(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】欠陥検査装置および欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20220705BHJP
G01N 29/06 20060101ALI20220705BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/06
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2020560721
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2018046946
(87)【国際公開番号】W WO2020129209
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】畠堀 貴秀
(72)【発明者】
【氏名】田窪 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康紀
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-222281(JP,A)
【文献】特開2017-219318(JP,A)
【文献】特開2015-38441(JP,A)
【文献】特開平11-2611(JP,A)
【文献】特開平7-333170(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221706(WO,A1)
【文献】特開2018-169204(JP,A)
【文献】米国特許第6081481(US,A)
【文献】米国特許第5146289(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107860716(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物体に弾性波を励起する励振部と、
前記励振部により弾性波が励起された状態の前記被検査物体の測定領域にレーザ光を照射する照射部と、
前記測定領域の互いに異なる位置において反射された前記レーザ光を干渉させるとともに、干渉光を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて、前記測定領域における前記被検査物体の振動状態を表す画像を取得し、前記振動状態を表す画像から前記測定領域における振動状態の不連続部を欠陥として検出し、検出した欠陥の形状および欠陥部の振動状態のうち少なくとも1つに基づいて、欠陥の種類を特定する制御部と、を備え
、
前記振動状態を表す画像は、振動の変位の経時変化が表示される動画像である、欠陥検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記振動状態を表す画像から振動状態が不連続になっている領域を前記欠陥の形状として抽出し、前記欠陥の形状が線状の場合には、前記欠陥の種類を亀裂と特定し、前記欠陥の形状が面状の場合には、前記欠陥の種類を剥離と特定する、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、抽出された前記欠陥の形状の面積と周囲の長さとに基づいて、前記欠陥の種類を特定する、請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、抽出された前記欠陥の形状の面積と周囲の長さとの比に基づいて、前記欠陥の種類を特定する、請求項3に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記制御部により特定された前記欠陥の種類を示す欠陥種類表示を表示する表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記欠陥の形状を示す画像および前記振動状態を表す画像のうち少なくとも一方の画像と前記欠陥種類表示とを併せて表示する、請求項1~4
のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
被検査物体に弾性波を励起し、
弾性波が励起された状態の前記被検査物体の測定領域にレーザ光を照射し、
前記測定領域の互いに異なる位置において反射された前記レーザ光を干渉させるとともに、干渉光を測定し、
測定結果に基づいて、前記測定領域における前記被検査物体の振動状態を表す画像
として、振動の変位の経時変化が表示される動画像を取得し、前記
振動の変位の経時変化が表示される動画像から前記測定領域における振動状態の不連続部を欠陥として検出し、検出した欠陥の形状および欠陥部の振動状態のうち少なくとも1つに基づいて、欠陥の種類を特定する、欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、欠陥検査装置および欠陥検査方法が知られている。欠陥検査装置および欠陥検査方法は、たとえば、特開2017-219318号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2017-219318号公報には、被検査物体に弾性波を励起する励振部と、被検査物体の表面の測定領域にストロボ照明の照射を行う照明部と、変位測定部と、を備える欠陥検査装置が開示されている。変位測定部は、弾性波の位相とストロボ照明のタイミングとを制御することにより、弾性波の互いに異なる少なくとも3つの位相において測定領域各点の前後方向の変位を一括測定するように構成されている。この特開2017-219318号公報の欠陥検査装置は、測定領域各点の振動状態(振幅および位相)に基づいて、振動の変位の相違を画像の明暗の相違で表した画像を作成し、この画像に対して、目視または画像処理を行うことにより、振動状態の不連続部を欠陥として検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2017-219318号公報記載の欠陥検査装置では、測定領域各点の振動状態(振幅および位相)に基づいて、振動の変位の相違を画像の明暗の相違で表した画像を作成し、この画像に対して、目視または画像処理を行うことにより、振動状態の不連続部を欠陥として検出している。しかしながら、欠陥の種類については、検査者が目視により判断する必要がある。このため、振動状態の空間分布画像(被検査物体の振動状態を表す画像)に関する知識を十分に持たない非熟練の検査者が欠陥の種類を判断することが困難であるといった不都合がある。このため、検出された欠陥の種類を容易に判断することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、検出された欠陥の種類を容易に判断することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第一の局面における欠陥検査装置は、被検査物体に弾性波を励起する励振部と、励振部により弾性波が励起された状態の被検査物体の測定領域にレーザ光を照射する照射部と、測定領域の互いに異なる位置において反射されたレーザ光を干渉させるとともに、干渉光を測定する測定部と、測定部の測定結果に基づいて、測定領域における被検査物体の振動状態を表す画像を取得し、振動状態を表す画像から測定領域における振動状態の不連続部を欠陥として検出し、検出した欠陥の形状および欠陥部の振動状態のうち少なくとも1つに基づいて、欠陥の種類を特定する制御部と、を備え、振動状態を表す画像は、振動の変位の経時変化が表示される動画像である。
【0008】
この発明の第一の局面による欠陥検査装置では、検出した欠陥の形状および欠陥部の振動状態のうち少なくとも1つに基づいて、欠陥の種類を特定する制御部を設ける。これにより、欠陥の種類の特定を制御部が自動的に行うので、振動状態を表す画像から検査者が欠陥の種類を特定する作業が不要になる。その結果、振動状態の空間分布画像に関する知識を十分に持たない非熟練の検査者でも振動状態を表す画像から、検出された欠陥の種類を容易に判断することができる。また、振動状態を表す画像は、振動の変位の経時変化が表示される動画像である。これにより、特定した欠陥の種類と振動の変位との対応が視覚的に容易になるので、非熟練の検査者でも欠陥の種類によって、どのように振動の変位が発生するかを認識することができるようになる。
【0009】
この発明の第二の局面における欠陥検査方法は、被検査物体に弾性波を励起し、弾性波が励起された状態の被検査物体の測定領域にレーザ光を照射し、測定領域の互いに異なる位置において反射されたレーザ光を干渉させるとともに、干渉光を測定し、測定部の測定結果に基づいて、測定領域における被検査物体の振動状態を表す画像として、振動の変位の経時変化が表示される動画像を取得し、振動の変位の経時変化が表示される動画像から測定領域における振動状態の不連続部を欠陥として検出し、検出した欠陥の形状および欠陥部の振動状態のうち少なくとも1つに基づいて、欠陥の種類を特定する。
【0010】
この発明の第二の局面による欠陥検査方法では、検出した欠陥の形状および欠陥部の振動状態のうち少なくとも1つに基づいて、欠陥の種類を特定する。これにより、欠陥の種類の特定を制御部が自動的に行うので、振動状態を表す画像から検査者が欠陥の種類を特定する作業が不要になる。その結果、背景知識を持たない非熟練の検査者でも振動状態を表す画像から、欠陥の有無や種類を容易に判断することが可能な欠陥検査方法を提供することができる。また、振動状態を表す画像として、振動の変位の経時変化が表示される動画像を取得することによって、特定した欠陥の種類と振動の変位との対応が視覚的に容易になる。その結果、非熟練の検査者でも欠陥の種類によって、どのように振動の変位が発生するかを認識することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記のように、検出された欠陥の種類を容易に判断することが可能な欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の全体構成を示した模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の制御部によって得られる振動状態を表す画像の一例を示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の制御部によって抽出した欠陥の形状の一例を示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態による表示部に表示される欠陥の形状を示す画像と欠陥種類表示とが組み合わされた画像の一例を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による欠陥検査装置の制御部による欠陥種類特定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態の変形例による表示部に表示される欠陥の形状を示す画像と欠陥種類表示とが組み合わされた画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(欠陥検査装置の構成)
まず、
図1を参照して、第一実施形態による欠陥検査装置100の構成について説明する。
【0015】
本実施形態による欠陥検査装置100は、振動子1、レーザ照明2、スペックル・シェアリング干渉計3、制御部4、信号発生器5、表示部6、を備えている。なお、振動子1は、特許請求の範囲の「励起部」の一例であり、レーザ照明2は、特許請求の範囲の「照射部」の一例である。また、スペックル・シェアリング干渉計3は、特許請求の範囲の「測定部」の一例である。
【0016】
振動子1およびレーザ照明2は、信号発生器5にケーブルを介して接続されている。
【0017】
振動子1は、信号発生器5から交流電気信号を受信して、被検査物体7に弾性波を励起する。振動子1は、被検査物体7に接触するように配置され、信号発生器5からの交流電気信号を機械的振動に変換し、被検査物体7に弾性波を励起する。
【0018】
レーザ照明2は、信号発生器5から電気信号を受信して、レーザ光を照射する。レーザ照明2は、図示しないレーザ光源と照明光レンズを含んでいる。照明光レンズは、レーザ光源から照射されたレーザ光を被検査物体7の表面の測定領域全体に拡げて照射する。
【0019】
スペックル・シェアリング干渉計3はビームスプリッタ31、位相シフタ32、第1反射鏡331、第2反射鏡332、集光レンズ34およびイメージセンサ35を含む。
【0020】
ビームスプリッタ31はハーフミラーであり、被検査物体7の表面で反射されたレーザ光が入射される位置に配置される。
【0021】
第1反射鏡331は、ビームスプリッタ31で反射されるレーザ光の光路上において、ビームスプリッタ31の反射面に対して、45度の角度となるように配置されている。
【0022】
第2反射鏡332は、ビームスプリッタ31を透過するレーザ光の光路上において、ビームスプリッタ31の反射面に対して、45度の角度からわずかに傾斜した角度になるように配置されている。
【0023】
位相シフタ32は、ビームスプリッタ31と第1反射鏡331との間に配置され、制御部4の制御により、透過するレーザ光の位相を変化(シフト)させるものである。
【0024】
イメージセンサ35は検出素子を多数有し、ビームスプリッタ31で反射された後に第1反射鏡331で反射されてビームスプリッタ31を透過するレーザ光(
図1中の直線)、およびビームスプリッタ31を透過した後に第2反射鏡332で反射されてビームスプリッタ31で反射されるレーザ光(
図1中の破線)の光路上に配置される。
【0025】
集光レンズ34は、ビームスプリッタ31とイメージセンサ35の間に配置され、ビームスプリッタ31を透過したレーザ光(
図1中の直線)とビームスプリッタ31で反射されたレーザ光(
図1中の破線)とを集光させる。
【0026】
被検査物体7の表面上のA点741および第1反射鏡331で反射されるレーザ光(
図1中の直線)と、被検査物体7の表面上のB点742および第2反射鏡332で反射されるレーザ光は(
図1中の破線)は、互いに干渉し、イメージセンサ35の同一箇所に入射する。
【0027】
制御部4は、スペックル・シェアリング干渉計3内に配置された位相シフタ32を図示しないアクチュエータで稼働させ、透過するレーザ光の位相を変化させる。これにより、A点741で反射されたレーザ光とB点742で反射されたレーザ光の位相差が変化する。これら2つのレーザ光が干渉した干渉光の強度をイメージセンサ35の各検出素子は検出する。
【0028】
制御部4は、信号発生器5を介して、振動子1の振動とレーザ照明2のレーザ光の照射のタイミングとを制御し、位相シフト量を変化させながら、画像を撮影する。位相シフト量はλ/4ずつ変化させ、各位相シフト量(0、λ/4、λ/2、3λ/4)において、レーザ照射のタイミングj(j=0~7)分の32枚の画像と各位相シフト量(0、λ/4、λ/2、3λ/4)前後の5枚の消灯時の画像との合計37枚の画像を撮影する。なお、λは、レーザ光の波長である。
【0029】
制御部4は、各検出素子からの検出信号を下記の手順で処理し、振動の状態を表す像(振動状態の空間分布画像)61を取得する。
【0030】
レーザ照射のタイミングj(j=0~7)が同じで位相シフト量がλ/4ずつ異なる画像(4枚ずつ)の輝度値Ij0~Ij3から、式(1)により、光位相(位相シフト量ゼロの時の、2光路間の位相差)Φjを求める。
Φj=-arctan{(Ij3-Ij1)/(Ij2-Ij0)}・・・(1)
光位相Φjに対して、最小二乗法により正弦波近似を行い、式(2)における近似係数A、θ、Cを求める。
Φj=Acos(θ+jπ/4)+C=Bexp(jπ/4)+C・・・(2)
ただし、Bは、複素振幅であり、式(3)のように、表される。
B=Aexp(iθ):複素振幅・・・(3)
ここで、複素振幅Bは、振動状態を表す画像61を出力するための基となる画像情報(複素振幅の二次元空間情報)である。式(2)から定数項Cを除いた近似式より、振動の各位相時刻ξ(0≦ξ<2π)における光位相変化を表示する動画像(30~60フレーム)を構成し、振動状態を表す画像61として出力する。なお、上記過程において、ノイズ除去のため複素振幅Bについて適宜空間フィルタが適用されてもよい。また、位相シフト量やレーザ照射タイミングのステップ(上記例ではそれぞれλ/4およびT/8、ただしTは振動の周期)はこれに限らない。この場合、計算式は上記式(1)~式(3)とは異なる式になる。
【0031】
制御部4は、空間フィルタを適用し、上記の振動状態を表す画像61から、振動状態の不連続領域を被検査物体7の欠陥73として、検出する。この時、被検査物体7自体の形状が凹凸などを含む場合、平面部と凹凸部の境界でも、振動状態の不連続が発生する場合があり、それらを欠陥として検出しないように被検査物体7の形状情報を考えあわせて、欠陥73を検出するようにしてもよい。また、画像61を出力するための基となる画像情報を用いて欠陥73を検出してもよい。
【0032】
制御部4は、振動状態を表す画像61から検出した、欠陥73の空間分布の形状を、欠陥の形状62として、抽出する。その後、その形状から欠陥の種類を特定する。
【0033】
具体的には、抽出された欠陥の形状62の面積と周囲の長さとの比で表されるパラメータや指標を、あらかじめ算出しておき、そのパラメータや指標に基づいて、欠陥の形状62が線状の場合は、欠陥の種類を亀裂と特定し、欠陥の形状62が面状の場合は、欠陥の種類を剥離と特定する。
【0034】
また、欠陥部の振動の状態を欠陥の種類の特定に用いてもよい。たとえば、剥離では、振幅が増大し、剥離の領域が広い場合には、波長の短縮といった効果が発生する場合がある。そのような、欠陥部の振動の状態から、欠陥の種類を特定してもよいし、欠陥の形状62と欠陥部の振動の状態との両方に基づいて、欠陥の種類を特定してもよい。
【0035】
制御部4は、特定した欠陥の種類に対応する欠陥種類表示63と欠陥の形状62とを組み合わせた画像を作成し、表示部6に表示する。
【0036】
表示部6は、制御部4で作成された被検査物体7の振動状態を表す画像61、欠陥の形状を示す画像621および欠陥種類表示63を表示する。
【0037】
被検査物体7は、鋼板71に表面に塗膜72が塗装された塗装鋼板である。被検査物体7には、欠陥73(亀裂731および剥離732)が発生している。
【0038】
(振動状態を表す画像および表示部の表示画像)
次に
図2~4を参照して、各画像と表示部6の表示について、説明する。
【0039】
制御部4より得られる振動状態を表す画像61の一例を
図2に示す。この振動状態を表す画像61の振動状態が不連続な部分を制御部4は、欠陥73として、検出する。
【0040】
制御部4により抽出された欠陥の形状62を
図3に示す。欠陥の形状62は、制御部4が検出した欠陥73の空間分布を抽出したものである。この欠陥の形状62の面積(62の破線内部の面積)と面長(62の破線の長さ)に基づいて、結果の種類は特定される。
【0041】
表示部6に表示される欠陥の形状62と欠陥種類表示63とが組み合わされた画像を
図4に示す。欠陥種類表示63は、上記で特定した欠陥の種類を表示するものであり、剥離、亀裂といった文字による表示で、欠陥の種類が表示される。また、欠陥の形状62は、上記の制御部4が抽出した欠陥73の空間分布である。
【0042】
(欠陥種類特定処理)
次に、
図5を参照して、第一実施形態の欠陥検査装置100による欠陥種類特定処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、欠陥種類特定処理は、制御部4により、行われる。
【0043】
図5に示すように、まず、ステップ101において、振動子1(励振部)から被検査物体7への振動付与が開始される。これにより、被検査物体7に弾性波が励起される。
【0044】
そして、ステップ102において、レーザ照明2からレーザ光が被検査物体7の測定領域に照射される。
【0045】
そして、ステップ103において、位相シフタ32のシフト量を変化させつつ、干渉データが取得される。これにより、レーザ光の位相がλ/4ずつ変化するように、スペックル・シェアリング干渉計3の位相シフタ32が稼働させられ、各位相でのレーザ光の干渉光の強度がイメージセンサ35で検出される。イメージセンサ35の各検出素子からの検出信号は、制御部4で、処理が行われる。全ての位相でのデータ取得が完了した後、ステップ104へと進む。
【0046】
ステップ104において、振動子1(励振部)から被検査物体7への振動付与が終了する。
【0047】
そして、ステップ105において、振動状態を表す画像(振動状態の空間分布画像)61が作成される。
【0048】
ステップ106において、ステップ105で作成された振動状態を表す画像61から、欠陥73が検出される。
【0049】
ステップ107において、検出された欠陥の形状62(欠陥の空間分布形状)が抽出される。
【0050】
ステップ108において、上記の方法で欠陥の種類が特定される。
【0051】
ステップ109において、ステップ110で特定された欠陥の種類に対応する欠陥種類表示63と欠陥の形状を示す画像621が併せて、表示部6に表示される。
【0052】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、測定部の測定結果に基づいて、測定領域における被検査物体7の振動状態を表す画像61を取得し、振動状態を表す画像61から測定領域における振動状態の不連続部を欠陥73として検出し、検出した欠陥の形状62および欠陥部の振動状態のうち少なくとも1つに基づいて、欠陥の種類を特定する制御部4を設ける。これにより、欠陥の種類の特定を制御部4が自動的に行うので、振動状態を表す画像61から検査者が欠陥の種類を特定する作業が不要になる。その結果、振動状態の空間分布画像に関する知識を十分に持たない非熟練の検査者でも振動状態を表す画像61から、検出された欠陥の種類を容易に判断することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4が、振動状態を表す画像61から振動状態が不連続になっている領域を欠陥の形状62として抽出し、欠陥の形状62が線状の場合には、欠陥の種類を亀裂と特定し、欠陥の形状62が面状の場合には、欠陥の種類を剥離と特定する制御を行うように構成されている。これにより、検査者が亀裂および剥離を区別する必要がなくなるので、亀裂および剥離を容易に区別し、欠陥を認識することができる。さらに、剥離であれば、被検査物体7の材質や性質から、錆や接着不良などの箇所を推測することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4は、抽出された欠陥の形状62の面積と周囲の長さとに基づいて、欠陥の種類を特定する制御を行う。これにより、抽出された欠陥の形状の面積および周囲の長さに基づいて、線状と面状との区別を容易に行うことができる。その結果、亀裂および剥離を容易に区別して特定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、制御部4は、抽出された欠陥の形状62の面積と周囲の長さとの比に基づいて、欠陥の種類を特定する。これにより、円形度(円形度=4π×面積/(周囲の長さ)2)などの面積と周囲の長さとから表されるパラメータや指標により、欠陥の形状62の複雑さなどを認識できるので、より詳細に欠陥の形状62を把握することが可能になる。その結果、欠陥の種類の特定がさらに容易になる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4により特定された欠陥の種類を示す欠陥種類表示63を表示する表示部6をさらに備え、表示部6は、欠陥の形状を示す画像621および振動状態を表す画像61のうち少なくとも一方の画像と欠陥種類表示63とを併せて表示する。これにより、欠陥の種類(欠陥種類表示63)が、欠陥の形状を示す画像621および振動状態を表す画像61の少なくとも一方に併せて表示されるので、検査者が欠陥の種類と欠陥の形状62および振動状態を表す画像61との関係を容易に把握することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、振動状態を表す画像61は、振動の変位の経時変化が表示される動画像である。これにより、欠陥種類表示63を表示した際に、特定した欠陥の種類と振動の変位との対応が視覚的に容易になる。その結果、非熟練の検査者でも欠陥の種類によって、どのように振動の変位が発生するかを認識することができるようになる。
【0059】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0060】
たとえば、上記実施形態では、信号発生器5と振動子1、および信号発生器5とレーザ照明2はケーブル(有線)を介して接続しているが、本発明はこれに限られない。本発明では、信号発生器5と振動子1、および信号発生器5とレーザ照明2は、無線で接続されていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、測定部にスペックル・シェアリング干渉計3を用いたが、本発明はこれに限られない。本発明では、他の光干渉計によって、測定部を構成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、被検査物体7の表面に接触させて使用する振動子1を用いたが、本発明はこれに限られない。本発明では、被検査物体7の表面に接触させない位置に置かれた強力なスピーカ等を振動子1として用いてもよい。
【0063】
また、本発明では、被検査物体7からの反射光がイメージセンサ35へ入射するまでの光路上に、光学部品の保護や装置のSN比の向上等を目的として、ウィンドウや、種々の光学フィルタを配置してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、集光レンズ34は、ビームスプリッタ31とイメージセンサ35の間に配置されているが、本発明は、この配置に限定されるものではない。本発明では、集光レンズ34は、複数のレンズまたは複数のレンズ群によって構成されるものでもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、欠陥の形状62の面積と周囲の長さとに基づいて、欠陥の種類を特定するようにしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、面積のみ、または周囲の長さのみに基づいて、欠陥の種類を特定してもよい。また、本発明では、面積または周囲の長さとほかの要素との組み合わせに基づいて、欠陥の種類を特定してもよい。また、上記実施形態では、特定する欠陥の種類として亀裂と剥離との例を示したが、本発明はこれに限定されない。欠陥の種類としては、たとえば、浮きや空洞、接合不良等でもよい。また、剥離を特定することによって、剥離を生じさせる原因となった下層の錆や腐食等の存在を推定することもできる。
【0066】
また、上記実施形態では、欠陥種類表示63が文字で表示されるようにしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図6に示す変形例のように、欠陥の形状を示す画像621の周囲の長さを表す線を欠陥の種類が剥離である場合には一点鎖線、欠陥の種類が亀裂である場合には破線といったように、欠陥の形状を示す画像621の周囲の長さを表す線を欠陥の種類ごとに変えることで欠陥の種類を示すようにしてもよい。また、本発明では、欠陥の種類にそれぞれ色を割り当て、その色を欠陥の形状62に示すことで、欠陥の種類を表示するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、欠陥の種類を示す欠陥種類表示63と欠陥の形状を示す画像621とを組み合わせて表示するようにしたが、本発明はこれに限られない。本発明では、欠陥種類表示63と振動状態を表す画像61とを組み合わせて表示するようにしてもよいし、欠陥種類表示63と欠陥の形状を示す画像621と振動状態を表す画像61とを組み合わせて表示してもよい。また、本発明では、これらを組み合わせて表示せずに、表示部6に複数の画面を並べて表示し、欠陥種類表示63と欠陥の形状を示す画像621と振動状態を表す画像61をそれぞれ別々の画面に表示しても構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、本発明の制御部4の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部4による処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 振動子(励振部)
2 レーザ照明(照射部)
3 スペックル・シェアリング干渉計(測定部)
4 制御部
6 表示部
7 被検査物体
61 振動状態を表す画像
62 欠陥の形状
63 欠陥種類表示
621 欠陥の形状を示す画像