(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】振動装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20220705BHJP
H02K 5/00 20060101ALI20220705BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20220705BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
H02K5/00 A
G02B7/02 D
(21)【出願番号】P 2021526690
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048772
(87)【国際公開番号】W WO2021229852
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2020086019
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 宣孝
(72)【発明者】
【氏名】中土井 貴英
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/163166(WO,A1)
【文献】特開2006-048302(JP,A)
【文献】実用新案登録第2535727(JP,Y2)
【文献】特開平3-070654(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110564(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
H02N 2/04
H02K 5/00
G03B 17/56
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、第1の開口端面及び第2の開口端面を有する筒状体と、
前記筒状体の前記第1の開口端面に接合されている振動素子と、
前記筒状体の前記開口部を覆うように、前記筒状体の前記第2の開口端面に接合されている透光体カバーと、
を備え、
前記筒状体と前記振動素子とは第1の接着剤層によって接合されており、
前記筒状体と前記透光体カバーとは第2の接着剤層によって接合されており、
前記第1の接着剤層の厚みをt1、前記第2の接着剤層の厚みをt2、前記第1の接着剤層に、前記第1の接着剤層の厚み方向に一定の応力を加えたときの厚み方向への変形量の絶対値を|Δt1|、前記第2の接着剤層に、前記第2の接着剤層の厚み方向に一定の応力を加えたときの厚み方向への変形量の絶対値を|Δt2|とし、前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層に同じ応力を加えたときの前記|Δt1|及び前記|Δt2|の関係が、|Δt1|>|Δt2|である、振動装置。
【請求項2】
t1>t2である、請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
前記第1の接着剤層が第1のスペーサを有し、前記第2の接着剤層が第2のスペーサを有し、
前記第1のスペーサの平均の高さをS1とし、前記第2のスペーサの平均の高さをS2としたときに、S1>S2である、請求項1または2に記載の振動装置。
【請求項4】
前記第1の接着剤層のヤング率をY1とし、前記第2の接着剤層のヤング率をY2としたときに、Y1<Y2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項5】
前記振動素子の、前記第1の接着剤層と接している面の算術平均粗さをRa1とし、前記透光体カバーの、前記第2の接着剤層と接している面の算術平均粗さをRa2としたときに、Ra1>Ra2である、請求項1~4のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項6】
前記筒状体及び前記透光体カバーを固定し、前記第2の接着剤層に圧縮応力を印加する、リテーナをさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項7】
前記筒状体の前記第1の開口端面及び前記第2の開口端面を結ぶ方向を軸方向としたときに、前記第2の接着剤層が、前記軸方向に直交する方向における内側に位置する内側端縁部と、前記軸方向に直交する方向における外側に位置する外側端縁部と、を有し、
前記第2の接着剤層の前記内側端縁部の厚みをt2iとし、前記外側端縁部の厚みをt2oとしたときに、t2i<t2oである、請求項1~6のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項8】
前記振動素子が圧電素子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的振動によって水滴などを除去することが可能な振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視装置として用いられるカメラなどのイメージングデバイスにおいては、その視野を常に明瞭にすることが求められている。特に、車載用途などの屋外で使用されるカメラにおいては、雨滴などの水滴を除去するための機構が種々提案されている。下記の特許文献1には、振動装置の一例が開示されている。この振動装置においては、レンズカバーにコネクタを介して圧電素子が取り付けられている。さらに、圧電素子に、絶縁体を介してハウジングが取り付けられている。ハウジングには、ライトセンサが内蔵されている。レンズカバーに付着した液滴を除去するために、圧電素子がレンズカバーを振動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、コネクタに金属を用いる場合には、コネクタ及び圧電素子の接合のために、エポキシ接着剤が用いられることが記載されている。この場合、コネクタに用いられる金属と、圧電素子との線膨張係数の差が大きいと、熱応力が増大する。そのため、コネクタから圧電素子が剥離したり、圧電素子にクラックが生じたりするおそれがある。一方で、レンズカバー及びコネクタの接合に用いられる接着剤により、振動がダンピングされるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、水滴などが付着する透光体カバーの変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる、振動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る振動装置は、開口部を有し、第1の開口端面及び第2の開口端面を有する筒状体と、前記筒状体の前記第1の開口端面に接合されている振動素子と、前記筒状体の前記開口部を覆うように、前記筒状体の前記第2の開口端面に接合されている透光体カバーとを備え、前記筒状体と前記振動素子とは第1の接着剤層によって接合されており、前記筒状体と前記透光体カバーとは第2の接着剤層によって接合されており、前記第1の接着剤層の厚みをt1、前記第2の接着剤層の厚みをt2、前記第1の接着剤層に、前記第1の接着剤層の厚み方向に一定の応力を加えたときの厚み方向への変形量の絶対値を|Δt1|、前記第2の接着剤層に、前記第2の接着剤層の厚み方向に一定の応力を加えたときの厚み方向への変形量の絶対値を|Δt2|とし、前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層に同じ応力を加えたときの前記|Δt1|及び前記|Δt2|の関係が、|Δt1|>|Δt2|である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る振動装置によれば、水滴などが付着する透光体カバーの変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の正面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の、第1の接着剤層及び第2の接着剤層付近を示す拡大正面断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の透光体カバーの最大変位量と接着剤層の厚みとの関係を示す図である。
【
図5】
図5は、低温時の、筒状体及び圧電素子の間に加わる最大剪断応力、並びに筒状体及び透光体カバーの間に加わる最大剪断応力と、接着剤層の厚みとの関係を示す図である。
【
図6】
図6は、透光体カバーの最大変位量と接着剤層のヤング率との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る振動装置の、第1の接着剤層及び第2の接着剤層付近を示す拡大正面断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る振動装置の正面断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第5の実施形態に係る振動装置の、第1の接着剤層及び第2の接着剤層付近を示す拡大正面断面図である。
【
図10】
図10は、透光体カバーの振動の振幅と、第2の接着剤層の厚みとの関係を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るイメージングデバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動装置の正面断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る振動装置の分解斜視図である。
【0012】
図1及び
図2に示す振動装置1は、振動により水滴や異物を移動させ、または水滴などを霧化させることにより、撮像素子の視野内などから水滴や異物を除去する振動装置である。振動装置1は、透光体カバー2と、筒状体3と、圧電素子4と、保持部材6とを有する。さらに、
図1に示すように、振動装置1は、第1の接着剤層8と第2の接着剤層9とを有する。筒状体3と圧電素子4とは、第1の接着剤層8により接合されている。筒状体3と透光体カバー2とは、第2の接着剤層9により接合されている。
【0013】
透光体カバー2、筒状体3及び保持部材6により内部空間が構成されている。この内部空間内に、撮像素子などの光学検出素子が配置される。なお、本明細書において、内部空間は密閉された空間には限られず、一部が外部に開いた空間も内部空間とする。
【0014】
以下において、本実施形態の振動装置1の構成の詳細を説明する。
【0015】
筒状体3は開口部3eを有し、かつ第1の開口端面3a及び第2の開口端面3bを有する。ここで、筒状体3の第1の開口端面3a及び第2の開口端面3bを結ぶ方向を軸方向Zとし、軸方向Zと直交する方向を径方向とする。筒状体3は軸方向Zに延びている。筒状体3は、内側面3c及び外側面3dを有する。内側面3c及び外側面3dは、第1の開口端面3a及び第2の開口端面3bに接続されている。
【0016】
第1の開口端面3aは平坦である。他方、第2の開口端面3b上には、壁部3fが設けられている。壁部3fは円環状の形状を有する。壁部3fは、平面視において、筒状体3の外周縁と内周縁との間に位置する。第2の開口端面3bにおける、壁部3fよりも径方向内側の部分は、平坦である。なお、壁部3fは設けられていなくともよい。本明細書において、平面視とは、軸方向Z上方から見る方向をいう。軸方向Z上方は、
図1における上方に相当する。
【0017】
本実施形態においては、筒状体3は略円筒状の形状を有する。なお、筒状体3の形状は略円筒状に限定されず、例えば、略角筒状などであってもよい。筒状体3は適宜の金属からなる。もっとも、筒状体3の材料は金属には限定されず、例えば、セラミックなどを用いることもできる。
【0018】
筒状体3の第1の開口端面3aに、圧電素子4が接合されている。より具体的には、第1の開口端面3a及び圧電素子4が第1の接着剤層8により接合されている。
図2に示すように、圧電素子4は円環状の形状を有する。圧電素子4は円環状の圧電体13を有する。圧電体13は第1の主面13a及び第2の主面13bを有する。より具体的には、第1の主面13a及び第2の主面13bは、軸方向Zにおいて対向し合っている。第2の主面13bが筒状体3側に位置する。
【0019】
圧電素子4は、第1の電極14a及び第2の電極14bを有する。第1の電極14aは、圧電体13の第1の主面13a上に設けられている。第2の電極14bは、第2の主面13b上に設けられている。第1の電極14a及び第2の電極14bは互いに対向するように設けられている。第1の電極14a及び第2の電極14bの形状は、それぞれ円環状である。第1の電極14a及び第2の電極14bの材料としては、適宜の金属を用いることができる。第1の電極14a及び第2の電極14bは、例えば、AgやAuなどの金属薄膜からなる電極であってもよい。この場合、第1の電極14a及び第2の電極14bは、スパッタリング法などにより形成することができる。
【0020】
圧電体13の材料としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PT(チタン酸鉛)や(K,Na)NbO3などの適宜の圧電セラミックスまたはLiTaO3やLiNbO3などの適宜の圧電単結晶などを用いてもよい。なお、圧電体13の形状は上記に限定されない。
【0021】
図1に示すように、筒状体3の第1の開口端面3aには、保持部材6が接続されている。保持部材6は、バネ部17と、底部18とを有する。バネ部17の一方端部が、筒状体3の第1の開口端面3aに接続されている。バネ部17の他方端部に、底部18が連ねられている。バネ部17の軸方向Zに沿う断面形状は、階段状の形状である。底部18の形状は円筒形である。なお、バネ部17及び底部18の形状は上記に限定されない。バネ部17は、例えば、円筒状または角筒状などの形状を有していてもよい。底部18は、例えば、角筒状などの形状を有していてもよい。
【0022】
保持部材6は適宜の金属からなる。なお、保持部材6の材料は金属には限定されず、例えば、セラミックなどを用いることもできる。振動装置1は、例えば、保持部材6の底部18において外部に固定される。
【0023】
上記のように、本実施形態においては、筒状体3に保持部材6が接続されている。もっとも、筒状体3と保持部材6とは一体であってもよい。この場合には、筒状体3は、保持部材6に相当する部分を含む。
【0024】
筒状体3の第2の開口端面3bには、透光体カバー2が接合されている。より具体的には、筒状体3の開口部3eを覆うように、透光体カバー2が第2の開口端面3bに接合されている。第2の開口端面3b及び透光体カバー2は、第2の接着剤層9により接合されている。なお、第2の接着剤層9は、壁部3fよりも径方向内側に配置されている。
【0025】
透光体カバー2は略円板状の形状を有する。なお、透光体カバー2は傾斜部2aを有する。より具体的には、傾斜部2aは、透光体カバー2の、振動装置1における外側の主面と、透光体カバー2の側面とを接続している。傾斜部2aは径方向に対して傾斜している。本明細書において、径方向に対して傾斜しているとは、軸方向Zに沿う断面において傾斜していることをいう。なお、透光体カバー2の形状は上記に限定されず、例えば、ドーム状などであってもよい。透光体カバー2の平面視における形状は、例えば、多角形であってもよい。
【0026】
透光体カバー2の材料としては、例えば、透光性のプラスチック、石英、ホウケイ酸系やソーダライム系などのガラス、または透光性のセラミックなどを用いることができる。本明細書における透光性とは、少なくとも上記撮像素子などの光学検出素子が検出する波長のエネルギー線や光が透過する透光性をいう。
【0027】
ここで、第1の接着剤層8の厚みをt1、第2の接着剤層9の厚みをt2とする。第1の接着剤層8に、第1の接着剤層8の厚み方向に一定の応力を加えたときの厚み方向への変形量の絶対値を|Δt1|、第2の接着剤層9に、第2の接着剤層9の厚み方向に一定の応力を加えたときの厚み方向への変形量の絶対値を|Δt2|とする。本実施形態の特徴は、第1の接着剤層8及び第2の接着剤層9に同じ応力を加えたときの|Δt1|及び|Δt2|の関係が、|Δt1|>|Δt2|であることにある。それによって、水滴などが付着する透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。この効果の詳細を、第1の接着剤層8及び第2の接着剤層9の構成の詳細と共に、以下において説明する。
【0028】
図3は、第1の実施形態に係る振動装置の、第1の接着剤層及び第2の接着剤層付近を示す拡大正面断面図である。
【0029】
本実施形態の第1の接着剤層8は、第1の樹脂層8aと、第1のスペーサ8bとを有する。第1のスペーサ8bは、第1の樹脂層8a内において分散している。同様に、第2の接着剤層9は、第2の樹脂層9aと、第2のスペーサ9bとを有する。第2のスペーサ9bは、第2の樹脂層9a内に分散している。第1の樹脂層8a及び第2の樹脂層9aには、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂などを用いることができる。第1のスペーサ8b及び第2のスペーサ9bには、適宜のガラス、金属またはセラミックなどを用いることができる。第1のスペーサ8b及び第2のスペーサ9bの形状は特に限定されないが、例えば、球状、楕円体状、円柱状または角柱状などである。
【0030】
第1のスペーサ8bの平均の高さをS1、第2のスペーサ9bの平均の高さをS2とする。なお、スペーサの高さとは、スペーサの軸方向Zに沿う寸法である。本実施形態においては、S1>S2である。それによって、t1>t2の関係が成立している。さらに、t1>t2とされていることによって、|Δt1|>|Δt2|とされている。振動装置1においては、このような構成とされていることにより、水滴などが付着する透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。この効果の詳細を以下において説明する。
【0031】
本発明者らの鋭意検討により、接着剤層の厚みに対する、振動の伝達効率の感度は、該接着剤層の位置により大きく異なることが明らかとなった。さらに、接着剤層の厚みに対する、熱応力の感度も、該接着剤層の位置により大きく異なることが明らかとなった。
【0032】
より具体的には、筒状体3及び圧電素子4の接合においては、第1の接着剤層8の厚みt1を厚くしても、振動が伝達する効率は低下し難い。さらに、第1の接着剤層8の厚みt1を厚くすると、熱応力が大幅に小さくなる。他方、筒状体3及び透光体カバー2の接合においては、第2の接着剤層9の厚みt2を薄くしても熱応力は増大し難い。これに対して、第2の接着剤層9の厚みt2を厚くすると、筒状体3から透光体カバー2に振動が伝達する効率が大幅に低下する。よって、t1>t2とすることにより、振動が伝達する効率が低下し難く、かつ熱応力は増大し難い。これを、
図4及び
図5を参照して、より具体的に示す。なお、以下においては、変位量または最大変位量は、特に断りのない場合には、透光体カバー2の中央部の変位量または最大変位量をいうものとする。
【0033】
第1の接着剤層8の厚みt1及び第2の接着剤層9の厚みt2を変化させて、透光体カバー2の最大変位量を測定した。なお、第1の接着剤層8の厚みt1を変化させる際は、第2の接着剤層9の厚みを10μmとし、一定とした。第2の接着剤層9の厚みt2を変化させる際は、第1の接着剤層8の厚みを10μmとし、一定とした。この結果を
図4に示す。
【0034】
図4は、透光体カバーの最大変位量と接着剤層の厚みとの関係を示す図である。なお、
図4の縦軸により表す最大変位量は、接着剤層が設けられていない場合を100%とする。
【0035】
上記のように、第1の接着剤層8は、筒状体3及び圧電素子4を接合している。第2の接着剤層9は、筒状体3及び透光体カバー2を接合している。
図4に示すように、第1の接着剤層8の厚みt1が変化しても、透光体カバー2の最大変位量の変化は小さいことがわかる。他方、第2の接着剤層9の厚みt2が厚くなると、透光体カバー2の最大変位量が、大幅に小さくなっていることがわかる。よって、t1>t2とすることにより、透光体カバー2の最大変位量が小さくなり難い。この理由は以下の通りである。
【0036】
接着剤層における樹脂層の弾性率は、比較的小さい。そのため、接着剤層に振動が伝達され、接着剤層に応力が加わると、接着剤層は変形し易い。接着剤層の変形が大きいほど、振動は大幅に減衰する。よって、接着剤層に伝達された振動の振幅が大きいほど、接着剤層が大きく変形し、振動は大幅に減衰することとなる。
【0037】
振動装置1では、圧電素子4において励振された微小な振動が、第1の接着剤層8、筒状体3、第2の接着剤層9及び透光体カバー2の順序において伝達される。この振動の伝達の過程において、振動の振幅は増幅する。より具体的には、圧電素子4において励振された呼吸振動モードが、筒状体3において、透光体カバー2を軸方向Zに振動させる振動モードに変換される。このとき、振動の振幅も増幅する。そのため、第1の接着剤層8に伝達される振動の振幅よりも、第2の接着剤層9に伝達される振動の振幅は大きい。よって、第2の接着剤層9に振動が伝達すると、第2の接着剤層9は大きく変形する。さらに、第2の接着剤層9の厚みt2が厚いほど、第2の接着剤層9はより一層大きく変形することとなる。そのため、振動は大幅に減衰する。従って、第2の接着剤層9の厚みt2が厚くなると、透光体カバー2の最大変位量は大幅に小さくなる。
【0038】
なお、接着剤層の厚みが薄い場合には、接合された部材全体としてのQ値が大きくなる。よって、第2の接着剤層9の厚みt2が薄いほど、透光体カバー2の最大変位量は大きくなる。
【0039】
他方、第1の接着剤層8に伝達される振動の振幅は小さい。そのため、第1の接着剤層8の厚みt1が厚くなっても、第1の接着剤層8の変形は小さい。よって、第1の接着剤層8の厚みt1を変化させても、透光体カバー2の最大変位量は変化し難い。
【0040】
ここで、-40℃において、第1の接着剤層8の厚みt1を変化させて、筒状体3及び圧電素子4の間に加わる最大剪断応力を測定した。-40℃において、第2の接着剤層9の厚みt2を変化させて、筒状体3及び透光体カバー2の間に加わる最大剪断応力を測定した。このとき、各部材には、一般的に用いられる材料を用いた。より具体的には、筒状体3にはステンレスを用いた。圧電素子4の圧電体13にはPZTを用いた。透光体カバー2には、ソーダガラスを用いた。この結果を
図5に示す。
【0041】
図5は、低温時の、筒状体及び圧電素子の間に加わる最大剪断応力、並びに筒状体及び透光体カバーの間に加わる最大剪断応力と、接着剤層の厚みとの関係を示す図である。
【0042】
図5に示すように、第2の接着剤層9の厚みt2が変化しても、筒状体3及び透光体カバー2の間に加わる最大剪断応力の変化は小さいことがわかる。他方、第1の接着剤層8の厚みt1が厚くなると、筒状体3及び圧電素子4の間に加わる最大剪断応力が、大幅に小さくなっていることがわかる。
【0043】
筒状体3に用いられているステンレスの線膨張係数は、約10ppm/℃~15ppm/℃である。透光体カバー2に用いられているソーダガラスの線膨張係数は、約11ppm/℃である。このように、筒状体3及び透光体カバー2の線膨張係数の差は比較的小さい。そのため、第2の接着剤層9の厚みt2によらず、筒状体3及び透光体カバー2の間に加わる最大剪断応力は小さい。
【0044】
他方、圧電体13に用いられているPZTの線膨張係数は、5ppm/℃以下~7ppm/℃以下程度である。このように、筒状体3及び圧電体13の線膨張係数の差は比較的大きい。そのため、筒状体3及び圧電素子4の間に加わる最大剪断応力は大きい。ここで、第1の接着剤層8が設けられていることにより、筒状体3及び圧電素子4の間に加わる最大剪断応力が緩和される。さらに、第1の接着剤層8の厚みt1が厚くなると、上記緩和の効果が大きくなる。よって、第1の接着剤層8の厚みt1が厚くなると、筒状体3及び圧電素子4の間に加わる最大剪断応力は大幅に小さくなる。従って、t1>t2とすることにより、透光体カバー2、筒状体3及び圧電素子4に加わる熱応力の総量を効果的に小さくすることができる。
【0045】
以上のように、t1>t2であり、|Δt1|>|Δt2|であることによって、透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。なお、振動装置1を複雑な形状とすることなく、上記効果を得ることができる。よって、振動装置1を容易に製造することもできる。
【0046】
圧電素子4、筒状体3及び透光体カバー2を接合する各接着剤層には、各部材を長期間安定して接合すること及び振動を伝達することが求められる。本実施形態においては、各部材に加わる応力を小さくすることができるため、各部材を安定して接合することができる。加えて、圧電素子4から透光体カバー2に振動を好適に伝達することができ、透光体カバー2の変位は小さくなり難い。このように、本実施形態においては、各接着剤層に対する上記のような要求を満たすことができる。
【0047】
ところで、|Δt1|及び|Δt2|は、引張試験機により測定することができる。あるいは、初期の第1の接着剤層8の厚みt1、及び初期の第2の接着剤層9の厚みt2を測定することにより、|Δt1|>|Δt2|を満たすか否かを判断することもできる。より詳細には、第1の接着剤層8の弾性定数をE1としたときに、第1の接着剤層8に、第1の接着剤層8の厚み方向に一定の応力σを加えると、|Δt1|=|t1・σ/E1|となる。同様に、第2の接着剤層9の弾性定数をE2としたときに、第2の接着剤層9に、第2の接着剤層9の厚み方向に一定の応力σを加えると、|Δt2|=|t2・σ/E2|となる。そのため、初期の第1の接着剤層8の厚みt1、及び初期の第2の接着剤層9の厚みt2を測定することにより、弾性定数E1及び弾性定数E2の値から、|Δt1|>|Δt2|を満たすか否かを判断することができる。
【0048】
図3に示すように、本実施形態においては、第1の接着剤層8は第1のスペーサ8bを有する。第2の接着剤層9は第2のスペーサ9bを有する。S1>S2とすることにより、t1>t2としている。なお、t1>t2とする構成はこれに限られない。例えば、第1の接着剤層8が第1のスペーサ8bを有し、かつ第2の接着剤層9が第2のスペーサ9bを有していなくともよい。あるいは、第1の接着剤層8が第1のスペーサ8bを有しておらず、かつ第2の接着剤層9が第2のスペーサ9bを有していなくともよい。この場合には、第1の接着剤層8及び第2の接着剤層9に用いられる樹脂の粘度または樹脂の硬化時に加える圧力などによって、第1の接着剤層8の厚みt1及び第2の接着剤層9の厚みt2を制御してもよい。もっとも、第1の接着剤層8が第1のスペーサ8bを有し、かつ第2の接着剤層9が第2のスペーサ9bを有することが好ましい。それによって、第1の接着剤層8の厚みt1及び第2の接着剤層9の厚みt2の精度を高めることができる。
【0049】
本実施形態においては、振動装置1は、振動素子として圧電素子4を有する。もっとも、振動素子は、例えば電磁誘導素子などの、圧電素子以外の素子であってもよい。電磁誘導素子は、例えば、ソレノイドコイル及び磁石を有していてもよい。この場合、例えば、筒状体3及び磁石が第1の接着剤層8により接合されていてもよい。
【0050】
なお、以下において、保持部材6の構成の詳細を説明する。
図1に示すように、保持部材6は、バネ部17及び底部18を有する。バネ部17は、2個の円筒形が階段状に接続された形状を有する。より具体的には、バネ部17は、第1の部分17aと、第2の部分17bと、第3の部分17cとを含む。第1の部分17a及び第3の部分17cは円筒状の形状を有する。第1の部分17a及び第3の部分17cは軸方向Zに延びている。第2の部分17bは円環状の形状を有する。第2の部分17bは、第1の部分17a及び第3の部分17cを接続している。第1の部分17aは、筒状体3に接続されている。第3の部分17cに底部18が連ねられている。第1の部分17aの外径は、第3の部分17cの外径よりも小さい。
【0051】
ここで、保持部材6のそれぞれの部分が延びる方向に直交する方向に沿う厚みを保持部材6のそれぞれの部分の肉厚とする。保持部材6においては、バネ部17の肉厚は底部18の肉厚よりも薄い。それによって、バネ部17は底部18よりも変形し易い。これにより、振動の径方向の成分は、バネ部17のバネ性により吸収される。なお、上記のバネ部17による振動の吸収とは、圧電素子4から保持部材6に伝搬した振動の大部分をバネ部17における振動とすることができることをいう。これにより、振動を底部18まで漏洩し難くすることができる。
【0052】
加えて、底部18の肉厚が厚いため、底部18自体が変形し難い。よって、保持部材6の底部18への振動の漏洩を効果的に抑制することができる。従って、底部18が外部などに固定された場合において、振動ダンピングを効果的に抑制することができる。
【0053】
なお、バネ部17は、第1の部分17a、第2の部分17b及び第3の部分17cを含んでいなくともよい。バネ部17の軸方向Zに沿う断面形状は、例えば、直線状の形状であってもよい。
【0054】
ところで、本実施形態においては、t1>t2とされていることにより、|Δt1|>|Δt2|とされている。もっとも、本発明に係る振動装置においては、t1>t2である構成には限られない。|Δt1|>|Δt2|の関係を満たしていればよい。
【0055】
以下において、第2の実施形態に係る振動装置について説明する。第2の実施形態においては、第1の接着剤層及び第2の接着剤層のヤング率の関係が、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第2の実施形態の振動装置は第1の実施形態の振動装置1と同様の構成を有する。そのため、
図1を援用して第2の実施形態の振動装置について説明する。
【0056】
本実施形態においては、第1の接着剤層8のヤング率をY1とし、第2の接着剤層9のヤング率をY2としたときに、Y1<Y2である。これにより、|Δt1|>|Δt2|とされている。それによって、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、水滴などが付着する透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。
【0057】
第2の接着剤層9には、ガラスフリットなどを用いることが好ましい。この場合には、第2の接着剤層9のヤング率Y2を好適に大きくすることができる。他方、第1の接着剤層8には、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂を用いることができる。もっとも、第1の接着剤層8及び第2の接着剤層9の材料は特に限定されない。Y1<Y2の関係を満たしていればよい。
【0058】
図6を参照して、透光体カバー2の変位が小さくなり難いことを示す。第1の接着剤層8のヤング率Y1及び第2の接着剤層9のヤング率Y2を変化させて、透光体カバー2の最大変位量を測定した。この結果を
図6に示す。
【0059】
図6は、透光体カバーの最大変位量と接着剤層のヤング率との関係を示す図である。なお、
図6の縦軸により表す最大変位量は、接着剤層のヤング率が3GPaである場合を100%とする。
【0060】
図6に示すように、第1の接着剤層8のヤング率Y1が変化しても、透光体カバー2の最大変位量の変化は小さいことがわかる。他方、第2の接着剤層9のヤング率Y2が大きくなると、透光体カバー2の最大変位量が、大幅に大きくなっていることがわかる。よって、Y1<Y2とすることにより、透光体カバー2の最大変位量が小さくなり難い。
【0061】
図7は、第3の実施形態に係る振動装置の、第1の接着剤層及び第2の接着剤層付近を示す拡大正面断面図である。
【0062】
本実施形態においては、圧電素子24の構成、並びに圧電素子24及び透光体カバー2の算術平均粗さ(Ra)の関係が第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第3の実施形態の振動装置は第1の実施形態の振動装置1と同様の構成を有する。本明細書における算術平均粗さは、JIS B 0601:2013に基づく。
【0063】
本実施形態においては、筒状体3が金属からなる。圧電素子24においては、筒状体3を第2の電極として用いている。そのため、圧電素子24は、
図1に示す第2の電極14bを有しない。よって、筒状体3及び圧電体13が、第1の接着剤層8により接合されている。もっとも、この場合には、筒状体3と圧電体13とを電気的に接続することができる程度に、第1の接着剤層8の厚みが薄いことが好ましい。あるいは、第1の接着剤層8が導電性を有していてもよい。
【0064】
圧電素子24の、第1の接着剤層8と接している面の算術平均粗さをRa1とし、透光体カバー2の、第2の接着剤層9と接している面の算術平均粗さをRa2としたときに、Ra1>Ra2である。これにより、|Δt1|>|Δt2|とされている。それによって、第1の実施形態と同様に、水滴などが付着する透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。
【0065】
本実施形態では、圧電体13における第1の接着剤層8に接している部分の算術平均粗さが、算術平均粗さRa1である。なお、圧電素子24が、
図1に示す第2の電極14bを有する場合には、第2の電極14bにおける第1の接着剤層8に接している部分の算術平均粗さが、算術平均粗さRa1である。
【0066】
図8は、第4の実施形態に係る振動装置の正面断面図である。
【0067】
本実施形態は、振動装置31がリテーナ35を有する点、接着剤層の配置及び筒状体33の構成が、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第4の実施形態の振動装置31は第1の実施形態の振動装置1と同様の構成を有する。
【0068】
リテーナ35は略円筒状の形状を有する。リテーナ35の、軸方向Zに沿う断面は、略L字状の形状を有する。リテーナ35は内側面35c及び外側面35dを有し、かつ天板部35aを有する。天板部35aは開口部を含む。天板部35aの内周縁は、透光体カバー2の傾斜部2aに接合されている。リテーナ35の内側面35cは、筒状体33の外側面33dに接合されている。
【0069】
ここで、リテーナ35の内側面35cは、らせん状の凹凸を有する。同様に、筒状体33の外側面33dも、らせん状の凹凸を有する。これにより、筒状体33はねじに相当し、リテーナ35はねじ受けに相当する。本実施形態においては、筒状体33の外側面33dとリテーナ35の内側面35cとが嵌合している。さらに、筒状体33の第2の開口端面33bと、リテーナ35の天板部35aとにより、透光体カバー2が挟まれている。このように、筒状体33及びリテーナ35により、透光体カバー2が固定されている。
【0070】
加えて、リテーナ35の天板部35aの内周縁及び透光体カバー2の傾斜部2aが、接着剤層37Aにより接合されている。筒状体33の外側面33d及びリテーナ35の内側面35cが、接着剤層37Bにより接合されている。
【0071】
ところで、筒状体33の第2の開口端面33bは溝部33gを有する。第2の開口端面33bは、溝部33gにおいては、透光体カバー2と接合していない。本実施形態においては、第2の接着剤層は2箇所に設けられている。より具体的には、第2の接着剤層39Aは、溝部33gの径方向内側に設けられている。第2の接着剤層39Bは、溝部33gの径方向外側に設けられている。
【0072】
上記のように、筒状体33及びリテーナ35は、ねじ及びねじ受けに相当する。それによって、筒状体33及びリテーナ35を、ねじを締めるように固定することができる。このとき、筒状体33の第2の開口端面33bとリテーナ35の天板部35aとの間に、軸方向Zにおいて圧縮応力が加わる。ここで、振動装置31では、筒状体33の第2の開口端面33bと、リテーナ35の天板部35aとにより透光体カバー2が挟まれている。さらに、筒状体33及び透光体カバー2の間には、第2の接着剤層39A及び第2の接着剤層39Bが配置されている。よって、リテーナ35により、第2の接着剤層39A及び第2の接着剤層39Bに圧縮応力が印加されることとなる。これにより、第2の接着剤層39A及び第2の接着剤層39Bの厚みt2を、第1の接着剤層8の厚みt1よりも、より一層確実に薄くすることができる。
【0073】
本実施形態においては、t1>t2とされていることにより、|Δt1|>|Δt2|とされている。それによって、第1の実施形態と同様に、水滴などが付着する透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。
【0074】
図9は、第5の実施形態に係る振動装置の、第1の接着剤層及び第2の接着剤層付近を示す拡大正面断面図である。
【0075】
本実施形態は、第2の接着剤層49及び筒状体43の構成が第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の振動装置41は第1の実施形態の振動装置1と同様の構成を有する。
【0076】
筒状体43の第2の開口端面43bは、傾斜部43hと、非傾斜部43iとを有する。傾斜部43hは、径方向に対して傾斜している部分である。第2の開口端面43bは、傾斜部43hにおいて、径方向外側に向かうにつれて第1の開口端面3aに近づくように傾斜している。一方で、非傾斜部43iは、径方向と平行な部分である。非傾斜部43iに壁部3fが設けられている。傾斜部43hは、壁部3fよりも径方向内側に位置する。より具体的には、傾斜部43hの径方向内側の端縁部は、内側面3cに接続されている。傾斜部43hの径方向外側の端縁部は、非傾斜部43iにおける、壁部3fが設けられている部分に接続されている。非傾斜部43iの径方向外側の端縁部は、外側面3dに接続されている。
【0077】
第2の接着剤層49は、筒状体43における第2の開口端面43bの傾斜部43h上に設けられている。第2の接着剤層49は、内側端縁部49c及び外側端縁部49dを有する。内側端縁部49cは、径方向内側に位置する端縁部である。外側端縁部49dは、径方向外側に位置する端縁部である。本実施形態においては、径方向内側から径方向外側に向かうにつれて、第2の接着剤層49の厚みは厚くなっている。第2の接着剤層49の内側端縁部49cの厚みをt2iとし、外側端縁部49dの厚みをt2oとしたときに、t2i<t2oである。
【0078】
本実施形態においては、t2i<t2oとされていることにより、|Δt1|>|Δt2|とされている。それによって、第1の実施形態と同様に、水滴などが付着する透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。
【0079】
もっとも、t2i<t2oの関係には限られず、|Δt1|>|Δt2|の関係を満たしていればよい。例えば、第1の接着剤層8及び第2の接着剤層49のヤング率の関係が第2の実施形態と同様であってもよい。あるいは、圧電素子4及び透光体カバー2の算術平均粗さの関係が第3の実施形態と同様であってもよい。
【0080】
振動装置41においては、透光体カバー2の変位量は、中央部において最も大きい。なお、透光体カバー2の変位量は、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる。これに対して、第2の接着剤層49の厚みは、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて薄くなっている。そのため、第2の接着剤層49における、透光体カバー2の変位量が大きい部分と接している部分の厚みは薄い。一方で、第2の接着剤層49における、透光体カバー2の変位量が小さい部分と接している部分の厚みは厚い。それによって、透光体カバー2の振動効率を効果的に高めることができる。この効果の詳細を、
図10を参照して説明する。
【0081】
第2の接着剤層49における内側端縁部49cの厚みt2i及び外側端縁部49dの厚みt2oを変化させて、透光体カバー2の振動の振幅を測定した。この結果を
図10に示す。
【0082】
図10は、透光体カバーの振動の振幅と、第2の接着剤層の厚みとの関係を示す図である。なお、
図10の縦軸により表す振動の振幅は、基準の振幅により規格化された値である。
【0083】
図10に示すように、第2の接着剤層49の外側端縁部49dの厚みt2oが変化しても、透光体カバー2の振動の振幅の変化は小さいことがわかる。他方、内側端縁部49cの厚みt2iが厚くなると、透光体カバー2の振動の振幅が、大幅に小さくなっていることがわかる。本実施形態においては、t2i<t2oである。よって、透光体カバー2の振動効率を効果的に高めることができる。加えて、第2の接着剤層49の内側端縁部49cの厚みt2iを薄くする一方で、外側端縁部49dの厚みt2oを厚くすることができるため、筒状体43及び透光体カバー2の接合力を好適に高めることができる。
【0084】
図11は、第5の実施形態に係るイメージングデバイスの斜視図である。
図12は、
図11中のI-I線に沿う断面図である。
【0085】
図11及び
図12に示すように、光学検出装置としてのイメージングデバイス50は、第4の実施形態の振動装置31と、ケース部材57とを有する。なお、イメージングデバイス50の振動装置は、第4の実施形態の振動装置31には限られない。イメージングデバイス50の振動装置は、例えば、第1~第3の実施形態のうちいずれかの振動装置であってもよい。該振動装置は、本発明に係る振動装置であればよい。
【0086】
図12に示すように、ケース部材57は、天板部57aと、壁部57bと、底板部57cとを有する。壁部57bは、天板部57a及び底板部57cに接続されている。天板部57aは開口部57eを含む。振動装置31の一部が、開口部57eからケース部材57の外側に突出している。より具体的には、振動装置31の透光体カバー2は、ケース部材57の外側に位置する。
【0087】
本実施形態では、振動装置31は、保持部材6の底部18において、ケース部材57に固定されている。それによって、振動装置31の振動が、ケース部材57に漏洩し難い。なお、より具体的には、ケース部材57は配置部57dを有する。配置部57dは、ケース部材57の内部において、壁部57bから軸方向Zと直交する方向に延びている。配置部57d及び天板部57aにより、保持部材6の底部18が挟まれている。さらに、ねじ留めされることにより、底部18がケース部材57に固定されている。もっとも、振動装置31及びケース部材57の固定の形態は上記に限定されない。
【0088】
さらに、
図12に示すように、イメージングデバイス50は撮像素子52を有する。撮像素子52は、振動装置31及びケース部材57により囲まれた内部空間内に配置されている。より具体的には、ケース部材57の底板部57c上に、脚部53が設けられている。脚部53上に基板54が設けられている。基板54上に上記撮像素子52が配置されている。もっとも、ケース部材57内の構成は上記に限定されない。
【0089】
振動装置31及びケース部材57の内部空間内には、撮像素子52以外の素子が配置されていてもよい。例えば、ヒータ、撮像素子52の駆動回路、または圧電素子4の制御回路が配置されていてもよい。なお、制御回路は、圧電素子4を共振周波数において振動させる回路である。
【0090】
撮像素子52としては、例えば、可視領域から遠赤外領域のいずれかの波長の光を受光する、CMOS、CCD、ボロメーターやサーモパイルなどを挙げることができる。イメージングデバイス50としては、例えば、カメラ、RadarやLIDARデバイスなどを挙げることができる。
【0091】
なお、振動装置31及びケース部材57の内部空間内には、撮像素子52以外の、エネルギー線を光学的に検出する光学検出素子が配置されていてもよい。検出するエネルギー線としては、例えば、電磁波や赤外線などの活性エネルギー線であってもよい。光学検出素子の検出領域は、透光体カバー2に含まれる。
図12に示すイメージングデバイス50においては、検出領域としての、撮像素子52の視野が透光体カバー2に含まれる。
【0092】
イメージングデバイス50は、第4の実施形態の振動装置31を有するため、水滴などが付着する透光体カバー2の変位を小さくせずして、各部材に加わる応力を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0093】
1…振動装置
2…透光体カバー
2a…傾斜部
3…筒状体
3a,3b…第1,第2の開口端面
3c…内側面
3d…外側面
3e…開口部
3f…壁部
4…圧電素子
6…保持部材
8,9…第1,第2の接着剤層
8a,9a…第1,第2の樹脂層
8b,9b…第1,第2のスペーサ
13…圧電体
13a,13b…第1,第2の主面
14a,14b…第1,第2の電極
17…バネ部
17a,17b,17c…第1,第2,第3の部分
18…底部
24…圧電素子
31…振動装置
33…筒状体
33b…第2の開口端面
33d…外側面
33g…溝部
35…リテーナ
35a…天板部
35c…内側面
35d…外側面
37A,37B…接着剤層
39A,39B…第2の接着剤層
41…振動装置
43…筒状体
43b…第2の開口端面
43h…傾斜部
43i…非傾斜部
49…第2の接着剤層
49c…内側端縁部
49d…外側端縁部
50…イメージングデバイス
52…撮像素子
53…脚部
54…基板
57…ケース部材
57a…天板部
57b…壁部
57c…底板部
57d…配置部
57e…開口部