(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】マルチアングル測色計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/57 20060101AFI20220705BHJP
G01J 3/50 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01N21/57
G01J3/50
(21)【出願番号】P 2019553709
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033654
(87)【国際公開番号】W WO2019097825
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017221013
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 良隆
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 知巳
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特許第4152786(JP,B2)
【文献】特開2017-041796(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188085(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/156147(WO,A1)
【文献】特開2008-122335(JP,A)
【文献】特開2003-294530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0152990(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01J 3/00 - G01J 3/52
C09D 5/36
C09D 201/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被対象物に対して光を出射する発光部と、
前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、
前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、
前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、
nを2以上の整数として、
前記複数の角度を、それぞれθ
1~θ
nとし、ただし、角度θ
1~θ
nは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、
前記角度θ
1
~θ
n
は、-15°を含み、
前記各々の角度θ
1~θ
nの方向について、前記反射光量に基づいて取得される前記光学パラメータを、それぞれI(θ
1)~I(θ
n)とし、
前記各光学パラメータI(θ
1)~I(θ
n)の重み係数を、それぞれa
1~a
nとしたとき、
前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出する、マルチアングル測色計;
I=a
1・I(θ
1)+a
2・I(θ
2)+・・・+a
n・I(θ
n)
ただし、
重み係数a
1~a
nにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、
である。
【請求項2】
前記各光学パラメータI(θ
1)~I(θ
n)は、全て明度L
*である、請求項1に記載のマルチアングル測色計。
【請求項3】
被対象物に対して光を出射する発光部と、
前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、
前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、
前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、
nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、
前記複数の角度を、それぞれθ
1~θ
nとし、ただし、角度θ
1~θ
nは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、
前記角度θ
1
~θ
n
は、-15°を含み、
前記各々の角度θ
1~θ
nの方向について、前記反射光量に基づいて取得される、異なる波長帯域ごとの、または異なる波長ごとの前記光学パラメータを、それぞれI’
1(θ
1)~I’
1(θ
n)、I’
2(θ
1)~I’
2(θ
n)、・・・I’
m(θ
1)~I’
m(θ
n)とし、
前記各光学パラメータI’
1(θ
1)~I’
1(θ
n)、I’
2(θ
1)~I’
2(θ
n)、・・・I’
m(θ
1)~I’
m(θ
n)の重み係数を、それぞれa
1~a
nとしたとき、
前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出する、マルチアングル測色計;
I
1=a
1・I’
1(θ
1)+a
2・I’
1(θ
2)+・・・+a
n・I’
1(θ
n)
I
2=a
1・I’
2(θ
1)+a
2・I’
2(θ
2)+・・・+a
n・I’
2(θ
n)
・・・
I
m=a
1・I’
m(θ
1)+a
2・I’
m(θ
2)+・・・+a
n・I’
m(θ
n)
I=I
1+I
2+・・・+I
m
ただし、
重み係数a
1~a
nにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、
である。
【請求項4】
前記光学パラメータは、3刺激値XYZであり、
I’
1(θ
1)~I’
1(θ
n)=X(θ
1)~X(θ
n)
I’
2(θ
1)~I’
2(θ
n)=Y(θ
1)~Y(θ
n)
I’
3(θ
1)~I’
3(θ
n)=Z(θ
1)~Z(θ
n)
としたとき、
I
1=I’
x=a
1・X(θ
1)+a
2・X(θ
2)+・・・+a
n・X(θ
n)
I
2=I’
y=a
1・Y(θ
1)+a
2・Y(θ
2)+・・・+a
n・Y(θ
n)
I
3=I’
z=a
1・Z(θ
1)+a
2・Z(θ
2)+・・・+a
n・Z(θ
n)
であり、
I=I’
x+I’
y+I’
z
である、請求項3に記載のマルチアングル測色計。
【請求項5】
前記光学パラメータは、複数の波長λにおける分光反射率Ref(λ,θ)であり、
前記複数の波長λを、λ
1、λ
2、・・・λ
mとして、
I’
1(θ
1)~I’
1(θ
n)=Ref(λ
1,θ
1)~Ref(λ
1,θ
n)
I’
2(θ
1)~I’
2(θ
n)=Ref(λ
2,θ
1)~Ref(λ
2,θ
n)
・・・
I’
m(θ
1)~I’
m(θ
n)=Ref(λ
m,θ
1)~Ref(λ
m,θ
n)
としたとき、
I
1=a
1・Ref(λ
1,θ
1)+a
2・Ref(λ
1,θ
2)+・・・+a
n・Ref(λ
1,θ
n)
I
2=a
1・Ref(λ
2,θ
1)+a
2・Ref(λ
2,θ
2)+・・・+a
n・Ref(λ
2,θ
n)
・・・
I
m=a
1・Ref(λ
m,θ
1)+a
2・Ref(λ
m,θ
2)+・・・+a
n・Ref(λ
m,θ
n)
であり、
I=I
1+I
2+・・・+I
m
である、請求項3に記載のマルチアングル測色計。
【請求項6】
n=2であり、
重み係数a
1およびa
2のうち、一方は1であり、他方は-1である、請求項1から5のいずれかに記載のマルチアングル測色計。
【請求項7】
被対象物に対して光を出射する発光部と、
前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、
前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、
前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、
nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、
前記複数の角度を、それぞれθ
1~θ
nとし、ただし、角度θ
1~θ
nは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、
前記各々の角度θ
1~θ
nの方向について、前記反射光量に基づいて取得される前記光学パラメータを、それぞれJ(θ)およびK(θ)の2種類とし、ただし、J(θ)およびK(θ)の少なくとも一方は波長依存性を有し、
J(θ)=J
1(θ
1)~J
1(θ
n)、J
2(θ
1)~J
2(θ
n)、・・・J
m(θ
1)~J
m(θ
n)とし、
K(θ)=K
1(θ
P)、K
2(θ
P)、K
3(θ
P)、・・・K
m(θ
P)とし、ただし、Pは、1~nのいずれかの整数であり、
前記各光学パラメータJ(θ)の重み係数を、それぞれa
1~a
nおよびb
1~b
nの2種類としたとき、
前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出する、マルチアングル測色計;
I
1=〔{a
1・J
1(θ
1)+a
2・J
1(θ
2)+・・・+a
n・J
1(θ
n)}/{b
1・J
1(θ
1)+b
2・J
1(θ
2)+・・・+b
n・J
1(θ
n)}〕・K
1(θ
P)
I
2=〔{a
1・J
2(θ
1)+a
2・J
2(θ
2)+・・・+a
n・J
2(θ
n)}/{b
1・J
2(θ
1)+b
2・J
2(θ
2)+・・・+b
n・J
2(θ
n)}〕・K
2(θ
P)
・・・
I
m=〔{a
1・J
m(θ
1)+a
2・J
m(θ
2)+・・・+a
n・J
m(θ
n)}/{b
1・J
m(θ
1)+b
2・J
m(θ
2)+・・・+b
n・J
m(θ
n)}〕・K
m(θ
P)
I=I
1+I
2+・・・+I
m
ただし、
重み係数a
1~a
nにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれかであり、
重み係数b
1~b
nの各々は、正、負、ゼロのいずれかであり、全てがゼロである場合を除く、
である。
【請求項8】
J(θ)は、3刺激値XYZであり、K(θ)は、明度L
*であり、
I
1=〔{a
1・X(θ
1)+a
2・X(θ
2)+・・・+a
n・X(θ
n)}/{b
1・X(θ
1)+b
2・X(θ
2)+・・・+b
n・X(θ
n)}〕・L
*(θ
P)
I
2=〔{a
1・Y(θ
1)+a
2・Y(θ
2)+・・・+a
n・Y(θ
n)}/{b
1・Y(θ
1)+b
2・Y(θ
2)+・・・+b
n・Y(θ
n)}〕・L
*(θ
P)
I
3=〔{a
1・Z(θ
1)+a
2・Z(θ
2)+・・・+a
n・Z(θ
n)}/{b
1・Z(θ
1)+b
2・Z(θ
2)+・・・+b
n・Z(θ
n)}〕・L
*(θ
P)
I=I
1+I
2+I
3
である、請求項7に記載のマルチアングル測色計。
【請求項9】
重み係数b
1~b
nの各々は、1である、請求項7または8に記載のマルチアングル測色計。
【請求項10】
前記指標算出部によって算出された前記指標Iを表示する表示部をさらに備えている、請求項1から9のいずれかに記載のマルチアングル測色計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチアングル測色計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの工業製品の分野では、より高い意匠性を実現する手法として、メタリック塗装またはパール塗装(以下では、これらをまとめて「メタリック・パール塗装」または「メタリック・パールカラー塗装」とも称する)が知られている。メタリック・パールカラー塗装では、塗装に含まれる光輝材(フレーク状のアルミ片またはマイカ片)の影響により、塗装表面を観察する角度によって、色彩の見え方を異ならせることができ、現在広く利用されている。
【0003】
メタリック・パールカラー塗装では、上記のように、塗装表面の観察角度によって色彩の見え方が異なるため、色彩評価を行うにあたっては、複数の観察角度のそれぞれについて行う必要がある。そこで、メタリック・パールカラー塗装の色彩評価には、一般的に、マルチアングル測色計が利用される。マルチアングル測色計では、塗装表面を照明し、塗装表面での反射光(可視光)を複数の角度で受光することにより、各角度ごとに反射光の分光反射率を測定することができる。また、測定された分光反射率に基づいて、例えばXYZ表色系における3刺激値XYZや、L*a*b*表色系における明度(L*)およびa*値およびb*値を取得することもできる。したがって、これらの光学パラメータに基づいて、複数の観察角度ごとに色彩を評価することが可能となる。
【0004】
ところで、メタリック・パールカラー塗装の評価においては、上記した色彩評価に加えて、光輝材の光輝感などの色彩以外の特徴を、質感として捉えて評価することも必要である。この点、例えば、特許文献1では、シェード75°の方向(照明光の正反射方向に対する偏角が75°となる方向)からメタリック塗装が施された被対象物表面をデジタルカメラで測定し、シェードの輝度感を表す値(HB値)を画像解析によって求めて質感を評価するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-279413号公報(段落〔0008〕、〔0045〕~〔0061〕、
図1、
図9等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のようにメタリック・パールカラー塗装の質感評価(特に光輝感の評価)を、デジタルカメラを用いて行う場合、色彩評価については上記のようにマルチアングル測色計を用いて行い、質感評価については、マルチアングル測色計とは異なる装置(デジタルカメラ)を用いて行うことになる。このように、色彩評価と質感評価とを別々の装置を用いて行うことは、メタリック・パールカラー塗装の評価に用いる装置全体の大型化および高コスト化を意味する。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、色彩評価および質感評価(特に光輝感の評価)を含めて、メタリック塗装またはパール塗装を評価する装置全体の大型化および高コスト化を回避することができるマルチアングル測色計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るマルチアングル測色計は、被対象物に対して光を出射する発光部と、前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、nを2以上の整数として、前記複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、ただし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、前記各々の角度θ1~θnの方向について、前記反射光量に基づいて取得される前記光学パラメータを、それぞれI(θ1)~I(θn)とし、前記各光学パラメータI(θ1)~I(θn)の重み係数を、それぞれa1~anとしたとき、前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出することを特徴とするマルチアングル測色計;
I=a1・I(θ1)+a2・I(θ2)+・・・+an・I(θn)
ただし、
重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、
である。
【0009】
本発明の他の側面に係るマルチアングル測色計は、被対象物に対して光を出射する発光部と、前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、前記複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、ただし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、前記各々の角度θ1~θnの方向について、前記反射光量に基づいて取得される、異なる波長帯域ごとの、または異なる波長ごとの前記光学パラメータを、それぞれI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)とし、前記各光学パラメータI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)の重み係数を、それぞれa1~anとしたとき、前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出することを特徴とするマルチアングル測色計;
I1=a1・I’1(θ1)+a2・I’1(θ2)+・・・+an・I’1(θn)
I2=a1・I’2(θ1)+a2・I’2(θ2)+・・・+an・I’2(θn)
・・・
Im=a1・I’m(θ1)+a2・I’m(θ2)+・・・+an・I’m(θn)
I=I1+I2+・・・+Im
ただし、
重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、
である。
【0010】
本発明のさらに他の側面に係るマルチアングル測色計は、被対象物に対して光を出射する発光部と、前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、前記複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、ただし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、前記各々の角度θ1~θnの方向について、前記反射光量に基づいて取得される前記光学パラメータを、それぞれJ(θ)およびK(θ)の2種類とし、ただし、J(θ)およびK(θ)の少なくとも一方は波長依存性を有し、J(θ)=J1(θ1)~J1(θn)、J2(θ1)~J2(θn)、・・・Jm(θ1)~Jm(θn)とし、K(θ)=K1(θP)、K2(θP)、K3(θP)、・・・Km(θP)とし、ただし、Pは、1~nのいずれかの整数であり、前記各光学パラメータJ(θ)の重み係数を、それぞれa1~anおよびb1~bnの2種類としたとき、前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出することを特徴とするマルチアングル測色計;
I1=〔{a1・J1(θ1)+a2・J1(θ2)+・・・+an・J1(θn)}/{b1・J1(θ1)+b2・J1(θ2)+・・・+bn・J1(θn)}〕・K1(θP)
I2=〔{a1・J2(θ1)+a2・J2(θ2)+・・・+an・J2(θn)}/{b1・J2(θ1)+b2・J2(θ2)+・・・+bn・J2(θn)}〕・K2(θP)
・・・
Im=〔{a1・Jm(θ1)+a2・Jm(θ2)+・・・+an・Jm(θn)}/{b1・Jm(θ1)+b2・Jm(θ2)+・・・+bn・Jm(θn)}〕・Km(θP)
I=I1+I2+・・・+Im
ただし、
重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれかであり、
重み係数b1~bnの各々は、正、負、ゼロのいずれかであり、全てがゼロである場合を除く、
である。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、色彩評価の際に用いるマルチアングル測色計を用い、上記測色計の指標算出部によって算出された指標Iに基づいて質感評価(特に光輝感の評価)を行うことができる。これにより、色彩評価および質感評価を含めて、メタリック塗装またはパール塗装を評価する装置全体の大型化および高コスト化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るマルチアングル測色計の全体の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】上記マルチアングル測色計の分光ユニットの概略の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】メタリック塗装またはパール塗装によって形成される塗膜に対して光を照射したときのゴニオ特性を示すグラフである。
【
図4】上記塗膜の層構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図3のゴニオ特性をさらに模式的に示したグラフである。
【
図6】2種の光輝材についてのゴニオ特性を模式的に示すグラフである。
【
図7】光輝感の異なる複数の試料についての明度の角度分布を示すグラフである。
【
図8】
図7で示した角度分布を、一部の試料について示したグラフである。
【
図9】試料の面を傾けて2種の正反射光を分離する様子を模式的に示す説明図である。
【
図10】光輝感の異なる複数の試料について、明度および光輝感に相当する指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【
図11】明度および光輝感に相当する他の指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【
図12】明度および光輝感に相当するさらに他の指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【
図13】明度および光輝感に相当するさらに他の指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【
図14】本発明の実施の形態2において、明度および光輝感に相当する指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【
図15】明度および光輝感に相当する他の指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【
図16】明度および光輝感に相当するさらに他の指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【
図17】本発明の実施の形態3において、明度および光輝感に相当する指標の各値で決まる点を座標平面上にプロットした説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をa~bと表記した場合、その数値範囲に下限aおよび上限bの値は含まれるものとする。また、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
【0014】
(1.マルチアングル測色計について)
図1は、本実施形態のマルチアングル測色計1の全体の構成を模式的に示す説明図である。マルチアングル測色計1は、被対象物Mに施されたメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価および質感評価を行うための装置であり、発光部10と、光量検出ユニット20と、制御部30と、記憶部40と、操作部50と、表示部60とを備えている。ここで、被対象物Mとは、メタリック塗装またはパール塗装が施された車体またはその車体の塗装サンプル(試料)を指す。上記車体には、完成品としての自動車のほか、外装パーツ(フェンダー、ドアなど)などの車体の一部も含まれる。
【0015】
(1-1.発光部)
発光部10は、被対象物Mに対して光を出射し、被対象物Mを照明する照明ユニットであり、本実施形態では、被対象物Mの塗装表面の測定点M0における法線Nに対して45°の方向から被対象物Mを照明する。このような発光部10は、光源装置11と、発光回路12と、ハーフミラー13と、レンズ14と、導光部15とを有している。
【0016】
光源装置11は、例えばキセノンフラッシュランプからなる光源と、光源から発せられた光線を規制する規制板と、光源から発せられて規制板で規制された光線を平行光に変換するコリメートレンズとを有して構成されている。発光回路12は、制御部30の制御に応じて光源装置11の光源を発光させる回路であり、光源装置11の近傍に設けられている。ハーフミラー13は、光源装置11から発せられた光のうち、一部の光をレンズ14に向けて反射し、残余の光(照明光)を被対象物Mに向けて透過させる。レンズ14は、光源装置11から発せられた光のうち、ハーフミラー13で反射された光を透過させ、導光部15の一端面に集光させる。導光部15は、例えば光ファイバーで構成されており、レンズ14を介して一端面に入射した光を内部で導光して、光量検出ユニット20の後述する分光ユニット22に導く。
【0017】
(1-2.光量検出ユニット)
光量検出ユニット20は、発光部10から出射され、被対象物Mによって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、複数の角度ごとに反射光量を検出するユニットである。この光量検出ユニット20は、複数の受光部21と、分光ユニット22とを有している。
【0018】
複数の受光部21は、本実施形態では、6つの受光部21a~21fで構成されている。なお、受光部21の数は、複数であればよく、上記の6個に限定されるわけではない。各受光部21a~21fは、レンズ21a
1~21f
1と、導光部21a
2~21f
2とを有している。レンズ21a
1~21f
1は、発光部10(光源装置11)から出射され、被対象物Mの表面で複数の角度方向に反射された光を透過させ、導光部21a
2~21f
2の一端面に集光させる。導光部21a
2~21f
2は、例えば光ファイバーで構成されており、レンズ21a
1~21f
1を介して一端面入射した光を内部で導光して、分光ユニット22に導く。上記した導光部15および導光部21a
2~21f
2の他端面側は、分光ユニット22の筐体22a(
図2参照)に支持されている。
【0019】
ここで、発光部10から出射された光の主光線(光束の中心光線)の被対象物M(測定点M
0)に対する入射方向と正反射方向とを含む面内(
図1では紙面に平行な面内)で、上記正反射方向を0°とし、測定点M
0を基準(支点)として、上記正反射方向から上記入射方向に近づくように傾く(回動する)角度方向を正方向とする。本実施形態では、上記複数の角度(方向)として、例えば-15°、+15°、+25°、+45°、+75°、+110°を考える。なお、以下では、+15°、+25°、+45°、+75°、+110°の角度を、正の符号(+)を省略して、単に、15°、25°、45°、75°、110°とも表記する。なお、複数の角度は、上記の角度に限定されるわけではない。
【0020】
なお、正反射方向を基準とする角度θのことを、Asθとも表記する。Asは、aspecularの略であり、正反射(specular)の方向からのズレを示す。したがって、上記した複数の角度は、As(-15°)、As(15°)、As(25°)、As(45°)、As(75°)、As(110°)とも表現することができる。
【0021】
分光ユニット22は、各受光部21a~21f(特に、導光部21a
2~21f
2)を介して入射する光を分光して、上記複数の角度ごとの反射光量(受光量)を検出するとともに、発光部10の導光部15を介して入射する光の受光量を検出する。
図2は、分光ユニット22の概略の構成を模式的に示す断面図である。なお、
図2では、上記した導光部15および導光部21a
2~21f
2のうち、5つの導光部21b
2~21f
2の他端面から出射される光の光路を代表して示す。分光ユニット22は、集光光学系23と、分光部24と、光検出部25とを有している。
【0022】
集光光学系23は、例えば複数のシリンドリカルレンズ23a~23cを有して構成されており、入射光を、断面が一方向(
図2では、導光部15および導光部21a
2~21f
2の配列方向)に延びる線状の光束に整形する。分光部24は、例えば、リニアバリアブルフィルタ(LVF)または分割フィルタで構成される。LVFは、上記一方向(波長変化方向とも言う)における光の入射位置に応じて、透過光の波長を異ならせるフィルタである。分割フィルタは、透過させる光の波長が相互に異なる多数のフィルタを上記一方向に配置して構成されたフィルタである。
【0023】
光検出部25は、分光部24を透過した光の波長または波長域ごとの強度に応じた電気信号を生成して出力する複数の光電変換素子で構成される。上記光電変換素子としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)などの光センサを用いることができる。複数の光電変換素子は、分光部24を透過した光の波長が変化する上記一方向において相互に異なる位置に配置されており、これによって、ラインセンサが構成されている。
【0024】
上記構成の分光ユニット22において、導光部21a2~21f2の他端面から出射された光はそれぞれ、集光光学系23によって上記一方向に線状の光束に整形された後、分光部24で上記一方向に分光され、光検出部25に入射する。光検出部25では、導光部21a2~21f2ごとに、つまり、被対象物Mでの反射方向である複数の角度ごとに、入射光の波長に応じた受光量が検出される。上記受光量に応じた電気信号は、制御部30に出力される。また、同様の原理で、発光部10の導光部15を介して入射する光についても、光検出部25にて受光量が検出され、上記受光量に応じた電気信号が制御部30に出力される。
【0025】
なお、分光ユニット22において、導光部15および導光部21a2~21f2の他端面の近傍にシャッタを設け、各シャッタをON/OFFすることによって、各導光部から出射される光の透過/遮断を個々に制御してもよい。
【0026】
(1-3.制御部)
図1に戻って説明を続ける。制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)で構成されており、記憶部40に記憶された動作プログラムに基づいて動作する。このような制御部30は、全体制御部31と、演算部32とを含む。
【0027】
全体制御部31は、マルチアングル測色計1の各部の動作を制御する。また、全体制御部31は、光量検出ユニット20の導光部15から出射されて光検出部25で検出された光の受光量に基づいて、上記光源の発光回路12を制御する。これにより、測色の対象となる被対象物Mごとに、適切な光量で上記光源を発光させ、被対象物Mを照明することができる。
【0028】
演算部32は、光量検出ユニット20から出力される電気信号に基づいて、各種演算を行う。例えば、演算部32は、上記電気信号が表す、光量検出ユニット20で検出された反射光量に基づいて、被対象物Mの表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、上記光学パラメータを、被対象物Mでの反射方向である複数の角度ごとに取得する。したがって、上記角度ごとに上記光学パラメータを表示部60に表示させると、表示部60を見る使用者は、表示された光学パラメータを見て、被対象物Mの表面の色彩評価を上記角度のそれぞれについて行うことが可能となる。
【0029】
ここで、上記光学パラメータとしては、例えば、分光反射率、XYZ表色系における3刺激値XYZ、L*a*b*表色系における明度L*およびクロマティクネス指数(a*値およびb*値)を挙げることができる。
【0030】
分光反射率は、各波長について、完全拡散反射面で光が反射されて得られる反射光量(既知とする)に対する、被対象物Mで反射された光の反射光量の比率に100を乗じた値(%)で表される。光学パラメータが分光反射率であれば、上記分光反射率に基づいて、例えば被対象物Mの表面に施された塗装の色や濃淡を評価することが可能となる。
【0031】
XYZ表色系における3刺激値XYZは、以下の数1式または数2式によって演算される。数1式は、CIE(国際照明委員会)で1931年に採択した等色関数に基づく三色表色系(2°視野XYZ表色系とも言う)における3刺激値XYZの演算式を示す。また、数2式は、CIEで1964年に採択した等色関数に基づく三色表色系(10°視野XYZ表色系とも言う)における3刺激値X10Y10Z10の演算式を示す。なお、ここでは、数1式の3刺激値XYZと数2式の3刺激値X10Y10Z10とをまとめて、3刺激値XYZと称する。光学パラメータが3刺激値XYZであれば、それらの刺激値を用いて、明度(Y値、輝度値)、色度x(=X/(X+Y+Z))およびy(=Y/(X+Y+Z))を評価することが可能となる。
【0032】
【0033】
【0034】
L*a*b*表色系における明度L*は、以下の数3式によって演算される。また、クロマティクネス指数(a*値およびb*値)は、以下の数4式によって演算される。a*値およびb*値から色相および彩度がわかるため、光学パラメータがL*、a*値、b*値であれば、明度、色相および彩度を評価することが可能となる。なお、数4式において、X/Xn、Y/Yn、Z/Znに(24/116)3=0.008856以下のものがある場合、対応する立方根の項をそれぞれ数5式に置き換えて計算する。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
(1-4.記憶部、操作部、表示部)
記憶部40は、例えば、不揮発性メモリで構成されており、制御部30の動作プログラムのほか、光量検出ユニット20から出力される各種データ(検出値)等を格納する。操作部50は、使用者による各種の入力を受け付ける入力部である。使用者によって操作部50が操作されると、その操作に応じた信号が制御部30に送られ、制御部30の制御により、各種の動作(例えば電源のON/OFF、測色の開始/停止など)が実行される。表示部60は、各種の情報を表示するディスプレイである。例えば、上記した光学パラメータや、後述する指標Iなど、演算部32で演算された結果が表示部60に表示される。
【0039】
(2.光輝材の輝度に相当する指標の算出について)
本実施形態では、上記した制御部30の演算部32は、色彩評価に用いられる上記光学パラメータを用いて、メタリック塗装またはパール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する。この場合、演算部32は、上記指標を算出する指標算出部として機能する。以下、上記指標の詳細について説明する。
【0040】
図3は、メタリック塗装またはパール塗装によって形成される塗膜(メタリック・パール塗料とも称する)に対して斜め45°方向から、波長550nmの光を照射したときのゴニオ特性(反射角特性)を示している。このような特性が得られるのは、以下の理由による。
【0041】
図4は、メタリック塗装またはパール塗装によって形成される塗膜70の層構成を模式的に示している。塗膜70は、下塗り層71、中塗り層72、カラーベース層73、光輝材74aを含む光輝材含有層74、クリア層75を、被対象物側からこの順で積層して構成される。なお、光輝材含有層74は、カラーベース層73を兼ねていてもよい。塗膜70に対して光を照射したとき、塗膜70からの反射光には、主に以下の3つの光が含まれる。
(1)塗膜70のクリア層75の表面で正反射された光(正反射光a)。
(2)塗膜70の光輝材74aで正反射された光(正反射光b)。
(3)塗膜70の内部で拡散されて出射された光(拡散反射光c)。
【0042】
図5は、
図3のゴニオ特性をさらに模式的に示したグラフである。塗膜70に対して斜め45°方向から光を照射したときの塗膜70からの反射光には、
図4で示した正反射光a、正反射光bおよび拡散反射光cが含まれるため、ゴニオ特性は、これらの光を反映した分布となる。すなわち、正反射に近い角度(例えばAs(-15)°~As(45°)では、光輝材74aによる正反射光bの影響により、他の角度方向(例えばAs(45°)~As(110°))よりも反射率が高くなり、中でも、正反射方向であるAs(0°)に付近では、正反射光aの割合が多くなるため、反射率がさらに高くなっている。また、拡散反射光cは、As(-15°)~As(110°)の角度方向全体にわたってほぼ均等に出射されるため、全角度範囲にわたって反射率を押し上げるように作用する。
【0043】
ところで、メタリック・パール塗料を正反射方向から観察した際に感じる、光輝材がキラキラとして見える効果を、「光輝感」と言う。この光輝感は、物理的には、光輝材からの反射光の光量(反射率)の大小に対応しており、輝度とも対応している。一般的に、より表面が平滑で反射率の高い光輝材を使う場合、または、同じ光輝材をより高密度で含む場合、光輝感がより高くなる。
【0044】
しかし、被対象物に対して例えば45°照明で反射された光を、正反射方向から受光して反射率を取得しても、反射光には、上記した正反射光aおよびbの両方の成分が含まれているため、厳密に光輝材での反射光(正反射光b)のみを捕捉しているとは言えない(
図5参照)。したがって、正反射方向の反射率のみに基づいて、光輝材による光輝感を評価することは適切ではない。
【0045】
また、一般的に流通しているマルチアングル測色計においては、米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)が策定・発行する規格であるASTM E2194に規定されているようなジオメトリが採用されている。例えば、被対象物に対して45°入射で光を照射し、被対象物から、As(-15°)、As(15°)、As(25°)、As(45°)、As(75°)、As(110°)の各方向に反射される光を受光する設計が挙げられる(本実施形態でもこの設計が採用されている)。このような設計のマルチアングル測色計では、正反射方向に最も近いAs(15°)で反射光を受光して反射率を取得しても、その反射率の大小が、光輝材による光輝感の大小と一致しない場合がある。それは光輝材によっては、正反射付近の限定的な角度範囲しか高反射率にならないものもあるためである。
【0046】
図6は、2種の光輝材d1・d2についてのゴニオ特性を模式的に示している。同図に示すように、光輝材d2は、光輝材d1に比べて、As(-15°)およびAs(15°)では反射率が低いが、As(0°)付近では反射率が高い特性となっており、正反射付近の限定的な角度範囲しか高反射率となっていない。このため、正反射に近い角度(例えばAs(-15°)、As(15°))での反射率だけに基づいて、光輝材による光輝感を評価することも適切ではない。
【0047】
すなわち、一般的なマルチアングル測色計では、正反射に最も近いAs(-15°)およびAs(15°)での反射率の大小関係と、正反射方向であるAs(0°)での反射率の大小関係とが逆転するケースがしばしば生じる。このため、特定の角度の反射率のみでは、光輝感との相関が高い指標が得られない場合がある。
【0048】
そこで、本願発明者らは、色彩評価に用いられる光学パラメータの1つである明度L*に着目し、明度L*と光輝感との相関について検討した。そして、明度L*と光輝感との相関性に基づいて、光輝感に相当する指標を演算するための演算式を見出し、この演算式を演算部32での演算式として設定した。以下、上記相関性の検討について具体的に説明する。
【0049】
図7は、光輝感の異なる複数の試料P1~P10についての明度L
*の角度分布(反射角特性)を示している。また、
図8は、
図7で示した角度分布を、一部の試料P4、P6、P7について示したものである。なお、光輝感は、試料P1で最も高く、試料P10に近づくにつれて減少し、試料P10で最も低くなるように、光輝材の粒径および密度が設定されているとする。
【0050】
図7および
図8より、光輝感が高い試料ほど、As(0°)での明度L
*が高くなっていることがわかる。また、As(0°)での明度L
*が高い試料(光輝感が高い試料)では、As(15°)付近(例えばAs(15°)~As(25°)にかけて)明度L
*の分布の勾配が急である。これに対して、As(0°)での明度L
*が低い試料(光輝感が低い試料)では、As(15°)付近の明度L
*の分布の勾配が緩やかな傾向にあることがわかる。この関係性を利用して、As(15°)での明度L
*(15°)と、As(25°)での明度L
*(25°)との差分に相当する指標L1と、実際の光輝感を示す明度L
*
0との相関を調べると、以下の結果が得られた。
【0051】
なお、明度L
*
0は、光輝材による正反射光(As(0°)の反射光)の反射率、つまり、
図4および
図5で示した正反射光bの反射率に基づいて算出される光学パラメータである。上記正反射光bの反射率については、例えば正反射方向にアレイセンサを設置し、試料からの角度分布に相当する光が、アレイセンサの各画素で受光するように光学系を構成した上で、正反射光aを含まない光を受光する画素域からの出力を参照することによって得ることが可能であるが、本実施形態および後述の実施形態では、それと同等の効果が得られる以下の方法により、上記正反射光bの反射率に相当する値を得て効果を検証した。すなわち、正反射光bは、複数の光輝材が様々な方向に傾いていることに伴い、正反射光aとは異なって、ある程度の角度分布を有している。この性質を利用し、
図9に示すように、照明光が照射される試料の面Sを水平面に対して傾けて配置することにより、正反射光aと正反射光bとを分離し、分離された正反射光bをセンサにて受光することにより、正反射光bの強度に相当する値を得た。以降で述べる明度L
*
0は、この手法で得られた、正反射光bの強度に相当する値である。なお、塗膜での拡散反射光cの光量は一般的に少ないため、ここでは無視できるものとする。
【0052】
図10は、光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および上記した指標L1(=L
*(15°)-L
*(25°))の各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。同図の各点の分布を近似する回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=0.3287x-23.998が得られ、回帰直線と各点との相関度を示す決定係数としては、R
2=0.9848が得られた。なお、決定係数R
2は、以下の数6式によって算出される。通常、決定係数R
2が0.5以上であれば、相関が高いと考えられるため、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標L1との間に高い相関があると言える。また、上記の明度L
*
0は実際の光輝感を示すため、結局、光輝材の光輝感と、指標L1との間には高い相関があると言える。
【0053】
【0054】
なお、各試料の表面に入射して反射された光のうち、正反射方向に近い角度(例えばAs(-15°)~As(45°))で反射された光を、ハイライトと称し、正反射方向から離れた角度(例えばAs(75°)~As(110°))で反射された光を、シェードと称する。以上では、指標L1として、As(15°)での明度L*(15°)とAs(25°)での明度L*(25°)との差分を求めたが、ハイライト範囲内の角度についての明度L*を含んでいればよく、上記2角度は15°および25°には限定されない。
【0055】
図11は、光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および指標L2の各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。なお、指標L2は、As(-15°)での明度L
*(-15°)とAs(15°)での明度L
*(15°)との差、すなわち、L
*(-15°)-L
*(15°)を指す。上記と同様に、回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=0.1795x-11.284が得られ、決定係数としては、R
2=0.9336が得られた。したがって、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標L2との間には高い相関があり、光輝材の光輝感と指標L2との間に高い相関があると言える。
【0056】
図12は、光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および指標L3の各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。なお、指標L3は、As(-15°)での明度L
*(-15°)とAs(25°)での明度L
*(25°)との差、すなわち、L
*(-15°)-L
*(25°)を指す。上記と同様に、回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=0.5309x-38.761が得られ、決定係数としては、R
2=0.9851が得られた。したがって、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標L3との間には高い相関があり、光輝材の光輝感と指標L3との間に高い相関があると言える。
【0057】
図13は、光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および指標L4の各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。なお、指標L4は、As(15°)での明度L
*(15°)とAs(25°)での明度L
*(25°)との差分に、As(-15°)での明度L
*(-15°)を重み付けで加えたもの、より具体的には、L
*(15°)-L
*(25°)+0.2L
*(-15°)である。上記と同様に、回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=0.4873x-19.881が得られ、決定係数としては、R
2=0.996が得られた。したがって、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標L4との間には高い相関があり、光輝材の光輝感と指標L4との間に高い相関があると言える。
【0058】
以上のことから、光輝材の光輝感との相関が高い指標を得るためには、上記指標を演算する演算式が、ハイライト範囲の2角度についての明度L*の差を含んで規定されていればよく、ハイライト範囲の他の角度についての明度L*をさらに加算して規定されていてもよく、各明度L*に重み係数が掛かっていてもよいと言える。また、詳細な検証は省略するが、上記指標を演算する演算式は、ハイライト範囲の2角度についての明度L*の差を含んでいれば、ハイライト範囲の他の角度についての明度L*をさらに減算して規定されていてもよいことがわかっている。
【0059】
また、以上では、光輝材の粒径に相当する指標を演算するにあたって、L*a*b*表色系の明度L*を用いて演算する例について説明したが、明度L*の代わりに、例えばXYZ表色系のXYZ刺激値や分光反射率を用いてもよい。この場合でも、算出された指標と光輝材の光輝感との間に高い相関が得られるため、指標に基づいて例えば異なる色同士で光輝材の光輝感を比較することも可能となり、指標に基づく光輝感の判断の適用範囲がさらに広がる。なお、明度L*の代わりに、XYZ表色系のXYZ刺激値や分光反射率を用いる例のさらに望ましい形態については、後述する実施の形態2で説明する。
【0060】
したがって、以上のことから、光輝材の光輝感に相当する指標I(指標L1~L4を含む)は、以下の式によって演算されればよいと言える。つまり、指標算出部としての演算部32は、以下の式で表される指標Iを、光輝材の光輝感を示す輝度に相当する指標として算出すればよい。
I=a1・I(θ1)+a2・I(θ2)+・・・+an・I(θn)
ただし、発光部10から出射された光の主光線の被対象物Mに対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、正反射方向を0°とし、正反射方向から入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とする。そして、nを2以上の整数として、複数の角度を、それぞれθ1~θnとする。ただし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度である。また、各々の角度θ1~θnの方向について、反射光量(反射率)に基づいて取得される光学パラメータを、それぞれI(θ1)~I(θn)とし、各光学パラメータI(θ1)~I(θn)の重み係数を、それぞれa1~anとする。なお、重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、である。
【0061】
上記の考察から、指標I(指標L1~L4)と、メタリック塗装またはパール塗装に使用される光輝材の輝度(光輝感、質感)とは相関が高いと言えるため、指標Iに基づいて、光輝材の光輝感の大小を評価することが可能となる。例えば、算出された指標I(数値)を表示部60に表示させることにより、使用者は表示部60に表示された指標Iを見て、光輝材の光輝感(輝度)の大小を評価することが可能となる。したがって、従来必要であったデジタルカメラなどの2次元センサを別途用いることなく、マルチアングル測色計1のみを用い、色彩評価と併せて、指標Iの値に基づいて質感(ここでは光輝感)を評価することが可能となる。よって、メタリック塗装およびパール塗装の評価に用いる装置としては、マルチアングル測色計1のみで済むため(デジタルカメラなどの2次元センサは不要であるため)、上記装置の大型化および高コスト化を回避することができる。
【0062】
また、重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であることから、指標Iの演算式には、特定の2角度についての光学パラメータの重み付け差に相当する項が必ず含まれることになる。上記の差と光輝材の光輝感との間には高い相関があるため、上記の差を指標Iの演算に反映させることにより、得られた指標Iに基づいて光輝材の光輝感(輝度)の大小を適切に評価することが可能となる。
【0063】
また、明度L*は、上述したように、光量検出ユニット20での受光量(反射光量)に応じて演算によって取得することが可能であり(分光反射率→3刺激値XYZ→L*a*b*の順に演算可能)、色彩評価(明るさの評価)のパラメータとして通常用いられる。したがって、このような明度L*を指標Iの演算に用いることにより、つまり、指標Iの演算で用いる各光学パラメータI(θ1)~I(θn)を全て明度L*とすることにより、マルチアングル測色計1を用いて色彩評価と質感評価とを両方行うことが確実に可能となる。
【0064】
なお、マルチアングル測色計1の光量検出ユニット20は、XYZ表色系の等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)に対応する分光感度を有するフィルタと、各フィルタに対応する複数のセンサを備え、導光部21a2~21f2から出射され、各フィルタを透過した光をそれぞれのセンサで検知し、各センサから受光量に応じた電気信号(3刺激値XYZに対応する電気信号)を制御部30に出力する構成であってもよい。この場合、演算部32は、上記電気信号に基づいて取得される3刺激値XYZから明度L*を演算し、得られた明度L*を用いて指標Iを算出することが可能となる。
【0065】
また、指標Iの一種である指標L1~L3の演算式では、ハイライト範囲の角度が2つであり(n=2であり)、2角度についての光学パラメータ(例えば明度L*)の重み係数a1およびa2のうち、一方は1であり、他方は-1である。この場合、2角度についての光学パラメータの差で指標Iの演算式が簡単に規定されるため、必要最小限の光学パラメータを用いて、指標Iを容易に算出することができる。
【0066】
また、本実施形態のマルチアングル測色計1は、演算部32によって算出された指標Iを表示する表示部60をさらに備えている。これにより、使用者は、表示部60に表示された指標Iを見て、光輝材の光輝感(輝度)の大小を評価することが可能となる。
【0067】
なお、以上では、演算式によって算出される指標Iが正の値であることを前提に説明したが、指標Iは負の値であってもよい。例えば指標L1の演算式において、L(15°)の重み係数を「-1」とし、L(25°)の重み係数を「+1」としたとき、指標I1の値は負になる。この場合は、指標(負の値)の原点(ゼロ)からの距離の大小を評価することによって、光輝材の光輝感の大小を評価すればよい。
【0068】
なお、光輝材の配向や分散などに依存する、塗料の観察角度を変化させた場合の明度変化を定量化する計算式として、Flip Flopという考え方がある。このFlip Flopでは、ハイライトとシェードとの間での明度L*の差を計算しており、一例として以下の式が公知である。
【0069】
【0070】
上記した従来の演算式では、光輝材からの正反射が支配的であるハイライト(例えば15°)と、上記正反射がほぼないシェード(例えば110°)との間で明度L*の差分を計算している。これに対して、本実施形態では、光輝材からの反射光に基づいて得られる明度の角度勾配を求めることが目的のため、演算式において明度の差分の計算に利用する角度範囲を、ハイライトの範囲(-15°≦Asθ≦45°)に限定している。この点で、本実施形態の演算式は、従来の演算式と顕著に異なっている。なお、従来の演算式では、ハイライトの複数角度間での明度の角度勾配を用いていないため、光輝材の光輝感との高い相関は得られない。
【0071】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、実施の形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0072】
実施の形態1では、光輝材の光輝感(輝度)に相当する指標の演算に、L*a*b*表色系の明度L*を用いる例について説明した。L*a*b*表色系の明度L*は、XYZ表色系ではY値のみに依存し、Y値は、RGB表色系においてG(緑)に相当する波長帯域の寄与が大きい。したがって、可視光の波長域(例えば400~700nm)のうち、中央付近(ほぼGの波長域)の分光反射強度(分光反射率、反射光量)は、明度L*への寄与度が大きく(明度L*に大きく加味され)、他の波長域(赤や青の波長域)の分光反射強度は、明度L*への寄与度が小さい。
【0073】
このため、例えばGの塗色同士での光輝感の比較や、無彩色同士での光輝感の比較(例えばホワイトの塗装とシルバーの塗装での光輝感の比較)であれば、明度L*を用いた演算式でも、その演算式によって算出される指標と光輝感との相関が十分に得られるため、問題はない。しかし、明度L*への寄与度が小さい波長域(例えば赤色)の塗色同士での光輝感の比較や、赤、緑、青などの複数の異なる塗色間での光輝感の比較においては、明度L*を用いた演算式では、算出される指標と光輝感との相関が十分に得られないおそれがある。
【0074】
そこで、本願発明者らは、色彩評価に用いられる光学パラメータのうち、明度L*以外の光学パラメータを用いた指標Iの演算式を検討した。そして、検討の結果、見出した演算式を、実施の形態1の演算部32での演算式として設定した。すなわち、演算部32は、以下の演算式で表される指標Iを、光輝材の光輝感(輝度)に相当する指標として算出する。
I1=a1・I’1(θ1)+a2・I’1(θ2)+・・・+an・I’1(θn)
I2=a1・I’2(θ1)+a2・I’2(θ2)+・・・+an・I’2(θn)
・・・
Im=a1・I’m(θ1)+a2・I’m(θ2)+・・・+an・I’m(θn)
I=I1+I2+・・・+Im
ただし、nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であるとする。また、各々の角度θ1~θnの方向について、反射光量(反射率)に基づいて取得される、異なる波長帯域ごとの、または異なる波長ごとの光学パラメータを、それぞれI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)とし、各光学パラメータI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)の重み係数を、それぞれa1~anとする。なお、重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、である。
【0075】
ここで、上記の光学パラメータI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)としては、波長依存性を示すパラメータを用いることができ、具体的には、3刺激値XYZ、または複数の波長λにおける分光反射率Ref(λ,θ)を用いることができる。なお、本明細書において、「波長依存性」とは、可視光(例えば400~700nm)の波長域にわたって(光学)特性が変化する性質を言う。以下、より詳細に説明する。
【0076】
(光学パラメータが3刺激値XYZの場合)
光学パラメータが、3刺激値XYZである場合、上記のI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)は、XYZに対応して、I’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、I’3(θ1)~I’3(θn)とすることができる。
【0077】
ここで、
I’1(θ1)~I’1(θn)=X(θ1)~X(θn)
I’2(θ1)~I’2(θn)=Y(θ1)~Y(θn)
I’3(θ1)~I’3(θn)=Z(θ1)~Z(θn)
としたとき、
I1=I’x=a1・X(θ1)+a2・X(θ2)+・・・+an・X(θn)
I2=I’y=a1・Y(θ1)+a2・Y(θ2)+・・・+an・Y(θn)
I3=I’z=a1・Z(θ1)+a2・Z(θ2)+・・・+an・Z(θn)
であり、
I=I’x+I’y+I’z
である。
【0078】
具体例としては、
I’x=X(15°)-X(25°)
I’y=Y(15°)-Y(25°)
I’z=Z(15°)-Z(25°)
I=I’x+I’y+I’z={X(15°)-X(25°)}
+{Y(15°)-Y(25°)}+{Z(15°)-Z(25°)}
である。
【0079】
図14は、光輝材の光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および指標Iの各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。実施の形態1と同様に、回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=0.6402x-17.327が得られ、決定係数としては、R
2=0.9906が得られた。したがって、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標Iとの間には高い相関があり、光輝材の光輝感と指標Iとの間に高い相関があると言える。
【0080】
別の具体例としては、
I’x=X(-15°)-X(25°)
I’y=Y(-15°)-Y(25°)
I’z=Z(-15°)-Z(25°)
I=I’x+I’y+I’z={X(-15°)-X(25°)}
+{Y(-15°)-Y(25°)}+{Z(-15°)-Z(25°)}
が挙げられる。
【0081】
図15は、光輝材の光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および指標Iの各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。実施の形態1と同様に、回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=1.1027x-9.8152が得られ、決定係数としては、R
2=0.9923が得られた。したがって、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標Iとの間には高い相関があり、光輝材の光輝感と指標Iとの間に高い相関があると言える。
【0082】
3刺激値XYZは、人間の目が感じるRGBの色とほぼ対応しているため、光学パラメータとして、各角度ごとの3刺激値XYZを用いて指標Iの演算式を設定することにより、この演算式に基づいて、可視光の波長域全体にわたって光輝材の光輝感との相関の高い指標Iを算出することができる。これにより、明度L*への寄与度が小さい波長域の塗色同士(例えば赤の塗色同士、青の塗色同士)での光輝感の比較や、複数の異なる塗色間(例えば赤の塗色と青の塗色との間)での光輝感の比較を行う場合でも、算出された指標Iに基づいて、光輝感の大小を適切に評価することができる。
【0083】
(光学パラメータが分光反射率の場合)
光学パラメータが、複数の波長λにおける分光反射率Ref(λ,θ)である場合、上記のI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)は、複数の波長λを、λ1、λ2、・・・λmとして、
I’1(θ1)~I’1(θn)=Ref(λ1,θ1)~Ref(λ1,θn)
I’2(θ1)~I’2(θn)=Ref(λ2,θ1)~Ref(λ2,θn)
・・・
I’m(θ1)~I’m(θn)=Ref(λm,θ1)~Ref(λm,θn)
と表すことができる。この場合、
I1=a1・Ref(λ1,θ1)+a2・Ref(λ1,θ2)+・・・+an・Ref(λ1,θn)
I2=a1・Ref(λ2,θ1)+a2・Ref(λ2,θ2)+・・・+an・Ref(λ2,θn)
・・・
Im=a1・Ref(λm,θ1)+a2・Ref(λm,θ2)+・・・+an・Ref(λm,θn)
であり、
I=I1+I2+・・・+Im
である。
【0084】
具体例としては、複数の波長λとして、可視光の400~700nmの範囲で10nmごとの波長を考える場合、以下のようにして指標Iを演算することができる。
I1=Ref(400nm,15°)-Ref(400nm,25°)
I2=Ref(410nm,15°)-Ref(410nm,25°)
・・・
I31=Ref(700nm,15°)-Ref(700nm,25°)
I=I1+I2+・・・+I31
【0085】
図16は、光輝材の光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および指標Iの各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。実施の形態1と同様に、回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=29.246x-2166.4が得られ、決定係数としては、R
2=0.9863が得られた。したがって、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標Iとの間には高い相関があり、光輝材の光輝感と指標Iとの間に高い相関があると言える。
【0086】
光学パラメータとして、各波長λおよび各角度ごとの分光反射率Ref(λ,θ)を用いて指標Iの演算式を設定することにより、この演算式に基づいて、可視光の波長域全体にわたって光輝材の光輝感との相関の高い指標Iを算出することができる。したがって、光学パラメータとして3刺激値XYZを用いた場合と同様に、明度L*への寄与度が小さい波長域の塗色同士での光輝感の比較や、複数の異なる塗色間での光輝感の比較を行う場合でも、算出された指標Iに基づいて、光輝感の大小を適切に評価することができる。
【0087】
なお、光学パラメータとして、3刺激値を用いる場合でも、分光反射率を用いる場合でも、同じマルチアングル測色計1を用いて、色彩の評価とともに光輝感を評価することができるため、メタリック塗装およびパール塗装の評価に用いる装置の大型化および高コスト化を回避できる点は、実施の形態1と同様である。
【0088】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、実施の形態1および2と異なる部分についてのみ説明する。
【0089】
本願発明者らは、指標Iの演算式についてさらに検討を重ねた結果、複数の光学パラメータを用いた指標Iの演算式を見出した。そして、上記演算式を、実施の形態1の演算部32での演算式として設定した。すなわち、演算部32は、以下の演算式で表される指標Iを、光輝材の光輝感(輝度)に相当する指標として算出する。
【0090】
I1=〔{a1・J1(θ1)+a2・J1(θ2)+・・・+an・J1(θn)}/{b1・J1(θ1)+b2・J1(θ2)+・・・+bn・J1(θn)}〕・K1(θP)
I2=〔{a1・J2(θ1)+a2・J2(θ2)+・・・+an・J2(θn)}/{b1・J2(θ1)+b2・J2(θ2)+・・・+bn・J2(θn)}〕・K2(θP)
・・・
Im=〔{a1・Jm(θ1)+a2・Jm(θ2)+・・・+an・Jm(θn)}/{b1・Jm(θ1)+b2・Jm(θ2)+・・・+bn・Jm(θn)}〕・Km(θP)
I=I1+I2+・・・+Im
ただし、nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であるとする。また、各々の角度θ1~θnの方向について、反射光量(反射率)に基づいて取得される光学パラメータを、それぞれJ(θ)およびK(θ)の2種類とし、ただし、J(θ)およびK(θ)の少なくとも一方は波長依存性を有するとする。また、
J(θ)=J1(θ1)~J1(θn)、J2(θ1)~J2(θn)、・・・Jm(θ1)~Jm(θn)とし、
K(θ)=K1(θP)、K2(θP)、K3(θP)、・・・Km(θP)とし、ただし、Pは、1~nのいずれかの整数であるとする。さらに、各光学パラメータJ(θ)の重み係数を、それぞれa1~anおよびb1~bnの2種類としたとき、重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれかである。重み係数b1~bnの各々は、正、負、ゼロのいずれかであるが、全てがゼロである場合を除く。
【0091】
ここで、J(θ)としては、例えば実施の形態2で用いた3刺激値XYZまたは分光反射率Ref(λ、θ)を用いることができる。また、K(θ)としては、例えば実施の形態1で用いた明度L*を用いることができる。
【0092】
一例として、J(θ)が3刺激値XYZであり、K(θ)が明度L*である場合、以下のようにして指標Iを算出することができる。すなわち、演算部32は、以下の演算式で表される指標Iを、光輝材の光輝感(輝度)に相当する指標として算出する。
I1=I’x=〔{X(-15°)-X(25°)}/X(15°)〕・L*(15°)
I2=I’y=〔{Y(-15°)-Y(25°)}/Y(15°)〕・L*(15°)
I3=I’z=〔{Z(-15°)-Z(25°)}/Z(15°)〕・L*(15°)
I=I’x+I’y+I’z
【0093】
図17は、光輝材の光輝感の異なる複数の試料について、明度L
*
0および指標Iの各値で決まる点を座標平面上にプロットしたものである。実施の形態1と同様に、回帰直線を最小二乗法によって求めると、回帰直線として、y=0.6366x+81.789が得られ、決定係数としては、R
2=0.9482が得られた。したがって、上記決定係数R
2の値より、明度L
*
0と指標Iとの間には高い相関があり、光輝材の光輝感と指標Iとの間に高い相関があると言える。
【0094】
本実施形態のように、指標Iの演算式に用いる2種の光学パラメータJ(θ)およびK(θ)の一方が波長依存性を有していることにより、実施の形態2と同様に、可視光の波長域全体にわたって光輝材の光輝感との相関の高い指標Iを算出することができる。したがって、実施の形態2と同様に、明度L*への寄与度が小さい波長域の塗色同士での光輝感の比較や、複数の異なる塗色間での光輝感の比較を行う場合でも、算出された指標Iに基づいて、光輝感の大小を適切に評価することができる。また、従来必要であった2次元CCDセンサ等の装置を別途用いることなく、マルチアングル測色計1のみを用いて、算出された指標Iに基づいて光輝感を評価できるため、メタリック塗装およびパール塗装の評価(色彩評価、質感評価)に用いる装置の大型化および高コスト化を回避することができる。
【0095】
また、本実施形態において、指標Iの演算式の分母の光学パラメータK(θ)の重み係数b1~bnの各々が1であることにより、上記分母が、複数の角度についての光学パラメータK(θ)の単純和(積分値)となる。これにより、I1~Imおよびそれを用いた指標Iの算出が容易となる。
【0096】
なお、重み係数b1~bnの各々は、1以外の正の値であってもよいし、負の値であってもよいし、ゼロであってもよいが、全てがゼロである場合は除かれる(演算式の分母がゼロとなり、指標Iが無限大となるため)。
【0097】
なお、細かい検証については省略するが、J(θ)およびK(θ)のうち、K(θ)のみ、あるいは、J(θ)およびK(θ)の両方が波長依存性を有する光学パラメータであっても、可視光の波長域全体にわたって光輝材の光輝感との相関の高い指標Iを算出するできることが確認されている。したがって、J(θ)およびK(θ)の少なくとも一方が、波長依存性を有する光学パラメータであれば、可視光の波長域全体にわたって光輝材の光輝感との相関の高い指標Iを算出して、その指標Iに基づいて、光輝感の大小を適切に評価することができると言える。
【0098】
特に、本実施形態のように、J(θ)が3刺激値XYZであり、K(θ)が明度L*であることにより、可視光の波長域全体にわたって光輝材の光輝感との相関の高い指標Iを確実に算出することができる。ちなみに、J(θ)が3刺激値XYZであり、K(θ)が明度L*である場合の指標Iの一般式は、以下の通りである。
I1=〔{a1・X(θ1)+a2・X(θ2)+・・・+an・X(θn)}/{b1・X(θ1)+b2・X(θ2)+・・・+bn・X(θn)}〕・L*(θP)
I2=〔{a1・Y(θ1)+a2・Y(θ2)+・・・+an・Y(θn)}/{b1・Y(θ1)+b2・Y(θ2)+・・・+bn・Y(θn)}〕・L*(θP)
I3=〔{a1・Z(θ1)+a2・Z(θ2)+・・・+an・Z(θn)}/{b1・Z(θ1)+b2・Z(θ2)+・・・+bn・Z(θn)}〕・L*(θP)
I=I1+I2+I3
【0099】
〔その他〕
以上の各実施の形態で説明したマルチアングル測色計は、以下のように表現することもできる。
【0100】
すなわち、以上で説明したマルチアングル測色計は、被対象物に対して光を出射する発光部と、前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、nを2以上の整数として、前記複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、ただし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、前記各々の角度θ1~θnの方向について、前記反射光量に基づいて取得される前記光学パラメータを、それぞれI(θ1)~I(θn)とし、前記各光学パラメータI(θ1)~I(θn)の重み係数を、それぞれa1~anとしたとき、前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出することを特徴とするマルチアングル測色計;
I=a1・I(θ1)+a2・I(θ2)+・・・+an・I(θn)
ただし、
重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、
である。
【0101】
上記のマルチアングル測色計において、前記各光学パラメータI(θ1)~I(θn)は、全て明度L*であってもよい。
【0102】
以上で説明したマルチアングル測色計は、被対象物に対して光を出射する発光部と、前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、前記複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、ただし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、前記各々の角度θ1~θnの方向について、前記反射光量に基づいて取得される、異なる波長帯域ごとの、または異なる波長ごとの前記光学パラメータを、それぞれI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)とし、前記各光学パラメータI’1(θ1)~I’1(θn)、I’2(θ1)~I’2(θn)、・・・I’m(θ1)~I’m(θn)の重み係数を、それぞれa1~anとしたとき、前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出することを特徴とするマルチアングル測色計;
I1=a1・I’1(θ1)+a2・I’1(θ2)+・・・+an・I’1(θn)
I2=a1・I’2(θ1)+a2・I’2(θ2)+・・・+an・I’2(θn)
・・・
Im=a1・I’m(θ1)+a2・I’m(θ2)+・・・+an・I’m(θn)
I=I1+I2+・・・+Im
ただし、
重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれか、
である。
【0103】
上記のマルチアングル測色計において、前記光学パラメータは、3刺激値XYZであり、
I’1(θ1)~I’1(θn)=X(θ1)~X(θn)
I’2(θ1)~I’2(θn)=Y(θ1)~Y(θn)
I’3(θ1)~I’3(θn)=Z(θ1)~Z(θn)
としたとき、
I1=I’x=a1・X(θ1)+a2・X(θ2)+・・・+an・X(θn)
I2=I’y=a1・Y(θ1)+a2・Y(θ2)+・・・+an・Y(θn)
I3=I’z=a1・Z(θ1)+a2・Z(θ2)+・・・+an・Z(θn)
であり、
I=I’x+I’y+I’z
であってもよい。
【0104】
上記のマルチアングル測色計において、前記光学パラメータは、複数の波長λにおける分光反射率Ref(λ,θ)であり、
前記複数の波長λを、λ1、λ2、・・・λmとして、
I’1(θ1)~I’1(θn)=Ref(λ1,θ1)~Ref(λ1,θn)
I’2(θ1)~I’2(θn)=Ref(λ2,θ1)~Ref(λ2,θn)
・・・
I’m(θ1)~I’m(θn)=Ref(λm,θ1)~Ref(λm,θn)
としたとき、
I1=a1・Ref(λ1,θ1)+a2・Ref(λ1,θ2)+・・・+an・Ref(λ1,θn)
I2=a1・Ref(λ2,θ1)+a2・Ref(λ2,θ2)+・・・+an・Ref(λ2,θn)
・・・
Im=a1・Ref(λm,θ1)+a2・Ref(λm,θ2)+・・・+an・Ref(λm,θn)
であり、
I=I1+I2+・・・+Im
であってもよい。
【0105】
上記のマルチアングル測色計において、n=2であり、重み係数a1およびa2のうち、一方は1であり、他方は-1であってもよい。
【0106】
以上で説明したマルチアングル測色計は、被対象物に対して光を出射する発光部と、前記発光部から出射され、前記被対象物によって複数の角度方向に反射された光をそれぞれ受光して、前記角度ごとに反射光量を検出する光量検出ユニットと、前記反射光量に基づいて、前記被対象物の表面のメタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられる光学パラメータを取得するとともに、前記光学パラメータを用いて、前記メタリック塗装または前記パール塗装で使用される光輝材の輝度に相当する指標を算出する指標算出部とを備え、前記発光部から出射された光の主光線の前記被対象物に対する入射方向と正反射方向とを含む面内で、前記正反射方向を0°とし、前記正反射方向から前記入射方向に近づくように傾く角度方向を正方向とし、nおよびmをそれぞれ2以上の整数として、前記複数の角度を、それぞれθ1~θnとし、ただし、角度θ1~θnは、それぞれ-15°~45°の範囲内の角度であり、前記各々の角度θ1~θnの方向について、前記反射光量に基づいて取得される前記光学パラメータを、それぞれJ(θ)およびK(θ)の2種類とし、ただし、J(θ)およびK(θ)の少なくとも一方は波長依存性を有し、J(θ)=J1(θ1)~J1(θn)、J2(θ1)~J2(θn)、・・・Jm(θ1)~Jm(θn)とし、K(θ)=K1(θP)、K2(θP)、K3(θP)、・・・Km(θP)とし、ただし、Pは、1~nのいずれかの整数であり、前記各光学パラメータJ(θ)の重み係数を、それぞれa1~anおよびb1~bnの2種類としたとき、前記指標算出部は、以下の式で表される指標Iを、前記光輝材の輝度に相当する指標として算出することを特徴とするマルチアングル測色計;
I1=〔{a1・J1(θ1)+a2・J1(θ2)+・・・+an・J1(θn)}/{b1・J1(θ1)+b2・J1(θ2)+・・・+bn・J1(θn)}〕・K1(θP)
I2=〔{a1・J2(θ1)+a2・J2(θ2)+・・・+an・J2(θn)}/{b1・J2(θ1)+b2・J2(θ2)+・・・+bn・J2(θn)}〕・K2(θP)
・・・
Im=〔{a1・Jm(θ1)+a2・Jm(θ2)+・・・+an・Jm(θn)}/{b1・Jm(θ1)+b2・Jm(θ2)+・・・+bn・Jm(θn)}〕・Km(θP)
I=I1+I2+・・・+Im
ただし、
重み係数a1~anにおいて、いずれか1つは正であり、いずれか1つは負であり、残りは正、負、ゼロのいずれかであり、
重み係数b1~bnの各々は、正、負、ゼロのいずれかであり、全てがゼロである場合を除く、
である。
【0107】
上記のマルチアングル測色計において、J(θ)は、3刺激値XYZであり、K(θ)は、明度L*であり、
I1=〔{a1・X(θ1)+a2・X(θ2)+・・・+an・X(θn)}/{b1・X(θ1)+b2・X(θ2)+・・・+bn・X(θn)}〕・L*(θP)
I2=〔{a1・Y(θ1)+a2・Y(θ2)+・・・+an・Y(θn)}/{b1・Y(θ1)+b2・Y(θ2)+・・・+bn・Y(θn)}〕・L*(θP)
I3=〔{a1・Z(θ1)+a2・Z(θ2)+・・・+an・Z(θn)}/{b1・Z(θ1)+b2・Z(θ2)+・・・+bn・Z(θn)}〕・L*(θP)
I=I1+I2+I3
であってもよい。
【0108】
上記のマルチアングル測色計において、重み係数b1~bnの各々は、1であってもよい。
【0109】
上記のマルチアングル測色計は、前記指標算出部によって算出された前記指標Iを表示する表示部をさらに備えていてもよい。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、例えば自動車などの工業製品の分野において、メタリック塗装またはパール塗装の色彩評価に用いられるマルチアングル測色計に利用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 マルチアングル測色計
10 発光部
20 光量検出ユニット
32 演算部(指標算出部)
60 表示部
M 被対象物