(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】応力発光測定装置、応力発光測定方法および応力発光測定システム
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
G01L1/00 B
(21)【出願番号】P 2021527345
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2020005052
(87)【国際公開番号】W WO2020261631
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2019117373
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠山 智生
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-78693(JP,A)
【文献】特開2018-163084(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164212(WO,A1)
【文献】特開2004-43656(JP,A)
【文献】米国特許第6601456(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
G01N 3/00- 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力発光体の発光を測定する応力発光測定装置であって、
前記応力発光体は、フレキシブル性を有するサンプルの少なくとも所定領域に配置されており、
前記サンプルを支持するように構成されたホルダと、
前記応力発光体に励起光を照射するように構成された光源と、
前記ホルダを第1のホルダ位置および第2のホルダ位置の間で周期的に移動させることにより、前記サンプルに繰り返し応力を印加するように構成された第1ドライバと、
前記繰り返し応力による前記応力発光体の応力発光を撮像するように構成されたカメラと、
前記カメラの撮像により得られた画像データに基づいて、前記繰り返し応力に対する前記応力発光体の発光強度の推移を測定および解析するように構成されたコントローラと、
前記コントローラに通信接続されるディスプレイとを備え、
前記コントローラは、前記繰り返し応力の各々または所定回数ごとに、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における前記所定領域内の発光強度に基づく値の分布を示す分布画像を生成し、かつ、
生成された複数の前記分布画像の中から選択された第1の分布画像および第2の分布画像を差分して差分画像を生成して前記ディスプレイに表示する、応力発光測定装置。
【請求項2】
前記コントローラは、1回の応力発光の測定時間における前記画像データを測定セットとして、前記繰り返し応力の印加中に複数の測定セットを取得し、かつ、
前記複数の測定セット間で共通の前記特定時刻における前記複数の分布画像を生成する、請求項1に記載の応力発光測定装置。
【請求項3】
前記複数の分布画像の中から前記第1の分布画像および前記第2の分布画像の選択を受け付けるとともに、前記特定時刻の設定を受け付ける操作部をさらに備える、請求項1または2に記載の応力発光測定装置。
【請求項4】
前記カメラのフォーカス位置を変更するように構成された第2ドライバをさらに備え、
前記コントローラは、前記カメラのフォーカス位置を前記所定領域の少なくとも1点に維持するように、前記第1ドライバおよび前記第2ドライバの少なくとも一方を制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の応力発光測定装置。
【請求項5】
応力発光体の発光を測定する応力発光測定方法であって、
前記応力発光体は、フレキシブル性を有するサンプルの少なくとも所定領域に配置されており、
前記サンプルに繰り返し応力を印加するステップと、
前記応力発光体に励起光を照射するステップと、
前記繰り返し応力による前記応力発光体の発光を撮像するステップと、
前記撮像するステップにより得られた画像データに基づいて、前記繰り返し応力の各々または所定回数ごとに、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における前記所定領域内の発光強度に基づく値の分布を示す分布画像を生成するステップと、
生成された複数の前記分布画像の中から選択された第1の分布画像および第2の分布画像を差分して差分画像を生成してディスプレイに表示するステップとを備える、応力発光測定方法。
【請求項6】
応力発光体の発光を測定する応力発光測定システムであって、
複数のプロセッサと、
メモリと、
前記メモリに格納され、前記複数のプロセッサのうちの少なくとも1つのプロセッサによって実行される少なくとも1つのプログラムとを備え、
前記応力発光体は、フレキシブル性を有するサンプルの少なくとも所定領域に配置されており、
前記少なくとも1つのプログラムは、
前記サンプルに繰り返し応力を印加するステップと、
前記応力発光体に励起光を照射するステップと、
前記繰り返し応力による前記応力発光体の発光を撮像するステップと、
前記撮像するステップにより得られた画像データに基づいて、前記繰り返し応力の各々または所定回数ごとに、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における前記所定領域内の発光強度に基づく値の分布を示す分布画像を生成するステップと、
生成された複数の前記分布画像の中から選択された第1の分布画像および第2の分布画像を差分して差分画像を生成してディスプレイに表示するステップとを前記少なくとも1つのプロセッサに実行させる、応力発光測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、応力発光測定装置、応力発光測定方法および応力発光測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-75477号公報(特許文献1)には、応力発光体の発光強度を計測し評価する応力発光評価装置が開示される。特許文献1では、外部から荷重がランダムに印加される構造体(たとえば建物、橋梁などの屋外の大型構造体)の欠陥を検知するために、応力発光評価装置が用いられる。応力発光評価装置は、サンプルとなる構造体の表面に配置された応力発光体にパルス光を照射することで、応力発光体を発光状態に遷移させる。応力発光評価装置では、応力発光体に印加された荷重による発光強度を検知する検知部として、撮像装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえばフレキシブルシートなどのように、対象物がフレキシブル性を有する場合、対象物に応力を印加すると、対象物の形状が自在に変化する。そのため、このような対象物の表面に配置された応力発光体も、印加される応力に応じてその形状が自在に変化し、その発光強度も変化することになる。
【0005】
このような対象物に繰り返し応力を発生させると、対象物の内部に生じる歪みが次第に大きくなり、最終的に対象物が破断などの破壊に至る場合がある。対象物の耐久性試験では、通常、対象物に繰り返し応力を与え、対象物が破壊に至るまでの繰り返し応力の回数を測定する。この耐久性試験において、繰り返し応力による応力発光体の応力発光の遷移を測定し、測定結果を解析することができれば、繰り返し応力によって対象物に生じる歪みを定量的に分析することが可能となる。特に、繰り返し応力の回数を重ねることで、応力発光体の発光分布がどのように変化するのかを解析することができれば、発光分布から対象物が破壊に至る兆候を捉えることが可能となる。
【0006】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、フレキシブル性を有する対象物に繰り返し応力を印加したときの応力発光体の発光分布の変化を解析することができる応力発光測定装置、応力発光測定方法および応力発光測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る応力発光測定装置は、フレキシブル性を有するサンプルの少なくとも所定領域に配置された応力発光体の発光を測定する。応力発光測定装置は、サンプルを支持するように構成されたホルダと、応力発光体に励起光を照射するように構成された光源と、ホルダを第1のホルダ位置および第2のホルダ位置の間で周期的に移動させることにより、サンプルに繰り返し応力を印加するように構成された第1ドライバと、繰り返し応力による応力発光体の発光を撮像するように構成されたカメラと、カメラの撮像により得られた画像データに基づいて、繰り返し応力に対する応力発光体の発光強度の推移を測定および解析するように構成されたコントローラと、コントローラに通信接続されるディスプレイとを備える。コントローラは、繰り返し応力の各々または所定回数ごとに、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における所定領域内の発光強度の分布を示す分布画像を生成する。コントローラは、生成された複数の分布画像の中から選択された第1の分布画像および第2の分布画像を差分して差分画像を生成してディスプレイに表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレキシブル性を有する対象物に繰り返し応力を印加したときの応力発光体の応力発光を測定かつ解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る応力発光測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】コントローラの機能的構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】第2ドライバによるカメラの移動制御を説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係る応力発光測定装置を用いた応力発光測定方法の処理手順を説明するフローチャートである。
【
図5】サンプルの所定領域における発光強度の分布を示す画像の一例である。
【
図6】応力発光測定装置おける光源、カメラおよびホルダの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図7】応力発光測定処理の実行中のディスプレイの表示画面の第1の例を模式的に示す図である。
【
図8】応力発光測定処理の実行中のディスプレイの表示画面の第2の例を模式的に示す図である。
【
図9】解析処理の実行時におけるディスプレイの表示画面の第1の例を模式的に示す図である。
【
図10】応力発光測定装置における解析処理の手順を説明するための図である。
【
図11】解析処理の実行時のディスプレイの表示画面の第2の例を模式的に示す図である。
【
図12】1次元強度プロファイルの作成方法を説明するための図である。
【
図13】解析処理の実行時のディスプレイの表示画面の第3の例を模式的に示す図である。
【
図14】1次元強度プロファイルのピークの発光強度の測定セット間の遷移を示すグラフである。
【
図15】1次元強度プロファイルのピークの位置の測定セット間の遷移を示すグラフである。
【
図16】差分画像の生成方法を説明するための図である。
【
図17】差分画像の生成方法を説明するための図である。
【
図18】解析処理の実行時のディスプレイの表示画面の第4の例を模式的に示す図である。
【
図19】実施の形態に係る応力発光測定装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0011】
(応力発光測定装置の構成)
図1は、実施の形態に係る応力発光測定装置の全体構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る応力発光測定装置100は、応力発光体の発光現象を利用して、フレキシブル性を有する対象物に印加される応力を測定する装置である。応力発光測定装置100は、対象物の応力に対する耐久性を試験するために用いることができる。以下の説明では、応力発光測定装置100を単に「装置100」とも称する。
【0012】
フレキシブル性を有する対象物は、たとえばフレキシブルシートまたはフレキシブルファイバなどである。対象物は、ガラスまたは樹脂などから形成される。フレキシブルシートは、たとえば、スマートフォンまたはタブレット等の通信端末のフレキシブルディスプレイまたはウェアラブルデバイスの一部分を構成することができる。フレキシブルファイバは、たとえば光ファイバケーブルの一部分を構成することができる。
【0013】
図1の例では、対象物は矩形状のフレキシブルシートであり、第1の面Saと、第1の面Saと反対側の第2の面Sbとを有する。測定対象(以下、単に「サンプル」とも称する)Sとなる対象物の第1の面Saの所定領域は、応力発光体からなる発光膜で被覆されている。「所定領域」は、曲げ応力を印加したときの対象物の曲げの中心部分を含むように設定することができる。
【0014】
応力発光体は、外部からの機械的な刺激によって発光する材料であり、従来公知のものを用いることができる。応力発光体は、外部から印加される変形エネルギーによって発光とするという性質を有しており、その発光強度は変形エネルギーに応じて変化する。応力発光体は、たとえば、アルミン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、チタン酸バリウム、ケイ酸塩およびリン酸塩からなる群から選択された物質を含む。
【0015】
発光膜は、たとえば、応力発光体を含有する樹脂材料をサンプルSとなる対象物の第1の面Saの所定領域に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。発光膜を形成する方法としては、スプレー法またはスクリーン印刷などを用いることができる。測定時には、発光膜に励起光が照射されることにより、応力発光体が励起状態とされる。
【0016】
ここで、対象物を曲げると、対象物には曲げ応力が印加される。具体的には、第1の面Saを内側にして対象物を曲げた場合、第1の面Saには圧縮応力が印加され、第2の面Sbには引っ張り応力が印加される。一方、第2の面Sbを内側にして対象物を曲げた場合、第2の面Sbには圧縮応力が印加され、第1の面Saには引っ張り応力が印加される。このように対象物に曲げ応力が印加されると、対象物の内部(特に、曲げの中心部分)には歪みが生じる。この歪みが大きくなると、対象物が破断などの破壊に至る可能性がある。
【0017】
図1に示す装置100は、サンプルSに曲げ応力を印加するための「応力印加機構」を有している。応力印加機構による曲げ応力の印加時には、サンプルSの第1の面Saを覆っている発光膜にも応力が印加されるため、発光膜に含有される応力発光体が発光する。装置100は、少なくとも曲げ応力の印加時における応力発光体の発光状態を測定するように構成される。
【0018】
具体的には、
図1を参照して、装置100は、サンプルSを支持するホルダ10と、光源30と、カメラ40と、第1ドライバ20と、第2ドライバ42と、第3ドライバ32と、コントローラ50とを備える。
【0019】
ホルダ10は、サンプルSの少なくとも2点に接触することにより、サンプルSを支持するように構成される。
図1の例では、ホルダ10は、サンプルSの互いに対向する第1の端部S1および第2の端部S2を支持するように構成される。
【0020】
具体的には、ホルダ10は、固定壁2と、移動壁3と、接続部材4,5とを有する。
図1では、ホルダ10を載置した状態において、幅方向をX軸方向とし、奥行き方向をY軸方向とし、高さ方向をZ軸方向とする。
【0021】
固定壁2および移動壁3は、X軸方向に互いに対向するように設置される。固定壁2はホルダ10の底面に固定される。一方、移動壁3は、第1ドライバ20から外力を受けて、Z軸方向(紙面上下方向)に移動することが可能に構成される。
【0022】
サンプルSの第1の端部S1は、接続部材4によって固定壁2に接続されている。サンプルS1の第2の端部S2は、接続部材5によって移動壁3に接続されている。サンプルS1はU字形状に曲げられた状態でホルダ10にセットされる。なお、固定壁2および移動壁3のX軸方向における間隔を変更することによって、サンプルSの曲げ半径を調整することができる。
【0023】
第1ドライバ20は、ホルダ10に接続され、移動壁3を「第1のホルダ位置」と「第2のホルダ位置」との間で移動させることにより、第1の端部S1および第2の端部S2の相対位置を変更可能に構成される。第1ドライバ20は、移動壁3に接続され、サンプルSの第2の端部S2をZ軸方向に往復移動させるアクチュエータ21を有する。
【0024】
移動壁3が第1のホルダ位置にあるとき、サンプルSは「第1の曲げ状態」となり、移動壁3が第2のホルダ位置にあるとき、サンプルSは「第2の曲げ状態」となる。第1ドライバ20およびホルダ10によって移動壁3を第1のホルダ位置と第2のホルダ位置との間で移動させることにより、サンプルSを第1の曲げ状態と第2の曲げ状態との間で遷移させることができる。ホルダ10および第1ドライバ20は「応力印加機構」を構成する。
【0025】
第1ドライバ20は、アクチュエータ21を周期的に動作させることで、移動壁3を周期的に移動させることができる。具体的には、第1ドライバ20は、ホルダ10の1動作周期の前半で、移動壁3を第1のホルダ位置から第2のホルダ位置に移動させる。また、第1ドライバ20は、ホルダ10の1動作周期の後半で、移動壁3を第2のホルダ位置から第1のホルダ位置に移動させることができる。
【0026】
サンプルSは、第1の面Saが上側となるようにホルダ10によって支持される。上述したように、第1の面Saの所定領域は発光膜で被覆されている。光源30は、サンプルSのZ軸方向の上方に配置されており、サンプルSの第1の面Sa上の発光膜に対して励起光を照射するように構成される。励起光を受けて、発光膜に含有される応力発光体は発光状態に遷移する。励起光は、たとえば、紫外線または近赤外線である。なお、
図1の例では、サンプルSの第1の面Saに対して2方向から励起光を照射する構成としたが、光源30は1方向または3方向以上からサンプルSに対して励起光を照射する構成としてもよい。
【0027】
第3ドライバ32は、光源30を駆動するための電力を供給する。第3ドライバ32は、コントローラ50から受ける指令に応じて光源30に供給する電力を制御することにより、光源30から照射される励起光の光量および励起光の照射時間などを制御することができる。
【0028】
カメラ40は、サンプルSのZ軸方向の上方に、第1の面Saの少なくとも所定領域を撮像視野に含むように配置される。具体的には、カメラ40は、フォーカス位置が第1の面Saの所定領域内の少なくとも1点に位置するように配置される。所定領域内の少なくとも1点は、サンプルSの曲げの中心部分に位置することが好ましい。
【0029】
カメラ40は、レンズなどの光学系および撮像素子を含む。撮像素子は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどにより実現される。撮像素子は、光学系を介して第1の面Saから入射される光を電気信号に変換することによって撮像画像を生成する。
【0030】
カメラ40は、少なくともサンプルSに対する応力印加時において、第1の面Sa上の発光膜の発光を撮像するように構成される。カメラ40の撮像により生成された画像データはコントローラ50へ送信される。
【0031】
第2ドライバ42は、コントローラ50から受ける指令に応じて、カメラ40のフォーカス位置を変更可能に構成される。具体的には、第2ドライバ42は、カメラ40をZ軸方向に沿って移動させることにより、カメラ40のフォーカス位置を調整することができる。たとえば、第2ドライバ42は、カメラ40をZ軸方向に移動させる送りねじを回転させるモータと、モータを駆動するモータドライバとを有する。送りねじがモータによって回転駆動されることにより、カメラ40は、Z軸向の所定範囲内の指定された位置に位置決めされる。また、第2ドライバ42は、カメラ40の位置を示す位置情報をコントローラ50へ送信する。
【0032】
コントローラ50は、装置100全体を制御する。コントローラ50は、主な構成要素として、プロセッサ501と、メモリ502と、入出力インターフェイス(I/F)503と、通信I/F504とを有する。これらの各部は、図示しないバスを介して互いに通信可能に接続される。
【0033】
プロセッサ501は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)などの演算処理部である。プロセッサ501は、メモリ502に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、装置100の各部の動作を制御する。具体的には、プロセッサ501は、当該プログラムを実行することによって、後述する装置100の処理の各々を実現する。なお、
図1の例では、プロセッサが単数である構成を例示しているが、コントローラ50は複数のプロセッサを有する構成としてもよい。
【0034】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって実現される。メモリ502は、プロセッサ501によって実行されるプログラム、またはプロセッサ501によって用いられるデータなどを記憶する。
【0035】
入出力I/F503は、プロセッサ501と、第1ドライバ20、第3ドライバ32、カメラ40および第2ドライバ42との間で各種データをやり取りするためのインターフェイスである。
【0036】
通信I/F504は、装置100と他の装置との間で各種データをやり取りするための通信インターフェイスであり、アダプタまたはコネクタなどによって実現される。なお、通信方式は、無線LAN(Local Area Network)などによる無線通信方式であってもよいし、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信方式であってもよい。
【0037】
コントローラ50には、ディスプレイ60および操作部70が接続される。ディスプレイ60は、画像を表示可能な液晶パネルなどで構成される。操作部70は、装置100に対するユーザの操作入力を受け付ける。操作部70は、典型的には、タッチパネル、キーボード、マウスなどで構成される。
【0038】
コントローラ50は、第1ドライバ20、第3ドライバ32、カメラ40および第2ドライバ42と通信接続されている。コントローラ50と第1ドライバ20、第3ドライバ32、カメラ40および第2ドライバ42との間の通信は、無線通信で実現されてもよいし、有線通信で実現されてもよい。
【0039】
(コントローラ50の機能的構成)
図2は、コントローラ50の機能的構成を説明するためのブロック図である。
【0040】
図2を参照して、コントローラ50は、応力制御部51、光源制御部52、撮像制御部53、測定制御部54、データ取得部55、およびデータ処理部56を有する。これらは、プロセッサ501がメモリ502に格納されたプログラムを実行することに基づいて実現される機能ブロックである。
【0041】
応力制御部51は、第1ドライバ20の動作を制御する。具体的には、応力制御部51は、予め設定されている測定条件に従って、第1ドライバ20の動作速度および動作時間などを制御する。第1ドライバ20の動作速度および動作時間を制御することによって、ホルダ10における移動壁3(
図1参照)の移動速度、移動時間および移動距離などを調整することができる。
【0042】
光源制御部52は、第3ドライバ32による光源30の駆動を制御する。具体的には、光源制御部52は、予め設定されている測定条件に基づいて、光源30に供給する電力の大きさおよび光源30への電力の供給時間などを指示するための指令を生成し、生成した指令を第3ドライバ32へ出力する。第3ドライバ32が当該指令に従って光源30に供給する電力を制御することにより、光源30から照射される励起光の光量および励起光の照射時間などを調整することができる。
【0043】
撮像制御部53は、第2ドライバ42によるカメラ40の移動を制御する。具体的には、撮像制御部53は、予め設定されている測定条件および第2ドライバ42から入力されるカメラ40の位置情報に基づいて、サンプルSの所定領域の移動に追従してカメラ40を移動させるための指令を生成する。撮像制御部53は、生成した指令を第2ドライバ42へ出力する。第2ドライバ42が当該指令に従ってカメラ40を移動させることにより、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域の少なくとも1点に維持することができる。
【0044】
撮像制御部53はさらに、カメラ40による撮像を制御する。具体的には、撮像制御部53は、予め設定されている測定条件に従って、少なくとも応力印加時における発光膜の発光を撮像するようにカメラ40を制御する。撮像に関する測定条件は、カメラ40のフレームレートを含む。
【0045】
データ取得部55は、カメラ40の撮像により生成された画像データを取得し、取得した画像データをデータ処理部56へ転送する。
【0046】
データ処理部56は、カメラ40の撮像により得られた画像データに対して公知の画像処理を施すことにより、サンプルSの第1の面Saにおける応力の分布を測定する。データ処理部56は、たとえば、第1の面Saにおける応力の分布を示す画像を生成する。データ処理部56は、カメラ40による撮像画像および、第1の面Saにおける応力の分布を示す画像を含む測定結果をディスプレイ60に表示することができる。
【0047】
測定制御部54は、応力制御部51、光源制御部52、撮像制御部53、データ取得部55およびデータ処理部56を統括的に制御する。具体的には、測定制御部54は、操作部70に入力される測定条件およびサンプルSとなるデバイスの情報などに基づいて、各部に対して制御指令を与える。
【0048】
(応力発光測定処理)
次に、装置100による応力発光測定処理について説明する。
【0049】
最初に、装置100の測定原理について説明する。
図1に示すように、サンプルSはU字形状に曲げられた状態でホルダ10にセットされる。サンプルSのX軸方向の第1および第2の端部S1,S2は、ホルダ10の固定壁2および移動壁3によってそれぞれ支持されている。サンプルSの第1の面Saの所定領域上には発光膜が配置されている。光源30は、発光膜に励起光を照射することにより、発光膜LFに含有される応力発光体を励起させる。
【0050】
次に、第1ドライバ20によって移動壁3をZ軸方向に往復移動させることにより、サンプルSを第1の曲げ状態および第2の曲げ状態の間で遷移させる。カメラ40は、サンプルSの所定領域(曲げの中心部分を含む)を撮像する。すなわち、カメラ40は発光膜LFにおける応力発光体の発光を撮像する。
【0051】
なお、上述した移動壁3の移動を一定周期(第1ドライバ20の動作周期)で繰り返し実行することにより、サンプルSに対して繰り返し応力を印加することができる。そして、この繰り返し動作中における応力発光体の発光をカメラ40で撮像することにより、サンプルSにかかる繰り返し応力に対する耐久性を評価することができる。
【0052】
ここで、ホルダ10の移動壁3をZ軸方向に移動させると、サンプルSの第2の端部S2がZ軸方向に移動するため、サンプルSの曲げの中心部分もZ軸方向に移動する。具体的には、サンプルSの第2端部S2をZ軸方向下方に移動させると、曲げの中心部分は、Z軸方向に沿ってカメラ40から離れる方向に移動する。一方、サンプルSの第2端部S2をZ軸方向上方に移動させると、曲げの中心部分は、Z軸方向に沿ってカメラ40に近づく方向に移動する。
【0053】
そのため、カメラ40の位置を固定した場合には、サンプルSの所定領域の移動に応じて、カメラ40と当該所定領域との相対位置が変動する。この結果、カメラ40と所定領域の少なくとも1点との間の距離も変動することになる。このときのカメラ40のフォーカス位置が固定されているため、カメラ40と当該少なくとも1点との間の距離が変動すると、カメラ40は当該少なくとも1点にフォーカスを合わせることができず、結果的に当該少なくとも1点に合焦した画像を得ることが困難となることが懸念される。
【0054】
そこで、コントローラ50は、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域の少なくとも1点に維持するように、第1ドライバ20および第2ドライバ42の少なくとも一方を制御するように構成される。
【0055】
このような制御の一態様として、本実施の形態では、コントローラ50は、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域の少なくとも1点に維持するように、第2ドライバ42を制御する。具体的には、第2ドライバ42は、コントローラ50から受ける指令に従って、サンプルSの所定領域の移動に応じて、カメラ40を移動させることにより、カメラ40のフォーカス位置を当該所定領域内の少なくとも1点に維持するように構成される。
【0056】
(カメラ40の移動制御)
以下、
図3を用いて、第2ドライバ42によるカメラ40の移動制御について説明する。
【0057】
図3は、サンプルSおよびカメラ40の位置関係を説明するための図である。
図3において、Z0はサンプルSの第1の端部S1のZ座標を示し、Z1,Z2はサンプルSの第2の端部S2のZ座標を示す。サンプルSの第1の端部S1は固定端であり、第2の端部S2は自由端である。
【0058】
図3では、サンプルSの第2の端部S2(自由端)のZ軸方向の移動に伴って、サンプルSの所定領域(曲げの中心部分を含む)における1点(図中の点R)もZ軸方向に移動する。第2ドライバ42は、サンプルSの所定領域内の点Rの移動に応じて、カメラ40をZ軸方向に移動させる。具体的には、第2ドライバ42は、カメラ40の位置(点C)のZ座標とサンプルSの所定領域内の点RのZ座標との間の距離Dが所定距離を保つように、カメラ40をZ軸方向に移動させる。
図3の例では、サンプルSの第2の端部S2のZ座標がZ1からZ2に遷移すると、カメラ40の位置(点C)のZ座標はZ3からZ4に遷移する。所定距離は、カメラ40のフォーカス位置に応じて決められる。
【0059】
図3の例では、第2の端部S2の位置Z1は、移動壁3の「第1のホルダ位置」に対応しており、サンプルSを「第1の曲げ状態」とする。また、第2の端部S2の位置Z1に対応するカメラ40の位置Z3は「第1のカメラ位置」に対応する。
【0060】
第2の端部S2の位置Z2は、移動壁3の「第2のホルダ位置」に対応しており、サンプルSを「第2の曲げ状態」とする。また、第2の端部S2の位置Z2に対応するカメラ40の位置Z4は「第2のカメラ位置」に対応する。
【0061】
これによると、サンプルSへの曲げ応力の印加時において、ホルダ10の移動壁3の移動に連動してカメラ40を第1のカメラ位置から第2のカメラ位置に移動させることにより、カメラ40のフォーカス位置を常にサンプルSの所定領域の点Rに合焦させることができる。したがって、サンプルSが曲げられているときに、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域の少なくとも1点に合焦させることができる。これにより、カメラ40は、所定領域の発光を精度良く撮像することができるため、当該所定領域に印加される曲げ応力を精度良く測定することが可能となる。
【0062】
(応力発光測定方法)
図4は、装置100を用いた応力発光測定方法の処理手順を説明するフローチャートである。
【0063】
図4を参照して、ステップS10では、サンプルSとなるデバイスが準備される。上述したように、デバイスは、たとえば、フレキシブルシートまたはフレキシブルファイバである。デバイスがフレキシブルシートである場合、フレキシブルシートの第1の面Sa上には発光膜が形成される。発光膜は、たとえば、応力発光体を含有する樹脂材料をサンプルSの第1の面Saの所定領域に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。発光膜を形成する方法としては、スプレー法またはスクリーン印刷などを用いることができる。
【0064】
ステップS20では、サンプルSがホルダ10(
図1参照)にセットされる。ホルダ10は、サンプルSの少なくとも2点を支持するように構成される。
図1の例では、ホルダ10は、固定壁2および移動壁3によって、サンプルSの互いに対向する第1の端部S1および第2の端部S2をそれぞれ支持する。
【0065】
ステップS30では、コントローラ50は、サンプルSの第1の面Saに対して、光源30から励起光を照射する。サンプルSの第1の面Saの所定領域に配置された発光膜に励起光を照射することにより、発光膜に含有される応力発光体が励起状態とされる。
【0066】
ステップS40では、コントローラ50は、サンプルSに曲げ応力を印加する。
図1の例では、コントローラ50は、第1ドライバ20が有するアクチュエータ21を駆動することにより、ホルダ10の移動壁3を第1のホルダ位置から第2のホルダ位置に移動させることにより、サンプルSを第1の曲げ状態から第2の曲げ状態に遷移させる。これにより、サンプルSおよび発光膜には曲げ応力が印加される。
【0067】
ステップS50では、コントローラ50は、サンプルSの第1の面Sa上の発光膜に含有される応力発光体の発光をカメラ40により撮像する。
【0068】
ステップS60では、コントローラ50は、カメラ40の撮像による画像データに公知の画像処理を施すことにより、サンプルSの第1の面Saの所定領域における発光強度の分布を測定する。コントローラ50は、カメラ40による撮像画像、および、測定された発光強度の分布を示す画像をディスプレイ60(
図1参照)に表示することができる。
【0069】
図5は、サンプルSの所定領域における発光強度の分布を示す画像の一例である。
図5に示す画像Pは、発光強度の強さを2次元平面上に色で表現したものである。
図5の画像Pは「カラーマップ」とも称される。
【0070】
図5の右側には、発光強度の強さに応じて割り当てられる色の範囲を示すカラーバーが示されている。カラーバーは、発光強度の強さの最大値「強」と最小値「弱」との間で、複数のセグメントに分割されており、複数のセグメント間で互いに異なる色が設定されている。
図5に示される画像Pでは、このカラーバーにしたがって、発光強度の強さに応じて色分け表示される。
【0071】
なお、
図5では、発光強度の強さを色で表現したカラーマップを例示したが、コントローラ50は、発光強度の強さを、白、黒およびその中間の複数段階の灰色のみで表現したグレースケールで発光強度の分布を示す画像を作成することも可能である。この場合、複数のセグメント間で互いに異なる階調の灰色が設定される。あるいは、コントローラ50は、発光強度の分布を示す3次元画像を作成することも可能である。
【0072】
図5に示される発光強度の分布を示す画像Pによれば、サンプルSの所定領域における応力の分布を知ることができる。具体的には、画像Pのうち発光強度の大きい部分は応力が大きい部分を示し、発光強度の小さい部分は応力が小さい部分を示している。コントローラ50は、予め求められた発光強度と応力との相関関係に基づいて、発光強度の分布に基づいて、サンプルSの所定領域に印加される応力の分布を示す画像を生成することができる。
【0073】
(応力発光測定処理の具体的な実施態様)
以下、本実施の形態に係る応力発光測定装置100における応力発光測定処理をさらに詳しく述べるために、具体的な実施態様を説明する。
【0074】
上述したように、本実施の形態に係る応力発光測定装置100によれば、第1ドライバ20を一定周期で繰り返し動作させることで、サンプルSに繰り返し応力を印加することができる。この繰り返し動作中における応力発光体の発光をカメラ40で撮像することにより、繰り返し応力に対するサンプルSの耐久性を試験することができる。
【0075】
本実施態様では、コントローラ50は、繰り返し動作中にカメラ40の撮像により得られた画像データに基づいて、繰り返し応力に対する応力発光体の発光強度の推移を測定および解析するように構成される。
【0076】
最初に、
図6を用いて、本実施態様に従う応力発光測定処理における、励起光を照射するステップ(
図4のステップS30)、サンプルSに曲げ応力を印加するステップ(
図4のステップS40)、および応力発光体の発光を撮像するステップ(
図4のステップS50)の処理について説明する。
【0077】
図6は、装置100における光源30、カメラ40およびホルダ10の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6には、光源30における励起光の照射タイミングを示す波形、カメラ40の撮像タイミングを示す波形、および第1ドライバ20によるホルダ10の動作タイミングを示す波形が示されている。
【0078】
ホルダ10の動作タイミングは「試験回数」で表されている。ホルダ10の移動壁3を第1のホルダ位置から第2のホルダ位置に移動させる動作、すなわち、サンプルSを第1の曲げ状態から第2の曲げ状態に遷移させる動作を1回の応力印加試験(以下、単に「試験」とも称する)とする。したがって、第1ドライバ20の1動作周期の前半に、1回の試験が行なわれる。1回の試験後、ホルダ10の移動壁3を第2のホルダ位置から第1のホルダ位置に移動させることにより、サンプルSが第1の曲げ状態に戻される。
図6の例では、試験を全部でN回行なうこととする(Nは2以上の整数)。
図6では、1回目の試験を「T1」、2回目の試験を「T2」、・・・N回目の試験を「TN」とも表記する。
【0079】
装置100は、上記試験をn回行なうごとに、サンプルSの所定領域に配置された応力発光体の発光を測定する(nは2以上N以下の整数)。
図6では、装置100は、1回目の試験T1において応力発光測定処理を実行すると、次は(n+1)回目の試験Tn+1において応力発光測定処理を実行する。装置100は、最後に、N回目の試験TNにおいて応力発光測定処理を実行する。すなわち、装置100は、N回の試験の実行中、全部でN/n回、応力発光測定処理を実行する。
【0080】
1回の応力発光測定処理において、コントローラ50は、光源30からサンプルSの所定領域に励起光を照射するステップ(
図4のS30)と、サンプルSを曲げるステップ(
図8のS40)と、サンプルSの所定領域に配置された応力発光体の発光をカメラ40により撮像ステップ(
図4のS50)とを実行する。
図6では、時刻t3で試験T1(サンプルSを曲げるステップに相当)が開始される。この時刻t3よりも前の時刻t1から時刻t2までの時間Tiに、光源30からサンプルSの所定領域に励起光が照射される。時刻t1から時刻t2までの時間Tiは光源30の照射時間に相当し、時刻t2から時刻t3までの時間Twは励起光の照射を終えてから測定開始までの待機時間に相当する。
【0081】
時刻t3にて試験T1が開始されると同時に、カメラ40による応力発光の撮像が開始される。カメラ40による撮像は、時刻t4で試験T1が終了する時刻t4まで継続して実行される。すなわち、時刻t3から時刻t4までの時間Tmは、応力発光の測定時間に相当する。
【0082】
測定時間Tmでは、カメラ40のフレームレートに応じた枚数の静止画像が生成される。フレームレートは、動画処理において単位時間当たりに処理されるフレーム数(静止画像)である。カメラ40の露光時間をTeとし、露光後から次のフレームの露光までのインターバル時間Tiとすると、フレーム数mは、m=Tm/(Te+Tr)で表すことができる。
【0083】
本願明細書では、1回の応力発光測定処理においてカメラ40の撮像により取得されるm枚のフレームのセットを「測定セット」とも称する。
図6では、1回目の応力発光測定処理により得られる測定セットを「S1」、2回目の応力発光測定処理により得られる測定セットを「S2」、N/n回目の応力発光測定処理により得られる測定セットを「SN/n」とも表記する。各測定セットSは、第1フレームF1から第mフレームFmで構成される。
【0084】
上述したように、装置100は、N回の応力印加試験を実行することで、合計N回の繰り返し応力をサンプルSに印加する。これに並行して、装置100は、繰り返し応力のn回ごとに応力発光測定処理を実行することにより、合計N/n個の測定セットを取得する。
【0085】
カメラ40の撮像により生成される画像データは、ディスプレイ60(
図1参照)に表示されるとともに、装置100のコントローラ50内のメモリ502(
図1参照)に格納される。N/n回の応力発光測定処理が終了したときには、合計N/n個の測定セットがメモリ502に格納されることになる。
【0086】
応力発光測定処理の実行中、コントローラ50は、メモリ502に順次格納されるN/n個の測定セットの各々について、サンプルSの所定領域における発光強度の時間的変化を示すグラフを生成し、生成したグラフをディスプレイ60に表示する。
【0087】
図7は、応力発光測定処理の実行中のディスプレイ60の表示画面の第1の例を模式的に示す図である。
図7を参照して、ディスプレイ60の表示画面は、カメラ40による撮像画像P1と、撮像画像P1に基づいて生成されたグラフG1とを含む。撮像画像P1として、測定セットごとに、フレームF1~Fmが順次表示される。
【0088】
ユーザは、操作部70(
図1参照)を用いて、撮像画像P1内に少なくとも1つの関心領域(ROI:Region Of Interest)を設定することができる。
図7の例では、2つの関心領域ROI1,ROI2が設定されている。
【0089】
コントローラ50(
図2のデータ処理部56)は、カメラ40の撮像による画像データを取得すると、測定セットごとに、フレームF1~Fmの各々について、ROI内の発光強度に基づく値を算出する。ROI内の発光強度に基づく値は、ROI内の発光強度を統計的処理または一般的な演算処理により算出することができる。本願明細書では、コントローラ50は、ROI内の平均発光強度を算出するように構成される。
図7中のグラフG1は、ROI内の平均発光強度の時間的変化を示すグラフである。グラフの縦軸は発光強度を示し、横軸は時間を示す。グラフG1の横軸の時間は、
図6の測定時間Tmに対応しており、1回の応力印加試験が行なわれる時間(応力印加時間)に相当する。グラフG1は、測定セットごとにフレームF1~Fmの各々について算出されたROI内の平均発光強度をプロットすることにより作成することができる。
【0090】
ユーザは、1回の応力発光測定処理の実行中、ディスプレイ60に表示されるグラフG1を参照することにより、測定時間Tm内に応力を受けて各ROIの発光強度がどのように変化するのかをリアルタイムで観察することができる。
図1の例では、サンプルSが第1の曲げ状態から第2の曲げ状態に遷移する時間において、曲げの中心部分の位置も遷移する。曲げの中心部分を含むようにROIを設定することにより、ユーザは、曲げの中心部分の発光強度がどのように変化するのかをリアルタイムで観察することができる。
【0091】
ユーザはさらに、操作部70を用いて、1つの測定セット内で、発光強度を観察したい時刻を特定することができる。具体的には、ユーザは、測定時間Tm内の少なくとも1つの時刻を特定することができる。たとえば、ユーザは、1回の試験においてサンプルSにかかる応力が最も大きくなるタイミングに対応する時刻を特定することができる。ユーザが1つの測定セット内である時刻を特定すると、残りの測定セットについても同じ時刻が特定されることになる。すなわち、特定された時刻は、N/n個の測定セット間で互いに共通の時刻である。このようにすると、異なる測定セット間で、共通の特定時刻における発光強度を比較することが可能となる。
【0092】
ユーザにより発光強度を観察したい時刻が特定されると、コントローラ50は、N/n回の応力発光測定処理の実行中、測定セットごとの特定時刻における発光強度の測定セット間の変化を示すグラフを生成し、生成したグラフをディスプレイ60に表示する。
図8は、応力発光測定処理の実行中のディスプレイ60の表示画面の第2の例を模式的に示す図である。
図8を参照して、ディスプレイ60の表示画面は、カメラ40による撮像画像P1と、撮像画像P1に基づいて生成されたグラフG2とを含む。
【0093】
コントローラ50は、測定セットごとに、フレームF1~Fmのうちの特定時刻に対応する第kフレームFkを抽出する。kは1以上m以下の整数である。コントローラ50は、抽出したフレームFkについてROI内の平均発光強度を算出する。
図8中のグラフG2は、測定時間Tm内の特定時刻におけるROI内の平均発光強度の測定セット間の変化を示すグラフである。グラフG2の縦軸は発光強度を示し、横軸は測定セットの番号を示す。グラフG2は、測定セットごとに算出した特定時刻におけるROI内の平均発光強度を、測定セットの順番にプロットすることにより作成することができる。
【0094】
ユーザは、N/n回の応力発光測定処理の実行中、ディスプレイ60に表示されるグラフG2を参照することにより、測定時間Tm内の特定時刻におけるROI内の平均発光強度が、繰り返し応力によってどのように変化するのかをリアルタイムで観察することができる。
【0095】
たとえば、ユーザは、1回目の応力発光測定処理の特定時刻における発光強度と、N/n回目の応力発光測定処理の同一の特定時刻における発光強度とを比較することができる。詳細には、1回目の応力発光測定処理により得られる測定セットS1は、1回目の試験T1での発光強度に対応し、N/n回目の応力発光測定処理により得られる測定セットSN/nは、N回目の試験TNでの発光強度に対応する。これら2つの測定セットS1,SN/n間で、共通の特定時刻における発光強度を比較することにより、複数回の応力印加試験(すなわち、繰り返し応力)によって、測定時間Tm内の特定時刻における発光強度がどのように変化するのかを観察することができる。
【0096】
図8の例では、ユーザは、操作部70を用いて、特定時刻におけるROI内の平均発光強度に対して、予め閾値を設定しておくことができる。閾値は、サンプルSの応力印加試験を中断すべきか否かを判定するために用いられる。たとえば、閾値は、サンプルSの許容応力に対応する発光強度に基づいて設定することができる。コントローラ50は、N/n回の応力発光測定処理の実行中、特定時刻におけるROI内の平均発光強度が閾値を超えたときには、応力印加試験を中断するように構成される。
【0097】
(応力発光解析処理)
N/n回の応力発光測定処理が終了すると、コントローラ50は、メモリ502に格納されるN/n個の測定セットの各々について、サンプルSの所定領域における発光強度分布を示す画像(
図9参照)を作成し、作成した画像をメモリ502に格納する。
【0098】
さらに、コントローラ50は、応力発光測定処理で測定された応力発光を解析するためのプログラムを実行することにより、繰り返し応力による発光強度の分布の時間的変化を示すグラフを生成する。解析用のプログラムは、測定用のプログラムとともに、メモリ502(
図1参照)に記憶されている。プロセッサ501は、メモリ502に記憶された解析用プログラムを実行することで、後述する解析処理を実現する。プロセッサ501は、生成したグラフを、発光強度分布を示す画像とともに、ディスプレイ60に表示することができる。
【0099】
以下、
図6に示す応力発光測定処理で得られる発光強度の分布を示す画像を用いた解析処理を説明する。
【0100】
<解析処理の第1の構成例>
コントローラ50は、1回の測定セットSPについて作成された発光強度分布を示す画像を、ディスプレイ60に表示する。ただし、Pは1以上N/n以下の整数である。
図9は、解析処理の実行時におけるディスプレイ60の表示画面の第1の例を模式的に示す図である。
図9を参照して、ディスプレイ60の表示画面は、測定セットSPにおける発光強度分布を示す画像P3と、画像P3を解析した結果を示すグラフG3とを含む。
【0101】
画像P3は、測定セットSPを構成するフレームF1~Fkのうちの第kフレームFkの発光強度分布を示す画像である。画像P3は、たとえば、発光強度の強さを2次元平面上に色で表現したカラーマップである。
【0102】
画像P3の右側には、発光強度の強さに応じて割り当てられる色の範囲を示すカラーバーが示されている。画像P3は、このカラーバーに従って、発光強度の強さに応じて色分け表示される。
【0103】
画像P3の左右の端部には、アイコンI1,I2がそれぞれ示されている。アイコンI1,I2は画面に表示される画像をスクロールするための操作ボタンである。ユーザは、操作部70(
図1参照)を用いてアイコンI1を操作することにより、測定セットSPよりも前の測定セットにおける発光強度分布の画像を表示させることができる。また、ユーザは、アイコンI2を操作することにより、測定セットSPよりも後の測定セットにおける発光強度分布の画像を表示させることができる。
【0104】
画像P3の下側には、バーB1が示されている。バーB1は、測定セットSPを構成するフレームF1~Fmのうち、画面に表示されるフレームをスクロールするための操作ボタンである。ユーザは、操作部70を用いてバーB1上のポインタ62を左側にスライドさせる操作を行なうことにより、フレームFkよりも前のフレームにおける発光強度分布の画像を表示させることができる。また、ユーザは、ポインタ62を右側にスライドさせる操作を行なうことにより、フレームFkよりも後のフレームにおける発光強度分布の画像を表示させることができる。
【0105】
図9の例では、画像P3は、発光強度が互いに異なる3つの領域R1~R3を含んでいる。3つの領域R1~R3のうち、領域R1は発光強度が最も低く、領域R3は発光強度が最も高い。領域R3を囲むように領域R2が位置し、領域R2を囲むように領域R1が位置している。これによると、領域R3における応力が最も大きく、領域R3から外側に向かって応力が徐々に小さくなっていることが分かる。
【0106】
ユーザは、操作部70を用いて、画像P3内に、少なくとも1つのROIを設定することができる。
図9の例では、2つの関心領域ROI1,ROI2が設定されている。
【0107】
コントローラ50(データ処理部56)は、画像P3内に設定されたROI1,ROI2の各々について、画像処理を行なうことにより、ROI内の平均発光強度を算出するように構成される。コントローラ50は、フレームF1~Fmの各々について、ROI内の平均発光強度を算出する。
【0108】
図9中のグラフG3は、測定セットSPにおけるROI内の平均発光強度の時間的変化を示すグラフである。グラフG3の縦軸は発光強度を示し、横軸は時間を示す。グラフG3は、測定セットSPのフレームF1~Fmの各々について算出されたROI内の平均発光強度をプロットすることにより作成することができる。
【0109】
グラフG3の横軸の時間は、
図6の測定時間Tmに対応しており、1回の応力印加試験が行なわれる時間(応力印加時間)に相当する。すなわち、グラフG3は、サンプルSを所定の曲げ半径で曲げる動作を実行しているときの、ROI内の平均発光強度の時間的変化を表している。
【0110】
グラフG3には、ROI1内の平均発光強度の時間的変化を示す波形と、ROI2内の平均発光強度の時間的変化を示す波形とが示されている。これらの波形によると、ユーザは、1回の曲げ応力を受けて各ROI内の平均発光強度がどのように変化したのかを解析することができる。
図1の例では、サンプルSが第1の曲げ状態から第2の曲げ状態に遷移する時間において、曲げの中心部分の位置も遷移する。曲げの中心部分を含むようにROIを設定することにより、ユーザは、1回の曲げ応力を受けて曲げの中心部分の発光強度がどのように変化するのかを解析することができる。
【0111】
<解析処理の第2の構成例>
応力発光解析処理においても、上述した応力発光測定処理と同様に、ユーザは、操作部70を用いて、測定セットごとに、発光強度を解析したい時刻を特定することができる。具体的には、ユーザは、測定時間Tm内の少なくとも1つの時刻を特定することができる。たとえば、ユーザは、1回の試験においてサンプルSにかかる応力が最も大きくなるタイミングに対応する時刻を特定することができる。なお、特定された時刻は、N/n個の測定セット間で互いに共通の時刻である。
【0112】
図10に示すように、ユーザにより少なくとも1つの時刻が特定されると、コントローラ50は、測定セットS1~SN/nの各々について、フレームF1~Fmにそれぞれ対応するm枚の発光強度分布の画像の中から、特定時刻に対応する第kフレームFkの発光強度分布の画像を抽出する。コントローラ50は、抽出した発光強度分布の画像について、ROI内の平均発光強度を算出する。
【0113】
図11は、解析処理の実行時のディスプレイ60の表示画面の第2の例を模式的に示す図である。
図11を参照して、表示画面は、測定セットSPにおける発光強度分布を示す画像P3と、画像P3を解析した結果を示すグラフG4とを含む。
【0114】
図11中の画像P3は、測定セットSPを構成するフレームF1~Fkのうちの第kフレームFkの発光強度分布を示す画像である。画像P3は、たとえば、発光強度の強さを2次元平面上に色で表現したカラーマップである。画像P3の左右の端部には、アイコンI1,I2がそれぞれ示され、画像P3の下側には、バーB1が示されている。
【0115】
画像P3中には、2つの関心領域ROI1,ROI2が設定されている。コントローラ50(データ処理部56)は、画像P3内に設定されたROI1,ROI2の各々について、画像処理を行なうことにより、ROI内の平均発光強度を算出するように構成される。
【0116】
図11中のグラフG4は、フレームFkの発光強度分布の画像におけるROI内の平均発光強度の測定セット間の変化を示すグラフである。グラフG4の縦軸は発光強度を示し、横軸は測定セットの番号を示す。グラフG4は、測定セットごとに算出したフレームFkの発光強度分布の画像におけるROI内の平均発光強度を、測定セットの順番にプロットすることにより作成することができる。
【0117】
グラフG4には、ROI1内の平均発光強度の測定セット間の変化を示す波形と、ROI2内の平均発光強度の測定セット間の変化を示す波形とが示されている。これらの波形によると、ユーザは、ROI1およびROI2の各々について、各測定セットの特定時刻における平均発光強度が、繰り返し応力によってどのように変化したのかを解析することができる。
【0118】
たとえば、ユーザは、1回目の試験T1に対応する測定セットS1の特定時刻におけるROI内の平均発光強度と、N回目の試験TNに対応する測定セットSN/nの同一時刻におけるROI内の平均発光強度を比較することができる。これら2つの測定セットS1,SN/n間で、共通の特定時刻における平均発光強度を比較することにより、複数回の応力印加試験(すなわち、繰り返し応力)によって、測定時間Tm内の特定時刻における平均発光強度がどのように変化するのかを観察することができる。
【0119】
<解析処理の第3の構成例>
コントローラ50は、発光強度分布を示す画像を用いて、サンプルSの所定領域内の特定の一方向に延びるライン上における発光強度の変化を示す「1次元強度プロファイル」を作成するように構成される。
【0120】
図12は、1次元強度プロファイルの作成方法を説明するための図である。
図12の上段には、測定セットSPにおける第kフレームFkの発光強度分布を示す画像P3が示されている。ユーザは、操作部70を用いて、画像P3内に、1次元強度プロファイルを作成したいラインL1を設定することができる。
図12の例では、発光強度が互いに異なる3つの領域R1~R3を横断するようにX軸方向に延びるラインL1が設定されている。
【0121】
コントローラ50(データ処理部56)は、画像P3からラインL1上に位置する複数の画素を抽出し、抽出した複数の画素の各々の発光強度を検出する。コントローラ50は、検出した複数の画素の発光強度を、画素の並び順に従ってプロットすることにより、
図12の下段に示される1次元強度プロファイルを作成する。
【0122】
1次元強度プロファイルの縦軸は発光強度を示し、横軸はラインL1上の複数の画素を示す。
図12の例では、1次元強度プロファイルは山型の波形を有している。1次元強度プロファイルは、画素X1の位置における発光強度I1をピークとして、画素X1から両側に離れるに従って発光強度が減少している。これによると、サンプルSの所定領域内では、画素X1に対応する位置付近に印加される応力が最も大きく、画素X1に対応する位置からX軸方向の両側に離れるに従って応力が徐々に小さくなっていると判断できる。
【0123】
コントローラ50は、測定セットS1~SN/nの各々について、フレームFkの発光強度分布の画像に基づいて、
図12に示す1次元強度プロファイルを作成する。
図13は、解析処理の実行時のディスプレイ60の表示画面の第3の例を模式的に示す図である。
図13を参照して、ディスプレイ60の表示画面は、測定セットSPにおける発光強度分布を示す画像P3と、1次元強度プロファイルを示すグラフG5とを含む。
【0124】
図13中の画像P3は、測定セットSPにおけるフレームFkの発光強度分布を示す画像である。画像P3は、たとえば、発光強度の強さを2次元平面上に色で表現したカラーマップである。画像P3の左右の端部には、アイコンI1,I2がそれぞれ示され、画像P3の下側には、バーB1が示されている。
【0125】
画像P3中には、ラインL1が設定されている。コントローラ50(データ処理部56)は、画像P3内に設定されたラインL1上に位置する複数の画素について、画像処理を行なうことにより、1次元強度プロファイルを算出するように構成される。
【0126】
図13中のグラフG5は、測定セットS1~SN/nにそれぞれ対応するN/n個の1次元強度プロファイルを重ね合わせたグラフである。グラフG5の縦軸は発光強度を示し、横軸はラインL1上の複数の画素を示す。なお、グラフG5に示される複数の1次元強度プロファイルのうち、画像P3に対応する1次元強度プロファイル(図中のc1に相当)は、ユーザが他の1次元強度プロファイルと区別することができるように、他の1次元強度プロファイルよりも強調して表示されている。
【0127】
グラフG5によると、ユーザは、N回の応力印加試験の実行中にラインL1に沿った1次元発光強度プロファイルがどのように変化したのかを解析することができる。具体的には、ユーザは、共通の特定時刻における1次元強度プロファイルのピークの発光状態が、繰り返し応力の回数を重ねるに従ってどのように変化したのかを解析することができる。
図14は、共通の特定時刻における1次元強度プロファイルのピークの発光強度(
図12中の発光強度I1に相当)、すなわちラインL1上における最大応力が、測定セットの進行に伴ってどのように変化したのかを示すグラフである。
図14の縦軸はピークの発光強度を示し、横軸は測定セットの番号を示す。グラフは、測定セットごとに算出した特定時刻における1次元プロファイルのピークの発光強度を、測定セットの順番にプロットすることにより作成することができる。コントローラ50は、ユーザ操作に応じて、
図13のグラフG5から
図14のグラフを作成し、ディスプレイ60に表示させることができる。
【0128】
また、ユーザは、共通の特定時刻における1次元強度プロファイルのピークの位置(
図12中の画素X1に相当)、すなわちラインL1上で最も応力が大きくなる位置が、繰り返し応力の回数を重ねるに従ってどのように変化したのかを解析することができる。
図15は、共通の特定時刻における1次元強度プロファイルのピークの位置が、測定セットの進行によってどのように変化したのかを示すグラフである。
図15の縦軸は特定時刻におけるピーク位置の位置に対応する画素の座標を示し、横軸は測定セットの番号を示す。グラフは、測定セットごとに算出した特定時刻における1次元プロファイルのピーク位置の座標を、測定セットの順番にプロットすることにより作成することができる。コントローラ50は、ユーザ操作に応じて、
図13のグラフG5から
図15のグラフを作成し、ディスプレイ60に表示させることができる。
【0129】
さらに、上記解析において、ユーザは、複数の1次元強度プロファイルの中からサンプルSが破壊に至る直前の1次元強度プロファイルを抽出することにより、破壊に至る直前に発光強度がどのような分布になっていたのかを解析することができる。これによると、発光強度の分布に現れる破壊の予兆を検出することが可能となる。
【0130】
<解析処理の第4の構成例>
コントローラ50は、N/n個の測定セットS1~SN/nの中から選択された2個の測定セットの間で発光強度分布の画像の差分をとることにより、「差分画像」を生成するように構成される。
【0131】
図16は、差分画像の生成方法を説明するための図である。
図16を参照して、ユーザにより少なくとも1つの時刻が特定されると、コントローラ50は、測定セットS1~SN/nの各々について、フレームF1~Fmにそれぞれ対応するm枚の発光強度分布画像の中から、特定時刻に対応する第kフレームFkの発光強度分布の画像を抽出する。
【0132】
次に、コントローラ50は、抽出されたN/n枚の発光強度分布の画像の中から2枚の発光強度分布の画像を選択し、選択した2枚の発光強度分布の画像の差分をとる。具体的には、コントローラ50は、2枚の発光強度分布の画像の間で、同一の画素同士の発光強度の差分をとることで、差分画像を生成することができる。
【0133】
図16の例では、コントローラ50は、隣接する2つの測定セットの間で発光強度分布の画像の差分をとる。具体的には、コントローラ50は、1回目の測定セットS1のフレームFkの発光強度分布の画像と、2回目の測定セットS2のフレームFkの発光強度分布の画像との差分をとることにより、差分画像DF1を生成する。また、コントローラ50は、2回目の測定セットS2のフレームFkの発光強度分布の画像と、3回目の測定セットS3のフレームFkの発光強度分布の画像との差分をとることにより、差分画像DF2を生成する。コントローラ50は、N/n-1回目の測定セットSN/n-1のフレームFkの発光強度分布の画像と、N/n回目の測定セットSN/nのフレームFkの発光強度分布の画像との差分をとることにより、差分画像DFN/n-1を生成する。このようにして、コントローラ50は、合計N/n-1枚の差分画像DF1~DFN/n-1を生成する。
【0134】
隣接する2つの測定セット間で発光強度分布が類似している場合、差分画像Dはコントロラストの小さい画像となる。一方、隣接する2つの測定セット間で発光強度分布が異なる場合、差分画像Dはコントロラストの大きい画像となる。したがって、ユーザは、生成された差分画像DF1~DFN/n-1を参照することにより、連続する2回の応力発光測定処理の間で、サンプルSの所定領域内の発光強度分布がどのように変化したのかを解析することができる。
【0135】
また、ユーザは、差分画像DF1~DFN/n-1を比較することにより、発光強度の分布に変化が現れ始めるタイミングを解析することができる。たとえば、ユーザは、サンプルSが破壊する直前に行なわれた2回の応力発光測定処理の間の差分画像を参照することにより、サンプルSの所定領域内で破壊予兆が現れる部分を検出することが可能となる。
【0136】
なお、上述した差分画像の生成において、ユーザは、操作部70(
図1参照)を用いて、差分画像の生成に用いる2枚の発光強度分布の画像を選択することができる。この場合、コントローラ50は、ユーザにより選択された2枚の発光強度分布の画像の差分画像を生成する。
【0137】
したがって、たとえば、ユーザは、
図17に示すように、N/n枚の発光強度分布の画像のうち、試験回数が少ないときの測定セット(たとえば、2回目の測定セットS2)の発光強度分布の画像と、試験回数が多いときの測定セット(たとえば、N/n回目の測定セットSN/n)の発光強度分布の画像とを選択することができる。これによると、ユーザは、生成された差分画像を参照することにより、試験回数を重ねることで、サンプルSの所定領域内における発光強度の変化を2次元的に解析することができる。
【0138】
図18は、解析処理の実行時のディスプレイ60の表示画面の第4の例を模式的に示す図である。
図18を参照して、ディスプレイ60の表示画面は、測定セットSPにおける発光強度分布を示す画像P3と、差分画像DFとを含む。
【0139】
図18中の画像P3は、P回目の測定セットSPにおける第kフレームFkの発光強度分布を示す画像である。画像P3は、たとえば、発光強度の強さを2次元平面上に色で表現したカラーマップである。画像P3の左右の端部には、アイコンI1,I2がそれぞれ示され、画像P3の下側には、バーB1が示されている。
【0140】
図18中の差分画像DFは、画像P3と、画像P3とは別の測定セットSQにおける発光強度分布を示す画像との差分をとることにより生成されたものである。ただし、Qは1以上N/n以下の整数であり、Q≠Pである。
【0141】
ユーザは、バーB1のポインタ62をスライドさせることにより、差分画像DFを見たいフレームを変更することができる。すなわち、ユーザは、差分画像DFを見たい時刻を変更することができる。たとえば、フレームFkからフレームFjに変更された場合(jは1以上m以下の整数)には、コントローラ50は、測定セットSPのフレームFjの発光強度分布の画像と、測定セットSQのフレームFjの発光強度分布の画像との差分画像DFを生成してディスプレイ60に表示する。
【0142】
(その他の構成例)
(1)応力印加機構
上述した実施の形態では、サンプルSに曲げ応力を印加するための応力印加機構として、サンプルSの第1の端部S1を固定端とし、第2の端部S2を自由端として、固定端に対する自由端の相対位置を変化させることにより、サンプルSに曲げ応力を印加する構成を例示したが、応力印加機構の構成は当該構成に限定されるものではない。
【0143】
たとえば、応力印加機構は、
図19に示すように、サンプルSの第1の端部S1および第2の端部S2をともに自由端とし、第1ドライバ20によってこれら2つの自由端の相対位置を変化させることによって、サンプルSに曲げ応力を印加する構成としてもよい。
【0144】
なお、
図19に示す構成では、サンプルSの所定領域(曲げの中心部分を含む)は、Z軸方向に沿って移動することになる。したがって、第2ドライバ42がカメラ40をZ軸方向に沿って移動させることで、サンプルSの所定領域内の少なくとも1点(図中の点R)とカメラ40との間の距離Dを所定距離に保つことができる。これによると、サンプルSを曲げ伸ばしする間、常にカメラ40のフォーカス位置を当該少なくとも1点に合焦させることができる。よって、カメラ40は、サンプルSの所定領域における発光を精度良く撮像することが可能となる。
【0145】
また、上述した実施の形態では、応力印加機構がサンプルSに曲げ応力を印加する構成について説明したが、応力印加機構は、曲げ応力以外の応力を印加することが可能である。たとえば、サンプルSの両端部をそれぞれ支持する部材を互いに反対向きに回転させることにより、サンプルSを捻り応力を印加することができる。または、2つのグリッパを互いに離れる方向に移動させることにより、サンプルSに引っ張り応力を印加することができる。これらの応力の印加時において、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域の少なくとも1点に維持することにより、所定領域上に配置された発光膜の発光を撮像することができる。
【0146】
(2)第2ドライバ42
上述した実施の形態では、第2ドライバ42がホルダ10の移動壁3の移動に連動してカメラ40の位置を移動させることにより(
図3および
図19参照)、カメラ40のフォーカス位置を変更する構成を例示したが、第2ドライバ42は、カメラ40に内蔵されたオートフォーカス回路によって実現される構成としてもよい。具体的には、第2ドライバ42は、カメラ40内部の撮像素子と光学系との相対位置を調整することにより、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域内の少なくとも1点に合焦させるように構成される。
【0147】
(3)第1ドライバ20
上述した実施の形態では、第2ドライバ42がカメラ40のフォーカス位置を変更することにより、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域内の少なくとも1点に維持する構成を例示したが、カメラ40の位置を固定しておき、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域内の少なくとも1点に維持するように、第1ドライバ20がホルダ10をカメラ40に対して相対的に移動させる構成としてもよい。
【0148】
あるいは、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域内の少なくとも1点に維持するように、第1ドライバ20および第2ドライバ42が協働して、カメラ40およびホルダ10を相対的に移動させる構成としてもよい。すなわち、第1ドライバ20および第2ドライバ42の少なくとも一方を制御してカメラ40およびホルダ10を相対的に移動させることにより、カメラ40のフォーカス位置をサンプルSの所定領域内の少なくとも1点に維持することができる。
【0149】
(4)応力発光測定処理
上述した実施の形態では、サンプルSを曲げたときに圧縮応力が印加される第1の面Sa上に発光膜を配置し、圧縮応力が印加されたときの応力発光体の発光を撮像する構成例について説明したが、引っ張り応力が印加される第2の面Sb上に発光膜を配置し、引っ張り応力が印加されたときの応力発光体の発光を撮像する構成とすることもできる。具体的には、
図1の例では、サンプルSの第2の面Sbの所定領域を発光膜で被覆するとともに、サンプルSのZ軸方向の下方に光源30が配置される。さらに、サンプルSのZ軸方向の下方に、第2の面Sbの少なくとも所定領域を撮像視野に含むようにカメラ40が配置される。第2ドライバ42は、サンプルSの第2の面Sbの所定領域の少なくとも1点がフォーカス位置に位置するように、カメラ40を移動可能に構成される。
【0150】
(5)応力発光測定システム
上述した実施の形態に係る応力発光測定装置において、コントローラ50が有する複数のプロセッサ501、メモリ502および、メモリ502に格納され、複数のプロセッサ501のうちの少なくとも1つのプロセッサによって実行される少なくとも1つのプログラムは、応力発光測定システムを構成することができる。
【0151】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0152】
(第1項)一態様に係る応力発光測定装置(100)は、応力発光体の発光を測定する。応力発光体は、フレキシブル性を有するサンプル(S)の少なくとも所定領域に配置されている。応力発光測定装置は、サンプルを支持するように構成されたホルダ(10)と、応力発光体に励起光を照射するように構成された光源(30)と、ホルダを第1のホルダ位置および第2のホルダ位置の間で周期的に移動させることにより、サンプルに繰り返し応力を印加するように構成された第1ドライバ(20)と、繰り返し応力による応力発光体の応力発光を撮像するように構成されたカメラ(40)と、カメラの撮像により得られた画像データに基づいて、繰り返し応力に対する応力発光体の発光強度の推移を測定および解析するように構成されたコントローラ(50)と、コントローラに通信接続されるディスプレイ(60)とを備える。コントローラは、繰り返し応力の各々または所定回数ごとに、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における所定領域内の発光強度の分布を示す分布画像(P3)を生成する。コントローラは、生成された複数の分布画像の中から選択された第1の分布画像および第2の分布画像を差分して差分画像(DF)を生成してディスプレイに表示する。
【0153】
第1項に記載の応力発光測定装置によれば、ユーザは、ディスプレイに表示される差分画像を参照することにより、繰り返し応力によってサンプルの所定領域内の発光強度分布がどのように変化したのかを2次元的に解析することができる。具体的には、ユーザは、複数の差分画像のうちコントラストが大きい差分画像に着目することにより、発光強度の分布に変化が現れ始めるタイミングを解析することができる。たとえば、ユーザは、サンプルが破壊する直前に行なわれた2回の応力発光測定処理の間の差分画像を参照することにより、サンプルの所定領域内で破壊予兆が現れる部分を検出することが可能となる。
【0154】
さらに、ユーザは、ディスプレイに表示された差分画像を参照することにより、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における発光強度の分布が、繰り返し応力によってどのように変化したのかを2次元的に解析することができる。
【0155】
(第2項)第1項に記載の応力発光測定装置において、コントローラは、1回の応力発光の測定時間における画像データを測定セットとして、繰り返し応力の印加中に複数の測定セット(S1~SN/n)を取得する。コントローラは、複数の測定セット間で共通の特定時刻における複数の分布画像を生成する。
【0156】
第2項に記載の応力発光測定装置によれば、ユーザは、ディスプレイに表示された差分画像を参照することにより、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における発光強度の分布が、繰り返し応力によってどのように変化したのかを2次元的に解析することができる。
【0157】
(第3項)第1項または第2項に記載の応力発光測定装置は、複数の分布画像の中から第1の分布画像および第2の分布画像の選択を受け付けるとともに、特定時刻の設定を受け付ける操作部(70)をさらに備える。
【0158】
第3項に記載の応力発光測定装置によれば、ユーザは、さらに、1回の応力発光の測定時間内で発光強度の変化を観察および解析したい時刻を自由に設定することができる。
【0159】
(第4項)第1項から第3項に記載の応力発光測定装置は、カメラのフォーカス位置を変更するように構成された第2ドライバ(42)をさらに備える。コントローラは、カメラのフォーカス位置を所定領域の少なくとも1点に維持するように、第1ドライバおよび前記第2ドライバの少なくとも一方を制御する。
【0160】
第4項に記載の応力発光測定装置によれば、サンプルに応力を印加したときに、カメラのフォーカス位置をサンプルの所定領域の少なくとも1点に合焦させることができるため、当該所定領域における発光を精度良く撮像することが可能となる。
【0161】
(第5項)一態様に係る応力発光測定方法は、フレキシブル性を有するサンプルの少なくとも所定領域に配置された応力発光体の発光を測定する方法である。応力発光測定方法は、サンプル(S)に繰り返し応力を印加するステップと、応力発光体に励起光を照射するステップと、繰り返し応力による応力発光体の発光を撮像するステップと、撮像するステップにより得られた画像データに基づいて、繰り返し応力の各々または所定回数ごとに、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における所定領域内の発光強度の分布を示す分布画像を生成するステップと、生成された複数の分布画像の中から選択された第1の分布画像および第2の分布画像を差分して差分画像を生成してディスプレイに表示するステップとを備える。
【0162】
第5項に記載の応力発光測定方法によれば、ユーザは、ディスプレイに表示される差分画像を参照することにより、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における発光強度の分布が、繰り返し応力によってどのように変化したのかを2次元的に解析することができる。
【0163】
(第6項)一態様に係る応力発光測定システムは、複数のプロセッサ(501)と、メモリ(502)と、メモリに格納され、複数のプロセッサのうちの少なくとも1つのプロセッサによって実行される少なくとも1つのプログラムとを備える。応力発光体は、フレキシブル性を有するサンプルの少なくとも所定領域に配置されている。少なくとも1つのプログラムは、サンプルに繰り返し応力を印加するステップと、応力発光体に励起光を照射するステップと、繰り返し応力による応力発光体の発光を撮像するステップと、撮像するステップにより得られた画像データに基づいて、繰り返し応力の各々または所定回数ごとに、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における所定領域内の発光強度の分布を示す分布画像を生成するステップと、生成された複数の分布画像の中から選択された第1の分布画像および第2の分布画像を差分して差分画像を生成してディスプレイに表示するステップとを少なくとも1つのプロセッサに実行させる。
【0164】
第6項に記載の応力発光測定システムによれば、ユーザは、ディスプレイに表示される差分画像を参照することにより、1回の応力発光の測定時間内の特定時刻における発光強度の分布が、繰り返し応力によってどのように変化したのかを2次元的に解析することができる。
【0165】
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0166】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0167】
1 フレーム、2 固定壁、3 移動壁、5,6 取付部、7,8 押え板、9 蝶番、10 ホルダ、12 板バネ、13 接続部、14 レール、15,15A,15B スライダ、16,17 バー、18 ブラケット、20 第1ドライバ、21 アクチュエータ、22,23 天板、30 光源、32 第3ドライバ、40 カメラ、42 第2ドライバ、50 コントローラ、51 応力制御部、52 光源制御部、53 撮像制御部、54 測定制御部、55 データ取得部、56 データ処理部、60 ディスプレイ、70 操作部、100 応力発光測定装置、501 プロセッサ、502 メモリ、503 入出力I/F、504 通信I/F、S サンプル、S1 第1の端部、S2 第2の端部、Sa 第1の面、Sb 第2の面、F1~Fm,Fk フレーム、S1~SN/n,SP 測定セット、T1~TN 試験(応力印加試験)、ROI,ROI1,ROI2 関心領域、P,P1~P3 画像、G1~G5 グラフ、DF,DF1~DFN/n-1 差分画像。