(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】把持装置、及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
B25J15/08 C
(21)【出願番号】P 2019537909
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2018014968
(87)【国際公開番号】W WO2019038982
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017160347
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 清文
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 国士
(72)【発明者】
【氏名】種田 豪
(72)【発明者】
【氏名】多喜 和希
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-023204(JP,A)
【文献】特開平11-096632(JP,A)
【文献】特開昭63-127836(JP,A)
【文献】特開2003-120777(JP,A)
【文献】実開昭60-007985(JP,U)
【文献】特開昭63-148654(JP,A)
【文献】米国特許第04696503(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 - 15/08
B23P 19/04
F16H 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の把持部材と、
一対の前記把持部材を支持し、且つ、一対の前記把持部材の対向方向に少なくとも一方の前記把持部材を移動可能に支持する支持部材と、
前記対向方向に沿って一対の前記把持部材が互いに近づく方向に前記少なくとも一方の前記把持部材を移動させるための移動部と、
前記対向方向と垂直な回転軸を中心にして回転可能であり、且つ、前記対向方向に沿って一対の前記把持部材が互いに離れる方向に前記少なくとも一方の前記把持部材を移動させるためのカムと、
前記カムを回転駆動するモータと、
を備え、
前記カムの前記対向方向における側面は、前記少なくとも一方の前記把持部材に接し、一対の前記把持部材間の間隔が、前記カムの回転に応じて変化
し、
前記少なくとも一方の前記把持部材は、前記カムが回転時に接する接触部を含み、
前記回転軸と平行な方向において、前記接触部の幅は、前記カムの前記対向方向における側面の幅以下である把持装置。
【請求項2】
前記回転軸と平行な方向から見て、前記カムは、長径及び短径を有する形状である請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記回転軸と平行な方向から見て、前記回転軸は、前記カムの中央位置からずれている請求項1又は請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記モータは、前記回転軸を中心に回転可能なシャフトを有し、
前記カムは、前記シャフトに連結される連結部を複数有し、
前記回転軸と平行な方向から見て、複数の前記連結部は、前記回転軸を中心として等間隔に設けられる請求項1~請求項3のいずれかに記載の把持装置。
【請求項5】
前記支持部材は、複数であって、前記回転軸及び前記対向方向と垂直な方向に並び、
前記カムは、前記支持部材間に位置する請求項1~請求項4のいずれかに記載の把持装置。
【請求項6】
前記把持部材は樹脂製である請求項1~請求項5のいずれかに記載の把持装置。
【請求項7】
前記カムの前記対向方向における側面は、一対の前記把持部材に接し、
一対の前記把持部材の各々の前記接触部は、前記対向方向において互いに対向する請求項
1に記載の把持装置。
【請求項8】
前記少なくとも一方の前記把持部材は、前記対向方向に凹む凹部を有し、
前記凹部は、前記接触部の前記回転軸と平行な方向における端部に設けられる請求項
1又は請求項
7に記載の把持装置。
【請求項9】
前記凹部は、第1凹部と、第2凹部と、を含み、
前記第1凹部は、前記接触部において、前記少なくとも一方の前記把持部材の前記回転軸と平行な方向の一方側における端部に設けられ、
前記第2凹部は、前記接触部において、前記少なくとも一方の前記把持部材の前記回転軸と平行な方向の他方側における端部に設けられ、
前記回転軸と平行な方向から見て前記第1凹部と重なる請求項
8に記載の把持装置。
【請求項10】
前記少なくとも一方の前記把持部材は、
前記接触部と、
対向する他の前記把持部材との間に物体を把持可能な部位と、
前記支持部材により移動可能に支持される部位と、
を含む単一の部材である
請求項1および請求項7~請求項
9のいずれかに記載の把持装置。
【請求項11】
一対の前記把持部材はそれぞれ、第1チャック部と、第2チャック部と、
を有し、
前記第1チャック部及び前記第2チャック部は、前記回転軸と平行な方向に並ぶ請求項1~請求項
10のいずれかに記載の把持装置。
【請求項12】
一対の前記把持部材はそれぞれ、第1チャック部と、第2チャック部と、
を有し、
前記第1チャック部及び前記第2チャック部は、前記回転軸と垂直な方向に並ぶ請求項1~請求項
10のいずれかに記載の把持装置。
【請求項13】
各々の前記把持部材は、前記支持部材により支持される部位から前記回転軸及び前記対向方向と垂直な方向に延びる請求項1~請求項
12のいずれかに記載の把持装置。
【請求項14】
各々の前記把持部材は、前記支持部材により支持される部位から前記回転軸と平行な方向に延びる請求項1~請求項
12のいずれかに記載の把持装置。
【請求項15】
前記支持部材が固定される筐体と、
前記モータに固定され且つ前記回転軸を中心にして回転可能に前記筐体を支持する筐体保持部と、
をさらに備え、
前記筐体及び前記筐体保持部のうちの一方は、前記回転軸を中心とする回転方向に延びる溝部を有し、
前記筐体及び前記筐体保持部のうちの他方は、前記回転軸と平行な方向に突出し且つ前記溝部内に配置される突起部を有し、
前記突起部が前記回転方向のうちの前記カムが回転する方向と同じ側における前記溝部の端部、又は前記溝部の前記回転方向における両端部間に位置する場合、一対の前記把持部材及び前記筐体が、前記カムとともに前記回転方向に回転し、
前記突起部が前記回転方向のうちの前記カムが回転する方向とは逆側における端部に位置する場合、少なくとも一方の前記把持部材が、前記対向方向に移動する請求項
14に記載の把持装置。
【請求項16】
一対の把持部材間に物体を把持可能な請求項1~請求項
15のいずれかに記載の把持装置と、
前記把持装置とともに前記物体を移動させるアーム部と、
前記アーム部を支持する基部と、
を備える搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置、及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体を把持可能な把持装置を備える搬送装置が知られている。たとえば、日本国公開公報特開2007-92967号公報は、工作機械等の先端部に取り付けられるチャック装置を開示している。該チャック装置では、一組のL字状のチャックの一端部がそれぞれピストンに装着されたピストンピンに係合され、チャックの折曲した中央部がそれぞれリンクピンに軸支されている。ピストンの軸線方向に沿った変位作用により、チャックがリンクピンを支点として回動する。この際、リンクピンに軸支された部位から下方に向かって延在しているチャックの他端部がそれぞれ、ピストンの変位作用下にて回動し、互いに接近・離間する。一組のチャックは、他端部が互いに接近する際にはワークを把持し、他端部が互いに離間する際にはワークの把持を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開公報:特開2007-92967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように一組のチャックの回動によりワークの把持及びその解除を行う機構では、たとえばワークの形状によってワークの把持状態が不安定になってしまう。
【0005】
本発明は、把持部材間での把持をより安定に行うことができる把持装置、及び搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な把持装置は、互いに対向する一対の把持部材と、一対の前記把持部を支持し、且つ、一対の前記把持部材の対向方向に少なくとも一方の前記把持部材を移動可能に支持する支持部材と、前記対向方向に沿って一対の前記把持部材が互いに近づく方向に前記少なくとも一方の前記把持部材を移動させるための移動部と、前記対向方向と垂直な回転軸を中心にして回転可能であり、且つ、前記対向方向に沿って一対の前記把持部材が互いに離れる方向に前記少なくとも一方の前記把持部材を移動させるためのカムと、前記カムを回転駆動するモータと、を備え、前記カムの前記対向方向における側面は、前記少なくとも一方の前記把持部材に接し、一対の前記把持部材間の間隔が、前記カムの回転に応じて変化する構成とされる。
【0007】
本発明の例示的な搬送装置は、一対の把持部材間に物体を把持可能な上記の把持装置と、前記把持装置とともに前記物体を移動させるアーム部と、前記アーム部を支持する基部と、を備える構成とされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例示的な把持装置、及び搬送装置によれば、把持部材間での把持をより安定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、搬送装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る把持装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る把持装置の断面図である。
【
図4A】
図4Aは、軸方向からみたカムの形状の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、軸方向からみたカムの形状の他の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る把持装置の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る把持装置の断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る突起部及び溝部の構成例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の第1変形例に係る把持装置の断面図である。
【
図9A】
図9Aは、カムの時計回りの回転によって、突起部が溝部の回転方向における両端部間に位置する場合での第2実施形態における把持装置を軸方向前側からみた図である。
【
図9B】
図9Bは、カムの時計回りの回転によって、突起部が溝部の逆時計回りの回転方向における端部に位置する場合での第2実施形態に係る把持装置を軸方向前側からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の例示的な実施形態を説明する。
【0011】
なお、本明細書では、搬送装置400の把持装置100において、後述する回転軸RAと平行な方向ADを「軸方向AD」と呼ぶ。軸方向ADにおいて、後述するモータ5から後述するカム4に向かう方向を軸方向ADの一方側として「軸方向前側」と呼び、カム4からモータ5に向かう方向を軸方向ADの他方側として「軸方向後側」と呼ぶ。各々の構成要素において、軸方向前側における端部を「前端部」と呼び、軸方向後側における端部を「後端部」と呼ぶ。また、各々の構成要素において、軸方向前側を向く面を「前面」と呼び、軸方向後側を向く面を「背面」と呼ぶ。
【0012】
把持装置100において、後述する一対の把持部材1が互いに対向し合う方向ODを「対向方向OD」と呼ぶ。言い換えると、対向方向ODは、一対の把持部材1のうちの一方と他方とを通る直線と平行な方向ODであり、たとえば後述する
図2及び
図5では左側の把持部材1と右側の把持部材1とを通る直線と平行な方向ODである。また、対向方向ODに沿って一対の把持部材1が互いに近づく方向を「接近方向」と呼び、対向方向ODに沿って一対の把持部材1が互いに離れる方向を「離間方向」と呼ぶ。たとえば、
図2及び
図5の左側の把持部材1及びその構成要素において、近接方向は左側の把持部材1から右側の把持部材1に向かう方向であり、離間方向は右側の把持部材1から左側の把持部材1に向かう方向である。また、
図2及び
図5の右側の把持部材1及びその構成要素において、近接方向は右側の把持部材1から左側の把持部材1に向かう方向であり、離間方向は左側の把持部材1から右側の把持部材1に向かう方向である。対向方向ODは、接近方向と離間方向とを含んでいる。さらに、接近方向と離間方向とは、対向方向ODに沿い且つ互いに逆向きである。各々の構成要素において、接近方向を向く側面を「内側面」と呼び
離間方向を向く側面を「外側面」と呼ぶ。
【0013】
把持装置100において、回転軸RAを中心とする周方向RDを「回転方向RD」と呼ぶ。回転方向RDにおいて、軸方向前側から把持装置100をみた場合の右回りを「時計回り」と呼び、該右回りの回転方向を「時計回りの回転方向CW-RD」と呼ぶ。回転方向RDにおいて、軸方向前側から把持装置100をみた場合の左回りを「逆時計回り」と呼び、該左回りの回転方向を「逆時計回りの回転方向CC-RD」と呼ぶ。
【0014】
なお、以上に説明した方向、端部、及び面などの呼称は、実際の機器に組み込まれた場合での位置関係及び方向などを示すものではない。
【0015】
<1.第1実施形態>
<1-1.第1実施形態に係る搬送装置の構成>
図1は、搬送装置400の一例を示す斜視図である。搬送装置400は、
図1に示すように、把持装置100と、アーム部200と、基部300と、を備える。把持装置100は、一対の把持部材1間に物体(不図示)を把持可能である。アーム部200は、把持装置100を移動可能に保持し、たとえば把持装置100とともに物体を鉛直方向、鉛直方向を中心とする径方向及び周方向に移動させることができる。基部300は、図示しない台座、又は地面などに固定されており、アーム部200を動作可能に支持する。
【0016】
<1-2.第1実施形態に係る把持装置の構成>
次に、第1実施形態に係る把持装置100の構成を説明する。
図2は、第1実施形態に係る把持装置100の一例を示す斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る把持装置100の断面図である。なお、
図2では、構成を理解し易くするため、後述する支持部材2、移動部3、及び筐体6などの一部の構成要素を透過させて図示している。また、
図3は、回転軸RAを含み且つ対向方向ODと垂直な平面による把持装置100の断面構造を示している。
【0017】
把持装置100は、一対の把持部材1と、支持部材2と、移動部3と、カム4と、モータ5と、筐体6と、を備えている。
【0018】
一対の把持部材1は、対向方向ODにおいて互いに対向している。一対の把持部材1の材料は、特に限定しないが、好ましくは、支持部材2およびカム4などのような該把持部材1と接触する部材の材料よりも軟らかい材料である。より好ましくは、一対の把持部材1は、樹脂製である。このようにすれば、一対の把持部材1を安価に製造することができる。さらに、一対の把持部材1により把持される物体の損傷を抑制することもできる。把持部材1の構成は、後に説明する。
【0019】
支持部材2は、筐体6に固定され、一対の把持部材1を支持している。支持部材2の数は、この例示に限定されず、単数であってもよいが、好ましくは複数である。本実施形態では、対向方向ODに延びる2個の棒状部材が、支持部材2として用いられている。
【0020】
2本の支持部材2は、回転軸RA及び対向方向ODと垂直な方向に並んでいる。各々の支持部材2の両端は、筐体6に固定されている。また、支持部材2は、少なくとも一方の把持部材1を対向方向ODに移動可能に支持している。なお、支持部材2は、本実施形態では、一対の把持部材1それぞれを、対向方向ODに移動可能に支持している。但し、この例示に限定されず、支持部材2は、一対の把持部材1のうちの一方を、対向方向ODに移動可能に支持していてもよい。この場合、一対の把持部材1のうちの他方は、たとえば、支持部材2に固定されていてもよいし、筐体6に固定されていてもよい。
【0021】
移動部3は、少なくとも一方の把持部材1を接近方向に移動させるための部材である。なお、移動部3は、本実施形態では一対の把持部材1それぞれを接近方向に移動させるための部材となっている。但し、この例示に限定されず、移動部3は、一対の把持部材1のうちの一方を、接近方向に移動させるための部材であってもよい。また、本実施形態では、コイル発条が、移動部3として用いられており、対向方向ODにおいて把持部材1の外側面と筐体6の内側面との間に設けられている。より具体的には、移動部3の離間方向における端部は、筐体6の対向方向ODにおいて後述する窪み部6b内に収容され、該窪み部6bの対向方向ODにおける内面に接している。移動部3の接近方向における端部は、把持部材1の外側面に接しており、該外側面を接近方向に押している。
【0022】
このように、移動部3は、複雑な支持構造を採用することなく、筐体6によって覆われた簡易的な支持構造を採用している。より具体的には、筐体6は、前筐体60aと、後筐体60bと、で構成されている。後筐体60bは、前筐体60aの軸方向後側に取り付けられている。後筐体60bは、一対の把持部材1よりも軸方向後側に位置する板状部材と、該板状部材の離間方向における両端部から軸方向前側に突出する突壁と、を有している。各々の突壁の接近方向における内側面には、窪み部6bが設けられている。このように、前筐体60aと後筐体60bとで構成される筐体6では、該筐体が単一の部材で構成される場合と比較すると、窪み部6bを内側面に設ける加工がし易い。これにより、前筐体60aを後筐体60bから取り外すだけで、移動部3を把持装置100から容易に取り外すことができる。このように、移動部3を比較的容易に取り外すことができるため、一対の把持部材1を支持している支持部材2の筐体6に対する固定状態も比較的容易に解除できる。すなわち、一対の把持部材1を筐体6から比較的容易に取り外すことができるので、把持装置100のメンテナンスを容易にすることができる。なお、移動部3は、窪み部6b内に収容されるとともに、窪み部6bの内周面に設けたねじ溝に嵌まるねじを用いて、簡易的に支持しても良い。これにより、前筐体60aを取り外した際に、移動部3が意図せず飛散することを抑制できる。よって、把持装置100のメンテナンスを更に容易に行うことができる。
【0023】
カム4は、対向方向ODと垂直な回転軸RAを中心にして回転可能である。カム4の対向方向ODにおける側面は、少なくとも一方の把持部材1に接しており、より具体的には、少なくとも一方の把持部材1の内側面に接している。なお、カム4の対向方向ODにおける側面は、本実施形態では一対の把持部材1それぞれの内側面に接しているが、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方の内側面に接していてもよい。以下では、把持部材1の内側面において、回転するカム4が該内側面に接触可能な領域を接触部1aと呼ぶ。カム4は、回転に応じて接触部1aを離間方向に押すことにより、少なくとも一方の把持部材1を離間方向に移動させるための部材である。なお、カム4は、本実施形態では一対の把持部材1それぞれを離間方向に押すが、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方を離間方向に押してもよい。カム4の構成は後に説明する。
【0024】
モータ5は、カム4を回転駆動する。モータ5は、シャフト5aと、カム取付部材5bと、を有している。シャフト5aは、回転軸RAを中心にして回転方向RDに回転可能である。カム取付部材5bは、カム4をシャフト5aに取り付けるための部材である。なお、カム4がシャフト5aに取り付けられる構成は、後にカム4の構成とともに説明する。
【0025】
筐体6は、各々の把持部材1の一部、支持部材2、移動部3、及びカム4を内部に収容する。筐体6は、本実施形態では、モータ5及びアーム部200に連結されている。筐体6は、筐体開口6aと、窪み部6bと、背面開口6cと、を有している。筐体開口6は、筐体6の軸方向AD及び対向方向ODの両方と垂直な方向の一方側を向く面に設けられ、該垂直な方向において筐体6を貫通している。筐体開口6を介して、各々の把持部材1の後述するチャック部11を含む一部が、筐体6の外部に突出している。窪み部6bは、筐体6の対向方向OD両側における内側面に設けられ、離間方向に凹んでいる。背面開口6cは、筐体6の背面に設けられ、筐体6を軸方向ADに貫通している。
【0026】
<1-2-1.把持部材の構成>
次に、
図2及び
図3を参照して、把持部材1の構成を説明する。
【0027】
一対の把持部材1はそれぞれ、チャック部11を有する。チャック部11は、対向する他の把持部材1との間に物体(不図示)を把持可能な部位である。本実施形態では、各々の把持部材1は、支持部材2により支持される部位から回転軸RA及び対向方向ODと垂直な方向に延びている。チャック部11は、把持部材1の該垂直な方向の先端に設けられている。このようにすれば、一対の把持部材1は、回転軸RAと垂直な方向に位置する先端で物体を把持できる。
【0028】
一対の把持部材1はそれぞれ、第1チャック部11aと、第2チャック部11bと、を有する。なお、本実施形態では、チャック部11が、第1チャック部11aと、第2チャック部11bと、を含む。第1チャック部11a及び第2チャック部11bは、回転軸RAと平行な軸方向ADに並んでいる。こうすれば、一対の把持部材1は、第1チャック部11a及び第2チャック部11bそれぞれを物体に当てた状態で物体をさらに安定に把持できる。なお、第1チャック部11a及び第2チャック部11bは、本実施形態の例示に限定されず、回転軸RAと交差する方向に並んでいてもよく、特に、回転軸RAと垂直な方向に並んでいてもよい。また、第1チャック部11a及び第2チャック部11bの内側面はそれぞれ、本実施形態では平面であるが、この例示に限定されず、接近方向に向かって突出する曲面であってもよいし、離間方向に凹む曲面であってもよい。或いは、該内側面は、一対の把持部材1が把持する物体の滑落を抑制又は防止するために、対向方向ODにおいて複数の凹凸を有していてもよい。また、把持する物体の形状に合わせて、一対の把持装置1を選択できるように、形状の異なる複数の第1チャック部11a及び第2チャック部11bを用意しておくことが好ましい。また、第1チャック部11a及び第2チャック部11bそれぞれの内側面には、一対の把持部材1の把持による物体の変形を抑制又は防止するために、ゴム板などの弾性部材が設けられていてもよい。
【0029】
また、少なくとも一方の把持部材1は、貫通孔12をさらに有している。本実施形態では、一対の把持部材1それぞれが、貫通孔12を有している。なお、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方が貫通孔12を有していてもよい。
【0030】
貫通孔12は、対向方向ODにおいて把持部材1を貫通している。貫通孔12には、支持部材2が通されている。また、把持部材1は、貫通孔12内の支持部材2に沿って摺り動くことができる。このように、貫通孔12は、摺動可能に支持部材2により移動可能に支持される部位となっている。
【0031】
各々の把持部材1は単一の部材でなくてもよいが、少なくとも一方の把持部材1は単一の部材であることが好ましい。より具体的には、少なくとも一方の把持部材1は、前述の接触部1aと、対向する他の把持部材1との間に物体を把持可能な部位であるチャック部11と、支持部材2により移動可能に支持される部位である貫通孔12が設けられる部分と、を含む単一の部材であることが好ましい。なお、本実施形態では各々の把持部材が上記のような単一の部材となっているが、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方が上記のような単一の部材となっていてもよい。このようにすれば、把持装置100の部品点数を低減できるので、把持装置100の製造工程及び組み立て工程を簡略化でき、製造コストを軽減できる。
【0032】
一対の把持部材1間の間隔は、カム4の回転に応じて変化する。より具体的には、カム4の回転に応じて少なくとも一方の把持部材1が離間方向又は接近方向に移動することによって、一対の把持部材1間の間隔が変化する。たとえば、カム4が把持部材1を離間方向に押す力が、移動部3が把持部材1を接近方向に押す力よりも大きくなると、把持部材1が離間方向に移動することにより、一対の把持部材1間の間隔が広くなる。一方、カム4が把持部材1を離間方向に押す力が、移動部3が把持部材1を接近方向に押す力よりも小さくなると、把持部材1が接近方向に移動することにより、一対の把持部材1間の間隔が狭くなる。そのため、物体を挟んで対向する一対の把持部材1が上述のように対向方向ODに移動することによって、把持装置100は、物体の把持動作及び把持の解除動作を行うことができる。従って、把持装置100は、たとえば一対の把持部材1の先端を回転移動させることによって物体を把持する構成と比較して、把持する物体の形状の影響をさほど受けることなく、把持部材1間で該物体の把持をより安定に行うことができる。
【0033】
また、カム4の回転に応じて一対の把持部材1間の間隔を変化させることにより、電磁石又は空気圧などを利用して該間隔を変化させる構成と比較して、把持装置100を単純な構造とすることができる。すなわち、小型且つ軽量で安価な把持装置100を提供することができる。
【0034】
次に、少なくとも一方の把持部材1は、前述のように、カム4が回転時に接する接触部1aを含んでいる。なお、接触部1aは、本実施形態では一対の把持部材1それぞれに含まれているが、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方に含まれていてもよい。また、回転軸RAと平行な軸方向ADにおいて、接触部1aの幅は、カム4の対向方向ODにおける側面の幅以下である。このようにすれば、カム4が一対の把持部材1間の間隔を変化させる際、回転軸RAと平行な軸方向ADにおいて、カム4と一対の把持部材1との間に偏った力が作用し難くなる。
【0035】
また、上述のように、本実施形態では、カム4の対向方向ODにおける側面は、一対の把持部材1それぞれに接している。一対の把持部材1の各々の接触部1aは、対向方向ODにおいて互いに対向している。より具体的には、対向方向ODから見て、該各々の接触部1aは、軸方向ADにおいて互いに重なっている。さらに、対向方向ODから見て、接触部1aの全てが、軸方向ADにおいてカム4の側面とも重なっている。なお、回転するカム4との摩擦により接触部1aが磨耗することによって両者の接触面積が増加しても、接触部1aの幅が狭いほど該接触面積の増加量は小さくなる。従って、接触部1aが磨耗する際、カム4と該接触部1aとの接触面積の変化をより小さくできる。また、たとえば、仮に軸方向ADにおいて接触部1aの幅がカム4の側面の幅もよりも大きい場合、カム4は把持部材1を磨耗させた場合に対向方向ODにおいて把持部材1にめり込んでしまう。このような場合、軸方向ADにおいてカム4の前面及び後面それぞれが把持部材1と接触することになり、カム4の前面及び後面それぞれにおいても把持部材1がさらに磨耗されてしまう。さらに、カム4の前面及び後面それぞれでの摩擦によって、カム4の回転運動が阻害されることにより、カム4のトルクが低減されてしまう。一方、本実施形態のように軸方向ADにおいて接触部1aの幅がカム4の側面の幅以下であり、且つ、対向方向ODから見て接触部1aがカム4の側面と重なる場合、把持部材1を磨耗させた場合であっても、カム4の前面及び後面それぞれが把持部材1と接触しない。従って、カム4の前面及び後面それぞれにおける把持部材1の磨耗を防止できる。さらに、カム4の前面及び後面それぞれと把持部材1との間の摩擦を防止できるので、該摩擦によるカム4のトルクの低減を防止できる。
【0036】
次に、少なくとも一方の把持部材1は、対向方向ODに凹む凹部13を有している。なお、本実施形態では一対の把持部材1それぞれが凹部13を有しているが、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方が凹部13を有していてもよい。また、凹部13は、接触部1aの回転軸RAと平行な軸方向ADにおける端部に設けられている。このようにすれば、凹部13を設けることにより、接触部1aの軸方向ADにおける幅を小さくできる。そのため、接触部1aの軸方向ADにおける幅を回転軸RAと平行な軸方向ADにおけるカム4の側面の幅以下にすることができる。従って、前述のようにカム4から把持部材1へのトルクの伝達効率の低下及び/又はカム4の摺動による接触部1aにおける把持部材1の偏った磨耗を抑制しつつ、カム4を小型化できる。よって、把持装置100の小型化に寄与できる。
【0037】
凹部13は、第1凹部13aと、第2凹部13bと、を含む。
【0038】
第1凹部13aは少なくとも一方の把持部材1の前端部に設けられる。なお、第1凹部13aは、本実施形態では一対の把持部材1それぞれに設けられているが、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方に設けられてもよい。
【0039】
第2凹部13bは、少なくとも一方の把持部材1の後端部に設けられ、軸方向ADから見て第1凹部13aと重なる。なお、第2凹部13bは、本実施形態では一対の把持部材1それぞれに設けられているが、この例示に限定されず、一対の把持部材1のうちの一方に設けられてもよい。
【0040】
このように、第1凹部13a及び第2凹部13bを設けることにより、少なくとも一方の把持部材1において接触部1aの軸方向ADにおける幅をさらに小さくできる。
【0041】
また、一対の把持部材1の両方に第1凹部13a及び第2凹部13bを設けることにより、各々の把持部材1を同一形状にすることができるので、部品点数を少なくすることができる。これにより、把持装置100の製造工程を簡略化でき、製造コストを軽減できる。
【0042】
<1-2-2.カムの構成>
次に、
図2及び
図3を参照して、カム4の構成を説明する。
【0043】
カム4は、複数の支持部材2間に位置している。このようにすれば、少なくとも一方の把持部材1が、カム4よりも軸方向AD及び対向方向ODの両方と垂直な方向の一方側及び他方側それぞれに位置する支持部材2に沿って、滑らかに移動できる。従って、対向方向ODにおける一対の把持部材1の開閉動作を安定させることができる。
【0044】
また、カム4は、シャフト5aに連結される連結部41を複数有する。本実施形態では、ねじ止めなどの連結手段を用いて、連結部41がカム取付部材5bに連結され、カム取付部材5bが背面開口6cを通じて筐体6の内部に挿通されたシャフト5aに連結されている。なお、連結部41の数は、本実施形態では2個であるが、この例示に限定されず
3個以上の自然数であってもよい。
【0045】
回転軸RAと平行な軸方向ADから見て、複数の連結部41は、回転軸RAを中心として等間隔に設けられる。たとえば、本実施形態では軸方向ADから見て、2個の連結部41が、回転軸RAを中心として等配されており、言い換えると回転軸RAを中心として点対称となる位置にそれぞれ設けられている。このようにすれば、カム4が少なくとも一方の把持部材1を移動させる際にカム4が把持部材1から受ける力により、カム4の回転中心が回転軸RAからずれることを抑制又は防止できる。
【0046】
次に、カム4の形状を説明する。
図4Aは、軸方向ADからみたカムの形状の一例を示す図である。
図4Bは、軸方向ADからみたカムの形状の他の一例を示す図である。
【0047】
回転軸RAと平行な軸方向ADから見て、カム4は、本実施形態では
図4Aに示すように、長径及び短径を有する形状である。このように、回転軸RAから見た形状がたとえば楕円形状のような簡易な形状であるカム4を用いることにより、少なくとも一方の把持部材1を離間方向に移動させることができる。
【0048】
ここで、回転軸RAと平行な軸方向ADから見て、カムの中央位置CLは、本実施形態では
図4Aに示すように回転中心である回転軸RAと一致しているが、この例示に限定されない。回転軸RAと平行な軸方向ADから見て、カムの中央位置CLは、
図4Bに示すように、回転軸RAからずれていてもよい。このようにすれば、いわゆる偏心カム4を用いて、少なくとも一方の把持部材1を離間方向に移動させることができる。なお、偏心カム4の形状は、
図4Bでは円形であるが、この例示に限定されず、たとえば楕円形などの長径及び短径を有する形状であってもよい。なお、
図4Bのカム4は3個の連結部41を有している。3個の連結部41は、軸方向ADから見て、回転軸RAを中心として等配されており、言い換えると、3個の連結部41は、軸方向ADから見て、回転軸RAを中心として回転対称となる位置にそれぞれ設けられている。
【0049】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態では、把持装置101の構成が第1実施形態とは異なっている。なお、第2実施形態に係る以下の説明では、第1実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、第1実施形態と同じ構成及び要素の説明を省略することがある。
【0050】
<2-1.第2実施形態に係る搬送装置の構成>
搬送装置400は、把持装置101と、アーム部200と、基部300と、を備える。把持装置101は、アーム部200によって移動可能に保持されている。
【0051】
<2-2.第2実施形態に係る把持装置の構成>
次に、第2実施形態に係る把持装置101の構成を説明する。
図5は、第2実施形態に係る把持装置101の一例を示す斜視図である。
図6は、第2実施形態に係る把持装置101の断面図である。なお、
図5では、構成を理解し易くするため、後述する支持部材2、移動部3、及び筐体6などの一部の構成要素を透過させて図示している。また、
図6は、回転軸RAを含み且つ対向方向ODと平行な平面による把持装置101の断面構造を示している。
【0052】
把持装置101は、一対の把持部材1、支持部材2、移動部3、カム4、モータ5、及び筐体6のほか、筐体保持部7をさらに備えている。
【0053】
各々の把持部材1は、支持部材2により支持される部位から回転軸RAと平行な軸方向ADに延びている。チャック部11は、把持部材1の軸方向ADの先端に設けられている。このようにすれば、一対の把持部材1は、回転軸RAと平行な軸方向ADに位置する先端で物体を把持できる。
【0054】
筐体6は、本実施形態では後述するベアリング72及び筐体保持部7を介してモータ5に取り付けられている。筐体6は、筐体開口6a、窪み部6b、及び背面開口6cを有している。筐体開口6は、筐体6の前面に設けられ、筐体6を軸方向ADに貫通している。各々の把持部材1の貫通孔12を含む一部は、筐体6内に収容されている。一方、各々の把持部材1のチャック部11を含む残りの一部が、筐体開口6を介して、筐体6の外部に突出している。
【0055】
筐体保持部7は、本実施形態では、モータ5及びアーム部200に連結されている。なお、筐体保持部7は、本実施形態ではプレート部材71を介してモータ5に連結されているが、この例示に限定されず、モータ5に直接に連結されていてもよい。また、筐体保持部7は、ベアリング72を介して、回転軸RAを中心にして回転可能に筐体6を支持している。より具体的には、筐体保持部7は、回転軸RAを中心とする筒状であり且つ軸方向ADに延びる筒部7aを有している。筒部7aは、筐体6の背面開口6cに挿通されている。背面開口6cにおいて、筐体6と筐体保持部7の筒部7aとの間には、ベアリング72が設けられている。筒部7aは、ベアリング72を介して回転可能に筐体6を支持している。
【0056】
また、筒部7aの内部には、シャフト5aの前端部、カム取付部材5b、及びカム4の後端部が収容されている。筒部7aの内部において、カム4の後端部が、回転軸RAを中心として回転可能にカム取付部材5bを介してシャフト5aに連結されている。なお、カム4の前端部は、筒部7aの外部に位置し、各々の把持部材1の接触部4aと対向方向ODにおいて接している。
【0057】
次に、筐体6及び筐体保持部7のうちの一方は溝部6dを有し、筐体6及び筐体保持部7のうちの他方は突起部73を有している。溝部6dは、軸方向ADに凹み、回転軸RAを中心とする回転方向RDに延びている。突起部73は、回転軸RAと平行な軸方向ADに突出し、溝部6d内に配置されている。
【0058】
図7は、第2実施形態に係る突起部73及び溝部6dの構成例を示す斜視図である。本実施形態では、
図7に示すように、筐体6の後筐体60bが溝部6dを有し、筐体保持部7が突起部73を有している。溝部6dは、筐体6の後筐体60bの背面に設けられ、軸方向前側に凹んでいる。突起部73は、筐体保持部7の前面に設けられ、軸方向前側に突出している。
【0059】
但し、この例示に限定されず、
図8に示すように、筐体6の後筐体60bが突起部61を有し且つ筐体保持部7が溝部7bを有していてもよい。この場合、突起部61は、後筐体60bの背面に設けられ、軸方向後側に突出する。溝部6dは、筐体保持部7の前面に設けられ、軸方向後側に凹む。
【0060】
把持装置101では、カム4の回転に応じて、突起部73が溝部6dに沿って回転方向RDに移動可能である。突起部73が回転方向RDのうちのカム4が回転する方向と同じ側における溝部6dの端部、又は溝部6dの回転方向RDにおける両端部間、に位置する場合、一対の把持部材1及び筐体6が、カム4とともに回転方向RDに回転する。一方、突起部73が溝部6dの回転方向RDのうちのカム4が回転する方向とは逆側における端部に位置する場合、少なくとも一方の把持部材1が、対向方向ODに移動する。
【0061】
このようにすれば、同じモータ5の回転駆動により、回転軸RAを中心とする一対の把持部材1の回転動作と、一対の把持部材1による物体の把持動作及び把持の解除動作と、を簡易な構成で切り替えて実施できる。
【0062】
この構成について、カム4が時計回りの回転方向CW-RDに回転する場合を例に挙げて説明する。なお、本実施形態では、前述のように、筐体6の後筐体60bに溝部6dが設けられ、筐体保持部7に突出部73が設けられている。
【0063】
まず、突起部73が溝部6dの時計回りの回転方向CW-RDにおける端部に位置している場合、又は溝部6dの回転方向RDにおける両端部間に位置している場合を説明する。
図9Aは、カム4の時計回りの回転によって、突起部73が溝部6dの回転方向RDにおける両端部間に位置する場合での第2実施形態における把持装置101を軸方向前側からみた図である。
【0064】
これらの場合にて、モータ5の回転駆動によって時計回りの回転方向CW-RDに回転するカム4が、少なくとも一方の把持部材1を時計回りの回転方向CW-RDに押す。これにより、一対の把持部材1が時計回りの回転方向CW-RDに回転する。さらに、
図9Aに示すように、支持部材2が固定される筐体6も時計回りの回転方向CW-RDに回転するので、溝部6dも時計回りの回転方向CW-RDに回転移動する。この際、カム4が把持部材1を離間方向に押す力は、移動部3が把持部材1を接近方向に押す力以下である。また、
図9Aでは、各々の把持部材1のチャック部11は対向方向ODにおいて互いに接している。従って、一対の把持部材1間の間隔は変化しない。また、
図9Aの例示とは異なり、一対の把持部材1間に物体が挟まれている場合には、物体の把持が維持される。
【0065】
次に、溝部6dの回転移動により突起部73が溝部6dの逆時計回りの回転方向CC-RDにおける端部に達した場合を説明する。
図9Bは、カム4の時計回りの回転によって、突起部73が溝部6dの逆時計回りの回転方向CC-RDにおける端部に位置する場合での第2実施形態に係る把持装置101を軸方向ADからみた図である。
図9Bの状態で時計回りの回転方向CW-RDに回転するカム4が把持部材1を押しても、突出部73によって溝部6dが時計回りの回転方向CW-RDに回転移動できないので、筐体6が時計回りの回転方向CW-RDに回転できなくなる。そのため、筐体6に固定される支持部材2、及び、該支持部材2に支持される各々の把持部材1も時計回りの回転方向CW-RDに回転できなくなる。従って、各々の把持部材1は、回転するカム4が押す力によって対向方向ODに移動する。より具体的には、カム4が把持部材1を離間方向に押す力が、移動部3が把持部材1を接近方向に押す力よりも大きくなる。そのため、一対の把持部材1はそれぞれ、離間方向に移動する。この移動により、一対の把持部材1間の間隔が広くなる。さらに、一対の把持部材1間に物体が挟まれていた場合には、物体の把持を解除することができる。
【0066】
次に、モータ5がカム4を逆時計回りの回転方向CC-RDに回転させると、カム4が把持部材1を離間方向に押す力が、移動部3が把持部材1を接近方向に押す力よりも小さくなる。そのため、一対の把持部材1はそれぞれ、接近方向に移動する。この移動により、一対の把持部材1間の間隔が狭くなることにより、一対の把持部材1間に物体を把持することができる。
【0067】
なお、上述の実施形態では、筐体6の後筐体60b及び筐体保持部7のうちの一方が突起部を有し且つ他方が溝部を有しているが、この例示には限定されない。たとえば、
図10Aのように、筐体6の後筐体60bが突起部62a、62bを有し、且つ、筐体保持部7が突起部73を有していても良い。突起部62a、62bはそれぞれ、後筐体60bの背面に設けられ、軸方向後側に突出する。さらに、突起部62aの周方向の突起部73側(すなわち
図10Aにおいて逆時計回りの回転方向CC-RD)における端部の位置は、
図7において溝部6dの周方向の突起部73側における端部の位置と同じである。突起部62bの周方向の突起部73側(すなわち
図10Aにおいて時計回りの回転方向CW-RD)における端部の位置は、
図7において溝部6dの周方向の突起部73側における端部の位置と同じである。
【0068】
或いは、
図10Bのように、筐体6の後筐体60bが突起部61を有し、且つ、筐体保持部7が突起部74a、74bを有していても良い。突起部74a、74bはそれぞれ、筐体保持部7の前面に設けられ、軸方向前側に突出する。さらに、突起部74aの周方向の突起部61側(すなわち
図10Bにおいて逆時計回りの回転方向CC-RD)における端部の位置は、
図8において溝部7bの周方向の突起部61側における端部の位置と同じである。突起部74bの周方向の突起部61側(すなわち
図10Bにおいて時計回りの回転方向CW-RD)における端部の位置は、
図8において溝部7bの周方向の突起部73側における端部の位置と同じである。
【0069】
図10A及び
図10Bのようにしても、
図7及び
図8の構成と同様に、同じモータ5の回転駆動により、回転軸RAを中心とする一対の把持部材1の回転動作と、一対の把持部材1による物体の把持動作及び把持の解除動作とを簡易な構成で切り替えて実施できる。
【0070】
<3.まとめ>
上述の実施形態によれば、把持装置100、101は、互いに対向する一対の把持部材1と、一対の把持部材1を支持し、且つ、一対の把持部材1の対向方向ODに少なくとも一方の把持部材1を移動可能に支持する支持部材2と、対向方向ODに沿って一対の把持部材1が互いに近づく方向に少なくとも一方の把持部材1を移動させるための移動部3と、対向方向ODと垂直な回転軸RAを中心にして回転可能であり、且つ、対向方向ODに沿って一対の把持部材1が互いに離れる方向に少なくとも一方の把持部材1を移動させるためのカム4と、カム4を回転駆動するモータ5と、を備える。カム4の対向方向ODにおける側面は、少なくとも一方の把持部材1に接する。一対の把持部材1間の間隔が、カム4の回転に応じて変化する。
【0071】
このようにすれば、カム4の回転に応じて少なくとも一方の把持部材1が対向方向ODに移動することによって、一対の把持部材1間の間隔が変化する。たとえば、少なくとも一方の把持部材1が互いに離れる方向に移動させるためのカム4の力が、該少なくとも一方の把持部材1が互いに近づく方向に移動させるための移動部3の力よりも大きくなると、該少なくとも一方の把持部材1が互いに離れる方向に移動することにより、一対の把持部材1間の間隔が広くなる。一方、少なくとも一方の把持部材1が互いに離れる方向に移動させるためのカム4の力が、該少なくとも一方の把持部材1が互いに近づく方向に移動させるための移動部3の力よりも小さくなると、該少なくとも一方の把持部材1が互いに近づく方向に移動することにより、一対の把持部材1間の間隔が狭くなる。そのため、物体を挟んで対向する一対の把持部材1が上述のように対向方向ODに移動することによって、把持装置100、101は、物体の把持動作及び把持の解除動作を行うことができる。従って、上記構成の把持装置100、101は、たとえば一対の把持部材1の先端を回転移動させることによって物体を把持する構成と比較して、把持する物体の形状の影響をさほど受けることなく、把持部材1間で該物体の把持をより安定に行うことができる。
【0072】
また、カム4の回転に応じて一対の把持部材1間の間隔を変化させることにより、電磁石又は空気圧などを利用して該間隔を変化させる構成と比較して、把持装置100、101を単純な構造とすることができる。すなわち、小型且つ軽量で安価な把持装置100を提供することができる。
【0073】
<4.その他>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【0074】
本発明は、物体を把持可能な把持装置を有する搬送装置に有用である。
【符号の説明】
【0075】
100、101・・・把持装置、200・・・アーム部、300・・・基部、400・・・搬送装置、1・・・把持部材、1a・・・接触部、11・・・チャック部、11a・・・第1チャック部、11b・・・第2チャック部、12・・・貫通孔、13・・・凹部、13a・・・第1凹部、13b・・・第2凹部、2・・・支持部材、3・・・移動部、4・・・カム、41・・・連結部、5・・・モータ、5a・・・シャフト、5b・・・カム取付部材、6・・・筐体、6a・・・筐体開口、6b・・・窪み部、6c・・・背面開口、6d・・・溝部、60a・・・前筐体、60b・・・後筐体、61、62a、62b・・・突起部、7・・・筐体保持部、7a・・・筒部、7b・・・溝部、71・・・プレート部材、72・・・ベアリング、73、74a、74b・・・突起部、RA・・・回転軸、CL・・・中央位置、AD・・・軸方向、OD・・・対向方向、RD・・・回転方向、CW-RD・・・時計回りの回転方向、CC-RD・・・逆時計回りの回転方向