(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】マルチプレクサならびにそれを用いた高周波フロントエンド回路および通信装置
(51)【国際特許分類】
H03H 7/46 20060101AFI20220705BHJP
H04B 1/00 20060101ALI20220705BHJP
H04B 1/40 20150101ALI20220705BHJP
【FI】
H03H7/46 C
H04B1/00 257
H04B1/00 260
H04B1/40
(21)【出願番号】P 2020546772
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2019031344
(87)【国際公開番号】W WO2020054284
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018171434
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】森 弘嗣
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/056377(WO,A1)
【文献】特開2012-080246(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/46
H04B 1/00
H04B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯域の信号を通過させるマルチプレクサであって、
第1周波数帯域の信号を通過させる第1フィルタと、
前記第1周波数帯域よりも低い第2周波数帯域の信号を通過させる第2フィルタと、
第3周波数帯域の信号を通過させる第3フィルタとを備え、
前記第3周波数帯域は、前記第1周波数帯域よりも高い周波数帯域、あるいは、前記第2周波数帯域よりも低い周波数帯域であり、
前記第1フィルタは、前記第1周波数帯域の低域側の第1減衰極を形成する第1インダクタを含み、
前記第2フィルタは、前記第2周波数帯域の高域側の第2減衰極を形成する第2インダクタを含み、
前記第3フィルタを構成する部品の少なくとも一部は、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの間に配置され、
前記第1減衰極は、前記第1周波数帯域の低域側に形成される減衰極のうちで、前記第1周波数帯域に最も近い減衰極であり、
前記第2減衰極は、前記第2周波数帯域の高域側に形成される減衰極のうちで、前記第2周波数帯域に最も近い減衰極である、マルチプレクサ。
【請求項2】
前記第1~第3フィルタが形成される基板を平面視した場合に、前記第3フィルタを構成する部品の少なくとも一部は、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの間に配置される、請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記第1フィルタは、
アンテナ端子と第1端子との間に形成される第1直列腕回路と、
前記第1直列腕回路と接地電位との間に接続され、前記第1インダクタを含む第1並列腕回路とを備え、
前記第2フィルタは、
前記アンテナ端子と第2端子との間に形成される第2直列腕回路と、
前記第2直列腕回路と前記接地電位との間に接続され、前記第2インダクタを含む第2並列腕回路とを備え、
前記第1並列腕回路は、前記第1直列腕回路と前記接地電位との間において、前記第1インダクタと直列接続された第1インピーダンス可変回路を含み、
前記第2並列腕回路は、前記第2直列腕回路と前記接地電位との間において、前記第2インダクタと直列接続された第2インピーダンス可変回路を含み、
前記第1並列腕回路および前記第2並列腕回路は、前記第1インピーダンス可変回路および前記第2インピーダンス可変回路のそれぞれのインピーダンスを切換えることによって、前記第1減衰極および前記第2減衰極のそれぞれの周波数を変更可能に構成される、請求項
1または2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
前記第1インピーダンス可変回路および前記第2インピーダンス可変回路の各々は、インピーダンスを切換えるためのスイッチを有しており、
前記第1インピーダンス可変回路のスイッチおよび前記第2インピーダンス可変回路のスイッチは、同じ素子内に形成される、請求項
3に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、前記基板上に実装される、請求項
2~
4のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項6】
前記第3フィルタは、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの間に少なくとも一部が配置される第3インダクタを含み、
前記第3インダクタは、前記第3インダクタの巻回軸が前記第1インダクタの巻回軸および前記第2インダクタの巻回軸と非平行となるように配置される、請求項1~
5のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項7】
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、巻回軸が互いに非平行となるように配置される、請求項1~
6のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項8】
前記第1~第3周波数帯域は、
1427MHzから2690MHzの周波数帯域、
3300MHzから4200MHzの周波数帯域、
4400MHzから5000MHzの周波数帯域、
5150MHzから6000MHzの周波数帯域、および、
5925MHzから7125MHzの周波数帯域、のうちのいずれか3つに対応する、請求項1~
7のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項9】
前記第1~第3周波数帯域は、
699MHzから960MHzの周波数帯域、
1427MHzから2200MHzの周波数帯域、
2300MHzから2690MHzの周波数帯域、
3300MHzから5000MHzの周波数帯域、
5150MHzから6000MHzの周波数帯域、および、
5925MHzから7125MHzの周波数帯域、のうちのいずれか3つに対応する、請求項1~
7のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項10】
複数の周波数帯域の信号を通過させるマルチプレクサであって、
第1周波数帯域の信号を通過させる第1フィルタと、
前記第1周波数帯域よりも低い第2周波数帯域の信号を通過させる第2フィルタと、
第3周波数帯域の信号を通過させる第3フィルタとを備え、
前記第3周波数帯域は、前記第1周波数帯域よりも高い周波数帯域、あるいは、前記第2周波数帯域よりも低い周波数帯域であり、
前記第1フィルタは、前記第1周波数帯域の低域側の第1減衰極を形成する第1インダクタを含み、
前記第2フィルタは、前記第2周波数帯域の高域側の第2減衰極を形成する第2インダクタを含み、
前記第3フィルタを構成する部品の少なくとも一部は、前記第1インダクタと前記第2インダクタとの間に配置され、
前記第1減衰極は、前記第1周波数帯域の低域側に形成される減衰極であり、
前記第2減衰極は、前記第2周波数帯域の高域側に形成される減衰極である、マルチプレクサ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のマルチプレクサと、
前記マルチプレクサに接続された増幅回路とを備える、高周波フロントエンド回路。
【請求項12】
請求項11に記載の高周波フロントエンド回路と、
前記高周波フロントエンド回路に接続されたRF信号処理回路とを備える、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はマルチプレクサならびにそれを用いた高周波フロントエンド回路および通信装置(以下、マルチプレクサ等とも称する。)に関し、より特定的には、マルチプレクサ等の電気特性を向上させる構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話あるいはスマートフォンなどの携帯端末において、複数の周波数帯域の電波を用いて通信を行なうマルチバンド通信が進められている。このような携帯端末においては、1つのアンテナで送受信する高周波信号を複数の周波数帯域の信号に分波するためのマルチプレクサが搭載される。
【0003】
特開2013-243600号公報(特許文献1)には、入力された信号を異なる3つの周波数帯域に分離するためのトリプレクサが開示されている。特開2013-243600号公報(特許文献1)に開示されたトリプレクサにおいては、第1フィルタは入力ポートに直接接続され、第2フィルタおよび第3フィルタは、共通のマッチングキャパシタを介して入力ポートに接続されている。このような構成とすることにより、比較的簡素な構成で、周波数帯域の分波性能と、低挿入損失および低背化とを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチプレクサにおいては、各フィルタで異なる周波数帯域の信号を通過させるために、各フィルタ間のアイソレーション特性を向上させることが必要となる。特に、2つのフィルタ間において通過させる信号の周波数帯域が近接している場合、すなわち通過帯域が近接している2つのフィルタが用いられる場合には、周波数帯域の境界付近における減衰を急峻にすることが重要となる。
【0006】
一般的に、マルチプレクサに用いられる各フィルタにおいては、減衰極を形成するためにインダクタが用いられる場合がある。通過させる信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタ間において、減衰極を形成するインダクタ同士が磁界結合すると、当該磁界結合による信号の漏洩によって十分な減衰量が得られなくなり、当該フィルタ間のアイソレーション特性が悪化する可能性がある。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、マルチプレクサにおいて、通過させる信号の周波数帯域が隣接するフィルタ間のアイソレーション特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るマルチプレクサは、第1周波数帯域の信号を通過させる第1フィルタ、第1周波数帯域よりも低い第2周波数帯域の信号を通過させる第2フィルタ、および、第3周波数帯域の信号を通過させる第3フィルタを備える。第3周波数帯域は第1周波数帯域よりも高い周波数帯域、あるいは、第2周波数帯域よりも低い周波数帯域である。第1フィルタは、第1周波数帯域の低域側の第1減衰極を形成する第1インダクタを含む。第2フィルタは、第2周波数帯域の高域側の第2減衰極を形成する第2インダクタを含む。第3フィルタを構成する部品の少なくとも一部は、第1インダクタと第2インダクタとの間に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るマルチプレクサによれば、通過させる信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタ(第1フィルタ,第2フィルタ)において、2つの周波数帯域における近接する側の減衰極を形成するインダクタの間に、他のフィルタ(第3フィルタ)の部品が配置される。これにより、減衰極を形成するインダクタ同士の磁界結合の度合いを小さくすることができるので、第1フィルタと第2フィルタとの間のアイソレーション特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に従うマルチプレクサが適用される通信装置のブロック図である。
【
図2】
図1におけるマルチプレクサの詳細な回路構成を示す図である。
【
図3】マルチプレクサが形成される基板に実装される素子の概略配置図である。
【
図4】実施の形態および比較例における減衰特性を説明するための図である。
【
図5】第3フィルタの部品配置の第1の例を示す図である。
【
図6】第3フィルタの部品配置の第2の例を示す図である。
【
図7】変形例1に従うマルチプレクサの回路構成を示す図である。
【
図8】4つのフィルタを含むマルチプレクサの例を示す図である。
【
図9】5つのフィルタを含むマルチプレクサの例を示す図である。
【
図10】変形例3におけるマルチプレクサの部品配置の第1例を示す図である。
【
図11】変形例3におけるマルチプレクサの部品配置の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
(通信装置の全体構成)
図1は、実施の形態に従うマルチプレクサ100が適用される通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。
【0013】
図1を参照して、通信装置10は、高周波フロントエンド回路20と、RF信号処理回路(以下、「RFIC」とも称する。)30とを備える。高周波フロントエンド回路20は、アンテナ装置ANTとRFIC30との間で高周波信号を伝達するための回路である。具体的には、高周波フロントエンド回路20は、アンテナ装置ANTで受信された高周波信号を、予め定められた複数の周波数帯域に分波してRFIC30へ伝達する。
【0014】
高周波フロントエンド回路20は、マルチプレクサ100と、スイッチ111~113,131~133と、増幅回路141~143と、バンドパスフィルタ(以下、「BPF」とも称する。)121~128とを含む。なお、BPF121,122およびBPF123,124は、それぞれデュプレクサを構成している。
【0015】
マルチプレクサ100は、互いに異なる周波数範囲を通過帯域とするフィルタFLT1、フィルタFLT2およびフィルタFLT3とを含むトリプレクサである。
【0016】
フィルタFLT1は、アンテナ端子TAと端子T1(第1端子)との間に接続される。フィルタFLT1は、ハイバンド群の周波数範囲を通過帯域とし、ミドルバンド群およびローバンド群の周波数範囲を減衰帯域とするハイパスフィルタ(以下、「HPF」とも称する。)である。
【0017】
フィルタFLT2は、アンテナ端子TAと端子T2(第2端子)との間に接続される。フィルタFLT2は、ミドルバンド群の周波数範囲を通過帯域とし、ハイバンド群およびローバンド群の周波数範囲を減衰帯域とするバンドパスフィルタである。
【0018】
フィルタFLT3は、アンテナ端子TAと端子T3(第3端子)との間に接続される。フィルタFLT3は、ローバンド群の周波数範囲を通過帯域とし、ハイバンド群およびミドルバンド群の周波数範囲を減衰帯域とするローパスフィルタ(以下、「LPF」とも称する。)である。
【0019】
なお、フィルタFLT1のハイパスフィルタおよびフィルタFLT3のローパスフィルタは、バンドパスフィルタとしてもよい。
【0020】
本実施の形態におけるマルチプレクサ100の各フィルタが通過させる信号の周波数帯域は、一例においては、1427MHz以上2690MHz未満、3300MHz以上4200MHz未満、4400MHz以上5000MHz未満、5150MHz以上6000MHz未満、および、5925MHz以上7125MHz未満の5つの周波数帯域のうちのいずれか3つの周波数帯域に対応する。あるいは、他の例においては、699MHz以上960MHz未満、1427MHz以上2200MHz未満、2300MHz以上2690MHz未満、3300MHz以上5000MHz未満、5150MHz以上6000MHz未満、および、5925MHz以上7125MHz未満の6つの周波数帯域のうちのいずれか3つの周波数帯域に対応する。なお、上記以外の周波数帯域を有するフィルタを用いてもよい。
【0021】
フィルタFLT1~FLT3の各々は、アンテナ装置ANTで受信した高周波信号のうち、各フィルタの通過帯域に対応する高周波信号のみを通過させる。これにより、アンテナ装置ANTからの受信信号を予め定められた複数の周波数帯域の信号に分波する。
【0022】
スイッチ111~113は、マルチプレクサ100とBPF121~128との間に接続され、制御部(図示せず)からの制御信号に従って、ローバンド群、ミドルバンド群およびハイバンド群のそれぞれに対応する信号経路とBPF121~128とを接続する。
【0023】
具体的には、スイッチ111は、共通端子がフィルタFLT1に接続され、各選択端子がBPF121~124に接続されている。スイッチ112は、共通端子がフィルタFLT2に接続され、各選択端子がBPF125,126に接続されている。スイッチ113は、共通端子がフィルタFLT3に接続され、各選択端子がBPF127,128に接続されている。
【0024】
スイッチ131~133は、増幅回路141~143とBPF121~128との間に接続され、制御部(図示せず)からの制御信号に従って、BPF121~128と増幅回路141~143とを接続する。
【0025】
具体的には、スイッチ131は、共通端子が増幅回路141に接続され、各選択端子がBPF121~124に接続されている。スイッチ132は、共通端子が増幅回路142に接続され、各選択端子がBPF125,126に接続されている。スイッチ133は、共通端子が増幅回路143に接続され、各選択端子がBPF127,128に接続されている。
【0026】
図1における高周波フロントエンド回路20の例においては、フィルタFLT1が通過させる信号の周波数帯域にBPF121~124のそれぞれの通過帯域が包含されている。また、フィルタFLT2が通過させる信号の周波数帯域にはBPF125,126の通過帯域が包含されており、フィルタFLT3が通過させる信号の周波数帯域にはBPF127,128の通過帯域が包含されている。なお、各フィルタが通過させる信号の周波数帯域に、複数の通過帯域が包含されない場合には、スイッチ111~113,131~133およびBPF121~128が設けられない場合もある。
【0027】
RFIC30は、アンテナ装置ANTで送受信された高周波信号を処理するRF信号処理回路である。具体的には、RFIC30は、アンテナ装置ANTから高周波フロントエンド回路20の受信側信号経路を介して入力された高周波信号を、ダウンコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された受信信号をベースバンド信号処理回路(図示せず)へ出力する。
【0028】
なお、
図1においては、高周波フロントエンド回路20の
受信側信号経路のみが示されているが、高周波フロントエンド回路20は送信側信号経路を有していてもよい。この場合、RFIC30から出力された高周波信号は、高周波フロントエンド回路20の送信側信号経路を経由してアンテナ装置ANTに伝達され、アンテナ装置ANTから放射される。RFIC30は、ベースバンド信号処理回路から入力された送信信号をアップコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された高周波信号を高周波フロントエンド回路20の送信側信号経路に出力する。送信側信号経路においては、増幅回路141~143は、RFIC30から出力された高周波送信信号を電力増幅するパワーアンプとされる。
【0029】
(マルチプレクサの構成)
図2は、
図1のマルチプレクサ100の詳細な回路構成を示す図である。
図1で説明したように、フィルタFLT1はアンテナ端子TAと端子T1との間に接続されている。フィルタFLT2はアンテナ端子TAと端子T2との間に接続されており、フィルタFLT3はアンテナ端子TAと端子T3との間に接続されている。
【0030】
フィルタFLT1は、直列腕回路を形成するキャパシタC11,C12と、並列腕回路を形成するキャパシタC13,C14、インダクタL11およびスイッチSW11とを含む。キャパシタC11,C12は、アンテナ端子TAと端子T1との間に直列接続されている。インダクタL11の一方端は、キャパシタC11とキャパシタC12との間の接続ノードに接続される。キャパシタC13は、インダクタL11の他方端と接地電位との間に接続される。また、インダクタL11の他方端には、キャパシタC14の一方端がさらに接続されており、キャパシタC14の他方端は、スイッチSW11を介して接地電位に接続される。
【0031】
スイッチSW11は、図示されない制御部からの制御信号に従って導通と非導通とが切換えられる。スイッチSW11を切換えることにより、並列腕回路のインピーダンスを切換えて、並列腕回路で形成される減衰極の周波数を調整することができる。すなわち、フィルタFLT1はチューナブルフィルタである。なお、キャパシタC13,C14およびスイッチSW11によって、インピーダンス可変回路150が形成される。
【0032】
フィルタFLT2は、直列腕回路を形成するインダクタL21,L22と、並列腕回路を形成するインダクタL23,L24、キャパシタC21~C23およびスイッチSW21とを含む。インダクタL21,L22は、アンテナ端子TAと端子T2との間に直列接続されている。インダクタL23の一方端は、インダクタL21とインダクタL22との間の接続ノードに接続される。キャパシタC21は、インダクタL23の他方端と接地電位との間に接続される。また、インダクタL23の他方端には、キャパシタC22の一方端がさらに接続されており、キャパシタC22の他方端は、スイッチSW21を介して接地電位に接続される。インダクタL24の一方端は端子T2に接続されており、キャパシタC23はインダクタL24の他方端と接地電位との間に接続されている。
【0033】
フィルタFLT2についても、スイッチSW21を切換えることにより、並列腕回路のインピーダンスを切換えて、並列腕回路で形成される減衰極の周波数を調整することができる。すなわち、フィルタFLT2もチューナブルフィルタである。なお、キャパシタC21,C22およびスイッチSW21によって、インピーダンス可変回路160が形成される。
【0034】
フィルタFLT2においては、インダクタL23を含む並列腕回路で形成される減衰極と、インダクタL24を含む並列腕回路で形成される減衰極との間の周波数帯域がバンドパスフィルタの通過帯域となる。本実施の形態の例においては、インダクタL23を含む並列腕回路が高周波数側の減衰極を形成し、インダクタL24を含む並列腕回路が低周波数側の減衰極を形成する。
【0035】
フィルタFLT3は、直列腕回路を形成するインダクタL31,L32およびキャパシタC31,C32と、並列腕回路を形成するキャパシタC33,C34とを含む。インダクタL31,L32は、アンテナ端子TAと端子T3との間に直列接続されている。また、キャパシタC31はインダクタL31に並列に接続され、キャパシタC32はインダクタL32に並列に接続されている。すなわち、インダクタL31とキャパシタC31とで形成される並列回路と、インダクタL32とキャパシタC32とで形成される並列回路とが、アンテナ端子TAと端子T3との間に直列に接続されている。
【0036】
キャパシタC33は、インダクタL31およびインダクタL32の間の接続ノードと、接地電位との間に接続される。キャパシタC34は、端子T3と接地電位との間に接続される。
【0037】
上記のような、互いに異なる周波数帯域の信号を通過させる複数のフィルタを備えたマルチプレクサにおいては、通信品質を向上させるために、フィルタ間における信号の漏洩を抑制することが必要とされ、それを実現するためには、各フィルタ間のアイソレーション特性を向上させることが必要となる。一方で、各フィルタにおいては、設定された周波数帯域における通過損失をできるだけ低減すること(広域化)が望ましい。そのため、特に、通過させる信号の2つの周波数帯域が近接している場合には、2つの周波数帯域の境界付近の端部の減衰急峻性を高めることが重要となる。
【0038】
図2で説明したように、マルチプレクサに用いられる各フィルタにおいては、減衰極を形成するために一般的にインダクタが用いられる。通過させる信号の周波数帯域が近接する2つのフィルタ間において、減衰極を形成するインダクタ同士が磁界結合すると、当該磁界結合による信号の漏洩によって十分な減衰量が得られなくなり、当該フィルタ間のアイソレーション特性が悪化する可能性がある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、マルチプレクサにおいて通過させる信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタについて、2つの周波数帯域の近接する側の減衰極を形成するインダクタの間、より詳細には当該2つのインダクタを外縁の一部とする領域内に、当該2つのフィルタ以外の他のフィルタの部品が含まれるような配置を採用する。このような配置とすることによって、減衰極を形成するインダクタ間の磁界結合を他のフィルタの部品によって弱めることができるので、通過させる信号の周波数帯域が隣接するフィルタ間のアイソレーション特性を向上することができる。
【0040】
図3は、
図2に示されるマルチプレクサ100が形成される基板105に実装される素子の概略配置図である。本実施の形態におけるマルチプレクサ100においては、多層構造を有する基板105内に、各フィルタに含まれるキャパシタC11~C14,C21~C23,C31~C34を構成する導体電極、および、各素子を接続する配線パターンが形成されている。また、各フィルタに含まれるインダクタL11,L21~L24,L31,L32、およびスイッチ回路SWICについては、チップ部品として基板105上に実装される。なお、スイッチ回路SWICは、フィルタFLT1に含まれるスイッチSW11およびフィルタFLT2に含まれるスイッチSW21が集積回路として同じ素子内に形成されたものである。
【0041】
図3を参照して、
図3の例においては、チップ部品の数が多いミドルバンドのフィルタFLT2に関する素子が略L字状の破線領域MB内に配置され、ハイバンドのフィルタFLT1に関する素子、および、ローバンドのフィルタFLT3に関する素子が、矩形状の破線領域HBおよび破線領域LB内に配置される。なお、スイッチ回路SWICについては、上述のように、フィルタFLT1およびフィルタFLT2のスイッチSW11,SW21を含んでいるため、破線領域HB,MBの双方にまたがるように配置されている。
【0042】
そして、フィルタFLT1およびフィルタFLT2において、近接する減衰極を形成するインダクタL11とインダクタL23との間、言い換えればインダクタL11およびインダクタL23を外縁の一部とする領域AR1(
図3内のハッチング部分)の内部に、フィルタFLT3に含まれる部品(ここでは、インダクタL32)の少なくとも一部が配置される。
【0043】
このような配置とすることで、インダクタL11で生じる磁界およびインダクタL23で生じる磁界の少なくとも一部が、フィルタFLT3のインダクタL32によって遮られ、結果としてインダクタL11とインダクタL23との直接的な磁界結合が弱められる。したがって、インダクタL11およびインダクタL23の磁界結合に起因して生じる、減衰極における減衰量の低下を抑制することができ、フィルタFLT1とフィルタFLT2との間のアイソレーション特性の悪化を抑制することができる。
【0044】
なお、各フィルタにおいて、通過させる信号の周波数帯域(通過帯域)の高域側および低域側の端部において複数の減衰極を用いて所望の減衰特性を実現している場合には、設定された通過帯域に最も近い減衰極を形成するインダクタの磁界結合を抑制することが望ましい。すなわち、高周波数帯域側のフィルタFLT1においては、フィルタFLT1の通過帯域の低域側に形成される減衰極のうちで、フィルタFLT1の通過帯域に最も近い減衰極のインダクタが対象となる。また、低周波数帯域側のフィルタFLT2においては、通過帯域の高域側に形成される減衰極のうちで、フィルタFLT2の通過帯域に最も近い減衰極のインダクタが対象となる。
【0045】
図3の例において、たとえばフィルタFLT2のインダクタL23とインダクタL24の配置を入換えた構成を考えた場合、インダクタL11とインダクタL23との間の距離が遠くなり、また、インダクタL11とインダクタL23との間(すなわち、インダクタL11およびインダクタL23を外縁の一部とする領域内)に含まれるインダクタL32の部分がより大きくなるため、インダクタL11とインダクタL23との間の磁界結合をさらに弱めることが可能である。一方で、本実施の形態においては、インダクタL23とスイッチSW21とを接続することが必要となるため、インダクタL23とスイッチ回路SWICとの間の距離を遠ざけると、インダクタL23とスイッチSW21とを接続する配線パターンが長くなり、かえって配線ロスが大きくなることが懸念される。
【0046】
そのため、スイッチ回路SWICを共有するインダクタL11およびインダクタL23は、スイッチ回路SWICに近接して配置することが望ましく、そうした場合には、インダクタL11とインダクタL23とが磁界結合しやすくなる。したがって、
図3のようにインダクタL23をスイッチ回路SWICに近接して配置するとともに、フィルタFLT3に含まれるインダクタL32の少なくとも一部が領域AR1の内部となるように配置することで、配線ロスを増加させることなく、インダクタL11とインダクタL23との磁界結合を弱めることができる。
【0047】
なお、インダクタL11とインダクタL23との磁界結合を弱めるために、
図3のスイッチ回路SWICのような、フィルタFLT3に含まれる部品以外の部品が領域AR1にさらに含まれるように配置してもよい。
【0048】
図4は、実施の形態および比較例における、フィルタFLT1およびフィルタFLT2の近接する通過帯域の減衰特性を説明するための図である。
図4においては、横軸には周波数が示されており、縦軸には各フィルタの挿入損失が示されている。また、
図4において、実線LN1が本実施の形態についての減衰特性を示しており、破線LN2が比較例についての減衰特性を示している。
【0049】
なお、比較例のグラフ(破線LN2)は、
図3における領域AR1の範囲内に他の部品が配置されない構成(すなわち、インダクタL11とインダクタL23とが直接的に磁界結合する構成)についての減衰特性である。
【0050】
図4に示されるように、ハイバンド側のフィルタFLT1についての減衰極(周波数f1)およびミドルバンド側の
フィルタFLT2についての減衰極(周波数f2)のいずれにおいても、比較例(破線LN2)の方が本実施の形態(実線LN1)よりも挿入損失が低下しており、すなわち減衰量が低下していることがわかる。また、比較例においては、減衰極における挿入損失の低下に伴い、減衰極付近での曲線の急峻性が悪化している。言い換えると、本実施の形態のような素子配置としてインダクタL11とインダクタL23との磁界結合を弱めることによって、減衰極における挿入損失が増加するとともに減衰急峻性が向上している。したがって、本実施の形態においては、通過させる信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタ間のアイソレーション特性が改善されている。
【0051】
図5および
図6は、
図3で示した素子の配置において、ローバンド側のフィルタFLT3のインダクタL32の具体的な配置の例を説明するための図である。なお、
図5および
図6においては、インダクタL11,L23,L32については、コイルの巻回方向が認識できるように、ケースが取り除かれた状態が示されている。
【0052】
まず
図5を参照して、本実施の形態のマルチプレクサ100の例においては、基板105上において、フィルタFLT1のインダクタL11およびフィルタFLT2のインダクタL23は、図中のX軸方向が巻回軸となるように配置されている。一方で、フィルタFLT3のインダクタL32については、図中のY軸方向が巻回軸となるように配置されている。
【0053】
また、
図6のマルチプレクサ100Aにおいては、インダクタL11およびインダクタL23については、
図5と同様にX軸方向が巻回軸となるように配置されているが、インダクタL32については、図中のZ軸方向が巻回軸となるように配置されている。
【0054】
インダクタL32の巻回軸が、インダクタL11およびインダクタL23の巻回軸と平行である場合には、インダクタL32がインダクタL11およびインダクタL23と磁界結合する。そうすると、インダクタL11がインダクタL32を介してインダクタL23と磁界結合してしまうため、結果的に、アイソレーション特性の悪化につながる可能性がある。
【0055】
一方で、
図5および
図6のように、インダクタL32の巻回軸の方向を、インダクタL11およびインダクタL23の巻回軸と直交する方向とすることで、インダクタL32と、インダクタL11およびインダクタL23とが磁界結合しなくなるため、インダクタL32を介したインダクタL11とインダクタL23との磁界結合が抑制できる。
【0056】
なお、
図5および
図6においては、インダクタL32の巻回軸が、インダクタL11およびインダクタL23の巻回軸と直交する方向となるようにインダクタL32が配置される例を示したが、インダクタL32は、必ずしも巻回軸の方向が、インダクタL11およびインダクタL23の巻回軸の方向と完全に直交した状態に配置されていなくてもよい。上述のように、巻回軸の方向が直交している場合には、インダクタL32とインダクタL11およびインダクタL23との間の磁界結合の抑制効果が最も大きくなるので、より好ましい構成であるが、インダクタL32の巻回軸の方向が少なくともインダクタL11およびインダクタL23の巻回軸の方向と非平行であれば、巻回軸の方向が互いに平行である場合に比べて磁界結合を弱める効果が奏される。
【0057】
図5および
図6では、インダクタL11およびインダクタ
L23の巻回軸の方向がいずれも図のX軸方向で平行である場合について示されているが、インダクタL11の巻回軸とインダクタ
L23の巻回軸とが非平行となるように配置することによって、インダクタL11とインダクタ
L23との磁界結合をさらに弱めることができる。
【0058】
また、
図5および
図6においては、各フィルタに含まれるインダクタが基板表面に実装されるチップ部品である場合を例として説明したが、インダクタの一部または全部が基板内の配線パターンで形成されてもよい。この場合においても、基板を平面視した場合の各要素の位置関係を上述した構成とすることで同様の効果を奏することができる。
【0059】
なお、上記の説明においては、3つのフィルタの通過帯域において、ハイバンド側フィルタの通過帯域とミドルバンド側フィルタの通過帯域とが近接する場合を例として説明した。この場合には、ハイバンド側フィルタFLT1が本開示の「第1フィルタ」に対応し、ミドルバンド側フィルタFLT2が本開示の「第2フィルタ」に対応し、ローバンド側フィルタFLT3が本開示の「第3フィルタ」に対応する。
【0060】
一方で、ミドルバンド側フィルタの通過帯域とローバンド側フィルタの通過帯域とが近接する場合にも類似の構成とすることで、ミドルバンド側フィルタとローバンド側フィルタのアイソレーション特性を改善することが可能である。すなわち、この場合には、基板を平面視した場合に、ミドルバンド側フィルタの低域側の減衰極を形成するインダクタおよびローバンド側フィルタの高域側の減衰極を形成するインダクタの間(すなわち、2つのインダクタを外縁の一部とする領域内)に、ハイバンド側フィルタの部品の少なくとも一部が含まれるような配置とする。これにより、ミドルバンド側フィルタのインダクタとローバンド側フィルタのインダクタとの磁界結合が弱められ、ミドルバンド側フィルタとローバンド側フィルタのアイソレーション特性を向上させることができる。なお、この場合には、ミドルバンド側フィルタが本開示の「第1フィルタ」に対応し、ローバンド側フィルタが本開示の「第2フィルタ」に対応し、ハイバンド側フィルタが本開示の「第3フィルタ」に対応する。
【0061】
(変形例1)
上述した実施の形態においては、各フィルタはインダクタとキャパシタとで構成されるLCフィルタである場合を例として説明したが、このうちキャパシタの少なくとも1つについては、表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子あるいはバルク波(BAW:Bulk Acoustic Wave)共振子のような弾性波デバイスとして形成してもよい。このような弾性波デバイスは、容量成分を有するため、キャパシタに代えて使用することができる。
【0062】
図7は、変形例1に従うマルチプレクサ100Bの回路構成を示す図である。
図7に示したマルチプレクサ100Bにおいては、
図2で説明したマルチプレクサ100のフィルタFLT1~FLT3が、それぞれフィルタFLT1B~FLT3Bに置き換わった構成となっている。
【0063】
より具体的には、フィルタFLT1Bについては、
図2のフィルタFLT1におけるキャパシタC11~C14が、弾性波共振子P11~P14に置き換わった構成となっている。同様に、フィルタFLT2Bについては、フィルタFLT2におけるキャパシタC21~C23が弾性波共振子P21~P23に置き換わり、フィルタFLT3Bについては、フィルタFLT3におけるキャパシタC31~C34が弾性波共振子P31~P34に置き換わったものとなっている。
【0064】
このような構成のマルチプレクサ100Bについても、通過させる信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタにおいて減衰極を形成するインダクタの間(すなわち、2つのインダクタを外縁の一部とする領域)に、他のフィルタの部品の少なくとも一部を配置することによって、当該インダクタ同士の磁界結合を弱めることができ、それによって2つのフィルタ間のアイソレーション特性を向上させることができる。
【0065】
(変形例2)
実施の形態および変形例1においては、マルチプレクサが3つのフィルタで構成される、いわゆるトリプレクサの場合について説明したが、本開示における技術思想は、フィルタが4つ以上のマルチプレクサの場合についても適用可能である。フィルタが4つ以上の場合でも、通過する信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタについて、周波数帯域の近接する側の減衰極を形成するインダクタの間(すなわち、2つのインダクタを外縁の一部とする領域)に、それ以外のフィルタの部品の少なくとも一部を配置することによって、当該2つのフィルタ間のアイソレーション特性を向上させることができる。
【0066】
図8は、4つのフィルタを有するマルチプレクサ100Cの概略図である。マルチプレクサ100Cにおいては、アンテナ端子TAと端子T1との間に接続されたハイパスフィルタであるフィルタFLT1と、アンテナ端子TAと端子T2-1との間に接続されたバンドパスフィルタであるフィルタFLT2-1と、アンテナ端子TAと端子T2-2との間に接続されたバンドパスフィルタであるフィルタFLT2-2と、アンテナ端子TAと端子T3との間に接続されたローパスフィルタであるフィルタFLT3とを備える。なお、実施の形
態でも述べたように、フィルタFLT1のハイパスフィルタおよびフィルタFLT3のローパスフィルタは、バンドパスフィルタであってもよい。
【0067】
4つのフィルタが通過させる信号の周波数帯域は、1427MHz以上2690MHz未満、3300MHz以上4200MHz未満、4400MHz以上5000MHz未満、5150MHz以上6000MHz未満、および、5925MHz以上7125MHz未満の5つの周波数帯域のうちの4つの周波数帯域に対応する。たとえば、各フィルタが通過させる信号の周波数帯域は、フィルタFLT1においては5150MHz以上6000MHz未満であり、フィルタFLT2-1においては4400MHz以上5000MHz未満であり、フィルタFLT2-2においては3300MHz以上4200MHz未満であり、フィルタFLT3においては1427MHz以上2690MHz未満である。
【0068】
これらの4つのフィルタのうちのいずれか3つについて、マルチプレクサ100Cが形成される基板を平面視した場合に、通過させる信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタについて、周波数帯域の近接する側の減衰極を形成するインダクタの間(すなわち、2つのインダクタを外縁の一部とする領域)に、それ以外のフィルタの部品の少なくとも一部を配置することで、これら2つのフィルタについてのアイソレーション特性を向上させることができる。
【0069】
また、
図9は、5つのフィルタを有するマルチプレクサ100Dの概略図である。マルチプレクサ100Dにおいては、
図8で示したマルチプレクサ100Cの構成に加えて、さらにフィルタFLT2-3を含んでいる。
【0070】
フィルタFLT2-3は、アンテナ端子TAと端子T2-3との間に接続されたバンドパスフィルタであり、フィルタFLT2-2の通過帯域とフィルタFLT3の通過帯域との間の周波数帯域を通過帯域とする。
【0071】
マルチプレクサ100Dにおける各フィルタが通過させる信号の周波数帯域は、699MHz以上960MHz未満、1427MHz以上2200MHz未満、2300MHz以上2690MHz未満、3300MHz以上5000MHz未満、5150MHz以上6000MHz未満、および、5925MHz以上7125MHz未満の6つの周波数帯域のうちの5つの周波数帯域に対応する。たとえば、各フィルタが通過させる信号の周波数帯域は、フィルタFLT1においては5150MHz以上6000MHz未満であり、フィルタFLT2-1においては3300MHz以上5000MHz未満であり、フィルタFLT2-2においては2300MHz以上2690MHz未満であり、フィルタFLT2-3においては1427MHz以上2200MHz未満であり、フィルタFLT3においては699MHz以上960MHz未満である。
【0072】
マルチプレクサ100Dが形成される基板を平面視した場合に、これらの5つのフィルタのうち、通過させる信号の周波数帯域が隣接する2つのフィルタについて、周波数帯域の近接する側の減衰極を形成するインダクタの間(すなわち、2つのインダクタを外縁の一部とする領域)に、それ以外のフィルタの部品の少なくとも一部を配置することで、当該隣接する2つのフィルタについてのアイソレーション特性を向上させることができる。
【0073】
なお、
図8および
図9において、各フィルタの具体的な構成は任意の態様を採用することができる。
【0074】
また、本開示の特徴については、7つ以上の周波数帯域の信号に分波するマルチプレクサについても適用することができる。
【0075】
(変形例3)
上述した
図5および
図6で示したマルチプレクサにおいては、チップ部品で形成されるインダクタおよびスイッチ回路が、基板の一方の面に配置される構成について説明したが、これらの部品は、基板の両面に分けて配置される構成であってもよい。
【0076】
たとえば、ハイバンドのフィルタFLT1およびローバンドのフィルタFLT3に関する素子が基板105の表面(第1面)に配置され、ミドルバンドのフィルタFLT2に関する素子が基板105の裏面(第2面)に配置される場合であっても、基板105を平面視した場合に、近接する減衰極を形成するインダクタL11とインダクタL23との間に、フィルタFLT3に含まれる部品(たとえば、インダクタL32)の少なくとも一部が配置されていれば、フィルタFLT1とフィルタFLT2との間のアイソレーション特性の悪化を抑制することができる。
【0077】
また、フィルタFLT1,FLT2に関するインダクタが基板105の両面に配置される構成においては、フィルタFLT3に含まれる部品が基板105の内層に形成されていてもよい。この場合においても、
図10のマルチプレクサ100Eに示されるように、基板105の表面に配置されたフィルタFLT1のインダクタL11と、基板105の裏面に配置されたフィルタFLT2に含まれるインダクタL23との間(
図10の領域AR2)に、フィルタFLT3に含まれる部品(たとえば、インダクタL32A)を配置することによって、フィルタFLT1とフィルタFLT2との間のアイソレーション特性の悪化を抑制することができる。
【0078】
なお、
図11に示される
マルチプレクサ100Fのように、フィルタFLT1のインダクタL11の直下にフィルタFLT2のインダクタL23が配置される構成、すなわち基板105の法線方向から平面視した場合にインダクタL11とインダクタL23とが重なる構成においても、インダクタL11とインダクタL23との間にフィルタFLT3に含まれる部品(たとえば、インダクタL32B)を配置することによって、フィルタFLT1とフィルタFLT2との間のアイソレーション特性の悪化を抑制することができる。
【0079】
なお、
図10および
図11において、インダクタL32A,L32Bは、たとえば、複数の層にわたって形成された、基板105の積層方向を巻回軸とするヘリカルコイルとして形成される。あるいは、配線パターンとビアとによって形成されたミアンダコイルであってもよいし、基板105の積層方向に直交する方向を巻回軸とするヘリカルコイルであってもよい。
【0080】
また、
図10および
図11の例において、フィルタFLT1のインダクタL11およびフィルタFLT2のインダクタL23が、基板105の両面ではなく、基板105の内層の異なる層に形成される場合において、インダクタL11とインダクタL23との間にフィルタFLT3に含まれる部品を配置する構成であってもよい。
【0081】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
10 通信装置、20 高周波フロントエンド回路、30 RFIC、100,100A~100F マルチプレクサ、105 基板、111~113,131~133,SW11,SW21 スイッチ、121~128 バンドパスフィルタ、141~143 増幅回路、150,160 インピーダンス可変回路、ANT アンテナ装置、C11~C14,C21~C23,C31~C34 キャパシタ、FLT1,FLT1B,FLT2,FLT2-1~2-3,FLT2B,FLT3,FLT3B フィルタ、L11,L21~L24,L31,L32,L32A,L32B インダクタ、P11~P14,P21~P23,P31~P34 弾性波共振子、SWIC スイッチ回路、T1~T3,T2-1~T2-3 端子、TA アンテナ端子。