイル導体層43は、樹脂絶縁層35の上側の主面と、樹脂絶縁層36の下側の主面の間に形成されている。コイル導体層43は、図示しないが、コイル導体層41と同様に、樹脂絶縁層35の上側の主面(上面)において平面螺旋状に形成されている。コイル導体層44は、樹脂絶縁層37の上側の主面と、樹脂絶縁層38の下側の主面の間に形成されている。コイル導体層44は、図示しないが、コイル導体層41と同様に、樹脂絶縁層37の上側の主面(上面)において平面螺旋状に形成されている。樹脂絶縁層39は、樹脂絶縁層38の上面に形成されている。
【0029】
即ち、本実施形態の積層体12において、コイル導体層41,42,43,44は、樹脂絶縁層31,33,35,37の上方の主面と、樹脂絶縁層32,34,36,38の下方の主面の間に形成されている。そして、上方の主面がコイル導体層41,42,43,44に接触している樹脂絶縁層31,33,35,37は非感光性の第1樹脂絶縁層であり、下方の主面がコイル導体層41,42,43,44に接触している樹脂絶縁層32,34,36,38は感光性の第2樹脂絶縁層である。これにより、熱による膨張収縮が比較的少ない第1樹脂絶縁層である樹脂絶縁層31,33,35,37上にコイル導体層41,42,43,44が形成されるため、コイル導体層41,42,43,44の形成精度が向上する。
【0030】
ビア配線51,52は、樹脂絶縁層32~37の開口部32X~37Yに形成されている。樹脂絶縁層32~37の開口部32X~37Yは、樹脂絶縁層32~37の感光性・非感光性の差異により、適宜の開口方法により形成できる。例えば、非感光性の第1樹脂絶縁層である樹脂絶縁層33,35,37の開口部33X,35X,35Y,37Yは、例えばサンドブラスト加工法、レーザ加工法、等により形成できる。また、例えば、感光性の第2樹脂絶縁層である樹脂絶縁層32,34,36の開口部32X,34X,34Y,36Yは、例えばフォトリソグラフィ法により形成できる。
【0031】
(作用)
コイル部品10の積層体12は、非感光性の第1樹脂絶縁層である樹脂絶縁層31,33,35,37,39と、感光性の第2樹脂絶縁層である樹脂絶縁層32,34,36,38とが交互に積層された部分を有する。非感光性の第1樹脂絶縁層の線膨張係数は、感光性の第2樹脂絶縁層の線膨張係数よりも小さい。コイル部品10では、積層体12が、感光性の第2樹脂絶縁層と、感光性の第2樹脂絶縁層より線膨張係数が小さい非感光性の第1樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有することによって、コイル部品10の製造工程、実装工程、使用環境等における熱負荷により第2樹脂絶縁層に発生する応力が、第1樹脂絶縁層との隣接部分で解放されやすくなり、積層体12におけるクラック等の内部欠陥の発生が抑制される。
【0032】
非感光性の第1樹脂絶縁層の線膨張係数は、コイル導体層41~44に用いられる金属(例えばCu)の線膨張係数に近い。例えば、感光性の第2樹脂絶縁層の線膨張係数は30~40、非感光性の第1樹脂絶縁層の線膨張係数は15~20、Cuの線膨張係数は約16.8である。したがって、積層体12は、コイル導体層41~44と線膨張係数が近い非感光性の第1樹脂絶縁層を有することにより、感光性の第2樹脂絶縁層のみを用いた積層体と比べ、コイル導体層41~44との線膨張係数の差を小さくでき、上記熱負荷による応力の発生自体が抑制される。
【0033】
なお、コイル部品10では、コイル導体層41とコイル導体層42との間において、樹脂絶縁層32,33が存在することによって、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層とが交互に積層されている。これにより、コイル導体層41とコイル導体層42との間という局所的な観点でも、上記熱負荷により第2樹脂絶縁層に発生する応力が、第1樹脂絶縁層との隣接部分で解放されやすくなり、より積層体12におけるクラック等の内部欠陥の発生が抑制されるとともに、コイル導体層41,42の断線の発生も抑制される。また、コイル部品10では、コイル導体層42とコイル導体層43との間、コイル導体層43とコイル導体層44との間でも同様の構成を有し、さらに積層体12におけるクラック等の内部欠陥の発生が抑制される。
【0034】
また、第1の基板11、第2の基板13をフェライトの焼結体とした場合、第1の基板11、第2の基板13を構成するフェライトの線膨張係数は約9.8である。非感光性の第1樹脂絶縁層である樹脂絶縁層31,39を積層体12の上面側と下面側とに積層することで、感光性の第2樹脂絶縁層のみを用いた積層体と比べ、第1の基板11と積層体12との間、及び第2の基板13と積層体12との間の線膨張係数の差を小さくできる。このため、第1の基板11と積層体12との間、及び第2の基板13と積層体12との間の剥離等の内部欠陥の発生が抑制される。
【0035】
なお、樹脂絶縁層31~39が非感光性の第1樹脂絶縁層、感光性の第2樹脂絶縁層のいずれであるかは、樹脂における感光性成分の有無で判別できる。具体的には、例えばX線回折法やフーリエ変換赤外線分光法等を用いて、感光性を有する光官能基が存在するかを確認すればよい。
【0036】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1-1)コイル部品10は、複数の樹脂絶縁層31~39が積層された積層体12と、積層体12の内部に形成されたコイル導体層41,42,43,44とを備えている。樹脂絶縁層31,33,35,37,39は、非感光性の第1樹脂絶縁層であり、樹脂絶縁層32,34,36,38は、感光性の第2樹脂絶縁層である。積層体12は、非感光性の第1樹脂絶縁層と感光性の第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有する。
【0037】
非感光性の第1樹脂絶縁層である樹脂絶縁層31,33,35,37,39の線膨張係数は、感光性の第2樹脂絶縁層である樹脂絶縁層32,34,36,38の線膨張係数よりも小さい。したがって、コイル部品10の製造工程における熱硬化や実装工程におけるリフロー処理、使用環境における温度変化等により第2樹脂絶縁層に生じる応力が、第1樹脂絶縁層との隣接部分で解放されやすくなり、積層体12におけるクラック等の内部欠陥の発生が抑制される。
【0038】
(1-2)積層体12は、コイル導体層41,42,43,44と線膨張係数が近い非感光性の第1樹脂絶縁層である樹脂絶縁層31,33,35,37,39を有する。これにより、感光性の第2樹脂絶縁層のみを有する積層体と比べ、積層体12とコイル導体層41~44との線膨張係数の差を小さくでき、上記熱負荷による応力の発生自体が抑制される。これにより、積層体12におけるクラック等の内部欠陥の発生がより抑制される。
【0039】
(1-3)積層体12は、非感光性の第1樹脂絶縁層である樹脂絶縁層31,39を積層体12の上面側と下面側とに備えている。したがって、感光性の第2樹脂絶縁層のみを有する積層体と比べ、積層体12と第1の基板11との間、及び積層体12と第2の基板13との間の線膨張係数の差を小さくできる。このため、積層体12と第1の基板11との間、及び積層体12と第2の基板13との間の剥離等の内部欠陥の発生が抑制される。
【0040】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態を説明する。
なお、第二実施形態は、コイル部品に含まれる積層体の構造が第一実施形態と相違する。第二実施形態では、外観等が第一実施形態と同様であるため、同様の構成部材については同じ符号を付し、相違する部分について添付図面にしたがって説明する。
【0041】
図5は、第二実施形態のコイル部品100の概略断面図である。
コイル部品100は、第1の基板11上に、複数の樹脂絶縁層111~115が積層方向Dに積層された積層体102と、積層体102の内部に形成されたコイル導体層41~44とを備えている。樹脂絶縁層111,113,115は、非感光性の第1樹脂絶縁層であり、樹脂絶縁層112,114は、感光性の第2樹脂絶縁層であり、積層体102は第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有する。なお、
図5では、積層体102において、非感光性の第1樹脂絶縁層と感光性の第2樹脂絶縁層とを区別するため、非感光性の第1樹脂絶縁層は白抜きで、感光性の第2樹脂絶縁層はドットハッチングで図示されている。なお、
図5において、第1の基板11及び第2の基板13に付したドットハッチングは感光性を示すものではない。
【0042】
コイル導体層41は、樹脂絶縁層111の上側の主面と、樹脂絶縁層112の下側の主面の間に形成されている。コイル導体層42は、樹脂絶縁層112の上側の主面と、樹脂絶縁層113の下側の主面の間に形成されている。コイル導体層43は、樹脂絶縁層113の上側の主面と、樹脂絶縁層114の下側の主面の間に形成されている。コイル導体層44は、樹脂絶縁層114の上側の主面と、樹脂絶縁層115の下側の主面の間に形成されている。
【0043】
本実施形態の積層体102において、下方の主面がコイル導体層42,44に接触している樹脂絶縁層113,115は非感光性の第1樹脂絶縁層であり、上方の主面がコイル導体層42,44に接触している樹脂絶縁層112,114は感光性の第2樹脂絶縁層である。下方の主面がコイル導体層42,44に接触している樹脂絶縁層113,115は、上方の主面がコイル導体層42,44に接触している樹脂絶縁層112,114と比較して、コイル導体層42,44の側面にも接することで接触面積が相対的に大きくなっている。したがって、コイル導体層42,44との接触面積が大きい樹脂絶縁層113,115が、コイル導体層42,44の線膨張係数と近い非感光性の第1樹脂絶縁層であることにより、コイル導体層42,44付近における応力の発生自体が抑制される。
【0044】
ビア配線51は、樹脂絶縁層112の開口部112Xと樹脂絶縁層113の開口部113Xとに形成された導体である。ビア配線52は、樹脂絶縁層113の開口部113Yと樹脂絶縁層114の開口部114Yとに形成された導体である。樹脂絶縁層112,113,114の開口部112X,113X,113Y,114Yは、上述の第一実施形態と同様に形成できる。
【0045】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(2-1)コイル部品100は、複数の樹脂絶縁層111~115が積層された積層体102と、積層体102の内部に形成されたコイル導体層41~44とを備えている。樹脂絶縁層111,113,115は非感光性の第1樹脂絶縁層であり、樹脂絶縁層112,114は感光性の第2樹脂絶縁層である。積層体102は、非感光性の第1樹脂絶縁層と感光性の第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有する。このため、コイル部品100の製造工程における熱硬化や実装工程におけるリフロー処理、使用環境における温度変化等により第2樹脂絶縁層に発生する応力が、第1樹脂絶縁層との隣接部分で解放されやすくなり、積層体102におけるクラック等の内部欠陥の発生が抑制される。
【0046】
(2-2)積層体102は、コイル導体層41~44と線膨張係数が近い非感光性の第1樹脂絶縁層を有する。これにより、感光性の第2樹脂絶縁層のみを有する積層体と比べ、積層体102のコイル導体層41~44との線膨張係数の差を小さくでき、上記熱負荷による応力の発生自体が抑制される。これにより、積層体102におけるクラック等の内部欠陥の発生がより抑制される。
【0047】
(2-3)積層体102は、樹脂絶縁層111~115を積層した構造を有する。したがって、少ない積層数にて積層体102を構成でき、製造コストや製造工数を低減できる。
【0048】
(変更例)
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記各実施形態では、2つのコイルL1,L2を有するコイル部品10,100としたが、1つ又は3つ以上のコイルを含むコイル部品としてもよい。
【0049】
図6及び
図7に示すコイル部品200は、3つのコイルL1,L2,L3を有するコイル部品である。このコイル部品200は、積層体202と、積層体202を挟む第1の基板201及び第2の基板203と、外部端子221a~221fと、接続部材222a~222fとを備えている。
【0050】
外部端子221a~221cは、第1の基板201の下面の一方の長辺の両端部及び中央部に形成され、外部端子221c~221fは第1の基板201の下面の他方の長辺の両端部及び中央部に形成されている。外部端子221a~221fは、コイル部品200を実装する実装基板に対してはんだ等により接続される。
【0051】
図7に示すように、第1のコイルL1は外部端子221aと外部端子221dとの間に接続され、第2のコイルL2は外部端子221bと外部端子221eとの間に接続され、第3のコイルL3は外部端子221cと外部端子221fとの間に接続される。このようなコイル部品200においても、上記各実施形態の積層体12,102と同様に、積層体202が非感光性の第1樹脂絶縁層と感光性の第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有することにより、積層体202の内部欠陥の発生が抑制される。
【0052】
・上記各実施形態において、積層体が非感光性の第1樹脂絶縁層と感光性の第2樹脂絶縁層とが交互に積層された部分を有するように、樹脂絶縁層における感光性と非感光性とを適宜変更してもよい。例えば、第一実施形態において、下方の主面がコイル導体層41,42,43,44に接触している樹脂絶縁層32,34,36,38が非感光性の第1樹脂絶縁層であり、上方の主面がコイル導体層41,42,43,44に接触している樹脂絶縁層31,33,35,37が感光性の第2樹脂絶縁層であってもよい。なお、樹脂絶縁層39は、非感光性の第1樹脂絶縁層であってもよく、感光性の第2樹脂絶縁層であってもよい。また、第二実施形態において、樹脂絶縁層111,113,115が感光性の第2樹脂絶縁層であり、樹脂絶縁層112,114が非感光性の第1樹脂絶縁層であってもよい。なお、上記各実施形態及び各変更例において、積層体に含まれる非感光性の第1樹脂絶縁層と感光性の第2樹脂絶縁層の層数は、適宜変更することができる。
【0053】
さらに、積層体は、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層とが交互に積層された「部分」を有すればよく、積層体のすべての樹脂絶縁層に渡って、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層とが交互に積層されている必要はない。例えば、接着層71,72付近等において、2層以上の第1樹脂絶縁層または2層以上の第2樹脂絶縁層が連続して積層されていてもよい。なお、「交互に積層された部分を有する」とは、積層体において、少なくとも第1樹脂絶縁層、第2樹脂絶縁層、第1樹脂絶縁層の順に積層された3層の部分または第2樹脂絶縁層、第1樹脂絶縁層、第2樹脂絶縁層の順に積層された3層の部分のいずれかが存在すればよい。また、上記3層の部分が離散的に複数存在していてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、平面螺旋状のコイル導体層を備えるコイル部品であるが、積層方向Dに螺旋が進行する立体打線(ヘリカル状)のコイル導体層を備えたコイル部品、積層された樹脂絶縁層の主面の間に形成された1ターン以下のコイル導体層を備えたコイル部品、等であってもよい。
【0055】
・上記実施形態において、接着層71,72については、非感光性、感光性のいずれであってもよい。第1の基板11、第2の基板13との線膨張係数の差を小さくしたい場合は、接着層71,72が非感光性である方が好ましく、積層体との線膨張係数の差を小さくしたい場合は、接着層71,72が感光性である方が好ましい。
【0056】
・上記各実施形態及び変更例に対し,コイル導体層の巻回数が1周未満であってもよい。
・上記各実施形態及び変更例に対し、コイル導体層の厚さを適宜変更してもよい。
【0057】
・上記各実施形態及び変更例において、第2の基板13が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10,100,200…コイル部品、12,102,202…積層体、11…第1の基板、13…第2の基板、31~39…樹脂絶縁層、41~44…コイル導体層(第1コイル導体層、第2コイル導体層)、111~115…樹脂絶縁層。