(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、支持体付き感光性フィルム、多層プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220705BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220705BHJP
G03F 7/032 20060101ALI20220705BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 515
G03F7/032 501
G03F7/027 502
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2020091769
(22)【出願日】2020-05-26
(62)【分割の表示】P 2019001411の分割
【原出願日】2014-06-26
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2013141033
(32)【優先日】2013-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 正応
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂雄
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-244150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/027
G03F 7/032
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)活性エステル硬化剤及びベンゾオキサジン硬化剤からなる群から選択される1種以上の硬化剤、
(C)(メタ)アクリレート構造を有する化合物、並びに
(E)無機充填材
を含有し、
感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(E)無機充填材の含有量が50質量%以上である、感光性樹脂組成物
(芳香族系シアネート化合物を含有する樹脂組成物を除く。)。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂として、温度20℃で液状のエポキシ樹脂と温度20℃で固形状のエポキシ樹脂とを併用して含む、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(A)成分の含有量が3~50質量%である、請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(B)成分の含有量が1~30質量%である、請求項1~3のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分が、重量平均分子量500~100000の(メタ)アクリレート構造を有するポリマーを含む、請求項1~4のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分がエポキシ基を有する、請求項1~5のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分の酸価が20mgKOH/g以下である、請求項1~6のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)成分の含有量が1~25質量%である、請求項1~7のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
更に(D)光重合開始剤を含有する、請求項1~8のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(E)無機充填材の含有量が85質量%以下である、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(E)無機充填材の含有量が75質量%以下である、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
多層プリント配線板の層間絶縁層用である、請求項1~11のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接が、0.005~0.05である、請求項1~12のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
感光性樹脂組成物の硬化物の吸水率が、0.01~3%である、請求項1~13のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物を含有する支持体付き感光性フィルム。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物の硬化物を有する多層プリント配線板。
【請求項17】
請求項16記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。より詳細には、多層プリント配線板の層間絶縁層に用いるのに適した感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像タイプが主流であり、現像を可能にするために酸無水物基やカルボキシル基含有のアクリレートを使用していた。しかしながら、酸無水物基やカルボキシル基は、熱劣化しやすいことから当該アクリレートを用いた硬化物では十分な物性が得られず、酸無水物基やカルボキシル基がある場合には、高い絶縁信頼性を有する絶縁層の形成には限界があった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、特定の光カチオン重合開始剤と特定のエポキシ樹脂を含有してなるMEMS用感光性樹脂組成物が開示されているが、その用途はMEMS用途に限られており、絶縁信頼性は不十分であることから、特に多層プリント配線板のビルドアップ層としての十分な性能を発揮することはできなかった。また、特許文献2では、半導体パッケージ用プリント配線板の保護膜用感光性樹脂組成物が開示されているが、絶縁信頼性が十分ではなく、その用途は保護膜に限られており、やはり多層プリント配線板のビルドアップ層としての十分な性能を発揮することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-263544号公報
【文献】国際公開第2010/026927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、感光性を有しながら、絶縁信頼性に優れ、多層プリント配線板のビルドアップ層(層間絶縁層)に好適な物性を有する樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル硬化剤、シアネートエステル硬化剤及びベンゾオキサジン硬化剤からなる群から選択される1種以上の硬化剤、並びに(C)(メタ)アクリレート構造を有する化合物、を含有する感光性樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の内容を含む。
〔1〕 (A)エポキシ樹脂、
(B)活性エステル硬化剤、シアネートエステル硬化剤及びベンゾオキサジン硬化剤からなる群から選択される1種以上の硬化剤、並びに
(C)(メタ)アクリレート構造を有する化合物、
を含有する、感光性樹脂組成物。
〔2〕 (A)エポキシ樹脂として、温度20℃で液状のエポキシ樹脂と温度20℃で固形状のエポキシ樹脂とを併用して含む、〔1〕記載の感光性樹脂組成物。
〔3〕 感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(A)成分の含有量が3~50質量%である、〔1〕又は〔2〕記載の感光性樹脂組成物。
〔4〕 感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(B)成分の含有量が1~30質量%である、〔1〕~〔3〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔5〕 (C)成分が、重量平均分子量500~100000の(メタ)アクリレート構造を有するポリマーを含む、〔1〕~〔4〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔6〕 (C)成分がエポキシ基を有する、〔1〕~〔5〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔7〕 (C)成分の酸価が20mgKOH/g以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔8〕 感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)成分の含有量が1~25質量%である、〔1〕~〔7〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔9〕 更に(D)光重合開始剤を含有する、〔1〕~〔8〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔10〕 更に(E)無機充填材を含有する、〔1〕~〔9〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔11〕 感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(E)無機充填材の含有量が10~85質量%である、〔10〕記載の感光性樹脂組成物。
〔12〕 感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、(E)無機充填材の含有量が50~85質量%である、〔10〕記載の感光性樹脂組成物。
〔13〕 多層プリント配線板の層間絶縁層用である、〔1〕~〔12〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔14〕 感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接が、0.005~0.05である、〔1〕~〔13〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔15〕 感光性樹脂組成物の硬化物の吸水率が、0.01~3%である、〔1〕~〔14〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物。
〔16〕 〔1〕~〔15〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物を含有する支持体付き感光性フィルム。
〔17〕 〔1〕~〔15〕のいずれか記載の感光性樹脂組成物の硬化物を有する多層プリント配線板。
〔18〕 〔17〕記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、感光性を有しながら、絶縁信頼性に優れ、多層プリント配線板のビルドアップ層に好適な物性を有する樹脂組成物を提供することができる。更には、本発明の感光性樹脂組成物は、誘電特性に優れ、消費電力が抑えられたビルドアップ層を提供することができ、耐水性や耐熱性に優れたビルドアップ層を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0010】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル硬化剤、シアネートエステル硬化剤及びベンゾオキサジン硬化剤からなる群から選択される1種以上の硬化剤、並びに(C)(メタ)アクリレート構造を有する化合物、を含有することを特徴とする。
【0011】
以下、本発明の樹脂組成物に含まれる、(A)乃至(C)成分について説明する。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、エポキシ樹脂である。
【0013】
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びトリメチロール型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0014】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。
【0015】
また、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下、「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固形状のエポキシ樹脂(以下、「固形状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固形状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物を硬化して形成される絶縁層の破断強度も向上する。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「EXA4032SS」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)等が挙げられる。液状エポキシ樹脂としては、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)が特に好ましい。液状エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0017】
固形状エポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。固形状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP-4700」、「HP-4710」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP7200」、「HP7200H」、「HP7200K-65I」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311-G3」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN-502H」(トリスフェノールエポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラックエポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ESN475」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)等が挙げられる。特に、日本化薬(株)製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「NC3000L」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、DIC(株)製の「HP7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)が好ましい。固形状エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0018】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固形状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固形状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:4の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固形状エポキシ樹脂との量比をかかる範囲とすることにより、i)接着フィルムの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)接着フィルムの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する絶縁層を得ることができるなどの効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固形状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固形状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3~1:3.5の範囲がより好ましく、1:0.6~1:3の範囲がさらに好ましく、1:0.8~1:2.5の範囲が特に好ましい。
エポキシ樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3質量%~50質量%が好ましく、5質量%~45質量%がより好ましく、7質量%~35質量%が更に好ましく、8質量%~20質量%が特に好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~3000、より好ましくは80~2000、さらに好ましくは110~1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり耐熱性に優れた絶縁層をもたらす。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0020】
<(B)成分>
(B)成分は、活性エステル硬化剤、シアネートエステル硬化剤及びベンゾオキサジン硬化剤からなる群から選択される1種以上の硬化剤である。
【0021】
-活性エステル硬化剤-
本発明の感光性樹脂組成物において使用される活性エステル硬化剤は、硬化物としたときの耐熱性、誘電特性、耐水性を向上させることができ、特に誘電特性、耐水性に優れる。活性エステル硬化剤としては、特に制限はないが、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましい。活性エステル硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。
【0022】
硬化物としたときの耐熱性の向上の観点から、活性エステル硬化剤としては、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを縮合反応させた反応物から得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物が更に好ましい。そして、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させた反応物から得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が更に一層好ましい。そして、活性エステル硬化剤は、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させた反応物から得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が殊更好ましい。また、活性エステル化合物は、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。活性エステル硬化剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0023】
用いられ得るカルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも硬化物としたときの耐熱性の向上の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。チオカルボン酸化合物としては、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0024】
フェノール化合物又はナフトール化合物の例としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0025】
なかでも、硬化物としたときの耐熱性の向上、溶解性の向上の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)、フェノールノボラックがより好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)、フェノールノボラックが更に好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)、フェノールノボラックが更に一層好ましく、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)が殊更好ましく、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)が特に好ましい。チオール化合物の例としては、具体的には、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0026】
ジシクロペンタジエン型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル硬化剤としては、より具体的には下式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【0028】
式(1)中、2個あるRは、互いに独立にフェニル基又はナフチル基である。kは0又は1を表す。nは繰り返し単位の平均で0.05~2.5である。
【0029】
誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基であることが好ましい。kは0であることが好ましい。また、nは0.25~1.5であることが好ましい。
【0030】
活性エステル硬化剤としては、日本国特開2004-277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル硬化剤を用いることもできる。市販されている活性エステル硬化剤の例としては、具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル硬化剤が好ましく、なかでもナフタレン構造を含む活性エステル硬化剤、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)構造を含む活性エステル硬化剤がより好ましい。ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)構造を含む活性エステル硬化剤としては、例えば、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC8000-65T(DIC(株)製)が挙げられ、ナフタレン構造を含む活性エステル硬化剤としては、例えば、EXB9416-70BK(DIC(株)製)が挙げられ、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル硬化剤としては、例えば、DC808(三菱化学(株)製)が挙げられ、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル硬化剤としては、例えば、YLH1026(三菱化学(株)製)が挙げられる。特に、DIC(株)製のHPC8000-65T(ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)構造を含む活性エステル硬化剤)が好ましい。
【0031】
-シアネートエステル硬化剤-
本発明の感光性樹脂組成物において使用されるシアネートエステル硬化剤は、硬化物としたときの耐熱性、誘電特性、耐水性を向上させることができ、特に耐熱性に優れる。シアネートエステル系硬化剤としては、特に制限はないが、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500~4500が好ましく、600~3000がより好ましい。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されているシアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30S)、ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230S75)、ジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT-4000、DT-7000)等が挙げられる。特に、ロンザジャパン(株)製の「PT30S」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)が好ましい。
【0032】
-ベンゾオキサジン硬化剤-
本発明の感光性樹脂組成物において使用されるベンゾオキサジン硬化剤は、硬化物としたときの耐熱性、誘電特性、耐水性を向上させることができる。ベンゾオキサジン硬化剤としては、特に制限はないが、具体例としては、F-a型ベンゾオキサジン、P-d型ベンゾオキサジン(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられ、特にP-d型ベンゾオキサジン(四国化成(株)製)が好ましい。
【0033】
(B)成分である、上記活性エステル硬化剤、上記シアネートエステル硬化剤、上記ベンゾオキサジン硬化剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。特に、誘電正接や吸水率を低下させることが出来る点から、活性エステル硬化剤が好ましい。
(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、1~30質量%含むことが好ましく、3~25質量%含むことがより好ましく、5~20質量%含むことが更に好ましい。
【0034】
<(C)成分>
(C)成分は、(メタ)アクリレート構造を有する化合物である。
【0035】
(メタ)アクリレート構造を有する化合物としては、これらに限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノまたはジアクリレート類、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド若しくはε-カプロラクトンの付加物の多価アクリレート類、フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等フェノール類、あるいはそのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルから誘導されるエポキシアクリレート類、メラミンアクリレート類、及び/又は上記のアクリレートに対応するメタクリレート類などが挙げられる。これらのなかでも、多価アクリレート類または多価メタクリレート類が好ましく、例えば、3価のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N,N’,N’-テトラキス(β-ヒドロキシエチル)エチルジアミンの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、3価以上のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ホスフェート、ジ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等のリン酸トリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。(C)成分は、硬化物の架橋性を向上させ、耐水性や耐熱性を向上させる点から、エポキシ基を有することが好ましい。特に、合成例1に従い合成した「クレゾールノボラック構造及びエポキシ基を有するアクリレート化合物」、合成例2に従い合成した「ビキシレノール構造、ビスクレゾールフルオレン構造及びエポキシ基を有するメタクリレート化合物」が特に好ましい。これら(メタ)アクリレート化合物はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0036】
(C)成分は、解像性向上の点から、重量平均分子量が500~100000の(メタ)アクリレート構造を有するポリマーを含むことが好ましく、より好ましくは700~70000、更に好ましくは1000~50000であり、特に好ましくは1500~35000である。
【0037】
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物では、絶縁信頼性を高めるために、(C)成分として、カルボキシル基を有さない化合物を使用することが好ましいが、本発明の感光性樹脂組成物の絶縁信頼性を阻害しない程度にカルボキシル基を有することができる。例えば、(C)成分の酸価は20mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以下がより好ましく、5mgKOH/g以下がさらに好ましく、3mgKOH/g以下が更に一層好ましく、1mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0039】
(C)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、1~25質量%含むことが好ましく、5~15質量%含むことがより好ましい。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに以下の成分を配合することができる。
【0041】
<(D)光重合開始剤>
本発明の感光性樹脂組成物においては、さらに(D)光重合開始剤を含有させることにより、樹脂組成物を効率的に光硬化させて硬化物とすることができる。(D)光重合開始剤は、特に制限されないが、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、ベンゾイルエチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のアルキルフェノン系光重合開始剤や、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤や、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル系光重合開始剤や、スルホニウム塩系光重合開始剤等が挙げられる。特に、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製、IC819)等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン(株)製、OXE-01)等のオキシムエステル系光重合開始剤が高感度であり好ましい。光重合開始剤はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0042】
(D)光重合開始剤の配合量は、感光性樹脂組成物を十分に光硬化させ、絶縁信頼性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、その含有量を0.1質量%以上とすることが好ましく、0.2質量%以上とすることがより好ましく、0.3質量%以上とすることが更に好ましい。一方、光重合開始剤の配合量は、感度過多による寸法安定性の低下を防止するという観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、その含有量を2質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以下とすることが更に好ましい。
【0043】
<(E)無機充填材>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(E)無機充填材を含有させることにより、熱膨張率を低下させることができる。(E)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、中空シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが特に好適である。シリカとしては球状のシリカが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されている好ましい球状溶融シリカとしては、例えば、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
【0044】
(E)無機充填材の平均粒径は、絶縁信頼性の向上、光硬化性の向上という点から1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.6μm以下であることが更に好ましく、0.4μm以下であることが更に一層好ましい。他方で、無機充填材の凝集を防止するという点から、(E)無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。なお、無機充填材としては、耐湿性、分散性を向上させるため、シランカップリング剤(エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤等)、チタネート系カップリング剤、シラザン化合物等の表面処理剤で表面処理してあるものが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
エポキシシラン系カップリング剤としては、例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、アミノシラン系カップリング剤としては、例えば、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、メルカプトシラン系カップリング剤としては、例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販のカップリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0046】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ-n-ブトキシチタンモノステアレート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0047】
シラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサ(t-ブチル)ジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサオクチルジシラザン、1,3-ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3-ジ-n-オクチルテトラメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジメチルテトラフェニルジシラザン、1,3-ジエチルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ジメチルジシラザン、1,3-ジプロピルテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等を挙げることができ、特にヘキサメチルジシラザンが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
(E)無機充填材は、感光性樹脂組成物の分散性の向上の観点から、シラザン化合物で表面処理した無機充填材を用いることが好ましい。そしてシラザン化合物で表面処理した後に、シランカップリング剤で表面処理することで、更なる分散性の向上を図ることができる。表面処理に用いられるシラザン化合物の量は、無機充填材100質量%に対して0.001質量%~0.3質量%であることが好ましく、0.005質量%~0.2質量%であることがより好ましい。ヘキサメチルジシラザンで表面処理した球状溶融シリカとしては、例えば、(株)アドマテックス製「SC2050」が挙げられる。また表面処理に用いられるシランカップリング剤の量は、無機充填材100質量%に対して0.1質量%~6質量%であることが好ましく、0.2質量%~4質量%であることがより好ましく、0.3質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0049】
(E)無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製LA-500、LA-750等を使用することができる。
【0050】
(E)無機充填材を配合する場合の含有量は、硬化物の線熱膨張率を低下させ、硬化物の歪みを防止するという観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、40質量%以上が更により好ましく、耐熱性を向上させる点から50質量%以上が特に好ましい。他方で、(E)無機充填材を配合する場合の含有量は、アルカリ現像性の低下の防止、光硬化性の向上という観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、85質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
<(F)硬化促進剤>
本発明の感光性樹脂組成物においては、更に(F)硬化促進剤を含有させることにより、硬化物の耐熱性、接着性、耐薬品性等を向上させることができる。
(F)硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
アミン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)-ウンデセンなどのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0053】
グアニジン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0055】
ホスホニウム系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本発明の感光性樹脂組成物において、硬化促進剤(金属系硬化促進剤を除く)としては、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤を用いるのが好ましく、中でも、4-ジメチルアミノピリジン、2-フェニル-4-メチルイミダゾールを用いるのが特に好ましい。硬化促進剤(金属系硬化促進剤を除く)の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.005質量%~1質量%の範囲であることが好ましく、0.01質量%~0.08質量%の範囲であることがより好ましい。0.005質量%未満であると、硬化が遅くなり硬化時間が長く必要となる傾向にあり、1質量%を超えると樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0057】
金属系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物において、金属系硬化促進剤としては、有機コバルト錯体を用いることが好ましく、特に、コバルト(III)アセチルアセトナートを用いるのが好ましい。金属系硬化促進剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、金属系硬化触媒に基づく金属の含有量が25ppm~500ppmの範囲であることが好ましく、30ppm~200ppmの範囲であることがより好ましい。
【0059】
<(G)有機充填材>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(G)有機充填材を含有させることにより、硬化物の応力を緩和させることができ、硬化物としたときにクラックの発生を防止することができる。(G)有機充填材としては、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、本発明においては、ゴム粒子を用いることが好ましい。
【0060】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体であるものならばどのようなゴム粒子でもよく、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER-91(日本合成ゴム(株)社製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、ガンツ化成(株)社製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)社製)などが挙げられ、AC3816N(ガンツ化成(株)社製)が好ましい。
【0061】
ポリアミド微粒子としては、アミド結合を有する樹脂の50μm以下の微粒子であればどのようなポリアミド微粒子でもよく、例えば、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、ケブラー等の芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。ポリアミド微粒子としては、具体的には、VESTOSINT 2070(ダイセルヒュルス(株)社製)や、SP500(東レ(株)社製)などが挙げられる。
【0062】
(G)有機充填材の平均粒径は、0.005μm~1μmの範囲であることが好ましく、0.2μm~0.6μmの範囲であることがより好ましい。(G)有機充填材の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。(G)有機充填材の平均粒径は、例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR-1000;大塚電子(株)製)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0063】
(G)有機充填材を配合する場合の含有量は、耐熱性の向上、レーザー加工性の向上という観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合、0.1質量%~6質量%が好ましく、0.5質量%~4質量%がより好ましい。
【0064】
<(H)光増感剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、(H)光増感剤として、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類を加えてもよいし、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などのような光増感剤を加えてもよい。本発明においては、光増感剤として、チオキサントン類を使用するのが好ましく、2,4-ジエチルチオキサントンを使用するのがさらに好ましい。光増感剤はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0065】
<(I)有機溶剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、更に(I)有機溶剤を含有させることによりワニス粘度を調整できる。(I)有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられるが、中でも、ソルベントナフサ、メチルエチルケトンが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。有機溶剤を用いる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
【0066】
<(J)その他の添加剤>
(J)その他の添加剤としては、例えば、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤、フェノール系硬化剤等の熱硬化樹脂、等の各種添加剤を添加することができる。
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)~(C)(及び任意で(D)~(J)も)を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより、樹脂ワニスとして製造することができる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダ-フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層とした多層プリント配線板)として好適であり、特に層間絶縁層用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層とした多層プリント配線板)、メッキ形成用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成された多層プリント配線板)として好適に使用することができる。
【0069】
<感光性フィルム>
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂ワニス状態で支持基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることで樹脂組成物層を形成して、感光性フィルムとすることができる。また、予め支持体上に形成された感光性フィルムを支持基板に積層して用いることもできる。本発明の感光性フィルムは様々な支持基板に積層させることができる。支持基板としては主に、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。
【0070】
<支持体付き感光性フィルム>
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物層が支持体上に層形成された支持体付き感光性フィルムの形態で好適に使用することができる。つまり、支持体付き感光性フィルムは感光性樹脂組成物の層が支持体上に形成されている。支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
市販の支持体としては、例えば、王子製紙株式会社製の製品名「アルファンMA-410」、「E-200C」、信越フィルム株式会社製等のポリプロピレンフィルム、帝人株式会社製の製品名「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は、樹脂組成物層の除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm~50μmの範囲であることが好ましく、10μm~25μmの範囲であることがより好ましい。この厚さが5μm未満では、現像前に行う支持体剥離の際に支持体(支持フィルム)が破れやすくなる傾向があり、他方で、厚さが50μmを超えると、支持体上から露光する際の解像度が低下する傾向がある。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0071】
また、紫外線等の活性エネルギー線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS-K6714で規格化されているヘーズ)が0.1~5であるものが好ましい。さらに樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
【0072】
支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることが更に好ましい。この厚さが1μm未満では、保護フィルムの取り扱い性が低下する傾向があり、40μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。なお、保護フィルムは、樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0073】
本発明の支持体付き感光性フィルムは、当業者に公知の方法に従って、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。具体的には、まず、真空脱泡法等で感光性樹脂組成物中の泡を完全に除去した後、感光性樹脂組成物を支持体上に塗布し、熱風炉あるいは遠赤外線炉により溶剤を除去し、乾燥せしめ、ついで必要に応じて得られた樹脂組成物層上に保護フィルムを積層することにより支持体付き感光性フィルムを製造することができる。具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の有機溶剤量によっても異なるが、30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスにおいては、80℃~120℃で3分間~13分間で乾燥させることができる。樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを防止するという観点から、5μm~500μmの範囲とすることが好ましく、10μm~200μmの範囲とするのがより好ましく、15μm~150μmの範囲とするのが更に好ましく、20μm~100μmの範囲とするのが更に一層好ましく、20μm~60μmの範囲とするのが殊更好ましい。
【0074】
感光性樹脂組成物の塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0075】
<多層プリント配線板>
次に、感光性樹脂組成物を用いて多層プリント配線板を製造する際の例を記載する。
本発明の感光性樹脂組成物を用いて層間絶縁層を製造すると、(1)ビア開口が一括で行える、(2)ビア位置精度がレーザー開口よりも優れたものが得られるなどのメリットが得られる。
【0076】
(塗布及び乾燥工程)
感光性樹脂組成物を樹脂ワニス状態で直接的に回路基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることにより、回路基板上に感光性フィルムを形成する。回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0077】
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃~120℃で3分間~13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0078】
(ラミネート工程)
また、支持体付き感光性フィルムを用いる場合には、樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、支持体付き感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
【0079】
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm2~11kgf/cm2(9.8×104N/m2~107.9×104N/m2)、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0080】
(露光工程)
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性フィルムが設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0081】
(現像工程)
露光工程後、樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
【0082】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられ、本発明においては、なかでも有機溶剤による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0083】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0084】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%~90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGMEA)が挙げられ、本発明では、中でもPGMEAが好ましい。
【0085】
本発明のパターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0086】
(ポストベーク工程)
上記現像工程終了後、ポストベーク工程を行い、絶縁層(硬化物)を形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm2~10J/cm2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~220℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~200℃で30分間~120分間の範囲で選択される。
【0087】
(メッキ工程)
次に、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法を使用することができる。蒸着法(真空蒸着法)は、例えば、支持体を真空容器内に入れ、金属を加熱蒸発させることにより絶縁層上に金属膜形成を行うことができる。スパッタリング法も、例えば、支持体を真空容器内に入れ、アルゴン等の不活性ガスを導入し、直流電圧を印加して、イオン化した不活性ガスをターゲット金属に衝突させ、叩き出された金属により絶縁層上に金属膜形成を行うことができる。
【0088】
湿式メッキの場合は、形成された絶縁層の表面に対して、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行うことによって凸凹のアンカーを形成する。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50℃~80℃で5分間~20分間膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液が挙げられ、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤による粗化処理は、絶縁層を60℃~80℃で10分間~30分間酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5重量%~10重量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、30℃~50℃で3分間~10分間中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
【0089】
次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0090】
<半導体装置>
本発明の多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。本発明の多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0091】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。
【0092】
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性を有しながら、絶縁信頼性に優れ、多層プリント配線板のビルドアップ層に好適な物性を有する樹脂組成物を提供することができる。さらに誘電特性、耐水性、耐熱性に優れ、有機溶剤での現像に適した硬化物を提供することができる。以下、これらの特性について詳述する。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述の<誘電特性の測定>により測定することができる。誘電正接は、具体的には、空洞共振摂動法により周波数を5.8GHzとし、測定温度を23℃として測定することができる。高周波での発熱防止、信号遅延および信号ノイズの低減という観点から、誘電正接は0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが更に一層好ましく、0.013以下であることが殊更好ましい。他方で、誘電正接の下限値は特に制限は無いが、0.005以上などとなる。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の耐水性(吸水率)は、後述の<耐水性の測定>で説明する測定方法により測定することができる。吸水率は、プリント配線板作製時のボイドの発生防止、絶縁信頼性の向上という観点から、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、0.8%以下であることが更に一層好ましい。一方、吸水率の下限値は特に制限は無いが、0.01%以上、0.1%以上、0.2%以上などとなる。
【0095】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性は、後述の<耐熱性の評価>で説明する測定方法により測定することができる。耐熱性の指標としては、硬化物に熱履歴を与えた際の硬化物の劣化を防止するという点で、ガラス転移点を採用するのがよい。ガラス転移点は110℃以上であることが好ましい。ガラス転移点の上限値は特に制限されないが、300℃以下であることが好ましい。また、プリント配線板の歪み防止という点で、耐熱性の指標として、熱膨張係数を採用してもよい。熱膨張係数は、10~30ppm/℃が好ましい。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」は質量部を意味する。
【0097】
<評価用積層体の調整>
18mm厚の銅層で回路が形成されているガラスエポキシ基板の銅層上をCZ8100(有機酸を含む表面処理剤、メック(株)製)処理にて粗化を施した。次に実施例、比較例で得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層が銅回路表面と接するようにし、真空ラミネーター(ニチゴーモートン株式会社製、VP160)を用いて積層させ、前記ガラスエポキシ基板と、前記樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を調製した。圧着条件は、真空引き20秒間後に、圧着温度80℃、圧着圧力0.2MPa、加圧時間20秒で行った。該積層体を室温1時間以上静置し、該積層体の支持体上から、丸穴パターンを用い、直径80mmの丸穴が形成できるよう、パターン形成装置を用いて、100mJ/cm2の紫外線で露光を行った。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。実施例では、該積層板上の樹脂組成物層の全面に現像液として30℃のPGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート)に浸漬し現像し、その後、現像液を拭き取り、1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに190℃、60分間で加熱処理し、直径80mmの開口部を有する絶縁層を該積層体上に形成した。これを評価用積層体とした。
【0098】
一方、比較例では、該積層板上の樹脂組成物層の全面に現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像した。スプレー現像後、1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに190℃、60分間で加熱処理し、直径80mmの開口部を有する絶縁層を該積層体上に形成した。
【0099】
<評価用硬化物の調整>
実施例、比較例で得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層に100mJ/cm2の紫外線で露光を行い光硬化させた。その後、樹脂組成物層の全面に1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間で加熱処理し、絶縁層形成した。その後、支持体を剥がし取って、評価用硬化物とした。
【0100】
<測定方法・評価方法>
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0101】
<感光性の評価>
(解像性)
解像性の評価として、評価用積層体の丸穴のレジスト形状をSEMで観察(倍率1000倍)し、下記基準で評価した。
○:丸穴形状が良好で、捲くれや剥がれがない。
×:丸穴形状が現像により広がってしまい、捲くれや剥がれがある。
【0102】
(現像性)
現像性の評価として、評価用積層体の丸穴の底部の残渣をSEMにて観察(倍率1000倍)し、丸穴底部の残渣の有無を下記基準で評価した。
○:直径80mmの丸穴の基板上に現像残渣はなく、現像残渣除去性に優れている。
×:直径80mmの丸穴の基板上に現像残渣があり、現像残渣除去性が劣る。
【0103】
<絶縁信頼性の評価>
櫛歯型電極(ライン/スペース=15ミクロン/15ミクロン)が形成されたイミドフィルムに、実施例、比較例で得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層が銅回路表面と接するようにし、真空ラミネーター(ニチゴーモートン株式会社製、VP160)を用いて積層させた。圧着条件は、真空引き20秒間後に、圧着温度80℃、圧着圧力0.2MPa、加圧時間20秒で行った。該積層体を室温1時間以上静置し、該積層体の支持体上から、100mJ/cm2の紫外線で露光を行った。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。その後、1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに190℃、60分間で加熱処理し、これを評価用積層体とした。この評価用積層体を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧3.3Vを荷電し、100時間、槽内にてHAST試験を行った。100時間経過後の評価用積層体の絶縁抵抗値を下記の判断基準に従い評価した。
○:108Ω以上
×:108Ω以下
【0104】
<誘電特性の測定>
(誘電正接)
評価用硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプル1とした。この評価サンプル1についてアジレントテクノロジーズ(AGILENT TECHNOLOGIES)社製HP8362B装置を用い空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2本の評価サンプル1について測定を行い、平均値を算出した。
【0105】
<耐水性の測定>
(吸水率)
評価用硬化物を5cm四方に切り出して評価サンプル2とした。続いて、評価サンプル2の質量を測定し、質量測定後の評価サンプルを沸騰状態の純水に入れ、評価サンプル2が全てつかるようにした状態で1時間放置した。その後、評価サンプル2を取り出し、表面の水分を十分ふき取り、吸水後の質量を0.1mgまで量り、次式により耐水性WA(%)を求めた。4つの評価サンプル2について測定を行い、平均値を算出した。
【0106】
WA=((W1-W0)/W0)×100
W0:吸水前の評価サンプルの質量(g)
W1:吸水後の評価サンプルの質量(g)
【0107】
<耐熱性の評価>
(ガラス転移温度)
評価用硬化物を、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、評価サンプル3とした。続いて、熱機械分析装置TMA-SS6100(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。評価サンプル3を前記装置に装着後、荷重1G、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。ガラス転移温度は、2回目の測定における寸法変化シグナルの傾きが変化する点からガラス転移点温度(℃)を算出した。熱膨張係数は、2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0108】
<合成例1:クレゾールノボラック構造及びエポキシ基を有するアクリレート化合物の合成>
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート700gにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、EPICLON N-660、エポキシ当量205〕2050g(当量:10.0)、アクリル酸360g(当量:5.0)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、90℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン5.9gを仕込み、120℃に昇温して12時間反応を行った。得られた反応液を溶剤で希釈して、アクリレート化合物(製造物A)を得た。
・ エポキシ当量:427
・ 酸価:0.49mgKOH/g
・ 重量平均分子量:2000
・ 固形分65質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液
【0109】
<合成例2:ビキシレノール構造、ビスクレゾールフルオレン構造及びエポキシ基を有するメタクリレート化合物の合成>
反応容器に、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製YX4000、エポキシ当量185)190g、ビスフェノールアセトフェノン(フェノール性水酸基当量145)14g、ビスクレゾールフルオレン(JFEケミカル(株)製、フェノール性水酸基当量190)170g、シクロヘキサノン150gを入れ、攪拌して溶解させた。次いで、テトラメチルアンモニウムアンモニウムクロライド溶液0.5gを滴下し、窒素雰囲気下、180℃5時間にて反応させた。次に温度を60℃まで下げ、滴下ロートを通じてイソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、商品名カレンズMOI、メタクリル当量155)100部とジブチル錫ジラウレート0.04部の混合液を滴下し、滴下終了後反応系を70℃で4時間保持することにより、イソシアナート基を消失させ、メタクリレート化合物を得た。反応終了後、濾布を用いて濾過して、溶剤により希釈することでメタクリレート化合物(製造物B)を得た。
・ エポキシ当量:6400
・ 酸価:0.73mgKOH/g
・ 重量平均分子量:29000
・ 固形分25質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液
【0110】
<実施例1~3、比較例1>
表1に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールを用いて混錬し、樹脂ワニスを調製した。次に、かかる樹脂ワニスを16mm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(R310-16B、三菱樹脂株式会社製、商品名)上にダイコーターにて均一に塗布、乾燥し、樹脂組成物層が20mmの支持体付き感光性フィルムを得た。乾燥は熱風対流式乾燥機を用いて75~120℃(平均100℃)で4.5分間乾燥させた。これらの測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0111】
【0112】
使用した材料を以下に示す。
(A)成分 エポキシ樹脂
・HP-7200H(DIC(株)製):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量280、不揮発分65%のソルベントナフサ溶液
・HP4032SS(DIC(株)製):液状ナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量144
・ZX1059(新日鐵化学(株)製):ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の1:1混合品、エポキシ当量169
・YX4000HK(三菱化学(株)製):結晶性2官能エポキシ樹脂、エポキシ当量185
・NC3000L(日本化薬(株)製):ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量269
(B)成分 活性エステル、シアネートエステル、ベンゾオキサジン
・HPC8000-65T(DIC(株)製):ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物(ポリシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)型活性エステル硬化剤、固形分65%のトルエン溶液
・BA230S75(ロンザジャパン(株)製):ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液
・PT30S(ロンザジャパン(株)製):フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂シアネート当量約133、不揮発分85質量%のMEK溶液
・P-d型ベンゾオキサジン(四国化成(株)製):ベンゾオキサジンモノマー 当量217、不揮発分60質量%のMEK溶液
(C)成分 (メタ)アクリレート含有化合物
・製造物A 合成例1に従い合成
・製造物B 合成例2に従い合成
・DPHA(日本化薬(株)製):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、酸価0.5mgKOH/g
・ZFR-1533H(日本化薬(株)製):ビスフェノールF型エポキシアクリレート、固形分68%のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液、酸無水物変性あり、酸価70mgKOH/g、重量平均分子量:14000
(D)成分 光重合開始剤
・IC819(BASFジャパン(株)製):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
・OXE-01(BASFジャパン(株)製):1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]
(E)成分 シリカ
・SOC2((株)アドマテックス製):フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球状溶融シリカ、平均粒径0.5mm
・SOC1((株)アドマテックス製):フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球状溶融シリカ、平均粒径0.24mm)
(F)成分 硬化促進剤
・DMAP(和光純薬(株)製):4-ジメチルアミノピリジン、不揮発分2質量%のMEK溶液
・Co(III)(東京化成(株)製):コバルト(III)アセチルアセトナート、不揮発分1質量%のMEK溶液
・2P4MZ(四国化成(株)製):2-フェニル-4-メチルイミダゾール、不揮発分5質量%のDMF溶液
(G)成分 ゴム粒子
・AC3816N(ガンツ化成(株)製):コアシェル型ゴム粒子
(H)成分 光増感剤
・DETX-S(日本化薬(株)製):2,4-ジエチルチオキサントン
(I)成分 溶剤
・IP150(ソルベントナフサ)
・MEK(メチルエチルケトン)
【0113】
表1の結果から、本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例では、感光性(解像性及び現像性)を有しながら、絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物を提供できることがわかった。さらに、誘電特性や耐水性にも優れている。一方、比較例1では、感光性(解像性及び現像性)を有するものの、(B)成分を配合しておらず、酸無水物変性型エポキシアクリレート樹脂を用いているため、絶縁性が悪く、誘電特性や耐水性にも劣っており、層間絶縁用樹脂組成物としては使用できるものではなかった。