(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】偏光板およびこれを具備する表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220705BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220705BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2019505787
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2018005054
(87)【国際公開番号】W WO2018168306
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2017050563
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栞
(72)【発明者】
【氏名】笠原 睦美
(72)【発明者】
【氏名】南條 崇
【審査官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-242581(JP,A)
【文献】特開2007-279469(JP,A)
【文献】特開2007-065452(JP,A)
【文献】特開2014-048347(JP,A)
【文献】特開2001-154017(JP,A)
【文献】特開2004-334168(JP,A)
【文献】国際公開第2014/168107(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/14
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層と、ポリエステル樹脂フィルムと、偏光子と、シクロオレフィンポリマーを含むシクロオレフィン樹脂フィル
ムとがこの順に積層された積層構造を有し、
前記ハードコート層、および前記シクロオレフィン樹脂フィル
ムは、紫外線吸収剤を含有し、
前記ポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有せず、
前記ハードコート層に含有される紫外線吸収剤は、分子量が700以上である、ベンゾトリアゾール系化合物を含有し、
前記シクロオレフィン樹脂フィル
ムに含有される前記紫外線吸収剤は、分子量が500以上1000未満である、トリアジン系化合物を含有し、
前記ハードコート層が、電離放射線型硬化性化合物を含有し、前記シクロオレフィン樹脂フィル
ムに含まれる、前記シクロオレフィンポリマ
ー100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)に対する、前記ハードコート層に含まれる、前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)の比が、0.1以上0.7以下であり、
前記シクロオレフィン樹脂フィル
ムの厚み(μm)に対する、前記ハードコート層の厚み(μm)の比が、0.05以上0.4以下であり、
前記シクロオレフィン樹脂フィルムは、溶液流延フィルムである
、
偏光板。
【請求項2】
ハードコート層と、ポリエステル樹脂フィルムと、偏光子と、シクロオレフィンポリマーを含むシクロオレフィン樹脂フィルムとがこの順に積層された積層構造を有し、
前記ハードコート層、および前記シクロオレフィン樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、
前記ポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有せず、
前記ハードコート層に含有される紫外線吸収剤は、分子量が700以上である、ベンゾトリアゾール系化合物を含有し、
前記シクロオレフィン樹脂フィルムに含有される前記紫外線吸収剤は、分子量が500以上1000未満である、トリアジン系化合物を含有し、
前記ハードコート層が、電離放射線型硬化性化合物を含有し、前記シクロオレフィン樹脂フィルムに含まれる、前記シクロオレフィンポリマー100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)に対する、前記ハードコート層に含まれる、前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)の比が、0.1以上0.7以下であり、
前記シクロオレフィン樹脂フィルムの厚み(μm)に対する、前記ハードコート層の厚み(μm)の比が、0.05以上0.4以下であり、
前記シクロオレフィン樹脂フィルムは、溶液流延フィルムであり、
前記シクロオレフィンポリマーは、下記一般式(5)で表されるシクロオレフィン単量体を重合して得られる(共)重合体、または当該(共)重合体を水素添加して得られる水素化物を含有する:
【化1】
式中、R
16
およびR
18
は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、極性基、または極性基で置換された炭化水素基であり、R
16
およびR
18
は、互いに結合して、不飽和結合、単環または多環を形成していてもよく、この単環または多環は、二重結合を有していても、芳香環を形成してもよく、
R
17
およびR
19
の一方が水素原子であり、他方が極性基であり、
p、mは、それぞれ独立して、0以上の整数である、
偏光板。
【請求項3】
ハードコート層と、ポリエステル樹脂フィルムと、偏光子と、シクロオレフィンポリマーを含むシクロオレフィン樹脂フィルムとがこの順に積層された積層構造を有し、
前記ハードコート層、および前記シクロオレフィン樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、
前記ポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有せず、
前記ハードコート層に含有される紫外線吸収剤は、分子量が700以上である、ベンゾトリアゾール系化合物を含有し、
前記シクロオレフィン樹脂フィルムに含有される前記紫外線吸収剤は、分子量が500以上1000未満である、トリアジン系化合物を含有し、
前記ハードコート層が、電離放射線型硬化性化合物を含有し、前記シクロオレフィン樹脂フィルムに含まれる、前記シクロオレフィンポリマー100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)に対する、前記ハードコート層に含まれる、前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)の比が、0.1以上0.7以下であり、
前記シクロオレフィン樹脂フィルムの厚み(μm)に対する、前記ハードコート層の厚み(μm)の比が、0.05以上0.4以下であり、
前記シクロオレフィンポリマーは、下記一般式(5)で表されるシクロオレフィン単量体を重合して得られる(共)重合体、または当該(共)重合体を水素添加して得られる水素化物を含有する:
【化2】
式中、R
16
およびR
18
は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、極性基、または極性基で置換された炭化水素基であり、R
16
およびR
18
は、互いに結合して、不飽和結合、単環または多環を形成していてもよく、この単環または多環は、二重結合を有していても、芳香環を形成してもよく、
R
17
およびR
19
の一方が水素原子であり、他方が極性基であり、
p、mは、それぞれ独立して、0以上の整数である、
偏光板。
【請求項4】
前記シクロオレフィンポリマーは、下記一般式(6)に由来する部分構造を有するシクロオレフィンポリマーを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光板:
【化3】
式中、R
18
は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、極性基、または極性基で置換された炭化水素基であり、
R
19
は、極性基である。
【請求項5】
ハードコート層と、ポリエステル樹脂フィルムと、偏光子と、(メタ)アクリルポリマーを含むアクリル樹脂フィルムとがこの順に積層された積層構造を有し、
前記ハードコート層、および前記アクリル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、
前記ポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有せず、
前記ハードコート層に含有される紫外線吸収剤は、分子量が700以上である、ベンゾトリアゾール系化合物を含有し、
前記アクリル樹脂フィルムに含有される前記紫外線吸収剤は、分子量が500以上1000未満である、トリアジン系化合物を含有し、
前記ハードコート層が、電離放射線型硬化性化合物を含有し、前記アクリル樹脂フィルムに含まれる、前記(メタ)アクリルポリマー100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)に対する、前記ハードコート層に含まれる、前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量(質量部)の比が、0.1以上0.7以下であり、
前記アクリル樹脂フィルムの厚み(μm)に対する、前記ハードコート層の厚み(μm)の比が、0.05以上0.4以下である、
偏光板。
【請求項6】
前記アクリル樹脂フィルムは、溶液流延フィルムである、請求項5に記載の偏光板。
【請求項7】
前記シクロオレフィン樹脂フィルムまたは前記アクリル樹脂フィルムに含有される前記紫外線吸収剤である前記トリアジン系化合物は、分子内に1つのトリアジン骨格を有する化合物を含有する、請求項1
~6のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記シクロオレフィン樹脂フィルムまたは前記アクリル樹脂フィルムの厚み(μm)に対する、前記ポリエステル樹脂フィルムの厚み(μm)の比が、0.1~5である、請求項1
~7のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項9】
前記ハードコート層に含まれる、前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が、0.1質量部以上3質量部以下である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項10】
前記ハードコート層の膜厚は、2μm以上5μm以下である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか
1項に記載の偏光板を具備する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびこれを具備する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、パーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。近年、特に車載用途では、デザイン性を重視した表示装置が求められている。車載用途では、従来の長方形ではなく、角が丸い形状、複雑な曲面を持った形状、または中央部に穴が開いた形状等の自由な形状のディスプレイが用いられることがある。かような自由な形状のディスプレイは、異形パネルまたはフリーフォームディスプレイ(FFD)と称され、自動車のメーター等への利用が考えられている。異形パネルの一例として、後述する
図1に示すような、アナログメーターのカーブに合わせた形状のディスプレイが挙げられる。
【0003】
偏光板は、一般的に、偏光子保護フィルムの適宜表面処理した偏光子に対向する側の面をと、ヨウ素溶液中に浸漬一軸延伸(通常、5~10倍)して作製した偏光子の少なくとも一方の面とを、接着剤を用いて貼り合わせることで作製されることが知られている。
【0004】
車載用途の表示装置は、高い耐久性が求められており、偏光板としても高い耐久性が求められている。特に耐水性の向上の観点から、近年、偏光子保護フィルムとして、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム等が従来のTACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム)の代替品として用いられるようになってきた。
【0005】
かような技術として、特開2015-166875号公報には、特定の白色バックライト光源と、特定のリターデーションを有する配向ポリエステルフィルム(ポリエステル樹脂フィルム)および偏光子とを有し、偏光子の偏光軸と前記ポリエステル樹脂フィルムの配向主軸とが略平行である偏光板とを有する液晶表示装置が開示されている。当該文献によると、前記偏光板は、高い耐久性および薄膜化に適した機械強度を実現し、また前記液晶表示装置は、虹ムラ発生を抑制しうる。ここで、当該文献には、偏光板において、紫外線吸収剤を含むポリエステル樹脂フィルムを一方の偏光子保護フィルムとして用いること、およびポリエステル樹脂フィルムがハードコート層を有することが開示されている。また、ノルボルネン系フィルム(シクロオレフィン樹脂フィルムの一種)またはアクリルフィルム(アクリル樹脂フィルム)を他方の偏光子保護フィルムとして用いることが開示されている。
【0006】
また、特開2016-107498号公報には、基材フィルムと、2種の異なる分子量を有する紫外線吸収剤および電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む表面保護層とを有する保護フィルムが開示されている。当該文献によると、かような保護フィルムは、高い紫外線カット機能、低着色性および偏光子等の部材の保護に十分な耐擦傷性を実現しうる。ここで、当該文献には、偏光板において、ポリエステル樹脂フィルムを基材フィルムとして用いた前記保護フィルムを、一方の偏光子保護フィルムとして用いることが開示されている。また、位相差板(位相差フィルム)である延伸した環状オレフィンフィルム(シクロオレフィン樹脂フィルム)を他方の偏光子保護フィルムとして用いることが開示されている。
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、特開2015-166875号公報または特開2016-107498号公報に開示された偏光板は、紫外線カット機能を有し、耐水性に優れるものの、偏光板の裁断時にシクロオレフィン樹脂フィルムのクラック(ひび、割れや端部におけるささくれ)が発生する場合があることが問題となっていた。異形パネル用途の偏光板はパネルの形状に沿って裁断する必要があるが、この際、特開2015-166875号公報または特開2016-107498号公報に開示された偏光板では、シクロオレフィン樹脂フィルムのクラック(ひび、割れや端部におけるささくれ)が従来の長方形の裁断時よりも高頻度で発生することが特に問題となっていた。
【0008】
また、特開2015-166875号公報または特開2016-107498号公報に開示された偏光板は、偏光子保護フィルムと偏光子との間で剥離が発生し易い場合があることも問題となっていた。車載用途の偏光板では過酷な環境下、特に高温下における耐久性が必要とされるが、特開2015-166875号公報または特開2016-107498号公報に開示された偏光板では、高温下での使用により偏光子保護フィルムと偏光子との間で剥離が生じることが特に問題となっていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ポリエステル樹脂フィルムと、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムとを偏光子保護フィルムとして用いた、紫外線カット機能を有する偏光板において、偏光板の異形打抜き時の故障を低減させ、高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
ハードコート層と、ポリエステル樹脂フィルムと、偏光子と、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムとがこの順に積層された積層構造を有し、
前記ハードコート層、および前記シクロオレフィン樹脂フィルムまたは前記アクリル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、
前記ポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有しない、偏光板。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一形態に係る偏光板が適用されうる、異形パネルの一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の好ましい一形態に係る偏光板の構造を示す断面時模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0014】
また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
本明細書で特別な言及がない限り、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを、(メタ)アクリロニトリルはアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルを意味する。
【0016】
また、本明細書で別途の定義がない限り、「共重合」とは、ブロック共重合、ランダム共重合、グラフト共重合または交互共重合を意味し、「共重合体」とは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体または交互共重合体を意味する。
【0017】
<偏光板>
本発明は、ハードコート層と、ポリエステル樹脂フィルムと、偏光子と、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムとがこの順に積層された積層構造を有し、前記ハードコート層、および前記シクロオレフィン樹脂フィルムまたは前記アクリル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、前記ポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有しない、偏光板に関する。本発明に係る偏光板によれば、ポリエステル樹脂フィルムと、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムとを偏光子保護フィルムとして用いた、紫外線カット機能を有する偏光板において、偏光板の異形打抜き時の故障を低減させ、高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性を向上させうる。
【0018】
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0019】
ポリエステル樹脂フィルムは、一般的に、従来偏光子保護フィルムとして使用されてきたTACフィルムと比較してガラス転移温度が低い。これより、特開2015-166875号公報に係る偏光板のように、ポリエステル樹脂フィルムが紫外線吸収剤を含有する場合は、ガラス転移温度がさらに低下してフィルムが軟化する。かようなポリエステル樹脂フィルムを含む偏光板は、裁断の際に刃が押し当てられた際に偏光板自身がこれに追随して変形し易くなる。また、従来の長方形での打抜きとは異なり、異形打抜きは裁断の際に必要となる力が各方向で一定ではない。このとき、かようなポリエステル樹脂フィルムを含む偏光板では、偏光板の変形のし易さおよび異形打抜きで各方向の裁断に必要な力が異なることに起因して、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、裁断不良、偏光子保護フィルムのクラック、または偏光子保護フィルムと偏光子との剥離等の故障が生じることとなる。また、ポリエステル樹脂フィルムの低ガラス転移温度、および軟化に起因して、高温下での経時でポリエステル樹脂フィルムにカールが発生し、さらにこのカールにより偏光子保護フィルムと偏光子との間で剥離が生じることとなる。
【0020】
加えて、特開2015-166875号公報または特開2016-107498号公報に係る偏光板は、異なる材料よりなる偏光子保護フィルムを偏光子の両面に配置するため、偏光板全体のカールバランスを保つことが困難となる。また、特開2016-107498号公報に係る偏光板では、紫外線カット機能を実現するために表面保護層に紫外線吸収剤を添加する必要があり、この際、表面保護層の軟化により、偏光板全体のカールバランスを保つことがさらに困難となる。これより、特開2015-166875号公報または特開2016-107498号公報に係る偏光板では、偏光板面内において、微細なカールが場所によって異なる状態で発生する。かような偏光板では、微細なカールの発生および異形打抜きで各方向の裁断に必要な力が異なることに起因して、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムのクラックが生じることとなる。
【0021】
一方、本発明に係る偏光板に用いられるポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有しないため、ガラス転移温度の低下、フィルムの軟化が生じない。したがって、本発明に係る偏光板は、異形打抜き時のフィルムの変形が抑制され、異形打抜き時の故障が低減される。また、本発明に係る偏光板は、高温下での経時によるポリエステル樹脂フィルムのカールの発生が抑制され、高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性が向上する。
【0022】
また、ハードコート層を有さない偏光子保護フィルムは、通常、2枚の偏光子保護フィルムのうち相対的にパネルに近い側に配置されることとなる。従来、相対的にパネルに近い側に配置されるシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、偏光子保護フィルムや位相差フィルムとして必要となる光学特性(特に、位相差等)等を満たすため、特殊な添加剤が添加されることや、樹脂変性が行われることが一般的であった。これより、当業界では、相対的にパネルに近い側に配置されるシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムにさらに紫外線吸収剤を添加することは、上記光学特性や生産性の低下の懸念があることから、積極的な検討がなされてこなかった。
【0023】
これに対して、本発明に係る偏光板では、紫外線カット機能を実現するためにハードコート層に紫外線吸収剤を添加するとともに、相対的にパネルに近い側に配置されるフィルムとしてシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムにも紫外線吸収剤を添加する。その結果、本発明に係る偏光板は、偏光板全体のカールバランスを保つことが可能となり、偏光板面内において、微細なカールが場所によって異なる状態で発生することが抑制される。したがって、本発明に係る偏光板は、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックが低減される。
【0024】
さらに、本発明に係る偏光板は、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムが紫外線吸収剤を含有することで、これらのフィルムと偏光子との間の相互作用が高まる。したがって、本発明に係る偏光板は、高温下での経時で偏光子保護フィルムの変形が発生した際にも、これらのフィルムと偏光子との間の剥離が抑制されることとなり、これらのフィルムと偏光子との接着性が向上する。
【0025】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0026】
図2は、本発明の好ましい一形態に係る偏光板の構造を示す断面時模式図である。偏光板1は、ハードコート層2と、ポリエステル樹脂フィルム3と、偏光子5と、シクロオレフィン樹脂フィルム6とをこの順に有する。ここで、ハードコート層2と、シクロオレフィン樹脂フィルム6とは、紫外線吸収剤を含有している。また、ポリエステル樹脂フィルム3は、紫外線吸収剤を実質的に含有しない。ここで、易接着層4は、任意に有してもよい機能層である。また、本発明においては、シクロオレフィン樹脂フィルム6に替えて、紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂フィルムを採用することができる。なお、偏光板1において、ポリエステル樹脂フィルム3の有する易接着層4およびシクロオレフィン樹脂フィルム6と、偏光子5とを貼合するために用いた接着剤層は図示を省略している。
【0027】
以下、本発明に係る偏光板の各構成要素について、詳細に説明する。
【0028】
(ポリエステル樹脂フィルム)
本発明の一形態に係る偏光板は、紫外線吸収剤を実質的に含有しない、ポリエステル樹脂フィルムを有する。
【0029】
ポリエステル樹脂フィルムとは、ポリエステルを、フィルムの総質量に対して50質量%以上含むフィルムを表すものとする。ポリエステルの含有量が50質量%未満であると、ポリエステルに由来する優れた耐水性が得られない虞がある。同様の観点から、ポリエステルの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい(上限100質量%)。
【0030】
なお、本明細書では、「ポリエステル樹脂フィルム」とは、ポリエステル単体またはこれを含む組成物より形成されうるフィルムそのものを指し、ハードコート層等の他の機能層を含むものではない。
【0031】
[ポリエステル]
ポリエステル樹脂フィルムの原料樹脂であるポリエステル(ポリエステル樹脂)は、任意のジカルボン酸成分と任意のジオール成分とを重縮合させて得ることができる。ジカルボン酸成分としては、特に制限されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸、ならびにこれらの塩およびこれらの無水物等を挙げることができる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、またはこれらの塩もしくはこれらの無水物であることが好ましく、テレフタル酸またはその塩もしくはその無水物であることがより好ましい。
【0032】
ジオール成分としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等を挙げることができる。これらの中でも、エチレングルコール、プロピレングリコールであることが好ましく、エチレングリコールであることがより好ましい。
【0033】
ポリエステルを構成するジカルボン酸成分とジオール成分としては、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ポリエステル樹脂フィルムを構成する具体的なポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)であり、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。ポリエステル樹脂は、必要に応じて他の共重合成分を含んでも良く、機械的強度の点からは共重合成分の割合は、ジカルボン酸成分とジオール成分との合計を100モル%として、3モル%以下が好ましく、より好ましくは2モル%以下、さらに好ましくは1.5モル%以下である(下限0モル%)。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れる。また、これらの樹脂は、延伸加工によって容易にリターデーションを制御することができる。
【0035】
なお、ポリエステルは、一般的な製造方法により合成することができる。
【0036】
[紫外線吸収剤]
ポリエステル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を実質的に含有しないことが好ましい。本明細書において、「紫外線吸収剤を実質的に含有しない」とは、紫外線吸収剤の含有量が、ポリエステル樹脂フィルムの総質量に対して0.1質量%以下であることを表す。なお、ここでいう「ポリエステル樹脂フィルム」とは、ポリエステルを含む樹脂組成物より形成されうるフィルムそのものを指し、ハードコート層等の他の機能層を含むものではない。ポリエステル樹脂フィルム中の紫外線吸収剤の含有量が、ポリエステル樹脂フィルムの総質量に対して0.1質量%超であると、偏光板の異形打抜き時の故障頻度が増加し、高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性が不足する虞がある。このような観点から、ポリエステル樹脂フィルム中の紫外線吸収剤の含有量は、ポリエステル樹脂フィルムの総質量に対して0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、全く含まない(0質量%)ことが特に好ましい。
【0037】
なお、ポリエステル樹脂フィルムに極微量で含有されうる紫外線吸収剤としては、例えば、後述のハードコート層、シクロオレフィン樹脂フィルムおよびアクリル樹脂フィルムに含有される紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0038】
[光学特性]
ポリエステル樹脂フィルムのリターデーションRoおよびRthは、それぞれ以下の式で定義される;
式(I) Ro=(nx-ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
(但し、nxは、フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表し、nyは、フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し、nzは、フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し、d(nm)はフィルムの厚みを表す)。
【0039】
ポリエステル樹脂フィルムの、23℃、55%RHの環境下、波長590nmの光に対する、面内方向のリターデーションRo(590)の上限は、特に制限されないが、小さいほど好ましく、1000nm以下であることが好ましい。面内方向のリターデーションRo(590)がこの範囲であると、液晶表示装置のバックライトとして、特に、白色光源(青色LED+黄色蛍光体)よりもRGBの強度分布がシャープな光源を用いた場合に、リターデーションに起因する光の干渉自体が低減されるため、虹ムラをより低減することが可能となる。同様の観点から、ポリエステル樹脂フィルムの面内方向のリターデーションRo(590)は、800nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることがさらに好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。また、ポリエステル樹脂フィルムの面内方向のリターデーションRo(590)は、前記観点からは0nmであることが最も好ましいが、生産性の観点から、ポリエステル樹脂フィルムの面内方向のリターデーションRo(590)の下限は、30nm以上であることが好ましい。なお、面内方向のリターデーションRo(590)は、ポリエステルの種類や、後述する延伸条件等によって制御することができる。
【0040】
ポリエステル樹脂フィルムの、23℃、55%RHの環境下、波長590nmの光に対する面内方向のリターデーションRo(590)は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて測定することができる。
【0041】
[厚み]
また、ポリエステル樹脂フィルムの厚みの下限は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。この範囲であると、より良好な耐水性および機械的強度を得ることができる。また、ポリエステル樹脂フィルムの厚みの上限は、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。この範囲であると、さらなる薄膜化とより良好な視認性とを両立することができる。
【0042】
後述するシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの厚み(μm)に対する、ポリエステル樹脂フィルムの厚み(μm)の比(ポリエステル樹脂フィルムの厚み(μm)/シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの厚み(μm))は、0.1~5であることが好ましく、0.4~4であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましい。この範囲であると、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。さらに、高温下での経時後において、これらのフィルムと偏光子との接着性がより向上する。この理由は、上記範囲では、偏光板全体としてのカールバランスが良好となり、高温下での経時によりポリエステル樹脂フィルムにカールの発生や、偏光板面内の場所によって異なる状態で発生する微細なカールが抑制されるからであると推測している。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0043】
(ポリエステル樹脂フィルムの製造方法)
ポリエステル樹脂フィルムは、一般的な製造方法に従って得ることができる。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用した縦方向(MD方向)への延伸、もしくはテンターを用いた横方向(TD方向)への延伸、またはこれら両方の延伸を行い、必要に応じて熱処理および必要に応じて弛緩処理(緩和処理)をさらに施すことによりポリエステル樹脂フィルムを製造する溶融流延法等が挙げられる。なお、溶融流延法の詳細については後述する。ポリエステル樹脂フィルムは、一軸延伸フィルム(一軸配向フィルム)であっても、二軸延伸フィルム(二軸配向フィルム)であっても良いが、一軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0044】
ポリエステル樹脂フィルムを得るための製造条件は、公知の手法に従って適宜設定することができる。例えば、溶融温度は、200~300℃であることが好ましく、250~300℃であることがより好ましい。縦延伸温度および横延伸温度は、80~130℃であることが好ましく、90~125℃であることがより好ましい。縦延伸倍率は、1~3.5倍であることが好ましく、1~3倍であることがより好ましい。また、横延伸倍率は、1~3倍であることが好ましく、1~2.5倍であることがより好ましい。
【0045】
リターデーションを特定範囲に制御することは、延伸倍率や延伸温度、フィルムの厚みを適宜設定することにより行うことができる。例えば、縦延伸と横延伸との延伸倍率差が大きいほど、延伸温度が低いほど、フィルムの厚みが厚いほど、高いリターデーションを得やすい。逆に、縦延伸と横延伸との延伸倍率差が小さいほど、延伸温度が高いほど、フィルムの厚みが薄いほど、低いリターデーションを得やすい。また、延伸温度が高いほど、トータル延伸倍率が小さいほど、リターデーション値と厚み方向リターデーション値との比(Ro/Rt)が低いフィルムを得やすい。逆に、延伸温度が低いほど、トータル延伸倍率が高いほど、リターデーション値と厚み方向リターデーション値の比(Ro/Rt)が高いフィルムを得やすい。
【0046】
熱処理温度は、140~240℃の範囲内であることが好ましく、170~240℃の範囲内であることがより好ましい。
【0047】
弛緩処理(緩和処理)の温度は、通常、100~230℃の範囲内であることが好ましく、110~210℃の範囲内であることがより好ましく、120~180℃の範囲内がさらに好ましい。また、弛緩量(緩和量)は、通常、0.1~20%の範囲内であることが好ましく、1~10%の範囲内であることがより好ましく、2~5%の範囲内であることがさらに好ましい。この弛緩処理の温度および弛緩量は、特に制限されないが、弛緩処理後のポリエステルフィルムの150℃における熱収縮率が2%以下になるように設定されることが好ましい。
【0048】
また、一軸延伸および二軸延伸処理においては、横延伸の後、ボーイングに代表されるような配向主軸の歪みを緩和させるために、再度、熱処理を行ったり、延伸処理を行ったりすることができる。
【0049】
[他の機能層]
本発明の一形態に係る偏光板では、ポリエステル樹脂フィルムの少なくとも偏光子が存在する側の面とは反対側の面上に機能層として後述するハードコート層を有するが、ハードコート層以外にも他の機能層をさらに有していてもよい。なお、各機能層は、ポリエステル樹脂フィルムの表面に直接設けられてもよく、他の機能層を介してポリエステル樹脂フィルム上に設けられてもよい。他の機能層としては、偏光板、偏光子保護フィルムにおいて一般的に設けられる層を適宜選択することができる。他の機能層としては、例えば、易接着層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層、帯電防止層、シリコーン層、粘着層、防汚層、耐指紋層、撥水層、およびブルーカット層等が挙げられる。
【0050】
本発明の一形態に係る偏光板では、ポリエステル樹脂フィルムにおける少なくとも一方の面側にハードコート層や他の機能層を設けるに際して、ポリエステル樹脂フィルムの表面に易接着層を設けることが好ましい。その際、反射光による干渉を抑える観点から、易接着層の屈折率を、機能層の屈折率と配向フィルムの屈折率の相乗平均近傍になるように調整することが好ましい。易接着層の屈折率の調整は、公知の方法を採用することができ、例えば、バインダー樹脂に、シリカ、チタンまたはジルコニウム、その他の金属種を含有させることで容易に調整することができる。易接着層の形成に用いる塗布液は、水溶性または水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂のうち、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特公平6-81714号公報、特許第3200929号公報、特許第3632044号公報、特許第4547644号公報、特許第4770971号公報、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性または水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。これらの中でも、水溶性または水分散性の共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0051】
また、ポリエステル樹脂フィルムがその表面に易接着層を有する場合、易接着層を有するポリエステル樹脂フィルムは、未延伸ポリエステル樹脂フィルムの表面に易接着層の形成に用いる塗布液を塗布し、乾燥することで易接着層を形成することが好ましい。そして、易接着層を有するポリエステル樹脂フィルムは、その後、未延伸ポリエステル樹脂フィルムが前述の縦延伸もしくは横延伸、またはこれら両方の延伸を行い、必要に応じて熱処理および必要に応じて弛緩処理(緩和処理)をさらに施すことがより好ましい。
【0052】
易接着層の厚みの下限の値は、特に制限されないが、易接着層の機能発現の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。また、易接着層の厚みの上限の値は、特に制限されないが、薄膜化の観点から、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0053】
(ハードコート層)
本発明の一形態に係る偏光板は、紫外線吸収剤を含有する、ハードコート層を有する。ハードコート層は、偏光板の耐擦傷性を向上させる作用を有する。
【0054】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物を含む樹脂成分と、紫外線吸収剤とを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。すなわち、上記電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物を含む樹脂成分と、紫外線吸収剤とを少なくとも含むものであることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物以外の、熱可塑性樹脂等の樹脂成分を含んでいてもよい。
【0055】
電離放射線硬化性樹脂組成物は電離放射線を照射することにより硬化する樹脂組成物である。電離放射線としては、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)または電子線(EB)が用いられるほか、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
【0056】
[電離放射線硬化性化合物]
電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性化合物は、特に制限されず、公知の重合性モノマー、重合性オリゴマーまたはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0057】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであれば特に制限はなく、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。また、上記(メタ)アクリレートは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上であれば特に制限はないが、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化性および表面保護層の耐擦傷性を向上させる観点から、2~8が好ましく、より好ましくは2~6、さらに好ましくは3~6である。
【0059】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの分子量は、表面保護層の耐擦傷性を向上させる観点から、1,000未満が好ましく、200~800がより好ましい。
【0060】
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を2以上有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく使用される。この(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、特に制限されないが、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記(メタ)アクリレートは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数は2以上であれば特に制限はないが、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化性および表面保護層の耐擦傷性を向上させる観点から、2~8が好ましく、より好ましくは2~6である。
【0062】
また、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、1,000~20,000であることが好ましく、1,000~15,000であることがより好ましく、1,000~10,000であることがさらに好ましく、1,000~5,000であることが特に好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めた値である。
【0063】
電離放射線硬化性化合物の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の総質量に対し、好ましくは50~99.7質量%、より好ましくは60~98質量%、さらに好ましくは70~93質量%、特に好ましくは80~90質量%である。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物中の電離放射線硬化性化合物の硬化物の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性化合物の含有量と実質的に同じである。
【0064】
電離放射線硬化性化合物としては、重合性オリゴマーであることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましく、ウレタンアクリレートであることがさらに好ましい。
【0065】
電離放射線硬化性化合物としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日本合成化学工業株式会社製 UV-7600B等が挙げられる。
【0066】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
【0067】
光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、アセトフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
光重合開始剤としては、これらの中でもアシルホスフィンオキサイドであることが好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドであることがより好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドであることがさらに好ましい。
【0069】
電離放射線硬化性化合物としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製のIRGACURE(登録商標)TPO、IRGACURE(登録商標)819等が挙げられる。
【0070】
光重合開始剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対し、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは1~10質量部、特に好ましくは1~5質量部である。なお、電離放射線硬化性化合物に対する含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物中における、電離放射線硬化性化合物の硬化物に対する含有量と実質的に同じである。
【0071】
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速める作用を有する。光重合促進剤としては、特に制限されないが、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
[紫外線吸収剤]
電離放射線硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することで紫外線カット能を付与する作用を有する。紫外線吸収剤としては、特に制限されず、ハードコート層、偏光子保護フィルムまたは偏光板の分野で公知に用いられる紫外線吸収剤を適宜使用することができる。
【0073】
紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾオキサジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物等が挙げられる。
【0074】
これらの中でも、紫外線吸収性の観点から、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物であることが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物であることがより好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物であることがさらに好ましい。
【0075】
ベンゾフェノン系化合物としては、特に制限されないが、例えば、2,2-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0076】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0077】
【0078】
【0079】
式中、G1、G2は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、塩素原子、フッ素原子、-CF3基、-CO-G3基、E3SO-基またはE3SO2-基を表す。
【0080】
G3は、炭素原子数1~24の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数2~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基、炭素原子数5~12のシクロアルキル基、炭素原子数7~15のアリールアルキル基、アリール基、または炭素原子数1~4のアルキル基1個~4個によりフェニル環が置換された前記フェニル基もしくは前記フェニルアルキル基を表す。
【0081】
E1、E2は、それぞれ独立して、炭素原子数1~24の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基;炭素原子数2~18の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基;炭素原子数5~12のシクロアルキル基;炭素原子数7~15のアリールアルキル基;アリール基;炭素原子数1~4のアルキル基、1個~4個により置換された、前記アリール基または前記アリールアルキル基;1個またはそれより多くの、-OH基、-OCOE11基、-OE4基、-NCO基、-NH2基、-NHCOE11基、-NHE4基、-N(E4)2基、-COOH基または-COOE5基により置換された、炭素原子数1~24の前記アルキル基または炭素原子数2~18の前記アルケニル基;1個またはそれより多くの、-O-基、-NH-基または-NE4-基により中断され、そして非置換の、または1個もしくはそれより多くの、-OH基、-OE4基、-NH2基、-COOH基もしくは-COOE5基により置換され得る、前記アルキル基または前記アルケニル基を表す。ここで、-O-基、-NH-基または-NE4-基による中断の位置は、特に制限されないが、前記アルキル基、前記アルケニル基、またはE5中のアルキル基であることが好ましい。
【0082】
E4は、炭素原子数1~24の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0083】
E5は、非置換の、または1個もしくはそれより多くの、-OH基、COOH基もしくは-NH2基で置換されてもよい、炭素原子数1~24の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0084】
E11は、水素原子、炭素原子数1~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、炭素原子数5~12のシクロアルキル基、炭素原子数2~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、または炭素原子数7~15のアリールアルキル基を表す。
【0085】
E3は、炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数2~20のヒドロキシアルキル基、炭素原子数3~18のアルケニル基、炭素原子数5~12のシクロアルキル基、炭素原子数7~15のアリールアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、もしくは炭素原子数1~4のアルキル基、1個もしくは2個により置換された、前記アリール基、または1,1,2,2-テトラヒドロペルフルオロアルキル基(この基のペルフルオロアルキル部分は、6個~16個の炭素原子からなる)である。
【0086】
以下、ベンゾトリアゾール系化合物の具体例を、下記の例示化合物1~6に示すが、これらに限定されるものではない。
【0087】
【0088】
また、ベンゾトリアゾール化合物としては、上記一般式(1)または上記一般式(2)の化合物を部分構造として含む多量体であってもよい。多量体としては、例えば、上記E1または上記E2が連結基である化合物が挙げられる。上記E1または上記E2が連結基である化合物としては、上記一般式(1)または上記一般式(2)の化合物中のE1またはE2から1つまたはそれより多くの水素原子を除き、この部分で一般式(1)または上記一般式(2)の化合物が連結された構造が挙げられる。また、多量体としては、例えば、上記一般式(1)または上記一般式(2)の化合物に由来する-COOH基と、ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等)に由来する-OH基との間でエステル結合を形成して連結された構造を有する化合物であってもよい。
【0089】
多量体としては、2量体であることが好ましく、例えば下記の例示化合物Aのような構造が挙げられる。
【0090】
【0091】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物(メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートのポリエチレングリコール付加物、もしくはポリエチレングリコールを介したメチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートの2量体等の多量体(例えば、上記例示化合物A)、またはこれらを含む混合物)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(上記例示化合物1)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジーtert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(上記例示化合物6)が特に好ましい。
【0092】
トリアジン系化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0093】
【0094】
式中、R1は、炭素原子数1~12の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素原子数3~8のシクロアルキル基、炭素原子数3~8のアルケニル基、炭素原子数6~18のアリール基、炭素原子数7~18のアルキルアリール基、炭素原子7~18のアルケニルアリール基または炭素原子数7~18のアリールアルキル基を表す。ただし、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~12のアルキル基または炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基またはイミノ基で中断されていてもよい。また、前記の置換および中断は組み合わされてもよい。
【0095】
R2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数3~8のアルケニル基を表す。
【0096】
R3は、少なくとも一つはヒドロキシ基であり、ヒドロキシ基でない場合は水素原子を表す。
【0097】
R4は、それぞれ独立して、水素原子またはO-R1を表す。
【0098】
前記一般式(3)のR1で表される炭素原子数1~12の直鎖または分岐のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、イソアミル、tert-アミル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、tert-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等の直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。
【0099】
前記一般式(3)のR1で表される炭素原子数3~8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。
【0100】
前記一般式(3)のR1で表される炭素原子数6~18のアリール基、炭素原子7~18のアルキルアリール基または炭素原子7~18のアルケニルアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、4-ビニルフェニル、3-イソプロピルフェニル、4-イソプロピルフェニル、4-ブチルフェニル、4-イソブチルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-ヘキシルフェニル、4-シクロヘキシルフェニル、4-オクチルフェニル、4-(2-エチルヘキシル)フェニル、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,4-ジtert-ブチルフェニル、2,5-ジtert-ブチルフェニル、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル、2,4-ジtert-ペンチルフェニル、2,5-ジtert-アミルフェニル、2,5-ジtert-オクチルフェニル、ビフェニル、2,4,5-トリメチルフェニル等が挙げられ、炭素数7~18のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2-フェニルプロパン-2-イル、ジフェニルメチル等が挙げられる。
【0101】
前記一般式(3)において、R1およびR2で表される炭素原子数3~8のアルケニル基としては、例えば、直鎖および分岐のプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルが不飽和結合の位置によらず挙げられる。
【0102】
前記一般式(3)において、R2で表される炭素原子数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、アミル、tert-アミル、オクチル、tert-オクチル等が挙げられ、中でもメチル基が、紫外線吸収能力に優れるため好ましい。
【0103】
前記一般式(3)で表されるトリアジン系化合物の具体例を、下記の例示化合物7~18に示すが、これらに限定されるものではない。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
トリアジン系化合物としては、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系化合物であることが好ましく、上記例示化合物17または上記例示化合物18であることが特に好ましい。
【0108】
また、紫外線吸収剤としては、高分子型紫外線吸収剤を用いてもよい。高分子型紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性基を有する(共)重合体が挙げられ、例えば、紫外線吸収性単量体の単独重合体や、紫外線吸収性単量体と、その他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。上記紫外線吸収性単量体としては、エチレン性不飽和単量体であることが好ましく、例えば(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、ベンゾオキサジン骨格などを含有する化合物が挙げられる。また、上記その他の単量体としては、上記紫外線吸収性単量体と共重合可能な単量体であればよく、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸またはメチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、メタクリル酸またはメチルメタクリレートであることがより好ましく、メチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
【0110】
高分子型紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン基、トリアジン基またはベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤(高分子化合物であるベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物またはベンゾトリアゾール系化合物)であることが好ましく、トリアジン基またはベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤であることがより好ましく、ベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤であることがさらに好ましい。ベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(4)で表される高分子型紫外線吸収剤が挙げられる。
【0111】
【0112】
(一般式(4)中、R10~R12はそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示す。R13は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、ベンジル基、またはアリール基を示す。R14およびR15はそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキレン基を示す。a、b、cはいずれも一般式(4)に示される各構成単位のモル比を示し、a+b+c=1である。aおよびbは0以上の数を示し、cは0以外の数を示す。)
なお、紫外線吸収能の観点から、一般式(4)において、cは好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であり、好ましい上限値は0.8以下である。
【0113】
また、R10~R13は、メチル基であることが好ましい。また、R14またはR15は、メチレン基またはエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。bは、b=0であることが好ましい。
【0114】
高分子型紫外線吸収剤の重量平均分子量1,000以上であり、紫外線吸収能および樹脂組成物への溶解性の観点から、重量平均分子量は150,000以下が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、5,000~80,000がさらに好ましく、10,000~80,000が特に好ましい。高分子型紫外線吸収剤の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算により求めた値である。
【0115】
紫外線吸収剤としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物としては、BASFジャパン株式会社製のTinuvin(登録商標)1130、Tinuvin(登録商標)928、城北化学工業株式会社製のJF-80等が、トリアジン系化合物としては、BASFジャパン株式会社製のTinuvin(登録商標)477等が、ベンゾフェノン系化合物としては、BASF社製のUvinul(登録商標)3049等が、高分子型紫外線吸収剤としては、新中村工業株式会社製のバナレジンUVA-5080、BASF社製のUVA1935LH等がそれぞれ挙げられる。
【0116】
ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤としては、偏光板の異形打抜き時の故障の低減、および高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性の向上との観点から、ベンゾトリアゾール系化合物であることが特に好ましい。これらの中でも、多量体(例えば、2量体)であるベンゾトリアゾール系化合物またはベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤等、分子内に2つ以上のベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であることが極めて好ましい。
【0117】
ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤の分子量の下限は、偏光板の異形打抜き時の故障の低減、および高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性の向上との観点から、300以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の分子量は、高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性のさらなる向上の観点から、700以上であることがより好ましく、900以上であることがさらに好ましく、1,000以上であることが特に好ましい。なお、ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤の分子量の好ましい上限は、高分子型紫外線吸収剤の重量平均分子量の上限と同様である。なお、紫外線吸収剤の分子量は、高分子型紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤については、原子量の総和から算出した値であり、高分子型紫外線吸収剤については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めた重量平均分子量である。
【0118】
ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0119】
ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤の含有量の下限は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、0.8質量部以上であることがさらに好ましく、1質量部以上であることが特に好ましい。この範囲であると、紫外線カット能がより向上し、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。また、ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤の含有量の上限は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。この範囲であると、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。なお、電離放射線硬化性化合物に対する含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物中における、電離放射線硬化性化合物の硬化物に対する含有量と実質的に同じである。
【0120】
ハードコート層が、電離放射線型硬化性化合物を含む場合、後述するシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる紫外線吸収剤の含有量に対する、ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤の含有量の比(本願明細書では、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる、シクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマー100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(質量部)に対する、ハードコート層に含まれる、電離放射線硬化性化合物100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(質量部)の比、すなわち、ハードコート層に含まれる、電離放射線硬化性化合物100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(質量部)/シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる、シクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマー100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量(質量部)を表わす)は、0.05~1であることが好ましく、0.1~0.7であることがより好ましく、0.1~0.5であることがさらに好ましく、0.1~0.3であることが特に好ましい。この範囲であると、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。さらに、高温下での経時後において、これらのフィルムと偏光子との接着性がより向上する。この理由は、上記範囲では、偏光板全体としてのカールバランスが良好となり、高温下での経時によりポリエステル樹脂フィルムにカールの発生や、偏光板面内において、場所によって異なる状態で発生する微細なカールが抑制されるからであると推測している。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0121】
[光反射性粒子]
電離放射線硬化性樹脂組成物は、さらに光反射性粒子を含んでいてもよい。光反射性粒子は紫外線を透過しないため、ハードコート層が光反射性粒子を含むものであると、紫外線カット機能がさらに向上する。
【0122】
このような光反射性粒子としては特に限定されず、例えば、金属粒子、金属酸化物粒子、コア粒子の表面に光反射性被覆層を形成したコーティング粒子等が好適に用いられる。
【0123】
金属粒子を構成する金属としては、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Fe、Ni、Pd、Pt等が挙げられる。金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化錫(SnO2)、酸化アンチモン(Sb2O5)、アンチモン錫酸化物(ATO)(例えば、アンモスチンドープ酸化錫)、インジウム錫酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、フッ素化酸化スズ(FTO)、ZnO等が挙げられる。コーティング粒子としては、例えば、コア粒子の表面に光反射性被覆層が形成された構成の従来公知の粒子が挙げられる。コア粒子としては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ粒子、酸化ケイ素粒子等の無機粒子、フッ素樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等のポリマー粒子、有機質無機質複合体粒子等が挙げられる。また、光反射性被覆層を構成する材料としては特に限定されず、例えば、上述した金属またはこれらの合金や、上述した金属酸化物等が挙げられる。
【0124】
これらの中でも、金属酸化物粒子であることが好ましく、アンチモン錫酸化物(ATO)粒子であることがより好ましい。
【0125】
光反射性粒子の平均粒子径は、1~15μmであることが好ましく、2~10μmであることがより好ましく、2~8μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が1μm以上であればハードコート層の耐擦傷性をより良好となり、15μm以下であれば、ハードコート層の厚みを薄くし、薄型化を図ることができる。なお、光反射性粒子の平均粒子径は、透過型子顕微鏡(TEM)または走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて求めることができる。
【0126】
光反射性粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、アンチモンドープ酸化錫の20質量%変性アルコール分散液である触媒化成工業株式会社製 ELCOM NY-1019ATV等が挙げられる。
【0127】
光反射性粒子は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
本明細書において、光反射性粒子を含むハードコート層の場合の「ハードコート層の厚み」とは、層から突出した粒子を含まない部分の厚みを意味する。
【0129】
光反射性粒子の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対し、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部である。なお、電離放射線硬化性化合物に対する含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物中における、電離放射線硬化性化合物の硬化物に対する含有量と実質的に同じである。
【0130】
[他の添加剤]
電離放射線硬化性樹脂組成物には、その他の添加剤として、耐摩耗剤、艶消剤、耐傷フィラー等の充填剤、離型剤、分散剤、レベリング剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)等を含んでいてもよい。
【0131】
[厚み]
ハードコート層の厚みは、本発明の一形態に係る偏光板の用途や要求特性に応じて適宜選択できるが、1~30μmが好ましく、2~20μmがより好ましく、2~10μmがさらに好ましく、2~5μmであることが特に好ましい。この範囲であると、紫外線カット能がより向上し、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。ハードコート層の厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。STEMの加速電圧は10kv~30kVとすることが好ましく、STEMの観察倍率は1000~7000倍とすることが好ましい。
【0132】
後述するシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの厚み(μm)に対する、ハードコート層の厚み(μm)の比(ハードコート層の厚み(μm)/シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの厚み(μm))は、0.002~1であることが好ましく、0.05~0.9であることがより好ましく、0.08~0.5であることがさらに好ましく、0.08~0.4であることが特に好ましく、0.1~0.4であることが極めて好ましい。この範囲であると、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。さらに、高温下での経時後において、これらのフィルムと偏光子との接着性がより向上する。この理由は、上記範囲では、偏光板全体としてのカールバランスが良好となり、高温下での経時によりポリエステル樹脂フィルムにカールの発生や、偏光板面内において、場所によって異なる状態で発生する微細なカールが抑制されるからであると推測している。なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0133】
[ハードコート層の形成方法]
ハードコート層は、ポリエステル樹脂フィルム上に、硬化後に所望の厚みとなる量の電離放射線硬化性樹脂組成物を含むハードコート層塗布液を塗布し、必要に応じて乾燥を行った後、電離放射線を照射して硬化することにより形成することができる。
【0134】
ハードコート層塗布液の調製、塗布、乾燥および電離照射線の照射の方法、条件としては、特に制限されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
【0135】
ハードコート用塗布液は、電離放射線硬化性化合物、紫外線吸収剤、および必要に応じ用いられる光反射性粒子ならびにその他の添加剤を、必要に応じて溶媒中で、それぞれ所定の割合で均質に混合することが調製することができる。
【0136】
溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、炭化水素類(トルエン、キシレン)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒等の中から適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
【0137】
ハードコート層塗布液における溶媒の含有量は、特に制限されないが、塗布液の総質量に対して10~80質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましく、40~60質量%であることが特に好ましく、50~60質量%であることが最も好ましい。
【0138】
このようにして調製されたハードコート層塗布液を、ポリエステル樹脂フィルム上またはポリエステル樹脂フィルム上に設けられた機能層の表面に、ダイコート、バーコート、ロールコート、スリットコート、スリットリバースコート、リバースロールコート、グラビアコート等により塗布し、必要に応じて乾燥させて未硬化樹脂層を形成する。
【0139】
塗布後の乾燥条件としては、特に制限されないが、例えば、乾燥温度は70~110℃であることが好ましく、乾燥時間は30秒~5分であることが好ましい。
【0140】
次いで、未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して未硬化樹脂層を硬化させる。電離放射線の照射方法としては、未硬化樹脂層の基材側と反対の面側から照射し、塗膜を硬化させることが好ましい。
【0141】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、通常波長190~380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯等が用いられる。
【0142】
この際の紫外線の照射波長、照度、光量などの条件は、使用する電離放射線硬化性化合物や重合開始剤の種類によって異なるため、当業者によって適宜条件が調整されうる。例えば、照射エネルギー量は50~1500mJ/cm2が好ましい。
【0143】
(シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム)
本発明の一形態に係る偏光板は、紫外線吸収剤を含有する、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムを有する。
【0144】
シクロオレフィン樹脂フィルムおよびアクリル樹脂フィルムとは、それぞれ、シクロオレフィンポリマーおよび(メタ)アクリルポリマーを、フィルムの総質量に対して50質量%以上含むフィルムを表すものとする。シクロオレフィンポリマー、(メタ)アクリルポリマーの含有量が50質量%未満であると、フィルムがシクロオレフィンポリマー、(メタ)アクリルポリマーに由来する優れた耐水性を得られない虞がある。同様の観点から、シクロオレフィンポリマー、(メタ)アクリルポリマーの含有量の下限は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、シクロオレフィンポリマー、(メタ)アクリルポリマーの含有量の上限は、98質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。この範囲であると、シクロオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムが紫外線吸収剤をより適切な量として含有することができ、紫外線カット能がより向上する。また、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。さらに、高温下での経時後において、これらのフィルムと偏光子との接着性がより向上する。なお、フィルムがシクロオレフィンポリマーおよび(メタ)アクリルポリマーの両方を含有する場合であって、シクロオレフィンポリマーおよび(メタ)アクリルポリマーがそれぞれ単独では上記範囲を満たさない場合であっても、これらの総質量がフィルムの総質量に対して上記範囲内であれば、当該フィルムは「シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム」に含まれるものとする。
【0145】
なお、本明細書では、「シクロオレフィン樹脂フィルム」および「アクリル樹脂フィルム」とは、それぞれ、シクロオレフィンポリマー単体またはこれを含む組成物、および(メタ)アクリルポリマー単体またはこれを含む組成物より形成されうるフィルムそのものを指し、他の機能層を含むものではない。
【0146】
シクロオレフィン樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとの中では、シクロオレフィン樹脂フィルムの方がより好ましい。シクロオレフィン樹脂フィルムを用いることで、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子の両面に配置された偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルム自体に発生するクラックがより低減される。さらに、高温下での経時後において、これらの偏光子の両面に配置された偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルム自体と偏光子との接着性がより向上する。
【0147】
[シクロオレフィンポリマー]
シクロオレフィン樹脂フィルムの原料樹脂であるシクロオレフィンポリマー(シクロオレフィン樹脂)としては、特に制限されないが、シクロオレフィン単量体を重合して得られる(共)重合体またはその水素添加物(水添ポリマー)等が挙げられる。これらの中でも、下記一般式(5)で表されるシクロオレフィン単量体を重合して得られる(共)重合体またはその水素添加物(水添ポリマー)であることが好ましく、下記一般式(5)で表されるシクロオレフィン単量体を開環(共)重合して得られる(共)重合体、またはその(共)重合体を水素添加して得られる水素化物(水添ポリマー)であることがより好ましい。
【0148】
【0149】
(式中、R16~R19は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基もしくは極性基で置換された炭化水素基である。ただし、R16~R19は、二つ以上が互いに結合して、不飽和結合、単環または多環を形成していてもよく、この単環または多環は、二重結合を有していても、芳香環を形成してもよい。R16とR17とで、またはR18とR19とで、アルキリデン基を形成していてもよい。p、mは、それぞれ独立して、0以上の整数である。)
上記一般式(5)中、R16およびR18は、好ましくは水素原子または炭素数1~10の炭化水素基、より好ましくは水素原子または炭素数1~4の炭化水素基、さらに好ましくは水素原子または炭素数1~2の炭化水素基、特に好ましくは水素原子を表す。R17およびR19は、好ましくは水素原子または1価の有機基であって、R17およびR19の少なくとも一つは水素原子または極性基を表す。これらの中でも、R17およびR19の一方が水素原子であり、他方が極性基であることが好ましい。mは好ましくは0~3の整数、pは好ましくは0~3の整数であり、より好ましくはm+p=0~4、さらに好ましくはm+p=0~2、特に好ましくはm=1、p=0である。m=1、p=0である特定単量体は、得られるシクロオレフィンポリマーのガラス転移温度が高くかつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
【0150】
上記特定単量体の極性基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これら極性基はメチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども極性基として挙げられる。これらの中では、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(-COOR)またはアリロキシカルボニル基が好ましく、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基がより好ましく、カルボキシ基がさらに好ましい。
【0151】
さらに、R17およびR19の少なくとも一つが式-(CH2)nCOORで表される極性基である単量体は、得られるシクロオレフィンポリマーが高いガラス転移温度と低い吸湿性および各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。
【0152】
上記の特定の極性基にかかる式において、Rは好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~4、特に好ましくは炭素数1~2の炭化水素基であり、該炭化水素基は最も好ましくはアルキル基である。
【0153】
シクロオレフィン単量体の他の具体例としては、特に制限されないが、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネンなどを挙げることができる。なお、シクロオレフィン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0154】
シクロオレフィン環の炭素数としては、4~20であることが好ましく、5~12であることがより好ましい。
【0155】
上記一般式(5)で表されるシクロオレフィン単量体を重合して得られる(共)重合体またはその水素添加物(水添ポリマー)としては、下記一般式(6)に由来する部分構造を有するシクロオレフィンポリマーであることが好ましい。
【0156】
【0157】
一般式(6)において、R18およびR19は、上記一般式(5)で説明したものと同様である。
【0158】
シクロオレフィンポリマーの分子量は、好ましくは固有粘度〔η〕inhで0.2~5dL/g、さらに好ましくは0.3~3dL/g、特に好ましくは0.4~1.5dL/gとなる範囲である。シクロオレフィンポリマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは8,000~100,000、より好ましくは10,000~80,000、さらに好ましくは12,000~50,000である。シクロオレフィンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20,000~300,000、より好ましくは30,000~250,000、さらに好ましくは40,000~200,000である。固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重量平均分子量が上記範囲にあることによって、シクロオレフィンポリマーの耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性、およびシクロオレフィン樹脂フィルムとしての成形加工性が良好となる。数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した結果より、ポリスチレン換算により求めることができる。
【0159】
シクロオレフィンポリマーは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、JSR株式会社製のARTON(登録商標)G、F、F4520、R、RX、日本ゼオン株式会社製のZEONOR(登録商標)ZF14、ZF16、ZEONEX(登録商標)250、280等が挙げられる。
【0160】
シクロオレフィンポリマーは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0161】
[(メタ)アクリルポリマー]
アクリル樹脂フィルムの原料樹脂である(メタ)アクリルポリマー(アクリル樹脂)としては、特に制限されないが、(メタ)アクリレートまたはその誘導体の(共)重合体であることが好ましく、特に(メタ)アクリレートの(共)重合体であることがより好ましい。
【0162】
(メタ)アクリルポリマーとしては、特に制限されるものではないが、ポリマー全体を100質量%として、メチルメタクリレート由来の構成単位が51~100質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体由来の構成単位が0~49質量%からなるものが、高品位の光学フィルムを得ることができる観点から好ましい。これらの中でも、メチルメタクリレート由来の構成単位が95~100質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体由来の構成単位が0~5質量%からなるものがより好ましい。
【0163】
メチルメタクリレートと共重合可能な他の単量体としては、特に制限されないが、例えば、メチルアクリレート、アルキル基の炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等のα,β-不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N-置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して共重合成分として用いることができる。
【0164】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレートまたは2-エチルヘキシルアクリレートが好ましく、メチルアクリレートまたはn-ブチルアクリレートがより好ましく、メチルアクリレートがさらに好ましい。
【0165】
高温、高湿の環境にも性能変化の少ない透明性の高いフィルムを形成できる(メタ)アクリルポリマーとしては、共重合成分として脂環式アルキル基を含有するか、あるいは分子内環化により分子主鎖に環状構造を形成させた(メタ)アクリルポリマーであることが好ましい。分子主鎖に環状構造を形成させた(メタ)アクリルポリマーの例としては、例えば、特開2012-133078号公報に記載の段落0195~0202に記載のラクトン環含有重合体を含む(メタ)アクリルポリマーが挙げられ、好ましいポリマー組成や合成方法は、例えば、特開2012-066538号公報および特開2006-171464号公報に記載されている。また、他の好ましい態様として、グルタル酸無水物を共重合成分として含有するポリマーが挙げられ、共重合成分や具体的合成方法については、例えば、特開2004-070296号公報に記載されている。
【0166】
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)の下限は、80,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。この範囲であると、ドープ中の有機溶媒の含有量をより少なくでき、乾燥時間がより短縮ができ、フィルムの面状をより良好とすることができる。また、(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)の上限は、4,000,000以下であることが好ましい。この範囲であると、より良好な溶液流延適性が実現でき、ドープ調製時に有機溶媒や添加剤との相溶性をより良好とすることができる。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めた値である。
【0167】
(メタ)アクリルポリマーの製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法を用いることができる。
【0168】
(メタ)アクリルポリマーとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のデルペット(登録商標)60N、80N、三菱レイヨン株式会社製のダイヤナール(登録商標)BR52、BR80、BR83、BR85、BR88、電気化学工業株式会社製のK75等が挙げられる。
【0169】
(メタ)アクリルポリマーは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0170】
[紫外線吸収剤]
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤としては、前述のハードコート層に含まれる紫外線吸収剤と同様のものを用いることができる。
【0171】
これらの中でも、紫外線吸収性の観点から、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物であることが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物であることがより好ましい。
【0172】
ベンゾフェノン系化合物としては、特に制限されないが、例えば、2,2-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0173】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、特に制限されないが、上記一般式(1)で表される化合物であることが好ましく、上記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、上記一般式(1)または上記一般式(2)の化合物を部分構造として含む多量体であってもよい。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系化合物としては、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物(メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートのポリエチレングリコール付加物、もしくはポリエチレングリコールを介したメチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートの2量体等の多量体(例えば、上記例示化合物A)、またはこれらを含む混合物)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(上記例示化合物1)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジーtert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(上記例示化合物6)が特に好ましい。
【0174】
トリアジン系化合物としては、特に制限されないが、上記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。これらの中でも、トリアジン系化合物としては、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系化合物であることがより好ましく、上記例示化合物17または上記例示化合物18であることが特に好ましい。
【0175】
紫外線吸収剤としては、高分子型紫外線吸収剤を用いてもよい。高分子型紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン基、トリアジン基またはベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤であることが好ましく、トリアジン基またはベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤であることがより好ましく、ベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤であることがさらに好ましい。ベンゾトリアゾール基を有する高分子型紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、例えば、上記一般式(4)で表される高分子型紫外線吸収剤が挙げられる。
【0176】
なお、これらの詳細は前述のハードコート層に含まれる紫外線吸収剤と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0177】
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる紫外線吸収剤としては、偏光板の異形打抜き時の故障の低減、および高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性の向上の観点から、分子内に1つのベンゾトリアゾール骨格を有する化合物または分子内に1つのトリアジン骨格を有する化合物であることが特に好ましく、分子内に1つのトリアジン骨格を有する化合物であることが極めて好ましい。これらの中でも、高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性のさらなる向上の観点から、分子内に1つのトリアジン骨格を有する低極性のトリアジン系化合物であることが極めて好ましい。なお、分子内に1つのトリアジン骨格を有する低極性のトリアジン系化合物としては、特に制限されないが、低極性のヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系化合物であることがより好ましく、上記例示化合物18であることがさらに好ましい。
【0178】
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる紫外線吸収剤の分子量は、偏光板の異形打抜き時の故障の低減、および高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性の向上の観点から、250以上1,000未満であることが好ましい。これらの範囲の中でも、紫外線吸収剤の分子量は、高温下での経時後の偏光子保護フィルムと偏光子との接着性のさらなる向上の観点から、300以上1,000未満であることがより好ましく、500以上1,000未満であることがさらに好ましく、800以上1,000未満であることが特に好ましい。なお、紫外線吸収剤の分子量は、高分子型紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤については、原子量の総和から算出した値であり、高分子型紫外線吸収剤については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めた重量平均分子量である。
【0179】
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる紫外線吸収剤は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0180】
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる紫外線吸収剤の含有量の下限は、シクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマー100質量部に対し、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。この範囲であると、紫外線カット能がより向上する。また、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。さらに、高温下での経時後において、これらのフィルムと偏光子との接着性がより向上する。また、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれる紫外線吸収剤の含有量の上限は、シクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマー100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。この範囲であると、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。さらに、高温下での経時後において、これらのフィルムと偏光子との接着性がより向上する。
【0181】
[微粒子]
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、微粒子(マット剤)を含有してもよい。微粒子は、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの表面に滑り性等を付与する作用を有する。微粒子は、無機化合物で構成されてもよいし、樹脂で構成されてもよい。微粒子としては、フィルムの濁度を低くしうる点で、二酸化ケイ素の微粒子が好ましい。
【0182】
二酸化ケイ素の微粒子としては、市販品を用いることができる。市販品としては、日本アエロジル製 アエロジル(登録商標)R972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600等が挙げられる。
【0183】
微粒子の含有量の上限は、シクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマー100質量部に対し、0.01~2質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましく、0.1~0.5質量部であることがさらに好ましい。
【0184】
[他の添加剤]
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば特開平9-221577号公報、特開平10-287732号公報に記載されている特定の炭化水素系樹脂、公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、ゴム粒子等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0185】
[厚み]
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの厚みの下限は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、紫外線カット能がより向上する。また、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。また、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの厚みの上限は、500μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、110μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。この範囲であると、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックの低減効果が良好に発揮され、かつさらなる薄膜化が実現される。
【0186】
[位相差フィルム]
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、位相差フィルムであってもよい。
【0187】
位相差フィルムは、特に制限されないが、以下の(a)または(b)で表されるリターデーション条件を満たすことが好ましい。なお、位相差フィルムのリターデーションRoおよびRthは、それぞれ以下の式で定義される。
【0188】
式(I) Ro=(nx-ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
(但し、nxは、フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表し、nyは、フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し、nzは、フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し、d(nm)はフィルムの厚みを表す)。
【0189】
(a)位相差フィルムのリターデーションは、23℃・55%RHの条件下、波長590nmで測定される面内方向のリターデーションRo(590)は20~100nmであることが好ましく、厚み方向のリターデーションRth(590)は70~300nmであることが好ましい。リターデーションが上記範囲である保護フィルムは、例えばVA型液晶セル等の位相差フィルムとして適している。
【0190】
位相差フィルムの、23℃、55%RHの環境下、波長590nmの光に対する面内リターデーションRoおよび厚み方向のリターデーションRthは、以下の方法により測定することができる:
1)位相差フィルムを、23℃、55%RHで調湿する。調湿後の位相差フィルムの平均屈折率をアッベ屈折計などで測定する;
2)調湿後の位相差フィルムに、当該フィルム表面の法線に平行に測定波長590nmの光を入射させたときのRoを、KOBRA-21DH(王子計測機器株式会社製)にて測定する;
3)KOBRA-21ADHにより、位相差フィルムの面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、当該フィルムの表面の法線に対してθの角度(入射角(θ))から測定波長590nmの光を入射させたときのリターデーション値R(θ)を測定する。リターデーション値R(θ)の測定は、θが0~50°の範囲で、10°毎に6点行うことができる。面内遅相軸とは、フィルム面内のうち屈折率が最大となる軸をいい、KOBRA-21ADHにより確認することができる;
4)測定されたRoおよびR(θ)と、前述の平均屈折率とフィルムの厚みとから、KOBRA-21ADHにより、nx、nyおよびnzを算出して、測定波長590nmでのRthを算出する。リターデーションの測定は、23℃、55%RH条件下で行うことができる。
【0191】
(b)位相差フィルムのリターデーションは、面内方向のリターデーションRoが実質的にλ/4とすることが好ましい。本明細書において、フィルムの面内方向のリターデーションRoが実質的にλ/4であるとは、23℃、55%RHの条件下、波長550nmで測定される面内方向のリターデーションRo(550)が120~180nmの範囲内であることを意味する。
【0192】
また、フィルムの面内方向のリターデーションRoが実質的にλ/4であるとき、位相差フィルムは、23℃、55%RHの条件下、波長550nmで測定される面内方向のリターデーションRo(550)に対する、波長450nmで測定される面内方向のリターデーションRo(450)の比の値(Ro(450)/Ro(550))が0.72~1.05の範囲内であることが好ましい。また、位相差フィルムは、23℃、55%RHの条件下、波長650nmで測定される面内方向のリターデーションRo(650)に対する、波長550nmで測定される面内方向のリターデーションRo(550)の比の値(Ro(550)/Ro(650))が0.83~1.05の範囲内であることが好ましい。
【0193】
位相差フィルムの、23℃、55%RHの環境下、波長450nm、波長550nmおよび波長650nmの光に対する面内方向のリターデーションRoは、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて各波長での複屈折率測定を行うことによって測定することができる。
【0194】
面内方向のリターデーションRoが実質的にλ/4である位相差フィルムは、λ/4位相差フィルムとして用いることができる。λ/4位相差フィルムとは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に、または、円偏光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムをいう。
【0195】
λ/4位相差フィルムの面内の遅相軸と、偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層することにより、円偏光板が得られる。本明細書において、「実質的に45°」とは、45±5°の範囲内であることを意味する。λ/4位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41~49°の範囲内であることが好ましく、42~48°の範囲内であることがより好ましく、43~47°の範囲内であることがさらに好ましく、44~46°の範囲内であることが特に好ましい。
【0196】
なお、上記(a)および上記(b)の位相差は、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムに含まれるシクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマーの種類、添加剤の種類および含有量、延伸方法、延伸倍率および延伸倍率等の延伸条件、ならびにフィルムの厚み等により制御することができる。
【0197】
[機能層]
本発明の一形態に係る偏光板では、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、機能層を有していてもよい。なお、各機能層は、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの表面に直接設けられてもよく、他の機能層を介してシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム上に設けられてもよい。機能層としては、偏光板、偏光子保護フィルムにおいて一般的に設けられる層を適宜選択することができる。機能層としては、例えば、ハードコート層、易接着層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層、帯電防止層、シリコーン層、粘着層、防汚層、耐指紋層、撥水層、およびブルーカット層等が挙げられる。
【0198】
[シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの製造方法]
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。これらの中でも、溶液流延法または溶融流延法を用いることが好ましく、製造過程の揮発や分解による紫外線吸収剤の減少量が少なくなるとの観点から、溶液流延法を用いることがより好ましい。溶液流延法で製造されたシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムにおいては、紫外線カット能がより向上する。また、当該フィルムにおいては、異形打抜き時に偏光板面内の一部において、偏光子保護フィルム、特にシクロオレフィン樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムで発生するクラックがより低減される。さらに、当該フィルムにおいては、高温下での経時後において、これらのフィルムと偏光子との接着性がより向上する。
【0199】
溶液流延法は、シクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマー、紫外線吸収剤および任意に添加されうる他の添加剤を溶解した溶液を基体上に流延し、基体上で乾燥した後に膜状物(ウェブ)を剥離し、剥離後さらにウェブを乾燥してフィルムを形成する方法である。溶融流延法は、シクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマー、紫外線吸収剤および任意に添加されうる他の添加剤を含む樹脂組成物を加熱溶融して基体上に流延し、冷却固化してフィルムを形成する方法である。これらの製造方法においては、製膜中または製膜後に、必要に応じて延伸を行ってもよい。
【0200】
以下では、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの好ましい製造方法である溶液流延法について詳細に説明するが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0201】
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの溶液流延法による製造方法は、製膜中の乾燥過程で延伸する工程、または製膜後に巻き取られたフィルム(フィルム原反)を巻き出した後、延伸する工程を有することがより好ましい。
【0202】
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、
1)前述の各成分を溶剤に溶解させてドープ液を調製する工程、
2)ドープ液を無端の基体上に流延する工程、
3)流延したドープを乾燥した後、剥離して膜状物(ウェブ)を得る工程、
4)ウェブを乾燥および必要に応じて延伸する工程(フィルム乾燥工程)、
を経て製造されることが好ましい。
【0203】
さらに、上記4)の後に、任意に、
5)製膜後に巻き取られたフィルム原反を巻き出した後に延伸(以下、「製膜後延伸」とも称する)する工程(製膜後延伸工程)、
を有していてもよい。
【0204】
上記1)の工程で用いられる溶剤としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶剤;トルエン、キシレン、ベンゼン、およびこれらの混合溶剤などの芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール(n-プロパノール、イソプロパノール)、ブタノール(n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール)などのアルコール系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。
【0205】
溶液流延法では、ドープ中のシクロオレフィンポリマーまたは(メタ)アクリルポリマーの濃度は、濃度が高い方が基体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、濃度が高すぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10~35質量%が好ましく、より好ましくは15~35質量%である。流延(キャスト)工程における基体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールベルト(ステンレスベルト)または鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましい例として挙げられる。
【0206】
流延時のドープ温度は、ドープが流延可能な程度の流動性を有し、かつドープ中の溶剤が沸点以下であることが好ましい。ドープ温度は、使用する溶剤にもよるが、一般的には、0~35℃であることが好ましく、20~35℃であることがより好ましい。
【0207】
キャストの幅は1~4mの範囲内とすることができる。流延工程の基体の表面温度は-50℃から溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましい。またこの温度範囲内であると、ウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする懸念がない。
【0208】
好ましい基体温度としては0~100℃の範囲内で適宜決定され、5~30℃の範囲内がより好ましい。または、基体を冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶剤を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。基体の温度を制御する方法は、特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を基体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方法は、熱の伝達が効率的に行われるため、基体の温度が一定になるまでの時間が短いとの観点から好ましい。また、温風を用いる場合は溶剤の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶剤の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。この場合、流延から剥離するまでの間で基体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0209】
シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムが良好な平面性を示すとの観点から、基体からウェブを剥離する際の残留溶剤量は、好ましくは10~150質量%の範囲内、より好ましくは20~40質量%または60~130質量%の範囲内、さらに好ましくは20~30質量%または70~120質量%の範囲内である。
【0210】
残留溶剤量は下記式で定義される;
残留溶剤量(質量%)={(M-N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0211】
乾燥工程においては、ウェブを基体より剥離し、さらに乾燥することで、得られるシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの残留溶剤量を減少させることが好ましい。シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの残留溶剤量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0~0.01質量%の範囲内である。
【0212】
フィルム乾燥工程では、特に制限されないが、一般には、ローラー乾燥方式(上下に配置した多数のローラーにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンターでウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0213】
フィルム乾燥工程においてウェブを延伸する場合、延伸開始時のウェブの残留溶媒は、ヘイズの上昇を抑制するとの観点から、好ましくは10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。延伸開始時の残留溶媒を10質量%以下に保持する方法としては、流延したドープを基体から剥離し、搬送する過程において前記乾燥工程を設け溶媒を蒸発させる方法が好ましい。
【0214】
ウェブを延伸する方法は、特に限定されず、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、テンターにより膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔をMD方向(搬送方向)に広げて延伸する方法、テンターによりウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔をTD方向(搬送方向に対して垂直な方向)に広げて延伸する方法、クリップやピンの間隔をMD方向およびTD方向(搬送方向に対して垂直な方向)に同時に広げて延伸する方法等を単独または組み合わせて採用することができる。これらの中でも、TD方向の延伸は、テンターによって行うことが好ましい。テンターの種類は、ピンテンターであってもクリップテンターであってもよい。すなわち、TD方向に延伸してもよく、MD方向に延伸してもよく、または両方向に延伸してもよい。さらに両方向に延伸する場合は、同時延伸であってもよく、逐次延伸であってもよい。
【0215】
いわゆるテンター方式の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0216】
延伸工程では、TD方向またはMD方向における、延伸率がより大きな方向の延伸率は、好ましくは1~100%(1.01~2.00倍)、より好ましくは5~80%(1.05~1.80倍)、さらに好ましくは12~60%(1.12倍~1.60倍)の範囲内としうる。例えば、互いに直交する2軸方向に延伸する場合、搬送方向(MD方向)に、好ましくは0~100%(1.00~2.00倍)、より好ましくは0~60%(1.00~1.60倍)、幅方向(TD方向)に好ましくは5~70%(1.05~1.70倍)、より好ましくは10~70%(1.10~1.70倍)としうる。延伸率(%)は、下記式で定義される。ここで、上記(a)に記載の位相差を有する位相差フィルムを製造する場合、幅方向(TD方向)に20~70%(1.20~1.70倍)とすることが好ましい。
【0217】
延伸率(%)={(延伸後のフィルムの(延伸方向)長さ-延伸前のフィルムの(延伸方向)長さ)/延伸前のフィルムの(延伸方向)長さ)}×100
延伸温度は、120~180℃、好ましくは140~180℃、より好ましくは145~165℃の範囲内としうる。
【0218】
また、フィルム乾燥工程における延伸方法としては、斜め延伸可能なテンターを用いた斜め延伸を行っていてもよい。
【0219】
なお、フィルム乾燥工程および製膜後延伸工程における斜め延伸方法については、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、特開2016-212146号公報の段落0110~0124等に記載の方法等を、適宜変更を加えた上で採用することができるが、斜め延伸方法はこれに限定されるものではない。
【0220】
フィルム乾燥工程によってウェブを乾燥することで、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムが得られる。
【0221】
製膜後のシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは巻き取られ、ロール状(フィルムロール)とされることが好ましい。
【0222】
溶液流延法におけるその他の工程については、公知の溶液流延法に含まれうる種々の工程を適宜採用することができる。例えば、特開2012-48214号公報の段落0109~0140と同様の工程等を採用することができるが、その他の工程はこれに限定されるものではない。
【0223】
溶融流延法については、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、特許第5509515号公報の段落0111~0116に記載の方法や、特開2016-153839号公報の段落0224~0230等に記載の方法等を、適宜変更を加えて上で採用することができる。ただし、適用しうる溶融流延方法はこれらに限定されるものではない。
【0224】
また、前述の溶液流延法または溶融流延法等によって製膜され、巻き取られたフィルム原反を巻き出した後、延伸(製膜後延伸)する工程を経て、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムが製造されてもよい。
【0225】
製膜後の延伸方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、前述の溶液流延法におけるフィルム乾燥工程で説明した延伸と同様の方法を好ましく用いることができる。この際、製膜後の延伸方法の詳細は、前述のフィルム乾燥工程において、延伸開始時の残留溶剤量を乾燥工程後の残留溶剤量へと、また前述のウェブをフィルム原反へと読み替えることで説明することができる。また、製膜後の延伸における延伸温度は、特に制限されないが、シクロオレフィンポリマーまたはアクリルポリマーのガラス転移温度Tgに対して、予熱ゾーンの温度はTg~(Tg+30)℃の範囲内で、延伸ゾーンの温度はTg~(Tg+30)℃の範囲内で、冷却ゾーンの温度は(Tg-30)~Tg℃の範囲内でそれぞれ設定することが好ましい。
【0226】
(偏光子)
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光フィルム(偏光子)である。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
【0227】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。また、これらを組み合わせて作製したフィルムであってもよい。一軸延伸の総延伸率は、特に制限されないが、例えば、5~10倍であることが好ましい。また、偏光子の吸収軸は、特に制限されないが、フィルムの長尺方向と垂直であること、またはフィルムの延伸方向と平行であることが好ましい。
【0228】
ポリビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコールや、変性ポリビニルアルコールを用いることができる。
【0229】
ポリビニルアルコール系フィルムとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、株式会社クラレ製 クラレビニロン PE3000、PE6600等を用いることができる。
【0230】
変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限されないが、例えば、特開2003-248123号公報、特開2003-342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1~4モル%、重合度2000~4000、ケン化度99.0~99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコール等が用いられる。中でも、熱水切断温度が66~73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
【0231】
偏光子の厚みは、特に制限されないが、5~30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化する等の観点から、10~20μmであることがより好ましい。
【0232】
偏光子の製造方法については、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、特開2014-010207号公報の段落0133~0134等に記載の方法等を、適宜変更を加えた上で採用することができるが、偏光子の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0233】
<偏光板の製造方法>
本発明の一形態に係る偏光板は、一般的な方法で製造することができる。
【0234】
偏光板は、前述のハードコート層付きポリエステル樹脂フィルム、および前述のシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムと、偏光子とを貼合することで製造される。当該貼合は、これらのフィルムが機能層をさらに有する場合は、当該機能層表面と偏光子表面とが貼合されることで行われてもよい。すなわち、本発明の一形態に係る偏光板においては、ポリエステル樹脂フィルム、およびシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムは、それぞれ偏光子の異なる面を保護する2枚の偏光子保護フィルムとして用いられることとなる。
【0235】
偏光板の製造方法としては、特に制限されず公知の方法を適用することができる。偏光板の製造に当たって、ポリエステル樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムと偏光子とは、ポリエステル樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムもしくはアクリル樹脂フィルム、またはこれらが有する機能層に対してコロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ鹸化処理などの公知の表面処理を行い、公知の接着剤を用いて貼合することができる。
【0236】
なお、表面処理については、ポリエステル樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの偏光子との貼合面側に、これらのフィルム表面に1層または2層以上の機能層、例えば易接着層や他の機能層が形成されている場合は、これらの機能層の最表面に表面処理を行えばよい。
【0237】
コロナ放電処理は、公知の方法を適宜採用することができる。コロナ放電処理は、例えば、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行うことが好ましい。コロナ処理によって、フィルムの表面に酸素含有極性基(ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。コロナ放電処理は、春日電機株式会社製や株式会社トーヨー電機製の市販されている装置を用いて行うことができる。ただし、コロナ放電処理は上記の方法および条件に限定されるものではない。
【0238】
ポリエステル樹脂フィルムのハードコート層が形成されていない側の面およびシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの一方の面と、偏光子とは、ポリビニルアルコール水溶液(水糊)または活性エネルギー線硬化性接着剤等の公知の接着剤によって貼合されていることが好ましい。これらの接着剤の中でも、ポリビニルアルコール水溶液(水糊)を用いることが好ましい。ポリビニルアルコール水溶液(水糊)としては、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)であることが好ましい。ポリビニルアルコール水溶液(水糊)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、株式会社クラレ製 PVA-117H等が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂フィルム、またはシクロオレフィン樹脂フィルムもしくはアクリル樹脂フィルムの偏光子との貼合面側に、機能層(例えば、易接着層や他の機能層)が形成されている場合は、これらの機能層の最表面と偏光子とを接着剤によって貼合すればよい。
【0239】
本発明の一形態に係る偏光板は、異形パネルまたはフリーフォームディスプレイ(FFD)と称される自由な形状を有する表示装置に好適に用いることができる。これより、本発明の一形態に係る偏光板は、従来の正方形、長方形の形状のみではなく、本発明の効果をより発揮できるという観点から、自由な形状で異形に裁断されることが好ましい。異形の裁断形状としては、特に制限されないが、例えば、円径、楕円形、または
図1に示すような異形パネルの形状が挙げられる。ただし、本発明の一形態に係る偏光板の形状はこれに限定されるものではない。
【0240】
<表示装置>
本発明の他の一形態は、本発明の一形態に係る偏光板を具備する、表示装置である。
【0241】
本発明の一形態に係る偏光板は、表示装置に用いられることが好ましく、異形パネルまたはフリーフォームディスプレイ(FFD)と称される自由な形状を有する表示装置に用いられることがより好ましい。
図1には、本発明の一形態に係る偏光板が適用されうる、異形パネルの一例を示す模式図を示す。
【0242】
また、本発明の一形態に係る偏光板の用途としては、特に制限されないが、偏光子保護フィルムが優れた耐水性を有することから、過酷な条件下で使用される車載用途等の表示装置に用いられることが好ましい。表示装置としては、特に制限されないが、有機EL素子または液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置であることがより好ましい。なお、一般的な透過型液晶表示装置では、液晶表示装置は、透明基板と他方の透明基板との間に液晶が挟持されている液晶セルを有する。本発明の一形態に係る偏光板は、これらの透明基板の少なくとも一方の外側に、直接、または他の部材を介して配置されることが好ましい。
【0243】
表示装置においては、本発明の一形態に係る偏光板の、シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム側の面が偏光子に対して表示パネル(液晶セル、OLEDセル)側に、ハードコート層付きポリエステルフィルムが偏光子に対して表示パネル(液晶セル、OLEDセル)とは反対側にそれぞれ向くよう配置されることが好ましい。
【0244】
本発明の一形態に係る偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明の一形態に係る偏光板は、反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に波長分散性に優れている為、MVA型液晶表示装置、IPS型液晶表示装置に用いられ、顕著な効果が認められる。
【0245】
また、本発明の一形態に係る偏光板は、タッチパネルを備えた画像表示装置や、プラズマディスプレイ等の画像表示装置等の保護フィルムとしても好ましく用いることができる。
【0246】
ただし、本発明の一形態に係る偏光板が適用されうる対象はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0247】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0248】
<ポリエステル樹脂フィルムの製造>
(ポリエステル樹脂フィルムP1)
[ポリエステル樹脂(A)の調製]
エステル化反応容器を昇温して、200℃で、テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコールを64.6質量部投入し、加熱撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を投入した。ゲージ圧が0.34MPa、温度が240℃の条件下で加圧エステル化反応を行った。次いで、エステル化反応容器を常圧に戻して、リン酸を0.014質量部添加した。さらに、15分で260℃まで昇温し、リン酸トリメチルを0.012質量部添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらに15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送して、280℃で減圧下重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、日本精線株式会社製のナスロン(登録商標)フィルターNF-05Sで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った後、冷却水を用いて冷却、固化させて、樹脂をペレット状にカットした。得られたポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)(A)は、不活性粒子および内部析出粒子を実質上含有していなかった(以後、PET(A)とも称する)。
【0249】
[易接着層塗布液の調製]
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行い、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸を46モル%、イソフタル酸を46モル%および5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%を用い、ジオール成分として(ジオール成分全体に対して)エチレングリコールを50モル%およびネオペンチルグリコールを50モル%含む、水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。
【0250】
次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n-ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に到達した後、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を5質量部加えて、樹脂の固まりが無くなるまで加熱撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度が5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた。上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.5質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、易接着層塗布液を調製した。
【0251】
[ポリエステル樹脂フィルムの製造]
上記調製したポリエステル樹脂(A)を常法により乾燥して押出機に供給し、285℃で溶融し、このポリマーをステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過して、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化して、未延伸のポリエステル樹脂フィルム(PETフィルム)を製造した。
【0252】
次いで、リバースロール法によりこの未延伸のPETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記調製した易接着層塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0253】
この易接着層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の加熱ゾーンで、幅方向に1.5倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を維持した保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理をして、フィルム厚みがPETフィルム単体で70μmであり、各易接着層の厚みがそれぞれ1μm以下である一軸配向PETフィルムを製造した。このフィルムをポリエステル樹脂フィルムP1とした。
【0254】
ポリエステル樹脂フィルムP1の23℃、55%RHの環境下、波長590nmの光に対する面内方向のリターデーションRo(590)を、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて測定したところ、Ro=790nmであった。
【0255】
(ポリエステル樹脂フィルムP2)
ポリエステル樹脂フィルムP1の製造において、最終的に得られるフィルム厚みがPETフィルム単体で25μmとなるよう、未延伸のポリエステル樹脂フィルム(PETフィルム)の製造における押し出し条件を変更した以外は同様にして、一軸配向PETフィルムを製造した。このフィルムをポリエステル樹脂フィルムP2とした。ここで、各易接着層の厚みはそれぞれ1μm以下であった。
【0256】
ポリエステル樹脂フィルムP2の23℃、55%RHの環境下、波長590nmの光に対する面内方向のリターデーションRo(590)を、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて測定したところ、Ro=290nmであった。
【0257】
(ポリエステル樹脂フィルムP3)
[ポリエステル樹脂(B)の調製]
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、樹脂をペレット状にカットした。得られたポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)(B)は、不活性粒子および内部析出粒子を実質上含有していなかった(以後、PET(B)とも称する)。
【0258】
[ポリエステル樹脂(C)の調製]
乾燥させた紫外線吸収剤2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン 10質量部、粒子を含有しないPET(B)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤を含有するポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物)(C)を得た(以後、PET(C)とも称する)。
【0259】
[ポリエステル樹脂フィルムの製造]
3層構成の基材フィルムを製造した。具体的には、基材フィルムの中間層用原料として、粒子を含有しないPET(B)樹脂ペレット90質量部と、紫外線吸収剤を含有したPET(C)樹脂ペレット10質量部とを、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、285℃で溶解した。また、基材フィルムの外層用原料として、PET(B)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III層用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを製造した。この時、I層、II層、III層の厚みの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調製した。
【0260】
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、ポリエステル樹脂フィルムP1の調製における易接着層塗布液の調製と同様にして調製した易接着塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0261】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、次いで、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。続いて、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行うことで、フィルム厚みがPETフィルム単体で70μmであり、各易接着層の厚みがそれぞれ1μm以下である一軸配向PETフィルムを製造した。このフィルムをポリエステル樹脂フィルムP3とした。
【0262】
<ハードコート層の形成>
(ハードコート層塗布液HC1の調製)
アンチモンドープ酸化錫の20質量%変性アルコール分散液(日揮触媒化成株式会社製、ELCOM NY-1019ATV)50質量部、紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製 Tinuvin(登録商標)1130)1質量部、ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製、UV-7600B)100質量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、イルガキュア(登録商標)819)3.8質量部およびメチルアルコール(メタノール)75質量部を攪拌混合し、ハードコート層塗布液HC1を得た。
【0263】
(ハードコート層塗布液HC2~7の調製)
ハードコート層塗布液HC1の調製において、紫外線吸収剤の有無、紫外線吸収剤の種類または紫外線吸収剤の添加量を下記表1のように変更した以外は同様にして、ハードコート層塗布液HC2~7を調製した。
【0264】
なお、下記表1に記載の各ハードコート層に含まれる各紫外線吸収剤の詳細を以下に示す;
・「Ti1130」:BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標)1130、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物;
・「Ti928」:BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標)928、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;
・「UVA5080」:新中村化学工業株式会社製、バナレジンUVA-5080、メタクリル酸メチル-ベンゾトリアゾール構造を含む部分構造を側鎖に有するメタクリル酸エステル共重合体、固形分濃度41質量%;
・「JF-80」:城北化学工業株式会社製、JF-80、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジーtert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール。
【0265】
(ハードコート層の形成)
下記表1に示すポリエステル樹脂フィルムとハードコート層塗布液との組み合わせについて、上記で得られた各ポリエステル樹脂フィルム上に、上記で得られた各ハードコート層塗布液をスリットリバースコートにより、乾燥後の厚みが下記表1に記載の値となるよう塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を80℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量300mJ/cm2で紫外線を照射して塗膜を硬化させることで、各ポリエステル樹脂フィルム上に各ハードコート塗布液から得られたハードコート層を形成した。このようにして、各ハードコート層付きポリエステル樹脂フィルムを製造した。
【0266】
<シクロオレフィン樹脂フィルムおよびアクリル樹脂フィルムの製造>
(シクロオレフィン樹脂フィルムC1)
[微粒子分散液の調製]
11.3質量部の微粒子(アエロジル(登録商標)R812、日本アエロジル株式会社製)と、84質量部のエタノールとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散した。
【0267】
溶解タンク中の十分攪拌されているメチレンクロライド(100質量部)に、5質量部の微粒子分散液を、ゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線株式会社製のファインメットNFでろ過し、微粒子添加液を調製した。
【0268】
[主ドープの調製]
下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにジクロロメタンとエタノールを添加した。ジクロロメタンとエタノールの混合溶液の入った加圧溶解タンクに、下記シクロオレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー)と、紫外線吸収剤と、微粒子添加液とを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら完全に溶解し、これを安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244を使用してろ過し、主ドープを調製した。
【0269】
シクロオレフィン樹脂(ARTON(登録商標) F4520、JSR株式会社製) 100質量部、
ジクロロメタン 200質量部、
エタノール 10質量部、
紫外線吸収剤(Tinuvin(登録商標) 477、BASFジャパン株式会社製) 5質量部、
上記調製した微粒子添加液 3質量部。
【0270】
なお、ARTON(登録商標) F4520は、下記構造の構造単位を有する重合体である。
【0271】
【0272】
[シクロオレフィン樹脂フィルムの製造]
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したドープ中の残留溶剤量が30質量%になるまで溶剤を蒸発させた。次いで、剥離張力128N/mで、ステンレスベルト支持体上から膜状物(ウェブ)を剥離した。剥離したウェブを、160℃の条件下で幅方向に1.15倍延伸した。延伸開始時のウェブの残留溶剤は5質量%であった。続いて、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながらウェブの乾燥を終了させ、テンタークリップで挟んだウェブの端部をレーザーカッターでスリットし、その後、乾燥後のウェブを巻き取って、厚み20μmのシクロオレフィン樹脂フィルムC1を製造した。
【0273】
(シクロオレフィン樹脂フィルムC2~5、9および10)
シクロオレフィン樹脂フィルムC1の製造において、紫外線吸収剤の有無、紫外線吸収剤の種類、フィルムの厚みを下記表1のように変更した以外は同様にして、シクロオレフィン樹脂フィルムC2~5、9および10を製造した。
【0274】
ここで、シクロオレフィン樹脂フィルムC9の製造において、フィルムの厚みは、目的の巻き取り後の厚みが60μmとなるように流延条件を変更することで変更した。
【0275】
なお、表1に記載の各シクロオレフィン樹脂フィルムに含まれる各紫外線吸収剤の詳細を以下に示す;
・「Ti477」:BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標) 477、上記化学式18で表される紫外線吸収剤);
・「3049」:BASF社製、Uvinul(登録商標) 3049、2,2-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン;
・「Ti928」:BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標) 928、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;
・JF-80:城北化学工業株式会社製、JF-80、2-(2’-ヒドロキシー3’,5’-ジーtert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール;
・「化学式17」:下記の化学式17で表される紫外線吸収剤
【0276】
【0277】
(シクロオレフィン樹脂フィルムC6)
シクロオレフィン樹脂フィルムC1の製造において、膜状物(ウェブ)を剥離後、剥離したフィルム原反を、160~190℃の条件下で、特開2016-212146号公報の段落0110~0124に記載の斜め延伸方法に準じて、当該文献の
図2(A)に示したテンターを用いて、延伸の方向を長手方向に対して45度の方向で斜め延伸した。この際、当該延伸条件を経て製膜されたフィルムの巻き取り後の厚みが20μmとなるよう、流延条件の変更を行い、延伸倍率を決定した。その他はシクロオレフィン樹脂フィルムC1の製造と同様にして、20μmであるシクロオレフィン樹脂フィルムC6を製造した。
【0278】
シクロオレフィン樹脂フィルムC6について、23℃、55%RHの環境下、波長550nmの光に対する面内リターデーションRoを、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて測定したところ、面内方向のリターデーションRo(550)が90~120nmであり、Rth(550)が60~90nmであった。
【0279】
(シクロオレフィン樹脂フィルムC7)
シクロオレフィン樹脂フィルムC1の製造において、160℃の条件下での延伸倍率を1.20倍へと変更し、当該延伸条件を経て製膜されたフィルムの巻き取り後の厚みが20μmとなるよう流延条件を変更した以外は同様にして、シクロオレフィン樹脂フィルムC7を製造した。
【0280】
シクロオレフィン樹脂フィルムC7について、アッベ屈折率系で平均屈折率を測定し、KOBRA-21DH、王子計測機器株式会社にて590nmのけるRoおよびRthを測定したところ、Ro(590)=30~60nm、Rth(590)=100~140nmであった。
【0281】
(シクロオレフィン樹脂フィルムC8)
[シクロオレフィンポリマーの調製]
エチレン雰囲気下、容量1.6Lのオートクレーブにノルボルネン濃度が20mol/Lで、総液量が640mLとなるよう、トルエンとフェニルノルボルネンとを入れた。次いで、メチルアルミノキサン(アルベマール社製、MAO20%トルエン溶液)をAl基準で5.88mmol、メチレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド1.5μmolを添加した。続いて、エチレンを導入して圧力を0.2MPaに保持しながら、80℃で60分間反応させた。反応終了後、放冷しながらエチレンを脱圧し、系内を窒素で置換した。その後、吸着水分量を10質量%に調整したシリカ(富士シリシア化学株式会社製、グレード:G-3粒径:50μm)を3.0g加えて1時間反応させた。そして、得られた反応液を濾紙(5C、90mm)とセライト(和光純薬工業株式会社)をセットした加圧ろ過器(アドバンテック東洋株式会社、型式KST-90-UH)に入れ、窒素で加圧ろ過して重合液を回収した。さらに、当該重合液を、5倍量のアセトン中に少量ずつ滴下して生成物を析出させることで、シクロオレフィンポリマー(シクロオレフィン樹脂)を得た。C1の重量平均分子量は142,000であり、またガラス転移温度は140℃であった。
【0282】
[シクロオレフィン樹脂フィルムの製造]
上記で調製したシクロオレフィンポリマーを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥して水分を除去した後に、シクロオレフィンポリマー100質量部に対して、紫外線吸収剤(Tinuvin(登録商標) 477、BASFジャパン株式会社製)を5質量部添加した。その後、この混合物を65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押し出し成形機(Tダイ幅500mm)を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイ温度240℃の成形条件にて押し出し成形して、厚みが20μmであるシクロオレフィン樹脂フィルムC8を製造した。
【0283】
(アクリル樹脂フィルムA1)
[ドープの調製]
下記の方法に従って、アクリル樹脂((メタ)アクリルポリマー)を含有するドープを調製した。下記の各添加剤を、攪拌および加熱しながら十分に溶解し、ドープを調製した。ドープの固形分濃度は、21質量%であった。
【0284】
アクリル樹脂(デルペット(登録商標) 80N 旭化成ケミカルズ株式会社製) 100質量部、
紫外線吸収剤(Tinuvin(登録商標) 477、BASFジャパン株式会社製) 5質量部、
有機溶媒(メチレンクロライド:メタノール:ブタノール=79:20:1(質量比)) 395質量部。
【0285】
なお、デルペット(登録商標)80Nは、Mw=100,000、Tg=114℃のMMA重合体である。
【0286】
[アクリル樹脂フィルムの製膜]
流延用支持体として無端ベルトを有する流延設備を用いて、下記の手順に従って、アクリル樹脂フィルムA1を作製した。まず、上記作製したドープを流延ダイに供給し、アクリル樹脂層単層から構成される流延膜を流延用金属支持体である無端ベルト上に供給した。ドープの供給量は、最終的に乾燥が完了した後の厚みが、20μmとなる条件とした。次いで、無端ベルト上に供給したドープを40℃の乾燥風により乾燥して、膜状物(ウェブ)を形成した後、無端ベルトより剥離した。次いで、ウェブの両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、さらに130℃でウェブを乾燥した。このとき、乾燥時間を適宜調整して、残留溶媒量を5質量%とした。続いて、ウェブを1m幅にスリットし、その後、ゾーン延伸で、延伸温度120℃で幅方向(TD方向)に1.5倍、搬送方向(MD方向)に2.0倍の倍率でテンター延伸をして、135℃の乾燥温度でウェブを乾燥させた。テンター延伸後に、130℃で5分間の緩和処理をウェブに施し、その後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながらウェブの乾燥を終了させた。そして、乾燥後のウェブを1.0m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施した後、コアに巻き取ることで、延伸処理を施したアクリル樹脂フィルムA1を製造した。
【0287】
<偏光板の作製>
[偏光子の製造]
重合度2,400、ケン化度99.9モル%、厚み60μm、幅3,300mmの長尺のポリビニルアルコールフィルム(株式会社クラレ製の商品名クラレビニロン PE3000)を原反フィルムとし、以下のように操作して偏光フィルム(偏光子)を作製した。延伸は、処理槽前後の駆動ニップロールに周速差をつけて行った。
【0288】
まず、原反フィルムが弛まないように搬送方向(流れ方向)の緊張状態を保ったまま、37℃の純水が入った膨潤槽に80秒間浸漬して、フィルムを十分に膨潤させた。膨潤に伴う膨潤槽の入口と出口のロール速度比は1.2であった。膨潤槽出口に設けたニップロールで水切りを行った後、30℃の純水が入った水浸漬槽に160秒間浸漬した。水浸漬槽でのフィルムの搬送方向の延伸倍率は1.04倍とした。次に、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水が重量比で0.04/1.5/100の水溶液が入った染色槽にフィルムを浸漬しつつ、延伸倍率約1.6倍で一軸延伸を行った。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で12/3.6/100の水溶液が入った第一のホウ酸槽に、温度56.5℃で130秒間浸漬して第一のホウ酸処理を施しつつ、原反からの積算延伸倍率が5.3倍になるまで一軸延伸を行った。さらに、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で12/1.5/100の水溶液が入った第二のホウ酸槽に温度30℃で60秒間浸漬して第二のホウ酸処理を行った。引き続き、10℃の純水が入った水洗槽に約16秒間浸漬して洗浄した後、約60℃の乾燥炉と約85℃の乾燥炉を順次通過させ、それら乾燥炉での滞留時間を合計160秒間として乾燥を行った。こうして、ヨウ素が吸着配向している厚み12μmの偏光子を得た。
【0289】
[偏光板の製造]
下記表1に示される組み合わせとして、上記得られた各シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム、および上記得られた各ハードコート層付きポリエステル樹脂フィルムをそれぞれ準備した。次いで、各シクロオレフィン樹脂フィルムおよびアクリル樹脂フィルムの一方の面、ならびに上記得られた各ハードコート層付きポリエステル樹脂フィルムのハードコート層が形成された面とは反対側の面にコロナ処理を施し、各フィルムのコロナ処理をされた面がそれぞれ上記偏光子と接するようにして貼り合わせた。この時、接着剤として、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製 PVA-117H)3質量%水溶液を使用した。また、貼り合わせる際には、ハードコート層付きポリエステル樹脂フィルム、ならびにシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムの長尺方向と、偏光子の長尺方向とが一致するように貼り合わせた。貼り合わせたフィルムを60℃の温風で5分乾燥させ、各偏光板を得た。
【0290】
ここで、ポリエステル樹脂フィルムP1~3の遅相軸はフィルムの長尺方向(MD方向、搬送方向と一致)と垂直な方向(TD方向、幅手方向と一致)であった。シクロオレフィン樹脂フィルムC1~5、C7、C9およびC10の遅相軸は、フィルムの長尺方向に対して垂直な方向であった。シクロオレフィン樹脂フィルムC6の遅相軸は、フィルムの長尺方向に対して45°方向であった。シクロオレフィン樹脂フィルムC8については、フィルム面内に明確な遅相軸を有していなかった。アクリル樹脂フィルムA1の遅相軸は、フィルムの長尺方向に対して平行な方向であった。また、偏光子の吸収軸方向は、偏光子の長尺方向と平行な方向であった。
【0291】
なお、下記表1に記載の分子量は、高分子型紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤については、原子量の総和より算出した値を記載した。ここで、BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標) 1130は混合物であるため、各成分の分子量と各成分の含有割合より求めた平均値を記載した。また、高分子型紫外線吸収剤の分子量については、下記の方法に従って測定した重量平均分子量(Mw)を記載した。
【0292】
〈重量平均分子量測定条件〉
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
【0293】
溶媒 テトラヒドロフラン、
装置名 TOSOH HLC-8220GPC、
カラム TOSOH TSKgel Super HZM-H(4.6mm×15cm)を3本接続して使用した、
カラム温度 25℃、
試料濃度 0.1質量%、
流速 0.35ml/min、
校正曲線 TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050までの7サンプルによる校正曲線を使用した。
【0294】
【0295】
【0296】
<偏光板の評価>
(異形打抜き性の評価)
上記で得られた各偏光板の片面に、粘着剤層および離型フィルムを積層させた。次いで、得られた粘着剤付き偏光板を
図1に示した車載メーターの形状の刃で異形打抜きして断裁した。なお、
図1においては、図形内部の2つの相対的小さな円の半径は、60mmであり、1つの相対的に大きな円の半径は70mmである。また、車載メーターの上部の凹んだカーブ部は、図形内部の2つの円と接すると想定した半径60mmの真円の外周に沿うものである。
【0297】
その後、異形打抜きして断裁した偏光板から離型フィルムを剥がし、その粘着剤側をコーニング社製の液晶セル用ガラス基板に貼合した。このようなサンプルを各偏光板につき10枚用意した。この状態でまず偏光子に破断が生じているか否かを光学顕微鏡にて確認し、クラックが発生しているサンプルの枚数をカウントした。以下の評価基準に基づき、クラックの発生した偏光板の枚数から異形打抜き性を評価した。評価結果としては、△以上であれば実用上問題ないレベルと判断した。
【0298】
◎: クラックの生じた枚数 0枚、
○: クラックの生じた枚数 1~2枚、
△: クラックの生じた枚数 3~5枚、
×: クラックの生じた枚数 6枚以上。
【0299】
(耐熱試験後の接着性評価)
上記で得られた各偏光板を90℃の恒温槽に100時間保存した後、23℃55%RHの環境下で24時間放置した。次いで、偏光板の偏光子とシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルムとの接着面、および偏光板の偏光子とポリエステル樹脂フィルムとの接着面を手で引き剥がしたときの、各フィルム中における材料破壊の発生の有無、および剥離の程度を目視観察して、以下の評価基準に従って接着性を評価した。なお、本評価では、接着面を手で引き剥がした際に、接着力が強いと剥離が生じず、接着力が弱いとフィルムと偏光子との界面に材料の破壊が生じずに剥離が生じ、接着力がこれらの中間である場合は、フィルムと偏光子との界面において材料破壊が生じる。評価結果としては、△以上であれば実用上問題ないレベルと判断した。
【0300】
◎:シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム、およびポリエステル樹脂フィルムが共に剥がれない;
○:シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム、およびポリエステル樹脂フィルムについて、共に、フィルムと偏光子との間の接着力に問題はなく、
フィルムを剥がそうとすると、下記(i)および(ii)のいずれかに該当する:
(i) これらの一方のフィルムが剥離せず、これらの他方のフィルムもしくは偏光子の少なくとも一方の端部の半分以上の部分に材料(基材)破壊が生じる、
(ii) これらの両方のフィルムもしくは偏光子の少なくとも一方の端部の半分以上の部分に材料(基材)破壊が生じる;
△:シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム、およびポリエステル樹脂フィルムについて、共に、フィルムと偏光子との間の接着力に問題はなく、
フィルムを剥がそうとすると、これらの一方のフィルムが下記(iii)~(v)のいずれかに該当し、かつ、これらの他方のフィルムまたは偏光子の少なくとも一方の端部の半分以下の部分に材料(基材)破壊が生じる:
(iii) 剥離しない、
(iv) フィルムもしくは偏光子の少なくとも一方の端部の半分以上の部分に材料(基材)破壊が生じる、
(v) フィルムもしくは偏光子の少なくとも一方の端部の半分以下の部分に材料(基材)破壊が生じる;
×:シクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム、およびポリエステル樹脂フィルムについて、少なくとも一方のフィルムと偏光子との間の接着力が不足しており、
シクロオレフィン樹脂フィルムもしくはアクリル樹脂フィルム、またはポリエステル樹脂フィルムの少なくとも一方について、フィルムと偏光子との界面の一部において材料破壊が生じずに剥がれる。
【0301】
(偏光子の退色の評価)
上記で得られた各偏光板について、強制劣化未処理試料の平行光透過率(H0)と直行光透過率(H90)を測定し、下式に従って偏光度P0(%)を算出した。その後、偏光板をサンシャインウェザーメーター500時間、UVカットフィルターなしの条件で強制劣化処理を施した後、再度、強制劣化処理後の平行光透過率(H0’)と直行光透過率(H90’)を測定し、下式に従って偏光度P500(%)を算出した。これらの結果から、下記式に従い、偏光度変化量(%)を算出した。ここで、偏光度変化量(%)が10%未満であれば、偏光板は良好な紫外線カット能を有しているものとする。
【0302】
[偏光度P0、P500および偏光度変化量の算出]
偏光度P0(%)=[(H0-H90)/(H0+H90)]1/2×100
偏光度P500(%)=[(H0’-H90’)/(H0’+H90’)]1/2×100
偏光度変化量(%)=P0-P500
偏光子の退色の評価結果としては、偏光板No.1~19、21および22は偏光度変化量が10%未満であり、偏光板No.20およびNo.23は偏光度変化量が25%以上であることを確認した。また、偏光板No.1~19、21および22の中の比較では、偏光板No.13よりも、偏光板No.1~12、14~19、21および22の方が、偏光度変化量がより小さいことを確認した。
【0303】
(光漏れ評価)
上記で得られた各偏光板を用い、下記の方法に従って、液晶表示装置を作製した。まず、液晶セルとして、対向する二枚の合計が0.1mmの厚みとなるガラス基板と、それらの間に配置された液晶層とを有するIPS方式、VA方式の液晶セルをそれぞれ準備した。次いで、各偏光板を、偏光板のシクロオレフィン樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム側が液晶セル側に配置されるよう、粘着剤を介して視認側の偏光板の偏光子の吸収軸と、バックライト側の偏光板の偏光子の吸収軸とが互いに直交するように液晶セルの両面に貼合することで、各偏光板を有するVA液晶表示装置、IPS液晶表示装置を得た。このようにして得られた各液晶表示装置を、60℃90%RHの環境で500時間保管し、その後、23℃55%RHの環境下で24時間放置した。そして、暗室にて、黒表示時の画面四隅からの光漏れによる表示ムラの発生の様子を目視観察した。
【0304】
光漏れ評価の結果としては、偏光板No.1~16で光漏れが確認されず、偏光板No.17~23で光漏れが確認された。
【0305】
異形打抜き性の評価および耐熱試験後の接着性評価の結果を下記表2に示す。
【0306】
【0307】
(偏光板の評価結果)
表2の結果から、本願発明に係る偏光板および参考例に係る偏光板No.1~16は異形打抜き性および耐熱試験後の接着性の両方に優れることが確認された。
【0308】
一方、本発明の技術的範囲に属さない偏光板No.17~23は、異形打抜き性および耐熱試験後の接着性が共に不十分であることが確認された。
【0309】
また、上記偏光子の退色の評価の結果から、本発明に係る偏光板および参考例に係る偏光板No.1~16は、優れた紫外線カット能を有することが確認された。これに対し、偏光板No.20およびNo.23では偏光度変化量が大きくなった。これは、偏光板No.20およびNo.23は、ハードコート層およびポリエステル樹脂フィルムに紫外線吸収剤が含まれていないことから、この面から偏光子へと紫外線が透過し、偏光子が劣化したものと推測している。
【0310】
さらに、光漏れ評価で作製した液晶表示装置について、60℃90%RHの環境で500時間保管する代わりに紫外線照射下での一定期間の放置を実施し、同様に暗室で観察を行った結果、偏光板No.20および偏光板No.23を使用した液晶表示装置(VA液晶表示装置、IPS液晶表示装置)でのみ光漏れが確認された。この際、特に偏光板No.23を使用した液晶表示装置での光漏れの程度が大きいことを確認した。これは、偏光板No.20およびNo.23は、ハードコート層およびポリエステル樹脂フィルムに紫外線吸収剤が含まれていないことから、この面から偏光子へと紫外線が透過し、偏光子が劣化したものと推測している。また、偏光板No.23は、シクロオレフィン樹脂フィルムにも紫外線吸収剤が含まれていないことから、液晶セルへと紫外線がさらに透過し、偏光子に加えて液晶セルも劣化したものと推測している。
【0311】
本出願は、2017年3月15日に出願された日本国特許出願番号2017-050563号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。
【符号の説明】
【0312】
1 偏光板
2 ハードコート層
3 ポリエステル樹脂フィルム
4 易接着層
5 偏光子
6 シクロオレフィン樹脂フィルム。