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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】振動装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/06 20060101AFI20220705BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20220705BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20220705BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
H02K5/24 A
G03B17/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021526689
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048771
(87)【国際公開番号】W WO2021220553
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2020078190
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北森 宣匡
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/100795(WO,A1)
【文献】特開2020-049727(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110564(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198465(WO,A1)
【文献】実用新案登録第2535727(JP,Y2)
【文献】国際公開第2017/221622(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
H02K 5/24
G03B 17/08
G02B 7/02
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、第1の開口端面及び第2の開口端面を有する筒状体と、
前記筒状体の前記開口部を覆うように、前記筒状体の前記第1の開口端面に直接的または間接的に接合されている透光体カバーと、
前記筒状体に直接的または間接的に接合されている圧電体と、
前記筒状体と前記圧電体との間、及び前記筒状体と前記透光体カバーとの間のうち少なくとも一方に設けられている緩衝層と、
を備え、
前記筒状体の前記第1の開口端面及び前記第2の開口端面を結ぶ方向を軸方向としたときに、前記緩衝層が、前記軸方向に直交する方向における内側に位置する内側端部と、前記軸方向に直交する方向における外側に位置する外側端部と、を有し、
前記内側端部の厚みが前記外側端部の厚みよりも厚い、振動装置。
【請求項2】
前記緩衝層が、円環状の形状を有する、請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
前記緩衝層において、前記内側端部における厚みが最も厚い、請求項1または2に記載の振動装置。
【請求項4】
前記緩衝層が、前記緩衝層の厚みが前記内側端部側に向かうにつれて厚くなっている部分を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項5】
前記緩衝層と前記筒状体とが一体化されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項6】
前記緩衝層が第1の面と、第2の面と、を有し、
前記第1の面が、前記筒状体に接合されており、
前記第2の面が、前記第1の面と対向している部分を含み、
前記第2の面の算術平均粗さが0.8μm以上、6.3μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項7】
前記筒状体が金属からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的振動によって水滴などを除去することが可能な振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視装置として用いられるカメラなどのイメージングデバイスにおいては、その視野を常に明瞭にすることが求められている。特に、車載用途などの屋外で使用されるカメラにおいては、雨滴などの水滴を除去するための機構が種々提案されている。下記の特許文献1には、撮像ユニットと、撮像ユニットを振動させる圧電素子とを有する水滴除去機能付カメラが開示されている。撮像ユニットは、レンズ及びレンズを透過した光を光電変換する撮像素子を有する。レンズはレンズホルダにより支持されている。レンズに付着した水滴を除去するために、圧電素子がレンズホルダを振動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-080177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された水滴除去機能付カメラにおいては、振動に際しレンズホルダに応力が加わる。そのため、長期にわたり使用すると、振動に際し加わり続ける応力により、レンズホルダが破損するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、振動時の応力による破損を抑制することができる、振動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る振動装置は、開口部を有し、第1の開口端面及び第2の開口端面を有する筒状体と、前記筒状体の前記開口部を覆うように、前記筒状体の前記第1の開口端面に直接的または間接的に接合されている透光体カバーと、前記筒状体に直接的または間接的に接合されている圧電体と、前記筒状体と前記圧電体との間、及び前記筒状体と前記透光体カバーとの間のうち少なくとも一方に設けられている緩衝層とを備え、前記筒状体の前記第1の開口端面及び前記第2の開口端面を結ぶ方向を軸方向としたときに、前記緩衝層が、前記軸方向に直交する方向における内側に位置する内側端部と、前記軸方向に直交する方向における外側に位置する外側端部とを有し、前記内側端部の厚みが前記外側端部の厚みよりも厚い。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る振動装置によれば、振動時の応力による破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の正面断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の分解斜視図である。
図3図3は、図1の拡大図である。
図4図4は、第2の比較例の振動装置の正面断面図である。
図5図5は、第1の比較例の振動装置における、振動変位及び応力分布を示す図である。
図6図6は、第2の比較例の振動装置における、振動変位及び応力分布を示す図である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置における、振動変位及び応力分布を示す図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態、第1の比較例及び第2の比較例における、径方向の位置と、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。
図9図9は、第2の比較例における、緩衝層の厚みと、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。
図10図10は、第2の比較例における、緩衝層の厚みと、透光体カバーの最大変位量との関係を示す図である。
図11図11は、本発明の第1の実施形態における、緩衝層の最大の厚みと、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。
図12図12は、本発明の第1の実施形態における、緩衝層の最大の厚みと、透光体カバーの最大変位量との関係を示す図である。
図13図13は、本発明の第1の実施形態において、緩衝層の幅が狭い場合の例における、緩衝層付近を示す正面断面図である。
図14図14は、第2の比較例における、緩衝層の幅L及び厚みTと、規格化最大変位量との関係を示す図である。
図15図15は、本発明の第1の実施形態における、緩衝層の幅L及び最大の厚みTと、規格化最大変位量との関係を示す図である。
図16図16は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る振動装置の、緩衝層付近を示す正面断面図である。
図17図17は、本発明の第2の実施形態に係る振動装置の、緩衝層付近を示す正面断面図である。
図18図18は、本発明の第2の実施形態における、緩衝層の第1の段部分の厚みと、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。
図19図19は、本発明の第2の実施形態における、緩衝層の第1の段部分の厚みと、透光体カバーの最大変位量との関係を示す図である。
図20図20は、本発明の第3の実施形態に係る振動装置の、緩衝層付近を示す正面断面図である。
図21図21は、本発明の第4の実施形態に係る振動装置の、緩衝層付近を示す正面断面図である。
図22図22は、本発明の第5の実施形態に係るイメージングデバイスの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の正面断面図である。図2は、第1の実施形態に係る振動装置の分解斜視図である。
【0012】
図1及び図2に示す振動装置1は、振動により水滴や異物を移動させ、または水滴などを霧化させることにより、撮像素子の視野内などから水滴や異物を除去する振動装置である。振動装置1は、透光体カバー2と、筒状体3と、圧電素子4と、緩衝層5と、保持部材6とを有する。
【0013】
透光体カバー2、筒状体3及び保持部材6により内部空間が構成されている。この内部空間内に、撮像素子などの光学検出素子が配置される。なお、本明細書において、内部空間は密閉された空間には限られず、一部が外部に開いた空間も内部空間とする。筒状体3及び保持部材6は一体で構成されていてもよいし、溶接などの手段を用いて接合されていてもよい。
【0014】
筒状体3は開口部3eを有し、かつ第1の開口端面3a及び第2の開口端面3bを有する。ここで、筒状体3の第1の開口端面3a及び第2の開口端面3bを結ぶ方向を軸方向Zとし、軸方向Zと直交する方向を径方向とする。筒状体3は軸方向Zに延びている。筒状体3は、内側面3c及び外側面3dを有する。内側面3c及び外側面3dは、第1の開口端面3a及び第2の開口端面3bに接続されている。本実施形態においては、筒状体3は略円筒状の形状を有する。
【0015】
図3は、図1の拡大図である。
【0016】
第2の開口端面3bは傾斜部3gと、非傾斜部3hとを有する。傾斜部3gは、径方向に対して傾斜している部分である。なお、本明細書において、径方向に対して傾斜しているとは、軸方向Zに沿う断面において傾斜していることをいう。第2の開口端面3bは、傾斜部3gにおいて、径方向内側に向かうにつれて第1の開口端面3aに近づくように傾斜している。一方で、非傾斜部3hは、径方向と平行な部分である。傾斜部3gの径方向内側の端部は、内側面3cに接続されている。傾斜部3gの径方向外側の端部は、非傾斜部3hに接続されている。非傾斜部3hの径方向外側の端部は、外側面3dに接続されている。筒状体3の形状は略円筒状に限定されず、例えば、略角筒状などであってもよい。
【0017】
筒状体3は適宜の金属からなる。もっとも、筒状体3の材料は金属に限定されず、適宜のセラミックなどを用いてもよい。
【0018】
図1に戻り、筒状体3の第1の開口端面3aには、透光体カバー2が接合されている。より具体的には、筒状体3の開口部3eを覆うように、透光体カバー2が筒状体3に直接的に接合されている。透光体カバー2は円板状の形状を有する。なお、透光体カバー2の形状は上記に限定されず、例えば、ドーム状などであってもよい。透光体カバー2の平面視における形状は、例えば、多角形であってもよい。本明細書において、平面視とは、軸方向Z上方から見る方向をいう。軸方向Z上方は、図1における上方に相当する。
【0019】
透光体カバー2の材料としては、例えば、透光性のプラスチック、石英、ホウケイ酸系やソーダライム系などのガラス、または透光性のセラミックなどを用いることができる。本明細書における透光性とは、少なくとも上記撮像素子などの光学検出素子が検出する波長のエネルギー線や光が透過する透光性をいう。
【0020】
図3に示すように、筒状体3の第2の開口端面3bの傾斜部3gには、緩衝層5が接合されている。緩衝層5は円環状の形状を有する。より具体的には、緩衝層5は、第1の面5aと、第2の面5bと、内側面5cとを有する。緩衝層5の軸方向Zに沿う断面形状は、直角三角形である。第1の面5a及び第2の面5bは、内側面5cに接続されている。さらに、第1の面5aと第2の面5bとは接続されている。第1の面5aは、径方向に対して傾斜している。第2の面5bは、第1の面5aと対向する部分及び第1の面5aと接続されている部分を含む。
【0021】
なお、緩衝層5は、内側端部5eと、外側端部5fとを有する。内側端部5eは径方向内側に位置する端部である。内側端部5eは内側面5cを含む。他方、外側端部5fは径方向外側に位置する端部である。内側端部5e及び外側端部5fは、径方向において対向し合っている。外側端部5fは、第1の面5a及び第2の面5bが接続されている部分である。内側端部5eの厚みは、外側端部5fの厚みよりも厚い。
【0022】
緩衝層5の第1の面5aは、筒状体3における傾斜部3gに接合されている。緩衝層5の第2の面5b及び筒状体3の第2の開口端面3bの非傾斜部3hは、面一とされている。緩衝層5の内側面5c及び筒状体3の内側面3cは面一とされている。緩衝層5の材料には、金属、セラミックまたはガラスなどを用いることができる。
【0023】
緩衝層5の第2の面5bに、圧電素子4が貼り付けられている。なお、圧電素子4は、筒状体3の第2の開口端面3bには至っていない。図2に示すように、圧電素子4は円環状の形状を有する。圧電素子4は円環状の圧電体13を有する。圧電体13は第1の主面13a及び第2の主面13bを有する。より具体的には、第1の主面13a及び第2の主面13bは、軸方向Zにおいて対向し合っている。第1の主面13aが筒状体3側に位置する。
【0024】
圧電素子4は、第1の電極14a及び第2の電極14bを有する。第1の電極14aは、圧電体13の第1の主面13a上に設けられている。第2の電極14bは、第2の主面13b上に設けられている。第1の電極14a及び第2の電極14bは互いに対向するように設けられている。第1の電極14a及び第2の電極14bの形状は、それぞれ円環状である。第1の電極14aは、圧電体13の第1の主面13aの全面に設けられている。第2の電極14bは、第2の主面13bの全面に設けられている。なお、第1の電極14aは、圧電体13の第1の主面13aの一部に設けられていてもよい。同様に、第2の電極14bは、第2の主面13bの一部に設けられていてもよい。例えば、第1の電極14a及び第2の電極14bの幅が、圧電体13の幅よりも狭くてもよい。あるいは、第1の電極14a及び第2の電極14bの形状は、円弧状などであってもよい。
【0025】
第1の電極14a及び第2の電極14bの材料としては、適宜の金属を用いることができる。第1の電極14a及び第2の電極14bは、例えば、AgやAuなどの金属薄膜からなる電極であってもよい。この場合、第1の電極14a及び第2の電極14bは、スパッタリング法などにより形成することができる。
【0026】
圧電体13の材料としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PT(チタン酸鉛)や(K,Na)NbOなどの適宜の圧電セラミックスまたはLiTaOやLiNbOなどの適宜の圧電単結晶などを用いてもよい。なお、圧電体13の形状は上記に限定されない。
【0027】
図3に示すように、筒状体3の第2の開口端面3bの非傾斜部3hには、保持部材6が接続されている。図1に示すように、保持部材6は、バネ部17と、底部18とを有する。バネ部17の一方端部が、筒状体3の第2の開口端面3bに接続されている。バネ部17の他方端部に、底部18が連ねられている。バネ部17の軸方向Zに沿う断面形状は、階段状の形状である。底部18の形状は円筒形である。なお、バネ部17及び底部18の形状は上記に限定されない。バネ部17は、例えば、円筒状または角筒状などの形状を有していてもよい。底部18は、例えば、角筒状などの形状を有していてもよい。
【0028】
保持部材6は適宜の金属からなる。なお、保持部材6の材料は金属には限定されず、例えば、セラミックなどを用いることもできる。振動装置1は、例えば、保持部材6の底部18において外部に固定される。
【0029】
本実施形態の特徴は、筒状体3と圧電素子4との間に、緩衝層5が設けられており、緩衝層5の内側端部5eの厚みが外側端部5fの厚みよりも厚いことにある。これにより、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる応力を小さくすることができる。よって、振動時の応力による、振動装置1の破損を抑制することができる。従って、信頼性を高めることができる。応力を小さくできる効果の詳細を、以下において説明する。なお、本実施形態における筒状体3及び圧電素子4の接合界面とは、緩衝層5を介した接合界面である。
【0030】
第1の実施形態の振動装置と、第1の比較例及び第2の比較例とにおいて、応力分布を比較した。なお、第1の比較例は、緩衝層を有しない点、及び筒状体の第2の開口端面が傾斜部を有しない点において、第1の実施形態と異なる。第2の比較例は、図4に示すように、緩衝層105の厚みが径方向において一定である点、及び筒状体103の第2の開口端面103bが傾斜部を有しない点において、第1の実施形態と異なる。
【0031】
図5は、第1の比較例の振動装置における、振動変位及び応力分布を示す図である。図6は、第2の比較例の振動装置における、振動変位及び応力分布を示す図である。図7は、第1の実施形態に係る振動装置における、振動変位及び応力分布を示す図である。図8は、第1の実施形態、第1の比較例及び第2の比較例における、径方向の位置と、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。なお、図5図7は、図1に示す断面の半分に相当する部分を示す。図8の横軸における0mは、圧電素子の径方向内側の端部の位置に相当する。図8の横軸における0.003mは、圧電素子の径方向外側の端部の位置に相当する。
【0032】
図5に示すように、第1の比較例においては、筒状体103の第2の開口端面103bに大きな応力が加わっていることがわかる。なお、透光体カバー2の最大変位量は26.2μmである。図6に示すように、第2の比較例においても、第2の開口端面103bに比較的大きな応力が加わっていることがわかる。第2の比較例のように、緩衝層105の厚みが径方向において一定である場合、応力は十分に小さくなっていない。なお、透光体カバー2の最大変位量は22.2μmである。このように、第1の比較例よりも第2の比較例においては、透光体カバー2の最大変位量が大幅に小さくなっている。
【0033】
これらに対して、図7に示すように、第1の実施形態においては、筒状体3の第2の開口端面3bに加わる応力を効果的に小さくできていることがわかる。なお、緩衝層5に加わる応力も小さいことがわかる。さらに、透光体カバー2の最大変位量は23.6μmである。このように、第1の実施形態においては、透光体カバー2の最大変位量は第2の比較例よりも大きいことがわかる。
【0034】
図8に示すように、第1の実施形態、第1の比較例及び第2の比較例においては、圧電素子の径方向内側の端部の位置に近いほど、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力は大きくなっている。これに関わらず、第1の実施形態においては、いずれの位置においても、第1の比較例よりも応力が抑制されている。第1の実施形態においては、第1の比較例よりも、応力が30%も抑制されている。
【0035】
他方、圧電素子の径方向外側の端部の位置では、第1の実施形態及び第2の比較例において、応力は同等である。当該端部よりも径方向内側では、第1の実施形態において、第2の比較例よりも応力が抑制されていることがわかる。
【0036】
図1に示すように、第1の実施形態の緩衝層5においては、内側端部5eの厚みが、外側端部5fの厚みよりも厚い。そのため、緩衝層5の厚みは、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる応力が大きい部分において、厚くなっている。それによって、加わる応力が大きい部分において、応力を効果的に抑制することができる。従って、第1の実施形態においては、第2の比較例よりも、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる応力を効果的に小さくすることができる。
【0037】
第1の実施形態においては、透光体カバー2の最大変位量が小さくなることを抑制しつつ、上記接合界面に加わる応力を小さくすることができる。この効果の詳細を、第1の実施形態及び第2の比較例を比較することにより、以下において説明する。
【0038】
ここで、緩衝層の内側端部と外側端部との距離を幅Lとする。緩衝層の厚みをTとし、緩衝層の最大の厚みをTとする。第1の実施形態の構成を有する振動装置1において、緩衝層5の最大の厚みTを変化させて、筒状体3と圧電素子4との接合界面に加わる応力、及び透光体カバー2の最大変位量を測定した。同様に、第2の比較例において、緩衝層105の厚みTを変化させて、筒状体103と圧電素子4との接合界面に加わる応力、及び透光体カバー2の最大変位量を測定した。
【0039】
第1の実施形態の構成を有する振動装置及び第2の比較例の振動装置の設計パラメータは表1の通りである。なお、第1の実施形態及び第2の比較例においては、L=3mmとした。
【0040】
【表1】
【0041】
図9は、第2の比較例における、緩衝層の厚みと、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。図10は、第2の比較例における、緩衝層の厚みと、透光体カバーの最大変位量との関係を示す図である。図11は、第1の実施形態における、緩衝層の最大の厚みと、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。図12は、第1の実施形態における、緩衝層の最大の厚みと、透光体カバーの最大変位量との関係を示す図である。なお、第2の比較例においては、緩衝層の厚みは、径方向において一定である。そのため、図9及び図10の横軸は、緩衝層の厚みとした。
【0042】
図9に示すように、第2の比較例においては、緩衝層105の厚みが約0.17mmのときに、筒状体103及び圧電素子4の接合界面に加わる最大応力は、50MPaとなっている。このとき、図10に示すように、透光体カバー2の最大変位量は19.8μmである。これに対して、図11及び図12に示すように、第1の実施形態においては、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる最大応力が50MPaとなるとき、透光体カバー2の最大変位量は20.7μmとなっている。このように、上記接合界面に加わる応力が、第1の実施形態及び第2の比較例において同じである場合、第1の実施形態における最大変位量は第2の比較例における最大変位量よりも大きい。
【0043】
他の例としては、図9及び図10に示すように、第2の比較例においては、筒状体103及び圧電素子4の接合界面に加わる最大応力が55MPaとなるとき、透光体カバー2の最大変位量は21.8μmである。これに対して、図11及び図12に示すように、第1の実施形態においては、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる応力が55MPaとなるとき、透光体カバー2の最大変位量は23μmと大きい。このように、第1の実施形態においては、透光体カバー2の最大変位量が小さくなることを抑制しつつ、上記接合界面に加わる応力を小さくすることができる。
【0044】
第1の実施形態においては、上記接合界面に加わる応力が小さくなっても、透光体カバー2の方が最大変位量は大きい。このように、上記接合界面に加わる応力に対する、透光体カバー2の最大変位量の感度を低くすることができる。
【0045】
第1の実施形態では、平面視において、緩衝層5の内側端部5eと圧電素子4の径方向内側の端部とは重なっている。平面視において、緩衝層5の外側端部5fと圧電素子4の径方向外側の端部とは重なっている。もっとも、緩衝層5の配置はこれに限定されない。例えば、図13に示す場合には、緩衝層5の外側端部5fは、圧電素子4の径方向外側の端部よりも、径方向内側に位置する。あるいは、図示しないが、緩衝層5の外側端部5fは、圧電素子4の径方向外側の端部よりも、径方向外側に位置していてもよい。
【0046】
第1の実施形態の振動装置1においては、図3に示す場合には、圧電素子4は、筒状体3に緩衝層5を介して間接的に接合されている。他方、図13に示す場合には、振動装置1は、圧電素子4が筒状体に直接的に接合されている部分、及び間接的に接合されている部分を有する。
【0047】
ここで、第1の実施形態の構成を有する振動装置1において、緩衝層5の幅L及び最大の厚みTを変化させて、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる応力及び透光体カバー2の最大変位量を測定した。なお、振動装置1における緩衝層5以外の寸法は一定としている。透光体カバー2の最大変位量を、上記界面に加わる応力により規格化した変位を、規格化最大変位量とする。幅L及び最大の厚みTを変化させる毎に、規格化最大変位量を算出した。同様に、図4に示す第2の比較例においても、緩衝層105の幅L及び厚みTを変化させる毎に、規格化最大変位量を算出した。規格化最大変位量が大きいことは、振動装置としての性能が優れていることを示す。より詳細には、規格化最大変位量は、最大変位量を応力の値により規格化したものであるため、規格化最大変位量は応力の値に反比例する。よって、規格化最大変位量が大きいということは、上記界面に加わる応力が小さい場合であっても、透光体カバー2の振動の変位が大きいことを意味する。
【0048】
図14は、第2の比較例における、緩衝層の幅L及び厚みTと、規格化最大変位量との関係を示す図である。図15は、第1の実施形態における、緩衝層の幅L及び最大の厚みTと、規格化最大変位量との関係を示す図である。なお、図14及び図15においては、規格化最大変位量を、各領域におけるグレースケール及び等高線により表す。
【0049】
図14に示すように、第2の比較例においては、緩衝層105の幅Lの値及び厚みTの値が大きくなるほど、規格化最大変位量は小さくなっている。ここで、図14においては、規格化最大変位量の等高線同士の距離が短い。これは、幅Lまたは厚みTの変化に対する、規格化最大変位量の変化が大きいことを示す。このように、第2の比較例においては、緩衝層105の形状に対する、規格化最大変位量の感度が高い。
【0050】
これに対して、図15に示すように、第1の実施形態においては、規格化最大変位量の等高線同士の距離が長いことがわかる。このように、第1の実施形態においては、緩衝層5の形状に対する規格化最大変位量の感度が低い。よって、製品のばらつきを小さくすることができる。
【0051】
図14及び図15において、幅Lが同じであり、かつ、厚みT及び最大厚みTが同じである場合を比較すると、第1の実施形態における規格化最大変位量は、第2の比較例における規格化最大変位量以上であることがわかる。さらに、幅Lの値、並びに、厚みTまたは最大厚みTの値が大きい領域においては、第1の実施形態における規格化最大変位量は、第2の比較例における規格化最大変位量よりも大きい。加えて、図15に示すように、第1の実施形態においては、規格化最大変位量が大きい領域が広く、振動装置としての性能が優れていることがわかる。
【0052】
ところで、緩衝層5と筒状体3とが一体化されていることが好ましい。それによって、緩衝層5と筒状体3とが剥離し難い。本明細書において、緩衝層5と他の物とが一体化されているとは、該他の物が表面処理されることにより、緩衝層5が形成されていることをいう。表面処理としては、例えば、コーティング処理またはめっき処理などを挙げることができる。なお、コーティング処理は、例えば、溶射加工などにより行うことができる。
【0053】
緩衝層5と筒状体3とを一体化させるに際し、溶射加工を用いることが好ましい。溶射加工とは、固体の物質を加熱して溶融し、基材の表面に吹き付けることにより、被膜を形成することをいう。溶射加工により緩衝層5を形成する前に、筒状体3の傾斜部3gにブラスト処理を行うことが好ましい。ブラスト処理により、傾斜部3gは粗面となる。それによって、溶射加工により形成された緩衝層5と、筒状体3との密着性を効果的に高めることができる。それによって、緩衝層5と筒状体3との接合力を効果的に高めることができる。溶射加工により緩衝層5を形成した後に、緩衝層5の第2の面5b側の研磨処理を行うことが好ましい。それによって、第2の面5bを好適に平滑化することができる。
【0054】
溶射加工は、適用可能な被膜の厚みの範囲が広い。よって、溶射加工を用いる場合には、緩衝層5の設計の自由度を高めることができる。さらに、溶射加工においては、溶射する材料及び基材の材料として適用することができる材料の範囲が広い。従って、筒状体3及び緩衝層5の設計の自由度をより一層高めることができる。
【0055】
筒状体3の傾斜部3gの算術平均粗さ(Ra)は、3.2μm以上、25μm以下であることが好ましい。このように、傾斜部3gが粗面であることにより、溶射加工を用いる場合において、筒状体3と緩衝層5との接合力を高めることができる。本明細書における算術平均粗さは、JIS B 0601:2013に基づく。
【0056】
他方、筒状体3の傾斜部3gの算術平均粗さは、0.2μm以下であることが好ましい。この場合においても、めっき処理、蒸着、スパッタリングなどを用いる場合においては、筒状体3と緩衝層5との接合力を高めることができる。
【0057】
緩衝層5の第2の面5bの算術平均粗さは、0.8μm以上、6.3μm以下であることが好ましい。それによって、緩衝層5と圧電素子4との接合力を好適に高めることができる。
【0058】
例えば、筒状体3と緩衝層5との間に接着剤層が設けられている場合には、接着剤層による振動の吸収が生じるおそれがある。これに対して、第1の実施形態においては、筒状体3と緩衝層5とは、接着剤を用いずに、直接的に接合している。よって、第1の実施形態では、接着剤層による振動の吸収は生じない。従って、透光体カバー2の振動効率を高めることができる。
【0059】
緩衝層5において、内側端部5eにおける厚みが最も厚いことが好ましい。それによって、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる応力を効果的に小さくすることができる。緩衝層5の厚みが、内側端部5e側に向かうにつれて厚くなっていることがより好ましい。これにより、振動効率の低減を効果的に抑制することができる。
【0060】
緩衝層5の材料は、Qmが高い材料であることが好ましい。それによって、損失を小さくすることができ、透光体カバー2を効率的に振動させることができる。さらに、緩衝層5の材料は、導電性を有する材料であることが好ましい。これにより、筒状体3と圧電素子4とを電気的に接続することができる。よって、筒状体3を圧電素子4の配線の一部として用いることができ、配線の自由度を高めることができる。緩衝層5の材料としては、具体的には、例えば、SUS420J2、SUS440C、SUS430、コバールまたは42Niなどを用いることが好ましい。
【0061】
ここで、圧電体13の線膨張係数をα1とし、筒状体3の線膨張係数をα2とし、緩衝層5の線膨張係数をαとしたときに、α1~α~α2であることが好ましい。なお、α1~α~α2とは、αの値が、α1及びα2の間の値であることをいう。圧電体13の線膨張係数が5ppm/℃以下である場合には、緩衝層5の材料として、コバールまたは42Niを用いることが特に好ましい。これらにより、圧電素子4と緩衝層5との線膨張係数を近づけることができる。よって、圧電素子4と緩衝層5との剥離が生じ難い。従って、振動装置1の信頼性を高めることができる。
【0062】
上記のように、圧電素子4は第1の電極14aを有する。よって、圧電体13は、筒状体3に、第1の電極14aを介して間接的に接合されている。なお、緩衝層5及び筒状体3が金属からなる場合には、緩衝層5及び筒状体3を圧電素子4の第1の電極として用いることもできる。よって、この場合には、圧電素子4は第1の電極14aを有していなくてもよい。
【0063】
図3に示すように、筒状体3の第2の開口端面3bの傾斜部3gは、軸方向Zに沿う断面において、直線状の形状を有する。なお、傾斜部3gは、上記断面において、曲線状の形状を有していてもよい。この場合には、緩衝層5の第1の面5aも、上記断面において、曲線状の形状を有していてもよい。
【0064】
以下において、保持部材6の構成の詳細を説明する。図1に示すように、保持部材6は、バネ部17及び底部18を有する。バネ部17は、2個の円筒形が階段状に接続された形状を有する。より具体的には、バネ部17は、第1の部分17aと、第2の部分17bと、第3の部分17cとを含む。第1の部分17a及び第3の部分17cは円筒状の形状を有する。第1の部分17a及び第3の部分17cは軸方向Zに延びている。第2の部分17bは円環状の形状を有する。第2の部分17bは、第1の部分17a及び第3の部分17cを接続している。第1の部分17aは、筒状体3に接続されている。第3の部分17cに底部18が連ねられている。第1の部分17aの外径は、第3の部分17cの外径よりも小さい。もっとも、第1の部分17aの外径は、第3の部分17cの外径よりも大きくてもよい。
【0065】
ここで、保持部材6のそれぞれの部分が延びる方向に直交する方向に沿う厚みを保持部材6のそれぞれの部分の肉厚とする。保持部材6においては、バネ部17の肉厚は底部18の肉厚よりも薄い。それによって、バネ部17は底部18よりも変形し易い。これにより、振動の径方向の成分は、バネ部17のバネ性により吸収される。なお、上記のバネ部17による振動の吸収とは、圧電素子4から保持部材6に伝搬した振動の大部分をバネ部17における振動とすることができることをいう。これにより、振動を底部18まで漏洩し難くすることができる。
【0066】
加えて、底部18の肉厚が厚いため、底部18自体が変形し難い。よって、保持部材6の底部18への振動の漏洩を効果的に抑制することができる。従って、底部18が外部などに固定された場合において、振動ダンピングを効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、バネ部17は、第1の部分17a、第2の部分17b及び第3の部分17cを含んでいなくともよい。バネ部17の軸方向Zに沿う断面形状は、例えば、直線状の形状であってもよい。
【0068】
ところで、図3に示すように、緩衝層5の第1の面5aの全体が、径方向に対して傾斜している。もっとも、緩衝層5の第1の面5aは、径方向と平行な部分を有していてもよい。図16に示す第1の実施形態の変形例おいては、緩衝層25の第1の面25aは、傾斜部25gと、非傾斜部25hとを有する。傾斜部25gは、径方向に対して傾斜している部分である。非傾斜部25hは、径方向と平行な部分である。傾斜部25gにおいては、第1の実施形態と同様に、緩衝層25の厚みは、内側端部5eに向かうにつれて厚くなっている。非傾斜部25hでは、緩衝層25の厚みは径方向において一定である。非傾斜部25hの径方向内側の端部は、内側面5cに接続されている。非傾斜部25hの径方向外側の端部は、傾斜部25gに接続されている。平面視において、非傾斜部25hと傾斜部25gとが接続されている部分は、圧電素子4と重なっている。
【0069】
緩衝層25の外側端部5fは、圧電素子4の径方向外側の端部よりも、径方向外側に位置する。なお、外側端部5fは、筒状体23が保持部材6と接続されている部分の、径方向内側の端部に位置する。本変形例においても、第1の実施形態と同様に、筒状体23及び圧電素子4の接合界面に加わる応力を小さくすることができる。よって、振動時の応力による、振動装置の破損を抑制することができる。
【0070】
上述したように、本明細書において、緩衝層5と他の物とが一体化されているとは、該他の物が表面処理されることにより、緩衝層5が形成されていることをいう。第1の実施形態においては、緩衝層5と筒状体3とが一体化されている。なお、緩衝層5と圧電素子4とが一体化されていてもよい。
【0071】
図17は、第2の実施形態に係る振動装置の、緩衝層付近を示す正面断面図である。
【0072】
本実施形態は、緩衝層35が、径方向に対して傾斜している部分を有しない点において、第1の実施形態と異なる。さらに、本実施形態は、筒状体33の緩衝層35と接合している部分の形状が、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第2の実施形態の振動装置は第1の実施形態の振動装置1と同様の構成を有する。
【0073】
緩衝層35の軸方向Zに沿う断面形状は、階段状の形状である。緩衝層35は、第1の段部分36と、第2の段部分37とを有する。第1の段部分36及び第2の段部分37のそれぞれにおいては、緩衝層35の厚みは径方向において一定である。第1の段部分36の厚みをTとし、第2の段部分37の厚みをTとしたときに、T>Tである。第1の段部分36は内側面5cを含む。第1の段部分36の径方向内側の端部が、緩衝層35の内側端部5eである。第2の段部分37の径方向外側の端部が、緩衝層35の外側端部5fである。よって、緩衝層35の内側端部5eの厚みは、外側端部5fの厚みよりも厚い。
【0074】
上記のように、緩衝層35は第1の段部分36及び第2の段部分37を有する。そのため、第1の面35aは段差部を有する。他方、第2の面5bは平坦である。
【0075】
筒状体33は階段部分34を有する。階段部分34に、緩衝層35が接合されている。これにより、緩衝層35の第2の面5b及び筒状体3の第2の開口端面33bの非傾斜部3hは、面一とされている。
【0076】
緩衝層35の厚みは、筒状体33及び圧電素子4の接合界面に加わる応力が大きい部分において、厚くなっている。よって、第1の実施形態と同様に、筒状体33及び圧電素子4の接合界面に加わる応力を小さくすることができる。従って、振動時の応力による、振動装置の破損を抑制することができる。
【0077】
さらに、本実施形態においては、透光体カバー2の最大変位量が小さくなることを抑制しつつ、上記接合界面に加わる応力を小さくすることができる。この効果の詳細を以下において示す。
【0078】
第2の実施形態の構成を有する振動装置において、第1の段部分36の厚みTを変化させて、筒状体33及び圧電素子4の接合界面に加わる応力、及び透光体カバー2の最大変位量を測定した。第2の実施形態の構成を有する振動装置の設計パラメータは、上記表1に示すものと同様である。ここで、第1の段部分36における幅をLとし、第2の段部分37における幅をLとする。L=L=1.5mmとした。T=0.05mmとした。
【0079】
図18は、第2の実施形態における、緩衝層の第1の段部分の厚みと、筒状体及び圧電素子の接合界面に加わる応力との関係を示す図である。図19は、第2の実施形態における、緩衝層の第1の段部分の厚みと、透光体カバーの最大変位量との関係を示す図である。
【0080】
図18及び図19に示すように、筒状体33及び圧電素子4の接合界面に加わる最大応力が50MPaとなるとき、透光体カバー2の最大変位量は20.4μmとなっている。上記接合界面に加わる最大応力が55MPaとなるとき、透光体カバー2の最大変位量は22.7μmとなっている。この結果と、上記第1の実施形態及び第2の比較例の結果とを、表2において併せて示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示すように、筒状体33及び圧電素子4の接合界面に加わる応力が、50MPaの場合及び55MPaの場合のいずれにおいても、第2の実施形態における最大変位量は第2の比較例における最大変位量よりも大きい。このように、第2の実施形態においては、透光体カバー2の最大変位量が小さくなることを抑制しつつ、上記接合界面に加わる応力を小さくすることができる。
【0083】
なお、第1の実施形態においては、第2の実施形態よりもさらに、透光体カバー2の最大変位量が大きいことがわかる。第1の実施形態のように、緩衝層5の厚みが内側端部5e側に向かうにつれて厚くなっていることが好ましい。それによって、透光体カバー2の最大変位量が小さくなることをより一層抑制しつつ、上記接合界面に加わる応力を小さくすることができる。
【0084】
なお、第2の実施形態においても、第1の段部分36の厚みは、例えば、内側端部側に向かうにつれて厚くなっていてもよい。第2の段部分37の厚みも、例えば、内側端部側に向かうにつれて厚くなっていてもよい。第2の実施形態においては、緩衝層35は2つの段部分を有する。もっとも、緩衝層35は3つ以上の段部分を有していてもよい。
【0085】
図20は、第3の実施形態に係る振動装置の、緩衝層付近を示す正面断面図である。
【0086】
本実施形態は、筒状体43と透光体カバー2との間に緩衝層5が設けられている点、及び筒状体43の構成が第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の振動装置41は第1の実施形態の振動装置1と同様の構成を有する。
【0087】
筒状体43の第1の開口端面43aは、傾斜部43gと、非傾斜部43hとを有する。第1の開口端面43aは、傾斜部43gにおいて、径方向内側に向かうにつれて第2の開口端面43bに近づくように傾斜している。傾斜部43gの径方向内側の端部は、内側面3cに接続されている。傾斜部43gの径方向外側の端部は、非傾斜部43hに接続されている。非傾斜部43hの径方向外側の端部は、外側面3dに接続されている。
【0088】
他方、第2の開口端面43bは平坦である。圧電素子4は、筒状体43の第2の開口端面43bに直接的に接合されている。
【0089】
筒状体43の第1の開口端面43aの傾斜部43gには、緩衝層5が接合されている。緩衝層5の第1の面5aは、筒状体43における傾斜部43gに接合されている。緩衝層5の第2の面5b及び筒状体43の第1の開口端面43aの非傾斜部43hは、面一とされている。緩衝層5の内側面5c及び筒状体43の内側面3cは面一とされている。緩衝層5の第2の面5bには、透光体カバー2が接合されている。本実施形態においては、透光体カバー2は、筒状体43に緩衝層5を介して間接的に接合されている。
【0090】
筒状体43及び透光体カバー2の接合界面においては、径方向内側に位置するほど、加わる応力が大きい。本実施形態の緩衝層5においては、内側端部5eの厚みが、外側端部5fの厚みよりも厚い。そのため、緩衝層5の厚みは、筒状体43及び透光体カバー2の接合界面に加わる応力が大きい部分において、厚くなっている。これにより、加わる応力が大きい部分において、応力を効果的に小さくすることができる。よって、筒状体43及び透光体カバー2の接合界面に加わる応力を小さくすることができる。従って、振動時の応力による、振動装置41の破損を抑制することができる。なお、本実施形態における筒状体43及び透光体カバー2の接合界面とは、緩衝層5を介した接合界面である。
【0091】
緩衝層5の形状は上記に限定されない。透光体カバー2と筒状体43との間には、例えば、図16に示す緩衝層25や、図17に示す緩衝層35が設けられていてもよい。
【0092】
ここで、筒状体43の線膨張係数をα2とし、透光体カバー2の線膨張係数をα3とし、緩衝層5の線膨張係数をαとしたときに、α3~α~α2であることが好ましい。透光体カバー2の材料として、ソーダライム系のガラスを用いる場合には、緩衝層5の材料として、SUS420J2、SUS440CまたはSUS430を用いることが特に好ましい。他方、透光体カバー2の材料として、ホウケイ酸系のガラスを用いる場合には、緩衝層5の材料として、コバールまたは42Niを用いることが特に好ましい。これらにより、透光体カバー2と緩衝層5との線膨張係数を近づけることができる。よって、透光体カバー2と緩衝層5との剥離が生じ難い。従って、振動装置41の信頼性を高めることができる。
【0093】
ところで、本実施形態においては、緩衝層5と筒状体43とが一体化されている。なお、緩衝層5と透光体カバー2とが一体化されていてもよい。
【0094】
図21は、第4の実施形態に係る振動装置の、緩衝層付近を示す正面断面図である。
【0095】
本実施形態は、筒状体53と圧電素子4との間、及び筒状体53と透光体カバー2との間の双方に緩衝層5が設けられている点、並びに筒状体53の構成が第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の振動装置51は第1の実施形態の振動装置1と同様の構成を有する。
【0096】
筒状体53の第1の開口端面43aは、第2の実施形態と同様に、傾斜部43g及び非傾斜部43hを有する。第2の開口端面3bは、第1の実施形態と同様に、傾斜部3g及び非傾斜部3hを有する。一方の緩衝層5の第1の面5aは、第1の開口端面43aの傾斜部43gに接合されている。他方の緩衝層5の第1の面5aは、第2の開口端面3bの傾斜部3gに接合されている。
【0097】
本実施形態においては、筒状体53及び圧電素子4の接合界面に加わる応力を小さくすることができる。さらに、筒状体53及び透光体カバー2の接合界面に加わる応力を小さくすることもできる。よって、振動時の応力による、振動装置51の破損を抑制することができる。
【0098】
図22は、第5の実施形態に係るイメージングデバイスの正面断面図である。
【0099】
図22に示すように、光学検出装置としてのイメージングデバイス60は、第1の実施形態の振動装置1と、振動装置1の内部空間内に配置された撮像素子62とを有する。なお、イメージングデバイス60の振動装置は、第1の実施形態の振動装置1には限られない。イメージングデバイス60の振動装置は、例えば、第2~第4の実施形態のうちいずれかの振動装置であってもよい。該振動装置は、本発明に係る振動装置であればよい。
【0100】
撮像素子62としては、例えば、可視領域から遠赤外領域のいずれかの波長の光を受光する、CMOS、CCD、ボロメーターやサーモパイルなどを挙げることができる。イメージングデバイス60としては、例えば、カメラ、RadarやLIDARデバイスなどを挙げることができる。
【0101】
なお、振動装置1の内部空間内には、撮像素子62以外の、エネルギー線を光学的に検出する光学検出素子が配置されていてもよい。検出するエネルギー線としては、例えば、電磁波や赤外線などの活性エネルギー線であってもよい。光学検出素子の検出領域は、透光体カバー2に含まれる。図22に示すイメージングデバイス60においては、検出領域としての、撮像素子62の視野が透光体カバー2に含まれる。
【0102】
イメージングデバイス60は、第1の実施形態の振動装置1を有するため、筒状体3及び圧電素子4の接合界面に加わる応力を小さくすることができる。よって、振動時の応力による、振動装置1の破損を抑制することができる。従って、イメージングデバイス60の信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0103】
1…振動装置
2…透光体カバー
3…筒状体
3a,3b…第1,第2の開口端面
3c…内側面
3d…外側面
3e…開口部
3g…傾斜部
3h…非傾斜部
4…圧電素子
5…緩衝層
5a,5b…第1,第2の面
5c…内側面
5e…内側端部
5f…外側端部
6…保持部材
13…圧電体
13a,13b…第1,第2の主面
14a,14b…第1,第2の電極
17…バネ部
17a,17b,17c…第1,第2,第3の部分
18…底部
23…筒状体
25…緩衝層
25a…第1の面
25g…傾斜部
25h…非傾斜部
33…筒状体
33b…第2の開口端面
34…階段部分
35…緩衝層
35a…第1の面
36,37…第1,第2の段部分
41…振動装置
43…筒状体
43a,43b…第1,第2の開口端面
43g…傾斜部
43h…非傾斜部
51…振動装置
53…筒状体
60…イメージングデバイス
62…撮像素子
103…筒状体
103b…第2の開口端面
105…緩衝層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22