(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20220705BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220705BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 300D
B60C11/12 C
(21)【出願番号】P 2020133001
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木出嵜 崇司
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134992(JP,A)
【文献】特開2013-189128(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142508(WO,A1)
【文献】特開2012-171591(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117145(WO,A1)
【文献】特開2018-34524(JP,A)
【文献】特開2006-168498(JP,A)
【文献】特開2016-88344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、前記周方向主溝と交差する方向に延在する複数のラグ溝と、前記周方向主溝および前記ラグ溝により区画される複数のブロックとをトレッド部に備え、
前記ブロックのトレッド面に、それぞれタイヤ周方向に延在する周方向細溝と、この周方向細溝のタイヤ幅方向の両側に該周方向細溝から離間して設けられ、タイヤ周方向に複数並びタイヤ幅方向に延在する複数のサイプとを備え、
前記周方向細溝は、前記トレッド面からの深さが異なる浅底部と深底部とを備え、
前記深底部は、前記浅底部よりも前記トレッド面からの深さが深く、前記ブロックにおけるタイヤ周方向の中央部に設けられ
、
前記サイプの最大深さdcは、5.0mm≦dc≦8.0mmであり、
前記深底部の深さdbと、前記サイプの最大深さdcとは、
0.25≦db/dc≦0.80を満たすタイヤ。
【請求項2】
前記浅底部は、前記周方向細溝の両端部にそれぞれ設けられている請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記浅底部の深さda、前記深底部の深さdb、および、前記サイプの最大深さdcは、da<db<dcの関係を満たす請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記浅底部の深さdaと、前記サイプの最大深さdcとは、
0.06≦da/dc≦0.30を満たす請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ブロックにおける前記周方向細溝の周方向長さLと、前記深底部の周方向長さLbとが、0.30≦Lb/L≦0.60を満たす請求項1から
4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ブロックにおける前記周方向細溝の周方向長さLと、前記浅底部の周方向長さLaとが、0.20≦La/L≦0.35を満たす請求項1から
5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記周方向細溝は、前記浅底部と前記深底部との間に屈曲部を有する段付き溝形状である請求項1から
6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記周方向細溝は、少なくとも一方の端部が前記ラグ溝に開口している請求項1から
7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記周方向細溝は、タイヤ幅方向最外側でタイヤ周方向に複数並んで設けられたショルダーブロックに設けられている請求項1から
8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、トレッド面に複数のサイプが配置されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スタッドレスタイヤにおいて、雪上性能および氷上性能の両立が要求されている。この種のスタッドレスタイヤでは、氷上性能を向上するために、陸部のトレッド面に複数のサイプを配置するとともに、同一ブロック内のサイプをタイヤ幅方向に離間(分断)して配置することで、ブロック剛性の確保や、サイプへの雪や氷の詰まりの防止を図っている。
【0003】
一方で、上記した構成では、タイヤ幅方向にサイプが離間された部分で接地圧が局所的に高くなり、荷重耐久性能が悪化する問題があった。このため、従来、タイヤ幅方向にサイプが離間された部分に、タイヤ周方向に延在する周方向溝を設けた構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同一ブロック内のサイプをタイヤ幅方向に離間して配置したタイヤでは、荷重耐久性能および排水性能について更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、荷重耐久性能および排水性能の向上を図ったタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、周方向主溝と交差する方向に延在する複数のラグ溝と、周方向主溝およびラグ溝により区画される複数のブロックとをトレッド部に備え、ブロックのトレッド面に、それぞれタイヤ周方向に延在する周方向細溝と、この周方向細溝のタイヤ幅方向の両側に該周方向細溝から離間して設けられ、タイヤ周方向に複数並びタイヤ幅方向に延在する複数のサイプとを備え、周方向細溝は、トレッド面からの深さが異なる浅底部と深底部とを備え、深底部は、浅底部よりもトレッド面からの深さが深く、ブロックにおけるタイヤ周方向の中央部に設けられている。
【0008】
上記したタイヤにおいて、浅底部は、周方向細溝の両端部にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0009】
また、上記したタイヤにおいて、浅底部の深さda、深底部の深さdb、および、サイプの最大深さdcは、da<db<dcの関係を満たすことが好ましい。
【0010】
また、上記したタイヤにおいて、浅底部の深さdaと、サイプの最大深さdcとは、0.06≦da/dc≦0.30を満たすことが好ましい。
【0011】
また、上記したタイヤにおいて、深底部の深さdbと、サイプの最大深さdcとは、0.25≦db/dc≦0.80を満たすことが好ましい。
【0012】
また、上記したタイヤにおいて、ブロックにおける周方向細溝の周方向長さLと、深底部の周方向長さLbとが、0.30≦Lb/L≦0.60を満たすことが好ましい。
【0013】
また、上記したタイヤにおいて、ブロックにおける周方向細溝の周方向長さLと、浅底部の周方向長さLaとが、0.20≦La/L≦0.35を満たすことが好ましい。
【0014】
また、上記したタイヤにおいて、周方向細溝は、浅底部と深底部との間に屈曲部を有する段付き溝形状であることが好ましい。
【0015】
また、上記したタイヤにおいて、周方向細溝は、少なくとも一方の端部がラグ溝に開口していることが好ましい。
【0016】
また、上記したタイヤにおいて、周方向細溝は、タイヤ幅方向最外側でタイヤ周方向に複数並んで設けられたショルダーブロックに設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るタイヤは、荷重耐久性能および排水性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載したトレッドパターンのショルダー陸部を示す平面図である。
【
図5】
図5は、別の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図6】
図6は、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
本実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤ幅の中心を通る平面である。
【0021】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図1の符号CLはタイヤ赤道面を示し、符号Tはそれぞれタイヤの接地端を示す。また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1(以下、単にタイヤ1と称する場合もある)は車両に対する装着方向が指定されており、
図1の例では、タイヤ赤道面CLを中心とする左右非対称なトレッドパターンとなっている。なお、
図1において、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に示される領域にはいわゆるサイドウォール部を含む。
【0022】
接地端Tは、タイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を付与するとともに静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤ1と平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0023】
規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0024】
タイヤ1のトレッド部10は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、タイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がタイヤ1の輪郭となる。トレッド部10の表面は、タイヤ1を装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面となるトレッド面12として形成されている。
【0025】
タイヤ1は、トレッド面12に、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21~24と、これらの周方向主溝21~24に区画された複数の陸部31~35と、各陸部31~35に配置された複数のラグ溝311、321、322、331、341、351と、各陸部31~35に配置された複数のサイプ4とを備える。ここで、周方向主溝とは、タイヤ周方向に延在してJATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、一般に、5.0mm以上の溝幅および6.5mm以上の溝深さを有する。ラグ溝とは、周方向主溝と交差する方向(タイヤ幅方向)に延在する横溝であり、一般に1.0mm以上の溝幅および3.0mm以上の溝深さを有する。また、サイプとは、トレッド面に形成された切り込みであり、一般に1.0mm未満のサイプ幅および2.0mm以上のサイプ深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。従って、本実施形態のタイヤ1は、トレッド面12にサイプ4が設けられたスタッドレスタイヤとして構成されている。
【0026】
トレッド面12には、タイヤ周方向に延在する複数(
図1では4本)の周方向主溝21~24がタイヤ幅方向にそれぞれ所定の間隔で設けられている。本実施形態では、
図1に示すように、タイヤ赤道面CLを境として2本の周方向主溝21、22は車幅方向内側に、2本の周方向主溝23、24は車幅方向外側にそれぞれ設けられている。ここで、車幅方向内側及び車幅方向外側は、タイヤ1を車両に装着した際の車幅方向に対する向きとして規定される。また、タイヤ幅方向最外側の2本の周方向主溝21、24をショルダー主溝、タイヤ幅方向内側の2本の周方向主溝22、23をセンター主溝と定義する。
【0027】
図1の例では、ショルダー主溝21、24は、それぞれストレート形状を有している。これに対して、センター主溝22、23は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されている。特に、車幅方向内側のセンター主溝22は、タイヤ赤道面CL側の溝壁がストレート形状である一方、接地端T側の溝壁がタイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されている。なお、周方向主溝の数は、上記に限るものではなく、トレッド面12に3本あるいは5本以上の周方向主溝が配置されてもよい。
【0028】
また、トレッド面12には、4本の周方向主溝21~24によって、タイヤ周方向に延在する複数(
図1では5列)の陸部31~35が区画形成されている。本実施形態では、ショルダー主溝21、24によってタイヤ幅方向外側にそれぞれ区画された陸部31、35をショルダー陸部と定義する。また、ショルダー主溝21、24によってタイヤ幅方向内側にそれぞれ区画された陸部32、34をセカンド陸部と定義する。これらセカンド陸部32、34は、それぞれ上記した周方向主溝21、24を挟んでショルダー陸部31、35に隣り合う。また、センター主溝22、23の間に区画された陸部33をセンター陸部と定義する。このセンター陸部33はタイヤ赤道面CL上に延在して設けられている。
【0029】
なお、
図1の例では、単一のセンター陸部33のみが存在するが、5本以上の周方向主溝を備える構成では、複数のセンター陸部が形成される。また、3本の周方向主溝を備える構成では、センター陸部がセカンド陸部を兼ねてもよい。
【0030】
左右のショルダー陸部31、35は、それぞれ複数のラグ溝311、351を備える。これらラグ溝311、351は、それぞれショルダー主溝21、24に一方の端部が開口し、タイヤ幅方向外側に延在して、接地端Tを跨いだ領域で他方の端部が開口している。ショルダー陸部31、35には、それぞれ複数のラグ溝311、351がタイヤ周方向に繰り返し設けられている。このため、ショルダー陸部31、35は、これらのラグ溝311、351によりそれぞれ複数のブロックB(ショルダーブロック)に区画されている。これらブロックBには、それぞれタイヤ周方向に延在する周方向細溝312、352と、タイヤ幅方向に延在する複数のサイプ4とが設けられている。この
図1の例では、周方向細溝312、352はストレート状に形成されている。
【0031】
また、車幅方向内側のセカンド陸部32は、2種類かつ複数のラグ溝321、322と、タイヤ幅方向に延在する複数のサイプ4とを備える。ラグ溝321(第1ラグ溝)は、一方の端部が上記したラグ溝311の一方の端部と対向してショルダー主溝21に開口し、他方の端部がセカンド陸部32の内部で終端する。また、ラグ溝322(第2ラグ溝)は、一方の端部がセンター主溝22に開口すると共に、他方の端部がセカンド陸部32の内部で終端する。この
図1の例では、ラグ溝322の一方の端部は、ジグザグ形状のセンター主溝22における接地端T側に突出した角部に開口している。したがって、ラグ溝321、322は、セカンド陸部32を横断しないセミクローズド構造を有する。また、これらラグ溝321、322は、タイヤ周方向に千鳥状(互い違い)に配置され、それぞれタイヤ周方向に対して反対方向に傾斜して延在するとともに、タイヤ幅方向にそれぞれオーバーラップしている。このため、セカンド陸部32は、ラグ溝321、322によりタイヤ周方向で分断されずタイヤ周方向に連続するリブRとして形成される。
【0032】
センター陸部33は、複数のラグ溝331を備える。ラグ溝331は、2本のセンター主溝22、23の間でタイヤ幅方向に延びて形成され、センター主溝22、23に両端部がそれぞれ開口している。
図1の例では、ラグ溝331の一方の端部は、ジグザグ形状のセンター主溝23におけるタイヤ赤道面CL側に突出した角部に開口し、センター主溝23の短尺部の延在方向に沿って延在している。また、ラグ溝331は、センター主溝23のジグザグを形成する上記角部に対して1つ置きに設けられている。センター陸部33は複数のラグ溝331により、複数のブロックBに区画されており、各ブロックBにはタイヤ幅方向に延在する複数のサイプ4が設けられている。
【0033】
車幅方向外側のセカンド陸部34は、複数のラグ溝341を備える。ラグ溝341は、隣り合うセンター主溝23とショルダー主溝24との間でタイヤ幅方向に延びて形成され、一端がセンター主溝23に開口し、他端がショルダー主溝24に開口している。
図1の例では、ラグ溝341の一方の端部は、ジグザグ形状のセンター主溝23における接地端T側に突出した角部に開口し、他方の端部は、上記したラグ溝351の一方の端部と対向してショルダー主溝24に開口している。セカンド陸部34は、複数のラグ溝341により、複数のブロックBに区画されている。これらブロックBには、それぞれ周方向細溝342とタイヤ幅方向に延在する複数のサイプ4とが設けられている。
図1の例では、周方向細溝342は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されている。
【0034】
なお、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、空気入りタイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状をいう。本実施形態のタイヤ1は、図示は省略するが、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部10を有する。そして、タイヤ1は、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部10から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、上記カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
【0035】
次に、ショルダー陸部に形成されたトレッドパターンについて詳しく説明する。
図2は、
図1に記載したトレッドパターンのショルダー陸部を示す平面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図2のB-B断面図である。
図2~
図4では、車幅方向外側のショルダー陸部の一部を示しているが、車幅方向内側のショルダー陸部についても同様の構成を備える。上記したように、タイヤ幅方向の最外側に位置する左右のショルダー陸部31、35は、それぞれ複数のラグ溝311、351によって複数のブロックBに区画されている。これらブロックBには、それぞれタイヤ周方向に延在する周方向細溝312、352と、この周方向細溝312、352のタイヤ幅方向の両側に設けられた複数のサイプ4とを備える。
【0036】
複数のサイプ4は、
図2に示すように、タイヤ幅方向に沿って延在するとともに、タイヤ周方向に複数並んで設けられる。これらのサイプ4は、それぞれ周方向細溝352から離間し、該周方向細溝352と交差することなくタイヤ幅方向に延在している。サイプ4は、例えば、0.3mm以上1.0mm未満の溝幅で、5.0mm以上8.0mm以下の溝深さのものをいう。また、サイプ4は、トレッド面12への開口部が連続して複数屈曲したジグザグ状に形成されている。この場合、サイプ4は、トレッド面12からタイヤ径方向内側へのトレッド部10内の形状が、トレッド面12のジグザグ形状に沿ってジグザグ形状となる二次元サイプであってもよく、ジグザグ形状に加えてさらに屈曲した三次元サイプであってもよい。また、サイプ4は、いずれも周方向細溝352には連通していないが、ショルダー主溝24に連通する形態や連通しない形態がある。この構成によれば、トレッド面12に複数のサイプ4をタイヤ幅方向に離間(分断)して配置することで、ブロック剛性を確保するとともに、サイプ4への雪や氷の詰まりを防止することができる。このため、タイヤ1の氷上性能を向上することができる。
【0037】
一方、トレッド面12における上記サイプ4がタイヤ幅方向に離間された部分、すなわちサイプが分断されて配置されていない領域は、接地圧が局所的に高くなり、荷重耐久性能が悪化するという問題がある。このため、本実施形態では、各ブロックBに周方向細溝352が設けられている。この周方向細溝352は、タイヤ周方向に延在する細溝であり、具体的には、溝幅Wが1.0mm以上3.0mm以下に形成されている。また、周方向細溝352は、タイヤ幅方向に延在するサイプ4が該タイヤ幅方向で分断(離間)されている領域、すなわち、ショルダー陸部35における幅方向の中央部に設けられている。具体的には、ショルダー主溝24のエッジと接地端Tとの距離で規定されるショルダー陸部35の幅W1と、ショルダー主溝24のエッジと周方向細溝352の溝中心線との幅W2とが、0.40≦W2/W1≦0.60の関係を有する。この構成によれば、トレッド面12におけるサイプ4がタイヤ幅方向に離間された領域に周方向細溝312、352に設けることにより、各ブロックBにおける接地圧を低減することができ、荷重耐久性能の向上を図ることができる。また、上記構成では、各ブロックBにおける接地圧が周方向細溝312、352により低減されて、セカンド陸部32、34の接地圧が相対的に増加する。これにより、セカンド陸部32、34による氷上性能および雪上性能の向上作用が効率的に得られる。
【0038】
また、周方向細溝352は、少なくとも一方の端部352Aがラグ溝351に開口する。
図2の例では、他方の端部352BはブロックBの内部で終端しているが、両方の端部352A、352Bがラグ溝351に開口してもよい。この場合、周方向細溝352の延長線上におけるブロック長Pと周方向細溝352の長さLとが、0.85≦L/P≦1.0を満たし、0.90≦L/P≦1.0を満たすことが好ましい。この構成によれば、一方の端部352Aがラグ溝351に開口し、周方向細溝352の長さLをブロック長Pの85%以上とすることにより、荷重耐久性能と排水性能との向上を実現できる。
【0039】
また、本構成では、周方向細溝352は、
図3に示すように、トレッド面12からの深さが異なる浅底部3521と深底部3522とを備えている。深底部3522は、浅底部3521よりもトレッド面12からの深さが深く形成されている。周方向細溝352は、浅底部3521と深底部3522との間に屈曲部352Cを有する段付き溝形状に形成されており、屈曲部352Cよりもタイヤ径方向外側に位置している部分を浅底部3521とし、タイヤ径方向内側に位置している部分を深底部3522と定義する。このため、深底部3522は、溝底が平坦なものに限らず、例えば断面視でU字状やV字状であってもよい。また、浅底部3521は、屈曲部352Cに向けて傾斜していてもよい。
【0040】
浅底部3521の深さda、深底部3522の深さdbは、それぞれ浅底部3521および深底部3522のトレッド面12からの最大深さをいう。浅底部3521の深さda、深底部3522の深さdbは、サイプ4の最大深さdcと、da<db<dcの関係を満たしている。上記した関係を満たすことで、ブロック剛性の低下や、サイプ4への雪や氷の詰まりを抑制することができ、タイヤ1の氷上性能および雪上性能の向上を図ることができる。また、上記した関係を満たすことで、タイヤ1の荷重耐久性能と排水性能の両立が可能となる。本実施形態では、浅底部3521は、0.5mm≦da≦1.5mmに設定され、深底部3522は、2.0mm≦db≦4.0mmに設定されている。また、サイプ4の最大深さdcは、5.0mm≦dc≦8.0mmに設定されている。
【0041】
ここで、周方向細溝352の浅底部3521の深さdaと、サイプ4の最大深さdcとは、0.06≦da/dc≦0.30を満たすことが好ましい。da/dc<0.06の場合には、浅底部3521の深さdaが十分でなく、接地圧が局所的に高くなり、荷重耐久性能が悪化する。また、da/dc>0.30の場合には、ブロック剛性が低下する。本実施形態では、浅底部3521の深さdaと、サイプ4の最大深さdcとが0.06≦da/dc≦0.30を満たすため、ブロック剛性を保持するとともに荷重耐久性能の向上を図ることができる。
【0042】
また、周方向細溝352の深底部3522の深さdbと、サイプ4の最大深さdcとは、0.25≦db/dc≦0.80を満たすことが好ましい。db/dc<0.25の場合には、深底部3522が形成されるブロックBのタイヤ周方向の中央部での接地圧を十分に低減できず、荷重耐久性能が悪化する。また、周方向細溝352を通じた排水性能が低下する。また、db/dc>0.80の場合には、ブロックB剛性が低下する。本実施形態では、深底部3522の深さdbと、サイプ4の最大深さdcとが0.25≦db/dc≦0.80を満たすため、ブロック剛性を保持するとともに、荷重耐久性能と排水性能の両立を図ることができる。
【0043】
また、浅底部3521は、周方向細溝352のタイヤ周方向の両端部に設けられており、深底部3522は、両方の浅底部3521の間のタイヤ周方向の中央部に設けられている。具体的には、周方向細溝352の長さLに対する各浅底部3521の長さLaが、0.20≦La/L≦0.35を満たしている。この浅底部3521の長さLaは、各端部352A、352Bからそれぞれ屈曲部352Cまでの長さをいう。この構成によれば、深底部3522は、ブロックBの中央部に設けることができるため、ブロックB内において接地圧の集中しやすいタイヤ周方向の中央部を相対的に深くすることができ、接地圧の局地的は増加を抑制し、荷重耐久性能の向上を効果的に実現することができる。また、周方向細溝352が深底部3522を備えることにより、排水性能の向上を実現できる。
【0044】
また、周方向細溝352の長さLに対する深底部3522の長さLbが、0.30≦Lb/L≦0.60を満たしている。この深底部3522の長さLbは、各屈曲部352C間の長さをいう。ここで、0.30>Lb/Lの場合には、深底部3522の距離が十分ではなく、排水性能(ウエット性能)に対し十分な効果が得られない。また、Lb/L>0.60の場合には、ブロック剛性が低下して荷重耐久性能が悪化する。この構成によれば、周方向細溝352の長さLに対する深底部3522の長さLbが上記した範囲をみたすため、荷重耐久性能および排水性能の向上を実現できる。
【0045】
なお、各ブロックBが備える周方向細溝312、352およびサイプ4の構成は、荷重耐久性能および排水性能の観点で、ショルダー陸部31、35(ショルダーブロック)に設けることが最良であるが、他の陸部(ブロック)に設けても荷重耐久性能および排水性能の向上を図ることができる。例えば、
図1の例では、セカンド陸部34の各ブロックは、それぞれ周方向細溝342およびサイプ4を備えているため、この周方向細溝342のタイヤ周方向の中央部(たとえば短尺部)を上記した深底部として形成することができる。
【0046】
次に、別の実施形態について説明する。
図5は、別の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。上記した実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。上記した実施形態では、タイヤ1は、トレッド面12にタイヤ周方向に延在する4本の周方向主溝21~24を備えた構成としたが、この別の実施形態では、空気入りタイヤ1A(以下、単にタイヤ1Aと称する)はトレッド面12Aに5本の周方向主溝21A~25Aを備えた点で構成を異にする。
【0047】
具体的には、
図5に示すように、タイヤ赤道面CLを境として2本の周方向主溝21A、22Aは車幅方向内側に、2本の周方向主溝23A、24Aは車幅方向外側に、1本の周方向主溝25Aはタイヤ赤道面CL上にそれぞれ設けられている。上記実施形態と同様に、タイヤ幅方向最外側の周方向主溝21A、24Aをショルダー主溝、ショルダー主溝よりもタイヤ幅方向内側の周方向主溝22A、23Aをセカンド主溝と定義する。さらに、周方向主溝25Aをセンター主溝と定義する。
【0048】
この実施形態では、トレッド面12Aには5本の周方向主溝21A~25Aによって、タイヤ周方向に延在する6つの陸部31~36が区画形成されている。この実施形態では、2本のセカンド主溝22A、23Aとセンター主溝25Aとにより、センター陸部33に加えて新たなセンター陸部36が形成されている。このセンター陸部36は、複数のラグ溝361を備える。ラグ溝361は、セカンド主溝22Aとセンター主溝25Aの間でタイヤ幅方向に延びて形成され、これらセカンド主溝22A及びセンター主溝25Aに両端部がそれぞれ開口している。センター陸部36は複数のラグ溝361により、複数のブロックBに区画されており、各ブロックBにはタイヤ幅方向に延在する複数のサイプ4が設けられている。
【0049】
この別の実施形態においても、ショルダー陸部31、35が備える各ブロックBのトレッド面12Aに、それぞれタイヤ周方向に延在する周方向細溝312、352と、この周方向細溝312、352のタイヤ幅方向の両側に該周方向細溝312、352から離間して設けられ、タイヤ周方向に複数並びタイヤ幅方向に延在する複数のサイプ4とを備え、周方向細溝312、352は、それぞれブロックBにおけるタイヤ周方向の中央部に、トレッド面12Aから深さが浅底部よりも深い深底部を設けたため、タイヤの荷重耐久性能および排水性能の向上を実現できる。
【実施例】
【0050】
図6は、本実施形態に係るタイヤの性能試験の結果を示す図表である。この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)荷重耐久性能、(2)排水性能としてウェット制動性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ195/65R15 91Qの試験タイヤがリムサイズ15X6.5Jの規定リムに組み付けられ、この試験タイヤに規定の空気圧が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である排気量1800[cc]かつFF(Front engine Front drive)方式の車両の総輪に装着される。
【0051】
荷重耐久性能に関する評価では、各タイヤに空気圧180kPaを充填して、室内ドラム試験機(ドラム径:1707mm)を用いて、周囲温度を38±3℃に制御したうえで、JATMA規定の最大荷重(最大負荷能力)の88%に相当する荷重を負荷させて、速度81km/hにて2時間走向させ、次いで2時間毎に負荷荷重を13%ずつ増加させて、タイヤが破壊したときの走行時間が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準100とした指数評価が行われる。この評価は、指数が高いほど荷重耐久性能が優れていることを示している。
【0052】
ウェット制動性能の評価方法は、前輪タイヤに空気圧250kPa、後輪タイヤに空気圧240kPaを充填した試験タイヤを装着した上記試験車両にて、湿潤路面のテストコースを走向し、専門のテストドライバーが制動性能に関してフィーリング評価を行う。この評価は、従来例を基準100とした指数評価が行われる。この評価は、指数が高いほどウェット制動性能(排水性能)が優れていることを示している。
【0053】
性能評価試験は、従来のタイヤの一例である従来例のタイヤと、本発明に係るタイヤ1である実施例1~12との13種類の空気入りタイヤについて行った。これらの従来例、実施例1~12のタイヤは、いずれもショルダー陸部のトレッド面に周方向細溝とサイプとが設けられている。また、周方向細溝の溝幅Wは2.0mmに設定されている。このうち、従来例は、周方向細溝が一定の深さで形成されており、深底部を有していない。
【0054】
これに対し、本発明に係るタイヤの一例である実施例1~12は、いずれも周方向細溝が深底部を有し、この深底部がブロックのタイヤ周方向の中央部に設けられている。さらに、実施例1~12に係るタイヤは、サイプの最大深さdcに対する浅底部の深さdaの比率(da/dc)や、サイプの最大深さdcに対する深底部の深さdbの比率(db/dc)、周方向細溝の周方向長さLに対する深底部の周方向長さLbの比率(Lb/L)、周方向細溝の一端がラグ溝へ開口しているか否かが、それぞれ異なっている。
【0055】
これらのタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図6に示すように、実施例1~12に係るタイヤは、従来例に対して、荷重耐久性能およびウェット制動性能(排水性能)を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1~12に係るタイヤは、荷重耐久性能と排水性能とを両立することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、タイヤとして空気入りタイヤを例示して説明したが、これに限るものではなく、エアレスタイヤのような空気が充填されていないタイヤにも適用することもできることは勿論である。また、本実施形態で例示した空気入りタイヤに充填される気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他にも、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A タイヤ(空気入りタイヤ)
4 サイプ
10 トレッド部
12、12A トレッド面
21、21A、24、24A ショルダー主溝(周方向主溝)
22A、23A セカンド主溝(周方向主溝)
22、23、25A センター主溝(周方向主溝)
31、35 ショルダー陸部(陸部)
32、34 セカンド陸部(陸部)
33、36 センター陸部(陸部)
311、321、322、331、341、351、361 ラグ溝
312、342、352 周方向細溝
352A 一方の端部
352B 他方の端部
352C 屈曲部
3521 浅底部
3522 深底部
B ブロック
CL タイヤ赤道面
R リブ