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  • 特許-排ガス浄化触媒および排ガス処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒および排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20220705BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 210
B01D53/94 220
B01D53/94 280
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021508890
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008854
(87)【国際公開番号】W WO2020195600
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019055113
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昭広
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102133546(CN,A)
【文献】国際公開第2006/095557(WO,A1)
【文献】特開2007-326001(JP,A)
【文献】特開2008-100902(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104689817(CN,A)
【文献】特開2014-046271(JP,A)
【文献】特開2013-022558(JP,A)
【文献】特開2014-200715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式BaZrO 3 で表されるペロブスカイト型複合酸化物のうち、Zrの一部がYおよびPdで置換されたペロブスカイト型複合酸化物を含む排ガス浄化触媒であって、
前記排ガス浄化触媒に含まれるBaに対するYのモル比は、0.05以上0.50以下であることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
PdOが含まれていないことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記排ガス浄化触媒に含まれるBaに対するYのモル比は、0.05以上0.30以下であることを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記排ガス浄化触媒に含まれるBaに対するPdのモル比は、0.01以上0.22以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記排ガス浄化触媒に含まれるBaに対するPdのモル比は、0.04以上0.22以下であることを特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
前記排ガス浄化触媒に含まれるBaに対するZrのモル比は、0.50以上2.00以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の排ガス浄化触媒。
【請求項7】
前記排ガス浄化触媒に含まれるBaに対するZrのモル比は、0.50以上1.00以下であることを特徴とする請求項6に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項8】
前記排ガス浄化触媒を1100℃で加熱する前後において、排ガスの分解率が90%以上となる最低温度の差が100℃未満であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の排ガス浄化触媒。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の排ガス浄化触媒を備えることを特徴とする排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関などから排出される排ガスには、炭化水素系ガスなど、人体に有害な成分が含まれている。そのような有害な成分を低減するための排ガス浄化触媒が知られている。
【0003】
排ガス浄化触媒としては、アルミナなどのセラミックスに、白金、パラジウム、マンガン、コバルトなどの活性成分を担持させた触媒が一般的に知られている。白金やパラジウムなどの貴金属は高価であるが、マンガンやコバルト系の触媒に比べて、低温から排ガスの処理が可能である。
【0004】
アルミナなどの担体に活性成分を担持させる触媒において、高い触媒活性を得るために、活性成分を微粒子にして担体に担持させる手法が知られている。しかしながら、活性成分が微粒子になるほど、表面エネルギーが増大し、シンタリング(焼結)が生じやすくなる。特に、排ガス浄化触媒は、排ガスが高温であることや、反応熱によって触媒が高温にさらされることなどにより、シンタリングが進行して、触媒活性が低下する懸念がある。
【0005】
高温での熱劣化を抑制するための触媒として、特許文献1には、Pt、PdおよびRhから選ばれる少なくとも1種の貴金属を含む触媒層が耐熱性無機質モノリス担体に担持された排ガス浄化触媒が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の排ガス浄化触媒は、担体の耐熱性を向上させているが、担持される貴金属は複数の原子からなる粒子として存在しているため、貴金属自体のシンタリングを抑制することは難しい。
【0007】
これに対して、特許文献2には、貴金属触媒粒子を担体にそのまま担持させる構成ではなく、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶格子中に取り込んで、高温加熱時の触媒活性の劣化を抑制するようにした触媒が記載されている。この触媒は、貴金属触媒粒子と、バリウム、ランタン、ストロンチウム、ネオジムおよびセリウムよりなる群から選択される少なくとも1種の第1金属、および、コバルト、ニッケル、鉄、クロムおよびモリブデンからなる群より選択される少なくとも1種の第2金属とにより、ペロブスカイト型複合酸化物を形成している。
【0008】
しかしながら、特許文献2には、上述した触媒を後段に配置するとともに、担体に貴金属触媒粒子を担持させた着火用触媒を前段に配置した構成しか記載されていない。すなわち、上述した触媒は、高温加熱時の劣化低減に特化したものであり、低温から高温までの広い温度範囲で排ガス浄化処理を行うためには、前段に着火用触媒を設ける必要がある。
【0009】
特許文献3には、上述した着火用触媒を必要とせず、また、高温加熱時でも浄化性能が劣化しにくいとされている排ガス浄化触媒が記載されている。この排ガス浄化触媒は、希土類金属またはアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種からなるPd系複合酸化物と遷移金属の少なくとも1種からなる複合酸化物が固溶または混合された状態で共存している。この排ガス浄化触媒によれば、950℃の排ガス浄化処理を行った場合でも、活性劣化が少ないと特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平6-47279号公報
【文献】特開平2-166305号公報
【文献】特開平10-277393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、排ガス浄化触媒は、1100℃のようなより高温の環境下に置かれる場合もある。したがって、1100℃のような高温にさらされた場合でも、触媒活性が低下しにくい排ガス浄化触媒が求められる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、1100℃のような高温にさらされた場合でも、触媒活性の低下を抑制することができる排ガス浄化触媒および排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の排ガス浄化触媒は、一般式BaZrO 3 で表されるペロブスカイト型複合酸化物のうち、Zrの一部がYおよびPdで置換されたペロブスカイト型複合酸化物を含む排ガス浄化触媒であって、前記排ガス浄化触媒に含まれるBaに対するYのモル比は、0.05以上0.50以下であることを特徴とする。
【0015】
前記Baに対する前記Yのモル比は、0.05以上0.30以下であってもよい。
【0016】
前記Baに対する前記Pdのモル比は、0.01以上0.22以下であってもよい。
【0017】
前記Baに対する前記Pdのモル比は、0.04以上0.22以下であってもよい。
【0018】
前記Baに対する前記Zrのモル比は、0.50以上2.00以下であってもよい。
【0019】
前記Baに対する前記Zrのモル比は、0.50以上1.00以下であってもよい。
【0020】
前記排ガス浄化触媒を1100℃で加熱する前後において、排ガスの分解率が90%以上となる最低温度の差が100℃未満であってもよい。
【0021】
本発明の排ガス処理装置は、上述した排ガス浄化触媒を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の排ガス浄化触媒によれば、1100℃のような高温にさらされた場合でも、触媒活性の低下を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の排ガス処理装置によれば、上述した排ガス浄化触媒を備えているので、排ガス浄化触媒が1100℃のような高温にさらされた場合でも、排ガス浄化性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の排ガス浄化触媒を備えた排ガス処理装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0026】
本発明の排ガス浄化触媒は、下記の要件(以下、本発明の要件と呼ぶ)を満たす。すなわち、本発明の排ガス浄化触媒は、少なくともBa、Zr、Y、および、Pdにより構成されたペロブスカイト型複合酸化物を含む。
【0027】
自動車の内燃機関などから排出される排ガスには、炭化水素系ガス、硫黄化合物、窒素化合物などが含まれる。本発明の排ガス浄化触媒は、主に炭化水素系ガスの浄化に用いることができる。炭化水素系ガスとは、CとHとOの組合せからなる化合物を含むガスであり、例えば、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸などを含むガスである。
【0028】
本発明の排ガス浄化触媒を用いて炭化水素系ガスを浄化させる反応を、大気中への排出制限のあるエタノールの燃焼反応を例に挙げて説明する。エタノールの燃焼反応は、次式(1)で示される。
25OH+3O2 → 3H2O+2CO2 (1)
【0029】
式(1)に示すように、エタノールと空気(酸素)とを反応させると、無害な水蒸気と二酸化炭素が得られる。
【0030】
図1は、本発明の排ガス浄化触媒を備えた排ガス処理装置100の概略構成を示す図である。排ガス処理装置100は、被処理ガスが流通する管1と、管1の内部を流通する被処理ガスを加熱する加熱部2と、管1の内部の、被処理ガスと接触する位置に配置された排ガス浄化触媒3とを備える。排ガス浄化触媒3は、本発明の排ガス浄化触媒である。
【0031】
管1の上流側には、被処理ガスを管1内に供給するガス供給管4が接続されている。また、管1の下流側には、浄化後のガスを排出するためのガス排出管5が接続されている。
【0032】
排ガス浄化触媒の形状に特に制約はない。例えば、触媒材料を数mmから数cmのサイズの粒状に加工したペレット状触媒としてもよいし、ハニカム形状に加工したハニカム触媒や、ハニカム状のセラミックスの表面に触媒をコーティングしたハニカムコート触媒としてもよい。
【0033】
(実施例1)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.80:0.20:0.01となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例1の排ガス浄化触媒を得た。
【0034】
なお、上述した実施例1、および、後述する実施例2~11の排ガス浄化触媒は、上述した本発明の要件を満たす触媒である。
【0035】
(実施例2)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.80:0.20:0.02となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例2の排ガス浄化触媒を得た。
【0036】
(実施例3)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.80:0.20:0.04となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例3の排ガス浄化触媒を得た。
【0037】
(実施例4)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.80:0.20:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例4の排ガス浄化触媒を得た。
【0038】
(実施例5)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.80:0.20:0.22となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例5の排ガス浄化触媒を得た。
【0039】
(実施例6)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.95:0.05:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例6の排ガス浄化触媒を得た。
【0040】
(実施例7)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.90:0.10:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例7の排ガス浄化触媒を得た。
【0041】
(実施例8)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.70:0.30:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例8の排ガス浄化触媒を得た。
【0042】
(実施例9)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:0.50:0.50:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例9の排ガス浄化触媒を得た。
【0043】
(実施例10)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:1.50:0.20:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例10の排ガス浄化触媒を得た。
【0044】
(実施例11)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、Y23、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Y:Pd=1.00:2.00:0.20:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、実施例11の排ガス浄化触媒を得た。
【0045】
実施例1~11の排ガス浄化触媒と比較するために、以下で説明する比較例1~5の排ガス浄化触媒を作製した。比較例1~5の排ガス浄化触媒は、Yが含まれておらず、本発明の要件を満たしていない触媒である。
【0046】
(比較例1)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Pd=1.00:1.00:0.01となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、比較例1の排ガス浄化触媒を得た。
【0047】
(比較例2)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Pd=1.00:1.00:0.02となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、比較例2の排ガス浄化触媒を得た。
【0048】
(比較例3)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Pd=1.00:1.00:0.09となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、比較例3の排ガス浄化触媒を得た。
【0049】
(比較例4)
排ガス浄化触媒の材料として、BaCO3、ZrO2、および、PdOを用意し、モル比でBa:Zr:Pd=1.00:1.00:0.22となるように秤量し、玉石と水とバインダーを加えて湿式混合し、混合物を得た。得られた混合物をオーブン内で120℃の温度で乾燥させた後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とした。その後、粒状試料を空気中で1000℃、1時間の条件で焼成することにより、比較例4の排ガス浄化触媒を得た。
【0050】
(比較例5)
γ-Al23粉末を担体として、塩化Pd水溶液を用いてPdの量が3重量%となるように含浸を行った後、空気中にて600℃、1時間の条件で熱処理を行った。熱処理によって得られた粉末をプレス成型によりペレット状に成形した後、粉砕、分級することによって、1.5mm以上2.5mm以下の大きさの粒状とし、比較例5の排ガス浄化触媒を得た。
【0051】
<結晶相の確認>
上述した実施例1~11および比較例1~5の排ガス浄化触媒をそれぞれ乳鉢で粉砕し、粉末XRD測定によって、結晶相を確認した。粉末XRD測定では、X線としてCu-Kα1を用いた。
【0052】
表1に、実施例1~11および比較例1~5の排ガス浄化触媒について確認された結晶相および組成を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1~11の全ての排ガス浄化触媒から、ペロブスカイト構造の結晶相が確認され、組成比に応じて、BaCO3、Y23、ZrO2などの異相も確認された。
【0055】
また、実施例1~11の排ガス浄化触媒は全て、Pdを含んでいるが、酸化パラジウムや金属パラジウムに起因する回折線は確認されなかった。すなわち、Pdは、Ba、Zr、および、Yとともに、ペロブスカイト型複合酸化物を構成している。より具体的には、一般式Axyzで表されるペロブスカイト型複合酸化物であって、AはBaであり、Bは、Zr、YおよびPdであり、Oは酸素である。
【0056】
一方、比較例1~5の排ガス浄化触媒では、結晶相としてPdOが検出された。すなわち、比較例1~5の排ガス浄化触媒では、Pdは、ペロブスカイト型複合酸化物やアルミナとは反応せずに存在している。
【0057】
実施例1~11および比較例1~5の結果から、材料として、Ba、Zr、および、Pdを用いただけでは、Pdを構成元素として含むペロブスカイト型複合酸化物を作製することはできず、さらにYが必要であることが分かる。
【0058】
なお、BET1点法により、実施例1~11の排ガス浄化触媒の比表面積を確認したところ、比表面積は、6m2/g以上14m2/g以下の範囲内であった。
【0059】
<触媒活性評価>
実施例1~11および比較例1~5の排ガス浄化触媒をそれぞれ粉砕、分級して0.5mm~0.7mmの大きさにした後、以下の方法により、エタノールの燃焼反応を行った。
【0060】
図1に示す排ガス処理装置100の管1内に、上述した方法により作製した排ガス浄化触媒0.3ccを充填し、加熱部2により所定の温度に加熱した。そして、ガス供給管4から、0.5体積%のエタノールを含む空気を500cc/分の流量で導入した。このときのGHSV(Gas Hourly Space Velocity)は、100000/h相当とした。
【0061】
管1内にエタノールが導入されると、燃焼反応により、水蒸気と二酸化炭素が生成される。ガス排出管5から排出される燃焼反応後のガスを採取し、ガス分析装置(ガスクロマトグラフ)によりエタノール濃度を測定した。そして、燃焼反応前のエタノール濃度と、燃焼反応後のエタノール濃度に基づいて、エタノール分解率を求めた。ここでは、加熱部2によって排ガス浄化触媒を加熱する温度を200℃から100℃間隔で上昇させて、各温度でのエタノール分解率を求め、エタノール分解率が90%以上となったときの温度を求めた。この温度は、エタノール分解率が90%以上となる最低温度である。加熱温度の上限は600℃とした。
【0062】
<触媒耐熱性評価>
耐熱性を確認するために、実施例1~11および比較例1~5の排ガス浄化触媒のそれぞれを空気中で1100℃まで加熱して10時間維持した。その後、冷却した排ガス浄化触媒を用いて、上記触媒活性評価で行った方法と同じ方法で、エタノール分解率を求めた。ここでも、加熱部2によって排ガス浄化触媒を加熱する温度を200℃から100℃間隔で上昇させて、各温度でのエタノール分解率を求め、エタノール分解率が90%以上となったときの温度(最低温度)を求めた。
【0063】
表2に、実施例1~11および比較例1~5の排ガス浄化触媒のそれぞれを用いた場合の触媒活性評価および触媒耐熱性評価の結果を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2において、エタノール分解率が90%以上となる最低温度が「200℃以下」と記載されているのは、200℃の時点でエタノール分解率が90%以上となっているため、実際にエタノール分解率が90%以上となる最低温度が200℃以下であることを意味する。
【0066】
表2に示すように、排ガス浄化触媒を1100℃で加熱する前の触媒活性評価では、実施例1~11の全てで、エタノール分解率が90%以上になる最低温度が300℃以下となったが、比較例1~5では、400℃以下となった。
【0067】
ここで、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例4と比較例3、実施例5と比較例4の排ガス浄化触媒はそれぞれ、Pdの含有割合が同じである。Pdの含有割合が同じであるこれらの排ガス浄化触媒を用いた結果をそれぞれ比較すると、比較例の排ガス浄化触媒より、実施例の排ガス浄化触媒の方がより低温で、エタノール分解率が90%以上となる。これは、実施例の排ガス浄化触媒では、Pdがペロブスカイト型複合酸化物の構成元素となっていることから、Pdの分散度が高く、触媒活性点の数が多いため、Pdがペロブスカイト型複合酸化物の構成元素となっていない比較例の排ガス浄化触媒と比べて、低温から高いエタノール分解率が得られるものと考えられる。
【0068】
なお、比較例5の排ガス浄化触媒では、担体であるアルミナ自体が微粒子であり、実施例と同等の触媒活性を示す結果となっている。
【0069】
また、表2に示すように、排ガス浄化触媒を1100℃で加熱する触媒耐熱性評価では、実施例1~11の排ガス浄化触媒の全てにおいて、1100℃で加熱する前と比べて、エタノール分解率が90%以上となる最低温度は変わらなかった。加熱温度は100℃間隔で変更しているため、正確には、1100℃で加熱する前後において、エタノール分解率が90%以上となる最低温度の差は100℃未満である。
【0070】
すなわち、本発明の排ガス浄化触媒は、耐熱性が高く、1100℃の高温で加熱した場合でも、触媒活性の低下を抑制することができる。したがって、本発明の排ガス浄化触媒は、少なくとも200℃~1100℃の温度領域で触媒活性の低下を抑制して、排ガスの浄化処理を効果的に行うことができる。
【0071】
上述したように、実施例1~11の排ガス浄化触媒では、Pdがペロブスカイト型複合酸化物の構成元素となっていることから、Pdの分散度が高く、触媒活性点の数が多い。また、Pdがペロブスカイト型複合酸化物の構成元素となっていることから、Pdのシンタリング(焼結)が発生しにくい。このため、実施例1~11の排ガス浄化触媒は、1100℃で加熱する前後において、触媒活性が低下しにくいものと考えられる。
【0072】
一方、比較例1~5の排ガス浄化触媒では、1100℃で加熱した場合に、1100℃で加熱する前と比べて、エタノール分解率が90%以上となる最低温度が上昇した。これは、比較例1~5の排ガス浄化触媒では、Pdがペロブスカイト型複合酸化物の構成元素となっていないため、1100℃で加熱すると、Pdがシンタリングして表面に露出しているPd原子数が減少し、触媒活性点の数が減少するからである。特に、比較例5の排ガス浄化触媒は、1100℃での加熱の前後で、エタノール分解率が90%以上となる最低温度が200℃以下から500℃へと、300℃以上上昇した。
【0073】
すなわち、本発明の要件を満たしていない排ガス浄化触媒は、1100℃の高温で加熱することにより熱劣化が生じて、触媒活性が低下した。
【0074】
なお、Pdがペロブスカイト型複合酸化物の構成元素となっている場合でも、ペロブスカイト型複合酸化物自体の耐熱性が低い場合には、ペロブスカイト型複合酸化物自体がシンタリングすることで、触媒活性が低下する。本発明の排ガス浄化触媒は、少なくともBa、Zr、Y、および、Pdによってペロブスカイト型複合酸化物が構成されていることにより、ペロブスカイト型複合酸化物自体の耐熱性が高くなり、1100℃の高温で加熱した場合でも触媒活性の低下を抑制することができる。
【0075】
ここで、表1に示すように、Baに対するYのモル比は、0.05以上0.50以下である。表1の実施例6~9の結晶相および組成から分かるように、Yの含有量を増やしてZrの含有量を減らしていった場合に、Baに対するYのモル比が0.3以上になると、ペロブスカイト型複合酸化物に取り込まれなくなるYが存在し、また、活性成分が減少する。このため、Baに対するYのモル比は、0.05以上0.30以下であることが好ましい。
【0076】
また、表1に示すように、Baに対するPdのモル比は、0.01以上0.22以下である。表2に示すように、Baに対するPdのモル比が0.04未満である実施例1および実施例2の排ガス浄化触媒を用いた場合、触媒耐熱性評価において、エタノール分解率が90%以上となる最低温度が300℃となった。一方、Baに対するPdのモル比が0.04以上である実施例3~11の排ガス浄化触媒を用いた場合には、エタノール分解率が90℃以上となる最低温度が200℃以下となった。したがって、Baに対するPdのモル比は、0.04以上0.22以下であることが好ましい。
【0077】
また、表1に示すように、Baに対するZrのモル比は、0.50以上2.00以下である。表1の実施例10および11の結晶相および組成から分かるように、Baに対するZrのモル比が1.00より大きくなると、ペロブスカイト型複合酸化物に取り込まれなくなるZrが存在し、活性成分が低下する。このため、Baに対するZrのモル比は、0.50以上1.00以下であることが好ましい。
【0078】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0079】
例えば、上述した説明では、本発明の排ガス浄化触媒を用いて炭化水素系ガスを浄化させる反応として、エタノールの燃焼反応を例に挙げたが、炭化水素系ガスがエタノールに限定されることはない。また、被処理ガスが炭化水素系ガスに限定されることもない。ただし、上述したように、本発明の排ガス浄化触媒を用いて炭化水素系ガスの浄化を効果的に行うことができるため、被処理ガスは、炭化水素系ガスを含むことが好ましい。
【0080】
上述した実施例1~11の排ガス浄化触媒は、Ba、Zr、Y、および、Pdにより構成されたペロブスカイト型複合酸化物を含む。ただし、ペロブスカイト型複合酸化物の構成元素がBa、Zr、Y、および、Pdに限定されることはなく、1100℃のような高温にさらされた場合でも、触媒活性の低下を抑制することができる効果が得られるのであれば、さらに他の元素が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 管
2 加熱部
3 排ガス浄化触媒
4 ガス供給管
5 ガス排出管
100 排ガス処理装置
図1