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特許7099635データ収集装置、プラント監視システムおよびデータ収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】データ収集装置、プラント監視システムおよびデータ収集方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
G05B23/02 301V
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021528703
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2019025163
(87)【国際公開番号】W WO2020261383
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 尚武
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆人
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-146088(JP,A)
【文献】特開2018-124697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定値を収集する測定値収集部と、
前記複数の測定値が取得された時刻の時刻差が予め定められた指定時間差よりも小さい場合には前記複数の測定値に同じイベント番号を付与し、前記時刻差が前記指定時間差以上である場合には前記複数の測定値に異なるイベント番号を付与するように構築されたイベント番号付与部と、
前記複数の測定値と前記イベント番号とを紐づけた状態で前記複数の測定値を保存する測定値保存部と、
を備えるデータ収集装置。
【請求項2】
プラント機器の点検時に測定された複数の測定値を収集するデータ収集装置と、
前記データ収集装置で収集した前記複数の測定値からトレンドグラフを生成するトレンドグラフ表示部と、
を備え、
前記データ収集装置は、
前記複数の測定値を収集する測定値収集部と、
前記複数の測定値が取得された時刻の時刻差が予め定められた指定時間差よりも小さい場合には前記複数の測定値に同じイベント番号を付与し、前記時刻差が前記指定時間差以上である場合には前記複数の測定値に異なるイベント番号を付与するように構築されたイベント番号付与部と、
前記複数の測定値と前記イベント番号とを紐づけた状態で前記複数の測定値を保存する測定値保存部と、
を備え、
前記トレンドグラフ表示部は、前記測定値を第一軸とし前記イベント番号を第二軸としたグラフに前記測定値保存部に保存された前記複数の測定値を描画するように構築されたプラント監視システム。
【請求項3】
前記トレンドグラフ表示部は、同じ前記イベント番号が付与された前記複数の測定値を、前記第二軸と直交する方向に並べて描画するように構築された請求項2に記載のプラント監視システム。
【請求項4】
前記トレンドグラフ表示部は、前記複数の測定値を取得時刻の順番で繋ぐ折れ線グラフを描画するように構築された請求項2または3に記載のプラント監視システム。
【請求項5】
前記トレンドグラフ表示部は、第一イベント番号が付与された複数の測定値のなかの最大値と前記第一イベント番号の次の第二イベント番号が付与された複数の測定値のなかの最大値とを結ぶ測定最大値トレンドグラフを描画するように構築された請求項2~4のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項6】
前記トレンドグラフ表示部は、第一イベント番号が付与された複数の測定値のなかの最小値と前記第一イベント番号の次の第二イベント番号が付与された複数の測定値のなかの最小値とを結ぶ測定最小値トレンドグラフを描画するように構築された請求項2~5のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項7】
前記トレンドグラフ表示部は、第一イベント番号が付与された複数の測定値のなかの平均値と前記第一イベント番号の次の第二イベント番号が付与された複数の測定値のなかの平均値とを結ぶ測定平均値トレンドグラフを描画するように構築された請求項2~6のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項8】
前記トレンドグラフ表示部は、同じイベント番号が付与された複数の測定値のなかの最大値と最小値とを結ぶ棒グラフを描画するように構築された請求項2~7のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項9】
前記トレンドグラフ表示部は、切替指示の入力操作に応答して、前記第二軸の単位を前記イベント番号と時刻との間で切り替えるように構築された請求項2~8のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項10】
前記プラント機器は、電動機を含み、
前記測定値は、前記電動機が備えるモータ巻線の絶縁劣化点検で測定された電気特性値を含む請求項2~9のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項11】
前記イベント番号付与部は、前記指定時間差が可変に設定されるように構築された請求項2~10のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項12】
複数の測定値を収集する測定値収集ステップと、
前記複数の測定値が取得された時刻差と予め定められた指定時間差とを比較する比較判定ステップと、
前記複数の測定値が取得された時刻差が前記指定時間差よりも小さい場合には前記複数の測定値に同じイベント番号を付与し、前記時刻差が前記指定時間差以上である場合には前記複数の測定値に異なるイベント番号を付与するように構築されたイベント番号付与ステップと、
前記複数の測定値と前記イベント番号とを紐づけた状態で前記複数の測定値を保存する測定値保存ステップと、
を備えるデータ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、データ収集装置、プラント監視システムおよびデータ収集方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば日本特開2019-8435号公報では、別々に表示されていた機器のアラーム情報とトレンドグラフをトレンドグラフの表示画面で共に表示する方法が提案されている。この公報では、横軸を測定時刻にする方法で、測定値をトレンドグラフで表示している。この公報では、機器で故障が発生し、アラームが発生した期間のトレンドグラフの表示形式を変更する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2019-8435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術のように横軸を測定時刻にしたトレンドグラフは、視認性が低下する場合がある。視認性が低下するケースの一例は、プラント操業停止時にしか実施できない点検作業の結果をトレンドグラフ化する場合である。
【0005】
プラント操業停止時にしか実施できない点検作業の一例は、鉄鋼プラント等で実施されているモータ巻線絶縁劣化点検である。モータ巻線絶縁劣化点検はプラント操業停止時にしか実施できず、プラント操業停止はプラントの生産計画に基づき例えば1か月に一回程度の頻度で計画される。
【0006】
このようなモータ巻線絶縁劣化試験の測定値を、横軸を測定時刻としたトレンドグラフで表示すると、視認性が低下する。横軸を測定時刻とした場合には、プラント操業停止期間には大量の測定値が描画される一方、プラント操業中は測定値が全く描画されないからである。このため、特定の時間範囲にのみ大量の測定値が描画される一方、プラント操業中の長期間に渡って測定データが空白となる。その結果、トレンドグラフの視認性が悪くなる問題があった。
【0007】
本出願は、測定データをグラフ化したときの視認性を向上させるように改良されたデータ収集装置、プラント監視システムおよびデータ収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願にかかるデータ収集装置は、
複数の測定値を収集する測定値収集部と、
前記複数の測定値が取得された時刻の時刻差が予め定められた指定時間差よりも小さい場合には前記複数の測定値に同じイベント番号を付与し、前記時刻差が前記指定時間差以上である場合には前記複数の測定値に異なるイベント番号を付与するように構築されたイベント番号付与部と、
前記複数の測定値と前記イベント番号とを紐づけた状態で前記複数の測定値を保存する測定値保存部と、
を備える。
【0009】
本出願にかかるプラント監視システムは、
プラント機器の点検時に測定された複数の測定値を収集するデータ収集装置と、
前記データ収集装置で収集した前記複数の測定値からトレンドグラフを生成するトレンドグラフ表示部と、
を備え、
前記データ収集装置は、
前記複数の測定値を収集する測定値収集部と、
前記複数の測定値が取得された時刻の時刻差が予め定められた指定時間差よりも小さい場合には前記複数の測定値に同じイベント番号を付与し、前記時刻差が前記指定時間差以上である場合には前記複数の測定値に異なるイベント番号を付与するように構築されたイベント番号付与部と、
前記複数の測定値と前記イベント番号とを紐づけた状態で前記複数の測定値を保存する測定値保存部と、
を備え、
前記トレンドグラフ表示部は、前記測定値を第一軸とし前記イベント番号を第二軸としたグラフに前記測定値保存部に保存された前記複数の測定値を描画するように構築されたものである。
【0010】
本出願にかかるデータ収集方法は、
複数の測定値を収集する測定値収集ステップと、
前記複数の測定値が取得された時刻差と予め定められた指定時間差とを比較する比較判定ステップと、
前記複数の測定値が取得された時刻差が前記指定時間差よりも小さい場合には前記複数の測定値に同じイベント番号を付与し、前記時刻差が前記指定時間差以上である場合には前記複数の測定値に異なるイベント番号を付与するように構築されたイベント番号付与ステップと、
前記複数の測定値と前記イベント番号とを紐づけた状態で前記複数の測定値を保存する測定値保存ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本出願にかかるデータ収集装置およびデータ収集方法によれば、測定時刻の時刻差に基づいて複数の測定値を関連付けし、関連付けされた測定値に同じイベント番号を付与することができる。これにより、同じ時期に測定された一まとまりの測定値をイベント番号でグルーピングすることができる。本出願にかかるプラント監視システムによれば、そのようなグルーピングが行われた測定値を、トレンドグラフにおいてイベント番号ごとに表示できるので、ユーザの視認性が向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態にかかるデータ収集装置およびプラント監視システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態にかかるデータ収集装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図3】実施の形態にかかるプラント監視システムで作成されるトレンドグラフの一例である。
図4】実施の形態にかかるプラント監視システムで作成されるトレンドグラフの他の例である。
図5】実施の形態にかかるプラント監視システムで作成されるトレンドグラフの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、複数の測定値Dと複数の時刻tと複数のイベント番号#nとを用語として用いる。添字のnは整数である。n=1、2、・・・k-1、k、k+1・・・であるものとする。kは任意の整数である。例えば、連続した二つの時間ステップを説明するために添字kと添字k+1とが用いられる。
【0014】
実施の形態のプラント監視システムは、「モータ絶縁抵抗傾向監視ツール」として提供される。モータ絶縁抵抗傾向監視ツールは、モータ巻線絶縁劣化点検のために行う絶縁抵抗計によるモータ巻線間の絶縁抵抗測定を自動で行うとともに、測定した絶縁抵抗の推移をトレンドグラフで表示するツールである。
【0015】
図1は、実施の形態にかかるデータ収集装置100およびプラント監視システムの構成を示す図である。図1は、プラント監視システム101およびデータ収集装置100の構成とデータフローを示している。実施の形態にかかるプラント監視システム101は、プラント機器102を監視する。
【0016】
プラント機器102は、電動機103とメガー104とを備えている。メガー104は絶縁抵抗計である。測定値Dは、電動機103が備えるモータ巻線絶縁劣化点検で測定された電気特性値である。実施の形態では、一例として、後述する図3図5のグラフにも記載されるように、測定値Dは電流値であるものとする。
【0017】
プラント監視システム101は、データ収集装置100と、トレンドグラフ表示部7と、を備える。データ収集装置100は、プラント機器の点検時に測定された複数の測定値Dを収集する。トレンドグラフ表示部7は、データ収集装置100で収集した複数の測定値Dからトレンドグラフを生成する。
【0018】
データ収集装置100は、測定値収集部1と、イベント番号付与部2と、測定値保存部4と、を備える。測定値収集部1は、複数の測定値Dを自動収集する。
【0019】
具体的には、測定値収集部1で、プラント操業中、もしくはプラント操業停止時に自動的、もしくは手動で点検作業が実施されることにより得られる測定値Dを収集する。実施の形態では、プラント操業停止時に自動的にモータ巻線間の絶縁抵抗測定が行われ、測定値Dが収集されるものとする。
【0020】
まず、測定値収集部1が新たな測定値Dk+1を収集する。測定値収集部1は新たな測定値Dk+1と新たな測定値Dk+1を収集した測定時刻tk+1とを、測定値グルーピング部2aに伝達する。実施の形態にかかるプラント監視システムでは、測定値収集部1で新たに収集したモータ巻線間の絶縁抵抗の値を測定値グルーピング部2aに伝達している。
【0021】
イベント番号付与部2は、複数の測定値D、Dk+1が取得された時刻の時刻差ΔTを算出する。イベント番号付与部2は、時刻差ΔTが予め定められた指定時間差Tthよりも小さい場合には、複数の測定値D、Dk+1に同じイベント番号#kを付与する。イベント番号付与部2は、時刻差ΔTが指定時間差Tth以上である場合には、複数の測定値D、Dk+1それぞれに異なるイベント番号#k、#k+1を付与する。
【0022】
具体的には、実施の形態にかかるイベント番号付与部2は測定値グルーピング部2aと、イベント番号生成部2bと、イベント番号保存部2cと、設定ファイル2dとを含んでいる。測定値グルーピング部2aが新たな測定値Dk+1と新たな測定時刻tk+1とを測定値収集部1から受け取ると、測定値グルーピング部2aは設定ファイル2dから予め設定されたイベント番号変更条件を読み出す。イベント番号変更条件は、指定時間差Tthを含む。
【0023】
測定値保存部4は、複数の測定値Dとイベント番号#nとを紐づけた状態で複数の測定値Dを保存する。具体的には、測定値グルーピング部2aが新たな測定値Dk+1と測定時刻tk+1とを測定値収集部1から受け取ると、測定値グルーピング部2aは測定値保存部4から前回の測定時刻tを読み出す。
【0024】
測定値グルーピング部2aは、前記処理により得られたそれぞれのデータから、新たな測定時刻tk+1と前回の測定時刻tkとの時刻差ΔTを算出する。測定値グルーピング部2aは、この時刻差ΔTとイベント番号変更条件の指定時間差Tthとを比較する。
【0025】
測定間の時刻差ΔTがイベント番号変更条件の指定時間差Tthよりも小さい場合(つまりΔT<Tth)、測定値グルーピング部2aはイベント番号生成部2bにイベント番号を変更しないようにイベント番号設定フラグF(F=0)を伝達する。測定間の時刻差ΔTがイベント番号変更条件の指定時間差Tth以上である場合(つまりΔT≧Tth)、測定値グルーピング部2aはイベント番号生成部2bにイベント番号を変更(更新)するようにイベント番号設定フラグF(F=1)を伝達する。
【0026】
イベント番号生成部2bが測定値グルーピング部2aからイベント番号設定フラグFを受け取ると、イベント番号生成部2bは測定値保存部4から前回の測定値Dのイベント番号#kを読み出す。
【0027】
イベント番号生成部2bがイベント番号のインクリメントを指示するイベント番号設定フラグF(F=1)を受け取った場合には、イベント番号生成部2bはイベント番号#kに1を加算する。イベント番号生成部2bは、更新後のイベント番号#k+1をイベント番号保存部2cに送る。
【0028】
これに対し、イベント番号生成部2bがイベント番号の保持を指示するイベント番号設定フラグF(F=0)を受け取った場合には、イベント番号生成部2bはイベント番号#kを保持する。イベント番号生成部2bは、イベント番号#kをイベント番号保存部2cに送る。
【0029】
イベント番号保存部2cは、イベント番号生成部2bから測定値Dk+1のためのイベント番号を受け取る。受け取るイベント番号は、上述したように、#kと#k+1のいずれか一方である。イベント番号保存部2cは、イベント番号生成部2bから送られてきたイベント番号に従って、新たな測定値Dk+1に#kと#k+1のいずれか一方のイベント番号を付与する。
【0030】
測定値保存部4とトレンドグラフ表示部7は、有線通信ネットワークまたは無線通信ネットワークを介して接続されている。ユーザからトレンドグラフ表示要求があったときには、トレンドグラフ表示部7は測定値保存部4から複数の測定値Dと複数の測定時刻tと複数のイベント番号#nとを読み出す。
【0031】
トレンドグラフ表示部7の起動時に、測定値保存部4とトレンドグラフ表示部7とが自動的に通信を行ってもよい。具体的には、過去に測定された測定値(モータ巻線間絶縁抵抗を算出するための電流値)とメガー104による測定時刻tとイベント番号#nとが記録されている電子ファイルが受け渡され、その電子ファイルの内容が自動的に読み込まれる。
【0032】
なお、実施の形態にかかるプラント監視システムでは、2種類のソフトウェアに分けて図1中の各機能が実装されている。測定値収集部1と測定値グルーピング部2aと設定ファイル2dと測定値保存部4とイベント番号生成部2bとイベント番号保存部2cは、第一ソフトウェア上に実装されている。トレンドグラフ表示部7は、第二ソフトウェア上に実装している。第一ソフトウェアと第二ソフトウェアは別の電子計算機にインストールされている。第一ソフトウェアがインストールされた電子計算機は、データ収集装置100を構成する。第二ソフトウェアがインストールされた電子計算機は、トレンドグラフ表示部7を構成する。
【0033】
図2は、実施の形態にかかるデータ収集装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図2のルーチンでは、まず、ステップS100(測定値収集ステップ)において、新たな測定値Dk+1が収集される。次に、ステップS101でイベント番号変更条件(指定時間差Tth)が読み出される。
【0034】
次に、ステップS102で、新たな測定値Dk+1の測定時刻tk+1と前回の測定値Dの測定時刻tとに基づいて、下記の式(1)に従って時刻差ΔTが算出される。
ΔT=tk+1-t ・・・(1)
【0035】
次に、ステップS103(比較判定ステップ)において、時刻差ΔTと指定時間差Tthとが比較される。比較結果に応じて、イベント番号付与ステップ(ステップS104~S106、S108~S109)が実行される。ステップS103では、時刻差Δtが指定時間差Tth以上である場合(ΔT≧Tth)には、ステップS104とS105とS106とがこの順に実行される。ステップS103では、時刻差Δtが指定時間差Tthよりも小さい場合(ΔT<Tth)には、ステップS108とS105とS109とがこの順に実行される。
【0036】
ステップS103の判定結果がΔT≧Tthであれば、ステップS104とS105とS106とがこの順に実行される。この一連のステップでは、時刻差ΔTが指定時間差Tth以上なので、測定値Dにはイベント番号#kが付与され、測定値Dk+1にはイベント番号#k+1が付与される。具体的には、ステップS104でイベント番号設定フラグがF=1に設定され、これに応じて前回のイベント番号#kの読み出し(ステップS105)および加算(ステップS106)が行われる。
【0037】
ステップS103の判定結果がΔT<Tthであれば、ステップS108とS105とS109とがこの順に実行される。この一連のステップでは、時刻差ΔTが指定時間差Tthより小さいので、複数の測定値D、Dk+1に同じイベント番号#kが付与される。具体的には、ステップS108でイベント番号設定フラグがF=0に設定され、これに応じて前回のイベント番号#kの読み出し(ステップS105)および保持(ステップS109)が行われる。
【0038】
測定値保存ステップ(ステップS107、S110)は、複数の測定値Dとイベント番号#nとを紐づけた状態で複数の測定値Dを保存する。具体的には、ステップS106の次のステップS107においては、今回の測定値Dk+1が、時刻tk+1および更新後のイベント番号#k+1と紐付けられて保存される。また、ステップS109の次のステップS110においては、今回の測定値Dk+1が、時刻tk+1および前回のイベント番号#kと紐付けられて保存される。
【0039】
その後、今回のルーチンが終了し、処理がリターンする。図2のルーチンが繰り返し実行されることで、新たな測定値Dk+2、Dk+3・・・についても同様のデータ処理が行われる。
【0040】
ここで、実施の形態の技術背景を説明する。一般に鉄鋼プラントなどの各種プラントでは、各種プラント機器の点検作業が実施される。点検作業により、プラント操業を継続的に安定して行うことができる。プラント操業中に点検作業を実施できない点検対象機器あるいは点検種類がある。たとえば鉄鋼プラントでは、製品の生産計画に基づき1か月に一回程度の頻度でプラント操業が停止される。このプラント操業停止中に、プラント操業中に実施できない点検作業が実施される。
【0041】
鉄鋼プラントで実施されるモータ巻線絶縁劣化点検は、プラント操業停止の一因となりうるモータの地絡事故を防止するための重要な点検作業である。インバータなどからモータ端子に繋がる電源配線を外した上で、メガー(すなわち絶縁抵抗計)により、モータ端子間に高電圧を印可して絶縁抵抗を測定する作業が行われる。これは、プラント操業中には実施できない作業である。モータ巻線絶縁劣化点検はプラント操業停止時にしか実施できず、プラント操業停止はプラントの生産計画に基づき1か月に一回程度の頻度で計画される。
【0042】
測定値により点検結果の良否を判定する方法では、一回の点検作業間の測定値により点検対象機器の良否を判定している。しかし、ゆるやかに故障の兆候は表れていたものの判定基準上では不良とはならないケースもあり、このようなケースでは故障に気付きにくい問題がある。
【0043】
このようなケースでは突然に故障が発生するおそれが高く、故障が発生してしまうとプラント操業に影響が出てしまう。対策としては、測定値を長期間にわたって保存することで故障の兆候を捉える方法が考えられる。規則に基づいて測定値の推移傾向を機械的に分析することで、機器の故障兆候を捉え、ユーザに通知するという技術が考えられる。
【0044】
しかしながら、測定値の推移傾向を機械的に分析して機器の故障兆候を捉える技術を確立することは、技術的な課題も多い。例えば測定結果に外乱が多く発生する場合は、十分な精度で故障兆候を捉えることが技術的に難しい。そこで、長期間にわたって保存した測定値をトレンドグラフで視覚化することで、ユーザが故障を事前に予測しやすくする方法が考えられる。実施の形態にかかるトレンドグラフ表示部7は、このような視覚化ニーズを満たすことができる。
【0045】
(第一比較例)
モータ巻線絶縁劣化試験の測定値を、横軸を測定時刻としたトレンドグラフで表示する第一比較例が考えられる。この第一比較例では、横軸を測定時刻としたグラフにおいて、プラント操業停止期間には大量の測定値が描画される一方、プラント操業中は測定値が全く描画されない。このため、特定の時間範囲にのみ大量の測定値が描画される一方、プラント操業中の長期間に渡って測定データが空白となる。その結果、トレンドグラフの視認性が悪くなる問題があった。
【0046】
(第二比較例)
複数の測定値と複数のイベント番号とを一対一で対応づけしたうえで、横軸をイベント番号としたトレンドグラフを作成する第二比較例が考えられる。この場合、横軸が時間ではなくイベント番号となるので、プラント操業中の空白期間がトレンドグラフから省略される。従って、上記の第一比較例のような測定値の偏りを抑制することはできる。しかしながら、一回のプラント操業停止期間に実施された複数の点検結果は互いに関連性があるので、本来ならばグルーピングしておくことが好ましい。第二比較例では、イベント番号が順次付与されることで、関連性のある測定値のまとまりが消滅してしまうおそれがある。その結果、トレンドグラフに基づいて故障兆候を発見するための利便性が低下するという問題があった。
【0047】
上記第二比較例には他の観点からの問題もある。モータ巻線絶縁劣化点検は、たとえば絶縁抵抗計によりモータ巻線の相間に高電圧を印可した状態で、電流値の測定および抵抗値の算出を行うものである。モータ巻線絶縁劣化点検項目の一つに、モータ巻線の温度依存性がある。プラント操業停止直後のモータ巻線温度が高い状態での高温測定値と、プラント操業停止から時間が経ちモータ巻線温度が気温近くまで下がった状態での常温測定値とを比較できるように、トレンドグラフを表示することが好ましい。しかし、上記第二比較例のようなイベント番号表示ではこのような温度情報が欠落してしまうため、直感的な比較を行いにくいという欠点がある。
【0048】
実施の形態では、上述した比較例の問題を解決するために、複数の測定値Dのうち測定時刻tがある程度近い測定値については同じイベント番号#nを付与することでグルーピングが行われている。グルーピングされた測定値Dをグラフ上でわかりやすくまとめて表示することで、視認性を高めることができる。また、実施の形態では、上記第二比較例とは異なり、測定時刻tとイベント番号#nとが別々に記憶されている。よって上記の第二比較例とは異なり、実施の形態では、イベント単位での時系列情報のみならず、個々の測定時刻という精密な時間情報も記録保持できるという利点がある。
【0049】
図3は、実施の形態にかかるプラント監視システムで作成されるトレンドグラフの一例である。図3は、個々の測定結果に着眼したトレンドグラフ表示方法を示している。なお、図3および後述する図4および図5では、測定値Dは電流値であるものとする。この電流測定値を予め定めた換算式で換算することによって、絶縁抵抗の値を算出することができる。絶縁抵抗値をトレンドグラフに表示するモードが設けられてもよい。
【0050】
トレンドグラフ表示部7は、測定値Dを第一軸としイベント番号#nを第二軸とした図3のグラフに、測定値保存部4に保存された複数の測定値Dを描画する。実施の形態では、第一軸が縦軸であり第二軸が横軸であるxy直交座標グラフが作成される。
【0051】
実施の形態にかかるプラント監視システムでは、トレンドグラフ表示部7が実装されたツールのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ボタンを押下すると、トレンドグラフウィンドウ8を含む画面が表示される。トレンドグラフウィンドウ8内には、トレンドグラフ表示エリア9と縦軸凡例10と縦軸範囲11と横軸凡例12と横軸範囲13とが表示される。トレンドグラフ表示エリア9内には、縦軸範囲11と横軸範囲13に従って、モータ巻線間電流値とイベント番号#nとを2次元座標上にプロットしたトレンドグラフが表示される。
【0052】
実施の形態にかかるプラント監視システムでは、プラント毎の操業停止時間の相違に合わせて、イベント番号変更条件が設定されてもよい。イベント番号変更条件は、具体的には指定時間差Tthである。
【0053】
イベント番号付与部2は、指定時間差Tthに異なる複数の値が設定されるように構築されてもよい。プラント毎の操業停止時間の相違に合わせて、大きさが異なる複数の指定時間差Tth1、Tth2、Tth3・・・が選択的に使用されてもよい。設置されたプラント操業停止時間に応じて、適切な指定時間差Tthを設定することができる。
【0054】
一回のプラント操業停止時間内で、モータ巻線間の絶縁抵抗の値が複数回にわたって自動測定される。図3のトレンドグラフでは、イベント番号#1内における最大測定値プロット14と最小測定値プロット15とが直線で結ばれている。また、イベント番号#1内の最終測定値プロット16と次のイベント番号#2内の初回測定値プロット17とが直線で結ばれている。
【0055】
イベント番号#nを横軸としてトレンドグラフを表示した場合、測定時刻tを正確に確認できない。そこで、実施の形態では、表示形式切替ボタン18が押下された場合には、横軸を時刻に変更する処理が実行される(図5参照)。横軸を時刻に変更した後に表示形式切替ボタン18を再度押下すると、横軸をイベント番号#Dに戻すこともできる。
【0056】
測定時刻の時刻差ΔTに基づいて複数の測定値Dを関連付けし、関連付けされた測定値Dに同じイベント番号#nを付与することができる。これにより、トレンドグラフにおいて互いに関連のある測定値Dをイベント番号#nごとに表示できるので、ユーザが直感的に測定結果を把握することができる。
【0057】
また、点検間隔が長期間にわたるような点検項目について時間軸上に測定値Dを並べる単純な時系列データ表示とすると、時間軸上に複数の測定値Dのかたまりが離散的に存在することになる。その結果、視認性が低下してしまう。この点、イベント番号#nごとに測定値Dをまとめることで、視認性を高めて直感的な理解が容易なトレンドグラフを描画することができる。
【0058】
図3に示すように、トレンドグラフ表示部7は、同じイベント番号#nが付与された複数の測定値Dを、横軸と直交する方向(つまり縦軸と平行な方向)に並べて描画するように構築されてもよい。
【0059】
同じイベント番号#nが付与された複数の測定値Dを他のイベント番号#nが付与された複数の測定値nから区別するトレンドグラフ表示方法は、様々に変形されてもよい。変化例の一つとして、同じイベント番号#nが付与された複数の測定値Dを、他のイベント番号#nが付与された複数の測定値nから第二軸において互いに離間させることで、これらを区別してもよい。これはグラフ上で測定値の空間的配置を離間させるトレンドグラフ表示方法であり、図3に示す例もこのトレンドグラフ表示方法の一種である。
【0060】
変化例の一つとして、グラフ上での記号を相違させるトレンドグラフ表示方法が用いられてもよい。これは、同じイベント番号#nが付与された複数の測定値Dを第一記号でグラフに記入し、他のイベント番号#nが付与された複数の測定値nを第一記号でとは異なる第二記号でグラフに記入することで、これらを区別するトレンドグラフ表示方法である。
【0061】
変化例の他の一つとして、グラフ上での表示色を相違させるトレンドグラフ表示方法が用いられてもよい。これは、同じイベント番号#nが付与された複数の測定値Dを第一の色で描画し、他のイベント番号#nが付与された複数の測定値nを第一の色とは異なる第二の色で描画することで、これらを区別するトレンドグラフ表示方法である。
【0062】
なお、グラフ上の空間的配置を離間させるグルーピング方法と、異なる記号を用いるグルーピング方法と、異なる色を用いるグルーピング方法とのうち二つ以上の方法を組み合わせてもよい。
【0063】
トレンドグラフ表示部7は、図3に示すように、複数の測定値Dを取得時刻の順番で繋ぐ折れ線グラフを描画するように構築されてもよい。
【0064】
図4は、実施の形態にかかるプラント監視システムで作成されるトレンドグラフの他の例である。図4は、最大値と最小値と平均値とに着眼したトレンドグラフ表示方法を示している。
【0065】
モータ巻線絶縁劣化点検の点検項目の一つに、モータ巻線の温度依存性がある。測定値の温度依存性を視認できるようにトレンドグラフを表示することが好ましい。すなわち、測定値には、プラント操業停止直後のモータ巻線温度が高い状態での高温測定値と、プラント操業停止から時間が経ちモータ巻線温度が気温近くまで下がった状態での低温測定値とが含まれる。温度依存性を視認できるように、高温測定値と低温測定値とを区別して視認できることが好ましい。
【0066】
そのためには、イベント内で測定した最大値と最小値と平均値それぞれに着眼して推移を監視することが好ましい。そこで、図4に示すように、イベント内測定値範囲19と測定最大値トレンドグラフ20と測定平均値トレンドグラフ21と測定最小値トレンドグラフ22とのうち少なくとも一つを表示する処理がトレンドグラフ表示部7に実装されてもよい。
【0067】
図4に示すように、トレンドグラフ表示部7は、測定最大値トレンドグラフ20を描画するように構築されてもよい。実施の形態では、一例として、測定最大値トレンドグラフ20が、第一イベント番号#nが付与された複数の測定値Dのなかの最大値と第一イベント番号#nの次の第二イベント番号#nが付与された複数の測定値Dのなかの最大値とを結んでいる。変形例として、各々の最大値データに基づいて、近似曲線などのフィッティング関数あるいは移動平均線などの各種の統計グラフを作成し、これを近似的な測定最大値トレンドグラフとして用いても良い。
【0068】
図4に示すように、トレンドグラフ表示部7は、測定最小値トレンドグラフ22を描画するように構築されてもよい。実施の形態では、一例として、測定最小値トレンドグラフ22が、第一イベント番号#nが付与された複数の測定値Dのなかの最小値と第一イベント番号#nの次の第二イベント番号#nが付与された複数の測定値Dのなかの最小値とを結んでいる。変形例として、各々の最小値データに基づいて、近似曲線などのフィッティング関数あるいは移動平均線などの各種の統計グラフを作成し、これを近似的な測定最小値トレンドグラフとして用いても良い。
【0069】
図4に示すように、トレンドグラフ表示部7は、測定平均値トレンドグラフ21を描画するように構築されてもよい。実施の形態では、一例として、測定平均値トレンドグラフ21が、第一イベント番号#nが付与された複数の測定値Dのなかの平均値と第一イベント番号#nの次の第二イベント番号#nが付与された複数の測定値Dのなかの平均値とを結んでいる。変形例として、各々の平均値データに基づいて、近似曲線などのフィッティング関数あるいは移動平均線などの各種の統計グラフを作成し、これを近似的な測定平均値トレンドグラフとして用いても良い。
【0070】
図4に示すように、トレンドグラフ表示部7は、イベント内測定値範囲19を描画するように構築されてもよい。イベント内測定値範囲19は、同じイベント番号#nが付与された複数の測定値Dのなかの最大値と最小値とで決まる範囲を表している。イベント内測定値範囲19によれば、一つのイベントのなかで測定値がどの程度変化したのかを視認することができる。イベント内測定値範囲19は、一例として図4に示すような棒グラフであってもよい。
【0071】
図5は、実施の形態にかかるプラント監視システムで作成されるトレンドグラフの他の例である。図5の横軸範囲13aの目盛は時刻tである。トレンドグラフ表示部7は、表示形式切替ボタン18を介した切替指示の入力操作に応答して、横軸の単位をイベント番号#nと時刻との間で可逆的に切り替えるように構築されてもよい。
【0072】
なお、実施の形態においては、説明の便宜上、添字nを用いて説明したが、測定値Dと時刻tとイベント番号#nとの間で添字nの値が同期しているとは限らない。イベント番号#nの個数は測定値Dおよび時刻tの個数に比べて十分に少なくなることがある。例えば多数の測定値Dk-1、D、Dk+1・・・が一つのイベント番号#kに紐付けられる場合があるからである。
【0073】
実施の形態では、一例として、測定値Dはモータ巻線絶縁劣化点検で測定された電気特性値とされている。具体的には、実施の形態にかかる測定値Dは電流値である。しかしながら、実施の形態にかかるデータ収集装置100およびプラント監視システム101は様々な種類のデータ収集に転用することができ、測定値Dは多種多様に変形されることが可能である。測定値Dは、モータ巻線絶縁劣化点検ではない他の点検項目における測定値であってもよい。測定値Dは、電気特性値以外の他の物理特性値(例えば熱的特性値、機械的特性値、磁気的特性値、化学的特性値その他の特性値)であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 測定値収集部、2 イベント番号付与部、2a 測定値グルーピング部、2b イベント番号生成部、2c イベント番号保存部、2d 設定ファイル、4 測定値保存部、7 トレンドグラフ表示部、8 トレンドグラフウィンドウ、9 トレンドグラフ表示エリア、10 縦軸凡例、11 縦軸範囲、12 横軸凡例、13、13a 横軸範囲、14 最大測定値プロット、15 最小測定値プロット、16 最終測定値プロット、17 初回測定値プロット、18 表示形式切替ボタン、19 イベント内測定値範囲、20 測定最大値トレンドグラフ、21 測定平均値トレンドグラフ、22 測定最小値トレンドグラフ、100 データ収集装置、101 プラント監視システム、102 プラント機器、103 電動機、104 メガー、F イベント番号設定フラグ、Tth 指定時間差、ΔT 時刻差
図1
図2
図3
図4
図5