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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】走行車システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/12 20060101AFI20220705BHJP
   B61B 13/04 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B61B13/12 F
B61B13/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021511204
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2020006371
(87)【国際公開番号】W WO2020202856
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2019071206
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英俊
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-50793(JP,A)
【文献】特開2007-314173(JP,A)
【文献】特開2018-118809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/12
B61B 13/04
B61B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車の走行部を収容すると共に前記走行車の走行経路に沿って延在する本体部と、前記本体部の延在方向に沿って設けられており、前記走行部に電力を供給する給電部とを有する走行用軌道を、前記走行車が走行する走行車システムであって、
前記走行用軌道に連続するように設けられており、前記走行部の少なくとも一部を露出させる開放部を形成すると共に前記給電部が設けられていない作業用軌道と、
前記作業用軌道に沿って前記走行車を移動させる移動機構と、を備える、走行車システム。
【請求項2】
前記作業用軌道の両端には、前記走行用軌道が接続されており、
前記移動機構は、一方の前記走行用軌道から他方の前記走行用軌道との間で前記走行車を移動させる、請求項1記載の走行車システム。
【請求項3】
前記作業用軌道に位置する前記走行車に、前記開放部を介して、前記走行部の少なくとも一部に作業を実行する処理装置を更に備える、請求項1又は2記載の走行車システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記走行部の少なくとも一部に付着した付着物を吸引する吸引装置である、請求項3記載の走行車システム。
【請求項5】
前記移動機構は、
前記走行車を走行方向における前後から挟み込む一対のアーム部と、
前記一対のアーム部を、前記走行車を挟み込む位置と前記走行車から退避する位置との間で移動させる回動駆動部と、
前記一対のアーム部を、前記走行用軌道の延在方向に沿って移動させる移動駆動部と、を備える、請求項1~4の何れか一項記載の走行車システム。
【請求項6】
前記移動機構は、
ベースプレートと、
前記ベースプレートに、前記走行方向に移動可能に設けられた移動プレートと、を有し、
前記一対のアーム部は、第一アーム部と第二アーム部とを有し、
前記第一アーム部は、前記移動プレートに対して前記走行用軌道の延在方向に移動可能に設けられており、
前記第二アーム部は、前記移動プレートに対して前記走行用軌道の延在方向に移動不能に設けられている、請求項5記載の走行車システム。
【請求項7】
前記走行部は、無給電時に、ブレーキがかかる走行輪と、自由に回転する走行補助輪と、を有しており、
前記作業用軌道は、走行部を下方から支持する下方支持部を有しており、
前記下方支持部は、鉛直方向において、前記走行補助輪に対向する第一部分が、前記走行輪に対向する第二部分よりも上方に位置するように形成されている、請求項1~6の何れか一項記載の走行車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道に沿って走行可能な本体部と、物品を把持する把持部を有し、複数の吊持部材が巻き取り及び繰り出しされることにより前記本体部に対して昇降する昇降部と、を備えた天井走行車が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の走行車は、左右の一対の側壁と、当該一対の側壁の上端間を接続する基部と、を備える軌道であって、走行部が収容される空間が形成されるように断面視C字状に形成された軌道に沿って走行する。一対の側壁のそれぞれには、走行車に電力を供給する給電部が延在方向に沿って設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-50793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような走行車では、走行部をクリーニングする等のメンテナンスを定期的に行う必要がある。しかしながら、上記従来の軌道は、走行部が収容空間の内部を走行するように形成されているため、走行部を露出させない限りメンテナンスを行うことができない。そこで、側壁に開口部を設けることも考えられるが、側壁には給電部が配置されているため、走行部のメンテナンスを可能にするサイズの開口を確保することはできない。メンテナンスを可能にするサイズの開口を設けた場合には、給電部を設けることができないので走行車が走行できなくなる。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、メンテナンス作業が必要な走行部を露出させる作業エリアを形成すると共に、当該作業エリアにおいて走行車を移動させることができる走行車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る走行車システムは、走行車の走行部を収容すると共に走行車の走行経路に沿って延在する本体部と、本体部の延在方向に沿って設けられており、走行部に電力を供給する給電部とを有する走行用軌道を、走行車が走行する走行車システムであって、走行用軌道に連続するように設けられており、走行部の少なくとも一部を露出させる開放部を形成すると共に給電部が設けられていない作業用軌道と、作業用軌道に沿って走行車を移動させる移動機構と、を備える。
【0007】
この構成の走行車システムでは、作業用軌道に給電部を設けない代わりに、給電部が設けられていた部分を利用して走行部の少なくとも一部を露出させる開放部を形成している。これにより、走行用軌道では本体部に収容されて露出させることができなかった走行部を軌道から露出させることができるので、走行部のメンテナンスを容易に実施できる。また、この構成の走行車システムでは、給電部が設けられていない作業用軌道では走行車は自走することができないが、この作業用軌道において走行車を移動させるための移動機構が設けられている。このような結果、メンテナンス作業が必要な走行部を露出させる作業エリアを形成すると共に、当該作業エリアにおいて走行車を移動させることができる。
【0008】
本発明の一側面に係る走行車システムでは、作業用軌道の両端には、走行用軌道が接続されており、移動機構は、一方の走行用軌道から他方の走行用軌道との間で走行車を移動させてもよい。この構成の走行車システムでは、走行車をメンテナンスするための作業エリアを走行経路の一部に設けることが可能になる。
【0009】
本発明の一側面に係る走行車システムは、作業用軌道に位置する走行車に、開放部を介して、走行部の少なくとも一部に作業を実行する処理装置を更に備えてもよい。この構成の走行車システムでは、走行車に対するメンテナンス作業の一部を自動化することができる。
【0010】
本発明の一側面に係る走行車システムでは、処理装置は、走行部の少なくとも一部に付着した付着物を吸引する吸引装置であってもよい。この構成の走行車システムでは、他の部分に付着物を付着させることなく、付着物を回収することができる。
【0011】
本発明の一側面に係る走行車システムでは、移動機構は、走行車を走行方向における前後から挟み込む一対のアーム部と、一対のアーム部を、走行車を挟み込む位置と走行車から退避する位置との間で移動させる回動駆動部と、一対のアーム部を、走行用軌道の延在方向に沿って移動させる移動駆動部と、を備えてもよい。この構成の走行車システムでは、走行方向の前後から走行車を挟み込んだ状態で走行車を移動させることができるので、走行車を移動させるとき又は停止させるときに走行車が惰性で移動してしまうことを防止できる。
【0012】
本発明の一側面に係る走行車システムでは、移動機構は、ベースプレートと、ベースプレートに、走行方向に移動可能に設けられた移動プレートと、を有し、一対のアーム部は、第一アーム部と第二アーム部とを有し、第一アーム部は、移動プレートに対して走行用軌道の延在方向に移動可能に設けられており、第二アーム部は、移動プレートに対して走行用軌道の延在方向に移動不能に設けられていてもよい。この構成の走行車システムでは、走行車を移動させるときには第一アーム部及び第二アーム部が設けられた移動プレートを移動させればよいので、第一アーム部と第二アームとの間の距離を維持するために第一アーム部及び第二アームを同期制御する必要がない。このため、第一アーム部及び第二アーム部がそれぞれ独立して移動する構成と比べて、容易な制御で走行車を移動させることができる。
【0013】
本発明の一側面に係る走行車システムでは、走行部は、無給電時に、ブレーキがかかる走行輪と、自由に回転する走行補助輪と、を有しており、作業用軌道は、走行部を下方から支持する下方支持部を有しており、下方支持部は、鉛直方向において、走行補助輪に対向する第一部分が、走行輪に対向する第二部分よりも上方に位置するように形成されていてもよい。この構成の走行車における走行輪は、駆動部が駆動していない状態において容易に回転しないように構成されている。したがって、給電部が設けられていない作業用軌道に走行輪が接触している状態において走行車を移動させることが難しい。この構成の走行車システムでは、自由に回転する走行補助輪のみが作業用軌道に接触するので、走行車を容易に移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、メンテナンス作業が必要な走行部を露出させる作業エリアを形成すると共に、当該作業エリアにおいて走行車を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る走行車システムを示す概略平面図である。
図2図2は、図1の天井走行車を走行方向から見た正面概略図である。
図3図3は、一実施形態の作業用軌道を示した斜視図である。
図4図4は、図3の作業用軌道と走行車の走行部とを示した断面図である。
図5図5は、一実施形態の移動機構を示した平面図である。
図6図6は、図5の移動機構を示した側面図である。
図7図7は、一実施形態の作業エリアに配置される移動機構及び吸引装置を作業用軌道の延在方向から見た断面図である。
図8図8(a)~図8(d)は、図5の移動機構の動作を示す説明図である。
図9図9(a)~図9(d)は、図5の移動機構の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一側面の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2図4及び図7では、説明の便宜のため「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」方向を定義する。
【0017】
図1及び図2に示されるように、走行車システム1は、走行用軌道4に沿って移動可能な天井走行車6を用いて、物品10を載置部9,9間で搬送するためのシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納する容器、レチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等が含まれる。走行車システム1は、走行用軌道4、複数の走行車6、複数の載置部9、作業用軌道41、移動機構60、及び吸引装置(処理装置)80を備える。
【0018】
走行用軌道4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。走行用軌道4は、例えば天井から吊り下げられている。走行用軌道4は、走行車6を走行させるための予め定められた走行路である。走行用軌道4は、支柱40A,40Aにより支持される。走行車システム1の走行用軌道4は、所定のエリアを一方向に巡回する本線部4Aと、走行車6をメンテンナンスするための作業エリア160が設けられた作業用軌道41に走行車6を導入させる退避部4Bと、を有している。なお、退避部4Bにおいても、走行車6は、予め定められた一方向に移動する。
【0019】
走行用軌道4は、一対の下面部40Bと一対の側面部40C,40Cと天面部40Dとからなる筒状のレール本体部40と、給電部40Eと、磁気プレート40Fと、を有している。レール本体部40は、走行車6の走行部50を収容(内包)する。下面部40Bは、走行車6の走行方向に延在し、レール本体部40の下面を構成する。下面部40Bは、走行車6の走行ローラ51を転動させて走行させる板状部材である。側面部40Cは、走行車6の走行方向に延在し、レール本体部40の側面を構成する。天面部40Dは、走行車6の走行方向に延在し、レール本体部40の上面を構成する。
【0020】
給電部40Eは、走行車6の給電コア57に電力を供給すると共に、給電コア57と信号の送受信を行う部位である。給電部40Eは、一対の側面部40C,40Cのそれぞれに固定され、走行方向に沿って延在している。給電部40Eは、給電コア57に対して非接触の状態で電力を供給する。磁気プレート40Fは、走行車6のLDM(Linear DC Motor)59に走行又は停止のための磁力を発生させる。磁気プレート40Fは、天面部40Dに固定され、走行方向に沿って延在している。
【0021】
走行車6は、走行用軌道4を走行し、物品10を搬送する。走行車6が走行用軌道4を走行するとは、走行車6の走行ローラ51が走行用軌道4の下面部40Bを転動することをいう。走行車6は、物品10を移載可能に構成されている。走行車6は、天井走行式無人走行車である。走行車システム1が備える走行車6の台数は、特に限定されず、複数である。走行車6は、本体部7と、走行部50と、制御部35と、を有する。本体部7は、本体フレーム22と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、カバー33と、を有する。
【0022】
本体フレーム22は、走行部50と接続されており、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、カバー33とを支持する。横送り部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30を一括して、走行用軌道4の走行方向と直角な方向に横送りする。θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降台30の少なくとも何れかを水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、昇降台30をワイヤ、ロープ及びベルト等の吊持材の巻取りないし繰出しによって昇降させる。昇降台30には、チャックが設けられており、物品10の把持又は解放が自在とされている。カバー33は、例えば走行車6の走行方向の前後に一対設けられている。カバー33は、図示しない爪等を出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。
【0023】
走行部50は、走行車6を走行用軌道4に沿って走行させる。図4に示されるように、走行部50は、走行ローラ51、サイドローラ52、分岐ローラ53、補助ローラ54、傾斜ローラ55、給電コア57及びLDM59を有している。図2では、分岐ローラ53、補助ローラ54、及び傾斜ローラ55の図示は省略する。
【0024】
走行ローラ51は、走行輪としての外輪51A及び走行補助輪としての内輪51Bからなるローラ対である。走行ローラ51は、走行部50の前後の左右両端に配置されている。走行ローラ51は、走行用軌道4の一対の下面部40B,40B(又は後述する図4の下方支持部43)を転動する。サイドローラ52は、走行ローラ51の外輪51Aのそれぞれを前後方向に挟むように配置されている。サイドローラ52は、走行用軌道4の側面部40C(又は後述する図4の側方支持部45)に接触可能に設けられている。分岐ローラ53は、サイドローラ52のそれぞれを上下方向に挟むように配置されている。サイドローラ52は、走行用軌道4の接続部又は分岐部等に配置されているガイド(図示せず)に接触可能に設けられている。
【0025】
補助ローラ54は、走行部50の前後に設けられている、三つ一組のローラ群である。補助ローラ54は、走行部50が加減速等により走行中に前後に傾いたときに、LDM59及び給電コア57等が走行用軌道4の上面に配置された磁気プレート40Fに接触することを防止するために設けられている。傾斜ローラ55は、LDM59の四隅に設けられている。傾斜ローラ55は、前後方向から傾いた状態で配置されている。傾斜ローラ55は、走行部50がカーブ区間を走行する際の遠心力による傾きを防止するために設けられている。
【0026】
給電コア57は、走行部50の前後に、左右方向にLDM59を挟むように配置されている。走行用軌道4に配置された給電部40Eとの間で非接触による給電と、非接触による各種信号の送受信を行う。給電コア57は制御部35との間で信号をやりとりする。LDM59は、走行部50の前後に設けられている。LDM59は、電磁石によって走行用軌道4の上面に配置された磁気プレート40Fとの間で、走行又は停止のための磁力を発生させる。
【0027】
図1に示されるように、載置部9は、走行用軌道4に沿って配置され、走行車6との間で物品10の受け渡し可能な位置に設けられている。載置部9には、バッファ及び受渡ポートが含まれる。バッファは、物品10が一時的に載置される載置部である。バッファは、例えば、目的とする受渡ポートに他の物品10が載置されている等の理由により、走行車6が搬送している物品10をその受渡ポートに移載できない場合に、物品10が仮置きされる載置部である。受渡ポートは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置(図示せず)に対して物品10の受渡を行うための載置部である。なお、処理装置は、特に限定されず、種々の装置であってもよい。
【0028】
例えば、載置部9は、走行用軌道4の側方に配置されている。この場合、走行車6は、横送り部24で昇降駆動部28等を横送りし、昇降台30を僅かに昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。なお、図示はしないが載置部9は、走行用軌道4の直下に配置されてもよい。この場合、走行車6は、昇降台30を昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。
【0029】
制御部35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。制御部35は、走行車6における各種動作を制御する。具体的には、制御部35は、走行部50と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、を制御する。制御部35は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。制御部35は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。制御部35は、走行用軌道4の給電部40E(フィーダー線)等を利用して、コントローラ90と通信を行う。
【0030】
コントローラ90は、CPU、ROM及びRAM等からなる電子制御ユニットである。コントローラ90は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。コントローラ90は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。コントローラ90は、走行車6に物品10を搬送させる搬送指令を送信する。
【0031】
図1に示されるように、作業エリア160は、退避部4Bの一部に設けられ、走行車6に含まれる走行部50の走行ローラ51及び給電コア57等のメンテナンスを実施するエリアである。作業エリア160には、作業用軌道41(図3参照)と、移動機構60(図5及び図6参照)と、吸引装置(処理装置)80(図7参照)と、が設けられている。
【0032】
作業用軌道41は、その両端が走行用軌道4,4に連続するように一方向(以下、「延在方向X」と称する。)に延在し、図3及び図4に示されるように、走行部50の少なくとも一部(例えば、給電コア57)を露出させる開放部47を形成している。言い換えれば、作業用軌道41には、走行用軌道4に設けられているような給電部40E及び天面部40Dが設けられておらず、走行用軌道4の給電部40E及び天面部40Dに対応する部分が開放部47となっている。
【0033】
作業用軌道41は、作業用軌道41の両端に配置されるフレーム42と、一対の下方支持部43、43と、一対の側方支持部45と、を有している。
【0034】
フレーム42は、一対の側面部42A,42Aと、天面部42Bと、を有している。一対の側面部42A,42Aは、左右方向に対向して配置され、鉛直方向に延在する板状部材である。側面部42Aは、ブラケット(図示せず)及び支柱(図示せず)を介して天井に固定される。天面部42Bは、一対の側面部42A,42Aを、一対の側面部42A,42Aの上端にて接続する板状部材である。
【0035】
下方支持部43は、走行部50を下方から支持する。より詳細には、下方支持部43は、走行車6の走行ローラ51の内輪51Bを転動させて走行させる部材である。下方支持部43は、フレーム42の側面部42Aの下端に固定され、一対のフレーム42,42に延在方向Xに沿って掛け渡されている。下方支持部43は、鉛直方向において、内輪51Bに対向する第一部分43Bが、外輪51Aに対向する第二部分43Aよりも上方に位置するように形成されている。下方支持部43の第一部分43B(すなわち、内輪51Bの転動面)は、走行用軌道4に接続される部位において、走行用軌道4の下面部40B(図2参照)の上面と同一レベルの平面を構成するよう(面一)に接続される。
【0036】
側方支持部45は、走行車6のサイドローラ52が接触する部材である。側方支持部45は、フレーム42の側面部42Aに固定され、一対のフレーム42,42に掛け渡されている。
【0037】
図5図7に示されるように、移動機構60は、走行車6が作業用軌道41を走行するように、作業用軌道41に沿って走行車6を移動させる。走行車6が作業用軌道41を走行するとは、走行車6の走行ローラ51が作業用軌道41の下方支持部43を転動することをいう。作業用軌道41の両端には、走行用軌道4,4が接続されている。移動機構60は、一方の走行用軌道4から他方の走行用軌道4との間で走行車6を移動させる。移動機構60は、ベースプレート70と、移動プレート71と、第一アーム部61及び第二アーム部65からなる一対のアーム部と、第一回動駆動部(回動駆動部)62と、第二回動駆動部(回動駆動部)66と、第一移動駆動部(移動駆動部)64と、第二移動駆動部(移動駆動部)68と、を備える。
【0038】
ベースプレート70は、移動プレート71、第一アーム部61、第二アーム部65、第一回動駆動部62、第二回動駆動部66、第一移動駆動部64、及び第二移動駆動部68を支持する、板状の部材である。ベースプレート70は、吊下部材75によって天井から吊り下げられている。
【0039】
移動プレート71は、第一アーム部61、第二アーム部65、第一回動駆動部62、第二回動駆動部66、第一移動駆動部64、及び第二移動駆動部68を支持する、板状の部材である。移動プレート71は、ベースプレート70に対して走行車6の延在方向Xに移動可能に設けられている。より詳細には、移動プレート71は、LMガイド(Linear Motion Guide)68A及び駆動モータ68B等からなる第二移動駆動部68によって、ベースプレート70に対して走行車6の延在方向Xに移動可能に設けられている。
【0040】
第一アーム部61は、走行車6の延在方向Xにおける上流側に配置されている。すなわち、第一アーム部61は、走行車6を移動させるとき、走行車6の後端(カバー33)に接触する。なお、ここでいう上流側・下流側とは、予め設定された走行車6の一方向への移動方向を基準として定められる方向をいう。第一アーム部61は、第一回動駆動部62によって、走行車6を挟み込む位置(接触位置)と走行車6から退避する位置(退避位置)との間で移動する。第一アーム部61及び第一回動駆動部62は、第一移動駆動部64によって、移動プレート71に対して走行車6の延在方向Xに移動可能に設けられている。より詳細には、第一アーム部61及び第一回動駆動部62はLMガイド64A及び駆動モータ64B等からなる第一移動駆動部64によって、移動プレート71に対して走行車6の延在方向Xに移動可能に設けられている。
【0041】
第二アーム部65は、走行車6の延在方向Xにおける下流側に配置されている。すなわち、第二アーム部65は、走行車6を移動させるとき、走行車6の前端に接触する。第二アーム部65は、第二回動駆動部66によって、走行車6を挟み込む位置と走行車6から退避する位置との間で移動する。第二アーム部65及び第二回動駆動部66は、第一アーム部61及び第一回動駆動部62とは異なり、移動プレート71に対して延在方向Xに移動不能に設けられている。
【0042】
吸引装置80は、作業エリア160(作業用軌道41)に位置する走行車6に、開放部47を介して、走行部50の少なくとも一部に作業を実行する。より詳細には、吸引装置80は、走行部50の少なくとも一部(例えば、給電コア57)に付着した付着物を吸引する。吸引装置80は、天井から吊り下げられた支持プレート85に設けられている。吸引装置80は、六つ(六軸)の関節によって構成される垂直多関節型ロボット81であり、その先端には、付着物を吸引する吸引部82が設けられている。
【0043】
移動機構60が走行車6を移動させるときの動作について、主に図8及び図9を用いて説明する。
【0044】
作業エリア160に配置される作業用軌道41に走行車6が存在しないとき、図8(a)に示されるように、第一アーム部61が退避位置に位置し、第二アーム部65が接触位置に位置している。このような状態において、作業用軌道41に走行車6が進入してくると、図8(b)に示されるように、走行車6は、第二アーム部65に接触する位置で一旦停止する。走行車6が第二アーム部65に接触する位置で一旦停止すると、第一回動駆動部62は、第一アーム部61を接触位置に回動させ、第一移動駆動部64は、第一アーム部61及び第一回動駆動部62を前進(走行車6の走行方向における下流側に移動)させる。これにより、図8(c)に示されるように、走行車6は、第一アーム部61と第二アーム部65とによって挟み込まれた状態となる。
【0045】
次に、図8(d)に示されるように、第二移動駆動部68は、移動プレート71を前進させる。すなわち、第二移動駆動部68は、第一アーム部61と第二アーム部65との間の距離を維持したまま、第一アーム部61、第一回動駆動部62、第二アーム部65、及び第二回動駆動部66とを前進させる。走行車6は、第一アーム部61と第二アーム部65とによって挟み込まれた状態で前進させられ、図9(a)に示されるように、作業用軌道41に沿って一方の走行用軌道4から他方の走行用軌道4にまで移動させられる。
【0046】
次に、走行車6が他方の走行用軌道4まで移動させられると、図9(b)に示されるように、第二回動駆動部66は、第二アーム部65を退避位置に回動させる。その後、走行車6は、走行部50の給電コア57に供給される電力によって、自身の走行部50が有する駆動部によって前進を開始する。
【0047】
次に、図9(c)に示されるように、第二回動駆動部66は、第二アーム部65を接触位置に回動させる。そして、第二移動駆動部68は、移動プレート71を後退させる。すなわち、第二移動駆動部68は、第一アーム部61と第二アーム部65との間の距離を維持したまま、第一アーム部61、第一回動駆動部62、第二アーム部65、及び第二回動駆動部66を後退させる。その後、第一移動駆動部64は、第一アーム部61及び第一回動駆動部62を後退させる。図9(d)に示されるように、第一アーム部61及び第二アーム部65は、次に進入してくる走行車6を待つ位置にまで戻る。そして、図8(a)に示されるように、第一アーム部61が退避位置に位置し、第二アーム部65が接触位置に位置している状態で、次の走行車6の到着を待つ。
【0048】
次に、上記実施形態の走行車システム1の作用効果について説明する。上記実施形態の走行車システム1では、作業用軌道41に給電部を設けない代わりに、図3に示されるように、給電部が設けられていた部分を利用して走行車6の走行部50の少なくとも一部を露出させる開放部47を形成している。走行用軌道4ではレール本体部40に収容されて露出させることができなかった走行部50を作業用軌道41から露出させることができるので、走行部50のメンテナンスを容易に実施できる。また、上記実施形態の走行車システム1では、給電部が設けられていないため自走することができない走行車6を、作業用軌道41において移動させるための移動機構60が設けられている。したがって、メンテナンス作業が必要な走行部50を露出させる作業エリア160を形成すると共に、当該作業エリア160において走行車6を移動させることができる。
【0049】
上記実施形態の走行車システム1では、図5及び図6に示されるように、作業用軌道41に沿って一方の走行用軌道4から他方の走行用軌道4との間で走行車6を移動させる移動機構60を備える。したがって、走行車6をメンテナンスするための作業エリアを走行経路の一部に設けることが可能になる。
【0050】
上記実施形態の走行車システム1では、図7に示されるように、作業用軌道41に位置する走行車6に、開放部47を介して、走行部50の少なくとも一部に作業を実行する処理装置としての吸引装置80を備えている。このような構成により、走行車6に対するメンテナンス作業の一部を自動化することができ、付着物をまき散らして他の部分に付着物を付着させることなく、付着物を回収することができる。
【0051】
上記実施形態の走行車システム1の移動機構60は、図5及び図6に示されるように、走行車6を走行方向における前後から挟み込む一対のアーム部である第一アーム部61及び第二アーム部65を備えている。このような構成により、走行車6を移動させるとき又は停止させるときに走行車6が惰性で移動してしまうことを防止できる。
【0052】
上記実施形態の走行車システム1の移動機構60は、ベースプレート70に対して延在方向Xに移動可能に設けられた移動プレート71に、第一アーム部61と第二アーム部65とが設けられている。このような構成により、走行車6を移動させるときに互いの距離を維持するために第一アーム部61及び第二アーム部65を同期制御する必要がない。したがって、第一アーム部61及び第二アーム部65がそれぞれ独立して移動する構成と比べて、容易な制御で走行車6を移動させることができる。
【0053】
上記実施形態の走行車システム1の作業用軌道41では、図4に示されるように、下方支持部43は、鉛直方向において、内輪51Bに対向する第一部分43Bが、外輪51Aに対向する第二部分43Aよりも上方に位置するように形成されている。したがって、給電コア57に電力が供給されない状態(無給電時)において回転しないようにブレーキがかかる外輪51Aを有する走行車6であっても、ブレーキがかからず自由に回転する内輪51Bのみが作業用軌道41に接触し、走行輪である外輪51Aが浮いた状態となる(下方支持部43に接触しない状態となる)ので、走行車6を容易に移動させることが可能となる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の一側面は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
上記実施形態の作業用軌道41は、下方支持部43及び側方支持部45から構成される例を挙げて説明したが、この実施形態に限定されない。例えば、走行用軌道4に備わる一対の側面部40C,40Cのように側面を覆う側面部を有し、給電部が設けられていた部分を利用して走行部50の少なくとも一部を露出させる開放部47を形成してもよい。
【0056】
上記実施形態では作業エリア160(すなわち、作業用軌道41)が走行用軌道4と走行用軌道4との間に配置されている例を挙げて説明したが、作業エリア160は、走行用軌道4の終端部に配置されてもよい。
【0057】
上記実施形態の移動機構60は、第一アーム部61と第二アーム部65とが移動プレート71に設けられ、一体的に延在方向Xに移動する例を挙げて説明したが、この実施形態に限定されない。例えば、第一アーム部61及び第二アーム部65は、ベースプレート70に設けられ、ベースプレート70に対してそれぞれ独立して延在方向Xに移動可能に設けられてもよい。
【0058】
上記実施形態の作業用軌道41では、下方支持部43は、鉛直方向において第一部分43Bが第二部分43Aよりも上方に位置するように形成されている例を挙げて説明したがこの実施形態に限定されない。例えば、走行部50の走行輪が内輪51Bとして形成され、走行補助輪が外輪51Aとして構成されている場合には、第二部分43Aが第一部分43Bよりも上方に位置するように形成されてもよい。
【0059】
上記実施形態では、走行車6を吊り下げて走行させるための走行用軌道4に適用した例を説明したが、本発明の一側面は、地面に配置される軌道を走行車が走行する走行車システムにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…走行車システム、4…走行用軌道、6…天井走行車(走行車)、7…本体部、10…物品、40C…側面部、40E…給電部、41…作業用軌道、42…フレーム、43…下方支持部、43A…第二部分、43B…第一部分、45…側方支持部、47…開放部、50…走行部、51…走行ローラ、51A…外輪(走行輪)、51B…内輪(走行補助輪)、57…給電コア、60…移動機構、61…第一アーム部、62…第一回動駆動部(回動駆動部)、64…第一移動駆動部(移動駆動部)、65…第二アーム部、66…第二回動駆動部(回動駆動部)、68…第二移動駆動部(移動駆動部)、70…ベースプレート、71…移動プレート、80…吸引装置(処理装置)、81…垂直多関節型ロボット、82…吸引部、160…作業エリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9