IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

特許7099386材料試験機、及び、材料試験機の制御方法
<>
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図1
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図2
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図3
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図4
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図5
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図6
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図7
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図8
  • 特許-材料試験機、及び、材料試験機の制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】材料試験機、及び、材料試験機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/06 20060101AFI20220705BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20220705BHJP
   G01H 3/08 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01N3/06
G05B11/36 503A
G05B11/36 501E
G01H3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019064278
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165699
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 融
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-064190(JP,A)
【文献】特開2019-037129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/06
G05B 11/36
G01H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象に負荷を付与する負荷機構と、
前記負荷機構のフィードバック制御において応答となる応答物理量を測定する測定器と、
前記測定器の測定値にフィルタ処理を実行するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部によって処理された処理値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御するフィードバック制御部と、を備え、
前記フィルタ処理部は、
前記測定器の分解能を前記応答物理量の単位時間当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する、
材料試験機。
【請求項2】
単位時間あたりの前記処理値の変化量を前記時間幅で除した補正値を前記処理値に加算した加算値を算出する加算値算出部を備え、
前記フィードバック制御部は、前記加算値算出部が算出する前記加算値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御する、
請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記フィルタ処理部は、
移動平均時間が前記時間幅となる移動平均フィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する、
請求項1又は2に記載の材料試験機。
【請求項4】
前記フィルタ処理部は、
立上り時間又は立下り時間が前記時間幅となる一次遅れフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する、
請求項1又は2に記載の材料試験機。
【請求項5】
前記試験対象は、試験片であり、
前記測定器は、試験片の伸び量を測定する伸び計である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の材料試験機。
【請求項6】
試験対象に負荷を付与する負荷機構と、
前記負荷機構のフィードバック制御において応答となる応答物理量を測定する測定器と、
前記測定器の測定値をフィルタ処理するフィルタ処理部、及び、前記フィルタ処理部によって処理された処理値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御するフィードバック制御部を有する制御装置と、を備える材料試験機の制御方法であって、
前記フィルタ処理部は、
前記測定器の分解能を前記応答物理量の単位時間当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する、
材料試験機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機、及び、材料試験機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料試験機の材料試験においては、試験対象に負荷を付与する負荷機構の駆動対象に指示を与えて制御対象とする測定値をフィードバックするフィードバック制御が行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、クロスヘッドを移動させて試験片に試験力を付与する負荷機構をフィードバック制御する材料試験機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-337812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載のような材料試験機は、フィードバック制御の応答となる応答物理量を測定する測定器を具備する。一般に、測定器は、分解能以下の測定を行うことができない。そのため、フィードバック制御では、実際の応答物理量の変化が測定器の分解能以下である場合、測定器の測定値が時間変化しないため、応答物理量の目標値と測定器が測定した応答物理量との偏差が大きくなって負荷機構の制御量が大きく増加する。また、フィードバック制御では、この増加に伴って当該偏差が小さくなり負荷機構の制御量が減少するが、再度、実際の応答物理量の変化が測定器の分解能以下となって、再度、負荷機構の制御量が大きく増加する。このように、負荷機構のフィードバック制御では、測定器の分解能に起因して実際の応答物理量の変化を正確に測定器が測定できない場合、負荷機構の制御量が大きく変動して負荷機構のフィードバック制御が不安定となり、材料試験の精度が低下し得る。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、応答物理量を測定する測定器の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、試験対象に負荷を付与する負荷機構と、前記負荷機構のフィードバック制御において応答となる応答物理量を測定する測定器と、前記測定器の測定値にフィルタ処理を実行するフィルタ処理部と、前記フィルタ処理部によって処理された処理値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御するフィードバック制御部と、を備え、前記フィルタ処理部は、前記測定器の分解能を前記応答物理量の単位時間当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する、材料試験機に関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、試験対象に負荷を付与する負荷機構と、前記負荷機構のフィードバック制御において応答となる応答物理量を測定する測定器と、前記測定器の測定値をフィルタ処理するフィルタ処理部、及び、前記フィルタ処理部によって処理された処理値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御するフィードバック制御部を有する制御装置と、を備える材料試験機の制御方法であって、前記フィルタ処理部は、前記測定器の分解能を前記応答物理量の単位時間当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する、材料試験機の制御方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、応答物理量を測定可能な測定器の分解能を、応答物理量の単位当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、測定器の測定値に行うため、測定器の分解能以下で時間変化しない測定値を、当該分解能以下で時間変化する測定値へと変更することができる。そのため、応答物理量が分解能以下で変化した場合、応答物理量の目標値と測定器が測定した応答物理量との偏差が大きくなることを抑制でき負荷機構の制御量が大きく増加することを抑制できる。したがって、応答物理量を測定する測定器の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】材料試験機の構成を模式的に示す図である。
図2】フィルタ処理部の移動平均フィルタ処理を説明するための図である。
図3】フィルタ処理部の一次遅れフィルタ処理を説明するための図である。
図4】制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5】ひずみ速度と試験力との測定データである。
図6】試験片の伸び量と試験力との測定データである。
図7図6の6-7秒区間における試験片の伸び量の測定データである。
図8】ひずみ速度と試験力との測定データである。
図9】試験片の伸び量と試験力との測定データである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.材料試験機の構成]
図1は、本実施形態に係る材料試験機1の構成を模式的に示す図である。
材料試験機1は、引張試験や、圧縮試験、曲げ試験等の材料試験を実行し、試験対象である試験片TPの機械的性質を試験する試験機である。なお、試験対象は、各種材料や工業製品、この工業製品の部品又は部材等であり、試験片TPは、材料試験のために所定の規格に基づいて作成されている。
【0012】
図1に示すように、材料試験機1は、試験片TPに負荷として試験力を付与して材料試験を行う試験機本体2と、試験機本体2による材料試験の動作を制御する制御ユニット4と、を備える。また、材料試験機1は、試験片TPの歪みを測定する際に使用する伸び計90を備える。伸び計90は、試験片TPの把持と解放を使用者の手作業に依らずに行う自動伸び計であり、試験片TPを把持して、試験片TPと共に変位する上アーム92及び下アーム93と、上アーム92及び下アーム93の変位を検出する歪みゲージ91とを備える。歪みゲージ91は、試験片TPの伸び量を測定し、伸び量測定信号A2を制御装置30に出力するセンサである。なお、伸び計90は、本発明の「測定器」の一例に対応する。また、試験片TPの伸び量は、本発明の「応答物理量」の一例に対応する。
【0013】
[2.試験機本体の構成]
試験機本体2は、テーブル6と、このテーブル6上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設された一対のねじ棹8、9と、これらのねじ棹8、9に沿って移動可能なクロスヘッド10と、このクロスヘッド10を移動させて試験片TPに試験力を与える負荷機構12と、ロードセル14と、を備える。ロードセル14は、試験片TPに与えられる荷重である試験力を測定し、試験力測定信号A1を出力するセンサである。なお、試験機本体2は、ねじ棹を1本とする構成としてもよい。
【0014】
一対のねじ棹8、9は、ボールねじから成り、クロスヘッド10は、各ねじ棹8、9に対して図示を省略したナットを介して連結されている。負荷機構12は、各ねじ棹8、9の下端部に連結されるウォーム減速機16、17と、各ウォーム減速機16、17に連結されるサーボモータ18と、ロータリエンコーダ20とを備える。ロータリエンコーダ20は、サーボモータ18の回転量を測定し、回転量に応じたパルス数の回転量測定信号A3を信号入出力ユニット40に出力するセンサである。
そして、負荷機構12は、ウォーム減速機16、17を介して、一対のねじ棹8、9にサーボモータ18の回転を伝達し、ねじ棹8、9が同期して回転することにより、クロスヘッド10がねじ棹8、9に沿って昇降する。
【0015】
クロスヘッド10には、試験片TPの上端部を把持するための上つかみ具21が付設され、テーブル6には、試験片TPの下端部を把持するための下つかみ具22が付設されている。試験機本体2は、例えば引張試験の際、試験片TPの上端部を上つかみ具21で把持すると共に、試験片TPの下端部を下つかみ具22で把持した状態で、制御装置30による制御により、クロスヘッド10を上昇させることによって、試験片TPに試験力を与える。試験機本体2は、例えば圧縮試験の際、試験片TPの上端部を上つかみ具21で把持すると共に、試験片TPの下端部を下つかみ具22で把持した状態で、制御装置30による制御により、クロスヘッド10を下降させることによって、試験片TPに試験力を与える。上つかみ具21の上下のスライドに応じて、上つかみ具21と下つかみ具22との間隔が変更される。
【0016】
[3.制御ユニットの構成]
制御ユニット4は、制御装置30と、表示装置32と、試験プログラム実行装置34と、を備える。
【0017】
制御装置30は、試験機本体2を中枢的に制御する装置であり、試験機本体2との間で信号を送受信可能に接続される。試験機本体2から受信する信号は、ロードセル14が出力する試験力測定信号A1や、伸び計90が出力する伸び量測定信号A2、ロータリエンコーダ20が出力する回転量測定信号A3、制御や試験に要する適宜の信号などである。
【0018】
表示装置32は、制御装置30から入力される信号に基づいて各種情報を表示する装置であり、例えば、制御装置30は、材料試験の間、試験力測定信号A1に基づいて試験片TPに付与されている試験力の測定値や、回転量測定信号A3に基づいてクロスヘッド10の位置等を表示装置32に表示する。
【0019】
試験プログラム実行装置34は、材料試験の試験条件といった各種設定パラメータの設定操作や実行指示操作などのユーザ操作を受け付け、制御装置30に出力する機能や、試験力の測定値等のデータを解析する機能などを備えた装置である。試験プログラム実行装置34はコンピュータを備え、このコンピュータは、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、制御装置30や各種の周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、を備える。そして、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されたコンピュータログラムである材料試験プログラムを実行することで、上述の各種機能を実現する。
【0020】
次いで、制御装置30について詳述する。
図1に示すように、制御装置30は、信号入出力ユニット40と、制御回路ユニット50と、を備える。
【0021】
信号入出力ユニット40は、試験機本体2との間で信号を送受する入出力インターフェース回路を構成するものであり、本実施形態では、第1センサアンプ41と、第2センサアンプ42、カウンタ回路43と、サーボアンプ44と、を有する。
【0022】
第1センサアンプ41は、ロードセル14が出力する試験力測定信号A1を増幅して制御回路ユニット50に入力する増幅器である。
【0023】
第2センサアンプ42は、伸び計90が出力する伸び量測定信号A2を増幅して制御回路ユニット50に入力する増幅器である。
【0024】
カウンタ回路43は、ロータリエンコーダ20が出力する回転量測定信号A3のパルス数をカウントし、カウント値A4を制御回路ユニット50にデジタル信号で出力する。カウント値A4は、材料試験開始時を基準としたサーボモータ18の回転量を示している。なお、材料試験開始時を基準としたサーボモータ18の回転量は、材料試験開始時の位置を基準としたクロスヘッド10の移動距離に対応する。なお、ロータリエンコーダ20とカウンタ回路43とにより回転量測定部60が構成される。
【0025】
なお、回転量測定部60は、ロータリエンコーダ20に代えて、ねじ棹8、9の少なくとも一方に装着されるエンコーダを備える構成でもよい。この構成の場合、当該エンコーダは、装着されたねじ棹8、9の少なくとも一方が所定角度回転する毎に1つのパルスを出力する信号を生成し、カウンタ回路43に出力する。
【0026】
サーボアンプ44は、制御回路ユニット50の制御の下、サーボモータ18を制御する装置である。
【0027】
制御回路ユニット50は、通信部52と、制御部54と、記憶部56とを備える。
制御回路ユニット50は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、信号入出力ユニット40とのインターフェース回路と、試験プログラム実行装置34と通信する通信装置と、表示装置32を制御する表示制御回路と、各種の電子回路と、を備えたコンピュータを備え、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されたコンピュータログラムを実行することで、制御部54の各機能部を実現する。また信号入出力ユニット40のインターフェース回路にはA/D変換器が設けられており、アナログ信号の試験力測定信号A1がA/D変換器によってデジタル信号に変換される。
なお、制御回路ユニット50は、コンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。
【0028】
通信部52は、試験プログラム実行装置34との間で通信し、材料試験条件の設定や各種設定パラメータの設定値、材料試験の実行指示や中断指示などを試験プログラム実行装置34から受信する。また、通信部52は、例えば試験力測定信号A1に基づく試験力の測定値を適宜のタイミングで、試験プログラム実行装置34に送信する。
【0029】
記憶部56は、メモリデバイスにより構成され、目標データ561と、分解能情報562とを記憶する。
目標データ561は、材料試験における試験力等の目標値の時間的変動を示す時系列データである。目標データ561は、試験プログラム実行装置34に対するユーザ設定操作に応じて制御回路ユニット50によって変更可能に記憶される。
分解能情報562は、伸び計90が試験片TPの伸び量を測定可能な最小の当該伸び量に対応する伸び計90の分解能を示す情報である。例えば、分解能情報562は、「0.0001(mm)」を示す情報である。分解能情報562は、予め記憶部56に記憶される。
【0030】
制御部54は、試験機本体2の負荷機構12としてサーボモータ18をフィードバック制御して材料試験に係る処理を実行する機能部である。制御部54は、機能ブロックとして、フィルタ処理部541、加算値算出部542、及び、フィードバック制御部543を備える。
【0031】
[3-1.フィルタ処理部]
フィルタ処理部541は、第2センサアンプ42を介して伸び計90が出力する伸び量測定信号A2に基づいて、伸び計90が測定した測定値をフィルタ処理する。本実施形態では、フィルタ処理部541は、フィルタ処理として、移動平均フィルタ処理、又は、一次遅れフィルタ処理を実行する。なお、移動平均フィルタ処理とは、移動平均フィルタによるフィルタ処理であり、一次遅れフィルタ処理とは、一次遅れフィルタによるフィルタ処理である。
【0032】
まず、フィルタ処理部541による移動平均フィルタ処理について説明する。
図2は、フィルタ処理部541の移動平均フィルタ処理を説明するための図である。
図2において、縦軸は、試験片TPの伸び量(mm)に設定され、横軸は時間(sec)に設定される。
【0033】
図2において、グラフGf2-1は、制御回路ユニット50に入力される伸び量測定信号A2が示す伸び計90の測定値の時間変化を示す。また、図2において、グラフGf2-2は、グラフGf2-1が示す測定値に基づいて移動平均フィルタによってフィルタ処理した処理値の時間変化を示す。また、図2において、グラフGf2-3は、後述する加算値算出部542が算出した加算値の時間変化を示す図である。
【0034】
図2のグラフGf2-1は、伸び計90の分解能が0.0001(mm)であり、クロスヘッド10が0.0035(mm/sec)の目標速度で移動している場合の伸び計90の測定値の時間変化を示している。そのため、図2のグラフGf2-1が示すように、伸び計90の測定値は、0.0001(mm)の単位でステップ状に変化している。
【0035】
フィルタ処理部541は、以下の式(1)によって算出される時間幅(以下、「フィルタ時間幅」という)を、平均に用いる測定値の時間幅(以下、「移動平均時間」という)に設定されたフィルタ特性を用いた移動平均フィルタによってフィルタ処理を実行する。フィルタ時間幅は、本発明の「時間幅」の一例に対応する。
【0036】
フィルタ時間幅=伸び計90の分解能/クロスヘッド10の目標速度・・・(1)
フィルタ処理部541は、式(1)によってフィルタ時間幅を算出する際、記憶部56が記憶する分解能情報562が示す伸び計90の分解能を式(1)に代入する。また、フィルタ処理部541は、式(1)によってフィルタ時間幅を算出する際、例えば目標データ561の目標波形からクロスヘッド10の目標速度を算出して、式(1)に代入する。クロスヘッド10の目標速度は、本発明の「応答物理量の単位時間当たりの変化量を示す速度」の一例に対応する。
【0037】
これにより、フィルタ処理部541は、クロスヘッド10がある目標速度で移動している場合において、伸び計90の測定値が伸び計90の分解能単位で変化するまでに要する時間を算出する。図2の場合では、クロスヘッド10が0.0035(mm/sec)の目標速度で移動している場合において、伸び計90の測定値が0.0001(mm)変化するまでに要する時間を算出する。
【0038】
フィルタ処理部541は、式(1)によって算出したフィルタ時間幅を移動平均時間に設定されたフィルタ特性を用いた移動平均フィルタによって、フィルタ処理する。これにより、フィルタ処理部541は、図2においてグラフGf2-2が示すように、ステップ状に0.0001(mm)単位で変化する測定値を、時間変化と共に変化する測定値へと変更する。
【0039】
次に、フィルタ処理部541による一次遅れフィルタ処理について説明する。
図3は、一次遅れフィルタによるフィルタ処理を説明するための図である。
図3において、縦軸は、試験片TPの伸び量(mm)に設定され、横軸は時間(sec)に設定される。
【0040】
図3において、グラフGf3-1は、制御回路ユニット50に入力される伸び量測定信号A2が示す伸び計90の測定値の時間変化を示す。また、図3において、グラフGf3-2は、グラフGf3-1が示す測定値に基づいて一次遅れフィルタによってフィルタ処理した処理値の時間変化を示す。また、図3において、グラフGf3-3は、後述する加算値算出部542が算出した加算値の時間変化を示す図である。
【0041】
図3のグラフGf3-1は、伸び計90の分解能が0.0001(mm)であり、クロスヘッド10が0.0035(mm/sec)の目標速度で移動している場合の伸び計90の測定値の時間変化を示している。そのため、図3のグラフGf3-1が示すように、伸び計90の測定値は、0.0001(mm)の単位でステップ状に変化している。
【0042】
フィルタ処理部541は、上記の式(1)によって算出されるフィルタ時間幅が、立ち上がり時間又は立ち下がり時間に設定されたフィルタ特性を用いた一次遅れフィルタによってフィルタ処理を実行する。本実施形態では、立ち上がり時間がフィルタ時間幅となるように設定されたフィルタ特性を用いた一次遅れフィルタを例示する。また、本実施形態では、立ち上がり時間は、以下の式(2)、及び式(3)によって設定されている。
【0043】
Tr=T2-T1=(-log(0.05)+log(1))/a・・・(2)
a=(-log(0.05)+log(1))/フィルタ時間幅・・・(3)
【0044】
Trは、ステップ状に変化する測定値の1ステップに関する立ち上がり時間である。本実施形態では、当該1のステップにおいて測定値が最大に対して5%から100%になるまでに要する時間である。T2は、当該1のステップにおいて測定値が、当該1のステップにおける最大値に対して100%に到達するまでの時間である。T1は、当該1のステップにおいて測定値が、当該1のステップにおける最大値に対して5%に到達するまでの時間である。
【0045】
フィルタ処理部541は、式(1)によってフィルタ時間幅を算出し、算出したフィルタ時間幅を式(3)に代入して、aを算出する。そして、フィルタ処理部541は、算出したaを式(2)に代入して、立ち上がり時間をフィルタ時間幅に設定する。
【0046】
フィルタ処理部541は、式(2)によって設定された立ち上がり時間に基づく一次遅れフィルタによって、フィルタ処理する。図3においてグラフGf3-2が示すように、0.0001(mm)単位でステップ状に変化していた測定値を、時間変化と共に変化する測定値へと変更できる。
【0047】
[3-2.加算値算出部]
加算値算出部542は、以下の式(4)によって、フィルタ処理部541の処理値を補正する補正値を算出し、算出した補正値に当該処理値を加算した加算値を算出する。
【0048】
補正値=処理値速度/フィルタ時間幅・・・(4)
処理値速度とは、所定期間における単位時間当たりの処理値の変化量である。この所定期間は、事前のテストやシミュレーション等によって予め適切に定められている。
【0049】
加算値算出部542は、フィルタ処理部541からフィルタ処理された処理値を、逐次取得する。そして、加算値算出部542は、フィルタ処理部541から取得した処理値に基づいて、処理値速度を算出する。また、加算値算出部542は、フィルタ処理部541から式(1)によって算出されたフィルタ時間幅を逐次取得する。なお、加算値算出部542は、式(1)によってフィルタ時間幅を逐次算出する構成でもよい。加算値算出部542は、算出した処理値速度と、取得したフィルタ時間幅とを式(4)に代入して、補正値を算出する。
【0050】
次いで、加算値算出部542は、以下の式(5)によって、加算値を算出する。
加算値=処理値+補正値・・・(5)
すなわち、加算値算出部542は、算出した補正値を、フィルタ処理部541が算出した処理値に加算して、加算値を算出する。
【0051】
図2に示すグラフGf2-3は、後述する加算値算出部542が算出した加算値の時間変化を示す図である。図2のグラフGf2-3とグラフGf2-2とを比較して明らかな通り、加算値は、フィルタ処理部541のフィルタ処理による時間遅れが補正されている。
また、図3に示すグラフGf3-3は、後述する加算値算出部が算出した加算値の時間変化を示す図である。図3のグラフGf3-3とグラフGf3-2とを比較して明らかな通り、加算値は、フィルタ処理部541のフィルタ処理による時間遅れが補正された値となっている。
【0052】
[3-3.フィルタ処理部]
フィードバック制御部543は、例えばPID制御によって、サーボモータ18のフィードバック制御を実行する。フィードバック制御部543は、各制御周期において、フィルタ処理部541がフィルタ処理によって算出した処理値又は加算値算出部542が算出した加算値と、試験片TPの伸び量の目標値と、の偏差を減少させるサーボモータ18の回転量を演算し、演算した回転量を示す指令信号B1をサーボアンプ44に出力する。フィードバック制御部543は、例えば、試験プログラム実行装置34から受信した試験条件に基づいて、フィルタ処理部541がフィルタ処理によって算出した処理値又は加算値算出部542が算出した加算値に基づくサーボモータ18のフィードバック制御を実行する。
【0053】
[3.制御装置の動作]
次に、制御装置30の動作について説明する。
図4は、制御装置30の動作を示すフローチャートであり、特にサーボモータ18のフィードバック制御に係る動作を示すフローチャートである。
【0054】
図4に示すフローチャートの説明では、サーボモータ18のフィードバック制御について説明する。制御装置30は、材料試験の実行中に、図4に示すフローチャートの動作を所定の制御周期毎に実行して、サーボモータ18をフィードバック制御する。
【0055】
制御周期が到来すると、制御装置30の制御部54のフィルタ処理部541は、フィルタ時間幅を算出する(ステップSA1)。
【0056】
次いで、フィルタ処理部541は、フィルタ処理によって処理値を算出する(ステップSA2)。
【0057】
次いで、加算値算出部542は、ステップSA2で算出された処理値に基づいて加算値を算出する(ステップSA3)。
【0058】
次いで、フィードバック制御部543は、制御周期における試験片TPの伸び量の目標値から、ステップSA3で算出された加算値を減じて、偏差を算出する(ステップSA4)。
【0059】
次いで、フィードバック制御部543は、ステップSA4で算出した偏差に基づいて、試験片TPの伸び量の目標値と、ステップSA3で算出された加算値とを一致させるサーボモータ18の回転量を算出する(ステップSA5)。
【0060】
そして、フィードバック制御部543は、算出した回転量を示す指令信号B1をサーボアンプ46に出力する(ステップSA6)。
【0061】
なお、制御装置30は、フィルタ処理部541がフィルタ処理によって算出した処理値と、試験片TPの伸び量の目標値との偏差を減少させるサーボモータ18のフィードバック制御を実行する場合、図4に示すステップSA3の処理をスキップし、また、ステップSA4で加算値に代えて、ステップSA2で算出した処理値に基づくサーボモータ18のフィードバック制御を実行する。
【0062】
[4.材料試験の精度]
図5図8を参照して、材料試験の精度について説明する。
図5図6、及び、図7は、従来の材料試験機による変位制御の測定データである。図5図6、及び、図7に示す測定データにおける変位制御では、単位時間当たりの試験片TPの伸び量の変化量が一定となる制御がなされている。
【0063】
図5は、ひずみ速度と試験力との測定データである。図5では、右縦軸がひずみ速度(%/sec)に設定され、左縦軸が試験力(N:ニュートン)に設定され、横軸が時間(sec)に設定されている。なお、ひずみ速度とは、単位時間当たりの試験片TPのひずみの変化量を示す物理量であり、単位時間当たりの試験片TPの伸び量の変化量に対応する。図5において、グラフGf5-1は、ひずみ速度の測定データであり、グラフGf5-2は、試験力の測定データである。
【0064】
図6は、試験片TPの伸び量と試験力との測定データである。図6では、右縦軸が伸び量(mm)に設定され、左縦軸が試験力(N:ニュートン)に設定され、横軸が時間(sec)に設定されている。図6において、グラフGf6-1は、試験片TPの伸び量の測定データであり、グラフGf6-2は、試験力の測定データである。
【0065】
図5、及び図6は、0.007(%/sec)のひずみ速度で試験片TPを引っ張った場合の同じ材料試験の測定データである。図5、及び、図6の測定データが示す試験片TPの引っ張りでは、試験片TPを塑性域まで引っ張っている。そのため、図5、及び、図6に示すように、試験力は、弾性域では伸び量に対して比例的に増加する一方、塑性域では伸び量に対する増加率が低下する。なお、試験片TPの伸び量は、図6のグラフGf6-1が示すように、一定増加している。ここで、タイミングTA1からタイミングTA2の期間、すなわち、試験片TPの伸び量に対して比例的に試験力が増加している期間、図5、及び図6に示すように、試験力は、振動しながら増加している。また、当該期間におけるひずみ速度は、図5、及び図6に示すように、他の期間のひずみ速度と比較して明らかな通り、許容誤差範囲KH(0.007(%/sec)に対して±0.005(%/sec))から大きく外れる誤差を有して大きく振幅している。これは、試験片TPのひずみが、精度良く一定に増加していない、すなわち、精度良く一定の伸び量で試験片TPが伸びていないことを示している。これは、以下の理由による。
【0066】
図7を参照して、理由を説明する。
図7は、図6の6-7秒区間における試験片TPの伸び量の測定データである。説明便宜のため、図7では、クロスヘッド10の移動距離の測定データと、試験片TPの伸び量の目標値の時間変化を示すデータとを図示している。
【0067】
図7では、左縦軸がクロスヘッド10の移動距離(mm)に設定され、右縦軸が試験片TPの伸び量(mm)に設定され、横軸が時間(sec)に設定されている。図7において、グラフGf7-1は、試験片TPの伸び量の目標値の時間変化を示す。また、グラフGf7-2は、伸び計90の測定値の時間変化を示す。また、グラフGf7-3は、クロスヘッド10の移動距離の時間変化を示す。なお、左横軸においては、移動開始前のクロスヘッド10の所定位置を「0」としている。
【0068】
例えば、タイミングTB1からタイミングTB2において、クロスヘッド10が移動している。それに伴って、試験片TPの伸び量も増加しているが、伸び量が伸び計90の分解能以下であるため、タイミングTB1からタイミングTB2の区間で示すように、目標値と伸び計90の測定値との偏差が大きくなる。この偏差の増加に伴って、サーボモータ18の回転量が大きく増加し、タイミングTB1以降、クロスヘッド10は加速する。クロスヘッド10が加速すると、伸び計90の分解能以上の伸びが試験片TPに発生するため、伸び計90の測定値は、目標値に近づく。これに伴って、伸び計90の測定値と目標値との偏差が小さくなってサーボモータ18の回転量が減少し、タイミングTB3以降、クロスヘッド10は減速する。しかし、クロスヘッド10が減速すると、タイミングTA3以降、伸び計90が測定する試験片TPの伸び量の変化量が低下し、タイミングTB4からタイミングTB5に示すように、再度、伸び計90の分解能以下で試験片TPが伸びる。これに伴って、再度、目標値と伸び計90の測定値との偏差が大きくなり、再度、クロスヘッド10は、加速する。
このように、試験片TPが分解能以下で伸びると、クロスヘッド10は加減速を繰り返し、この加減速に伴って、試験片TPの伸び量は緩やかな増加と急な増加とを繰り返して階段状に変化する。これによって、ひずみ速度が加減速して一定にならず、精度良く一定の伸び量で試験片TPが伸びていないこととなる。
【0069】
図8、及び、図9は、本発明の材料試験機1による変位制御の測定データである。図8、及び、図9に示す測定データにおける変位制御では、単位時間当たりの試験片TPの伸び量の変化量が一定となる制御がなされている。図8、及び、図9の測定データは、加算値算出部542が算出した加算値に基づくサーボモータ18のフィードバック制御の測定データである。
【0070】
図8は、ひずみ速度と試験力との測定データである。図8では、右縦軸がひずみ速度(%/sec)に設定され、左縦軸が試験力(N:ニュートン)に設定され、横軸が時間(sec)に設定されている。なお、ひずみ速度とは、単位時間当たりの試験片TPのひずみの変化量を示す物理量であり、単位時間当たりの試験片TPの伸び量の変化量に対応する。図8において、グラフGf8-1は、ひずみ速度の測定データであり、グラフGf8-2は、試験力の測定データである。
【0071】
図9は、試験片TPの伸び量と試験力との測定データである。図9では、右縦軸が伸び量(mm)に設定され、左縦軸が試験力(N:ニュートン)に設定され、横軸が時間(sec)に設定されている。図9において、グラフGf9-1は、試験片TPの伸び量の測定データであり、グラフGf9-2は、試験力の測定データである。
【0072】
図8、及び、図9は、0.007(%/sec)のひずみ速度で試験片TPを引っ張った場合の測定データである。図8、及び、図9の測定データが示す試験片TPの引っ張りでは、試験片TPを塑性域まで引っ張っている。そのため、図8、及び、図9に示すように、試験力は、弾性域では伸び量に対して比例的に増加する一方、塑性域では伸び量に対する増加率が低下する。なお、試験片TPの伸び量は、図9のグラフGf9-1が示すように、一定増加している。ここで、図5及び図6に示すタイミングTA1からタイミングTA2までの期間と比較して明らかな通り、図8及び図9に示すタイミングTC1からタイミングTC2までの期間、すなわち、試験片TPの伸び量に対して比例的に試験力が増加している期間、試験力は、振動が抑制された状態で増加している。また、当該期間におけるひずみ速度は、図5、及び図6と比較して明らかな通り、誤差が許容誤差範囲KH(0.007(%/sec)に対して±0.005(%/sec))に収まっており、振幅が抑えられている。これは、試験片TPのひずみが精度良く一定に増加しており、精度良く材料試験を行えていることを示している。図8、及び図9が示すように精度良く材料試験を行えているのは、フィルタ処理によって、分解能単位で変化する測定値を、分解能以下でも時間と共に変化する測定値に変更して、目標値との偏差が大きく乖離しないようにできるためである。
なお、図8、及び、図9の測定データは、加算値算出部542が算出した加算値に基づくサーボモータ18のフィードバック制御の測定データであるが、フィルタ処理部541が算出した処理値に基づくサーボモータ18のフィードバック制御でも、図8、及び図9のように精度良く材料試験が行えている測定データとなる。これは、加算値と同様に、処理値の場合でも、フィルタ処理によって、分解能単位で変化する測定値を、分解能以下でも時間と共に変化する測定値に変更して、目標値との偏差が大きく乖離しないようにできるためである。
【0073】
[5.実施形態のまとめ]
以上説明したように、材料試験機1は、試験片TPに試験力を付与する負荷機構12と、負荷機構12のフィードバック制御において応答となる試験片TPの伸び量を測定する伸び計90と、伸び計90の測定値にフィルタ処理を実行するフィルタ処理部541と、フィルタ処理部541によって処理された処理値と、伸び量の目標値との偏差を減少させるように負荷機構12をフィードバック制御するフィードバック制御部543と、を備える。フィルタ処理部541は、伸び計90の分解能をクロスヘッド10の目標速度で除したフィルタ時間幅に基づくフィルタ処理を、試験片TPの伸び量の測定値に実行する。
【0074】
これによれば、伸び計90の分解能を、試験片TPの伸び量の単位当たりの変化量を示す速度で除したフィルタ時間幅に基づくフィルタ処理を、伸び計90の測定値に行うため、伸び計90の分解能以下で時間変化しない測定値を、当該分解能以下でも時間と共に変化する測定値へと変更することができる。そのため、試験片TPの伸び量が分解能以下で変化した場合、試験片TPの伸び量の目標値と伸び計90が測定した試験片TPの伸び量との偏差が大きくなることを抑制でき、サーボモータ18の制御量が大きく増加することを抑制できる。したがって、伸び計90の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0075】
材料試験機1は、処理値速度をフィルタ時間幅で除した補正値を処理値に加算した加算値を算出する加算値算出部542を備える。フィードバック制御部543は、加算値算出部542が算出する加算値と、試験片TPの伸び量の目標値との偏差を減少させるようにサーボモータ18をフィードバック制御する。
【0076】
これによれば、フィルタ処理部541のフィルタ処理による時間遅れが補正された処理値に基づいてサーボモータ18をフィードバック制御できるため、応答性が低下することなくサーボモータ18をフィードバック制御できる。したがって、伸び計90の分解能に依ることなく、より精度良く材料試験を行うことができる。
【0077】
フィルタ処理部541は、移動平均時間がフィルタ時間幅となる移動平均フィルタ処理を、伸び計90の測定値に実行する。
【0078】
これによれば、移動平均フィルタ処理によって、伸び計90の分解能以下で時間変化しない測定値を、当該分解能以下でも時間と共に変化する測定値へと変更することができる。そのため、試験片TPの伸び量が分解能以下で変化した場合、試験片TPの伸び量の目標値と伸び計90が測定した試験片TPの伸び量との偏差が大きくなることを抑制でき、サーボモータ18の制御量が大きく増加することを抑制できる。したがって、移動平均フィルタ処理でも、伸び計90の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0079】
フィルタ処理部541は、立上り時間又は立下り時間がフィルタ時間幅となる一次遅れフィルタ処理を、伸び計90の測定値に実行する。
【0080】
これによれば、一次遅れフィルタ処理によって、伸び計90の分解能以下で時間変化しない測定値を、当該分解能以下でも時間と共に変化する測定値へと変更することができる。そのため、試験片TPの伸び量が分解能以下で変化した場合、試験片TPの伸び量の目標値と伸び計90が測定した試験片TPの伸び量との偏差が大きくなることを抑制でき、サーボモータ18の制御量が大きく増加することを抑制できる。したがって、一次遅れフィルタ処理でも、伸び計90の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0081】
[6.他の実施形態]
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、および応用が可能である。
【0082】
上述した実施形態では、図5図8の測定データにおいて引張試験を行う材料試験機1を示したが、本発明は、試験片TPに試験力を付与して、試験片TPの物理量の変化を測定する材料試験機に対して広く適用することができる。例えば、引張試験、曲げ試験、引き剥がし試験等を行う材料試験機に対して、本発明を適用することができる。なお、試験片TPの試験機本体2に固定する冶具は、試験種に応じて適切なものが採用される。
【0083】
例えば、上記実施形態では、応答物理量として試験片TPの伸び量を例示したが、試験力であってもよいし、その他、トルク、圧力、変位などであってもよい。なお、本発明の応答物理量が試験力である場合、ロードセル14が本発明の「測定器」の一例に対応することとなる。
【0084】
例えば、上記実施形態では、フィルタ処理部541が伸び計90の測定値に移動平均フィルタ処理、又は、一次遅れフィルタ処理を実行する構成であるが、フィルタ処理部541が当該測定値に実行するフィルタ処理の種類はこれらに限定されない。伸び計90の測定値を、伸び計90の分解能以下で時間と共に変化する測定値に変更可能なフィルタ処理であれば、フィルタの種類は、いずれの種類でよい。例えば、フィルタ処理部541は、二次遅れフィルタによってフィルタ処理を実行する構成でもよい。
【0085】
例えば、上記実施形態では、負荷機構12の駆動源としてサーボモータ18を用いたが、油圧源等の他の駆動源を用いてもよい。
【0086】
例えば、上述実施形態において、図1に示した機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0087】
例えば、図4に示す動作のステップ単位は、材料試験機1の各部の動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0088】
[7.態様]
上述した実施形態及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0089】
(第1項)
一態様に係る材料試験機は、試験対象に負荷を付与する負荷機構と、前記負荷機構のフィードバック制御において応答となる応答物理量を測定する測定器と、前記測定器の測定値にフィルタ処理を実行するフィルタ処理部と、前記フィルタ処理部によって処理された処理値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御するフィードバック制御部と、を備え、前記フィルタ処理部は、前記測定器の分解能を前記応答物理量の単位時間当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する。
【0090】
第1項に記載の材料試験機によれば、応答物理量を測定可能な測定器の分解能を、応答物理量の単位当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、測定器の測定値に行うため、測定器の分解能以下で時間変化しない測定値を、当該分解能以下で時間変化する測定値へと変更することができる。そのため、応答物理量が分解能以下で変化した場合、応答物理量の目標値と測定器が測定した応答物理量との偏差が大きくなることを抑制でき負荷機構の制御量が大きく増加することを抑制できる。したがって、応答物理量を測定する測定器の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0091】
(第2項)
第1項に記載の材料試験機において、単位時間当たりの前記処理値の変化量を前記時間幅で除した補正値を前記処理値に加算した加算値を算出する加算値算出部を備え、前記フィードバック制御部は、前記加算値算出部が算出する前記加算値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御する。
【0092】
第2項に記載の材料試験機によれば、フィルタ処理部のフィルタ処理による時間遅れが補正された処理値に基づいて負荷機構をフィードバック制御できるため、応答性が低下することなく負荷機構をフィードバック制御できる。したがって、応答物理量を測定する測定器の分解能に依ることなく、より精度良く材料試験を行うことができる。
【0093】
(第3項)
第1項又は第2項に記載の材料試験機において、前記フィルタ処理部は、移動平均時間が前記時間幅となる移動平均フィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する。
【0094】
第3項に記載の材料試験機によれば、移動平均フィルタ処理によって、測定器の分解能以下で時間変化しない測定値を、当該分解能以下でも時間と共に変化する測定値へと変更することができる。そのため、応答物理量が分解能以下で変化した場合、応答物理量の目標値と測定器が測定した応答物理量との偏差が大きくなることを抑制でき、負荷機構の制御量が大きく増加することを抑制できる。したがって、フィルタ処理が移動平均フィルタ処理であっても、応答物理量を測定する測定器の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0095】
(第4項)
第1項又は第2項に記載の材料試験機において、前記フィルタ処理部は、立上り時間又は立下り時間が前記時間幅となる一次遅れフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する。
【0096】
第4項に記載の材料試験機によれば、一次遅れフィルタ処理によって、測定器の分解能以下で時間変化しない測定値を、当該分解能以下でも時間と共に変化する測定値へと変更することができる。そのため、応答物理量が分解能以下で変化した場合、応答物理量の目標値と測定器が測定した応答物理量との偏差が大きくなることを抑制でき、負荷機構の制御量が大きく増加することを抑制できる。したがって、フィルタ処理が一次遅れフィルタ処理であっても、応答物理量を測定する測定器の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0097】
(第5項)
第1項から第4項のいずれか一項に記載の材料試験機において、前記試験対象は、試験片であり、前記測定器は、試験片の伸び量を測定する伸び計である。
【0098】
第5項に記載の材料試験機によれば、伸び計の分解能に依ることなく、精度良く材料試験を行うことができる。
【0099】
(第6項)
別の一態様に関わる材料試験機の制御方法は、試験対象に負荷を付与する負荷機構と、前記負荷機構のフィードバック制御において応答となる応答物理量を測定する測定器と、前記測定器の測定値をフィルタ処理するフィルタ処理部、及び、前記フィルタ処理部によって処理された処理値と、前記応答物理量の目標値との偏差を減少させるように前記負荷機構をフィードバック制御するフィードバック制御部を有する制御装置と、を備える材料試験機の制御方法であって、前記フィルタ処理部は、前記測定器の分解能を前記応答物理量の単位時間当たりの変化量を示す速度で除した時間幅に基づくフィルタ処理を、前記測定器の測定値に実行する。
【0100】
第6項に記載の材料試験機の制御方法によれば、第1項に記載の材料試験機と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0101】
1 材料試験機
12 負荷機構
14 ロードセル(測定器)
18 サーボモータ
30 制御装置
90 伸び計(測定器)
541 フィルタ処理部
542 加算値算出部
543 フィードバック制御部
TP 試験片(試験対象)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9