(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】蒸着マスク中間体、蒸着マスク、マスク装置、および、蒸着マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20220705BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220705BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2020211778
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020018188
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松隈 かおり
(72)【発明者】
【氏名】相川 建一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭彦
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066325(WO,A1)
【文献】特開2004-055231(JP,A)
【文献】国際公開第2020/050398(WO,A1)
【文献】特開2003-068456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部と、
前記帯状部を囲む枠状部と、
前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、
前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる
蒸着マスク中間体。
【請求項2】
帯状部と、
前記帯状部を囲む枠状部と、
前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記周辺部および前記枠状部は、第1板厚を有し、
前記連結部は、前記帯状部の前記縁に沿うハーフエッチング線、および、前記帯状部の前記縁に沿って並ぶ複数のハーフエッチング部の少なくとも一方を含み、前記ハーフエッチング線および前記ハーフエッチング部は、前記第1板厚よりも薄い第2板厚を有する
蒸着マスク中間体。
【請求項3】
前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含み、
前記非連結部と前記枠状部との間には、スリットが位置する
請求項1または2に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項4】
帯状部と、
前記帯状部を囲む枠状部と、
前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含み、
前記非連結部と前記枠状部との間には、スリットが位置し、
前記脆弱部は、第1脆弱部であり、
前記枠状部は、前記帯状部を囲む内側縁と、前記枠状部の外形を形成する外側縁とを含み、
前記枠状部において、前記スリットから前記スリットに対して前記帯状部とは反対側に向けて延びる線状を有した第2脆弱部をさらに備える
蒸着マスク中間体。
【請求項5】
前記スリットは、前記帯状部の前記縁に沿って延びる延在部と、前記延在部から前記延在部に対して前記帯状部とは反対側に向けて突出する突出部を含み、
前記第2脆弱部は、前記突出部に接続されている
請求項4に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項6】
前記非連結部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記マスク部よりも前記短辺寄りの位置まで延び、
前記連結部は、前記長辺における前記非連結部以外の部分を前記枠状部に連結し、
前記突出部は、前記スリットの端部から前記延在部に対して前記帯状部とは反対側に向けて突出し、
前記第1脆弱部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記突出部よりも前記マスク部寄りに位置する
請求項5に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項7】
前記周辺部および前記枠状部は、第1板厚を有し、
前記連結部は、複数の連結部のうちの1つであり、前記複数の連結部は、前記帯状部の前記縁に沿って間隔を空けて位置し、各連結部は前記第1板厚を有し、
前記帯状部の前記縁のうち前記連結部が接続した部分以外の部分に沿って、スリットが位置する
請求項1に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項8】
前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含む
請求項7に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項9】
帯状部と、
前記帯状部を囲む枠状部と、
前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記周辺部および前記枠状部は、第1板厚を有し、
前記連結部は、複数の連結部のうちの1つであり、前記複数の連結部は、前記帯状部の前記縁に沿って間隔を空けて位置し、各連結部は前記第1板厚を有し、
前記帯状部の前記縁のうち前記連結部が接続した部分以外の部分に沿って、スリットが位置し、
前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含み、
前記脆弱部は、第1脆弱部であり、
前記枠状部は、前記帯状部を囲む内側縁と、前記枠状部の外形を形成する外側縁とを含み、
前記スリットのうちで前記長辺に沿う部分がスリット部であり、
前記枠状部において、前記スリット部から前記スリット部に対して前記帯状部とは反対側に向けて延びる線状を有した第2脆弱部をさらに備える
蒸着マスク中間体。
【請求項10】
前記スリット部は、前記帯状部の前記縁に沿って延びる延在部と、前記延在部から前記延在部に対して前記帯状部とは反対側に向けて突出する突出部を含み、
前記第2脆弱部は、前記突出部に接続されている
請求項9に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項11】
前記スリット部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記マスク部よりも前記短辺寄りに位置する部分を含み、
前記突出部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記マスク部よりも前記短辺寄りに位置し、
前記第1脆弱部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記突出部よりも前記マスク部寄りに位置する
請求項10に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項12】
帯状を有した蒸着マスクであって、
一対の第1長辺と一対の第1短辺とを有した縁と、
複数のマスク孔を有したマスク部と、
前記マスク部を囲む周辺部と、を備え、
前記周辺部のうちで、前記蒸着マスクの長手方向における前記マスク部と前記第1短辺との間には、一方の前記第1長辺から他方の前記第1長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、
前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記第1長辺から他方の前記第1長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並び、
前記縁の少なくとも一部に位置する第1切断
痕を備える
蒸着マスク。
【請求項13】
蒸着マスクと、
前記蒸着マスクを支持するフレームと、を備え、
前記蒸着マスクは、
表面と、
前記表面とは反対側の裏面と、
一対の第2長辺と一対の第2短辺とを有した縁と、
複数のマスク孔を有したマスク部と、を備え、
前記第2短辺には
、第2切断痕が位置し、
前記蒸着マスクは、前記蒸着マスクと対向する視点から見て、前記第2切断痕が前記フレーム上に位置するように、前記フレームに取り付けられている
マスク装置。
【請求項14】
帯状部、前記帯状部を囲む枠状部、および、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部を形成すること、および、
前記連結部を切断して、前記枠状部から前記帯状部を切り離すことによって蒸着マスクを得ること、を含み、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺を有した縁を備え、
前記帯状部は、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、
前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる
蒸着マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、マスク装置、および、蒸着マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置が備える表示素子の製造には、蒸着マスクを用いた真空蒸着が用いられている。真空蒸着に用いられる蒸着マスクは、帯状を有した金属製の薄板である。蒸着マスクは、表示素子を形成するためのマスク孔を複数有したマスク部と、マスク部を囲む周辺部とを備えている。蒸着マスクは帯状を有し、一対の長辺と一対の短辺とによって形成される縁を備えている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸着マスクは、蒸着マスクを支持するフレームに固定された後に、フレームとともに真空蒸着装置に搭載される。蒸着マスクがフレームに固定される際には、長手方向における各端部が、他方の端部から離れる方向に引っ張られることによって、蒸着マスクの長手方向に沿う張力が蒸着マスクに与えられる。蒸着マスクは、張力を与えられた状態でフレームに固定される。この際に、周辺部のうちで、短辺よりもマスク部寄りの部分がフレームに固定されるため、蒸着マスクにおいて短辺を含む部分は、フレームの外側縁からはみ出している。
【0005】
蒸着マスクの設置面積を小さくすることや、蒸着マスクを真空蒸着装置に搭載する作業中などに蒸着マスクが他の部材に引っ掛かることを抑える目的で、蒸着マスクのうちでフレームからはみ出した部分は、蒸着マスクから取り除かれる。そのため、蒸着マスクを用いた蒸着の効率を高める観点から、蒸着マスクをフレームに固定した後に蒸着マスクの端部を取り除く作業がより容易であることが求められている。
【0006】
本発明は、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とすることを可能とした蒸着マスク中間体、蒸着マスク、マスク装置、および、蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための蒸着マスク中間体は、帯状部と、前記帯状部を囲む枠状部と、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備える。前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺を有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備える。前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置する。
【0008】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、帯状を有した蒸着マスクであって、一対の長辺と一対の短辺を有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部と、を備える。前記周辺部のうちで、前記蒸着マスクの長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置する。
【0009】
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、帯状部、前記帯状部を囲む枠状部、および、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部を形成すること、および、前記連結部を切断して、前記枠状部から前記帯状部を切り離すことによって蒸着マスクを得ること、を含む。前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺を有した縁を備える。前記帯状部は、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備える。前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置する。
【0010】
上記蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法によれば、脆弱部を切断することによって、帯状部のうち、短辺を含む両端部を、帯状部のうちでマスク部を含む部分から切り離すことが可能である。そのため、帯状部から形成された蒸着マスクをフレームに取り付けた後に、蒸着マスクの端部を取り除くことが容易である。
【0011】
上記蒸着マスク中間体において、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいてもよい。
【0012】
上記蒸着マスク中間体によれば、脆弱部が延びる方向において複数のエッチング部が直線状に等間隔で並ぶ場合に比べて、脆弱部が延びる方向において隣り合うエッチング部の間隔を長くすることが可能である。これにより、蒸着マスク中間体の搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じにくくなる。
【0013】
上記蒸着マスク中間体において、前記周辺部および前記枠状部は、第1板厚を有し、前記連結部は、前記帯状部の前記縁に沿うハーフエッチング線、および、前記帯状部の前記縁に沿って並ぶ複数のハーフエッチング部の少なくとも一方を含み、前記ハーフエッチング線および前記ハーフエッチング部は、前記第1板厚よりも薄い第2板厚を有してもよい。この蒸着マスク中間体によれば、連結部のうち、少なくともハーフエッチング線あるいはハーフエッチング部が形成された部分を切断されやすくすることができる。
【0014】
上記蒸着マスク中間体において、前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含み、前記非連結部と前記枠状部との間には、スリットが位置してもよい。
【0015】
上記蒸着マスク中間体によれば、連結部を切断することによって帯状部を枠状部から切り離す際に、連結部を切断するために連結部に作用させた力に起因してマスク部にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0016】
上記蒸着マスク中間体において、前記脆弱部は、第1脆弱部であり、前記枠状部は、前記帯状部を囲む内側縁と、前記枠状部の外形を形成する外側縁とを含み、前記枠状部において、前記スリットから前記スリットに対して前記帯状部とは反対側に向けて延びる線状を有した第2脆弱部をさらに備えてもよい。この蒸着マスク中間体によれば、第2脆弱部に沿って枠状部を切断することができるため、枠状部から帯状部を切り離す作業が行いやすくなる。
【0017】
上記蒸着マスク中間体において、前記スリットは、前記帯状部の前記縁に沿って延びる延在部と、前記延在部から前記延在部に対して前記帯状部とは反対側に向けて突出する突出部を含み、前記第2脆弱部は、前記突出部に接続されていてもよい。
【0018】
上記蒸着マスク中間体によれば、第2脆弱部が突出部に接続されるため、第2脆弱部が延在部に接続される場合に比べて、第2脆弱部の端部と帯状部との間の距離を長くすることが可能である。これにより、第2脆弱部を切断するための力に起因して帯状部にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0019】
上記蒸着マスク中間体において、前記非連結部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記マスク部よりも前記短辺寄りの位置まで延び、前記連結部は、前記長辺における前記非連結部以外の部分を前記枠状部に連結し、前記突出部は、前記スリットの端部から前記延在部に対して前記帯状部とは反対側に向けて突出し、前記第1脆弱部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記突出部よりも前記マスク部寄りに位置してもよい。
【0020】
上記蒸着マスク中間体によれば、帯状部の幅方向において第1脆弱部と突出部とが並ぶ場合に比べて、第2脆弱部を切断するための力が第2脆弱部に作用した際に、第1脆弱部が第2脆弱部とともに切断されることが抑えられる。
【0021】
上記蒸着マスク中間体において、前記周辺部および前記枠状部は、第1板厚を有し、前記連結部は、複数の連結部のうちの1つであり、前記複数の連結部は、前記帯状部の前記縁に沿って間隔を空けて位置し、各連結部は前記第1板厚を有し、前記帯状部の前記縁のうち前記連結部が接続した部分以外の部分に沿って、スリットが位置してもよい。この蒸着マスク中間体によれば、帯状部の縁のうち連結部が接続した部分以外の部分に沿ってスリットが位置するため、連結部を切断する作業が行いやすい。
【0022】
上記蒸着マスク中間体において、前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含んでもよい。
【0023】
上記蒸着マスク中間体によれば、連結部を切断することによって帯状部を枠状部から切り離す際に、連結部を切断するために連結部に作用させた力に起因してマスク部にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0024】
上記蒸着マスク中間体において、前記脆弱部は、第1脆弱部であり、前記枠状部は、前記帯状部を囲む内側縁と、前記枠状部の外形を形成する外側縁とを含み、前記スリットのうちで前記長辺に沿う部分がスリット部であり、前記枠状部において、前記スリット部から前記スリット部に対して前記帯状部とは反対側に向けて延びる線状を有した第2脆弱部をさらに備えてもよい。この蒸着マスク中間体によれば、第2脆弱部に沿って枠状部を切断することができるため、枠状部から帯状部を切り離す作業が行いやすくなる。
【0025】
上記蒸着マスク中間体において、前記スリット部は、前記帯状部の前記縁に沿って延びる延在部と、前記延在部から前記延在部に対して前記帯状部とは反対側に向けて突出する突出部を含み、前記第2脆弱部は、前記突出部に接続されていてもよい。
【0026】
上記蒸着マスク中間体によれば、第2脆弱部が突出部に接続されるため、第2脆弱部がスリットのうちで帯状部に沿う部分に接続される場合に比べて、第2脆弱部の端部と帯状部との間の距離を長くすることが可能である。これにより、第2脆弱部を切断するための力に起因して帯状部にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0027】
上記蒸着マスク中間体において、前記スリット部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記マスク部よりも前記短辺寄りに位置する部分を含み、前記突出部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記マスク部よりも前記短辺寄りに位置し、前記第1脆弱部は、前記帯状部の前記長手方向において、前記突出部よりも前記マスク部寄りに位置してもよい。
【0028】
上記蒸着マスク中間体によれば、帯状部の幅方向において第1脆弱部と突出部とが並ぶ場合に比べて、第2脆弱部を切断するための力が第2脆弱部に作用した際に、第1脆弱部が第2脆弱部とともに切断されることが抑えられる。
【0029】
上記課題を解決するためのマスク装置は、上記蒸着マスクと、前記蒸着マスクを支持するフレームと、を備える。前記蒸着マスクは、表面と前記表面とは反対側の裏面とを含み、前記脆弱部は、前記表面に開口するハーフエッチング部を含み、前記表面の一部が、前記フレームに取り付けられている。
【0030】
上記マスク装置によれば、ハーフエッチング部がフレームに向けて開口するため、ハーフエッチング部が裏面に開口する場合に比べて、裏面の一部と、当該裏面の他の一部とが対向するように蒸着マスクを折り曲げる場合に、第1脆弱部に沿って蒸着マスクを折り曲げるために必要な力が小さくてすむ。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態における蒸着マスク中間体の構造を示す平面図。
【
図3】第1脆弱部の構造における第1例を第1脆弱部の周囲における構造とともに示す断面図。
【
図4】第1脆弱部の構造における第2例を第1脆弱部の周囲における構造とともに示す断面図。
【
図5】
図1が示す蒸着マスク中間体の構造における一部を拡大して示す平面図。
【
図9】蒸着マスク中間体の搬送方向における第2脆弱部の下流端における構造を拡大して示す平面図。
【
図10】蒸着マスクがフレームに固定された状態を示す平面図。
【
図11】蒸着マスクから蒸着マスクの端部が取り除かれた状態を示す平面図。
【
図12】蒸着マスクの裏面と対向する視点から見た蒸着マスクにおける端部の構造を拡大して示す部分拡大平面図。
【
図13】蒸着マスクの裏面と対向する視点から見た蒸着マスクにおける端部の構造を拡大して示す部分拡大平面図。
【
図14】試験例1の蒸着マスクが備える第1脆弱部の構造を示す平面図。
【
図15】試験例2の蒸着マスクが備える第1脆弱部の構造を示す平面図。
【
図16】試験例3の蒸着マスクが備える第1脆弱部の構造を示す平面図。
【
図17】試験例4の蒸着マスクが備える第1脆弱部の構造を示す平面図。
【
図18】第2実施形態における蒸着マスク中間体の構造を示す平面図。
【
図19】第2実施形態において
図5が示す領域Aに相当する部分を拡大して示す平面図。
【
図20】第2実施形態において
図5が示す領域Aに相当する部分を拡大して示す平面図。
【
図21】変更例におけるマスク部の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
図1から
図13を参照して、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法における第1実施形態を説明する。以下では、蒸着マスク中間体の構造、および、マスク装置の構造を順に説明する。
【0034】
[蒸着マスク中間体の構造]
図1から
図9を参照して、蒸着マスク中間体の構造を説明する。
図1が示すように、蒸着マスク中間体10は、帯状部11、枠状部12、および、連結部13を備えている。枠状部12は、帯状部11を囲んでいる。連結部13は、帯状部11と枠状部12との間に位置し、帯状部11を枠状部12に連結している。
図1では、蒸着マスク中間体10のうちで、連結部13が位置する部分にドットが付されている。帯状部11が延びる方向が、帯状部11の長手方向DLであり、長手方向DLと直交する方向が、帯状部11の幅方向DWである。
図1が示す例では、蒸着マスク中間体10において、2つの帯状部11が幅方向DWに沿って並んでいる。なお、蒸着マスク中間体10において、各帯状部11は、幅方向DWにおいて他の帯状部11と並んでいなくてもよい。あるいは、蒸着マスク中間体10において、3つ以上の帯状部11が幅方向DWにおいて並んでいてもよい。
【0035】
帯状部11は、縁11e、マスク部11a、および、周辺部11bを備えている。縁11eは、一対の長辺11e1と一対の短辺11e2とを有している。
図1が示す例では、短辺11e2は、U字状を有した切り欠きe21を備えている。なお、短辺11e2は、切り欠きe21を有しなくてもよい。各長辺11e1は長手方向DLに沿って延び、各短辺11e2は幅方向DWに沿って延びている。一対の長辺11e1は互いに平行であり、一対の短辺11e2は互いに平行である。
【0036】
マスク部11aは、複数のマスク孔11hを有している。周辺部11bは、マスク部11aを囲んでいる。
図1が示す例では、帯状部11が、長手方向DLに沿って並ぶ複数のマスク部11aを備えている。そのため、周辺部11bは、複数のマスク部11aを囲むはしご状を有している。なお、帯状部11は、1つのマスク部11aのみを備えてもよい。また、帯状部11は、幅方向DWに沿って並ぶ複数のマスク部11aを備えてもよい。
【0037】
周辺部11bのうちで、長手方向DLにおけるマスク部11aと短辺11e2との間には、一方の長辺11e1から他方の長辺11e1に向けて延びる形状を有した第1脆弱部11cが位置している。第1脆弱部11cは、周辺部11bにおける第1脆弱部11c以外の部分よりも切断されやすい部分である。すなわち、第1脆弱部11cの機械的強度は、周辺部11bにおける第1脆弱部11c以外の部分における機械的強度よりも低い。このように、周辺部11bに第1脆弱部11cが位置するため、第1脆弱部11cを切断することによって、帯状部11のうち、短辺11e2を含む両端部を、帯状部11のうちでマスク部11aを含む部分から切り離すことが可能である。
【0038】
長辺11e1は、枠状部12に連結されない非連結部を含んでいる。非連結部は、帯状部11の幅方向DWにおいてマスク部11aと隣り合う部分を含んでいる。非連結部と枠状部12との間には、スリット10Sが位置している。そのため、連結部13を切断することによって帯状部11を枠状部12から切り離す際に、連結部13を切断するために連結部13に作用させた力に起因してマスク部11aにしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0039】
スリット10Sは、蒸着マスク中間体10が広がる平面と対向する平面視において、帯状部11と枠状部12との間のなかで、蒸着マスク中間体10を形成するための金属薄板が除去された部分である。なお、本実施形態では、長辺11e1のうちで、幅方向DWにおいてマスク部11aと隣り合わない部分にもスリット10Sが位置しているが、スリット10Sは、幅方向DWにおいて少なくともマスク部11aと隣り合う形状を有していればよい。また、
図1が示す例では、切り欠きe21によって囲まれる領域が、蒸着マスク中間体10を貫通する貫通部である。
【0040】
図2は、帯状部11が広がる平面に直交し、かつ、幅方向DWに沿うマスク部11aの断面構造を示している。
図2が示すように、マスク部11aは、複数のマスク孔11hを有している。各マスク孔11hは、大孔11hLと小孔11hSとを備えている。大孔11hLは、蒸着マスク中間体10の表面10Fに開口し、蒸着マスク中間体10の表面10Fから裏面10Rに向けて先細る形状を有している。小孔11hSは、蒸着マスク中間体10の裏面10Rに開口し、蒸着マスク中間体10の裏面10Rから表面10Fに向けて先細る形状を有している。
【0041】
本実施形態では、帯状部11の幅方向DWにおいて、各マスク孔11hの大孔11hLは、互いに隣り合うマスク孔11hの大孔11hLに接している。一方で、帯状部11の幅方向DWにおいて、各マスク孔11hの小孔11hSは、互いに隣り合うマスク孔11hの小孔11hSから離れている。なお、帯状部11の幅方向DWにおいて、各マスク孔11hの大孔11hLは、互いに隣り合うマスク孔11hの大孔11hLから離れていてもよい。
【0042】
蒸着マスク中間体10が有する面のうち、表面10Fが、帯状部11から形成された蒸着マスクが蒸着装置に搭載された際に、蒸着マスクにおいて蒸着源と対向する面を含む。これに対して、裏面10Rは、蒸着マスクが蒸着装置に搭載された際に、蒸着対象と対向する面を含む。蒸着対象には、大孔11hLと小孔11hSとの接続部に応じた形状を有した蒸着パターンが形成される。
【0043】
図3および
図4は、蒸着マスク中間体10の表面10Fに直交し、かつ、幅方向DWに沿う第1脆弱部11cの断面構造における一例を示している。
第1脆弱部11cは、ハーフエッチング線を有してもよいし、間隔を空けて並ぶ複数のハーフエッチング部を有してもよい。ハーフエッチング線およびハーフエッチング部は、第2板厚を有している。第2板厚は、第1板厚よりも薄い。または、第1脆弱部11cは、間隔を空けて並ぶ複数の貫通孔を有してもよい。第1脆弱部11cが複数のハーフエッチング部を有する場合には、複数のハーフエッチング部は、幅方向DWに沿って直線状に並んでもよいし、幅方向DWに沿って千鳥状に並んでもよい。
【0044】
またあるいは、第1脆弱部11cは、ハーフエッチング線と、ハーフエッチング線上においてハーフエッチング線の延びる方向に沿って並ぶ複数の貫通孔とを有してもよい。またあるいは、第1脆弱部11cは、帯状部11の幅方向DWに沿って並ぶハーフエッチング部と貫通孔とを有してもよい。この場合には、ハーフエッチング部と貫通孔とが交互に並んでよい。
【0045】
第1脆弱部11cのハーフエッチング線およびハーフエッチング部は、第2板厚を有している。これに対して、帯状部11が有する周辺部11bのうちでハーフエッチング線が位置しない部分は、第1板厚を有している。
【0046】
図3は、第1脆弱部11cがハーフエッチング線を有する場合における第1脆弱部11cの断面構造を示している。
図3が示すように、第1脆弱部11cは、帯状部11の幅方向DWに沿って延びるハーフエッチング線11c1を有している。本実施形態において、ハーフエッチング線11c1は、蒸着マスク中間体10の表面10Fに形成された線状を有した窪みである。なお、ハーフエッチング線11c1は、蒸着マスク中間体10の裏面10Rに形成されてもよい。ハーフエッチング線11c1は第2板厚T2を有し、帯状部11が有する周辺部11bのうちでハーフエッチング線11c1以外の部分は、第1板厚T1を有している。
【0047】
第1脆弱部11cがハーフエッチング線11c1を有する場合には、ハーフエッチング線11c1の幅は、帯状部11の幅方向DWにおいて一定であってもよいし、複数の大きさを含んでもよい。ハーフエッチング線11c1の幅は、帯状部11の長手方向DLに沿うハーフエッチング線11c1の太さである。
【0048】
図4は、第1脆弱部11cが、ハーフエッチング線と、ハーフエッチング線上においてハーフエッチング線が延びる方向に沿って並ぶ複数の貫通孔とを有する場合における第1脆弱部11cの断面構造を示している。
【0049】
図4が示すように、第1脆弱部11cは、帯状部11の幅方向DWに沿って延びるハーフエッチング線11c1と、ハーフエッチング線11c1上において、幅方向DWに沿って間隔を空けて並ぶ貫通孔11c2とを有している。本実施形態では、複数の貫通孔11c2は、幅方向DWにおいて等間隔で並んでいるが、複数の貫通孔11c2は、幅方向DWにおいて不規則に並んでいてもよい。
【0050】
ハーフエッチング線11c1の幅は、帯状部11の幅方向DWにおいて一定であってもよいし、複数の大きさを含んでもよい。また、貫通孔11c2の幅は、帯状部11の幅方向DWにおいて一定であってもよいし、複数の貫通孔11c2には、互いに異なる幅を有した貫通孔11c2が含まれてもよい。ハーフエッチング線11c1の幅と貫通孔11c2の幅とは等しくてもよいし、互いに異なってもよい。
【0051】
なお、本実施形態において、連結部13は、帯状部11の縁11eに沿うハーフエッチング線、および、帯状部11の縁11eに沿って並ぶ複数のハーフエッチング部の少なくとも一方を含んでいる。ハーフエッチング線およびハーフエッチング部は、第1板厚T1よりも薄い第2板厚T2を有している。連結部13は、
図3および
図4を参照して先に説明した第1脆弱部11cと同様の構造を有している。これにより、連結部13のうち、少なくともハーフエッチング線あるいはハーフエッチング部が形成された部分を切断されやすくすることができる。
【0052】
図5は、
図1が示す蒸着マスク中間体10の平面構造における一部を拡大して示している。なお、蒸着マスク中間体10は、金属薄板から蒸着マスク中間体10が製造される間において、ロールツーロール装置によって搬送される。金属薄板および蒸着マスク中間体10の搬送方向は、帯状部11の長手方向DLと平行な方向である。
図5には、帯状部11の端部のうちで、蒸着マスク中間体10の搬送方向における上流に位置する端部が示されている。
【0053】
図5が示すように、枠状部12は、帯状部11を囲む内側縁12e1と、枠状部12の外形を形成する外側縁12e2とを含んでいる。内側縁12e1は、連結部13との境界と、スリット10Sとの境界とによって形成されている。蒸着マスク中間体10は、第2脆弱部12aを備えている。第2脆弱部12aは、枠状部12において、スリット10Sからスリット10Sに対して帯状部11とは反対側に向けて延びる線状を有している。これにより、第2脆弱部12aに沿って枠状部12を切断することができるため、枠状部12から帯状部11を切り離す作業が行いやすくなる。
【0054】
本実施形態では、蒸着マスク中間体10は、複数の第2脆弱部12aを有している。各第2脆弱部12aは、帯状部11の長手方向DLと交差する方向に沿って、帯状部11の搬送方向における上流から下流に向けて延びる形状を有している。蒸着マスク中間体10は、1つの帯状部11について4つの第2脆弱部12aを有している。4つの第2脆弱部12aのうち、2つの第2脆弱部12aが、帯状部11の搬送方向において、帯状部11の中央よりも上流に位置している。これに対して、他の2つの第2脆弱部12aが、帯状部11の搬送方向において、帯状部11の中央よりも下流に位置している。なお、下流に位置する一対の第2脆弱部12aは、
図5には図示されていないが、長手方向DLにおける帯状部11の中央を通り、かつ、幅方向DWに沿って延びる対称軸に対して、上流に位置する一対の第2脆弱部12aと線対称の関係を有する位置に配置されている。
【0055】
1つの帯状部11について、上流に位置する一対の第2脆弱部12aが、帯状部11の幅方向DWにおいて帯状部11を挟んでいる。また、1つの帯状部11について、下流に位置する一対の第2脆弱部12aが、帯状部11の幅方向DWにおいて帯状部11を挟んでいる。
【0056】
第2脆弱部12aは、第1脆弱部11cと同様、ハーフエッチング線を有してもよいし、間隔を空けて並ぶ複数のハーフエッチング部を有してもよい。またあるいは、第2脆弱部12aは、ハーフエッチング線と、ハーフエッチング線上において、ハーフエッチング線の延びる方向に沿って並ぶ複数の貫通孔とを有してもよい。また、あるいは、第2脆弱部12aは、第2脆弱部12aの延在方向に沿って並ぶハーフエッチング部と貫通孔とを有してもよい。この場合には、ハーフエッチング部と貫通孔とが交互に並んでよい。なお、第2脆弱部12aがハーフエッチング線またはハーフエッチング部を有する場合には、ハーフエッチング線またはハーフエッチング部は、蒸着マスク中間体10の裏面10Rにおいて窪むことが可能である。
【0057】
図6および
図7は、
図5が示す領域Aを拡大して示している。すなわち、
図6および
図7は、スリット10Sと第2脆弱部12aとの接続部を含む領域を拡大して示している。
図6はスリット10Sが有する形状における一例を示す一方で、
図7はスリット10Sが有する形状における他の例を示している。
【0058】
図6が示すように、スリット10Sは、延在部10S1と、突出部10S2とを含んでいる。延在部10S1は、帯状部11の長辺11e1に沿って延びる部分である。突出部10S2は、延在部10S1から延在部10S1に対して帯状部11とは反対側に向けて突出する部分である。
図6が示す例では、突出部10S2の外形が、延在部10S1が延びる方向に対して直交する方向に沿って延びる矩形状を有している。第2脆弱部12aは、突出部10S2に接続されている。
【0059】
第2脆弱部12aが突出部10S2に接続されるため、第2脆弱部12aが延在部10S1に接続される場合に比べて、第2脆弱部12aの端部と帯状部11との間の距離を長くすることが可能である。これにより、第2脆弱部12aを切断するための力に起因して帯状部11にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0060】
突出部10S2のうち、延在部10S1に接続する端部が基端であり、基端とは反対側の端部が先端である。第2脆弱部12aは、突出部10S2の基端から先端に向かう途中に接続されている。なお、第2脆弱部12aは、突出部10S2の先端に接続されてもよい。
【0061】
長辺11e1の非連結部は、帯状部11の長手方向DLにおいて、マスク部11aよりも短辺11e2寄りの位置まで延びている。すなわち、長辺11e1に沿うスリット10Sが、マスク部11aよりも短辺11e2寄りの位置まで延びている。連結部13は、長辺11e1における非連結部以外の部分を枠状部12に連結している。突出部10S2は、スリット10Sの端部から延在部10S1に対して帯状部11とは反対側に向けて延びている。第1脆弱部11cは、帯状部11の長手方向DLにおいて、突出部10S2よりもマスク部11a寄りに位置している。
【0062】
これにより、帯状部11の幅方向DWにおいて第1脆弱部11cと突出部10S2とが並ぶ場合に比べて、第2脆弱部12aを切断するための力が第2脆弱部12aに作用した際に、第1脆弱部11cが第2脆弱部12aとともに切断されることが抑えられる。
【0063】
また、スリット10Sと連結部13との接続部は、枠状部12から帯状部11を取り外すために連結部13を切断する際に、切断の始点に設定される場合がある。この場合には、スリット10Sと連結部13との接続部に、連結部13を切断するために必要な力が作用する。そのため、帯状部11の幅方向DWにおいて突出部10S2と第1脆弱部11cが並ぶ場合、すなわち、第1脆弱部11cが延在部10S1の端部に接続されている場合には、連結部13の切断と同時に、第1脆弱部11cが切断される場合がある。この点、本実施形態の蒸着マスク中間体10によれば、帯状部11の長手方向DLにおいて、突出部10S2の位置と第1脆弱部11cの位置とがずれているため、連結部13の切断時に第1脆弱部11cが切断されることが抑えられる。
【0064】
図7が示すように、突出部10S2は、長手方向DLにおける延在部10S1の端部に位置している。突出部10S2は、延在部10S1に対して帯状部11とは反対側に向けて突出する形状を有している。
図7が示す例では、突出部10S2の外形は、台形状を有している。突出部10S2が区画する台形において、上底と下底とを結ぶ斜辺と、連結部13において長手方向DLに沿って延びる部分とが形成する角度が、第2角度θ2である。第2角度θ2は、20°以上50°以下であってよい。第2脆弱部12aは、突出部10S2が区画する台形のうちで、斜辺と下底とが形成する頂点に接続されている。長手方向DLに沿って下底から延長した直線と、第2脆弱部12aとが形成する角度が第1角度θ1である。第1角度θ1は、第2角度θ2よりも小さくてよい。
【0065】
なお、上述したように、枠状部12には、1つの帯状部11について、搬送方向における上流に位置する一対の第2脆弱部12aと、下流に位置する一対の第2脆弱部12aとが形成されている。各第2脆弱部12aに接続される突出部10S2は、
図6を参照して説明した形状を有してもよいし、
図7を参照して説明した形状を有してもよい。
【0066】
図8は、
図5が示す領域Bを拡大して示している。すなわち、
図8は、第2脆弱部12aにおける上流側の端部を含む領域を拡大して示している。
図8が示すように、各第2脆弱部12aの上流端部は、枠状部12を貫通する上流側貫通部12h1に接続されている。2つの上流側貫通部12h1は、幅方向DWにおいて、所定の間隔を開けて並んでいる。帯状部11から蒸着マスクを形成する際には、例えば、枠状部12を切断可能な器具によって、枠状部12のなかで、幅方向DWにおいて2つの上流側貫通部12h1によって挟まれる部分を切断し、これによって、切断片を形成する。次いで、蒸着マスク中間体10が広がる平面とは交差する方向に向けて切断片を引き上げることによって、2つの第2脆弱部12aを切断する力を、2つの第2脆弱部12aに対して同時に作用させることが可能である。
【0067】
なお、幅方向DWにおいて2つの帯状部11を挟む一対の第2脆弱部12aの各々においても、上流端部が上流側貫通部12h1に接続されている。また、枠状部12には、当該上流側貫通部12h1と対となる他の上流側貫通部12h1が形成されている。これら2つの上流側貫通部12h1は、幅方向DWに沿って並んでいる。
【0068】
図9は、第2脆弱部12aにおける下流側の端部を含む領域を示している。
図9が示すように、枠状部12は、2つの第2脆弱部12aの下流端部に連なる被把持片12bと、被把持片12bを囲む下流側貫通部12h2とを備えている。これにより、第2脆弱部12aの下流端部に連なる被把持片12bを器具によって把持したり、人の指によって把持したりすることが可能であるため、第2脆弱部12aを切断する力を第2脆弱部12aに作用させやすい。蒸着マスク中間体10が広がる平面とは交差する方向に向けて被把持片12bを引き上げることによって、2つの第2脆弱部12aを切断する力を、2つの第2脆弱部12aに対して同時に作用させることが可能である。
【0069】
なお、幅方向DWにおいて2つの帯状部11を挟む一対の第2脆弱部12aの各々においても、下流端部が被把持片12bに接続され、かつ、被把持片12bが下流側貫通部12h2に囲まれている。被把持片12bには、1つの第2脆弱部12aにおける下流端部が接続されている。
【0070】
[蒸着マスクの構造]
図10から
図13を参照して、蒸着マスクの構造を説明する。
図10が示すように、蒸着マスク11Mは、帯状部11と同様、長手方向DLと幅方向DWとを有している。蒸着マスク11Mの長手方向DLが帯状部11の長手方向DLに対応し、蒸着マスク11Mの幅方向DWが帯状部11の幅方向DWに対応する。蒸着マスク11Mは、長手方向DLに沿って延びる帯状を有している。蒸着マスク中間体10が有する連結部13の切断によって枠状部12から帯状部11が取り外され、これによって、帯状部11から蒸着マスク11Mを形成することが可能である。
【0071】
マスク装置20は、蒸着マスク11Mとフレーム21とを備えている。蒸着マスク11Mは、蒸着マスク11Mが有するマスク部11aが、フレーム21が取り囲む領域内に位置するようにフレーム21に取り付けられる。蒸着マスク11Mのうち、第1脆弱部11cを含む部分が、フレーム21に取り付けられる。蒸着マスク11Mは、接着剤によってフレーム21に取り付けられてもよいし、締結部材によってフレームに取り付けられてもよいし、溶接によってフレーム21に取り付けられてもよい。
【0072】
蒸着マスク11Mがフレーム21に取り付けられる際には、蒸着マスク11Mの短辺11e2が、他の短辺11e2から離れる方向に向けて引っ張られ、これにより、長手方向DLに沿う寸法を引き延ばすような張力が蒸着マスク11Mに与えられた状態で、蒸着マスク11Mがフレーム21に取り付けられる。
【0073】
なお、
図10が示す例では、マスク装置20は2つの蒸着マスク11Mを備えているが、マスク装置20は、蒸着マスク11Mを1つのみ備えてもよいし、3つ以上の蒸着マスク11Mを備えてもよい。マスク装置20が備える蒸着マスク11Mの個数に限らず、蒸着マスク11Mにおいて、第1脆弱部11cを含む部分が、フレーム21に取り付けられる。
【0074】
蒸着マスク11Mがフレーム21に取り付けられる際には、蒸着マスク11Mの表面11Fにおける一部が、フレームに取り付けられる。これにより、マスク孔11hにおける大孔11hLが、フレーム21が取り囲む領域に向けて開口している。また、第1脆弱部11cが備えるハーフエッチング線またはハーフエッチング部は、フレーム21に向けて開口している。
【0075】
図11が示すように、蒸着マスク11Mがフレーム21に取り付けられた後に、第1脆弱部11cが切断されることによって、蒸着マスク11Mのうちで、第1脆弱部11cよりも短辺11e2寄りの部分が取り除かれる。蒸着マスク11Mは、長手方向DLの両端部の各々に、第1脆弱部11cの切断によって形成された切断痕11cmを有している。
【0076】
図12および
図13は、
図11が示す領域Dを拡大して示している。なお、
図12および
図13は、領域Dを蒸着マスク11Mの裏面11Rと対向する視点から見た場合の切断痕11cmの構造を示している。
図12は、
図3を参照して先に説明したように、第1脆弱部11cがハーフエッチング線11c1を備える場合に形成される切断痕11cmを示している。これに対して
図13は、第1脆弱部11cが、
図4を参照して先に説明したように、第1脆弱部11cが、ハーフエッチング線11c1と、ハーフエッチング線上において、ハーフエッチング線11c1の延びる方向に沿って並ぶ複数の貫通孔11c2を備える場合に形成される切断痕11cmを示している。
【0077】
図12が示すように、第1脆弱部11cがハーフエッチング線11c1を備える場合には、切断痕11cmは、蒸着マスク11Mの表面11Fから裏面11Rに向けて捲れあがった部分を蒸着マスク11Mの幅方向DWにわたって有している。第1脆弱部11cが切断される際には、第1脆弱部11cが折り曲げ部となるように、蒸着マスク11Mが折り曲げられる。この際に、蒸着マスク11Mにおける表面11Fの一部がフレームに取り付けられているため、蒸着マスク11Mの裏面11Rの一部と、当該裏面11Rの他の一部とが対向するように、蒸着マスク11Mが折り曲げられる。
【0078】
図13が示すように、第1脆弱部11cがハーフエッチング線11c1と複数の貫通孔11c2とを備える場合には、切断痕11cmは、複数の捲れcm1と複数の窪みcm2とを備えている。切断痕11cmが延びる方向において、捲れcm1と窪みcm2とが交互に並んでいる。切断痕11cmにおいて、複数の捲れcm1は、ハーフエッチング線11c1が切断されることによって形成された部分である。切断痕11cmにおいて、各窪みcm2は、各貫通孔11c2に対応する部分である。各捲れcm1は、蒸着マスク11Mの表面11Fから裏面11Rに向けて捲れあがっている。
【0079】
本実施形態の蒸着マスク11Mでは、ハーフエッチング線11c1が表面10Fに開口するから、蒸着マスク中間体10から形成された蒸着マスク11Mがフレーム21に貼り付けられた場合に、ハーフエッチング線11c1がフレーム21に向けて開口する。そのため、ハーフエッチング線11c1が裏面10Rに開口する場合に比べて、裏面10Rの一部と、当該裏面10Rの他の一部とが対向するように蒸着マスク11Mを折り曲げる場合に、第1脆弱部11cに沿って蒸着マスク11Mを折り曲げるために必要な力が小さくてすむ。これにより、蒸着マスク11Mの折り曲げに要する負荷を軽減することができる。また、第1脆弱部11cに沿って蒸着マスク11Mを切断するために必要な時間を短くすることもできる。なお、第1脆弱部11cがハーフエッチング部を含む場合にも、ハーフエッチング線11c1を含む場合と同等の効果を得ることができる。
【0080】
[試験例]
第1脆弱部11cの構造が互いに異なる試験例1から試験例4の蒸着マスク11Mを形成した。なお、以下に参照する
図14から
図17は、蒸着マスク11Mの表面11Fと対向する平面視における第1脆弱部11cの構造を示している。各第1脆弱部11cは、蒸着マスク11Mの表面11Fに位置している。
【0081】
[試験例1]
図14が示すように、試験例1では、幅方向DWに沿って延びるハーフエッチング線11c1によって第1脆弱部11cを形成した。
【0082】
[試験例2]
図15が示すように、試験例2では、試験例1のハーフエッチング線11c1を、幅方向DWおよび長手方向DLの両方において等間隔で分割することにより、第1脆弱部11cを複数のハーフエッチング部11c3によって形成した。この際に、幅方向DWにおいて、間隔GWを空けて複数のハーフエッチング部11c3を並べた。また、長手方向DLにおいて、間隔GLを空けて2つのハーフエッチング部11c3を並べた。なお、各ハーフエッチング部11c3の幅を試験例1の幅Wの1/3の長さに設定し、かつ、間隔GLを幅Wの1/3の長さに設定した。
【0083】
[試験例3]
図16が示すように、試験例3では、幅方向DWに沿って等間隔で並ぶ複数のハーフエッチング部11c3によって第1脆弱部11cを形成した。各ハーフエッチング部11c3の形状を長方形状に設定した。幅方向DWにおいて、ハーフエッチング部11c3間の間隔GWを試験例2の間隔GWよりも小さくした。
【0084】
[試験例4]
図17が示すように、試験例4では、試験例3と同様に、複数のハーフエッチング部11c3によって第1脆弱部11cを形成した。各ハーフエッチング部11c3の形状を試験例3のハーフエッチング部11c3と同一の形状に設定した。一方で、複数のハーフエッチング部11c3を千鳥状に配列した。この際に、幅方向DWにおいて互いに隣り合う2つのハーフエッチング部11c3について、長手方向DLにおいて、一方のハーフエッチング部11c3の位置に対する他方のハーフエッチング部11c3の位置をハーフエッチング部11c3の幅W分だけずらした。また、幅方向DWにおいて互いに隣り合う2つのハーフエッチング部11c3の間の間隔GWを試験例3と同一に設定した。
【0085】
[評価方法および評価方法]
各試験例の蒸着マスク11Mが有する表面11Fの一部をフレーム21に貼り付けることによって、マスク装置20を形成した。次いで、第1脆弱部11cに沿って各蒸着マスク11Mを切断した。蒸着マスク11Mが第1脆弱部11cに沿って切断されるまでに必要な折り曲げの回数を計数したところ、試験例1,3,4では、蒸着マスク11Mを2回折り曲げることによって、蒸着マスク11Mが第1脆弱部11cに沿って切断されることが認められた。これに対して、試験例2では、蒸着マスク11Mを4回折り曲げることによって、蒸着マスク11Mが第1脆弱部11cに沿って切断されることが認められた。このように、試験例1,3,4の蒸着マスク11Mによれば、試験例2の蒸着マスク11Mに比べて、少ない回数の折り曲げによって蒸着マスク11Mを切断することが可能であることが認められた。
【0086】
なお、試験例4の蒸着マスク11Mでは、試験例2,3の蒸着マスク11Mに比べて、長手方向DLにおけるハーフエッチング部11c3間の間隔が長いから、蒸着マスク中間体10の搬送時において第1脆弱部11cの意図しない切断が生じにくい。この点において、試験例4の蒸着マスク11Mは、試験例2,3の蒸着マスク11Mよりも好ましい。
【0087】
以上説明したように、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法における第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1‐1)周辺部11bに第1脆弱部11cが位置するため、第1脆弱部11cを切断することによって、帯状部11のうち、切り欠きe21を含む両端部を、帯状部11のうちでマスク部11aを含む部分から切り離すことが可能である。
【0088】
(1‐2)連結部13を切断することによって帯状部11を枠状部12から切り離す際に、連結部13を切断するために連結部13に作用させた力に起因してマスク部11aにしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0089】
(1‐3)連結部13のうち、少なくともハーフエッチング線あるいはハーフエッチング部が形成された部分を切断されやすくすることができる。
(1‐4)第2脆弱部12aに沿って枠状部12を切断することができるため、枠状部12から帯状部11を切り離す作業が行いやすくなる。
【0090】
(1‐5)第2脆弱部12aが突出部10S2に接続されるため、第2脆弱部12aが延在部10S1に接続される場合に比べて、第2脆弱部12aの端部と帯状部11との間の距離を長くすることが可能である。これにより、第2脆弱部12aを切断するための力に起因して帯状部11にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0091】
(1‐6)帯状部11の幅方向DWにおいて第1脆弱部11cと突出部10S2とが並ぶ場合に比べて、第2脆弱部12aを切断するための力が第2脆弱部12aに作用した際に、第1脆弱部11cが第2脆弱部12aとともに切断されることが抑えられる。
【0092】
[第2実施形態]
図18から
図21を参照して、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法における第2実施形態を説明する。第2実施形態では、連結部の構造が第1実施形態における連結部の構造と異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第2実施形態において第1実施形態と共通する部分には第1実施形態と同一の符号を付すことによって、当該部分の詳しい説明を省略する。以下では、蒸着マスク中間体の構造を説明する。
【0093】
[蒸着マスク中間体の構造]
図18から
図21を参照して、蒸着マスク中間体の構造を説明する。
図18が示すように、蒸着マスク中間体30は、第1実施形態の蒸着マスク中間体10と同様、帯状部11および枠状部12を備えている。蒸着マスク中間体30は、複数の連結部33を備えている。帯状部11は、連結部33によって枠状部12に連結されている。
【0094】
蒸着マスク中間体30において、周辺部11bおよび枠状部12は、第1板厚を有している。複数の連結部33は、帯状部11の縁11eに沿って間隔を空けて位置し、各連結部33は第1板厚を有している。帯状部11の縁11eのうち連結部33が接続した部分以外の部分に沿って、スリット30Sが位置している。帯状部11の縁11eのうち連結部33が接続した部分以外の部分に沿ってスリット30Sが位置するため、連結部33を切断する作業が行いやすい。
【0095】
長辺11e1は、枠状部12に連結されない非連結部を含んでいる。非連結部は、帯状部11の幅方向DWにおいてマスク部11aと隣り合う部分を含んでいる。そのため、連結部33を切断することによって帯状部11を枠状部12から切り離す際に、連結部33を切断するために連結部33に作用させた力に起因してマスク部11aにしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0096】
連結部33は、帯状部11の縁11eのうちで、U字状を有した切り欠きe21の底部以外の部分を枠状部12に連結することが好ましい。これにより、帯状部11から形成された蒸着マスクの取り付けに際して、蒸着マスクに張力が与えられた場合に、連結部33の切断痕に起因して、蒸着マスクにしわが生じることが抑えられる。
【0097】
図19および
図20は、蒸着マスク中間体30のうちで、
図5における領域Aに相当する部分を拡大して示している。
図19はスリット30Sが有する形状における一例を示す一方で、
図20はスリット30Sが有する形状における他の例を示している。
【0098】
図19が示すように、スリット30Sのうちで長辺11e1に沿う部分がスリット部30S1である。蒸着マスク中間体30は、第1実施形態の蒸着マスク中間体10と同様、枠状部12において、スリット部30S1からスリット部30S1に対して帯状部11とは反対側に向けて延びる線状を有した第2脆弱部32aを備えている。これにより、第2脆弱部32aに沿って枠状部12を切断することができるため、枠状部12から帯状部11を切り離す作業が行いやすくなる。
【0099】
スリット部30S1は、帯状部11の縁11eに沿って延びる延在部S11と、延在部S11から延在部S11に対して帯状部11とは反対側に向けて突出する突出部S12を含んでいる。
図19が示す例では、突出部S12の外形が、延在部S11が延びる方向に対して直交する方向に沿って延びる矩形状を有している。第2脆弱部32aは、突出部S12に接続されている。第2脆弱部32aが突出部S12に接続されるため、第2脆弱部32aがスリット30Sのうちで帯状部11に沿う部分に接続される場合に比べて、第2脆弱部32aの端部と帯状部11との間の距離を長くすることが可能である。これにより、第2脆弱部32aを切断するための力に起因して帯状部11にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0100】
スリット部30S1は、帯状部11の長手方向DLにおいて、マスク部11aよりも短辺11e2寄りに位置する部分を含んでいる。突出部S12は、帯状部11の長手方向DLにおいて、マスク部11aよりも短辺11e2寄りに位置している。第1脆弱部11cは、帯状部11の長手方向DLにおいて、突出部S12よりもマスク部11a寄りに位置している。帯状部11の幅方向DWにおいて第1脆弱部11cと突出部S12とが並ぶ場合に比べて、第2脆弱部32aを切断するための力が第2脆弱部32aに作用した際に、第1脆弱部11cが第2脆弱部32aとともに切断されることが抑えられる。
【0101】
突出部S12のうち、延在部S11に接続する端部が基端であり、基端とは反対側の端部が先端である。第2脆弱部32aは、突出部S12の基端から先端に向かう途中に接続されている。なお、第2脆弱部32aは、突出部S12の先端に接続されてもよい。
【0102】
図20が示すように、突出部S12は、延在部S11が長手方向DLに沿って延びる途中に位置している。突出部S12は、延在部S11に対して帯状部11とは反対側に向けて突出する形状を有している。
図20が示す例では、突出部S12の外形は、台形状を有している。突出部S12が区画する台形において、上底と下底とを結ぶ斜辺と、延在部S11とが形成する角度が第4角度θ4である。第4角度θ4は、20°以上50°以下であってよい。第2脆弱部32aは、突出部S12が区画する台形のうちで、斜辺と下底とが形成する頂点に接続されている。長手方向DLに沿って下底から延長した直線と、第2脆弱部32aとが形成する角度が第3角度θ3である。第3角度θ3は、第4角度θ4よりも小さくてよい。
【0103】
上述したように、枠状部12には、1つの帯状部11について、搬送方向における上流に位置する一対の第2脆弱部32aと、下流に位置する一対の第2脆弱部32aとが形成されている。各第2脆弱部32aに接続される突出部S12は、
図19を参照して説明した形状を有してもよいし、
図20を参照して説明した形状を有してもよい。
【0104】
以上説明したように、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法における第2実施形態によれば、上述した(1‐1)に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
【0105】
(2‐1)帯状部11の縁11eのうち連結部33が接続した部分以外の部分に沿ってスリット30Sが位置するため、連結部33を切断する作業が行いやすい。
(2‐2)連結部33を切断することによって帯状部11を枠状部12から切り離す際に、連結部33を切断するために連結部33に作用させた力に起因してマスク部11aにしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0106】
(2‐3)第2脆弱部32aに沿って枠状部12を切断することができるため、枠状部12から帯状部11を切り離す作業が行いやすくなる。
(2‐4)第2脆弱部32aが突出部S12に接続されるため、第2脆弱部32aがスリット30Sのうちで帯状部11に沿う部分に接続される場合に比べて、第2脆弱部32aの端部と帯状部11との間の距離を長くすることが可能である。これにより、第2脆弱部32aを切断するための力に起因して帯状部11にしわなどの変形が生じることが抑えられる。
【0107】
(2‐5)帯状部11の幅方向DWにおいて第1脆弱部11cと突出部S12とが並ぶ場合に比べて、第2脆弱部32aを切断するための力が第2脆弱部32aに作用した際に、第1脆弱部11cが第2脆弱部32aとともに切断されることが抑えられる。
【0108】
[変更例]
なお、各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[スリット]
・突出部10S2,S12は、帯状部11の幅方向DWにおいて第1脆弱部11cと並んでもよいし、帯状部11の幅方向DWにおいて第1脆弱部11cよりもマスク部11a寄りに位置してもよい。上述したように、第2脆弱部12a,32aの切断時に第1脆弱部11cが切断されることを抑える観点では、突出部10S2,S12は、帯状部11の幅方向DWにおいて、第1脆弱部11cとは並ばないことが好ましい。また、第2脆弱部12a,32aとマスク部11aとの間の距離を大きくし、これによって、マスク部11aにおけるしわなどの変形を抑える観点では、突出部10S2,S12は、第1脆弱部11cよりも短辺11e2寄りに位置することが好ましい。
【0109】
・スリット10S,30Sは、長辺11e1に沿って延びる延在部10S1,S11を備える一方で、突出部10S2,S12を備えなくてもよい。この場合には、第2脆弱部12a,32aは、延在部10S1,S11に接続されればよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第2脆弱部12a,32aを備えることによって、上述した(1‐4)、(2‐3)に準じた効果を得ることは可能である。
【0110】
・各実施形態において、スリット10S,30Sのうちで長辺11e1に沿う部分は、帯状部11の幅方向DWにおいてマスク部11aと隣り合う一方で、帯状部11の長手方向DLにおいてマスク部11aよりも短辺11e2寄りには位置しなくてもよい。この場合には、第2脆弱部12a,32aは、スリット10S,30Sのうちで、長辺11e1に延びる部分におけるいずれかの部位から、スリット10S,30Sに対して帯状部11とは反対側に向けて延びていればよい。
【0111】
[第2脆弱部]
・蒸着マスク中間体10,30が有する被把持片12bおよび下流側貫通部12h2に代えて、上流側貫通部12h1が適用されてもよい。すなわち、下流側に位置する第2脆弱部12a,32aの下流端部には、上流側貫通部12h1と同等の構造を有した貫通部が適用されてもよい。また、蒸着マスク中間体10,30が有する上流側貫通部12h1に代えて、被把持片12bおよび下流側貫通部12h2が適用されてもよい。すなわち、上流側に位置する第2脆弱部12a,32aの上流端部には、被把持片12bと同等の構造を有した被把持片、および、下流側貫通部12h2と同等の構造を有した貫通部が適用されてもよい。いずれの場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第2脆弱部12a,32aを有することによって、上述した(1‐4)、(2‐3)に準じた効果を得ることは可能である。
【0112】
・蒸着マスク中間体10,30は、第2脆弱部12a,32aの上流端部が接続される上流側貫通部12h1を有しなくてもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第2脆弱部12a,32aを有することによって、上述した(1‐4)、(2‐3)に準じた効果を得ることは可能である。
【0113】
・蒸着マスク中間体10,30は、第2脆弱部12a,32aの下流端部が接続される被把持片12b、および、下流側貫通部12h2を有しなくてもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第2脆弱部12a,32aを有することによって、上述した(1‐4)、(2‐3)に準じた効果を得ることは可能である。
【0114】
・第2脆弱部12a,32aは、突出部10S2,S12における基端から先端までのいずれかの位置に接続されていればよい。この場合であっても、第2脆弱部12a,32aが突出部10S2,S12に接続されることによって、上述した(1‐5)、(2‐4)に準じた効果を得ることはできる。
【0115】
・蒸着マスク中間体10,30は、第2脆弱部12a,32aを有しなくてもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第1脆弱部11cを備えることによって、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0116】
[連結部]
・連結部13,33は、長辺11e1のうちで、帯状部11の幅方向DWにおいてマスク部11aと隣り合う部分を枠状部12に連結してもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第1脆弱部11cを有することによって、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることはできる。なお、上述したように、連結部13,33の切断によって帯状部11にしわなどの変形が生じることを抑える観点では、長辺11e1のうちで、幅方向DWにおいてマスク部11aと隣り合う部分は、枠状部12に連結されていないことが好ましい。
【0117】
・第2実施形態の連結部33は、帯状部11の縁11eにおける一部に沿い、かつ、第1板厚T1を有する部分と、当該部分上に並ぶ複数の貫通孔とから形成されてもよい。この場合であっても、上述した(2‐1)に準じた効果を得ることはできる。
【0118】
・連結部13,33は、帯状部11の縁11eの全周を枠状部12に接続してもよい。例えば、第1実施形態の蒸着マスク中間体10では、ハーフエッチング線が、帯状部11の縁11eの全周に沿って形成されてもよいし、ハーフエッチング線と、ハーフエッチング線に沿う複数の貫通孔とが、帯状部11の縁11eの全周に沿って形成されてもよい。また例えば、第1実施形態の蒸着マスク中間体10では、ハーフエッチング部が、帯状部11の縁11eの全周に沿って間隔を空けて形成されてもよい。例えば、第2実施形態の蒸着マスク中間体30では、帯状部11の縁11eの全周に沿って、複数の貫通孔が間隔を空けて形成されてもよい。
【0119】
・第1実施形態において、連結部13が有するハーフエッチング線またはハーフエッチング部は、蒸着マスク中間体10の表面10Fに開口してもよい。言い換えれば、連結部13は、表面10Fにおいて窪むハーフエッチング線またはハーフエッチング部を備えてもよい。この場合であっても、上述した(1‐3)に準じた効果を得ることは可能である。
【0120】
[第1脆弱部]
・第1脆弱部11cは、一方の長辺11e1から他方の長辺11e1に向けて延びていれば、帯状部11の幅方向DWに交差する方向に沿って延びてもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第1脆弱部11cを有するため、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0121】
・上述したように、第1脆弱部11cが有するハーフエッチング線11c1は、蒸着マスク中間体10,30の裏面10Rに開口してもよい。言い換えれば、ハーフエッチング線11c1は、裏面10Rにおいて窪んでいてもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第1脆弱部11cを有するため、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0122】
・蒸着マスク中間体10,30は、帯状部11の長手方向DLにおいて、マスク部11aを挟む一対の第1脆弱部11cを有しているが、二対以上の第1脆弱部11cを有してもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第1脆弱部11cを有するため、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0123】
[マスク孔]
・
図21が示すように、マスク孔11hは、蒸着マスク中間体10の表面10Fと直交する断面において、表面10Fから裏面10Rに向けて窪む弧状を有し、かつ、表面10Fに開口する表面開口11hFと、裏面10Rに開口する裏面開口11hRとを有してもよい。
【0124】
[マスク装置]
・マスク装置20において、蒸着マスク11Mの裏面11Rが、フレーム21に取り付けられてもよい。この場合であっても、蒸着マスク中間体10,30が第1脆弱部11cを有するため、上述した(1‐1)に準じた効果を得ることはできる。
【符号の説明】
【0125】
10,30…蒸着マスク中間体
10S,30S…スリット
10S1,S11…延在部
10S2,S12…突出部
11…帯状部
11a…マスク部
11b…周辺部
11c…第1脆弱部
11e…縁
11e1…長辺
11e2…短辺
11h…マスク孔
11M…蒸着マスク
12…枠状部
12a,32a…第2脆弱部
12e1…内側縁
12e2…外側縁
13,33…連結部
30S1…スリット部